説明

殺精及び/又は殺菌組成物、並びに、その使用方法

【課題】男性用経口避妊薬に加え、より有効な殺精組成物についても、伝統的な局所/外部的な避妊慣習においての使用のための必要が存在する。
【解決手段】本発明は、殺精剤及び/又は殺菌剤として作用するヘキサヒドロインデノピリジン化合物、同化合物を含む殺精及び/又は殺菌組成物、同化合物及び組成物を用いた運動性精子又は菌を殺す方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は:殺精剤及び/又は殺菌剤として作用するヘキサヒドロインデノピリジン化合物:同化合物を含む殺精及び/又は殺菌組成物;同化合物及び組成物を用いた運動性精子又は菌類を殺す方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合衆国や多くの西側諸国においては、ライフスタイルの好みにより、避妊(具及び薬)への需要が高く、また増大しつつあり、一方、多くの発展途上国においては、人口のコントロールが逼迫した公衆保健の問題となっている。避妊が、地球的な健康の必要から生じることを考えると、世界の別の地域においては別の考えがあるにせよ、男性用避妊薬の全市場は、合衆国において計算される数字より、ずっと大きいものと考えられる。
【0003】
西側諸国においては、避妊薬類の市場は、過去50年に渡り相対的には少しの変化しかない。「ピル」が1951年に開発され、避妊薬類の人気のある選択肢として比類のないものとなり続けているからである。避妊の研究の進歩は、2,3のより多くの選択肢を提供してきた。その全ては女性のためのもので、女性は責任、費用、健康に関するリスク(特に、ホルモン系の避妊薬の長期間の使用に関係する、心臓血管の病気の危険、及び、ある種の癌)の矛先を向けられてきた。
16世紀に発明されたコンドームは男性にとって利用可能な、唯一の重要な形態の(「引き抜き」及びパイプカットを除く)避妊法である。コンドームについての唯一の真の革新的進歩は、19世紀になってゴムが加硫されることにより起こった。(New Scientist, 20 April 1994, Vol 142 No 1923)
【0004】
製薬会社が、性的機能不全の為の化合物(例えば、勃起不全の為のバイアグラ)を開発し、避妊薬類への需要は高まるものと考えられる。1999年の間、合衆国内でのコンドームの売り上げは、5.8%上昇し、2億6千万ドルの収入を生み、新アメリカ性的革命と呼ばれるものを引き起こした。(Drug Store News, Nov 29, 1999 v21 il9 p29) 子をもつ親の世代の女性の大多数が既に避妊を実践するが(世界中の生殖年齢にある全女性の58%が何らかの避妊法を実践する(The Population Division of the United Nations Department of Economic and Social Affairs 2000)、まだ、妊娠の半数は、望まれずに起こる(NICHD, Contraception and Reproductive Health Branch: Report to the NACHHD Council September 1999)。 健康及び消費者団体より、他の代替物、特に、男性がより多くの避妊の責任をとることが可能となる代替物についての継続的な懇願があり、世界保健機構(WHO)や、ファミリーヘルスインターナショナル等の機関が、世界的な懸念より、男性用避妊薬の開発を促す発案をするに至っている。少なくとも二つの企業、シェリング及びオルガノンがこの10年以内に、ホルモン系男性避妊薬を市場に導入しようと、熱心に研究をしている。
【0005】
安全で有効なであり、経口により活性である男性用避妊薬は長年に渡り求められてきた。しかし、性欲にも影響を与えずに、安全に精子の形成を止めることができ、よって男性用避妊薬剤として機能する薬品の開発は、困難であることがわかっている。
【0006】
理想的な男性用避妊薬とは、精子の生産を阻止し、生殖能力を阻害し、性欲若しくは付属のセックス器官、及びそれらの機能の働きに影響を与えることのないもの、並びに/又は、運動性精子を死滅させるものである。加えて、有効服用量と、有毒な服用量との間に大きな開きを有するべきであり、その方法は可逆的であるべきである。このような、理想的な男性用避妊薬は、現在のところ、未だ無い。
【0007】
抗がん剤やアルキル化剤等の、いくつかの一般的な細胞の毒物は、精子の形成に影響する。しかし、明らかに避妊薬としては許容されない。チオ糖等の細胞エネルギープロセスと干渉する化合物は、精子形成系とも干渉する。よって、十分に選択的ではない。テストステロン等の男性ホルモン及びその類似体は、十分に高い用量用いられた場合、おそらく、視床下部−下垂体系を伴う機構を介して、精子の形成と干渉する。これらのステロイド化合物は、臨床研究において首尾よく用いられてきた。しかし、これらのステロイドの同化作用により、望まない副作用が増加しうる。
【0008】
ゴナドトロピン放出ホルモン(GNRH)類似体は、精子形成を有効に阻害する化合物として、活発に研究されている。しかし、GNRH類似体は、内在性男性ホルモンと干渉し、補助の男性ホルモンが投与されない限り、性欲を減退させる。
【0009】
男性用避妊薬類に対するアプローチの一つは、男性生殖過程の生化学の特定及び活用に基づくものである。睾丸は3つの機能部位からなる。第一の部位は、精子の生産について責任のある場所であり、発達中の性細胞を含む精細管により構成される。第二の部位は、セルトリ細胞であり、同様に精細管内に位置する。そして、組織的、及び、機能的な精子形成プロセスのコーディネーションに貢献し、おそらくは、パラ分泌、及び、自己分泌の役割を担う。セルトリ細胞及び発達中の性細胞の間の複雑な組織的関係、及び近接したセルトリ細胞間の緊密な連結の存在により、血液‐精巣障壁が形成され、精細管内に血液由来の化学物質や、栄養物質の直接のアクセスより孤立された部位が形成される。介在する組織中において、当該細管を取り囲むのは、パラ分泌、及び、自己分泌の機能を有し、テストステロンの発生が最もよく発見されるライディヒ細胞である。
【0010】
性細胞は、基底膜より精細管内へ成熟しながら移動しつつ、累進的に分裂及び分化する。精原細胞は基底の部屋に存し、選択的に採用された精原細胞は、有糸分裂をし、そのまま精原細胞であり続けるか、又は一次精母細胞に分化する。
一次精母細胞は、セルトリ細胞の間の連結を介して遊走し、また、二次精母細胞を形成すべく、有糸分裂する。二次精母細胞は、精細胞を形成すべく、分裂する。精細胞は、成熟した精子へと分化する。精細胞の分化は、しばしば精子形成と定義される。しかし、この出願の目的についていえば、「精子形成」とは、精子の形成及び成熟(分化)の全工程を包含する様に規定され、「反精子形成化合物」は、この工程のいずれかの部分を阻害するものである。
【0011】
セルトリ細胞機能の概要は、以下の通りである。(a)精上皮を維持し、栄養を与え、(b)晩発の精原細胞を精細管内に放出、(c)形態学的、及び生理学的血液‐精巣障壁部の形成、(d)退化していく性細胞の食作用、(e)精上皮のサイクルの調節である。
【0012】
ライディヒ細胞は、同様に、精子形成を支援する。下垂体からの黄体化ホルモン(HG)は、ライディヒ細胞のテストステロンの発生を刺激する。テストステロンと、その代謝産物であるジヒドロテストステロンは、通常の精子形成を支援するのに不可欠のものである。テストステロン受容体は、様々な種類の性細胞に存在する。テストステロンは血液‐精巣障壁部を介して、おそらく、セルトリ細胞への伝達を介して、そこでエストラジオール、ジヒドロテストステロンへ代謝され、もしくは、そのまま変化せずに残る。
【0013】
全ての種類の性細胞とはいかないが、それらのうちいくつかのものは、ライディヒ及び/又はセルトリ細胞と干渉する。これらの相互作用は、セルトリ、ライディヒ又は性細胞により産出される化学的メッセンジャーの形態をとる。例えば、パキテン期の精母細胞が、セルトリ細胞の蛋白様因子の分泌を調節することとなり、また、それがライディヒ細胞のステロイド発生を増進することとなる。精細胞の結合は、FSHへの暴露により反応能を有することとなり又は機能的になったセルトリ細胞にのみ生じる。ラットのセルトリ細胞は、周期的に、数種のプロテインを分泌し、その生産は、精上皮が特定の段階にあるとき、つまり、特定のグループの性細胞と関連のある時に最大値となる。クラステリンは、セルトリ細胞により、精上皮がステージVII又はVIIIの形態にある時、すなわち、FSH刺激とは無関係である時に、最大の産出量となる。このことは、性細胞により、セルトリ分泌機能が局所的に調節されることを示唆している。
【0014】
サンドズ社により開発されたヘキサヒドロインデノピリジン化合物 No.20−438(図1における化合物1)は、動物への経口投与により精子形成を可逆的に阻害することがわかっている。Arch.Toxicol. Suppl.,1984, 7:171-173; Arch.Toxicol. Suppl.,1978:323-326;及び Mutation Research,1979,66:113-127参照。
【0015】
ラセミ体としての様々なインデノピリジン化合物の合成は公知であり、例えば、米国特許第2470108号明細書;米国特許第2470109号明細書;米国特許第2546652号明細書;米国特許第3627773号明細書;米国特許第3678057号明細書;米国特許第3462443号明細書;米国特許第3408353号明細書;米国特許第3497517号明細書;米国特許第3574686号明細書;米国特許第3678058号明細書、及び米国特許第3991066号明細書に記載されている。これらのインデノピリジン化合物は、種々の用途を持っており、例えば、抗炎症性及び鎮痛性を有するセロトニン拮抗薬、血液芽細胞凝集阻害剤、鎮静剤、神経弛緩剤、並びに潰瘍保護剤、血圧降下剤、及び食欲不振誘発剤としても用いることができる。
【0016】
米国特許第5319084号明細書及び米国特許5952336号明細書は、パラ位に置換基を有するフェニル環によって、5位が置換されおり、反精子形成活性を有するヘキサヒドロインデノピリジン化合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第2470108号明細書
【特許文献2】米国特許第2470109号明細書
【特許文献3】米国特許第2546652号明細書
【特許文献4】米国特許第3627773号明細書
【特許文献5】米国特許第3678057号明細書
【特許文献6】米国特許第3462443号明細書
【特許文献7】米国特許第3408353号明細書
【特許文献8】米国特許第3497517号明細書
【特許文献9】米国特許第3574686号明細書
【特許文献10】米国特許第3678058号明細書
【特許文献11】米国特許第3991066号明細書
【特許文献12】米国特許第5319084号明細書
【特許文献13】米国特許5952336号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】New Scientist, 20 April 1994, Vol 142 No 1923
【非特許文献2】Drug Store News, Nov 29, 1999 v21 il9 p29
【非特許文献3】The Population Division of the United Nations Department of Economic and Social Affairs 2000
【非特許文献4】NICHD, Contraception and Reproductive Health Branch: Report to the NACHHD Council September 1999
【非特許文献5】Arch.Toxicol. Suppl.,1984, 7:171-173
【非特許文献6】Arch.Toxicol. Suppl.,1978:323-326
【非特許文献7】Mutation Research,1979,66:113-127
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
この分野での広範に渡る研究にも拘らず、限定された副作用を有する活性な、可逆的男性用不妊薬へのニーズは存在し続けており、副作用を起こすかもしれない用量の既知の化合物の投与の必要が存することも、問題となり続けている。この分野においてある別の問題は、睾丸上又は内部に特定の結合部位を有する適切な造影剤が存在しないことであり、睾丸の機能の研究及び機能不全の診断において、造影剤として用いることのできる化合物の必要性が継続して存する。
【0020】
男性用経口避妊薬に加え、より有効な殺精組成物についても、伝統的な局所/外部的な避妊慣習においての使用のための必要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
すなわち、本発明の一つの目的は、経口投与によって活性を示す男性用避妊薬であり、性欲に影響を与えず、高い効力と活性を示し、並びに、極小の副作用及び毒性しか有さないものである。
【0022】
本発明の別の目的は、経口投与によって活性を示す男性用避妊薬であり、精子形成を阻害するもの、及び、上記薬を用いての精子形成阻害方法である。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、殺精剤として機能する組成物であり、運動性精子を殺すことにより、外用に供する避妊剤として有効なものを提供することである。
【0024】
本発明のもう一つのさらなる別の目的は、殺菌組成物として作用する組成物を提供することにある。
【0025】
本発明のこれらや別の目的は、本発明のヘキサヒドロインデノピリジン化合物類の発見、及びこれらの効力が極めて高く、精子形成を阻害し、運動性精子の殺精剤として作用し、及び殺菌剤としての有効性を示すものであることの発見により達成された。
【0026】
本発明の化合物は、上述の問題を解決するものであり、本発明の化合物は、公知の化合物1より、より低い相対用量において高い効力を示し、この化合物にみられる沈静効果等の副作用の発生を抑える。また、本発明の化合物は、睾丸におけるマクロ分子的なサイトと相互作用する。放射性ラベルの等のラベルを含む本発明の化合物は、睾丸の機能の研究及び機能不全の診断において、造影剤として用いることのできる適切な化合物が存在しないという問題を克服することができる。本発明の化合物は、殺精剤としても働くことが分かっており、運動性精子を高度に有効及び効率的な方法により死滅させる。このことにより、様々な殺精組成物における使用が示唆される。本発明の化合物は、殺菌剤としても働くことも分かっている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】三つのヘキサヒドロインデノピリジン化合物の構造を示すものであり、また、これらの化合物の番号付与方式についても示している。
【図2】本発明の化合物の前駆体の合成方法を示している。
【図3】本発明の化合物の前駆体の鏡像異性的選択的合成を示す。
【図4】図2及び3で調製された先駆化合物のヨード化の合成スキーム及び本発明の範囲にある追加の化合物へのこのヨード化合物の変換を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
下記の構造I(a)を有する、好ましくは以下のI(b)に示す構造を有する、ヘキサヒドロインデノピリジン化合物は、反精子形成作用を有し、上記米国特許第5319084号に報告されている最もよく知られている化合物の経口の反精子形成剤の40倍の活性度を示すだけでなく、運動性精子を死滅させる殺精剤として作用し、さらに、殺菌組成物としても作用することを発見した。
【0029】
【化1】

