説明

殺胞子性の手指消毒用ローション

安定な殺胞子性の手指消毒用製剤について記載している。この製剤は、過酢酸と一以上の短鎖アルコールとを含むローションである。このローションは長期にわたる活性PAAの存在を示し、約10分未満の接触時間で、より詳しくは約2分間の接触時間で、細菌を全死滅させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条の下、2008年12月18日に出願された「殺胞子性の手指消毒剤」と題する米国特許仮出願第61/138,826号の恩典を主張する。この仮出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は手指消毒剤に関する。より詳細には本発明は、長期安定性を有するペルオキシカルボン酸を含んだ安定な手指消毒用エマルジョンに関する。
【背景技術】
【0003】
現在、様々な手指消毒剤が市場で入手可能である。手指消毒剤は、手洗いが不可能または不都合である場合に手洗いの代わりに使用することができる。現在販売されている製品には、何らかの保湿剤を場合によって含んだアルコールジェル、クロルヘキシジンを含んだローションもしくはジェル、第4級アンモニウム化合物を含んだローションもしくはジェル、トリクロサンなどの抗菌剤を含んだローションもしくはジェルという4つのタイプがある。現在販売されている手指消毒剤の1つの欠点は、種々の有害な微生物因子に対する有効性の範囲が限られていることである。
【0004】
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)を始めとする胞子形成細菌は、医療の場にいくつかの深刻な問題を持ち込んでいる。これらの生物は胞子殻を形成することが可能であり、これにより、アルコールジェル、グルコン酸クロルヘキシジンスクラブ、第4級アンモニウムスクラブおよびローション、ならびにトリクロサンローションおよびジェルのような典型的な手指殺菌剤を用いた処置を免れ得る。こうして生き延びた後には競合相手がなく、これらの生物は大量に増殖する。従来の手洗いによって医療従事者(HCW)の手指から少量の汚染物を除去することはできるが、従来の石鹸と水の手法による手指衛生基準を順守することには矛盾があることを多くの研究が示している。医療従事者には重大な時間的制約があり、携帯可能で便利な消毒手段を必要としている。殺胞子剤と化粧品成分を組み合わせることにより、植物性の胞子形成生物に対して有効である一方で皮膚に刺激のない殺胞子性の手指トリートメントを作り出すような処方の開発は、医療界にとって重要なものである。
【0005】
概要
いくつかの実施形態によれば、本発明は、過酸化水素と酢酸とバリア成分と約1重量%未満の香料とを含有した安定エマルジョンからなる殺胞子性の手指消毒用組成物であり、それは10分未満の接触時間で胞子形成細菌を全死滅(total kill)させることができる。組成物は、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)およびクロストリジウム・ディフィシルに対し有効である。さらに組成物は、黄色ブドウ球菌(Staphyloccoccus aureus)などの非胞子形成細菌に対して有効である。いくつかの実施形態では、組成物は、主な活性成分が著しく分解することなく、少なくとも12ヶ月の間にわたって安定であるか貯蔵が可能である。
【0006】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、過酸化水素と酢酸と一以上の短鎖アルコールとを含有した安定エマルジョンからなる殺胞子性の手指消毒用組成物である。一実施形態では、アルコールはエタノールである。組成物は、約2分間の接触時間で細菌を全死滅させることができる。一実施形態では、安定エマルジョンはローションである。
【0007】
ローションとして製剤化した場合、殺胞子性の手指消毒用組成物は、過酸化水素が酢酸と反応した場合に形成される過酢酸(PAA)が長時間存在することを示し、かなりの量の活性PAAが長期間にわたって回収される。例えば、PAAは長期間にわたり細菌を死滅させるのに十分な量で存在し続け、長期間の放出、長期間の持続効果をもたらす。ローション中のアルコールの存在は、ローションの殺菌活性を増大させることができ、その量が多いほど、細菌の完全対数的な死滅(total log kill)(最大死滅)が得られる時間を減少することができる。
【0008】
複数の実施形態を開示するが、当業者にとっては下記の詳細な説明から本発明のさらに他の実施形態が、明らかになるであろう。下記の詳細な説明では、本発明の例示的な実施形態を示して説明する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書の中でPAAとも呼ばれる過酢酸は、その高い酸化能力のために理想的な抗菌剤である。過酢酸は、微生物に対して広く有効であり、過酸化水素を分解する酵素であるカタラーゼおよびペルオキシダーゼにより不活性化されることがない。過酢酸は、広い温度範囲(0〜40℃)と広いpH範囲(3.0〜7.5)にわたり、クリーンインプレイス(clean-in-place、CIP)の過程において、硬水条件で使用することができ、タンパク質残渣により影響されない。
【0010】
過酢酸(PAA)は、ヒドロキシルラジカル(OH)を介して酸化およびその後の細胞膜の破壊により微生物を死滅させる。ラジカルの半減期よりも拡散が遅いため、近接する酸化可能な化合物とも反応する。過酢酸は事実上、微生物に関連する全ての種類の高分子、例えば、炭水化物、核酸変異体、脂質、およびアミノ酸を損傷する可能性がある。このことが最終的に、細胞溶解および真の微生物死に至らしめる。
【0011】
