殺菌剤、光触媒複合材料、吸着剤及び浄化剤
【課題】多孔質炭素材料から構成され、優れた消臭及び殺菌効果を有する殺菌剤を提供する。
【解決手段】殺菌剤は、(A)多孔質炭素材料、及び、(B)該多孔質炭素材料に付着した銀部材(銀材料)から成り、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である。
【解決手段】殺菌剤は、(A)多孔質炭素材料、及び、(B)該多孔質炭素材料に付着した銀部材(銀材料)から成り、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質炭素材料複合体から構成された殺菌剤、光触媒複合材料、吸着剤及び浄化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質材料に、例えば、光吸収特性や特定物質に対する吸着能といった物理的、物理化学的物性を付与した機能性材料は、高い比表面積と機能性材料の有する物性とを併せ持つことから、興味深い材料である。ここで、多孔質材料として、アルミナ、カーボン、シリカ等を挙げることができる。また、光吸収特性や特定物質に対する吸着能を有する機能性材料として、金属[Fe、Co、Ni、Au、Ag、Pt、Cu]や合金、酸化物[Fe2O3、Fe3O4、TiO2、ZnO2]、化合物[CdS、CdSe、ZnS、CaCO3、Ca(CH3COO)2]等の微粒子や薄膜、あるいは、アミノ基を多く含む高分子膜や単分子膜を挙げることができる。
【0003】
このような機能性材料は、例えば、吸着剤や触媒、エネルギーデバイスの電極、センシングデバイスへの応用が期待されている(例えば、特開2006−167694参照。)。また、野菜や穀類等の植物の未利用部分の殆どは廃棄されているが、これらの未利用部分の有効利用が、地球環境の保全や改善のために強く求められている。未利用部分の有効利用の一例として、炭化処理が挙げられる。そして、このような植物由来の材料を炭化処理することにより製造された炭素材料を色素吸着剤に用いた例が、例えば、Dyes and Pigments, Vol 66, 2005, pp 123-128 から知られている。また、植物資材による脱臭能、イオン交換能、触媒能を有する炭化物製造方法が、特開2000−211910から周知である。
【0004】
更には、このような機能性材料の用途として、例えば、殺菌剤を挙げることができる。腋臭は、汗に含まれる脂肪酸やグリセリンといった成分が菌によって分解・変質され、低級脂肪酸等が生成することによって発生する。これまでに、銀含有ゼオライトが市販されている。この銀含有ゼオライトは、ゼオライトに担持された銀イオンが、汗に作用する常在菌(表皮ブドウ球菌、ジフテロイド菌)に接触して菌の働きを阻害することで、臭いの元を断つというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−167694
【特許文献2】特開2000−211910
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Dyes and Pigments, Vol 66, 2005, pp 123-128
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
腋臭を防止するには、発生した臭いを消す消臭、及び、汗の成分を分解・変質させる菌の殺菌が重要であるが、上述した銀含有ゼオライトは、消臭及び菌の殺菌の点で十分な性能を有しているとは云い難い。また、多孔質材料にTiO2を担持させた光吸収特性を有する機能性材料は、可視光領域の光を殆ど吸収せず、高い分解反応を示さないといった問題を有する。あるいは又、多孔質炭素材料は、場合によっては、金属を殆ど吸着しないといった問題を有する。
【0008】
従って、本発明の目的は、多孔質炭素材料から構成され、優れた消臭及び殺菌効果を有する殺菌剤、可視光領域の光を吸収し、分解反応を示す光触媒複合材料、並びに、金属を吸着する吸着剤及び浄化剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の殺菌剤は、
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した銀部材(銀材料)、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である。
【0010】
上記の目的を達成するための本発明の光触媒複合材料は、
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した光触媒材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上であり、
光触媒材料は、カチオンあるいはアニオンがドーピングされた酸化チタンから成る。
【0011】
上記の目的を達成するための本発明の吸着剤あるいは浄化剤は、
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した有機材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上であり、
有機材料は金属を吸着する。
【0012】
本発明の殺菌剤、光触媒複合材料、吸着剤及び浄化剤を総称して、以下、『本発明の多孔質炭素材料複合体』と呼ぶ場合がある。また、多孔質炭素材料に付着させるべき銀部材、光触媒材料、有機材料を総称して、以下、『機能性材料』と呼ぶ場合がある。更には、本発明の殺菌剤、光触媒複合材料、吸着剤及び浄化剤を構成する多孔質炭素材料を、以下、『本発明における多孔質炭素材料』と呼ぶ場合がある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の殺菌剤、光触媒複合材料、吸着剤及び浄化剤は、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上であり、このような要件は多孔質炭素材料によって達成することができる。そして、係る多孔質炭素材料に機能性材料を付着させることによって、多孔質炭素材料単位重量当たりの機能性材料付着量の増加を図ることができ、高い特性、高い機能性を有する多孔質炭素材料複合体を得ることができる。
【0014】
そして、本発明の殺菌剤にあっては、多孔質炭素材料に銀部材を付着させているが故に、高い吸着特性と殺菌効果とを得ることができ、デオドラント製品、脱臭剤、抗菌剤、保存剤としても利用することができる。また、本発明の光触媒複合材料にあっては、光触媒材料をカチオンあるいはアニオンがドーピングされた酸化チタンから構成するが故に、効果的に可視光を吸収することが可能となり、本発明の光触媒複合材料には電荷分離、可視光吸収、紫外線吸収、触媒特性が付与され、光触媒効果により、半永久的に使用可能な有害物質分解剤、有害物質除去剤としての応用が可能となる。更には、本発明の吸着剤及び浄化剤にあっては、多孔質炭素材料に有機材料を付着(担持、吸着、結合)させるが故に、効果的な金属(金属原子や金属イオン)の吸着が可能となる。
【0015】
しかも、本発明における多孔質炭素材料は、細孔の容積が規定され、従来の活性炭の有するマイクロ領域(<2nm)の細孔に加えて、従来の活性炭では実現できないメソ領域(2〜50nm)の細孔を有している。そして、本発明の殺菌剤にあっては、このような細孔サイズによって、臭いの原因分子に対して高い吸着能を示すし、これに加えて、多孔質炭素材料の有するマクロ細孔(>50nm)によって菌が吸着され、分散させられることによっても、菌の増殖が抑えられる。また、本発明の光触媒複合材料にあっては、このような細孔サイズによって光触媒材料を極めて効果的に多孔質炭素材料に付着させることができ、光触媒作用による分解を効果的に生じさせることができる。更には、環境浄化用材料としての本発明の光触媒複合材料、吸着剤、浄化剤において、このような細孔サイズは、有害物質の吸着に対して有効に作用すると考えられ、これと同時に、光触媒材料や有機材料を極めて効果的に多孔質炭素材料に付着させることができ、有害物質の分解、無毒化を効果的に生じさせることができる。しかも、多孔質炭素材料内部における有害物質の拡散が促進され、分解を一層効果的に生じさせることができ、水の浄化や空気の浄化を極めて効果的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施例1−A及び実施例1−Bの殺菌剤、並びに、比較例1の試料の電子顕微鏡像である。
【図2】図2の(A)、(B)、(C)は、実施例1−A及び実施例1−Bの殺菌剤、並びに、比較例1の試料の粉末X線回折法にて得られたX線回折結果のチャートであり、図2の(D)は、X線回折分析におけるAgの標準データである。
【図3】図3の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例1−A及び実施例1−Bの殺菌剤、並びに、比較例1の試料におけるメソ細孔の細孔分布及びマイクロ細孔の細孔分布を表すグラフである。
【図4】図4は、実施例1−A、実施例1−B及び比較例1の、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布の測定結果を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例2の光触媒複合材料において、光触媒材料が光のエネルギーを吸収する状態を概念的に示す図である。
【図6】図6は、TiO2の光吸収特性を示すグラフである。
【図7】図7は、実施例2−A及び実施例2−Bの試料における細孔(メソ細孔)分布の測定結果を示すグラフである。
【図8】図8は、実施例2−A及び実施例2−Bの、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布の測定結果を示すグラフである。
【図9】図9は、実施例2−Aの光触媒複合材料及び比較例2の試料がタンニン酸水溶液を経時的に分解する状態を示すグラフである。
【図10】図10は、実施例2−Bの光触媒複合材料及び比較例2の試料がメチルオレンジ水溶液を経時的に分解する状態を示すグラフである。
【図11】図11の(A)は、実施例2−Bの試料及び市販の多孔質炭素に基づくミクロシスチンの分解試験の結果を示すグラフであり、図11の(B)は、実施例2−Bの試料におけるミクロシスチンの分解を説明する概念図である。
【図12】図12は、実施例3の吸着剤及び浄化剤において、有機材料としてポリエチレンイミンが多孔質炭素材料に付着した状態を模式的に示す図である。
【図13】図13は、実施例3の吸着剤及び浄化剤において、FeCl3・6H2Oでの処理を行うことで、イオン交換能を高めることができる状態を模式的に示す図である。
【図14】図14は、実施例3の吸着剤及び浄化剤及び比較例3の活性炭がクロム酸カリウムを吸着する状態を示すグラフである。
【図15】図15は、実施例3の吸着剤及び浄化剤がクロム酸イオンを吸着する状態を模式的に示す図である。
【図16】図16は、実施例3及び比較例3の、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の殺菌剤、光触媒複合材料、吸着剤及び浄化剤、全般に関する説明
2.実施例1(本発明の殺菌剤)
3.実施例2(本発明の光触媒複合材料)
4.実施例3(本発明の吸着剤及び浄化剤)、その他
【0018】
[本発明の殺菌剤、光触媒複合材料、吸着剤及び浄化剤、全般に関する説明]
本発明の殺菌剤において、銀部材(銀材料)は、銀イオンを含むイオン;銀、銀合金若しくは銀イオンを含む粒子;又は、銀、銀合金若しくは銀イオンを含む薄膜から成る構成とすることができる。ここで、銀合金として、銀とルテニウムの合金、銀とロジウムの合金、銀とパラジウムの合金、銀と金の合金、銀と白金の合金、銀とコバルトの合金、銀とニッケルの合金、銀と銅の合金を例示することができるし、銀イオンとして、硝酸銀の形態、塩化銀の形態、硫酸銀の形態を例示することができる。多孔質炭素材料に銀部材を付着させる方法として、銀塩水溶液への含浸、更には、還元剤による銀の還元析出といった方法を例示することができる。
【0019】
また、本発明の光触媒複合材料において、光触媒材料は、波長200nm乃至600nmの光のエネルギーを吸収する構成とすることができる。光触媒材料は、カチオン(陽イオン)あるいはアニオン(陰イオン)がドーピングされた酸化チタンから成るが、ここで、カチオンの具体例として、クロムイオン、鉄イオン、銀イオン、白金イオン、銅イオン、タングステンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオンを例示することができるし、アニオンの具体例として、窒素イオン、炭素イオン、硫黄イオンを例示することができる。酸化チタンにカチオンあるいはアニオンをドーピングする方法として、カチオンあるいはアニオンを含む物質と酸化チタンの原料とを混合した状態で結晶成長させる方法、カチオンあるいはアニオンを含む気体状の物質と酸化チタンの気体状原料を用いて結晶成長させる方法、酸化チタン合成後にその表面にカチオンあるいはアニオンを担持させる方法を例示することができる。酸化チタンの多孔質炭素材料への付着の形態として、微粒子の状態での付着、薄膜の状態での付着を例示することができる。尚、酸化チタンの代わりに酸化亜鉛(ZnO)を用いることもできる。
【0020】
本発明の光触媒複合材料から浄化剤を得ることができる。有害物質の分解、除去にあっては、本発明の光触媒複合材料に可視光を照射すればよい。有害物質として水中あるいは空気中に存在する有害物質を挙げることができ、具体的には、ミクロシスチン類や各種のウィルス、アレルギー発生原因物質を例示することができる。この浄化剤は、水の浄化剤あるいは空気の浄化剤として機能し、例えば、空気浄化装置のフィルターとしての応用が可能である。本発明の光触媒複合材料(あるいは浄化剤)の使用形態として、シート状での使用、カラムやカートリッジに充填された状態での使用、バインダー(結着剤)等を用いて所望の形状に賦形した状態での使用、粉状での使用を例示することができる。また、溶液中に分散させた浄化剤や吸着剤として用いる場合、表面を親水処理又は疎水処理して使用することができる。
【0021】
本発明の吸着剤あるいは浄化剤において、有機材料として、フェノール基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、ケトン基、リン酸基、アルキル基、エーテル基及びチオニル基から成る群から選択された少なくとも1種類の基を有する有機材料、具体的には、例えば、ポリエチレンイミンを挙げることができる。また、金属(金属原子及び金属イオンを含む)として、クロム、水銀、ヒ素、鉛、カドミウム、スズ、銅、亜鉛、リチウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、バナジウム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ルビジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、白金、タリウム、ビスマス、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、又は、ルテチウムを挙げることができる。多孔質炭素材料に有機材料を付着(担持、吸着、結合、表面修飾といった概念を包含する)させる方法として、例えば、多孔質炭素材料と有機分子との間にC−C結合、C−N結合、CO結合等を形成する方法、SiO2をコーティングしてシランカップリングにて結合させる方法、混合して撹拌する方法を例示することができる。有機材料の多孔質炭素材料への付着の形態として、層状での付着、島状での付着を例示することができる。尚、本発明の吸着剤や浄化剤は、例えば、陰イオン交換能や陽イオン交換能を高め、あるいは又、金属配位等を代えることで、様々な形態の金属(金属原子、金属イオン)の吸着が可能である。また、溶媒あるいは溶剤への分散性を向上させることが可能である。
【0022】
ここで、本発明の吸着剤あるいは浄化剤は、例えば、水の浄化剤として機能し、例えば、フィルターとしての応用が可能である。そして、その使用形態として、シート状での使用、カラムやカートリッジに充填された状態での使用、バインダー(結着剤)等を用いて所望の形状に賦形した状態での使用、粉状での使用を例示することができる。また、煙などの気体中に含まれる金属を吸収することも可能である。
【0023】
本発明における多孔質炭素材料の原料を、ケイ素(Si)を含有する植物由来の材料とする場合、具体的には、限定するものではないが、多孔質炭素材料は、ケイ素(Si)の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素(Si)の含有率が、5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下であることが望ましい。
【0024】
本発明の多孔質炭素材料複合体は、例えば、植物由来の材料を400゜C乃至1400゜Cにて炭素化した後、酸又はアルカリで処理することによって、多孔質炭素材料を得た後、該多孔質炭素材料に機能性材料を付着させることで製造することができる。このような本発明における多孔質炭素材料の製造方法(以下、単に、『多孔質炭素材料の製造方法』と呼ぶ場合がある)において、植物由来の材料を400゜C乃至1400゜Cにて炭素化することにより得られた材料であって、酸又はアルカリでの処理を行う前の材料を、『多孔質炭素材料前駆体』あるいは『炭素質物質』と呼ぶ。
【0025】