【0030】
[式中、
4a、5、9b位にある水素原子は、図示した相対的立体配置をとる(式I(b)において、お互いに、4a及び5位の水素はトランスであり,4a及び9bの水素はシスである。);
また、9b位の相対的立体化学が逆となって、お互いに、4a及び5位の水素はトランスであり,4a及び9bの水素がトランスとなっていてもよい;
また、全ての3個の水素はお互いにシスであってもよい;また、
4aと5の間にある破線は、上記化合物は、4a,5−デヒドロ化合物、すなわち4a及び5位の炭素の間に二重結合を有してもよいことを示す。
さらに、式中、
Rは、水素原子、又は直鎖若しくは分岐のあるC1−6アルキル、好ましくはC1−3アルキル、又はC3−C8シクロアルキルを表し;
Rは、水素原子、又は直鎖若しくは分岐のあるC1−6アルキル、好ましくはC1−3アルキルを表し;
R 及びRは、それぞれ独立に水素、ハロゲン、SO3H、直鎖又は分岐のあるC1−6アルキル、CHOH、CH2OMe、直鎖又は分岐のあるC1−6アルコキシ、カルボキシル(COOH)、又は哺乳動物の生理学的条件下でカルボキシル基に変換可能な基、カルボン酸エステル(COORここで、RはC1−10アルキル、C6−10アリール、C7−10アラルキルである。)、ヒドロキシメチルエステル(CHOC(O)−Rここで、Rは上に規定する通りである。)、CONH、CONHR、CONR、CH2OCONHR、CN、CH=NHNHCONH、及び、ハロゲンを表し;
Rは、水素、ハロゲン、R3Si又はCORを表す。]
【0031】
本発明のコンテクストにおいて、用語「反精子形成」とは、睾丸中の精子生産を阻害する能力に関するものであり、「殺精剤」、又は「殺精の」とは、生成後の、より好ましくは射精後の運動性精子を死滅させる能力に関する。
【0032】
本発明の化合物は、構造式(I)に示す相対的立体化学を有し、本発明は、別個の鏡像異性体型(基本的には、光学的に純粋)の双方を含み、同様に、これらの混合体、例えば、ラセミ体を含む。
【0033】
構造式(I)を有する化合物で、製薬学的に許容できる塩もまた、本発明に含まれる。
製薬学的に許容できる塩は、以下のものを含むが、これらに限定されない:
塩基性官能基(例えば、アミン基であるが、これに限定されない。)が、塩酸、ヨウ化水素酸、硫酸、燐酸、二燐酸、臭化水素酸、硝酸等の無機酸と形成する塩;
塩基性官能基と有機酸との塩、例えば、酢酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、パルモエート、サリチル酸塩、ステアリン酸塩等;若しくは、
酸性官能基と、Na,K, Ca等(これらに限定されない)の金属イオンとの塩、又は
酸性官能基と、アンモニウムイオンとの塩、又は、
酸性官能基と、アミンやテトラ置換アンモニウムイオン(これらに限定されない)等の有機イオンとの塩。
【0034】
置換基Rは、好ましくは、直鎖アルキル(n-アルキル)、iso‐アルキル、又は、シクロアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、n−ヘキシル、iso−ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、最も好ましくは、Rは、エチルである。
置換基Rは、上記Rと同様に、好ましくは、直鎖アルキル、又はiso‐アルキル基である。
置換基Rは、環のパラ位、つまり、4位にあることが好ましく、ヒドロキシメチル(CHOH)、ホルミル(CHO)、カルボキシル(COOH)、カルボン酸エステル(COOR、ここで、RはC1−10アルキル、C6−10アリール、C7−10アラルキルである。)、及びヒドロキシメチルエステル(CHOC(O)−Rここで、Rは上に規定する通りである。)、CONH2、CONHR、CONR2、CH2OCONHR、CN、CH=NHNHCONH、並びに、ハロゲンから選択される基であることが好ましい。
置換基Rは、好ましくは、I,Br,Cl,及びFを含むハロゲンである。これらの化合物の強力な活性は驚くほどである。ハロゲンは、放射性同位元素、例えば、123I、125I、又は131Iであってもよい。上述の化合物中において、他の放射性同位元素、例えば、11C、トリチウム(H)もしくは18F、又は臭素及び塩素の放射性同位元素が、通常の(非放射性の)同位元素の替わりに用いられてもよい。
【0035】
化合物1は、ラセミ体である。化合物1の構造は、図1に化合物1として示されている。ヘキサヒドロインデノピリジンは、公知の命名法で規定されうる三つの不斉中心を含んでいる。代わりに、相対的立体化学は、三環系の4a、5、及び9b位で炭素系に結合する水素原子のシス−トランス関係により規定し、立体化学的配置を決定してもよい。
【0036】
カーン‐インゴルド‐プレローグ命名法によると、化合物1の立体化学及び名称は、(4aRS,5SR,9bRS)-2-エチル-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-7-メチル-5-(4-メチルフェニル)-1H-インデノ[1,2-c]ピリジンである。
【0037】
化合物1は、上述の構造式(I)の置換基Rに相当する5−フェニル基に、疎水性メチル置換基を有している。化合物1の反精子形成の活性は、基本的に、(+)異性体(1995年にクックらによって記述された条件により測定した場合、右旋(光)性の旋光性を示す。)のみにあり、これは、マウスに対し有効な反精子形成薬である。このシリーズの他の化合物の反精子形成活性は、同様に、一つの鏡像異性体のみに存在する。しかしながら、立体化学を熟知している者に良く知られている様に、これらの化合物の測定された回転活性は、置換のパターンや測定状況に依存し、(+)か(−)のどちらかとなる。一方、本発明の化合物類の殺菌性は、立体配置に依存せず、それぞれの相対的活性は異なりうるものの、(+)及び(−)の両異性体において活性である。
【0038】
本発明の化合物の殺精活性は、反精子形成異性体に見出されており、もう一方の異性体にも存在すると考えられる。
【0039】
非常に極性が高いカルボキシル基や、哺乳動物の生理的条件下でカルボキシル基へと代謝されうる基は、本発明の化合物のどの位置にあってもよく、好ましくは、上記化合物の5−フェニル環のパラ位に存在し、殺精及び/又は殺菌活性は維持される。例えば、パラ位が、ヒドロキシメチル(CHOH)、ホルミル(CHO)、カルボキシル(COOH)、メトキシカルボニル(C(O)OCH)基により置換されたものは、強力な活性を保つ。これらの化合物は、5−フェニル環のパラ位が極性置換基で置換されているにも拘わらず、活性を示す。
【0040】
「哺乳動物の生理的条件下で、カルボキシル基へと代謝される」とは、構造(I)を有する化合物が、反精子形成剤を必要とする生きた哺乳動物に投与されたとき、官能基R3がカルボキシル基に変換されることを意味する。
投与は、いかなる在来の方法又は経路を通じても行われ、経口、経腹膜、静脈を介して、皮下において、筋肉内において、吸引、口腔内において、及び経皮によりなされ、また、これらにより限定されることはない。殺精及び/又は殺菌療法についても、局所的投与とともに、これらの投与が利用可能である。R3基のカルボキシル基への変換は、血中や尿中における構造(I)を有する化合物の代謝産物のモニターにより容易に確認することができる。代謝産物は、質量分析(MS)、ガスクロマトグラフィー(GC)等の在来の方法により監視してもよい。
【0041】
置換基R3の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは90%、95%、又は100%の置換基R3が哺乳動物への投与により、カルボキシル基に代謝されることが好ましいが、このことは、殺精及び/又は殺菌の特性を得るのに不可欠なものではない。変換のパーセンテージは、血液又は尿のサンプルを定量的に分析することにより確認され、R3がカルボキシル基に変換された化合物に対する、官能基R3を含む未変換化合物の相対量を、上述の在来の方法の一つを用いることにより確認されうる。
【0042】
化合物1の反精子形成活性は、ラットへの30mg/kgの、一度の経口投与によって得られ、24h以内に、睾丸の重量を劇的に低下させる。精細管における変性の変化が観察される。精細胞は、密になり、しばしば多核の結合体を形成した。セルトリ細胞は、細胞学的に、ノーマルのように見える。化合物1は、精細胞、又はこれら精細胞に関連するセルトリ細胞をターゲットにしていると考えられる、なぜなら、最初に、組織的変化がこれらの精細胞に観察されるからである。
【0043】
化合物1は、無気力及び倦怠感をマウスへの30mg/kgの一度の経口投与において引き起こし、同量物を皮下に投与することにより、極度の無気力を引き起こした。無気力及び倦怠感は、明らかに避妊薬の望まざる副作用である。化合物1における、無気力及び倦怠感に比べ、本発明の化合物のものは最低限のものであった。
【0044】
本発明の化合物により、化合物1において観察される倦怠感なしに、不妊活性を得ることが可能となる。本発明の化合物は、よって、倦怠感と無気力という望まざる副作用が著しく減ぜられた有効な不妊薬である。
【0045】
本発明の化合物は、マウスにおける精子形成への効果が試験された。テストは以下のクックらによって記された(1995)方法により、一度の経口投与の三日後に行われた。このテストにおいて活性のある化合物は、不妊化合物でもあることがわかっている。
【0046】