安定なエマルジョンを形成する保湿性の化合物と抗刺激性の化合物の理想的なバランスを見出すことで感触および手触りの心地よい特性が得られる一方、殺胞子作用をもたらすのに有効な濃度の過酢酸を維持することは調合する者に難題をもたらしている。多くの一般的なローションの成分は、過酢酸の分解を引き起こす可能性があり、これにより殺菌剤は濃度低下して有効性を喪失してしまう。さらに、多くの一般的なローションの成分は、例えば酢酸、過酢酸および過酸化水素の平衡により作り出される酸性の酸化環境において安定なエマルジョンを形成しない。強力で特徴的な化合物を心地のよい香料でマスクすることもまた難題である。
【0012】
種々の実施形態によれば、本発明は、活性成分の長期安定性を有する過酢酸(PAA)を含んだ安定な組成物である。組成物は、ジェル、石鹸(液体または固体)、ローション、クリーム、軟膏または他の手指トリートメントの形態で提供することができる。他の実施形態では、組成物は、液体状の表面クレンジング剤として提供することができる。組成物は、スキンコンディショニング剤、界面活性剤、安定化剤およびそれらの組み合わせを始めとする追加の添加剤を含むことができるが、それらに限定されない。さらに組成物は、過酢酸からの匂いをマスクするまたは排除するために一以上の香料を含むことができる。一実施形態では、組成物はジェルの形態で提供される。別の実施形態では、組成物はローションの形態で提供される。
【0013】
いくつかの実施形態では、組成物は一以上のカルボン酸と一以上の過酸化物とを含む。組成物中に含まれるカルボン酸は過酸化物と反応してペルオキシカルボン酸を生成する。カルボン酸は、十分な溶解性を有する任意のカルボン酸であれば差し支えない。例示的なカルボン酸としては、アルキル部分の鎖が任意で置換される最大6個の炭素原子を含んだ低分子量の脂肪族カルボン酸が挙げられる。別の例示的なカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、ギ酸、酪酸、コハク酸、ジコハク酸、アジピン酸、ジアジピン酸、グルタル酸、酒石酸、クエン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、サリチル酸、リンゴ酸、乳酸およびマンデル酸が挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、アルキル部分の鎖は任意でハロ、ニトロ、アミド、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホまたはホスホノ基から選ばれる一以上の置換基で置換され得る。アルキル基が置換された例示的なカルボン酸としては、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸が挙げられる。一実施形態では、カルボン酸は酢酸である。
【0014】
以上で述べたように、組成物中に含まれる過酸化物はカルボン酸と反応して過酢酸を生成する。例示的な過酸化物としては、過酸化ベンゾイルおよび過酸化アルキルベンゾイルを始めとする有機過酸化物が挙げられる。一実施形態では、過酸化物は過酸化水素である。
【0015】
いくつかの実施形態では、組成物は一以上のスキンコンディショニング剤を含む。スキンコンディショニング剤としては、例えば、保湿剤およびバリアが挙げられる。保湿剤すなわち湿潤剤は、水分を皮膚の外層に引き付けることにより、湿った柔軟な状態を維持する添加剤である。バリアは、皮膚の中にすでに存在する水分が失われないように阻止するものである。例示的なスキンコンディショニング剤としては、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、アロエベラ、ラノリンまたはラノリン誘導体、ペトロラタム、スクアレン、セトステアリルアルコール、蜜蝋、トリカプリリン、ヤシ油脂肪酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロリル、パルミチン酸イソプロリル、セチルアルコール、ステアリルアルコール、鉱物油、シアバター、サフラワー油、ならびに当業者に知られている他の保湿剤およびバリアが挙げられるが、それらに限定されない。他のスキンコンディショニング剤、例えばビタミン、抗酸化剤および他のスキンヘルス化合物もまた、組成物中に含有させることができる。さらに、スキントリートメントおよびまたは抗刺激化合物、例えばアラントイン、トリオクタノイン、ナイアシンアミド、メチルスルホンおよびラクトースもまた、製剤中に含有させることができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、組成物は一以上の界面活性剤を含むことができる。界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、またはカチオン性界面活性剤であれば差し支えない。いくつかの実施形態では、複数の界面活性剤の組み合わせが使用され得る。一実施形態では、界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。一実施形態では、界面活性剤はアニオン性界面活性剤である。例示的な界面活性剤としては、ノニルフェノールエトキシレート、アルコールエトキシレート、アルコールアルキレート、ソルビタンエステルエトキシレート、エトキシル化アルキル−ポリグルコシド、アルキルエーテルカルボキシレート、脂肪アルコール、セテス−20、オクチルドデセス−20、オレス−35、グリセレス−18、ポリソルベート20、PEG−200ヒマシ油、PEG−80ヤシ油脂肪酸グリセラル(ヘトキシドGC−80)、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、およびエチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体が挙げられるが、それらに限定されない。当業者に知られている他の界面活性剤もまた使用され得る。一実施形態では、界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。オレス−25、グリセレス−18およびポリソルベート−20は本発明の種々の実施形態において使用するのに適した例示的な非イオン性界面活性剤である。
