説明

殺菌剤溶液の処理方法および殺菌剤溶液の処理装置

【課題】殺菌剤が高温状態の持続で分解されるのを抑制し、補充のために注入する高濃度の殺菌剤或いは添加剤の消費量を低減するとともに、前記分解抑制を低いエネルギー消費量で実現できる殺菌剤溶液の処理方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る殺菌剤溶液の処理方法は、殺菌剤溶液が循環タンク5から殺菌機4へ加熱装置6で加熱された後に供給され、包材を殺菌した後の殺菌剤溶液が、殺菌機4から循環タンク5へ回収される殺菌剤溶液の処理方法において、包材を殺菌した後の殺菌剤溶液が、循環タンク5への循環回路の途中に設けた冷却装置11を経由することによって、所定温度まで冷却されて循環タンク5へ回収されるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材料(以下、包材と称する。)殺菌用等の殺菌剤溶液が循環タンクから包材等の殺菌機(以下、殺菌機と称する。)へ加熱装置を経由して高温状態で供給され、包材等殺菌後の前記殺菌剤が前記殺菌機から前記循環タンクへ回収される循環回路における殺菌剤溶液の処理方法および処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包材殺菌用等の殺菌剤が循環タンクから殺菌機へ供給され、包材殺菌後の前記殺菌剤が循環タンクへ回収される循環回路における殺菌剤の処理装置においては、殺菌剤が包材を確実に殺菌できるように高温状態で殺菌機へ供給される工夫、また、殺菌剤の濃度低下に伴って殺菌力が低下しないように殺菌剤を補充して所定の濃度に維持する工夫、さらに、殺菌剤に添加剤を添加して殺菌剤の殺菌力を強化する工夫がなされてきた(例えば、特許文献1や特許文献2を参照)。
【0003】
このような殺菌剤は高温状態に保持されていると分解しやすいため、殺菌剤の順次補充に伴って殺菌剤消費量が多くなっており、殺菌剤消費量の軽減に対する要求が近年高まってきている。また、殺菌剤に添加する添加剤は高温状態では不活性になりやすいため、高温状態の保持に伴って添加剤消費量が多くなっており、添加剤消費量の軽減に対する要求も近年高まってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−502636号公報
【特許文献2】特開2009−226280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の殺菌剤溶液の処理装置について、図3に基づいて説明する。
図3は、従来の殺菌剤溶液の処理装置を摸式的に示した図である。
図3において、殺菌剤溶液の処理装置10は、殺菌剤が循環タンク5からポンプPBによって配管P9を通して包材等の殺菌機4の上流側に設けられた加熱装置6を経由して所定の高温状態で殺菌機4へ供給されるようになっており、また、前記殺菌機4で包材等を殺菌した殺菌剤が、前記殺菌機4に付属の回収タンク7へ一旦回収された後、ポンプPAによって配管P8を通して前記循環タンク5へ回収されるように殺菌剤溶液の循環回路が形成されている。
【0006】
なお、前記配管P8には前記循環タンク5の上流側で濃度計測手段Cが設けられていて、循環タンク5へ回収される殺菌剤の濃度を計測し、計測された濃度計測値が制御装置8dに取り込まれ、制御装置8dからの指令によって矢印T方向から図示しない注入手段により高濃度の殺菌剤或いは殺菌力強化のための添加剤が注入されて、前記循環タンク5内の殺菌剤が所定の濃度になるようになっている。
【0007】
このような従来の殺菌剤溶液の処理装置10の作用を説明すると、殺菌機4において殺菌剤が包材等を殺菌するに当って、一般に、殺菌剤の温度を高くすると殺菌効果が高くなるので、前記殺菌機4へ供給される殺菌剤が前記加熱装置6を経由して所定の高温状態にされている。