多孔質炭素材料の製造方法において、酸又はアルカリでの処理の後、多孔質炭素材料に機能性材料を付着させる前に、賦活処理を施す工程を含めることができるし、賦活処理を施した後、酸又はアルカリでの処理を行ってもよい。また、このような好ましい形態を含む多孔質炭素材料の製造方法にあっては、使用する植物由来の材料にも依るが、植物由来の材料を炭素化する前に、炭素化のための温度よりも低い温度(例えば、400゜C〜700゜C)にて、酸素を遮断した状態で植物由来の材料に加熱処理(予備炭素化処理)を施してもよい。これによって、炭素化の過程において生成するであろうタール成分を抽出することが出来る結果、炭素化の過程において生成するであろうタール成分を減少あるいは除去することができる。尚、酸素を遮断した状態は、例えば、窒素ガスやアルゴンガスといった不活性ガス雰囲気とすることで、あるいは又、真空雰囲気とすることで、あるいは又、植物由来の材料を一種の蒸し焼き状態とすることで達成することができる。また、多孔質炭素材料の製造方法にあっては、使用する植物由来の材料にも依るが、植物由来の材料中に含まれるミネラル成分や水分を減少させるために、また、炭素化の過程での異臭の発生を防止するために、植物由来の材料をアルコール(例えば、メチルアルコールやエチルアルコール、イソプロピルアルコール)に浸漬してもよい。尚、多孔質炭素材料の製造方法にあっては、その後、予備炭素化処理を実行してもよい。不活性ガス中で加熱処理を施すことが好ましい材料として、例えば、木酢液(タールや軽質油分)を多く発生する植物を挙げることができる。また、アルコールによる前処理を施すことが好ましい材料として、例えば、ヨウ素や各種ミネラルを多く含む海藻類を挙げることができる。
【0026】
多孔質炭素材料の製造方法にあっては、植物由来の材料を400゜C乃至1400゜Cにて炭素化するが、ここで、炭素化とは、一般に、有機物質(本発明における多孔質炭素材料にあっては、植物由来の材料)を熱処理して炭素質物質に変換することを意味する(例えば、JIS M0104−1984参照)。尚、炭素化のための雰囲気として、酸素を遮断した雰囲気を挙げることができ、具体的には、真空雰囲気、窒素ガスやアルゴンガスといった不活性ガス雰囲気、植物由来の材料を一種の蒸し焼き状態とする雰囲気を挙げることができる。炭素化温度に至るまでの昇温速度として、限定するものではないが、係る雰囲気下、1゜C/分以上、好ましくは3゜C/分以上、より好ましくは5゜C/分以上を挙げることができる。また、炭素化時間の上限として、10時間、好ましくは7時間、より好ましくは5時間を挙げることができるが、これに限定するものではない。炭素化時間の下限は、植物由来の材料が確実に炭素化される時間とすればよい。また、植物由来の材料を、所望に応じて粉砕して所望の粒度としてもよいし、分級してもよい。植物由来の材料を予め洗浄してもよい。あるいは又、得られた多孔質炭素材料前駆体や多孔質炭素材料を、所望に応じて粉砕して所望の粒度としてもよいし、分級してもよい。あるいは又、賦活処理後の多孔質炭素材料を、所望に応じて粉砕して所望の粒度としてもよいし、分級してもよい。更には、最終的に得られた多孔質炭素材料に殺菌処理を施してもよい。炭素化のために使用する炉の形式、構成、構造に制限はなく、連続炉とすることもできるし、回分炉(バッチ炉)とすることもできる。
【0027】
多孔質炭素材料の製造方法において、上述したとおり、賦活処理を施せば、孔径が2nmよりも小さいマイクロ細孔(後述する)を増加させることができる。賦活処理の方法として、ガス賦活法、薬品賦活法を挙げることができる。ここで、ガス賦活法とは、賦活剤として酸素や水蒸気、炭酸ガス、空気等を用い、係るガス雰囲気下、700゜C乃至1400゜Cにて、好ましくは700゜C乃至1000゜Cにて、より好ましくは800゜C乃至1000゜Cにて、数十分から数時間、多孔質炭素材料を加熱することにより、多孔質炭素材料中の揮発成分や炭素分子により微細構造を発達させる方法である。尚、より具体的には、加熱温度は、植物由来の材料の種類、ガスの種類や濃度等に基づき、適宜、選択すればよい。薬品賦活法とは、ガス賦活法で用いられる酸素や水蒸気の替わりに、塩化亜鉛、塩化鉄、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、硫酸等を用いて賦活させ、塩酸で洗浄、アルカリ性水溶液でpHを調整し、乾燥させる方法である。
【0028】
多孔質炭素材料の製造方法にあっては、酸又はアルカリでの処理によって、炭素化後の植物由来の材料中のケイ素成分を除去する。ここで、ケイ素成分として、二酸化ケイ素や酸化ケイ素、酸化ケイ素塩といったケイ素酸化物を挙げることができる。このように、炭素化後の植物由来の材料中のケイ素成分を除去することで、高い比表面積を有する多孔質炭素材料を得ることができ、多孔質炭素材料単位重量当たりの機能性材料付着量の増加を図ることができる。場合によっては、ドライエッチング法に基づき、炭素化後の植物由来の材料中のケイ素成分を除去してもよい。即ち、本発明における多孔質炭素材料の好ましい形態にあっては、原料として、ケイ素(Si)を含有する植物由来の材料を用いるが、多孔質炭素材料前駆体あるいは炭素質物質に変換する際、植物由来の材料を高温(例えば、400゜C乃至1400゜C)にて炭素化することによって、植物由来の材料中に含まれるケイ素が、炭化ケイ素(SiC)とはならずに、二酸化ケイ素(SiOx)や酸化ケイ素、酸化ケイ素塩といったケイ素成分(ケイ素酸化物)として存在する。それ故、次の工程において酸又はアルカリ(塩基)で処理することにより、二酸化ケイ素や酸化ケイ素、酸化ケイ素塩といったケイ素成分(ケイ素酸化物)が除去される結果、窒素BET法による大きな比表面積の値を得ることができる。しかも、本発明における多孔質炭素材料の好ましい形態にあっては、天然物由来の環境融和材料であり、その微細構造は、植物由来の材料である原料中に予め含まれるケイ素成分(ケイ素酸化物)を酸又はアルカリで処理し、除去することによって得られる。従って、細孔の配列は植物の有する生体規則性を維持している。
【0029】
上述したとおり、多孔質炭素材料は、植物由来の材料を原料とすることができる。ここで、植物由来の材料として、米(稲)、大麦、小麦、ライ麦、稗(ヒエ)、粟(アワ)等の籾殻や藁、珈琲豆、茶葉(例えば、緑茶や紅茶等の葉)、サトウキビ類(より具体的には、サトウキビ類の絞り滓)、トウモロコシ類(より具体的には、トウモロコシ類の芯)、果実の皮(例えば、ミカンやバナナの皮等)、あるいは又、葦、茎ワカメを挙げることができるが、これらに限定するものではなく、その他、例えば、陸上に植生する維管束植物、シダ植物、コケ植物、藻類、海草を挙げることができる。尚、これらの材料を、原料として、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。また、植物由来の材料の形状や形態も特に限定はなく、例えば、籾殻や藁そのものでもよいし、あるいは乾燥処理品でもよい。更には、ビールや洋酒等の飲食品加工において、発酵処理、焙煎処理、抽出処理等の種々の処理を施されたものを使用することもできる。特に、産業廃棄物の資源化を図るという観点から、脱穀等の加工後の藁や籾殻を使用することが好ましい。これらの加工後の藁や籾殻は、例えば、農業協同組合や酒類製造会社、食品会社、食品加工会社から、大量、且つ、容易に入手することができる。
【0030】
本発明の多孔質炭素材料複合体において、機能性材料の種類や構成、構造、形態にも依存するが、機能性材料の多孔質炭素材料への付着の形態として、上述したとおり、多孔質炭素材料の表面(細孔内を含む)に、イオンとして付着している状態、微粒子として付着している状態、薄膜状に付着している状態、海・島状(多孔質炭素材料の表面を「海」とみなした場合、機能性材料が「島」に相当する)に付着している状態を挙げることができる。尚、付着とは、異種の材料間の接着現象を指す。多孔質炭素材料に機能性材料を付着させる一般的な方法として、機能性材料にも依るが、機能性材料又はその前駆体を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法、多孔質炭素材料の表面に無電解メッキ法(化学メッキ法)又は化学還元反応にて機能性材料を析出させる方法、機能性材料の前駆体を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して、熱処理を行うことによって多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法、機能性材料の前駆体を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して、超音波照射処理を行うことによって多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法、機能性材料の前駆体を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して、ゾル・ゲル反応を行うことによって多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法を挙げることができる。
【0031】
本発明における多孔質炭素材料には、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)や、リン(P)、硫黄(S)等の非金属元素や、遷移元素等の金属元素が含まれていてもよい。マグネシウム(Mg)の含有率として0.01重量%以上3重量%以下、カリウム(K)の含有率として0.01重量%以上3重量%以下、カルシウム(Ca)の含有率として0.05重量%以上3重量%以下、リン(P)の含有率として0.01重量%以上3重量%以下、硫黄(S)の含有率として0.01重量%以上3重量%以下を挙げることができる。尚、これらの元素の含有率は、本発明の多孔質炭素材料複合体の使用用途によって異なるが、比表面積の値の増加といった観点からは、少ない方が好ましい。多孔質炭素材料には、上記した元素以外の元素を含んでいてもよく、上記した各種元素の含有率の範囲も、本発明の多孔質炭素材料複合体の使用用途によって変更し得ることは云うまでもない。
【0032】
本発明において、各種元素の分析は、例えば、エネルギー分散型X線分析装置(例えば、日本電子株式会社製のJED−2200F)を用い、エネルギー分散法(EDS)により行うことができる。ここで、測定条件を、例えば、走査電圧15kV、照射電流10μAとすればよい。
【0033】
本発明の多孔質炭素材料複合体は、細孔(ポア)を多く有している。細孔として、孔径が2nm乃至50nmの『メソ細孔』、及び、孔径が2nmよりも小さい『マイクロ細孔』が含まれる。具体的には、メソ細孔として、例えば、20nm以下の孔径の細孔を多く含み、特に、10nm以下の孔径の細孔を多く含んでいる。また、マイクロ細孔として、例えば、孔径が1.9nm程度の細孔と、1.5nm程度の細孔と、0.8nm〜1nm程度の細孔とを多く含んでいる。本発明の多孔質炭素材料複合体にあっては、BJH法及びMP法による細孔の容積は0.1cm3/グラム以上であるが、0.3cm3/グラム以上であることが一層好ましい。あるいは又、BJH法による細孔の容積は、好ましくは0.1cm3/グラム以上、より好ましくは0.3cm3/グラム以上、より一層好ましくは0.5cm3/グラム以上であることが望ましい。
【0034】
本発明の多孔質炭素材料複合体において、窒素BET法による比表面積の値(以下、単に、『比表面積の値』と呼ぶ場合がある)は、より一層優れた機能性を得るために、好ましくは50m2/グラム以上、より好ましくは100m2/グラム以上、更に一層好ましくは400m2/グラム以上であることが望ましい。
【0035】
窒素BET法とは、吸着剤(ここでは、多孔質炭素材料複合体)に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより吸着等温線を測定し、測定したデータを式(1)で表されるBET式に基づき解析する方法であり、この方法に基づき比表面積や細孔容積等を算出することができる。具体的には、窒素BET法により比表面積の値を算出する場合、先ず、吸着剤(多孔質炭素材料複合体)に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより、吸着等温線を求める。そして、得られた吸着等温線から、式(1)あるいは式(1)を変形した式(1’)に基づき[p/{Va(p0−p)}]を算出し、平衡相対圧(p/p0)に対してプロットする。そして、このプロットを直線と見なし、最小二乗法に基づき、傾きs(=[(C−1)/(C・Vm)])及び切片i(=[1/(C・Vm)])を算出する。そして、求められた傾きs及び切片iから式(2−1)、式(2−2)に基づき、Vm及びCを算出する。更には、Vmから、式(3)に基づき比表面積asBETを算出する(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第62頁〜第66頁参照)。尚、この窒素BET法は、JIS R 1626−1996「ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法」に準じた測定方法である。
【0036】
Va=(Vm・C・p)/[(p0−p){1+(C−1)(p/p0)}] (1)
[p/{Va(p0−p)}]
=[(C−1)/(C・Vm)](p/p0)+[1/(C・Vm)] (1’)
Vm=1/(s+i) (2−1)
C =(s/i)+1 (2−2)
asBET=(Vm・L・σ)/22414 (3)
【0037】
但し、
Va:吸着量
Vm:単分子層の吸着量
p :窒素の平衡時の圧力
p0:窒素の飽和蒸気圧
L :アボガドロ数
σ :窒素の吸着断面積
である。
【0038】
窒素BET法により細孔容積Vpを算出する場合、例えば、求められた吸着等温線の吸着データを直線補間し、細孔容積算出相対圧で設定した相対圧での吸着量Vを求める。この吸着量Vから式(4)に基づき細孔容積Vpを算出することができる(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第62頁〜第65頁参照)。尚、窒素BET法に基づく細孔容積を、以下、単に『細孔容積』と呼ぶ場合がある。
【0039】
Vp=(V/22414)×(Mg/ρg) (4)
【0040】
但し、
V :相対圧での吸着量
Mg:窒素の分子量
ρg:窒素の密度
である。
【0041】
メソ細孔の孔径は、例えば、BJH法に基づき、その孔径に対する細孔容積変化率から細孔の分布として算出することができる。BJH法は、細孔分布解析法として広く用いられている方法である。BJH法に基づき細孔分布解析をする場合、先ず、吸着剤(多孔質炭素材料複合体)に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより、脱着等温線を求める。そして、求められた脱着等温線に基づき、細孔が吸着分子(例えば窒素)によって満たされた状態から吸着分子が段階的に着脱する際の吸着層の厚さ、及び、その際に生じた孔の内径(コア半径の2倍)を求め、式(5)に基づき細孔半径rpを算出し、式(6)に基づき細孔容積を算出する。そして、細孔半径及び細孔容積から細孔径(2rp)に対する細孔容積変化率(dVp/drp)をプロットすることにより細孔分布曲線が得られる(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第85頁〜第88頁参照)。
【0042】
rp=t+rk (5)
Vpn=Rn・dVn−Rn・dtn・c・ΣApj (6)
但し、
Rn=rpn2/(rkn−1+dtn)2 (7)
【0043】
ここで、
rp:細孔半径
rk:細孔半径rpの細孔の内壁にその圧力において厚さtの吸着層が吸着した場合のコア半径(内径/2)
Vpn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの細孔容積
dVn:そのときの変化量
dtn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの吸着層の厚さtnの変化量
rkn:その時のコア半径
c:固定値
rpn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの細孔半径
である。また、ΣApjは、j=1からj=n−1までの細孔の壁面の面積の積算値を表す。
【0044】
マイクロ細孔の孔径は、例えば、MP法に基づき、その孔径に対する細孔容積変化率から細孔の分布として算出することができる。MP法により細孔分布解析を行う場合、先ず、吸着剤(多孔質炭素材料複合体)に窒素を吸着させることにより、吸着等温線を求める。そして、この吸着等温線を吸着層の厚さtに対する細孔容積に変換する(tプロットする)。そして、このプロットの曲率(吸着層の厚さtの変化量に対する細孔容積の変化量)に基づき細孔分布曲線を得ることができる(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第72頁〜第73頁、第82頁参照)。
【0045】
JIS Z8831−2:2010 「粉体(固体)の細孔径分布及び細孔特性−第2部:ガス吸着によるメソ細孔及びマクロ細孔の測定方法」、及び、JIS Z8831−3:2010 「粉体(固体)の細孔径分布及び細孔特性−第3部:ガス吸着によるミクロ細孔の測定方法」に規定された非局在化密度汎関数法(NLDFT法,Non Localized Density Functional Theory 法)にあっては、解析ソフトウェアとして、日本ベル株式会社製自動比表面積/細孔分布測定装置「BELSORP−MAX」に付属するソフトウェアを用いる。前提条件としてモデルをシリンダ形状としてカーボンブラック(CB)を仮定し、細孔分布パラメータの分布関数を「no−assumption」とし、得られた分布データにはスムージングを10回施す。
【0046】