一日目の雄のマウスに胃管による強制栄養法により、コントロール賦形薬、ポジティブコントロール(化合物1)、又は本発明の化合物を投与することにより、化合物を選別した。投与の72h後に、動物を殺し、睾丸を切り取り、脂肪を取り除いた後、重さを量った。一つの睾丸が組織学的に精査され、精子形成の潜在的可能性について、精子形成インデックス(J.M.Whitsett, P.F.Noden, J.Cherry and A. D. Lawton, J. Reprod. Fertil., 72, 277(1984)に基づいて評価した。 このインデックスとは、睾丸の精子形成能力の半定量的評価法であり、精細管中の精子形成細胞の組織学的外観に基づくものである。1から6のスケールが用いられ、5から6が通常の状態を表す。二つ目の評価は、睾丸の重さに基づくものである。
【0047】
表1及び2は、投与賦形薬のみを含むがインデノピリジンを含まないコントロールに対しての睾丸重量(TW)及び精子形成インデックス(SI)の変化の点での、関連する生物学的結果である。
表1及び2については、R及びRは、構造Ibを表し、ここで、R3はパラ位にあり、Rはエチル;Rはメチル;R5は水素を表す。
【0048】
8-ヨード-7-メチル−4´-カルボキシ又は4´カルボメトキシ置換パターンにおいては、ラセミ化合物を経口投与により2 μmol/kg(1mg/kg)投与することにより、精子形成インデックスが57−67%減少し、8−ヨード置換基のない対応類似体の79 μmol/kg(30mg/kg)と少なくとも同程度有効であった。8-ブロモ、又は8-クロロ類似体に於いては、試験した最低投与量(6又は2 μmol/kg;3又は1mg/kg)が、ハロゲン化されていない類似体の79μmol/kg(30mg/kg)の投与と、少なくとも同程度有効であった(表1参照)。活性(左旋性)光学異性体の8-ヨード-7-メチル-4´-カルボキシ類似体を8-H-7-メチル-4´-カルボキシ類似体(表2)と比較することにより、前者の化合物は0.6及び2 μmol/kg(0.3及び1mg/kg)において、後者の化合物の25及び75μmol/kg(10及び30mg/kg)と同程度か、それ以上の効果を有することが分かった。このようにして、モル当りの効力について、8位のハロゲン化により40倍の増加が達成された。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
本発明の化合物の殺精活性は、射精により生じた精液に一度適用するだけで有意のものとして存在する、すなわち、たった3μMの濃度を有する組成物が有意なものとして運動性を減じることができ、たった100μMの濃度を有する本化合物の組成物の適用後には、運動性を0にすることができる。本発明の殺精組成物は、精子の運動性を受精不可能なレヴェルまで減少させることができるあらゆる濃度をとることができ、好ましくは1〜500μM、より好ましくは3〜300μM、さらに好ましくは10〜200μMである。殺精活性度は、以下の方法により決定した。
【0052】
[精子の運動性に対する作用物質の直接的効果の決定方法]
精子の運動性に対する作用物質の直接的効果は、以下のプロトコルにより決定した。基本的には、精子は、ラットの場合には、精巣上体尾より、ウサギの場合は、人口膣を用いて集められた射精により集められた得られたものを用いる。精子の初期運動性は、用手により、又は、ハミルトン ソーンのIVOS精子分析機を用いることにより決定する。その精子を、34℃の定温に保ち、10x10/mLの一定の濃度に希釈した後、約3mLの緩衝剤又は培地に加える。運動性を、再度この時点においても決定し、なんらかの変化があれば記録する。異なる濃度を持ったテストする作用試剤を、準備された精子に加える。精液のサンプルは、一時間の間一定の温度で保ち、運動度を決定する。結果は、サンプル中の動的精子のパーセントとして記録する。
【0053】
[精子の運動性に対する作用物質の直接的効果の決定のためのプロトコル]
一般的事項:
精子は実験期間中34℃で、保存した。精子の濃度は、約10x10/mLの濃度であった(なお、サンプルは緩衝剤又は培地によりこの濃度に達するまで希釈する必要があってもよい。)。
ラットにおける研究(精巣上体尾からの精子を使用)
HBSS緩衝溶液中のインデノピリジン1mMストック溶液+BSA(5mg in 10 =0.5 ug/ul; 0.5 ug/mL=1uM) を調製し、以下の様に加えた。
1uM = 1ulストック + 949ul HBSS buffer + BSA + 希釈された精液50 ul
3uM = 3ulストック + 947ul HBSS buffer + BSA + 希釈された精液50 ul
10uM = 10ulストック + 940ul HBSS buffer + BSA + 希釈された精液50 ul
30uM = 30ulストック + 920ul HBSS buffer + BSA + 希釈された精液50 ul
100uM = 100ulストック + 850ul HBSS buffer + BSA + 希釈された精液50 ul
300uM = 300ulストック + 650ul HBSS buffer + BSA + 希釈された精液50 ul
1000uM = 1000ulストック + 希釈された精液50 ul
精子の運動性を一時間後に決定した。
【0054】
[ウサギについての研究(射精された精子を使用)]
M−199培地中のインデノピリジン1mMストック溶液+BSA(2.5mg in 5 =0.5 ug/ul; 0.5 ug/mL=1uM) を調製し、以下の様に加えた。
1uM = 1ulストック + 949ul M−199培地 + BSA + 希釈された精液50 ul
3uM = 3ulストック + 947ul M−199培地 + BSA + 希釈された精液50 ul
10uM = 10ulストック + 940ul M−199培地 + BSA + 希釈された精液50 ul
30uM = 30ulストック + 920ul M−199培地 + BSA + 希釈された精液50 ul
100uM = 100ulストック + 850ul M−199培地 + BSA + 希釈された精液50 ul
300uM = 300ulストック + 650ul M−199培地 + BSA + 希釈された精液50 ul
1000uM = 1000ulストック + 希釈された精液50 ul
精子の運動性を一時間後に決定した。
形態変化を同定するためにスライドを作り、細胞の死の確認のために、エオシンを加えた。
殺精試験の結果を、表3(ウサギの射精による精子)及び表4(ラットの尾の精子の運動性)に示した。
【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
本発明の化合物の殺菌活性は、菌のレべルを感染不可能な程度にまで低下させるのに十分ないかなる濃度においても得られ、好ましくは、1−500μM,より好ましくは、20−300μM、さらに好ましくは、20−200μMにおいて得られる。
【0058】
殺菌感受性試験は、NCCLSガイドラインに小さな変更を加えて行われた。簡潔に言うと、Candida albicans細胞の懸濁液が、イースト麦芽(YM)抽出物培地(35℃)において、一昼夜純培養されたものを調製し、いくつかの小さなコロニーを、YM培地プレートから取り除き、0.85%食塩水5mLに移した。細胞は、15秒の回転流により懸濁し、結果として生じる懸濁液の細胞密度を、光学光度計により決定した。セル密度は0.85%食塩水を加えることにより、530nmの波長の測定において、0.5マクファーランドスタンダードの透過度になるように調製した。この懸濁液の一部を、RPMI−MOPS中に1:1000の割合で希釈し、作業用懸濁液を得た。Aspergillus fumigatusの胞子の同様の胞子懸濁液を、0.85%の食塩水に40℃で保存された胞子を用いて得た。これらの胞子は、上記マクファーランドスタンダードの透過度になるように0.85%食塩水に希釈した。この懸濁液を、その後さらにRPMI−MOPS中に1:50の割合で希釈し、作業用接種懸濁液を得た。
【0059】
これらのテスト化合物の一連の希釈溶液を、2%DMSOを含むRPMI−MOPS中に作成した。各希釈液の一部が、無菌96−穴、平底マイクロタイタープレートのウェルに最終量が200μlになる様に加えられた。つまり、C.albicans 細胞懸濁液、又はA.fumigatus胞子懸濁液のいずれかを、それぞれのウェルに最終的に200μlになるまで加えた。これらのプレートを、35℃において培養した。19時間の培養の後、C.albicansの接種されたプレートを、裸眼により観察し、成長が観察できない濃度を、最低反応抑制濃度(MIC)と決定した。A.fumigatusのプレートについても48時間後に同様の決定を行った。 また、試験器官の成長を示さなかった全ての希釈液について、それぞれのウェルから100μlの媒体をとり、いくつかのスライドガラスの上に接種することにより、最小殺菌濃度(MFC)を決定した。接種は、C.albicansの成長については、YM寒天培地プレート上に、A.fumigatusについてはポテトデキストローズ寒天培地プレート上に、面線接種することにより、それぞれ行った。
コロニー形成単位(CFU)を数え、これらの数は、作業用接種懸濁溶液に対する接種された細胞又は胞子の生存パーセントを計算するのに用いた。最小殺菌濃度(MFC)とは、2%以下の生存パーセントを持った試験化合物の最低の濃度とした。
【0060】
殺菌試験の結果は、表4〜6に示す通りである。
【0061】
【表5】