【0017】
いくつかの実施形態では、組成物は一以上の増粘剤を含むことができる。例示的な増粘剤としては、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、グアーガム、粘土、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アニオン性カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシメチルセルロース、およびカルボマー940または980が挙げられるが、それらに限定されない。当業者に知られている他の増粘剤もまた使用され得る。いくつかの場合では、乳化ろうを使用して組成物の粘度を高くしてもよく、追加の増粘剤は必要ない。
【0018】
いくつかの実施形態では、組成物中のPAAの匂いを隠すために一以上の香料を使用することができる。選ばれる香料は、PAAと適合性を有するべきである。PAAと共に使用するのに適した例示的な香料としては、クミンアルデヒド、桂皮アルデヒド、チモール、シネオール、およびピペロナールが挙げられるが、それらに限定されない。ミシガン州リボニアのWellington Fragrance社から入手可能ないくつかの香料もまた、PAAと共に使用するのに適していることが分かっている。これらのWellington Fragrance社の香料としては、レインフォレスト(Rain Forest)、ブラックベリーセージティー(Blackberry Sage Tea)、チャイティー(Chai Tea)、デューベリー(Dewberry)、ハナミズキ(Dogwood)、プルメリア(Plumeria)、トランキリティ(Tranquility)、キュウカンバーメロン(Cucumber Melon)、ブラックベリー(Blackberry)、メルロー(Merlot)、ネロリシダー(Neroli-Cedar)、セージ&カモミール(Sage & Chamomile)、およびフレッシュコットン(Fresh Cotton)が挙げられる。PAAと共に使用するのに適している任意の香料が組成物に含有され得る。
【0019】
種々の実施形態に係る上記の様々な手指消毒用組成物は、化粧品の処方において典型的に見られる可溶化剤、乳化剤、軟化薬および当業者に知られている他の成分を始めとする追加の成分を任意の数で含むことができる。さらに、いくつかの成分は二つの機能を果たすことができること、例えば、いくつかの成分は界面活性剤および/または乳化剤の両方として機能することができることが一般に知られている。場合によっては、いくつかの成分は、乳化剤、界面活性剤および/または可溶化剤として機能することができる。PEG−80ヤシ油脂肪酸グリセラル(ヘトキシドGC−80)は、乳化剤、界面活性剤および/または可溶化剤として機能することができるそのような成分の一例である。
【0020】
一実施形態では、手指消毒用組成物は、ローションとして製剤化される。手指消毒用組成物をローションとして製剤化した場合、活性PAAは、例えば皮膚モデルなどの表面に適用した後、長期間にわたりって細菌因子に対し有効な量で存在し続ける。概して、約2分〜約20分の範囲の期間にわたり回収される活性PAAの割合は、約50%〜約70%の範囲である。一実施形態では、約2分間の総接触時間の後に回収される活性PAAの割合は、約70%以上である。別の実施形態では、約5分間の接触時間の後に回収される活性PAAの割合は、約60%以上である。さらに別の実施形態では、約10分間の接触時間の後に回収される活性PAAの割合は、約55%以上である。さらに別の実施形態では、20分後に回収される活性PAAの割合は、約50%以上である。
【0021】
いくつかの実施形態では、手指消毒用組成物は一以上の短鎖アルコールを含むことができる。一実施形態では、組成物は、1〜6個の炭素を有する少なくとも1つの直鎖または分枝鎖のアルコールを含む。別の実施形態では、組成物は、1〜3個の炭素を有する短鎖アルコールを含む。さらに別の実施形態では、組成物はエタノールを含む。さらに他の実施形態では、組成物は、6〜18個の炭素を有する比較的長鎖のアルコールを含むことができる。長鎖アルコールは直鎖または分枝であっても差し支えない。
【0022】
一実施形態では、組成物に含まれるアルコールの量は、組成物の総重量の約10重量%〜60重量%の範囲とすることができる。別の実施形態では、組成物に含まれるアルコールの量は、組成物の総重量の約30重量%〜約60重量%の範囲とすることができる。さらに別の実施形態では、組成物に含まれるアルコールの量は、約30重量%〜約40重量%の範囲である。さらに別の実施形態では、組成物に含まれるアルコールの量は、約31重量%である。さらに別の実施形態では、組成物に含まれるアルコールの量は、約10重量%〜約30重量%の範囲である。
【0023】
組成物中にアルコール、例えばエタノールが存在することにより、組成物中のPAAの殺菌活性のレベルが増大することが示されている。例えば、一実施形態では、種々の実施形態に係る上記したようなアルコールを含んだ手指消毒用組成物により、約10分以下で細菌の完全対数的な減少(total log reduction)が得られる。別の実施形態では、上記したようなアルコールを含んだ手指消毒用組成物により、約5分以下の接触時間で細菌の完全対数的な減少が得られる。さらに別の実施形態では、上記で記載したようなアルコールを含んだ手指消毒用組成物により、約2分間の接触時間で細菌の完全対数な減少が得られる。
【0024】
実施例