ここで、本発明の殺菌剤を非局在化密度汎関数法に基づき規定すると、上記の目的を達成するための本発明の殺菌剤は、
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した銀部材(銀材料)、
から成る。
【0047】
また、本発明の光触媒複合材料を非局在化密度汎関数法に基づき規定すると、上記の目的を達成するための本発明の光触媒複合材料は、
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した光触媒材料、
から成り、
光触媒材料は、カチオンあるいはアニオンがドーピングされた酸化チタンから成る。
【0048】
更には、本発明の吸着剤あるいは浄化剤を非局在化密度汎関数法に基づき規定すると、上記の目的を達成するための本発明の吸着剤あるいは浄化剤は、
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した有機材料、
から成り、
有機材料は金属を吸着する。
【0049】
そして、本発明の殺菌剤、本発明の光触媒複合材料、本発明の吸着剤あるいは浄化剤にあっては、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-9m乃至5×10-7mの細孔の容積の合計が0.1cm3/グラム以上である。あるいは又、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布において、3nm乃至20nmの範囲内に少なくとも1つのピークを有し、3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める割合は、全細孔の容積総計の0.2以上である。
【0050】
多孔質炭素材料前駆体を酸又はアルカリで処理するが、具体的な処理方法として、例えば、酸あるいはアルカリの水溶液に多孔質炭素材料前駆体を浸漬する方法や、多孔質炭素材料前駆体と酸又はアルカリとを気相で反応させる方法を挙げることができる。より具体的には、酸によって処理する場合、酸として、例えば、フッ化水素、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム等の酸性を示すフッ素化合物を挙げることができる。フッ素化合物を用いる場合、多孔質炭素材料前駆体に含まれるケイ素成分におけるケイ素元素に対してフッ素元素が4倍量となればよく、フッ素化合物水溶液の濃度は10重量%以上であることが好ましい。フッ化水素酸によって、多孔質炭素材料前駆体に含まれるケイ素成分(例えば、二酸化ケイ素)を除去する場合、二酸化ケイ素は、化学式(A)又は化学式(B)に示すようにフッ化水素酸と反応し、ヘキサフルオロケイ酸(H2SiF6)あるいは四フッ化ケイ素(SiF4)として除去され、多孔質炭素材料を得ることができる。そして、その後、洗浄、乾燥を行えばよい。
【0051】
SiO2+6HF → H2SiF6+2H2O (A)
SiO2+4HF → SiF4+2H2O (B)
【0052】
また、アルカリ(塩基)によって処理する場合、アルカリとして、例えば、水酸化ナトリウムを挙げることができる。アルカリの水溶液を用いる場合、水溶液のpHは11以上であればよい。水酸化ナトリウム水溶液によって、多孔質炭素材料前駆体に含まれるケイ素成分(例えば、二酸化ケイ素)を除去する場合、水酸化ナトリウム水溶液を熱することにより、二酸化ケイ素は、化学式(C)に示すように反応し、ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)として除去され、多孔質炭素材料を得ることができる。また、水酸化ナトリウムを気相で反応させて処理する場合、水酸化ナトリウムの固体を熱することにより、化学式(C)に示すように反応し、ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)として除去され、多孔質炭素材料を得ることができる。そして、その後、洗浄、乾燥を行えばよい。
【0053】
SiO2+2NaOH → Na2SiO3+H2O (C)
【0054】
あるいは又、本発明における多孔質炭素材料として、例えば、特開2010−106007に開示された空孔が3次元的規則性を有する多孔質炭素材料(所謂、逆オパール構造を有する多孔質炭素材料)、具体的には、1×10-9m乃至1×10-5mの平均直径を有する3次元的に配列された球状の空孔を備え、表面積が3×102m2/グラム以上の多孔質炭素材料、好ましくは、巨視的に、結晶構造に相当する配置状態にて空孔が配列されており、あるいは又、巨視的に、面心立方構造における(111)面配向に相当する配置状態にて、その表面に空孔が配列されている多孔質炭素材料を用いることもできる。
【実施例1】
【0055】
実施例1は、本発明の殺菌剤に関する。実施例1の殺菌剤は、
(A)多孔質炭素材料、具体的には、ケイ素を含有する植物由来の材料を原料とした多孔質炭素材料、より具体的には、ケイ素の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素の含有率が1重量%以下である多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した銀部材(銀材料)、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である。
【0056】
あるいは又、実施例1の殺菌剤は、
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した銀部材(銀材料)、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-9m乃至5×10-7mの細孔の容積の合計が0.1cm3/グラム以上である。あるいは又、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布において、3nm乃至20nmの範囲内に少なくとも1つのピークを有し、3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める割合は、全細孔の容積総計の0.2以上である。
【0057】
実施例1にあっては、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を米(稲)の籾殻とした。そして、実施例1における多孔質炭素材料は、原料としての籾殻を炭素化して炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換し、次いで、酸処理を施すことで得られる。そして、多孔質炭素材料を得た後、多孔質炭素材料に機能性材料(銀部材)を付着(担持、吸着、結合)させることで多孔質炭素材料複合体(殺菌剤)を得ることができる。具体的には、実施例1にあっては、銀部材は銀(金属の銀)から成り、微粒子の形態、形状で、多孔質炭素材料の表面(細孔内を含む)に付着している。以下、実施例1の殺菌剤の製造方法を説明する。
【0058】
[工程−100A]
実施例1の殺菌剤の製造においては、先ず、植物由来の材料を400゜C乃至1400゜Cにて炭素化した後、酸又はアルカリで処理することによって、多孔質炭素材料を得た。即ち、先ず、籾殻に対して、不活性ガス中で加熱処理(予備炭素化処理)を施す。具体的には、籾殻を、窒素気流中において500゜C、5時間、加熱することにより炭化させ、炭化物を得た。尚、このような処理を行うことで、次の炭素化の際に生成されるであろうタール成分を減少あるいは除去することができる。その後、この炭化物の10グラムをアルミナ製の坩堝に入れ、窒素気流中(5リットル/分)において5゜C/分の昇温速度で800゜Cまで昇温させた。そして、800゜Cで1時間、炭素化して、炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換した後、室温まで冷却した。尚、炭素化及び冷却中、窒素ガスを流し続けた。次に、この多孔質炭素材料前駆体を46容積%のフッ化水素酸水溶液に一晩浸漬することで酸処理を行った後、水及びエチルアルコールを用いてpH7になるまで洗浄した。尚、こうして得られた多孔質炭素材料を、便宜上、『多孔質炭素材料−A』と呼ぶ。次いで、120°Cにて乾燥させた後、900゜Cで水蒸気気流中にて3時間加熱させることで賦活処理を行うことで、多孔質炭素材料を得ることができた。尚、こうして得られた多孔質炭素材料を、便宜上、『多孔質炭素材料−B』と呼ぶ。
【0059】
[工程−110A]
次いで、得られた多孔質炭素材料−Bに銀部材を付着(担持、吸着、結合)させた。尚、多孔質炭素材料に機能性材料を付着させる処理を、以下、『複合化処理』と呼ぶ場合がある。具体的には、182ミリリットルの蒸留水に0.43グラムの多孔質炭素材料−Bを添加し、30分間、撹拌した。そして、そこへ5ミリモル/リットルの硝酸銀水溶液を8ミリリットルを添加して、更に1時間撹拌した後に、40ミリモル/リットルの水素化ホウ素ナトリウムを10ミリリットル添加して、一晩撹拌した。得られた粉末をフィルターによって濾過し、蒸留水で洗浄後、120゜Cで乾燥することで、実施例1−Aの殺菌剤を得た。
【0060】
[工程−110B]
あるいは又、得られた多孔質炭素材料−Bに、上述とは異なる方法で銀部材を付着(担持、吸着、結合)させた。具体的には、1.33ミリモル/リットルの硝酸銀水溶液、15ミリリットルに0.215グラムの多孔質炭素材料−Bを添加し、30分間、撹拌した。その後、100゜Cに加熱し、沸騰等を確認した後、20ミリモル/リットルのクエン酸3ナトリウム水溶液を5ミリリットル滴下し、15分間、還流した。そして、得られた粉末をフィルターによって濾過し、蒸留水で洗浄後、120゜Cで乾燥することで、実施例1−Bの殺菌剤を得た。
【0061】
また、多孔質炭素材料−Bを、比較例1として各種の試験に供した。
【0062】
エネルギー分散型X線分析装置を用い、エネルギー分散法に基づき実施例1−A、実施例1−B、比較例1の元素分析を行った結果を、以下の表1に示す。
【0063】
[表1]
【0064】
表1から、実施例1−A及び実施例1−Bの殺菌剤にあっては、銀の組成比が増加していることから、[工程−110A]あるいは[工程−110B]の銀析出処理によって多孔質炭素材料に銀部材が付着(担持、吸着、結合)されたと推察される。
【0065】
実施例1−Aの殺菌剤、実施例1−Bの殺菌剤、比較例1の試料のそれぞれの電子顕微鏡像を図1に示すが、これらの電子顕微鏡像から、実施例1−A及び実施例1−Bの殺菌剤にあっては、粒径数十nm程度の微粒子が析出している様子が確認できた。
【0066】
更には、X線回折分析により、生成物の同定及び粒径の見積もりを行った(図2の(A)、(B)、(C)及び(D)参照)。ここで、株式会社リガク製のX線回折装置(RINT−TTRII)を用い、X線源をCu−Kα線とした。尚、波長は0.15405nmである。また、印加電圧を50キロボルト、走査ステップを0.04°とした。実施例1−A及び実施例1−Bの殺菌剤からは、Agの標準データに見られる回折線が確認でき、このことから炭素とAgの複合体が形成されていることが示唆された。また、シェラーの式より、析出した銀の粒径は、実施例1−A及び実施例1−B共に、40nm程度であることが判った。
【0067】
比表面積の値及び細孔容積を求めるための測定機器として、BELSORP−mini(日本ベル株式会社製)を用い、窒素吸脱着試験を行った。測定条件として、測定平衡相対圧(p/p0)を0.01〜0.99とした。そして、BELSORP解析ソフトウェアに基づき、比表面積の値及び細孔容積を算出した。また、メソ細孔及びマイクロ細孔の細孔径分布は、上述した測定機器を用いた窒素吸脱着試験を行い、BELSORP解析ソフトウェアによりBJH法及びMP法に基づき算出した。尚、後述する実施例、比較例においても、比表面積の値及び細孔容積、メソ細孔及びマイクロ細孔の細孔径分布の測定を同様の方法で行った。更には、非局在化密度汎関数法(NLDFT法)に基づく解析にあっては、日本ベル株式会社製自動比表面積/細孔分布測定装置「BELSORP−MAX」付属の解析ソフトウェアを使用した。尚、測定に際しては、試料の前処理として、200゜Cで3時間の乾燥を行った。
【0068】
実施例1−A、実施例1−Bの殺菌剤及び比較例1(多孔質炭素材料−B)の試料について、比表面積の値及び細孔容積を測定したところ、表2に示す結果が得られた。また、メソ細孔及びマイクロ細孔の細孔径の分布を測定したところ、図3の(A)及び(B)に示す結果が得られた。尚、表1中、「比表面積」並びに「全細孔容積」は、窒素BET法による比表面積(単位:m2/グラム)及び全細孔容積を示し、「BJH(T)」及び「MP(T)」は、BJH法及びMP法による累計細孔容積(単位:m2/グラム)の値を指す。更には、図4に、実施例1−A、実施例1−B及び比較例1の、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布の測定結果を示すが、全細孔の容積総計に対する3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める割合は、以下のとおりであった。尚、比較例1は多孔質炭素材料−Bであるが故に、実施例1−A、実施例1−Bと、細孔の容積の合計の占める割合に、左程、大きな差は認められない。
実施例1−A:0.435 (全細孔の容積総計:1.381cm3/グラム)
実施例1−B:0.538 (全細孔の容積総計:1.293cm3/グラム)
比較例1 :0.435 (全細孔の容積総計:1.533cm3/グラム)
【0069】
[表2]
比表面積 全細孔容積 BJH(T) MP(T)
実施例1−A 1169 1.04 0.64 0.50
実施例1−B 1217 1.08 0.66 0.52
比較例1(多孔質炭素材料−B) 1300 1.16 0.76 0.48
多孔質炭素材料−A 566 0.60 0.47 0.17
【0070】
複合化処理を行った実施例1−A、実施例1−Bの殺菌剤にあっては、比表面積の値及び全細孔容積は、複合化処理を行っていない比較例1の試料よりも小さい。この結果は、複合化処理を行うことによって、多孔質炭素材料の細孔が銀粒子の付着(析出)によって塞がれ、あるいは又、銀粒子の付着(析出)によって重量が増加したことに起因するものと考えられる。
【0071】
図3の細孔分布曲線から、全体的に細孔容積の減少が認められ、特に、図3の(A)に示したメソ細孔の領域において、比較例1と比べて、実施例1−A、実施例1−Bにあっては、細孔容積の減少が顕著に確認された。これは、機能性材料の析出に起因するものと考えられる。
【0072】
また、実施例1−A、実施例1−Bの多孔質炭素材料複合体では、ケイ素(Si)の含有率が著しく減少していたことから、多孔質炭素材料前駆体を酸で処理することにより、含まれる二酸化ケイ素といったケイ素成分が除去され、比表面積の値の増加に寄与することが示唆された。更には、酸での処理によって、メソ細孔及びマイクロ細孔が増加することが確認された。後述する実施例においても同様である。また、フッ化水素酸水溶液の代わりに、水酸化ナトリウム水溶液といったアルカリ(塩基)にて処理して得られた多孔質炭素材料においても、同様の結果が得られた。
【0073】
実施例1の殺菌剤にあっては、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上であり、多孔質炭素材料、具体的には、ケイ素の含有率が1重量%以下、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料を用い、係る多孔質炭素材料に銀材料を付着させることによって、多孔質炭素材料単位重量当たりの銀材料付着量の増加を図ることができ、高い消臭能と殺菌効果とを得ることができた。ここで、このような実施例1の殺菌剤は、デオドラント製品、脱臭剤、抗菌剤、保存剤としても利用することができる。
【実施例2】
【0074】
実施例2は、本発明の光触媒複合材料に関する。実施例2の光触媒複合材料(あるいは、この光触媒複合材料に基づく浄化剤)は、
(A)多孔質炭素材料、具体的には、ケイ素を含有する植物由来の材料を原料とした多孔質炭素材料、より具体的には、ケイ素の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素の含有率が1重量%以下である多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した光触媒材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上であり、
光触媒材料は、カチオンあるいはアニオンがドーピングされた酸化チタンから成る。
【0075】
あるいは又、実施例2の光触媒複合材料(あるいは、この光触媒複合材料に基づく浄化剤)は、
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した光触媒材料、
から成り、
光触媒材料は、カチオンあるいはアニオンがドーピングされた酸化チタンから成る。そして、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-9m乃至5×10-7mの細孔の容積の合計が0.1cm3/グラム以上である。あるいは又、実施例2の光触媒複合材料(あるいは、この光触媒複合材料に基づく浄化剤)は、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布において、3nm乃至20nmの範囲内に少なくとも1つのピークを有し、3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める割合は、全細孔の容積総計の0.2以上である。
【0076】