【0062】
【表6】

【0063】
表4−5についてのノート
MFC=最低殺菌濃度
CFU=コロニー形成ユニット
Cidal=>98% 殺菌
Static=十分にクリヤーだが、<98% 殺菌
*コロニーは良好に計数を得るには近づき過ぎていた。殺菌性を有するというに近いといえる。
073d及びlのウェルにおいては、ある種の沈殿が起こった様にみえる。おそらく、沈殿物が胞子を「トラップ」したのだろう。他の化合物に於いては、この沈殿物は見られなかった。
【0064】
【表7】

MIC=成長がないと思われる最低濃度(ug/mL)
MFC=ウェルの中の細胞の98%以上を死滅させる最低濃度(ug/mL)
Fungistatic=MICを有する化合物、しかし98%未満の細胞が死滅
太字=A.Fumigatus のみにおいて活性な化合物
062の濃度:50μLに0.1mgであったとすると、最終的な定量濃度は報告されたものの1/5となるだろう。とはいっても、これらの濃度は、大まかなものである。
【0065】
上記表において、試験で用いられた様々な化合物は以下の通りである。
インデノピリジン類似体
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【0066】
本発明の化合物の前駆体は、米国特許第3678057号において開示された方法に変更を加えた米国特許第5319084号において開示された方法により調製される。これらの特許全体を本願に援用する。
【0067】
置換基は、適切なグリニァール試薬又はフェニルリチウム試薬を用いて分子に導入される。本方法により製造される鏡像異性体の混合物は、塩の形成後に、選択的結晶化、又はクロマトグラフィーにより、純粋な鏡像異性体へと分割される。例えば、C.E.CookらJ.Med.Chem.,38:753(1995)に記載の通り、化合物1の分割は、S(+)及びR(−)−2,2´−(1,1´ビナフチル)燐酸との塩形成によりなされ、化合物3の分割は、R−及びS−マンデル酸との塩形成により行われる。
【0068】
光学純度は、CHIRACEL−ODカラムにおける高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により達成された。
【0069】
本発明の化合物は、カルボン酸2、又はそのエステルの一つ(例えば、3)から始めることにより調製される。2及び3等の化合物は、米国特許第5319084号に記述されている通りに調製される。または、これらはFig.2に示した方法により調製される。すなわち、N−置換−3−アリールヘキサヒドロピリジン−4−カルボン酸エステル(4)がカルボン酸5に加水分解され、それが、塩化チオニルと処理されることにより、酸塩化物6を生じる。この化合物をAlClを用いて処理することにより、三環系ケトン7へと環化することができる。このケトン7がp−ハロゲン置換フェニルマグネシウムハロゲン化物、又はp−ハロゲン置換フェニルリチウム(4−ブロモフェニルリチウム)とともにターシャリーアルコール8を形成する。そして、それをトリアルキルシラン、例えば、トリエチルシラン等のトリ−C1−6アルキルシラン及びBFを用いて処理することにより化合物9へと還元される。その後、強塩基(例えば、KOH)とともに、アルコール溶媒、好ましくはn−ブタノール等の高沸点を有するものの中で還流により、所望の立体化学を有するブロモフェニル化合物10を得る。さらに、ブロモフェニル基を、例えばC1−6アルキルリチウム化合物でリチオフェニル基に変換し、公知の試薬を用いてカルボキシル化を行うことにより、カルボン酸2を得る。当該生成物から、さらに当該分野において周知の方法により、例えばC1−6アルカノ−ルとの反応により、エステル3を得る。
【0070】
上記の合成は、化合物2及び3の活性な鏡像異性体の光学選択合成のために変更されてもよく、それは図3に示された様に、本発明の活性鏡像異性体の合成に用いられてもよい。このようにして、N−置換1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−4−カルボン酸(例、12)は酸塩化物に変換され、又、後者の化合物は1R(+)−(2,10)−カンファーサルタム、又は、1S(−)−(2,10)−カンファーサルタムをアクリル化するのに用いられる。結果として生じるエノイルサルタム(13)がアリールマグネシウムハライドと処理されることにより、(13)は高いジアステレオ面選択性をもって1,4−付加を行い、高い鏡像異性体過剰率で3位にアリール基が導入される。結晶化によって、純粋な鏡像異性体14が得られる。アミド官能基は加水分解され、キラル補助剤は回復されてもよい。カルボン酸は、上述の様に、三環系ケトン7に変換される。この化合物は、図2にある様に、ブロモフェニルリチウムとの反応、及び後に続くステップにより、本質的に、鏡像異性体的に純粋な2及び3になる。それに代えて、キラルケトン7は、米国特許第5319084号におけるラセミ体の合成方法に記述されている手順により、鏡像異性的に濃縮された2及び3に変換されてもよい。
【0071】
濃縮の度合いは、鏡像異性体であるテトラヒドロピリジン類似体が中間体5に還元される際の触媒及び温度に依存する。
【0072】
米国特許第5319084号の図3を参照されたい。23℃、PdCl2/NaBH4/3atm H2 において、73%の鏡像異性的過剰率(ee)が得られるが、55℃においては、完全なラセミ化が起こる。一方、Pt/c/H2においては、上記eeは、60℃において、23℃のものと同程度であった(それぞれ、67%及び70%)。
【0073】
メチルエステル3等の、カルボン酸2又はそのエステルは、酸化条件下におけるヨウ素との反応、又は酸化された形態のヨウ素との反応で、ヨード化され、8−ヨード類似体17又は18を生ずる(図4)。例えば、酸化水銀の存在下において約1mLのヨウ素が3と反応することにより、8−ヨード化合物18が高い収量で得られる。エステル及び酸は、当該分野において周知の標準的化学手法により、相互に変換可能である。ラセミ体又は鏡像異性体のどちらが用いられてもよい。125I、123I、又は131I等のヨウ素の放射性同位体を用いることにより、放射性ラベルされた17又は18の類似体を得ることができる。これらの化合物は、これらの化合物の局在化の状態及び活性部位を特定するのに有用であり、男性の生殖障害の診断の造影剤として用いることができる。
【0074】
ヨウ素化化合物、特に8−ヨード酸17は、この酸の金属塩、例えば、ナトリウム塩の形成後、8−金属中間体、(ここで金属はリチウム又はt−BuLi等の公知の試薬を用いることにより置換された金属である。)を形成することにより、臭素化、及び塩素化化合物に変換される。8−金属中間体とヘキサクロロエタン又は1,2−ジブロモエチレン等のハロゲン源との反応により、図4に示される化合物19,20等の対応する8−置換類似体が得られる。対応するフルオロ化合物は、8−金属中間体をクロロトリメチルシランと反応させ、対応する8−トリメチルシリル化合物を形成し、この化合物をBF−EtOの存在下、四酢酸鉛と反応させることにより得られる。De Mioら 1993,Tetrahedron,49:8129−8138参照。
【0075】
様々の主題となっている化合物の放射性類似体は、例えば、8―金属中間体を放射性同位体として求電子ハロゲン原子を含む試薬で処理することにより得られ、また、先に指摘した様に、化合物17又は18の放射活性類似体は、上述の化合物の合成において、ヨウ素の放射活性同位体で置換することにより得られる。トリチウムによりラベルされた本発明の化合物は、例えば、8−ヨウ素化合物を、パラジウム、プラチナ等の貴金属の触媒下、トリチウムガスで還元することにより得られる。カーボン14類似体は、例えば、14Cラベル化された二酸化炭素を、例えば、図2に示した化合物2の合成における段階“g”において用いることにより得られる。
【0076】
放射化学合成の分野で一般に用いられている、化合物のその他の同位体ラベル方法が用いられてもよい。
【0077】
本発明の化合物は、人間を含む哺乳動物の受胎能を制御する男性用不妊薬として有効である。家族計画における使用可能性に加え、本発明の化合物は、屠殺が実用的、又は望ましくない、家畜、野生の又は飼いならされていない動物の繁殖力を制御するのに有用である。例えば、合衆国のいくつかの地域では、鹿の数の制御が問題となっており、鹿などの季節的に繁殖する動物に、適切な時期に、本発明の化合物の経口投与をこれらの化合物を含む餌により行うことにより、実質的に繁殖能力が減ぜられると考えられる。野生の羊、豚、馬等と同様、マウス、ラット、プレーリードッグ等の齧歯類動物もターゲットとなる動物である。本発明の化合物を動物園にいる捕獲された動物に投与することにより、数が過剰になった種の繁殖制御の手段となる。