一方、前記殺菌剤は高温状態に長時間保持されると、分解が加速されて殺菌剤の濃度低下およびそれに伴う殺菌効果の低下を招いてしまう。
このため、濃度計測手段Cにより殺菌剤の濃度計測をして、制御装置8dからの注入指示に従って矢印T方向から図示しない注入手段により高濃度の殺菌剤或いは添加剤を注入する等、殺菌剤を所定濃度にしている。
【0008】
前記説明のように、従来の殺菌剤溶液の処理装置10においては、循環タンク5およびその前後の配管において殺菌剤の高温状態が長く保持されてしまい、殺菌剤の分解が加速されて濃度が低下するので、濃度を維持して安定させるために高濃度の殺菌剤を注入する頻度が多くなって、殺菌剤の消費量が多くなってしまうという恐れがある。
また、前記殺菌剤が高温状態に長く保持されてしまうと、前記殺菌剤に添加されている前記添加剤が不活性になりやすいため、殺菌力を低下させないように添加剤を多く添加することになり、添加剤消費量が多くなってしまうという恐れがある。
さらに、殺菌剤又は添加剤が多くなると、前記包材等を殺菌後に洗浄する必要がある場合に、洗浄用の清水の使用量が多くなってしまうという恐れがある。
【0009】
本発明は、包材殺菌用等の殺菌剤溶液が循環タンクから包材等の殺菌機へ加熱装置を経由して高温状態で供給され、包材等殺菌後の前記殺菌剤が循環タンクへ回収される循環回路における殺菌剤溶液の処理方法および処理装置において、殺菌剤が高温状態の持続で分解されるのを抑制し、補充のために注入する高濃度の殺菌剤或いは添加剤の消費量を低減するとともに、前記分解抑制を低いエネルギー消費量で実現できる殺菌剤溶液の処理方法および装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題に対し、本発明は以下の手段により解決を図る。
(1)第1の手段の殺菌剤溶液の処理方法は、殺菌剤溶液が循環タンクから殺菌機へ加熱装置で加熱された後に供給され、被殺菌物を殺菌した後の前記殺菌剤溶液が、前記殺菌機から前記循環タンクへ回収される殺菌剤溶液の処理方法において、前記被殺菌物を殺菌した後の前記殺菌剤溶液が、前記循環タンクへの循環回路の途中に設けた冷却装置を経由することによって、所定温度まで冷却されて前記循環タンクへ回収されるようにしたことを特徴とする。
【0011】
(2)第2の手段の殺菌剤溶液の処理方法は、前記第1の手段の殺菌剤溶液の処理方法において、前記殺菌機から前記冷却装置へ向う前記循環回路の途中に熱交換装置を設け、前記循環タンクから前記加熱装置へ向う低温状態の殺菌剤溶液も前記熱交換装置を経由するようにして、前記加熱装置による加熱前の前記殺菌剤溶液と前記冷却装置による冷却前の前記殺菌剤溶液とが、前記熱交換装置で熱交換されるようにしたことを特徴とする。
【0012】
(3)第3の手段の殺菌剤溶液の処理方法は、前記第1又は第2の手段の殺菌剤溶液の処理方法において、前記冷却装置から前記循環タンクへ向う前記殺菌剤溶液の循環回路の途中に設けた第一濃度計測手段、又は、前記加熱装置から前記殺菌機へ向う前記殺菌剤の循環回路の途中に設けた第二濃度計測手段、或いは、前記第一濃度計測手段と前記第二濃度計測手段の両方によって殺菌剤溶液の濃度を計測して、該殺菌剤溶液の濃度の計測値を基にして、制御装置からの指令により前記循環タンク内の殺菌剤溶液が所定濃度となるように殺菌剤原液或いは殺菌に使用する濃度以上の濃度の殺菌剤溶液を前記循環回路に自動注入するようにしたことを特徴とする。
【0013】
(4)第4の手段の殺菌剤溶液の処理方法は、前記第1から第3のいずれかの手段の殺菌剤溶液の処理方法において、前記殺菌剤溶液の循環回路に配管接続された殺菌剤バッファタンクから濃度を調合済の前記殺菌剤を前記循環回路に自動注入するようにしたことを特徴とする。