ここで、実施例2において、光触媒材料(機能性材料)は、上述したとおり、光触媒として機能する酸化チタン(TiO2)から構成されている。酸化チタンは、微粒子の状態で多孔質炭素材料へ付着(担持、吸着、結合)している。これによって、多孔質炭素材料複合体には電荷分離、紫外線吸収、触媒特性が付与され、光触媒効果により、半永久的に使用可能な有害物質分解剤、有害物質除去剤としての使用が可能である。しかも、酸化チタンには、カチオンあるいはアニオンがドーピングされているので、例えば、200nm乃至600nmの波長の光のエネルギー、あるいは又、可視光のエネルギーを吸収することが可能である。尚、このエネルギーの吸収の概念図を図5に示す。また、TiO2の光吸収特性を図6に示す。
【0077】
実施例2にあっては、上述した多孔質炭素材料−Bに、カチオンあるいはアニオンがドーピングされた酸化チタンから成る機能性材料を付着(担持、吸着、結合)させたが、具体的には、複合化処理を以下に示すように行った。
【0078】
即ち、エタノール100ミリリットル中に、0.5グラムの多孔質炭素材料−B、4.57ミリリットルの酢酸、及び、適量のオルトチタン酸テトライソプロピル(TIPO)を加えて、1時間、撹拌した。その後、遠心分離を行い、上澄み液を捨て、固相に少量のエタノールを加え、純水100ミリリットル中に超音波を加えながら少量ずつ添加した。その後、再び、遠心分離を行い、得られた固相を100゜Cで乾燥させた。尚、この段階で得られた試料を、『比較例2』の試料とした。次いで、アンモニアガス雰囲気中で、400゜Cで結晶成長させることで、酸化チタンに窒素から成るアニオンをドーピングし、実施例2−Aの光触媒複合材料(浄化剤)を得ることができた。
【0079】
あるいは又、純水150ミリリットルにFeCl3・6H2Oを0.24グラム溶解し、塩酸でpH2とした水溶液に、得られた実施例2−Aの光触媒複合材料を分散させ、1時間、攪拌した後、フィルターによって濾過し、蒸留水で洗浄後、150゜Cで乾燥することで、実施例2−Bの光触媒複合材料(浄化剤)を得ることができた。尚、このような処理は、カチオンとしての鉄イオンを酸化チタンにドーピングすることを目的として行う処理である。
【0080】
X線回析分析(XRD)を行い、実施例2−A及び実施例2−Bの試料にTiO2が含まれていることが確認できた。また、窒素BET法、BJH法及びMP法に基づき比表面積及び全細孔容積を測定した結果を、以下の表3に示す。また、図7に細孔(メソ細孔)分布の測定結果を示す。更には、図8に、実施例2−A及び実施例2−Bの、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布の測定結果を示すが、全細孔の容積総計に対する3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める割合は、以下のとおりであった。
実施例2−A:0.561
実施例2−B:0.367
【0081】
[表3]
実施例2−A 実施例2−B
TiO2含有量(重量%) 23.1 29.1
比表面積 (m2/g) 1235 934
全細孔容積 (cm3/g) 0.9404 0.7088
BJH(T) (cm3/g) 0.5468 0.4254
MP(T) (cm3/g) 0.4993 0.4439
NFDLT (cm3/g) 1.1354 0.9796
【0082】
評価のために、実施例2−A及び比較例2のそれぞれ13ミリグラムを、0.08ミリモル/リットルのタンニン酸水溶液50ミリリットルに加え、24時間、経過後、疑似太陽光を照射した。その結果を図9に示すが、実施例2−Aにあってはタンニン酸水溶液を確実に分解することができた。
【0083】
また、評価のために、実施例2−B及び比較例2のそれぞれ15ミリグラムを、0.15ミリモル/リットルのメチルオレンジ水溶液50ミリリットルに加え、疑似太陽光を照射した。その結果を図10に示すが、実施例2−Bにあっては、照射開始から8時間後にメチルオレンジの殆どが分解されたことが確認できた。
【0084】
更には、水5ミリリットルに1.5ミリグラムの実施例2−Bの試料及び多孔質炭素材料−B(比較例2’)を加え、ミクロシスチン100マイクログラムを24時間毎に投入し、12時間おきに疑似太陽光照射と遮光とを繰り返す実験を行った。その結果を図11の(A)に示す。多孔質炭素材料−B(比較例2’)では3度目にはほぼ吸収しなくなったのに対して、実施例2−Bの試料では、何度も鋭い吸着が見られた。この結果より、実施例2−Bの試料では、ミクロシスチンがメソ細孔に取り込まれ、その後、光により分解されていることが確認できた(図11の(B)の概念図を参照)。尚、図11の(B)において、実線で示す鋸状の波形が実施例2−Bの試料の試験結果を示し、点線で示す波形が比較例2’の試料の試験結果を示す。
【0085】
実施例2における多孔質炭素材料は、より具体的には、天然物由来の環境融和材料であり、その微細構造は、植物由来の材料である原料中に予め含まれるケイ素成分(ケイ素酸化物)を酸又はアルカリで処理し、除去することによって得られる。従って、細孔は、従来の活性炭では実現できない大きさやメソ領域(2〜50nm)を有しており、また、細孔の配列は植物の有する生体規則性を維持している。実施例2の光触媒複合材料にあっては、このような細孔サイズや配列によって、光触媒材料を極めて効果的に多孔質炭素材料に付着させることができ、光触媒作用による分解を効果的に生じさせることができる。また、環境浄化用材料である実施例2の光触媒複合材料に基づく浄化剤にあっても、このような細孔サイズや配列は、有害物質の吸着に対して有効に作用と考えられると同時に、光触媒材料を極めて効果的に多孔質炭素材料に付着させることができ、光触媒作用による有害物質の分解、無毒化を効果的に生じさせることができる。また、浄化剤内部における有害物質の拡散が促進され、光触媒作用による分解を一層効果的に生じさせることができ、水の浄化や空気の浄化を極めて効果的に行うことが可能となる。しかも、実施例2の光触媒複合材料は、可視光のエネルギーを吸収することができるので、優れた分解反応を示す光触媒複合材料を提供することができる。
【実施例3】
【0086】
実施例3は、本発明の吸着剤及び浄化剤に関する。実施例3の吸着剤あるいは浄化剤は、
(A)光触媒複合材料、具体的には、ケイ素を含有する植物由来の材料を原料とした多孔質炭素材料、より具体的には、ケイ素の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素の含有率が1重量%以下である多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した有機材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上であり、
有機材料は金属を吸着する。
【0087】
あるいは又、実施例3の吸着剤あるいは浄化剤は、
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した光触媒材料、
から成り、
有機材料は金属を吸着する。そして、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-9m乃至5×10-7mの細孔の容積の合計が0.1cm3/グラム以上である。あるいは又、実施例3の吸着剤あるいは浄化剤は、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布において、3nm乃至20nmの範囲内に少なくとも1つのピークを有し、3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める割合は、全細孔の容積総計の0.2以上である。
【0088】
実施例3にあっては、有機材料としてポリエチレンイミンを用いた。ポリエチレンイミンが多孔質炭素材料に付着(担持、吸着、結合)した状態を、模式的に図12に示す。また、金属としてクロム(Cr)イオンを吸着させた。実施例3の吸着剤及び浄化剤にあっては、0.3グラムの上述した多孔質炭素材料−B、及び、1.5グラムのポリエチレンイミンを、純水100ミリリットルに分散させ、1時間、攪拌することで、ポリエチレンイミンを多孔質炭素材料−Bのメソ領域の細孔に付着(担持、吸着、結合)させた。その後、濾過して得られた固相を、0.5グラムのFeCl3・6H2Oを100ミリリットルの純水に溶かした水溶液中に投入し、1時間、攪拌した。そして、得られた粉末をフィルターによって濾過し、蒸留水で洗浄後、120゜Cで乾燥することで、実施例3の吸着剤及び浄化剤を得た。尚、このようにFeCl3・6H2Oでの処理を行うことで、イオン交換能を高めることができる。この状態を、模式的に図13に示す。
【0089】
実施例3及び市販の活性炭(比較例3)を用いて、それぞれを、種々の濃度のクロム酸カリウム5ミリリットルに10ミリグラム、分散させ、1時間、攪拌した後、吸光度を測定した。その結果を図14に示すが、市販の活性炭(図13においては、「B」で示す)と比較して、実施例3の吸着剤及び浄化剤(図13においては、「A」で示す)は20倍の吸着性能を有することが確認ができた。即ち、実施例3の吸着剤及び浄化剤にあっては、多孔質炭素材料に有機材料を付着(担持、吸着、結合)させるが故に、効果的に金属(金属原子や金属イオン)の吸着が可能となる。尚、実施例3の吸着剤及び浄化剤がクロム酸イオンを吸着する状態を、図15に模式的に示す。また、窒素BET法、BJH法及びMP法に基づき比表面積及び全細孔容積を測定した結果を、以下の表4に示す。更には、図16に、実施例3及び比較例3の、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布の測定結果を示すが、全細孔の容積総計に対する3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める割合は、以下のとおりであった。
実施例3:0.415
比較例3:0.134
【0090】
[表4]
実施例3 比較例3
比表面積 (m2/g) 957 1184
全細孔容積 (cm3/g) 0.7817 0.0573
BJH(T) (cm3/g) 0.4948 0.0816
MP(T) (cm3/g) 0.3743 0.5702
NFDLT (cm3/g) 1.0511 0.7557
【0091】
以上、好ましい実施例に基づき本発明を説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。実施例にあっては、多孔質炭素材料の原料として、籾殻を用いる場合について説明したが、他の植物を原料として用いてもよい。ここで、他の植物として、例えば、藁、葦あるいは茎ワカメ、陸上に植生する維管束植物、シダ植物、コケ植物、藻類及び海草等を挙げることができ、これらを、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0092】
具体的には、例えば、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を稲の藁(例えば、鹿児島産;イセヒカリ)とし、多孔質炭素材料を、原料としての藁を炭素化して炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換し、次いで、酸処理を施すことで得ることができる。あるいは又、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を稲科の葦とし、多孔質炭素材料を、原料としての稲科の葦を炭素化して炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換し、次いで、酸処理を施すことで得ることができる。また、フッ化水素酸水溶液の代わりに、水酸化ナトリウム水溶液といったアルカリ(塩基)にて処理して得られた多孔質炭素材料においても、同様の結果が得られた。尚、多孔質炭素材料複合体の製造方法は、実施例1〜実施例3と同様とすることができる。
【0093】
あるいは又、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を茎ワカメ(岩手県三陸産)とし、多孔質炭素材料を、原料としての茎ワカメを炭素化して炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換し、次いで、酸処理を施すことで得ることができる。具体的には、先ず、例えば、茎ワカメを500゜C程度の温度で加熱し、炭化する。尚、加熱前に、例えば、原料となる茎ワカメをアルコールで処理してもよい。具体的な処理方法として、エチルアルコール等に浸漬する方法が挙げられ、これによって、原料に含まれる水分を減少させると共に、最終的に得られる多孔質炭素材料に含まれる炭素以外の他の元素や、ミネラル成分を溶出させることができる。また、このアルコールでの処理により、炭素化時のガスの発生を抑制することができる。より具体的には、茎ワカメをエチルアルコールに48時間浸漬する。尚、エチルアルコール中では超音波処理を施すことが好ましい。次いで、この茎ワカメを、窒素気流中において500゜C、5時間、加熱することにより炭化させ、炭化物を得る。尚、このような処理(予備炭素化処理)を行うことで、次の炭素化の際に生成されるであろうタール成分を減少あるいは除去することができる。その後、この炭化物の10グラムをアルミナ製の坩堝に入れ、窒素気流中(10リットル/分)において5゜C/分の昇温速度で1000゜Cまで昇温する。そして、1000゜Cで5時間、炭素化して、炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換した後、室温まで冷却する。尚、炭素化及び冷却中、窒素ガスを流し続ける。次に、この多孔質炭素材料前駆体を46容積%のフッ化水素酸水溶液に一晩浸漬することで酸処理を行った後、水及びエチルアルコールを用いてpH7になるまで洗浄する。そして、最後に乾燥させることにより、多孔質炭素材料を得ることができる。その後、実施例1〜実施例3にて説明した複合化処理や賦活処理を施せばよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質炭素材料複合体から構成された殺菌剤、光触媒複合材料、吸着剤及び浄化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質材料に、例えば、光吸収特性や特定物質に対する吸着能といった物理的、物理化学的物性を付与した機能性材料は、高い比表面積と機能性材料の有する物性とを併せ持つことから、興味深い材料である。ここで、多孔質材料として、アルミナ、カーボン、シリカ等を挙げることができる。また、光吸収特性や特定物質に対する吸着能を有する機能性材料として、金属[Fe、Co、Ni、Au、Ag、Pt、Cu]や合金、酸化物[Fe2O3、Fe3O4、TiO2、ZnO2]、化合物[CdS、CdSe、ZnS、CaCO3、Ca(CH3COO)2]等の微粒子や薄膜、あるいは、アミノ基を多く含む高分子膜や単分子膜を挙げることができる。
【0003】
このような機能性材料は、例えば、吸着剤や触媒、エネルギーデバイスの電極、センシングデバイスへの応用が期待されている(例えば、特開2006−167694参照。)。また、野菜や穀類等の植物の未利用部分の殆どは廃棄されているが、これらの未利用部分の有効利用が、地球環境の保全や改善のために強く求められている。未利用部分の有効利用の一例として、炭化処理が挙げられる。そして、このような植物由来の材料を炭化処理することにより製造された炭素材料を色素吸着剤に用いた例が、例えば、Dyes and Pigments, Vol 66, 2005, pp 123-128 から知られている。また、植物資材による脱臭能、イオン交換能、触媒能を有する炭化物製造方法が、特開2000−211910から周知である。
【0004】
更には、このような機能性材料の用途として、例えば、殺菌剤を挙げることができる。腋臭は、汗に含まれる脂肪酸やグリセリンといった成分が菌によって分解・変質され、低級脂肪酸等が生成することによって発生する。これまでに、銀含有ゼオライトが市販されている。この銀含有ゼオライトは、ゼオライトに担持された銀イオンが、汗に作用する常在菌(表皮ブドウ球菌、ジフテロイド菌)に接触して菌の働きを阻害することで、臭いの元を断つというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−167694
【特許文献2】特開2000−211910
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Dyes and Pigments, Vol 66, 2005, pp 123-128
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
腋臭を防止するには、発生した臭いを消す消臭、及び、汗の成分を分解・変質させる菌の殺菌が重要であるが、上述した銀含有ゼオライトは、消臭及び菌の殺菌の点で十分な性能を有しているとは云い難い。また、多孔質材料にTiO2を担持させた光吸収特性を有する機能性材料は、可視光領域の光を殆ど吸収せず、高い分解反応を示さないといった問題を有する。あるいは又、多孔質炭素材料は、場合によっては、金属を殆ど吸着しないといった問題を有する。
【0008】
従って、本発明の目的は、多孔質炭素材料から構成され、優れた消臭及び殺菌効果を有する殺菌剤、可視光領域の光を吸収し、分解反応を示す光触媒複合材料、並びに、金属を吸着する吸着剤及び浄化剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の殺菌剤は、
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した銀部材(銀材料)、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である。