PAAを含んだ安定な手指消毒用エマルジョンの例を調製した。それらの配合を以下の表I〜表VIに示す。全ての割合は重量%(wt/wt%)として表す。
【0025】
【表1】


安定性
表VIに示した試料6は、最初に、可溶化剤PF、ヘスト(Hest)G−18−O、ミリスチン酸イソプロリル、ヘトキソール(Hetoxol)OA−35、蜜蝋およびセトステアリルアルコールを、全ての固体が完全に溶けて混合物が外見上均質になるまで一緒に混合することにより調製した。過酸化水素、氷酢酸、脱イオン水および香料の別の混合物を調製し、最初の混合物に撹拌しながら徐々に添加し、安定なエマルジョンを形成した。同様の方法を使用して他の試料を調製した。
【0026】
上記した表I〜表VIの製剤の各々は、分離相を形成しない安定なエマルジョンを形成していた。いくつかの実施形態では、製剤は、最大で約12ヶ月の間にわたって安定であることが観察された。他の実施形態では、製剤は、12ヶ月を超える期間にわたり安定性を示した。さらに他の実施形態では、製剤は約12ヶ月〜約25ヶ月の期間にわたり安定性を示した。各製剤の安定性は評価し続けている。
【0027】
さらに、試料1,2,4および5について、特定の時間間隔で製剤中に存在する過酢酸(PAA)の量を評価した。別の時間間隔で各製剤中のPAAの量(ppm)を滴定によって決定した。これらの結果は、最大で25ヶ月の期間後でさえも十分な量のPAAが各試料中に存在して細菌を全死滅させることを示している。100ppm以上のPAAは、10分未満の接触時間で黄色ブドウ球菌を含むほとんどの植物細菌に有効であると見込まれる。約500ppm以上のPAAは、20分以内の接触時間で殺胞子性があると見込まれる。結果を以下の表VII〜表IXにまとめて示す。
【0028】
【表2】

微生物試験
製剤4および製剤5(表IVおよび表V)について、懸濁時間−死滅アッセイ法により、種々の生物に対する有効性を評価した。製剤4は、クロストリジウム・ディフィシルに対する評価をした。製剤5は、枯草菌(Bacillus subtilis)胞子、黄色ブドウ球菌、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis、VRE)に対する評価をし、Purell(登録商標)(市販のアルコールジェル)および塩化ベンズアルコニウムハンドウォッシュ(Walgreens(登録商標)泡立ち手指消毒剤)の有効性と比較した。
【0029】
計算
元の溶液からの細菌培養個体数の対数減少を、以下の数式に従い計算した:
試験データCFU/mL:(観察された平均コロニー数/使用した平板希釈)×(希釈係数)×(中和溶液の体積)/(培養体積)
減少百分率:[1−(試験生存体/試験群対照)]×100
Log10減少:Log10(試験群対照)−Log10(試験生存体)
結果
【0030】
【表3】

考察
試料4および試料5はどちらも、細菌に対する臨床的有効性を示した。試料5は3分間の接触時間の後に2.5log減少、5分間の接触時間に後にクロストリジウム・ディフィシルが全死滅することを示した。試料5は、ほんの30秒間の接触後に黄色ブドウ球菌、緑膿菌、MRSA、およびVREが全死滅することを示した。さらに、製剤5は2分間の接触時間の後に枯草菌胞子の3.7log減少、5分間の接触時間の後に4.4log減少、10分間の接触時間の後に全死滅することを示した。安定なレベルのPAAを示す他の全ての処方が微生物有効性において同程度であることが予測される。
【0031】
比較研究
マイコバクテリウム・テラエ(Mycobacterium terrae)に対する試料5の有効性もまた、懸濁時間−死滅アッセイ法を用いて評価し、50%の試料5と50%のピュレル(Purell、登録商標)とを含んだ試料の有効性およびピュレル(登録商標)のみを含んだ試料と比較した。各試料中に存在する各活性成分の量を以下の表XVIに示す。微生物試験結果の有効性の結果を表XVIIに示す。
【0032】
【表4】

考察
試料5は、5分後にマイコバクテリウム・テラエが3.1log減少することおよび10分間の接触時間の後に全死滅することを示した。同量のローションおよびピュレル(登録商標)を含んだ試料7では、2分間の接触時間の後に細菌の全死滅が得られた。ピュレル(登録商標)のみを含んだ試料8でもまた、2分間の接触時間の後に細菌の全死滅が得られた。このデータから、試料中のアルコールの存在はローション(試料5)中のPAAの殺菌有効性を増大させ、細菌が全死滅するのに要する時間を減少させることが示唆される。さらにこのデータからは、アルコールを含んだローション(試料5)は、アルコールジェルと少なくとも同じくらい効果的であり得ることが示唆される。
【0033】
PAAの回収
試料6(表VI)もまた、VITRO−SKIN(アイエムエス(IMS)インコーポレイテッド社、メイン州ポートランド)を用いてPAAの回収率について評価し、4%の過酸化水素と2%の酢酸と94%の脱イオン水とを含んだPAA水溶液と比較した。VITRO−SKINは、ヒト皮膚の表面特性を事実上模倣した試験基材であって、最適化されたタンパク質と脂質成分の両方を含み、ヒト皮膚に類似した組織分布、pH、臨界表面張力およびイオン強度を有するように設計されている。各試料について、異なる接触時間で回収されるPAAの割合を評価した。時間ゼロにおいてVITRO−SKINに試験試料を添加し、続いて直ちに滴定分析を実施する。試料は最初、VITRO−SKINなしで分析して平均値を計算した。VITRO−SKINを用いた各試験ごとに、VITRO−SKINを含んだ容器内に試験物質を添加し、その材料の重量を記録した。曝露の時間の後に、水および硫酸を容器に添加し、VITRO−SKINの存在下でPAAについて材料を滴定した。添加重量から計算した値(濃度)を溶液(VITRO−SKINなし)の平均値で除し、回収率を求めた。回収率は3つの試験を平均した。様々な接触時間での各試料の平均回収率を以下の表XVIIIで報告する。