【0014】
(5)第5の手段の殺菌剤溶液の処理方法は、前記第1から第4のいずれかの手段の殺菌剤溶液の処理方法において、前記殺菌剤溶液を過酢酸溶液としたことを特徴とする。
【0015】
(6)第6の手段の殺菌剤溶液の処理方法は、前記第5の手段の殺菌剤溶液の処理方法において、前記過酢酸溶液が殺菌力強化のための添加剤として所定量のカタラーゼを添加した過酢酸溶液であることを特徴とする。
【0016】
(7)第7の手段の殺菌剤溶液の処理装置は、殺菌剤溶液が循環タンクから殺菌機へ加熱装置で加熱された後に供給され、被殺菌物を殺菌した後の前記殺菌剤溶液が、前記殺菌機から前記循環タンクへ回収される殺菌剤溶液の処理装置において、前記殺菌機から前記循環タンクへ向う前記循環回路の途中に、被殺菌物を殺菌した後の殺菌剤溶液を所定温度まで冷却する冷却装置を設けたことを特徴とする。
【0017】
(8)第8の手段の殺菌剤溶液の処理装置は、前記第7の手段の殺菌剤溶液の処理装置において、前記殺菌機から前記冷却装置へ向う前記循環回路の途中に熱交換装置を設けて、前記循環タンクから前記加熱装置へ向う低温状態の殺菌剤溶液も前記熱交換装置を経由して、前記加熱装置による加熱前の前記殺菌剤溶液と前記冷却装置による冷却前の前記殺菌剤溶液とが、前記熱交換装置で熱交換を行うようにしたことを特徴とする。
【0018】
(9)第9の手段の殺菌剤溶液の処理装置は、前記第7又は第8の手段の殺菌剤溶液の処理装置において、前記循環回路に濃度計測手段を設け、該濃度計測手段によって計測された前記殺菌剤溶液の濃度の計測値を制御装置に取り込んで、該制御装置の制御により前記循環タンク内の殺菌剤溶液が所定濃度となるように前記循環回路における前記殺菌剤溶液より高濃度の殺菌剤溶液を前記循環回路に自動注入する自動注入装置を設けたことを特徴とする。
【0019】
(10)第10の手段の殺菌剤溶液の処理装置は、前記第9の手段の殺菌剤溶液の処理装置において、所定濃度に調合済の殺菌剤溶液が貯留される殺菌剤バッファタンクを前記循環回路に配管接続して設け、該配管の途中に前記自動注入装置を設けて、前記制御装置からの指令によって前記殺菌剤バッファタンクから所定濃度の殺菌剤溶液を前記循環回路に自動注入するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1および7に係わる本発明は、包材殺菌用等の殺菌剤溶液が循環タンクから包材等の殺菌機へ加熱装置を経由して高温状態で供給され、包材等殺菌後の前記殺菌剤溶液が前記殺菌機から前記循環タンクへ回収される循環回路における殺菌剤溶液の処理方法および処理装置において、前記殺菌機からの前記高温状態の殺菌剤溶液が前記循環タンクへの回路の途中に設けた冷却装置を経由することによって、所定温度まで冷却されて前記循環タンクへ回収されるようにしたことにより、包材等殺菌後の前記殺菌剤溶液が循環タンクで高温状態に長時間放置されて分解されることを防止でき、それに伴って殺菌剤溶液の殺菌効果低下が軽減されるとともに、殺菌剤溶液の殺菌効果を維持するために注入する高濃度の殺菌剤溶液の注入量を削減できるという効果を有する。さらに、前記殺菌剤溶液消費量の削減に伴い、殺菌後包材等を洗浄する場合に洗浄用清水の使用量の削減、殺菌剤溶液排液処理費用の削減等の効果を有する。
【0021】
請求項2および8に係わる本発明は、前記請求項1および7に記載する殺菌剤溶液の処理方法および処理装置において、前記殺菌機から前記冷却装置へ向う前記殺菌剤溶液の循環回路の途中に熱交換装置を設け、前記循環タンクから前記加熱装置へ向う低温状態の殺菌剤溶液も前記熱交換装置を経由するようにして、前記熱交換装置で前記高温状態の殺菌剤溶液と前記低温状態の殺菌剤溶液が熱交換されるようにしたことにより、前記殺菌剤溶液の加熱および冷却のための熱エネルギー等の資源が節約できるという効果を有する。