【0010】
上記の目的を達成するための本発明の光触媒複合材料は、
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した光触媒材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上であり、
光触媒材料は、カチオンあるいはアニオンがドーピングされた酸化チタンから成る。
【0011】
上記の目的を達成するための本発明の吸着剤あるいは浄化剤は、
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した有機材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上であり、
有機材料は金属を吸着する。
【0012】
本発明の殺菌剤、光触媒複合材料、吸着剤及び浄化剤を総称して、以下、『本発明の多孔質炭素材料複合体』と呼ぶ場合がある。また、多孔質炭素材料に付着させるべき銀部材、光触媒材料、有機材料を総称して、以下、『機能性材料』と呼ぶ場合がある。更には、本発明の殺菌剤、光触媒複合材料、吸着剤及び浄化剤を構成する多孔質炭素材料を、以下、『本発明における多孔質炭素材料』と呼ぶ場合がある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の殺菌剤、光触媒複合材料、吸着剤及び浄化剤は、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上であり、このような要件は多孔質炭素材料によって達成することができる。そして、係る多孔質炭素材料に機能性材料を付着させることによって、多孔質炭素材料単位重量当たりの機能性材料付着量の増加を図ることができ、高い特性、高い機能性を有する多孔質炭素材料複合体を得ることができる。
【0014】
そして、本発明の殺菌剤にあっては、多孔質炭素材料に銀部材を付着させているが故に、高い吸着特性と殺菌効果とを得ることができ、デオドラント製品、脱臭剤、抗菌剤、保存剤としても利用することができる。また、本発明の光触媒複合材料にあっては、光触媒材料をカチオンあるいはアニオンがドーピングされた酸化チタンから構成するが故に、効果的に可視光を吸収することが可能となり、本発明の光触媒複合材料には電荷分離、可視光吸収、紫外線吸収、触媒特性が付与され、光触媒効果により、半永久的に使用可能な有害物質分解剤、有害物質除去剤としての応用が可能となる。更には、本発明の吸着剤及び浄化剤にあっては、多孔質炭素材料に有機材料を付着(担持、吸着、結合)させるが故に、効果的な金属(金属原子や金属イオン)の吸着が可能となる。
【0015】
しかも、本発明における多孔質炭素材料は、細孔の容積が規定され、従来の活性炭の有するマイクロ領域(<2nm)の細孔に加えて、従来の活性炭では実現できないメソ領域(2〜50nm)の細孔を有している。そして、本発明の殺菌剤にあっては、このような細孔サイズによって、臭いの原因分子に対して高い吸着能を示すし、これに加えて、多孔質炭素材料の有するマクロ細孔(>50nm)によって菌が吸着され、分散させられることによっても、菌の増殖が抑えられる。また、本発明の光触媒複合材料にあっては、このような細孔サイズによって光触媒材料を極めて効果的に多孔質炭素材料に付着させることができ、光触媒作用による分解を効果的に生じさせることができる。更には、環境浄化用材料としての本発明の光触媒複合材料、吸着剤、浄化剤において、このような細孔サイズは、有害物質の吸着に対して有効に作用すると考えられ、これと同時に、光触媒材料や有機材料を極めて効果的に多孔質炭素材料に付着させることができ、有害物質の分解、無毒化を効果的に生じさせることができる。しかも、多孔質炭素材料内部における有害物質の拡散が促進され、分解を一層効果的に生じさせることができ、水の浄化や空気の浄化を極めて効果的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施例1−A及び実施例1−Bの殺菌剤、並びに、比較例1の試料の電子顕微鏡像である。
【図2】図2の(A)、(B)、(C)は、実施例1−A及び実施例1−Bの殺菌剤、並びに、比較例1の試料の粉末X線回折法にて得られたX線回折結果のチャートであり、図2の(D)は、X線回折分析におけるAgの標準データである。
【図3】図3の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例1−A及び実施例1−Bの殺菌剤、並びに、比較例1の試料におけるメソ細孔の細孔分布及びマイクロ細孔の細孔分布を表すグラフである。
【図4】図4は、実施例1−A、実施例1−B及び比較例1の、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布の測定結果を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例2の光触媒複合材料において、光触媒材料が光のエネルギーを吸収する状態を概念的に示す図である。
【図6】図6は、TiO2の光吸収特性を示すグラフである。
【図7】図7は、実施例2−A及び実施例2−Bの試料における細孔(メソ細孔)分布の測定結果を示すグラフである。
【図8】図8は、実施例2−A及び実施例2−Bの、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布の測定結果を示すグラフである。
【図9】図9は、実施例2−Aの光触媒複合材料及び比較例2の試料がタンニン酸水溶液を経時的に分解する状態を示すグラフである。
【図10】図10は、実施例2−Bの光触媒複合材料及び比較例2の試料がメチルオレンジ水溶液を経時的に分解する状態を示すグラフである。
【図11】図11の(A)は、実施例2−Bの試料及び市販の多孔質炭素に基づくミクロシスチンの分解試験の結果を示すグラフであり、図11の(B)は、実施例2−Bの試料におけるミクロシスチンの分解を説明する概念図である。
【図12】図12は、実施例3の吸着剤及び浄化剤において、有機材料としてポリエチレンイミンが多孔質炭素材料に付着した状態を模式的に示す図である。
【図13】図13は、実施例3の吸着剤及び浄化剤において、FeCl3・6H2Oでの処理を行うことで、イオン交換能を高めることができる状態を模式的に示す図である。
【図14】図14は、実施例3の吸着剤及び浄化剤及び比較例3の活性炭がクロム酸カリウムを吸着する状態を示すグラフである。
【図15】図15は、実施例3の吸着剤及び浄化剤がクロム酸イオンを吸着する状態を模式的に示す図である。
【図16】図16は、実施例3及び比較例3の、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の殺菌剤、光触媒複合材料、吸着剤及び浄化剤、全般に関する説明
2.実施例1(本発明の殺菌剤)
3.実施例2(本発明の光触媒複合材料)
4.実施例3(本発明の吸着剤及び浄化剤)、その他
【0018】
[本発明の殺菌剤、光触媒複合材料、吸着剤及び浄化剤、全般に関する説明]
本発明の殺菌剤において、銀部材(銀材料)は、銀イオンを含むイオン;銀、銀合金若しくは銀イオンを含む粒子;又は、銀、銀合金若しくは銀イオンを含む薄膜から成る構成とすることができる。ここで、銀合金として、銀とルテニウムの合金、銀とロジウムの合金、銀とパラジウムの合金、銀と金の合金、銀と白金の合金、銀とコバルトの合金、銀とニッケルの合金、銀と銅の合金を例示することができるし、銀イオンとして、硝酸銀の形態、塩化銀の形態、硫酸銀の形態を例示することができる。多孔質炭素材料に銀部材を付着させる方法として、銀塩水溶液への含浸、更には、還元剤による銀の還元析出といった方法を例示することができる。
【0019】
また、本発明の光触媒複合材料において、光触媒材料は、波長200nm乃至600nmの光のエネルギーを吸収する構成とすることができる。光触媒材料は、カチオン(陽イオン)あるいはアニオン(陰イオン)がドーピングされた酸化チタンから成るが、ここで、カチオンの具体例として、クロムイオン、鉄イオン、銀イオン、白金イオン、銅イオン、タングステンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオンを例示することができるし、アニオンの具体例として、窒素イオン、炭素イオン、硫黄イオンを例示することができる。酸化チタンにカチオンあるいはアニオンをドーピングする方法として、カチオンあるいはアニオンを含む物質と酸化チタンの原料とを混合した状態で結晶成長させる方法、カチオンあるいはアニオンを含む気体状の物質と酸化チタンの気体状原料を用いて結晶成長させる方法、酸化チタン合成後にその表面にカチオンあるいはアニオンを担持させる方法を例示することができる。酸化チタンの多孔質炭素材料への付着の形態として、微粒子の状態での付着、薄膜の状態での付着を例示することができる。尚、酸化チタンの代わりに酸化亜鉛(ZnO)を用いることもできる。
【0020】
本発明の光触媒複合材料から浄化剤を得ることができる。有害物質の分解、除去にあっては、本発明の光触媒複合材料に可視光を照射すればよい。有害物質として水中あるいは空気中に存在する有害物質を挙げることができ、具体的には、ミクロシスチン類や各種のウィルス、アレルギー発生原因物質を例示することができる。この浄化剤は、水の浄化剤あるいは空気の浄化剤として機能し、例えば、空気浄化装置のフィルターとしての応用が可能である。本発明の光触媒複合材料(あるいは浄化剤)の使用形態として、シート状での使用、カラムやカートリッジに充填された状態での使用、バインダー(結着剤)等を用いて所望の形状に賦形した状態での使用、粉状での使用を例示することができる。また、溶液中に分散させた浄化剤や吸着剤として用いる場合、表面を親水処理又は疎水処理して使用することができる。
【0021】
本発明の吸着剤あるいは浄化剤において、有機材料として、フェノール基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、ケトン基、リン酸基、アルキル基、エーテル基及びチオニル基から成る群から選択された少なくとも1種類の基を有する有機材料、具体的には、例えば、ポリエチレンイミンを挙げることができる。また、金属(金属原子及び金属イオンを含む)として、クロム、水銀、ヒ素、鉛、カドミウム、スズ、銅、亜鉛、リチウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、バナジウム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ルビジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、白金、タリウム、ビスマス、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、又は、ルテチウムを挙げることができる。多孔質炭素材料に有機材料を付着(担持、吸着、結合、表面修飾といった概念を包含する)させる方法として、例えば、多孔質炭素材料と有機分子との間にC−C結合、C−N結合、CO結合等を形成する方法、SiO2をコーティングしてシランカップリングにて結合させる方法、混合して撹拌する方法を例示することができる。有機材料の多孔質炭素材料への付着の形態として、層状での付着、島状での付着を例示することができる。尚、本発明の吸着剤や浄化剤は、例えば、陰イオン交換能や陽イオン交換能を高め、あるいは又、金属配位等を代えることで、様々な形態の金属(金属原子、金属イオン)の吸着が可能である。また、溶媒あるいは溶剤への分散性を向上させることが可能である。
【0022】
ここで、本発明の吸着剤あるいは浄化剤は、例えば、水の浄化剤として機能し、例えば、フィルターとしての応用が可能である。そして、その使用形態として、シート状での使用、カラムやカートリッジに充填された状態での使用、バインダー(結着剤)等を用いて所望の形状に賦形した状態での使用、粉状での使用を例示することができる。また、煙などの気体中に含まれる金属を吸収することも可能である。
【0023】
本発明における多孔質炭素材料の原料を、ケイ素(Si)を含有する植物由来の材料とする場合、具体的には、限定するものではないが、多孔質炭素材料は、ケイ素(Si)の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素(Si)の含有率が、5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下であることが望ましい。
【0024】
本発明の多孔質炭素材料複合体は、例えば、植物由来の材料を400゜C乃至1400゜Cにて炭素化した後、酸又はアルカリで処理することによって、多孔質炭素材料を得た後、該多孔質炭素材料に機能性材料を付着させることで製造することができる。このような本発明における多孔質炭素材料の製造方法(以下、単に、『多孔質炭素材料の製造方法』と呼ぶ場合がある)において、植物由来の材料を400゜C乃至1400゜Cにて炭素化することにより得られた材料であって、酸又はアルカリでの処理を行う前の材料を、『多孔質炭素材料前駆体』あるいは『炭素質物質』と呼ぶ。
【0025】
多孔質炭素材料の製造方法において、酸又はアルカリでの処理の後、多孔質炭素材料に機能性材料を付着させる前に、賦活処理を施す工程を含めることができるし、賦活処理を施した後、酸又はアルカリでの処理を行ってもよい。また、このような好ましい形態を含む多孔質炭素材料の製造方法にあっては、使用する植物由来の材料にも依るが、植物由来の材料を炭素化する前に、炭素化のための温度よりも低い温度(例えば、400゜C〜700゜C)にて、酸素を遮断した状態で植物由来の材料に加熱処理(予備炭素化処理)を施してもよい。これによって、炭素化の過程において生成するであろうタール成分を抽出することが出来る結果、炭素化の過程において生成するであろうタール成分を減少あるいは除去することができる。尚、酸素を遮断した状態は、例えば、窒素ガスやアルゴンガスといった不活性ガス雰囲気とすることで、あるいは又、真空雰囲気とすることで、あるいは又、植物由来の材料を一種の蒸し焼き状態とすることで達成することができる。また、多孔質炭素材料の製造方法にあっては、使用する植物由来の材料にも依るが、植物由来の材料中に含まれるミネラル成分や水分を減少させるために、また、炭素化の過程での異臭の発生を防止するために、植物由来の材料をアルコール(例えば、メチルアルコールやエチルアルコール、イソプロピルアルコール)に浸漬してもよい。尚、多孔質炭素材料の製造方法にあっては、その後、予備炭素化処理を実行してもよい。不活性ガス中で加熱処理を施すことが好ましい材料として、例えば、木酢液(タールや軽質油分)を多く発生する植物を挙げることができる。また、アルコールによる前処理を施すことが好ましい材料として、例えば、ヨウ素や各種ミネラルを多く含む海藻類を挙げることができる。
【0026】
多孔質炭素材料の製造方法にあっては、植物由来の材料を400゜C乃至1400゜Cにて炭素化するが、ここで、炭素化とは、一般に、有機物質(本発明における多孔質炭素材料にあっては、植物由来の材料)を熱処理して炭素質物質に変換することを意味する(例えば、JIS M0104−1984参照)。尚、炭素化のための雰囲気として、酸素を遮断した雰囲気を挙げることができ、具体的には、真空雰囲気、窒素ガスやアルゴンガスといった不活性ガス雰囲気、植物由来の材料を一種の蒸し焼き状態とする雰囲気を挙げることができる。炭素化温度に至るまでの昇温速度として、限定するものではないが、係る雰囲気下、1゜C/分以上、好ましくは3゜C/分以上、より好ましくは5゜C/分以上を挙げることができる。また、炭素化時間の上限として、10時間、好ましくは7時間、より好ましくは5時間を挙げることができるが、これに限定するものではない。炭素化時間の下限は、植物由来の材料が確実に炭素化される時間とすればよい。また、植物由来の材料を、所望に応じて粉砕して所望の粒度としてもよいし、分級してもよい。植物由来の材料を予め洗浄してもよい。あるいは又、得られた多孔質炭素材料前駆体や多孔質炭素材料を、所望に応じて粉砕して所望の粒度としてもよいし、分級してもよい。あるいは又、賦活処理後の多孔質炭素材料を、所望に応じて粉砕して所望の粒度としてもよいし、分級してもよい。更には、最終的に得られた多孔質炭素材料に殺菌処理を施してもよい。炭素化のために使用する炉の形式、構成、構造に制限はなく、連続炉とすることもできるし、回分炉(バッチ炉)とすることもできる。
【0027】
多孔質炭素材料の製造方法において、上述したとおり、賦活処理を施せば、孔径が2nmよりも小さいマイクロ細孔(後述する)を増加させることができる。賦活処理の方法として、ガス賦活法、薬品賦活法を挙げることができる。ここで、ガス賦活法とは、賦活剤として酸素や水蒸気、炭酸ガス、空気等を用い、係るガス雰囲気下、700゜C乃至1400゜Cにて、好ましくは700゜C乃至1000゜Cにて、より好ましくは800゜C乃至1000゜Cにて、数十分から数時間、多孔質炭素材料を加熱することにより、多孔質炭素材料中の揮発成分や炭素分子により微細構造を発達させる方法である。尚、より具体的には、加熱温度は、植物由来の材料の種類、ガスの種類や濃度等に基づき、適宜、選択すればよい。薬品賦活法とは、ガス賦活法で用いられる酸素や水蒸気の替わりに、塩化亜鉛、塩化鉄、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、硫酸等を用いて賦活させ、塩酸で洗浄、アルカリ性水溶液でpHを調整し、乾燥させる方法である。
【0028】