【0034】
【表5】

表XVIIIに示すデータから明らかなように、試料6中に存在するPAAの量は水溶液中の場合に比べてより多くの量でかつより長い期間にわたり存在する。これにより、PAA組成物は、ローションとして製剤化した場合に病原体との接触時間が長いために、より長期に持続する殺胞子効果および/または殺菌効果を有し得ることが示唆される。
【0035】
不安定な製剤
いくつかの初期の組成物は、種々の増粘剤および保湿剤と混合された濃PAA殺菌剤溶液(レナリン)を含んだ。3つの初期の製剤である試料7〜試料9を以下の表XIXにおいて説明する。
【0036】
【表6】

試料7〜試料9は安定なエマルジョンを形成しなかった。各試料は直ちに分離を生じた。
【0037】
92体積%の市販のハンドローション(ターゲット(Target、登録商標)保湿ハンド&ボディローション)、酢酸、過酸化水素(50%水)、およびいくつかの例ではレナリンを含んだ別の試料(試料10〜試料15)を調製し、それらの安定性について評価した。各試料の組成を以下の表XXに示す。試料10〜試料15はそれぞれ、調製から1週間以内に分離を生じた。さらに、試料14および試料15は、3日の間にPAAの約50%が分解することを示した。
【0038】
【表7】

次に、キサンタンガムを含んだ試料16を調製した。試料16の組成を以下の表XXIに示す。試料16は滑らかなジェルを形成せず、ゴム状の粒子の塊を含んでおり、魅力的な外観をしていなかった。さらに、試料中のPAAの発現も不十分であった。
【0039】
【表8】

いくつかのエマルジョンとして試料17〜20もまた試みた。各エマルジョン試料の組成を以下の表XXIIに示す。試料17は24時間未満の間に分離相に分離した。試料19は調製後まもなく分離を生じた。試料20は調製後3日以内に分離を生じた。試料18はエマルジョンを形成し、数週間の期間の間に徐々に分離した。ただし、試料18を振り混ぜるかあるいは別の方法で混合すると、半安定の懸濁液を形成することができる。
【0040】
【表9】

スクアレンおよびD−ソルビトールを含んだ別のエマルジョンである試料21および試料22を調製した。試料21および試料22を以下の表XXIIIにまとめて示す。試料21は最初いくらかの安定性を示した。しかしながら、試料21は約1ヶ月後に分離を生じた。試料22は1週間以内に分離を生じた。
【0041】
【表10】

3つの追加の試料として、メチルスルホンを抗刺激剤として含んだ試料23〜試料25を調製して評価した。試料23〜試料25を以下の表XXIVにまとめて示す。なお、試料23〜試料25は1ヶ月後でさえも500ppmを超える量のPPAを生じさせることができないようであった。このことから、各試料製剤中のいくつかの成分がPAAの形成を阻害したか、あるいは試料中でPAAの分解を引き起こしたことが示唆される。
【0042】
【表11】

ヘトキサメート6000DB(グローバルセブン社(Global Seven)、ニュージャージー州フランクリン)として知られているゲル化化合物を用いて別のジェル製剤を調製した。いずれのジェルも、浮遊沈殿物を含んだ層を形成したので安定ではなかった。溶液を激しく振り混ぜることにより懸濁液を形成することができ、その後に各サンプリングを実施した。しかしながら、懸濁液は1時間か2時間しか持続せず、最終的には浮遊沈殿物を含んだ層が形成された。
【0043】
多くの香料をPAA溶液と共に試験し、化学的適合性のスクリーニングをした。PAAの長期安定性に影響しない任意の香料を組成物に含有させることができる。カルボン(carvone)、酢酸ネリル、cis−3−ヘキセン−l−オール、d−リモネン、酢酸シトロネリルは、比較的短い時間(3〜5日以内)でPAAを分解することが分かり、したがって本発明の種々の実施形態に係る製剤において使用するのに適していない。さらに、試料中のPAAから生じる酢に似た匂いと“ブラックベリーセージティー”香料との組み合わせは、ローション製剤の試料を試すことに同意してくれたボランティアにとって魅力的なものではなかった。
【0044】
実施形態
実施形態1は、カルボン酸とペルオキシカルボン酸と過酸化物とバリア成分と香料とを含有した安定エマルジョンからなる局所用ローションであって、ローションは異なる相に分離せず、またローションは、約10分未満の接触時間で胞子形成細菌を全死滅させる。
【0045】
実施形態1に係るローションにおいて、バリア成分は、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、アロエベラ、ラノリンまたはラノリン誘導体、ペトロラタム、セトステアリルアルコール、蜜蝋、トリカプリリン、ヤシ油脂肪酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロリル、または鉱物油から選ばれる一以上の成分である。
【0046】
実施形態1に係るローションにおいて、バリア成分は鉱物油または蜜蝋を含む。
実施形態1に係るローションにおいて、カルボン酸は酢酸である。
実施形態1に係るローションにおいて、カルボン酸は、酢酸、プロピオン酸、ギ酸、酪酸、コハク酸、ジコハク酸、アジピン酸、ジアジピン酸、グルタル酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、サリチル酸およびマンデル酸からなる群より選ばれ、アルキル部分の鎖は任意でハロ、ニトロ、アミド、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホまたはホスホノ基から選ばれる一以上の置換基で置換されている。
【0047】
実施形態1に係るローションにおいて、ローションは、ローションの総重量の約1%〜約5%の範囲の量の酢酸を含む。
実施形態1に係るローションにおいて、ローションは、ローションの総重量の約1重量%〜約3重量%の範囲の量の酢酸を含む。