【0022】
請求項3および9に係わる本発明は、前記請求項1と2および7と8に記載する殺菌剤溶液の処理方法および処理装置において、前記循環回路に濃度計測手段を設け、該濃度計測手段によって計測された殺菌剤濃度の計測値を制御装置に取り込んで、該制御装置の制御により前記循環タンク内の殺菌剤溶液が所定濃度となるように高濃度の殺菌剤原液或いは殺菌剤溶液を前記循環回路に自動注入する自動注入装置を設けるようにしたことにより、殺菌剤溶液を所定濃度に確実に維持できるという効果を有する。
また、前記冷却装置から前記循環タンクへ向う前記殺菌剤溶液の循環回路の途中に設けた第一濃度計測手段と、前記加熱装置から前記殺菌機へ向う前記殺菌剤溶液の循環回路の途中に設けた第二濃度計測手段の両方によって殺菌剤濃度を計測して、該濃度計測値を基にして、制御装置からの指令により前記循環タンク内の殺菌剤溶液が所定濃度となるようにする場合には、殺菌剤濃度を木目細かく維持管理できるという効果を有する。
【0023】
請求項4および10に係わる本発明は、前記請求項1から3および9に記載する殺菌剤溶液の処理方法および処理装置において、前記殺菌剤溶液の循環回路に配管接続された殺菌剤バッファタンクから調合済の前記高濃度の殺菌剤溶液を前記制御装置からの指令によって前記循環回路に自動注入するようにしたことにより、予め設定された制御で確実に前記殺菌剤溶液の濃度管理ができるという効果を有する。
【0024】
請求項5に係わる本発明は、前記請求項1から4に記載する殺菌剤溶液の処理方法において、前記殺菌剤溶液を過酢酸溶液としたことにより、殺菌効果が優れた殺菌剤溶液を生産ラインで具体的に適用でき、前記過酢酸溶液が所定温度まで冷却されて前記循環タンクへ回収されることによって、包材等殺菌後の前記過酢酸溶液が循環タンクで高温状態に長時間放置されて分解されることを防止でき、それに伴って過酢酸溶液の高温状態保持による殺菌効果の低下を軽減できるという効果を有する。
【0025】
請求項6に係わる本発明は、請求項5に記載する殺菌剤溶液の処理方法において、前記過酢酸溶液が殺菌力強化のための添加剤として所定量のカタラーゼを添加した過酢酸溶液であることにより、前記カタラーゼが高温状態の持続により不活性となって殺菌力強化の効力低下となることに伴い、前記カタラーゼを所定量以上に消費するという問題を解決できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる殺菌剤溶液の処理装置を摸式的に示した図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係わる殺菌剤溶液の処理装置を摸式的に示した図である。
【図3】従来の殺菌剤溶液の処理装置を摸式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施の形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0028】
(本発明の第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態を図1に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる殺菌剤溶液の処理装置を摸式的に示した図である。
図1において、従来技術として説明した図3と同じ構造のものについては同じ記号を付して分り易くしてあり、重複する説明は一部省略する。