多孔質炭素材料の製造方法にあっては、酸又はアルカリでの処理によって、炭素化後の植物由来の材料中のケイ素成分を除去する。ここで、ケイ素成分として、二酸化ケイ素や酸化ケイ素、酸化ケイ素塩といったケイ素酸化物を挙げることができる。このように、炭素化後の植物由来の材料中のケイ素成分を除去することで、高い比表面積を有する多孔質炭素材料を得ることができ、多孔質炭素材料単位重量当たりの機能性材料付着量の増加を図ることができる。場合によっては、ドライエッチング法に基づき、炭素化後の植物由来の材料中のケイ素成分を除去してもよい。即ち、本発明における多孔質炭素材料の好ましい形態にあっては、原料として、ケイ素(Si)を含有する植物由来の材料を用いるが、多孔質炭素材料前駆体あるいは炭素質物質に変換する際、植物由来の材料を高温(例えば、400゜C乃至1400゜C)にて炭素化することによって、植物由来の材料中に含まれるケイ素が、炭化ケイ素(SiC)とはならずに、二酸化ケイ素(SiOx)や酸化ケイ素、酸化ケイ素塩といったケイ素成分(ケイ素酸化物)として存在する。それ故、次の工程において酸又はアルカリ(塩基)で処理することにより、二酸化ケイ素や酸化ケイ素、酸化ケイ素塩といったケイ素成分(ケイ素酸化物)が除去される結果、窒素BET法による大きな比表面積の値を得ることができる。しかも、本発明における多孔質炭素材料の好ましい形態にあっては、天然物由来の環境融和材料であり、その微細構造は、植物由来の材料である原料中に予め含まれるケイ素成分(ケイ素酸化物)を酸又はアルカリで処理し、除去することによって得られる。従って、細孔の配列は植物の有する生体規則性を維持している。
【0029】
上述したとおり、多孔質炭素材料は、植物由来の材料を原料とすることができる。ここで、植物由来の材料として、米(稲)、大麦、小麦、ライ麦、稗(ヒエ)、粟(アワ)等の籾殻や藁、珈琲豆、茶葉(例えば、緑茶や紅茶等の葉)、サトウキビ類(より具体的には、サトウキビ類の絞り滓)、トウモロコシ類(より具体的には、トウモロコシ類の芯)、果実の皮(例えば、ミカンやバナナの皮等)、あるいは又、葦、茎ワカメを挙げることができるが、これらに限定するものではなく、その他、例えば、陸上に植生する維管束植物、シダ植物、コケ植物、藻類、海草を挙げることができる。尚、これらの材料を、原料として、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。また、植物由来の材料の形状や形態も特に限定はなく、例えば、籾殻や藁そのものでもよいし、あるいは乾燥処理品でもよい。更には、ビールや洋酒等の飲食品加工において、発酵処理、焙煎処理、抽出処理等の種々の処理を施されたものを使用することもできる。特に、産業廃棄物の資源化を図るという観点から、脱穀等の加工後の藁や籾殻を使用することが好ましい。これらの加工後の藁や籾殻は、例えば、農業協同組合や酒類製造会社、食品会社、食品加工会社から、大量、且つ、容易に入手することができる。
【0030】
本発明の多孔質炭素材料複合体において、機能性材料の種類や構成、構造、形態にも依存するが、機能性材料の多孔質炭素材料への付着の形態として、上述したとおり、多孔質炭素材料の表面(細孔内を含む)に、イオンとして付着している状態、微粒子として付着している状態、薄膜状に付着している状態、海・島状(多孔質炭素材料の表面を「海」とみなした場合、機能性材料が「島」に相当する)に付着している状態を挙げることができる。尚、付着とは、異種の材料間の接着現象を指す。多孔質炭素材料に機能性材料を付着させる一般的な方法として、機能性材料にも依るが、機能性材料又はその前駆体を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法、多孔質炭素材料の表面に無電解メッキ法(化学メッキ法)又は化学還元反応にて機能性材料を析出させる方法、機能性材料の前駆体を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して、熱処理を行うことによって多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法、機能性材料の前駆体を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して、超音波照射処理を行うことによって多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法、機能性材料の前駆体を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して、ゾル・ゲル反応を行うことによって多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法を挙げることができる。
【0031】
本発明における多孔質炭素材料には、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)や、リン(P)、硫黄(S)等の非金属元素や、遷移元素等の金属元素が含まれていてもよい。マグネシウム(Mg)の含有率として0.01重量%以上3重量%以下、カリウム(K)の含有率として0.01重量%以上3重量%以下、カルシウム(Ca)の含有率として0.05重量%以上3重量%以下、リン(P)の含有率として0.01重量%以上3重量%以下、硫黄(S)の含有率として0.01重量%以上3重量%以下を挙げることができる。尚、これらの元素の含有率は、本発明の多孔質炭素材料複合体の使用用途によって異なるが、比表面積の値の増加といった観点からは、少ない方が好ましい。多孔質炭素材料には、上記した元素以外の元素を含んでいてもよく、上記した各種元素の含有率の範囲も、本発明の多孔質炭素材料複合体の使用用途によって変更し得ることは云うまでもない。
【0032】
本発明において、各種元素の分析は、例えば、エネルギー分散型X線分析装置(例えば、日本電子株式会社製のJED−2200F)を用い、エネルギー分散法(EDS)により行うことができる。ここで、測定条件を、例えば、走査電圧15kV、照射電流10μAとすればよい。
【0033】
本発明の多孔質炭素材料複合体は、細孔(ポア)を多く有している。細孔として、孔径が2nm乃至50nmの『メソ細孔』、及び、孔径が2nmよりも小さい『マイクロ細孔』が含まれる。具体的には、メソ細孔として、例えば、20nm以下の孔径の細孔を多く含み、特に、10nm以下の孔径の細孔を多く含んでいる。また、マイクロ細孔として、例えば、孔径が1.9nm程度の細孔と、1.5nm程度の細孔と、0.8nm〜1nm程度の細孔とを多く含んでいる。本発明の多孔質炭素材料複合体にあっては、BJH法及びMP法による細孔の容積は0.1cm3/グラム以上であるが、0.3cm3/グラム以上であることが一層好ましい。あるいは又、BJH法による細孔の容積は、好ましくは0.1cm3/グラム以上、より好ましくは0.3cm3/グラム以上、より一層好ましくは0.5cm3/グラム以上であることが望ましい。
【0034】
本発明の多孔質炭素材料複合体において、窒素BET法による比表面積の値(以下、単に、『比表面積の値』と呼ぶ場合がある)は、より一層優れた機能性を得るために、好ましくは50m2/グラム以上、より好ましくは100m2/グラム以上、更に一層好ましくは400m2/グラム以上であることが望ましい。
【0035】
窒素BET法とは、吸着剤(ここでは、多孔質炭素材料複合体)に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより吸着等温線を測定し、測定したデータを式(1)で表されるBET式に基づき解析する方法であり、この方法に基づき比表面積や細孔容積等を算出することができる。具体的には、窒素BET法により比表面積の値を算出する場合、先ず、吸着剤(多孔質炭素材料複合体)に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより、吸着等温線を求める。そして、得られた吸着等温線から、式(1)あるいは式(1)を変形した式(1’)に基づき[p/{Va(p0−p)}]を算出し、平衡相対圧(p/p0)に対してプロットする。そして、このプロットを直線と見なし、最小二乗法に基づき、傾きs(=[(C−1)/(C・Vm)])及び切片i(=[1/(C・Vm)])を算出する。そして、求められた傾きs及び切片iから式(2−1)、式(2−2)に基づき、Vm及びCを算出する。更には、Vmから、式(3)に基づき比表面積asBETを算出する(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第62頁〜第66頁参照)。尚、この窒素BET法は、JIS R 1626−1996「ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法」に準じた測定方法である。
【0036】
Va=(Vm・C・p)/[(p0−p){1+(C−1)(p/p0)}] (1)
[p/{Va(p0−p)}]
=[(C−1)/(C・Vm)](p/p0)+[1/(C・Vm)] (1’)
Vm=1/(s+i) (2−1)
C =(s/i)+1 (2−2)
asBET=(Vm・L・σ)/22414 (3)
【0037】
但し、
Va:吸着量
Vm:単分子層の吸着量
p :窒素の平衡時の圧力
p0:窒素の飽和蒸気圧
L :アボガドロ数
σ :窒素の吸着断面積
である。
【0038】
窒素BET法により細孔容積Vpを算出する場合、例えば、求められた吸着等温線の吸着データを直線補間し、細孔容積算出相対圧で設定した相対圧での吸着量Vを求める。この吸着量Vから式(4)に基づき細孔容積Vpを算出することができる(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第62頁〜第65頁参照)。尚、窒素BET法に基づく細孔容積を、以下、単に『細孔容積』と呼ぶ場合がある。
【0039】
Vp=(V/22414)×(Mg/ρg) (4)
【0040】
但し、
V :相対圧での吸着量
Mg:窒素の分子量
ρg:窒素の密度
である。
【0041】
メソ細孔の孔径は、例えば、BJH法に基づき、その孔径に対する細孔容積変化率から細孔の分布として算出することができる。BJH法は、細孔分布解析法として広く用いられている方法である。BJH法に基づき細孔分布解析をする場合、先ず、吸着剤(多孔質炭素材料複合体)に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより、脱着等温線を求める。そして、求められた脱着等温線に基づき、細孔が吸着分子(例えば窒素)によって満たされた状態から吸着分子が段階的に着脱する際の吸着層の厚さ、及び、その際に生じた孔の内径(コア半径の2倍)を求め、式(5)に基づき細孔半径rpを算出し、式(6)に基づき細孔容積を算出する。そして、細孔半径及び細孔容積から細孔径(2rp)に対する細孔容積変化率(dVp/drp)をプロットすることにより細孔分布曲線が得られる(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第85頁〜第88頁参照)。
【0042】
rp=t+rk (5)
Vpn=Rn・dVn−Rn・dtn・c・ΣApj (6)
但し、
Rn=rpn2/(rkn−1+dtn)2 (7)
【0043】
ここで、
rp:細孔半径
rk:細孔半径rpの細孔の内壁にその圧力において厚さtの吸着層が吸着した場合のコア半径(内径/2)
Vpn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの細孔容積
dVn:そのときの変化量
dtn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの吸着層の厚さtnの変化量
rkn:その時のコア半径
c:固定値
rpn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの細孔半径
である。また、ΣApjは、j=1からj=n−1までの細孔の壁面の面積の積算値を表す。
【0044】
マイクロ細孔の孔径は、例えば、MP法に基づき、その孔径に対する細孔容積変化率から細孔の分布として算出することができる。MP法により細孔分布解析を行う場合、先ず、吸着剤(多孔質炭素材料複合体)に窒素を吸着させることにより、吸着等温線を求める。そして、この吸着等温線を吸着層の厚さtに対する細孔容積に変換する(tプロットする)。そして、このプロットの曲率(吸着層の厚さtの変化量に対する細孔容積の変化量)に基づき細孔分布曲線を得ることができる(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第72頁〜第73頁、第82頁参照)。
【0045】
JIS Z8831−2:2010 「粉体(固体)の細孔径分布及び細孔特性−第2部:ガス吸着によるメソ細孔及びマクロ細孔の測定方法」、及び、JIS Z8831−3:2010 「粉体(固体)の細孔径分布及び細孔特性−第3部:ガス吸着によるミクロ細孔の測定方法」に規定された非局在化密度汎関数法(NLDFT法,Non Localized Density Functional Theory 法)にあっては、解析ソフトウェアとして、日本ベル株式会社製自動比表面積/細孔分布測定装置「BELSORP−MAX」に付属するソフトウェアを用いる。前提条件としてモデルをシリンダ形状としてカーボンブラック(CB)を仮定し、細孔分布パラメータの分布関数を「no−assumption」とし、得られた分布データにはスムージングを10回施す。
【0046】
ここで、本発明の殺菌剤を非局在化密度汎関数法に基づき規定すると、上記の目的を達成するための本発明の殺菌剤は、
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した銀部材(銀材料)、
から成る。
【0047】
また、本発明の光触媒複合材料を非局在化密度汎関数法に基づき規定すると、上記の目的を達成するための本発明の光触媒複合材料は、
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した光触媒材料、
から成り、
光触媒材料は、カチオンあるいはアニオンがドーピングされた酸化チタンから成る。
【0048】
更には、本発明の吸着剤あるいは浄化剤を非局在化密度汎関数法に基づき規定すると、上記の目的を達成するための本発明の吸着剤あるいは浄化剤は、
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した有機材料、
から成り、
有機材料は金属を吸着する。
【0049】
そして、本発明の殺菌剤、本発明の光触媒複合材料、本発明の吸着剤あるいは浄化剤にあっては、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-9m乃至5×10-7mの細孔の容積の合計が0.1cm3/グラム以上である。あるいは又、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布において、3nm乃至20nmの範囲内に少なくとも1つのピークを有し、3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める割合は、全細孔の容積総計の0.2以上である。
【0050】
多孔質炭素材料前駆体を酸又はアルカリで処理するが、具体的な処理方法として、例えば、酸あるいはアルカリの水溶液に多孔質炭素材料前駆体を浸漬する方法や、多孔質炭素材料前駆体と酸又はアルカリとを気相で反応させる方法を挙げることができる。より具体的には、酸によって処理する場合、酸として、例えば、フッ化水素、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム等の酸性を示すフッ素化合物を挙げることができる。フッ素化合物を用いる場合、多孔質炭素材料前駆体に含まれるケイ素成分におけるケイ素元素に対してフッ素元素が4倍量となればよく、フッ素化合物水溶液の濃度は10重量%以上であることが好ましい。フッ化水素酸によって、多孔質炭素材料前駆体に含まれるケイ素成分(例えば、二酸化ケイ素)を除去する場合、二酸化ケイ素は、化学式(A)又は化学式(B)に示すようにフッ化水素酸と反応し、ヘキサフルオロケイ酸(H2SiF6)あるいは四フッ化ケイ素(SiF4)として除去され、多孔質炭素材料を得ることができる。そして、その後、洗浄、乾燥を行えばよい。
【0051】
SiO2+6HF → H2SiF6+2H2O (A)
SiO2+4HF → SiF4+2H2O (B)
【0052】
また、アルカリ(塩基)によって処理する場合、アルカリとして、例えば、水酸化ナトリウムを挙げることができる。アルカリの水溶液を用いる場合、水溶液のpHは11以上であればよい。水酸化ナトリウム水溶液によって、多孔質炭素材料前駆体に含まれるケイ素成分(例えば、二酸化ケイ素)を除去する場合、水酸化ナトリウム水溶液を熱することにより、二酸化ケイ素は、化学式(C)に示すように反応し、ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)として除去され、多孔質炭素材料を得ることができる。また、水酸化ナトリウムを気相で反応させて処理する場合、水酸化ナトリウムの固体を熱することにより、化学式(C)に示すように反応し、ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)として除去され、多孔質炭素材料を得ることができる。そして、その後、洗浄、乾燥を行えばよい。
【0053】
SiO2+2NaOH → Na2SiO3+H2O (C)
【0054】