【0078】
ここで用いられる、「受精能をコントロールする」とは、処置される哺乳動物の受精能、又は生殖能力を減ずることを意味する。不妊期間の長さは投与量の関数であり、十分な用量により、基本的に本発明の化合物を不妊剤として用いるための、不妊のための期間を延ばすことができる;この様に、本発明の化合物は、男性不妊手術としての外科的精管切除を代替しうるものである。これらの不妊法を施す際には、本発明の化合物は、一回のみの用量、又は複数回数(2回以上)の用量により投与が施される(ここで、前記用量は哺乳動物の精子形成能力(精子形成インデックス)を不妊のレベルまで減じるのに十分なものとする。)。つまり、本発明の化合物は、精子数を繁殖に不十分な程度にまで減じるのに十分な量及び期間に渡り投与される。
【0079】
上述の使用については、本発明の化合物の用量は当然のこととして、用いられる特定の化合物毎、投与の形態、及び不妊を望む期間に依存して異なる。しかし、動物における満足のいく結果は、経口投与において、約0.02〜約10mg/kg体重、好ましくは約0.1〜3mg/kg体重の投与により得られる。より大きな動物については、本発明の化合物の約10〜約100mg/kgの毎日の用量が、一度の経口単位用量として、又は本発明の化合物を約0.1〜10mg含む分割単位用量として投与される。一般的に、単一の活性鏡像異性体を投与する場合は、ラセミ化合物を投与する場合より少ない量を投与してもよい。所望の場合や必要な場合には、本発明の化合物は固体又は液体の担体又は希釈剤とともに、又は徐放性形態剤形において投与されてもよい。これらの製薬学的剤形の配合は当該分野においてよく知られており、本発明の化合物については、固体、液体、及び徐放性形態剤形を用意するどんな従来の方法も用いることができる。本発明の化合物については、当該分野において周知の在来の埋め込み法又は皮膚におけるパッチにより投与されてもよい。本発明の化合物は男性の人間の不妊手段として用いてもよく、精子形成を可逆的に阻害することにより、また、非外科手術的不妊法においてのどちらの方法において用いてもよい。後者の場合、適切な大用量の投与により、外科手術なしに精管切除の効果を得ることができ、また、精管切除により生じる潜在的副作用もない。
【0080】
本発明の化合物は、また、家畜、野生の、飼いならされていない、又は動物園の動物の繁殖を制御するのに有用である。例えば、動物園の動物の繁殖の制御に本化合物が用いられてもよい。人間の居住地の近くに存在する野性及び飼いならされていない動物、例えば鹿の個体数、又は、野生のムスタングや豚等の自然の生態に大きな影響を与える動物の固体数は、選択的に餌付けをすることにより、射殺や毒殺等の屠殺手段を用いることなく、コントロールすることができる。この方法においては動物の行動は影響されず、繁殖性のみが影響される。
【0081】
が放射活性ラベルである場合、本発明の化合物は、睾丸の機能の研究及び機能不全の診断に有用である。上述の用量の化合物の投与は、睾丸組織に結合することとなる。
【0082】
反精子形成特性において、本化合物が高度の化学的、立体化学的、鏡像異性的に選択性を持ち、また、性欲等の一般的な効果の減退が生じないことにより、本化合物は、睾丸の特定のマクロ分子と相互作用していることが分かる。本化合物の放射化学的誘導体で睾丸や睾丸断片を処理し、放射化学の分野において周知の技術を用いて放射能を測定することにより、反精子形成に関与する睾丸の部位を特定し、及びそのマクロ分子を同定することができる。この様にして、睾丸の重要な構成要素であり、その要素の破壊が不妊効果に直結するという部分を検知し、特定することができる。他の化合物(本発明化合物の類似体、無作為配列ライブラリーにおけるもの等)との放射能標識された化合物の結合を阻害する能力の比較により、より選択的で強力な反精子形成化合物を得ることができる。さらに、放射能標識された化合物を小用量(生殖能に医学的に効果を有するには小さすぎるもの)動物や人間の被検体に投与し、睾丸や、睾丸の特定部位の放射能量を測定することにより、生殖能の存在する問題がこのマクロ分子欠損に関連するかどうかを示すことができる。放射能は、PETやSPECT等の生物学的組織の造影の分野において周知の技術によって、生きた動物、又は人間において測定できる。
【0083】
この化合物は、分析目的の内的スタンダードとしてまた有用である。よって、例えば20等の化合物は、化合物17が投与された動物、又は人間からの血液、プラスマ、又は組織に既知量加えられてもよい。次に、血液、プラスマ、又は組織のサンプルは、有機溶媒を用いて抽出された後、高性能液体、又はガスクロマトグラフィーで分析してもよい。なお、この際、メチルエステル等の誘導体に変換後に測定を行ってもよい。17及び20に関連するクロマトグラフィーのピークを測定し、同じコンディションにある既知の化合物17及び20の面積比率と比較することにより、血液、プラスマ、又は組織中の17の濃度を同定することが可能となる。17と20は構造が類似していることから、抽出についての物理化学的性質は類似しており、一方が他方のほとんど理想的なスタンダードとなるのである。
【0084】
殺精剤としての使用について、本発明の化合物は様々な形態での投与が可能である。在来の殺精組成物は、既知の方法により調製される。この様な殺精剤は、ゲル、フォーム、ゼリー、クリーム、軟膏、サルブ(salve)等の形態をとる。在来の担体が本組成物の調製に用いられる。本発明の殺精組成物は、単独で、又は、1以上の避妊の阻害方法(ペッサリー、スポンジ、コンドーム等)ともに用いられてもよい。本組成物はペッサリー、スポンジ、コンドーム等に使用の直前に直接塗布してもよく、スポンジ又はコンドームと一緒に予めパックしてあってもよい。(ペッサリーについても同様だが、大抵のペッサリーは複数回用いるものであり、使用の度に洗浄される。
【0085】
殺菌剤としての使用には、本発明の組成物は必要とする部位への投与に適するいかなる形態においても調製され得る。投与の形態は液体混合物に加え、上述の殺精組成物について挙げられたものを含み、またこれらに限定されるものではない。上述の一般的な投与の形態を用いて、殺精及び殺菌特性が、組み合わせて利用されるものでもあってもよい。
【0086】
本発明の他の特徴については、以下の実施形態の記述において明らかにする。これらは本発明の説明のために用いられるものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0087】
実施例1
(4aRS,5SR,9bRS)2-エチル-7-メチル-2,3,4,4a,5,9b-へキサヒドロ-5-(p‐カルボキシフェニル-1H-インデノ[1,2-c]ピリジンヒドロクロリドの合成
【0088】
メタノール(500mL)中のヨードエタン(540g、3.41mol)を、エチルイソニコチエートに加えた。混合物を夜通し緩やかに還流し、ホウ化水素ナトリウム(140g)を、氷浴をもちいての冷却下において少しづつ、上述の溶液に加えた。NaBHの添加の終わった後、混合液が室温で夜通し攪拌した。メタノールのほとんどを蒸発させ、水とエーテルを溶液に加え、エーテル層を分離した後、ドライエーテル(NaSO)層の蒸発により、オイルを得た。この赤いオイルの蒸留により、黄色いオイル(470g,78%):沸点0.5mmで160℃、を得た。
【0089】
ドライエーテル(200mL)中の上述の化合物(146g,0.8mol)をエーテル中の1Mp−トリルマグネシウムブロミド(600mL,1.6mol -10℃において)に滴下した。3時間にわたり攪拌した後、反応混合物を、10%のNH4Cl水溶液(200mL)に注いだ。水層をエーテルにより抽出し、ドライ(NaSO)エーテルの蒸発により黄色がかった茶色のオイルを得た。このオイルを、18%塩酸(500mL)に溶解し、エーテルにより抽出した。塩酸水溶液を2時間還流し、溶媒の蒸発により対応するアミノ酸(181g、収率80%)を得た。このうち32gをポリ燐酸(500g)と混合し、140℃において3時間激しく攪拌した。反応混合物を冷却し、50%KOH水溶液を慎重に加えた。塩基性となった溶液を、エーテルにより抽出し、ドライ(NaSO)エーテル層の留去により、2−エチル−7−メチル−2,3,4,4a.アルファ.5,9b−アルファ−ヘキサヒドロ−1H−インデノ[1,2-c]ピリジン−5−オンをオイル(22.6g、87%)として得た。CHCH中MeOH(0−5%)勾配を用いSiO2の小カラムを使用することにより、分析サンプルを得た。
【0090】
【数1】