図1において、殺菌剤溶液の処理装置1は、循環タンク5から加熱装置6を経由して所定濃度の殺菌剤溶液(以下、単に殺菌剤と称する)がポンプPBにより配管P2を通して殺菌機4へ所定の高温状態で供給され、殺菌機4で前記殺菌剤により被殺菌物としての包材等(以下包材と称する。)が殺菌されるようになっており、また、殺菌機4で包材殺菌に使用された殺菌剤が、回収タンク7に一旦回収されて、配管P1を通してポンプPAにより循環タンク5へ回収されるようになっていて、配管P1の途中には冷却装置11が設けられており、殺菌機4で包材の殺菌に使用された高温状態の殺菌剤が前記冷却装置11によって所定温度に冷却されるように構成されている。
【0029】
また、前記循環タンク5の上流側の配管P1には該配管P1を通過する殺菌剤の濃度を計測する第一濃度計測手段CAが設けられ、濃度計測値が制御装置8に送られるようになっており、また、前記殺菌機4の上流側の配管P2には該配管P2を通過する殺菌剤の濃度を計測する第二濃度計測手段CBが設けられ、濃度計測値が制御装置8に送られるようになっていて、第一濃度計測手段CA又は第二濃度計測手段CBによる濃度計測値が所定濃度より低下していると前記制御装置8が判断したときに、制御装置8からの指令により開閉弁V1を開にして、殺菌剤バッファタンク12から配管P3を通して、殺菌剤原液或いは殺菌に使用する濃度以上の濃度の殺菌剤溶液がポンプPCにより前記循環タンク5の入口部に自動注入されるように自動注入装置が組み込まれた構成となっている。
【0030】
ここでは、前記殺菌剤が一例として過酢酸溶液(例えば1500PPMの過酢酸と3000PPMの過酸化水素水の混合溶液。以下殺菌剤を過酢酸溶液と称することがある。)である場合について説明すると、前記殺菌剤バッファタンク12の上流には調合タンク13が設けられていて、殺菌剤原液である過酢酸溶液原液(例えば前記殺菌機4で使用する過酢酸溶液の50倍の濃度のもの)S0、前記過酢酸溶液原液を所定濃度に希釈する清水W、および、前記過酢酸溶液の殺菌力を強化する添加剤(例えば前記過酸化水素水の分解酵素であるカタラーゼ)S1等を投入して前記過酢酸溶液が所定濃度に調合されるようになっており、前記殺菌剤バッファタンク12と開閉弁V9を介して配管P4により接続された構成となっている。
【0031】
次に、本発明の第1の実施の形態に係わる殺菌剤溶液の処理装置1の作用を説明する。一般に、殺菌剤である過酢酸溶液は、殺菌機4において過酢酸溶液が包材を殺菌するに当って殺菌効果を高めるために、前記殺菌機4へ供給される直前に前記加熱装置6により所定の高温状態(一例として70℃)に加熱されるが、包材殺菌後に前記循環タンク5等で高温状態(一例として65℃)に長時間放置されると、分解が加速されて過酢酸溶液の濃度が低下し、殺菌効果が低下してしまう恐れがある。
本実施の形態では、殺菌機4で包材殺菌に使用された高温状態の過酢酸溶液が、冷却装置11を経由して所定の低温状態(一例として65℃→40℃)に冷却されて循環タンク5に回収されるので、前記循環タンク5およびその前後の配管P1内の過酢酸溶液の分解が抑制され、これに伴って濃度低下が抑制されて、殺菌効果の低下が抑制される。
【0032】
一方、前記過酢酸溶液は、殺菌機4において高温状態で包材の殺菌に使用される等により小幅な分解が生じるので、第一濃度計測手段CAおよび第二濃度計測手段CBにより過酢酸溶液の濃度を計測して、制御装置8からの指令により自動注入装置を構成している開閉弁V1を開にして、前記殺菌剤バッファタンク12から前記過酢酸原液或いは殺菌に使用する濃度以上の濃度の過酢酸溶液(例えば2000PPMの過酢酸と4000PPMの過酸化水素水の混合溶液)が自動注入されることにより、前記循環タンク5では所定濃度に維持されて、前記過酢酸溶液の殺菌効果が維持される。