あるいは又、本発明における多孔質炭素材料として、例えば、特開2010−106007に開示された空孔が3次元的規則性を有する多孔質炭素材料(所謂、逆オパール構造を有する多孔質炭素材料)、具体的には、1×10-9m乃至1×10-5mの平均直径を有する3次元的に配列された球状の空孔を備え、表面積が3×102m2/グラム以上の多孔質炭素材料、好ましくは、巨視的に、結晶構造に相当する配置状態にて空孔が配列されており、あるいは又、巨視的に、面心立方構造における(111)面配向に相当する配置状態にて、その表面に空孔が配列されている多孔質炭素材料を用いることもできる。
【実施例1】
【0055】
実施例1は、本発明の殺菌剤に関する。実施例1の殺菌剤は、
(A)多孔質炭素材料、具体的には、ケイ素を含有する植物由来の材料を原料とした多孔質炭素材料、より具体的には、ケイ素の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素の含有率が1重量%以下である多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した銀部材(銀材料)、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である。
【0056】
あるいは又、実施例1の殺菌剤は、
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した銀部材(銀材料)、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-9m乃至5×10-7mの細孔の容積の合計が0.1cm3/グラム以上である。あるいは又、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布において、3nm乃至20nmの範囲内に少なくとも1つのピークを有し、3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める割合は、全細孔の容積総計の0.2以上である。
【0057】
実施例1にあっては、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を米(稲)の籾殻とした。そして、実施例1における多孔質炭素材料は、原料としての籾殻を炭素化して炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換し、次いで、酸処理を施すことで得られる。そして、多孔質炭素材料を得た後、多孔質炭素材料に機能性材料(銀部材)を付着(担持、吸着、結合)させることで多孔質炭素材料複合体(殺菌剤)を得ることができる。具体的には、実施例1にあっては、銀部材は銀(金属の銀)から成り、微粒子の形態、形状で、多孔質炭素材料の表面(細孔内を含む)に付着している。以下、実施例1の殺菌剤の製造方法を説明する。
【0058】
[工程−100A]
実施例1の殺菌剤の製造においては、先ず、植物由来の材料を400゜C乃至1400゜Cにて炭素化した後、酸又はアルカリで処理することによって、多孔質炭素材料を得た。即ち、先ず、籾殻に対して、不活性ガス中で加熱処理(予備炭素化処理)を施す。具体的には、籾殻を、窒素気流中において500゜C、5時間、加熱することにより炭化させ、炭化物を得た。尚、このような処理を行うことで、次の炭素化の際に生成されるであろうタール成分を減少あるいは除去することができる。その後、この炭化物の10グラムをアルミナ製の坩堝に入れ、窒素気流中(5リットル/分)において5゜C/分の昇温速度で800゜Cまで昇温させた。そして、800゜Cで1時間、炭素化して、炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換した後、室温まで冷却した。尚、炭素化及び冷却中、窒素ガスを流し続けた。次に、この多孔質炭素材料前駆体を46容積%のフッ化水素酸水溶液に一晩浸漬することで酸処理を行った後、水及びエチルアルコールを用いてpH7になるまで洗浄した。尚、こうして得られた多孔質炭素材料を、便宜上、『多孔質炭素材料−A』と呼ぶ。次いで、120°Cにて乾燥させた後、900゜Cで水蒸気気流中にて3時間加熱させることで賦活処理を行うことで、多孔質炭素材料を得ることができた。尚、こうして得られた多孔質炭素材料を、便宜上、『多孔質炭素材料−B』と呼ぶ。
【0059】
[工程−110A]
次いで、得られた多孔質炭素材料−Bに銀部材を付着(担持、吸着、結合)させた。尚、多孔質炭素材料に機能性材料を付着させる処理を、以下、『複合化処理』と呼ぶ場合がある。具体的には、182ミリリットルの蒸留水に0.43グラムの多孔質炭素材料−Bを添加し、30分間、撹拌した。そして、そこへ5ミリモル/リットルの硝酸銀水溶液を8ミリリットルを添加して、更に1時間撹拌した後に、40ミリモル/リットルの水素化ホウ素ナトリウムを10ミリリットル添加して、一晩撹拌した。得られた粉末をフィルターによって濾過し、蒸留水で洗浄後、120゜Cで乾燥することで、実施例1−Aの殺菌剤を得た。
【0060】
[工程−110B]
あるいは又、得られた多孔質炭素材料−Bに、上述とは異なる方法で銀部材を付着(担持、吸着、結合)させた。具体的には、1.33ミリモル/リットルの硝酸銀水溶液、15ミリリットルに0.215グラムの多孔質炭素材料−Bを添加し、30分間、撹拌した。その後、100゜Cに加熱し、沸騰等を確認した後、20ミリモル/リットルのクエン酸3ナトリウム水溶液を5ミリリットル滴下し、15分間、還流した。そして、得られた粉末をフィルターによって濾過し、蒸留水で洗浄後、120゜Cで乾燥することで、実施例1−Bの殺菌剤を得た。
【0061】
また、多孔質炭素材料−Bを、比較例1として各種の試験に供した。
【0062】
エネルギー分散型X線分析装置を用い、エネルギー分散法に基づき実施例1−A、実施例1−B、比較例1の元素分析を行った結果を、以下の表1に示す。
【0063】
[表1]
【0064】
表1から、実施例1−A及び実施例1−Bの殺菌剤にあっては、銀の組成比が増加していることから、[工程−110A]あるいは[工程−110B]の銀析出処理によって多孔質炭素材料に銀部材が付着(担持、吸着、結合)されたと推察される。
【0065】
実施例1−Aの殺菌剤、実施例1−Bの殺菌剤、比較例1の試料のそれぞれの電子顕微鏡像を図1に示すが、これらの電子顕微鏡像から、実施例1−A及び実施例1−Bの殺菌剤にあっては、粒径数十nm程度の微粒子が析出している様子が確認できた。
【0066】
更には、X線回折分析により、生成物の同定及び粒径の見積もりを行った(図2の(A)、(B)、(C)及び(D)参照)。ここで、株式会社リガク製のX線回折装置(RINT−TTRII)を用い、X線源をCu−Kα線とした。尚、波長は0.15405nmである。また、印加電圧を50キロボルト、走査ステップを0.04°とした。実施例1−A及び実施例1−Bの殺菌剤からは、Agの標準データに見られる回折線が確認でき、このことから炭素とAgの複合体が形成されていることが示唆された。また、シェラーの式より、析出した銀の粒径は、実施例1−A及び実施例1−B共に、40nm程度であることが判った。
【0067】
比表面積の値及び細孔容積を求めるための測定機器として、BELSORP−mini(日本ベル株式会社製)を用い、窒素吸脱着試験を行った。測定条件として、測定平衡相対圧(p/p0)を0.01〜0.99とした。そして、BELSORP解析ソフトウェアに基づき、比表面積の値及び細孔容積を算出した。また、メソ細孔及びマイクロ細孔の細孔径分布は、上述した測定機器を用いた窒素吸脱着試験を行い、BELSORP解析ソフトウェアによりBJH法及びMP法に基づき算出した。尚、後述する実施例、比較例においても、比表面積の値及び細孔容積、メソ細孔及びマイクロ細孔の細孔径分布の測定を同様の方法で行った。更には、非局在化密度汎関数法(NLDFT法)に基づく解析にあっては、日本ベル株式会社製自動比表面積/細孔分布測定装置「BELSORP−MAX」付属の解析ソフトウェアを使用した。尚、測定に際しては、試料の前処理として、200゜Cで3時間の乾燥を行った。
【0068】
実施例1−A、実施例1−Bの殺菌剤及び比較例1(多孔質炭素材料−B)の試料について、比表面積の値及び細孔容積を測定したところ、表2に示す結果が得られた。また、メソ細孔及びマイクロ細孔の細孔径の分布を測定したところ、図3の(A)及び(B)に示す結果が得られた。尚、表1中、「比表面積」並びに「全細孔容積」は、窒素BET法による比表面積(単位:m2/グラム)及び全細孔容積を示し、「BJH(T)」及び「MP(T)」は、BJH法及びMP法による累計細孔容積(単位:m2/グラム)の値を指す。更には、図4に、実施例1−A、実施例1−B及び比較例1の、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布の測定結果を示すが、全細孔の容積総計に対する3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める割合は、以下のとおりであった。尚、比較例1は多孔質炭素材料−Bであるが故に、実施例1−A、実施例1−Bと、細孔の容積の合計の占める割合に、左程、大きな差は認められない。
実施例1−A:0.435 (全細孔の容積総計:1.381cm3/グラム)
実施例1−B:0.538 (全細孔の容積総計:1.293cm3/グラム)
比較例1 :0.435 (全細孔の容積総計:1.533cm3/グラム)
【0069】
[表2]
比表面積 全細孔容積 BJH(T) MP(T)
実施例1−A 1169 1.04 0.64 0.50
実施例1−B 1217 1.08 0.66 0.52
比較例1(多孔質炭素材料−B) 1300 1.16 0.76 0.48
多孔質炭素材料−A 566 0.60 0.47 0.17
【0070】
複合化処理を行った実施例1−A、実施例1−Bの殺菌剤にあっては、比表面積の値及び全細孔容積は、複合化処理を行っていない比較例1の試料よりも小さい。この結果は、複合化処理を行うことによって、多孔質炭素材料の細孔が銀粒子の付着(析出)によって塞がれ、あるいは又、銀粒子の付着(析出)によって重量が増加したことに起因するものと考えられる。
【0071】
図3の細孔分布曲線から、全体的に細孔容積の減少が認められ、特に、図3の(A)に示したメソ細孔の領域において、比較例1と比べて、実施例1−A、実施例1−Bにあっては、細孔容積の減少が顕著に確認された。これは、機能性材料の析出に起因するものと考えられる。
【0072】
また、実施例1−A、実施例1−Bの多孔質炭素材料複合体では、ケイ素(Si)の含有率が著しく減少していたことから、多孔質炭素材料前駆体を酸で処理することにより、含まれる二酸化ケイ素といったケイ素成分が除去され、比表面積の値の増加に寄与することが示唆された。更には、酸での処理によって、メソ細孔及びマイクロ細孔が増加することが確認された。後述する実施例においても同様である。また、フッ化水素酸水溶液の代わりに、水酸化ナトリウム水溶液といったアルカリ(塩基)にて処理して得られた多孔質炭素材料においても、同様の結果が得られた。
【0073】
実施例1の殺菌剤にあっては、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上であり、多孔質炭素材料、具体的には、ケイ素の含有率が1重量%以下、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である多孔質炭素材料を用い、係る多孔質炭素材料に銀材料を付着させることによって、多孔質炭素材料単位重量当たりの銀材料付着量の増加を図ることができ、高い消臭能と殺菌効果とを得ることができた。ここで、このような実施例1の殺菌剤は、デオドラント製品、脱臭剤、抗菌剤、保存剤としても利用することができる。
【実施例2】
【0074】
実施例2は、本発明の光触媒複合材料に関する。実施例2の光触媒複合材料(あるいは、この光触媒複合材料に基づく浄化剤)は、
(A)多孔質炭素材料、具体的には、ケイ素を含有する植物由来の材料を原料とした多孔質炭素材料、より具体的には、ケイ素の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素の含有率が1重量%以下である多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した光触媒材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上であり、
光触媒材料は、カチオンあるいはアニオンがドーピングされた酸化チタンから成る。
【0075】
あるいは又、実施例2の光触媒複合材料(あるいは、この光触媒複合材料に基づく浄化剤)は、
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した光触媒材料、
から成り、
光触媒材料は、カチオンあるいはアニオンがドーピングされた酸化チタンから成る。そして、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-9m乃至5×10-7mの細孔の容積の合計が0.1cm3/グラム以上である。あるいは又、実施例2の光触媒複合材料(あるいは、この光触媒複合材料に基づく浄化剤)は、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布において、3nm乃至20nmの範囲内に少なくとも1つのピークを有し、3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める割合は、全細孔の容積総計の0.2以上である。
【0076】
ここで、実施例2において、光触媒材料(機能性材料)は、上述したとおり、光触媒として機能する酸化チタン(TiO2)から構成されている。酸化チタンは、微粒子の状態で多孔質炭素材料へ付着(担持、吸着、結合)している。これによって、多孔質炭素材料複合体には電荷分離、紫外線吸収、触媒特性が付与され、光触媒効果により、半永久的に使用可能な有害物質分解剤、有害物質除去剤としての使用が可能である。しかも、酸化チタンには、カチオンあるいはアニオンがドーピングされているので、例えば、200nm乃至600nmの波長の光のエネルギー、あるいは又、可視光のエネルギーを吸収することが可能である。尚、このエネルギーの吸収の概念図を図5に示す。また、TiO2の光吸収特性を図6に示す。
【0077】
実施例2にあっては、上述した多孔質炭素材料−Bに、カチオンあるいはアニオンがドーピングされた酸化チタンから成る機能性材料を付着(担持、吸着、結合)させたが、具体的には、複合化処理を以下に示すように行った。
【0078】
即ち、エタノール100ミリリットル中に、0.5グラムの多孔質炭素材料−B、4.57ミリリットルの酢酸、及び、適量のオルトチタン酸テトライソプロピル(TIPO)を加えて、1時間、撹拌した。その後、遠心分離を行い、上澄み液を捨て、固相に少量のエタノールを加え、純水100ミリリットル中に超音波を加えながら少量ずつ添加した。その後、再び、遠心分離を行い、得られた固相を100゜Cで乾燥させた。尚、この段階で得られた試料を、『比較例2』の試料とした。次いで、アンモニアガス雰囲気中で、400゜Cで結晶成長させることで、酸化チタンに窒素から成るアニオンをドーピングし、実施例2−Aの光触媒複合材料(浄化剤)を得ることができた。
【0079】
あるいは又、純水150ミリリットルにFeCl3・6H2Oを0.24グラム溶解し、塩酸でpH2とした水溶液に、得られた実施例2−Aの光触媒複合材料を分散させ、1時間、攪拌した後、フィルターによって濾過し、蒸留水で洗浄後、150゜Cで乾燥することで、実施例2−Bの光触媒複合材料(浄化剤)を得ることができた。尚、このような処理は、カチオンとしての鉄イオンを酸化チタンにドーピングすることを目的として行う処理である。
【0080】
X線回析分析(XRD)を行い、実施例2−A及び実施例2−Bの試料にTiO2が含まれていることが確認できた。また、窒素BET法、BJH法及びMP法に基づき比表面積及び全細孔容積を測定した結果を、以下の表3に示す。また、図7に細孔(メソ細孔)分布の測定結果を示す。更には、図8に、実施例2−A及び実施例2−Bの、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布の測定結果を示すが、全細孔の容積総計に対する3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める割合は、以下のとおりであった。
実施例2−A:0.561
実施例2−B:0.367
【0081】
[表3]
実施例2−A 実施例2−B
TiO2含有量(重量%) 23.1 29.1
比表面積 (m2/g) 1235 934
全細孔容積 (cm3/g) 0.9404 0.7088
BJH(T) (cm3/g) 0.5468 0.4254
MP(T) (cm3/g) 0.4993 0.4439
NFDLT (cm3/g) 1.1354 0.9796
【0082】
評価のために、実施例2−A及び比較例2のそれぞれ13ミリグラムを、0.08ミリモル/リットルのタンニン酸水溶液50ミリリットルに加え、24時間、経過後、疑似太陽光を照射した。その結果を図9に示すが、実施例2−Aにあってはタンニン酸水溶液を確実に分解することができた。
【0083】
また、評価のために、実施例2−B及び比較例2のそれぞれ15ミリグラムを、0.15ミリモル/リットルのメチルオレンジ水溶液50ミリリットルに加え、疑似太陽光を照射した。その結果を図10に示すが、実施例2−Bにあっては、照射開始から8時間後にメチルオレンジの殆どが分解されたことが確認できた。
【0084】