【0091】
テトラヒドロフラン(THF)(15mL)中のパラ−安息香酸(1.6g,8.0mmol)の機械的攪拌溶液にn-ブチルリチウム化合物(16.2mmol,ヘキサン中の2.5M溶液6mL)を45分以上に渡って滴下した。混合液をさらに1.5時間攪拌した後、三環系ケトン(1.1g,5.1mmol)をTHF溶液(5mL)として、30分以上をかけて、滴下により加えた。その後、−78℃において、攪拌を2.5h続けた。混合液を氷温の1M塩酸(75mL)に加え、エーテルにより抽出した(2度、30mL)。酸性水層を室温において15hに渡り攪拌し、減圧下、濃縮して固体を得た。この固体を、シリカのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより、CHCH中の10%から20%のMeOHの勾配溶出で精製し、2-エチル-7-メチル-2,3,4,9b−テトラヒドロ-5-(p‐カルボキシフェニル)-1H-インデノ[1,2-c]ピリジンヒドロクロリドを黄色の固体(1.1g,58%)として得た。
【0092】
【数2】

【0093】
エタノール/水(1:1混合物40mL)中の上述の化合物(379mg、1.03mmol)に、NaCl(81mg),PdCl(98mg)、NaBH(100mg)、濃HCl(10滴)を加えた。混合液をパール装置により50℃、水素雰囲気下(45psi)で15時間攪拌した後、セライドにより濾過し、減圧下において濃縮した。得られた固体は、無水アルコール中に懸濁し、それをセライドにより濾過し、濾過物を減圧下で濃縮することにより、(4aRS,5RS,9bRS)2-エチル-7-メチル-2,3,4,4a,5,9b−へキサヒドロ-5-(p‐カルボキシフェニル)-1H-インデノ[1,2-c]ピリジンヒドロクロリドを得た。
【0094】
【数3】

【0095】
n−ブタノール(60mL)中の水酸化カリウム(15g)の溶液に、上述の化合物(2.99g,8.0mmol)を一度に加えた。20時間の還流の後、濃茶の混合物を0℃まで冷却し、18%HClでpH=1に酸性化した。溶液を真空で除くことにより、黄色の固体を得た。この固体をCHClに溶かし、セライドによりろ過し、ろ過物を真空下で濃縮し、粗(4aRS,5SR,9bRS)2-エチル-7-メチル-2,3,4,4a,5,9b−へキサヒドロ-5‐(p‐カルボキシフェニル-1H-インデノ[2,2-c]ピリジンヒドロクロリドを、オフホワイトの液体として得た。この固体を、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより、10%のMeOH−CHCH3を用いて精製し、1.23g(41%)のオフホワイトの標題化合物を得た。融点280℃(分解)
【0096】
【数4】

【0097】
実施例2
(4aRS,5SR,9bRS)‐2-エチル-7‐メチル‐2,3,4,4a,5,9b-へキサヒドロ‐5- (p‐カルボキシメトキシフェニル)-1H-インデノール(1,2−c)ピリジンヒドロクロリド
【0098】
−10℃のメタノール(50mL)中の実施例1のカルボン酸(3.6g,9.69mmol)の溶液に塩化チオニル(1.1mL,14.5mmol)を10分以上かけて加えた。得られた溶液は、5℃において、68時間渡り冷蔵庫中に置いておかれた、その間に、生成物は、細く白い針状として晶出した。この過程を3回行うことにより得られたものを集め、2.65gの標題化合物を得た。融点204℃(昇華)
【0099】
【数5】

【0100】
実施例3
(4aRS,5SR,9bRS)-2-エチル-2,3,4,4a,5,9b-へキサヒドロ-8-ヨード-7-メチル-5-(4‐カルボキシメトキシフェニル)-1H-インデノ[1,2-c]ピリジンヒドロクロリド(18)及びその(l)-鏡像異性体((l)-18)の合成
【0101】
氷酢酸(2mL)中の(4aRS,5SR,9bRS)‐2-エチル-2,3,4,4a,5,9b-へキサヒドロ-7‐メチル‐5- (4‐カルボキシメトキシフェニル)-1H-インデノ[1,2-c]ピリジン(341mg、0.88mmol)の攪拌溶液に62%HClO(1mL)を加え、続いて、HgO(205mg,0.95mmol)を加えた。混合物を均一な溶液とするべく超音波処理をした。氷酢酸(17mL)中のヨード(235mg,0.925mmol)を15分以上に渡り滴下し、結果として得られた混合物を室温で夜通し攪拌した。オレンジ−赤の混合物を水(100mL)に注ぎ、5℃まで冷却し、30%NaOHにより、pH12に塩基性化した。エーテルにより抽出を行い(3x75mL)、透明で、無色の抽出物を集めた。水(20mL)、及び、塩水(30mL)により、連続して洗浄後、乾燥し(MgSO)、ろ過をし、真空中で濃縮することにより、18の遊離塩基の粗生成物を得た(448mg)。この物質を3%メタノール性塩化水素を用いてHCl塩に変換し、EtOAc−MeOHから再結晶した。得られたものは、400mg(89%)であり、融点は190℃以上(分解)であった。
【0102】
【数6】

【0103】
活性鏡像異性体(l)−18を (l)−3から開始して、同様の方法により合成した。[α]=−5.6(c=1.18,CHCl
【0104】
実施例4
(4aRS,5SR,9bRS)-2-エチル-2,3,4,4a,5,9b−へキサヒドロ-8-ヨード-7-メチル-5-(4‐カルボキシフェニル)-1H-インデノ[1,2-c]ピリジンヒドロクロリド(17)の合成
【0105】
酢酸(2mL)中の(4aRS,5SR,9bRS)‐2-エチル-2,3,4,4a,5,9b−へキサヒドロ-7‐メチル‐5- (4‐カルボキシフェニル)-1H-インデノ[1,2-c]ピリジンハイドロクロライド(250mg,0.673mmol)に酢酸及び過塩素酸の1:1混合物6mLを加え、HgO(1.35mmol)を加えた。反応混合物を室温で、HgOが溶解するまで攪拌した。酢酸(4mL)中のヨード(427mg,1.68mmol)及び6mLのCHClを滴下漏斗により反応混合物に滴下し、結果として得られた混合物を室温で夜通し攪拌し、その後、セライドにより濾過した。赤の固体を、水及びCHClで洗浄し、得られた2層の濾過物を、分液ロートにより分離した。有機層を、飽和亜硫酸水素ナトリウムで洗浄した後、(無水)硫酸ナトリウムで洗浄し、濾過した後、濃縮し、黄−茶色の固体234mgを得た、その後、ハイドロクロリドに通常の方法で変換した。
【0106】
【数7】

【0107】
実施例5
(4aRS,5SR,9bRS)‐2-エチル-8-ブロモ-7‐メチル‐2,3,4,4a,5,9b−へキサヒドロ-5-(4‐カルボキシフェニル)-1H-インデノ[1,2-c]ピリジンヒドロクロリド(19)の合成
(4aRS,5SR,9bRS)‐2-エチル-8-ヨード-7‐メチル‐2,3,4,4a,5,9b−へキサヒドロ-5- (4‐カルボキシフェニル)-1H-インデノ[1,2−c]ピリジンヒドロクロリド(200mg,0.402mmol)を20mLのTHF及び0.4mLのヘキサメチルホスホルアミドに溶解した。この溶液に、水素化ナトリウム(鉱物オイル中に60%のもの)50mgを加えた。混合液を、1時間還流し、−78℃まで冷却した。Tert−ブチルリチウム溶液(0.73mL,ペンタン中1.1M,0.804mmol)をゆっくり加え、その後、この溶液を、−78℃で20分間攪拌した。1,2−ジブロモエタン(1mL)を加え、混合物を−78℃でさらに30分間攪拌し、室温まで温めた。5%の塩酸を、溶液が酸性になるまで加え、混合物を塩化メチレンにより抽出した。この塩化メチレン溶液を塩水で洗浄後、MgSOで乾燥した。粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィーにより精製し(シリカ;塩化メチレン及びメタノール、10:1)、標題化合物を得た、30mg,収量17%,融点169.6-170.3℃。
【0108】
【数8】