【0048】
実施形態1に係るローションにおいて、ローションは、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、および過酸化アルキルベンゾイルから選ばれる一以上の過酸化物を含む。
実施形態1に係るローションにおいて、過酸化物は過酸化水素である。
【0049】
実施形態1に係るローションにおいて、ローションは、ローションの総重量の約3重量%〜約6重量%の範囲の量の過酸化水素を含む。
実施形態1に係るローションにおいて、ローションは、ローションの総重量の約3.5重量%〜約4.5重量%の範囲の量の過酸化水素を含む。
【0050】
実施形態1に係るローションにおいて、ローションは、アロエベラ以外の保湿成分をさらに含む。
実施形態1に係るローションにおいて、胞子形成細菌はクロストリジウム・ディフィシルまたは枯草菌を含む。
【0051】
実施形態1に係るローションにおいて、ローションは、少なくとも12ヶ月の間にわたって異なる相に分離しない。
実施形態1に係るローションにおいて、ローションは、約30秒未満で非胞子形成細菌を全死滅させる。
【0052】
実施形態1に係るローションにおいて、ローションは、約30秒未満で黄色ブドウ球菌を全死滅させる。
実施形態1に係るローションにおいて、ローション中の香料の量はローションの総重量の約1重量%未満である。
【0053】
実施形態1に係るローションにおいて、香料は、クミンアルデヒド、桂皮アルデヒド、シネオール、ピペロナールまたはチモールから選ばれる一以上の香料である。
実施形態1に係るローションにおいて、香料は、レインフォレスト、ブラックベリーセージティー、チャイティー、デューベリー、ハナミズキ、プルメリア、トランキリティ、キュウカンバーメロン、ブラックベリー、メルロー、ネロリシダー、セージ&カモミール、またはフレッシュコットンから選ばれる一以上の香料である。
【0054】
実施形態1に係るローションにおいて、ローションはアニオン性界面活性剤をさらに含む。
実施形態1に係るローションにおいて、ローションは非イオン性界面活性剤をさらに含む。
【0055】
実施形態1に係るローションにおいて、ローションは、オレス−35、グリセレス−18、ポリソルベート−20からなる群より選ばれる一以上の非イオン性界面活性剤をさらに含む。
【0056】
実施形態1に係るローションにおいて、ローションは、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、グアーガム、粘土、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アニオン性カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシメチルセルロース、およびカルボマー940または980からなる群より選ばれる増粘剤をさらに含む。
【0057】
実施形態1に係るローションにおいて、ローションは、約4分間の接触時間で胞子形成細菌を1log減少させる。
実施形態1に係るローションにおいて、ローションは、約6分間の接触時間で胞子形成細菌を2log減少させる。
【0058】
実施形態1に係るローションにおいて、ローションは、約5分間の接触時間で胞子形成細菌を全死滅させる。
実施形態1に係るローションにおいて、ローションは、約10分未満の接触時間でマイコバクテリアを全死滅させる。
【0059】
実施形態1に係るローションにおいて、ローションは、約30秒未満の接触時間で植物細菌を全死滅させる。
実施形態1に係るローションにおいて、ローションは、約10分未満の接触時間で真菌を全死滅させる。
【0060】
実施形態1に係るローションにおいて、ローションは、一以上の直鎖または分枝の短鎖アルコールをさらに含む。
実施形態1に係るローションにおいて、ローションはエタノールをさらに含む。
【0061】
実施形態1に係るローションにおいて、ローションと接触した表面から回収されるペルオキシカルボン酸の量は、20分間の接触時間の後で少なくとも50%である。
実施形態1に係るローションでは、ローションと接触した表面から回収されるペルオキシカルボン酸の量は、3分間の接触時間の後で約70%を超える。
【0062】
実施形態2は、過酸化水素と酢酸と過酢酸とバリア成分と香料とを含有した安定エマルジョンからなる殺胞子性の手指消毒用組成物であって、この組成物は10分未満の接触時間で胞子形成細菌を全死滅させ、異なる相に分離しない。
【0063】
実施形態2に係る組成物において、組成物は、組成物の総重量の約1重量%未満の量の香料を含む。
実施形態2に係る組成物において、バリア成分は鉱物油または蜜蝋を含む。
【0064】
実施形態2に係る組成物において、バリア成分は、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、アロエベラ、ラノリンまたはラノリン誘導体、ペトロラタム、セトステアリルアルコール、蜜蝋、トリカプリリン、ヤシ油脂肪酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロリル、または鉱物油から選ばれる一以上の成分を含む。
【0065】
実施形態2に係る組成物において、組成物は、組成物の総重量の約3重量%〜約6重量%の範囲の量の過酸化水素を含む。
実施形態2に係る組成物において、組成物は、組成物の総重量の約3.5重量%〜約4.5重量%の範囲の量の過酸化水素を含む。
【0066】
実施形態2に係る組成物において、組成物は、組成物の総重量の約1重量%〜約5重量%の範囲の量の酢酸を含む。
実施形態2に係る組成物において、組成物は、組成物の総重量の約1重量%〜約3重量%の範囲の量の酢酸を含む。
【0067】
実施形態2に係る組成物において、組成物は、アロエベラ以外の保湿成分をさらに含む。
実施形態2に係る組成物において、胞子形成細菌はクロストリジウム・ディフィシルまたは枯草菌を含む。