更には、水5ミリリットルに1.5ミリグラムの実施例2−Bの試料及び多孔質炭素材料−B(比較例2’)を加え、ミクロシスチン100マイクログラムを24時間毎に投入し、12時間おきに疑似太陽光照射と遮光とを繰り返す実験を行った。その結果を図11の(A)に示す。多孔質炭素材料−B(比較例2’)では3度目にはほぼ吸収しなくなったのに対して、実施例2−Bの試料では、何度も鋭い吸着が見られた。この結果より、実施例2−Bの試料では、ミクロシスチンがメソ細孔に取り込まれ、その後、光により分解されていることが確認できた(図11の(B)の概念図を参照)。尚、図11の(B)において、実線で示す鋸状の波形が実施例2−Bの試料の試験結果を示し、点線で示す波形が比較例2’の試料の試験結果を示す。
【0085】
実施例2における多孔質炭素材料は、より具体的には、天然物由来の環境融和材料であり、その微細構造は、植物由来の材料である原料中に予め含まれるケイ素成分(ケイ素酸化物)を酸又はアルカリで処理し、除去することによって得られる。従って、細孔は、従来の活性炭では実現できない大きさやメソ領域(2〜50nm)を有しており、また、細孔の配列は植物の有する生体規則性を維持している。実施例2の光触媒複合材料にあっては、このような細孔サイズや配列によって、光触媒材料を極めて効果的に多孔質炭素材料に付着させることができ、光触媒作用による分解を効果的に生じさせることができる。また、環境浄化用材料である実施例2の光触媒複合材料に基づく浄化剤にあっても、このような細孔サイズや配列は、有害物質の吸着に対して有効に作用と考えられると同時に、光触媒材料を極めて効果的に多孔質炭素材料に付着させることができ、光触媒作用による有害物質の分解、無毒化を効果的に生じさせることができる。また、浄化剤内部における有害物質の拡散が促進され、光触媒作用による分解を一層効果的に生じさせることができ、水の浄化や空気の浄化を極めて効果的に行うことが可能となる。しかも、実施例2の光触媒複合材料は、可視光のエネルギーを吸収することができるので、優れた分解反応を示す光触媒複合材料を提供することができる。
【実施例3】
【0086】
実施例3は、本発明の吸着剤及び浄化剤に関する。実施例3の吸着剤あるいは浄化剤は、
(A)光触媒複合材料、具体的には、ケイ素を含有する植物由来の材料を原料とした多孔質炭素材料、より具体的には、ケイ素の含有率が5重量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素の含有率が1重量%以下である多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した有機材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上であり、
有機材料は金属を吸着する。
【0087】
あるいは又、実施例3の吸着剤あるいは浄化剤は、
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した光触媒材料、
から成り、
有機材料は金属を吸着する。そして、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-9m乃至5×10-7mの細孔の容積の合計が0.1cm3/グラム以上である。あるいは又、実施例3の吸着剤あるいは浄化剤は、窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布において、3nm乃至20nmの範囲内に少なくとも1つのピークを有し、3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める割合は、全細孔の容積総計の0.2以上である。
【0088】
実施例3にあっては、有機材料としてポリエチレンイミンを用いた。ポリエチレンイミンが多孔質炭素材料に付着(担持、吸着、結合)した状態を、模式的に図12に示す。また、金属としてクロム(Cr)イオンを吸着させた。実施例3の吸着剤及び浄化剤にあっては、0.3グラムの上述した多孔質炭素材料−B、及び、1.5グラムのポリエチレンイミンを、純水100ミリリットルに分散させ、1時間、攪拌することで、ポリエチレンイミンを多孔質炭素材料−Bのメソ領域の細孔に付着(担持、吸着、結合)させた。その後、濾過して得られた固相を、0.5グラムのFeCl3・6H2Oを100ミリリットルの純水に溶かした水溶液中に投入し、1時間、攪拌した。そして、得られた粉末をフィルターによって濾過し、蒸留水で洗浄後、120゜Cで乾燥することで、実施例3の吸着剤及び浄化剤を得た。尚、このようにFeCl3・6H2Oでの処理を行うことで、イオン交換能を高めることができる。この状態を、模式的に図13に示す。
【0089】
実施例3及び市販の活性炭(比較例3)を用いて、それぞれを、種々の濃度のクロム酸カリウム5ミリリットルに10ミリグラム、分散させ、1時間、攪拌した後、吸光度を測定した。その結果を図14に示すが、市販の活性炭(図13においては、「B」で示す)と比較して、実施例3の吸着剤及び浄化剤(図13においては、「A」で示す)は20倍の吸着性能を有することが確認ができた。即ち、実施例3の吸着剤及び浄化剤にあっては、多孔質炭素材料に有機材料を付着(担持、吸着、結合)させるが故に、効果的に金属(金属原子や金属イオン)の吸着が可能となる。尚、実施例3の吸着剤及び浄化剤がクロム酸イオンを吸着する状態を、図15に模式的に示す。また、窒素BET法、BJH法及びMP法に基づき比表面積及び全細孔容積を測定した結果を、以下の表4に示す。更には、図16に、実施例3及び比較例3の、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布の測定結果を示すが、全細孔の容積総計に対する3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める割合は、以下のとおりであった。
実施例3:0.415
比較例3:0.134
【0090】
[表4]
実施例3 比較例3
比表面積 (m2/g) 957 1184
全細孔容積 (cm3/g) 0.7817 0.0573
BJH(T) (cm3/g) 0.4948 0.0816
MP(T) (cm3/g) 0.3743 0.5702
NFDLT (cm3/g) 1.0511 0.7557
【0091】
以上、好ましい実施例に基づき本発明を説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。実施例にあっては、多孔質炭素材料の原料として、籾殻を用いる場合について説明したが、他の植物を原料として用いてもよい。ここで、他の植物として、例えば、藁、葦あるいは茎ワカメ、陸上に植生する維管束植物、シダ植物、コケ植物、藻類及び海草等を挙げることができ、これらを、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0092】
具体的には、例えば、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を稲の藁(例えば、鹿児島産;イセヒカリ)とし、多孔質炭素材料を、原料としての藁を炭素化して炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換し、次いで、酸処理を施すことで得ることができる。あるいは又、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を稲科の葦とし、多孔質炭素材料を、原料としての稲科の葦を炭素化して炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換し、次いで、酸処理を施すことで得ることができる。また、フッ化水素酸水溶液の代わりに、水酸化ナトリウム水溶液といったアルカリ(塩基)にて処理して得られた多孔質炭素材料においても、同様の結果が得られた。尚、多孔質炭素材料複合体の製造方法は、実施例1〜実施例3と同様とすることができる。
【0093】
あるいは又、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を茎ワカメ(岩手県三陸産)とし、多孔質炭素材料を、原料としての茎ワカメを炭素化して炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換し、次いで、酸処理を施すことで得ることができる。具体的には、先ず、例えば、茎ワカメを500゜C程度の温度で加熱し、炭化する。尚、加熱前に、例えば、原料となる茎ワカメをアルコールで処理してもよい。具体的な処理方法として、エチルアルコール等に浸漬する方法が挙げられ、これによって、原料に含まれる水分を減少させると共に、最終的に得られる多孔質炭素材料に含まれる炭素以外の他の元素や、ミネラル成分を溶出させることができる。また、このアルコールでの処理により、炭素化時のガスの発生を抑制することができる。より具体的には、茎ワカメをエチルアルコールに48時間浸漬する。尚、エチルアルコール中では超音波処理を施すことが好ましい。次いで、この茎ワカメを、窒素気流中において500゜C、5時間、加熱することにより炭化させ、炭化物を得る。尚、このような処理(予備炭素化処理)を行うことで、次の炭素化の際に生成されるであろうタール成分を減少あるいは除去することができる。その後、この炭化物の10グラムをアルミナ製の坩堝に入れ、窒素気流中(10リットル/分)において5゜C/分の昇温速度で1000゜Cまで昇温する。そして、1000゜Cで5時間、炭素化して、炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換した後、室温まで冷却する。尚、炭素化及び冷却中、窒素ガスを流し続ける。次に、この多孔質炭素材料前駆体を46容積%のフッ化水素酸水溶液に一晩浸漬することで酸処理を行った後、水及びエチルアルコールを用いてpH7になるまで洗浄する。そして、最後に乾燥させることにより、多孔質炭素材料を得ることができる。その後、実施例1〜実施例3にて説明した複合化処理や賦活処理を施せばよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した銀部材、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である殺菌剤。
【請求項2】
銀部材は、銀、銀合金若しくは銀イオンを含む粒子、又は、銀、銀合金若しくは銀イオンを含む薄膜から成る請求項1に記載の殺菌剤。
【請求項3】
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した光触媒材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上であり、
光触媒材料は、カチオンあるいはアニオンがドーピングされた酸化チタンから成る光触媒複合材料。
【請求項4】
光触媒材料は、波長200nm乃至600nmの光のエネルギーを吸収する請求項3に記載の光触媒複合材料。
【請求項5】
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した有機材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上であり、
有機材料は金属を吸着する吸着剤。
【請求項6】
有機材料は、フェノール基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、ケトン基、リン酸基、アルキル基、エーテル基及びチオニル基から成る群から選択された少なくとも1種類の基を有する有機材料である請求項5に記載の吸着剤。
【請求項7】
金属は、クロム、水銀、ヒ素、鉛、カドミウム、スズ、銅、亜鉛、リチウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、バナジウム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ルビジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、白金、タリウム、ビスマス、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、又は、ルテチウムである請求項5又は請求項6に記載の吸着剤。
【請求項8】
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した有機材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上であり、
有機材料は金属を吸着する浄化剤。
【請求項9】
有機材料は、フェノール基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、ケトン基及びリン酸基から成る群から選択された少なくとも1種類の基を有する有機材料である請求項8に記載の浄化剤。
【請求項10】
金属は、クロム、水銀、ヒ素、鉛、カドミウム、スズ、銅、亜鉛、リチウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、バナジウム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ルビジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、白金、タリウム、ビスマス、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、又は、ルテチウムである請求項8又は請求項9に記載の浄化剤。
【請求項1】
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した銀部材、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上である殺菌剤。
【請求項2】
銀部材は、銀、銀合金若しくは銀イオンを含む粒子、又は、銀、銀合金若しくは銀イオンを含む薄膜から成る請求項1に記載の殺菌剤。
【請求項3】
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した光触媒材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上であり、
光触媒材料は、カチオンあるいはアニオンがドーピングされた酸化チタンから成る光触媒複合材料。
【請求項4】
光触媒材料は、波長200nm乃至600nmの光のエネルギーを吸収する請求項3に記載の光触媒複合材料。
【請求項5】
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した有機材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上であり、
有機材料は金属を吸着する吸着剤。
【請求項6】
有機材料は、フェノール基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、ケトン基、リン酸基、アルキル基、エーテル基及びチオニル基から成る群から選択された少なくとも1種類の基を有する有機材料である請求項5に記載の吸着剤。
【請求項7】
金属は、クロム、水銀、ヒ素、鉛、カドミウム、スズ、銅、亜鉛、リチウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、バナジウム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ルビジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、白金、タリウム、ビスマス、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、又は、ルテチウムである請求項5又は請求項6に記載の吸着剤。
【請求項8】
(A)多孔質炭素材料、及び、
(B)該多孔質炭素材料に付着した有機材料、
から成り、
窒素BET法による比表面積の値が10m2/グラム以上、BJH法及びMP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上であり、
有機材料は金属を吸着する浄化剤。
【請求項9】
有機材料は、フェノール基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、ケトン基及びリン酸基から成る群から選択された少なくとも1種類の基を有する有機材料である請求項8に記載の浄化剤。
【請求項10】
金属は、クロム、水銀、ヒ素、鉛、カドミウム、スズ、銅、亜鉛、リチウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、バナジウム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ルビジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、白金、タリウム、ビスマス、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、又は、ルテチウムである請求項8又は請求項9に記載の浄化剤。
【図2】
【図6】
【図8】
【図10】
【図16】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図6】
【図8】
【図10】
【図16】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−225521(P2011−225521A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9456(P2011−9456)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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