【0109】
実施例6
(4aRS,5SR,9bRS)‐2-エチル-8-クロロ-7‐メチル‐2,3,4,4a,5,9b-へキサヒドロ-5-(4-カルボキシフェニル)-1H-インデノ[1,2-c]ピリジンヒドロクロリド(20)の合成
(4aRS,5SR,9bRS)-2-エチル-8-ヨード-7-メチル‐2,3,4,4a,5,9b-へキサヒドロ-5-(4-カルボキシフェニル)-1H-インデノ[1,2-c]ピリジンヒドロクロリド(250mg,0.5mmol)を25mLのTHF及び0.5mLのヘキサメチルホスホアミドに溶解した。この溶液に、水素化ナトリウム(鉱物オイル中に60%のもの)60mgを加えた。混合液を、1時間還流し、−78℃まで冷却した。Tert−ブチルリチウム溶液(ペンタン中0.91mL,1,1M,1.04mmol)をゆっくり加え、その後、この溶液を、−78℃で20分間攪拌した。2mLのTHF中のヘキサクロロエタン(2.46g,10.4mmol)溶液を加え、混合物を−78℃でさらに30分間攪拌し、次に、室温まで温めた。5%の塩酸を、溶液が酸性になるまで加え、混合物を塩化メチレンにより抽出した。この塩化メチレン溶液を塩水で洗浄後、MgSOで乾燥した。粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィーにより精製し(塩化メチレン及びメタノール、10:1)、標題化合物を得た、60mg,収量30%。
【0110】
【数9】

【0111】
実施例7
(4aRS,9bRS)‐2-エチル-1,2,3,4,4a,9b-へキサヒドロ-1H-インデノ[1,2-c]ピリジン-5-オン(7)の合成
【0112】
165gのメチル 1-エチル-1,2,5,6-テトラヒドロピリジンカルボキシレートから、類似のエチルエステルについて米国特許第5319084号に説明されているものと同様に調製された粗製メチル 1-エチル-3-(4-メチルフェニル)-4-ピリジンカルボキシレートを1Lの18%HCl水溶液に溶解し、エーテル(300mL)で抽出することにより、この合成で、副生成物として残っているビトリル(bitolyl)を取り除いた。この水溶液は、48時間に渡り還流され、減圧下においてアセトニトリルの添加の下濃縮され(アゼオトロープ)、1−エチル−1,2,5,6−テトラヒドロピリジンカルボン酸ヒドロクロリド(283g)を得、高真空、100℃において完全に乾燥した。
【0113】
この物質は、非常に吸湿性が高いため、窒素と共に貯蔵した。塩化チオニル(150mL)を、純粋な7(45g,159mmol)に5℃において加えた。その後、氷浴を取り除き、結果として生じる均一な溶液を室温で4時間に渡って攪拌した。過剰のSOClが、真空下で取り除かれ、暗く、濃く、ペースト状の塊を得た。この物質に、1,2−ジクロロエタン(250mL)を加え、溶媒30mLを取り除くことにより、残存するSOClを取り除いた。この混濁した混合液に、45分に渡って、少しづつAlCl(53g、397mmol)を加えた。温度は、水浴により約25℃に制御した。添加後、濃い、赤茶色の溶液を35-40℃において、一時間攪拌し、次に約400gの砕氷及び50mLの濃塩酸を含むビーカーに注いだ。水層を、30%NaOH(約350mL)により、氷浴による冷却下において約12のpHに塩基性化した。結果として得られた混合物を、氷浴による冷却下において、エーテル(3x400mL)によって抽出し、集められたエーテル層を、水と塩水により、連続して洗浄し、乾燥(MgSO)し、濾過した後、減圧下において濃縮をし、オレンジ−赤色のオイルを得た。このオイルを、クーゲルロール器具(0.5mmHgにおいて125−135℃)で蒸留し、21.6g(59%)のケトン7を輝黄色の固体として得た。当該物質は基準物質と同じNMR特性を持っていた。
【0114】
実施例8
(4aRS,5SR,9bRS)-2-エチル-7-メチル-5-(4-カルボメトキシフェニル)-2,3,4,4a,5,9b−へキサヒドロインデノ[1,2-c]ピリジン、及び(4aRS,5SR,9bRS)-2-エチル-7-メチル-5-(4-カルボキシフェニル)-2,3,4,4a,5,9b-へキサヒドロインデノ[1,2-c]ピリジンの鏡像異性体の合成
【0115】
鏡像異性体は、所定の溶媒中、ナトリウムD線における旋光に基づき(d)または(l)と表現される。同じ旋光符号を有する化合物が、必ずしも同じ絶対配置を有するとは限らない。
【0116】
1-エチル-4-カルボキシ-1,2,5,6‐テトラヒドロピリジンヒドロクロライド、メチル 1-エチル-1,2,5,6-テトラヒドロピリジンカルボキシレート(11)を、1.5M HCl 250mL中、4時間に渡り還流した。混合物を、加熱下、窒素気流中において、乾燥するまで濃縮し、結晶性の高い個体を得た。この固体を、メタノールより再結晶し、12のHCl塩19.6gを得た。;融点=265℃.(分解)。(元素)分析(Anal.)計算値;C14ClNO:C,50.14;H,7.36;N,7.31.実測値;C,50.23;H,7.36;N,7.28
【0117】
(l)−エノイル サルタム(1S(−)−(2,10)カンファーサルタムから得られた(l)−13))
12のハイドロクロリド(1.3g,6.79mmol)に対し、塩化チオニル(15mL)を加え、結果として生ずる混合物を、還流下で2時間に渡り加熱した。過剰のSOClを、真空下において取り除き、残余を10mLのドライトルエンとともにひき潰した後、真空中において濃縮した。ひき潰し過程は、あと2回繰り返され、黄色で粉状の固体を得た。別の容器においては、n-ブチルリチウム(15mmol,6.0mL、ヘキサン中の2.5M溶液)を1S-(−)-2,10-カンファーサルタム(3.16g,14.7mmol)のTHF溶液(30mL)に、5℃で滴下により加えた。滴下後、透明で、無色の溶液を室温にした後、さらに45分間攪拌した。サルタムアニオンの溶液を、5℃において、塩化アミノ酸ヒドロクロライドを含むフラスコに加え、添加後、オレンジ色の混合液を、室温に戻し、18時間に渡り攪拌した。反応は、飽和NHCl(約1mL)を加えることにより停止され、真空下で、茶色のタール状の残留物を得た。残留物は、水とエーテルに分配され、エーテル層は水で再度洗浄された。エーテル層は希釈したHCl溶液(約5%)でもって洗浄され、分離された。遊離したサルタム(エーテル層)を、無水エタノールからの再結晶により得た(1.2g)。生成物[(l)-13]を、酸性の水層を濃NHClでpH12に塩基性とした後、エーテルで抽出し、エーテル層の蒸発による残留物をn-ヘキサンにより再結晶化することにより、白色で、太い、針状結晶として(l)−13を、1.9g得た。;融点=120℃.,[α]21=−74.8°(c=1.0,CHCl),HNMRにおいては、鏡像(異性)体と同じ結果であった(以下の通り)。C28Sの分析結果(Anal.)、計算値;C,61.33;H,8.01;N,7.95.実測値;C,61.35;H,8.06;N,7.89
【0118】
1R(+)-(2,10)-カンファーサルタムから誘導される13の(d)-エノイル サルタム鏡像異性体
アミノ酸12(6.5g,34.1mmol)のハイドロクロリド、及び1R-(+)-2,10-カンファーサルタム(15.4g、71.4mmol)より、上記の鏡像(異性)体と同様の方法により収率86%において調製した。融点=118.5℃―119.6℃(ヘキサンより再結晶される、厚い淡黄色の葉状晶)。
【0119】
【数10】

【0120】
この物質の結晶形は、ヘキサンからの沈殿の早さ、及び精製段階における濃度に依存する。
【0121】
(l)−13より誘導される1,4付加(l)−14
-78℃におけるトルエン(200mL)中のエノイルサルタム(l)−13(5.6g,16.0mmol)溶液に、p−トリルマグネシウムブロミド(33.6mmol,エーテル中1.0M溶液、33.6mL)を、10分以上かけて加えた。−78℃においてさらに30分間攪拌した後、反応混合物を冷凍庫(−10℃)に一晩置き、その後、+5℃に温めた後、さらに2時間置いた。混合物に、飽和NHCl(200mL)を加えて反応を止めた。水層をエーテル(400mL)で抽出した後、エーテル層を、3%HCl(3x200mL)により抽出した。酸性の層を集め、濃NHOHにより、塩基性とした(pH=12)。エーテル(3x200mL)により抽出したのち、エーテル層を、塩水で洗浄後、乾燥し(MgSO)、濾過した。その後、減圧下において、濃縮し、オレンジ色の固体(7.12g)を得た。この固体をエーテル-へキサン(それぞれ1:2の混合比のもの約40mL)により再結晶した。収量は3.64gであった。二度目の操作によりさらに1.24gを得、計4.68g(66%)を得た。融点150.5−151.7℃(エーテル−へキサン系;密集して、厚い淡黄色の角柱結晶);
【0122】
【数11】