【0068】
実施形態2に係る組成物において、組成物は少なくとも12ヶ月の安定性を有する。
実施形態2に係る組成物において、組成物は、約30秒未満で非胞子形成細菌を全死滅させる。
【0069】
実施形態2に係る組成物において、組成物は黄色ブドウ球菌を全死滅させる。
実施形態2に係る組成物において、組成物は界面活性剤をさらに含む。
実施形態2に係る組成物において、組成物は増粘剤をさらに含む。
【0070】
実施形態2に係る組成物において、組成物は、約4分間の接触時間で胞子形成細菌を1log減少させる。
実施形態2に係る組成物において、組成物は、約6分間の接触時間で胞子形成細菌を2log減少させる。
【0071】
実施形態2に係る組成物において、組成物は、約5分間の接触時間で胞子形成細菌を全死滅させる。
実施形態3は、過酸化物とカルボン酸とペルオキシカルボン酸と1〜6個の炭素を有する一以上の短鎖アルコールとを含有した安定エマルジョンからなる殺胞子性の手指消毒用組成物である。
【0072】
実施形態3に係る組成物において、組成物は、約2分間の接触時間で細菌を全死滅させる。
実施形態3に係る組成物において、組成物は、約10分以下で細菌を全死滅させる。
【0073】
実施形態3に係る組成物において、組成物は、約5分以下で細菌を全死滅させる。
実施形態3に係る抗菌性の手指消毒用組成物において、組成物はローションである。
実施形態3に係る組成物において、一以上の短鎖アルコールは1〜3個の炭素を含む。
【0074】
実施形態3に係る抗菌性の手指消毒用組成物において、一以上の短鎖アルコールはエタノールを含む。
請求項58に記載の抗菌性の手指消毒用組成物において、組成物は約62重量%のエタノールをさらに含む。
【0075】
請求項58に記載の抗菌性の手指消毒用組成物において、組成物は約50重量%のエタノールをさらに含む。
請求項58に記載の抗菌性の手指消毒用組成物において、組成物は約31重量%のエタノールをさらに含む。
【0076】
実施形態3に係る組成物において、組成物は、約10分未満の接触時間でマイコバクテリアを全死滅させる。
実施形態3に係る組成物において、組成物は、約30秒未満の接触時間で植物細菌を全死滅させる。
【0077】
実施形態3に係る組成物において、組成物は、約10分未満の接触時間で真菌を全死滅させる。
実施形態3に係る組成物において、組成物と接触した表面から回収されるペルオキシカルボン酸の量は、20分間の接触時間の後で少なくとも50%である。
【0078】
実施形態3に係る組成物において、組成物と接触した表面から回収されるペルオキシカルボン酸の量は、3分間の接触時間の後で約70%を超える。
実施形態3に係る組成物は、石鹸、ジェル、ローション、クリーム、軟膏、または液体状の表面クレンジング剤のいずれか一つである。
【0079】
実施形態4は、過酸化物とカルボン酸とバリア成分とを含有した安定な殺胞子性の手指消毒用組成物の製造方法であって、組成物は相分離を受けず、その方法は、
a)バリア成分を含んだ第1の混合物を調製する工程と、
b)第1の混合物を外見上均質になるまで撹拌する工程と、
c)過酸化物とカルボン酸と水と香料とを含んだ第2の水性混合物を調製する工程と、
d)バリア成分を含んだ第1の混合物に第2の水性混合物を撹拌しながら添加してエマルジョンを形成する工程とを含む。
【0080】
本発明の範囲から逸脱せず、記載した例示的な実施形態に様々な改変および追加を行うことができる。例えば、上記した実施形態は特定の特徴に言及するが、本発明の範囲はまた、異なる特徴の組み合わせを有する実施形態および上記特徴の全ては含まない実施形態を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸とペルオキシカルボン酸と過酸化物とバリア成分と香料とを含有した安定エマルジョンからなる殺胞子性の手指消毒用組成物であって、前記組成物は異なる相に分離せず、前記組成物は、約10分未満の接触時間で胞子形成細菌を全死滅させる、手指消毒用組成物。
【請求項2】
前記バリア成分は、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、アロエベラ、ラノリンまたはラノリン誘導体、ペトロラタム、セトステアリルアルコール、蜜蝋、トリカプリリン、ヤシ油脂肪酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロリルまたは鉱物油から選ばれる一以上の成分である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記バリア成分は鉱物油または蜜蝋を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記カルボン酸は酢酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記カルボン酸は、酢酸、プロピオン酸、ギ酸、酪酸、コハク酸、ジコハク酸、アジピン酸、ジアジピン酸、グルタル酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、サリチル酸およびマンデル酸からなる群より選ばれ、アルキル部分の鎖は任意でハロ、ニトロ、アミド、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホまたはホスホノ基から選ばれる一以上の置換基で置換されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、前記組成物の総重量の約1%〜約5%の範囲の量の酢酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、および過酸化アルキルベンゾイルから選ばれる一以上の過酸化物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記過酸化物は過酸化水素である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、前記組成物の総重量の約3重量%〜約6重量%の範囲の量の過酸化水素を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物は、アロエベラ以外の保湿成分をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、少なくとも12ヶ月の間にわたって異なる相に分離しない、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記ペルオキシカルボン酸は、少なくとも12ヶ月の間、胞子形成細菌を全死滅させるのに有効な量で前記組成物中に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は、約30秒未満で非胞子形成細菌を全死滅させる、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物中の香料の量は前記組成物の総重量の約1重量%未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記香料は、クミンアルデヒド、桂皮アルデヒド、シネオール、ピペロナールまたはチモールから選ばれる一以上の香料である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記香料は、レインフォレスト、ブラックベリーセージティー、チャイティー、デューベリー、ハナミズキ、プルメリア、トランキリティ、キュウカンバーメロン、ブラックベリー、メルロー、ネロリシダー、セージ&カモミール、またはフレッシュコットンから選ばれる一以上の香料である、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物はアニオン性界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物は非イオン性界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物は、オレス−35、グリセレス−18、ポリソルベート−20からなる群より選ばれる一以上の非イオン性界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物は増粘剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物は、約4分間の接触時間で胞子形成細菌を1log減少させる、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物は、約6分間の接触時間で胞子形成細菌を2log減少させる、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物は、約5分間の接触時間で胞子形成細菌を全死滅させる、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物は、約10分未満の接触時間でマイコバクテリアを全死滅させる、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物は、約30秒未満の接触時間で植物細菌を全死滅させる、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物は、約10分未満の接触時間で真菌を全死滅させる、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物は、一以上の直鎖または分枝の短鎖アルコールをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物はエタノールをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物と接触した表面から回収されるペルオキシカルボン酸の量は、20分間の接触時間の後で少なくとも50%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物と接触した表面から回収されるペルオキシカルボン酸の量は、3分間の接触時間の後で約70%を超える、請求項1に記載の組成物。
【請求項31】
前記組成物はローションである、請求項1に記載の組成物。
【請求項32】
前記組成物は、石鹸、ジェル、ローション、クリームまたは軟膏のいずれかである、請求項1に記載の組成物。
【請求項33】
過酸化物とカルボン酸とバリア成分とを含有した安定な手指消毒用組成物の製造方法であって、前記組成物は少なくとも相分離を受けず、前記方法は、
a)前記バリア成分を含んだ第1の混合物を調製する工程と、
b)前記第1の混合物を外見上均質になるまで撹拌する工程と、
c)前記過酸化物と前記カルボン酸と水と香料とを含んだ第2の水性混合物を調製する工程と、
d)前記バリア成分を含んだ前記第1の混合物に前記第2の水性混合物を撹拌しながら添加してエマルジョンを形成する工程と
を含む、手指消毒用組成物の製造方法。

【公表番号】特表2012−512882(P2012−512882A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542376(P2011−542376)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/068240
【国際公開番号】WO2010/080438
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(596140092)ミンテック コーポレーション (6)
【Fターム(参考)】