【0123】
(l)−14より誘導される鏡像異性的に純粋なケトン(d)−7
THF(40mL)中の1,4−付加体(l)−14(6.86g,15.45mmol)にLiOH・HO(6.43g,153mmol)の水溶液(40mL)を加えた。結果として生じる不均一の混合物を、穏やかな還流の下、26時間激しく攪拌した。混合物を、約+5℃まで冷却し、濃塩酸で、pH=Oまで酸性化し、温かい水浴(温度=50℃)に浸しながら、混合物の表面より、やや強い窒素ガス流に直接当てることにより、揮発性組成物の大部分を混合物より取り除いた。残りの固体を高真空下で徹底的に乾燥した。チオニルクロライド、そして後にAlClを1,2−ジクロロエタン中で用いることにより、ラセミ体(上参照)と同様の方法により、この粗原料を、ケトン(d)−7に環化した。このことにより、遊離塩基ケトン(d)−7を1.12g得た。これは、一晩放置することにより、固化した。本材料の一部分は物理学的データを得るために、次の工程より回収した後、精製した。[α]20=+95.9°(遊離塩基、c=1.2、CHCl);[α]20=+71.9°(HCl塩、c=1.1、CHCl);
【0124】
ケトン(d)-7より誘導された鏡像異性体的に純粋なオレフィン(d)−15
この物質は、ケトン(d)−7(1.12g,4.89mmol)より、ラセミ体と同様の工程(米国特許 第5319084号参照)により得た。この収量は850mg(47%)であった。[α]19=+21.2°(c=1.24、CHCl
【0125】
(l)-2-エチル-7-メチル-2,3,4,4a,5,9b-へキサヒドロ-5-(4-ブロモフェニル)-5-ヒドロキシ-1H-インデノ[1,2-c]ピリジンの合成
−78℃において、160mLのTHF中の、4−ブロモヨードベンゼン(13.8g,48.9mmol)の強烈な攪拌溶液に、n−ブチルリチウム溶液(19.6mL,ペンタン中2.5M 49mmol)を非常にゆっくりと加えた。添加後、溶液を、−78℃において10分間攪拌し、溶液は黄色で曇った色となった。さらに、40mLのTHF中の(d)−2−エチル−7−メチル-1,2,3,4,4a,5,9b−へキサヒドロインデノ[1,2−c]ピリジン−5−オン(8g,34.9mM)を加えた。その後、混合物を−78℃において、2時間に渡り攪拌した。冷却浴を除去した後、混合物を、水で反応停止した。有機層を分離し、水層を塩化メチレンにより抽出した。有機層を集め、塩水で洗浄後、MgSOで乾燥した。溶媒の留去により、粗生成物を得た。これが塩化メチレンから再結晶され、標題化合物を得た(10.8g,80%)。融点169.6−170.3℃
【0126】
【数12】

【0127】
(4aSR,5RS,9bSR)-2-エチル-7-メチル−2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(4-ブロモフェニル)-1H-インデノ[1,2−c]ピリジン(l)の(l)−鏡像異性体の合成
(l)-10-2-エチル-7-メチル-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ−5-(4-ブロモフェニル)-5-ヒドロキシ−1H−インデノ[1,2-c]ピリジン(4.5g、13mmol),及び300mLの無水塩化メチレン中の100mLトリエチルシランの溶液を、−78℃まで冷却した。トリフルオロボランガスを、溶液に10分間に渡りバブリングした。無色の溶液がオレンジに変わった。混合物を室温まで温め、10gの炭酸カリウムを加え、水も続いて加えた。有機層を分離し、水層を塩化メチレンにより抽出した。有機層を集め、塩水で洗浄後、MgSOにより乾燥した。溶媒を留去し、粗生成物を得た。
【0128】
粗生成物を40mLのn−ブタノールに溶解した。水酸化カリウム(9g)を加え、混合物を攪拌しながら還流下において加熱した。20時間の還流の後、混合物を室温まで冷却し、氷に注いだ。混合物を、塩化メチレンにより抽出し、塩化メチレン水溶液を、塩水で洗浄後、MgSOにより乾燥した。溶液を蒸発させ、粗生成物を、ジエチルエーテルと18%塩酸溶液との間で分配した。それぞれの層が分離され、水層を、ジエチルエーテルで再度洗浄した。水層を0℃まで冷やし、50%水酸化ナトリウム溶液でpH>14にまで塩基性化した。混合物を、塩化メチレンで3度抽出した。有機層を塩水で洗浄後、MgSOにより乾燥した。溶媒の留去により、粗生成物を得た。さらに、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル;塩化メチレン及びメタノール、100:3)により精製後、標題化合物(l)−10を得た。3.2g,収量67%(2段階に渡る収率)。ハイドロクロリドが、通常の方法により生成した。融点240℃(分解)
【0129】
【数13】

【0130】
(4aRS,5SR,9bRS)-2-エチル−2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ−7−メチル−5−(4−カルボキシフェニル)−1H−インデノ[1,2−c]ピリジンヒドロクロリド[(l)-2]の(l)−鏡像異性体の合成
5mLのTHF中の100mg(0.27mmol)の(l)-10の溶液を、−78℃に冷却した。この溶液に0.54mLのn−ブチルリチウム溶液(ペンタン中2.5M 1.35mmol)を加えた。添加後、溶液を、−78℃において、30分間攪拌し、二酸化炭素ガスを、溶液に針を通じて10分間泡状に吹き込んだ。溶液を、−78℃において、さらに10分間攪拌し、室温へと温めた。THFは蒸発され、残留物を18%の塩酸により酸性化した。次に、混合物を塩化メチレンにより抽出した。塩化メチレン溶液は、塩水で洗浄後、MgSOにより乾燥した。乾燥試薬を濾過した後、溶液は濃縮され、粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;塩化メチレン及びメタノール、10:1から1:1)により精製し、72mgの(−)−2を収量71%で得た。 [α]20=−15.5°(c=1.24、MeOH)
【0131】
(4aRS,5SR,9bRS)-2-エチル-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ−7−メチル−5−(4−カルボキメトキシフェニル)−1H−インデノ[1,2−c]ピリジンヒドロクロリド[(d)-3]の(d)−鏡像異性体の合成
1mLのメタノール中の(l)−2の溶液(20mg)を、−10℃に冷却した(氷―アセトン)。過剰の塩化チオニルを加え、その後、室温へと温め、一晩攪拌した。過剰の塩化チオニルと溶媒を窒素と共に飛ばし、残留物を真空下において乾燥した。粗生成物をHPLC(スミキラル,QA−4900,4mm x 25cm;溶媒:53.8% 1,2−ジクロロエタン,44%ヘキサン,2.2%エタノール,及び0.1%TFA;流量:0.8mL/min;λ=254nm)により分析した結果、(d)−3が、>97%のeeであることを示した。
【0132】
(4aRS,5SR,9bRS)-2エチル-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-7-メチル-5-(4-カルボキシフェニル)-1H-インデノ[1,2-c]ピリジンヒドロクロリド[(d)-2]の(d)−鏡像異性体、及び
(4aRS,5SR,9bRS)-2-エチル-2,3,4,4a,5,9b-ヘキサヒドロ-7-メチル-5-(4-カルボキシメトキシフェニル)-1H−インデノ[1,2-c]ピリジンヒドロクロリド[(l)-3]の(l)-鏡像異性体、の合成
これらの二つの化合物を、上述のエノイルサルタム(d)-13を出発物質として、逆(ir)鏡像異性体の合成に用いられる連続する工程を実施することにより合成することができる。これらの化合物の特性は、既に記述されている。 Cookら、J.Med. Chem.,38:753-763(1995)参照
【0133】
明らかに、本発明には、上記教示に基づき様々な変更及びバリエーションが可能である。よって、本発明は、添付のクレームの範囲において、ここに特に記述したのと異なった態様において実施されてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) 殺菌剤としての有効量の式I(a):
【化1】

[式中、
R1は、水素、直鎖または分岐のあるC1-6アルキル、またはC3-8のシクロアルキルであり;
R2は、水素、直鎖または分岐のあるC1-6アルキルであり;
R3及びR5は、それぞれ、独立して、水素、SO3H、直鎖または分岐のあるC1-6アルキル、CH2OH、CH2OMe、直鎖または分岐のあるC1-6アルコキシ、カルボキシル(COOH)、哺乳動物の生理的条件下においてカルボキシル基に変換されうる非エステル基、カルボン酸エステル(COOR;ここで、RはC1-10アルキル、C6-10アリール、C7-10アラルキルである)、ヒドロキシメチルエステル(CH2OC(O)-R;ここでRは上述通りである)、CONH2、CONHR、CONR2、CH2OCONHR、CN、CH=NHNHCONH2、及びハロゲンであり;
R4は水素、ハロゲン、R3Si、またはCORである]
の化合物と、
(ii) 許容し得る担体と
を含む殺菌組成物。
【請求項2】
前記化合物が、下記式I(b):
【化2】

の化合物である、請求項1に記載の殺菌組成物。
【請求項3】
R1は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、n-ペンチル、iso-ペンチル、n-ヘキシル、iso-ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルからなる群から選ばれ;
R2は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、n-ペンチル、iso-ペンチル、n-ヘキシル、及びiso-ヘキシルからなる群から選ばれ;
R3は、4位にあり、水素、ヒドロキシメチル(CH2OH)、ホルミル(CHO)、カルボキシル(COOH)、カルボン酸エステル(COOR;ここでRはC1-10アルキル、C6-10アリール、C7-10アラルキルである)、ヒドロキシメチルエステル(CH2OC(O)-R;ここでRは上述の通りである)、CONH2、CONHR、CONR2、CH2OCONHR、CN、CH=NHNHCONH2、及びハロゲンからなる群から選ばれ;
R5は、水素であり;
R4は、水素、及びハロゲンからなる群から選ばれる、
請求項1に記載の殺菌組成物。
【請求項4】
R1は、メチル、エチル、n-プロピル、またはiso-プロピルであり;
R2は、メチル、エチル、n-プロピル、またはiso-プロピルであり;
R3は、4-COOHまたは4-COOR(ここで、Rは上記に規定した通りである)であり;
R5は、水素であり;
R4は、ハロゲンである、
請求項3に記載の殺菌組成物。
【請求項5】
局所適用に適した、請求項1に記載の殺菌組成物。
【請求項6】
内的適用に適した、請求項1に記載の殺菌組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−202671(P2010−202671A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141878(P2010−141878)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【分割の表示】特願2006−536504(P2006−536504)の分割
【原出願日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【出願人】(500240896)リサーチ・トライアングル・インスティチュート (36)
【Fターム(参考)】