【0033】
前記説明では、第一濃度計測手段CAおよび第二濃度計測手段CBの両方により前記過酢酸溶液の濃度計測を行う場合を説明したが、第一濃度計測手段CAのみで、又は、第二濃度計測手段CBのみで濃度計測を行って濃度管理をするようにしてもよい。
第一濃度計測手段CAおよび第二濃度計測手段CBの両方で濃度計測を行って濃度管理をする場合は、循環タンク5へ回収される直前状態の濃度と殺菌機4へ供給される直前状態の濃度の両者を計測して制御装置8により濃度管理をするので、濃度管理が木目細かくなって望ましい。
【0034】
前記説明の過酢酸溶液の分解抑制に伴い、濃度維持のための前記過酢酸原液或いは殺菌に使用する濃度以上の濃度の過酢酸溶液の前記循環回路への注入量が減り、過酢酸原液或いは過酢酸溶液の消費量が軽減されるとともに、これに伴って、殺菌後包材等を洗浄する場合には洗浄用清水の使用量の削減、過酢酸溶液等排液処理費用の削減等に繋がっていく。
また、前記添加剤であるカタラーゼは、高温状態では不活性になり、殺菌力強化の効力が低下するが、前記説明の冷却により殺菌力強化の効力低下が抑制されるとともに、補充するカタラーゼの消費量が軽減される。
【0035】
(本発明の第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態を図2に基づいて説明する。
図2は、本発明の第2の実施の形態に係わる殺菌剤溶液の処理装置を摸式的に示した図である。
図2において、図1と同じ構造のものは同じ記号を付して分り易くしてあり、重複する説明は一部省略する。
図2において、殺菌剤溶液の処理装置2は、前記回収タンク7から冷却装置14への配管P7の途中、および、循環タンク5から加熱装置6への配管P8の途中に熱交換装置15が設けられ、該熱交換装置15を殺菌機4で包材殺菌に使用された高温状態の過酢酸溶液と、循環タンク5から加熱装置6へ供給される低温状態の過酢酸溶液が経由する構成となっている。
【0036】
次に、本発明の第2の実施の形態に係わる殺菌剤溶液の処理装置2の作用を説明する。殺菌機4で包材殺菌に使用された高温状態の過酢酸溶液と、循環タンク5から加熱装置6へ供給される低温状態の過酢酸溶液が、共に熱交換装置15を経由するので、高温状態の過酢酸溶液は熱を奪われて中温状態に(一例として65℃→約50℃)、低温状態の過酢酸溶液は熱を与えられて中温状態に(一例として40℃→約50℃)という熱交換が行われる。
【0037】
このため、前記本発明の第1の実施の形態では高温状態の過酢酸溶液を低温状態(一例として65℃→40℃)にするために冷却装置11に多量の冷却水を供給する必要があったが、本発明の第2の実施の形態では熱交換装置15を経由した後の中温状態の過酢酸溶液を冷却装置14で低温状態に(一例として約50℃→40℃)するための冷却水が必要となるだけであるので、冷却水消費量が軽減され、資源節約となる。
さらに、加熱装置6では、中温状態から高温状態へ(一例として約50℃→70℃)の加熱となり、低温状態の過酢酸溶液の加熱に要する熱エネルギー消費量が節約できる。
【0038】
なお、循環タンク5に回収される過酢酸溶液が前記熱交換装置15と前記冷却装置14によって冷却されることにより過酢酸溶液の分解が抑制される作用、および、第一濃度計測手段CAおよび第二濃度計測手段CBにより前記過酢酸溶液の濃度を計測して、前記過酢酸溶液の濃度が所定濃度に制御される作用については、前記本発明の第1の実施の形態の場合と同様であるので、重複する説明は省略する。
【符号の説明】
【0039】
1 殺菌剤溶液の処理装置
2 殺菌剤溶液の処理装置
4 殺菌機
5 循環タンク
6 加熱装置
7 回収タンク
8 制御装置
8d 制御装置
10 殺菌剤溶液の処理装置
11 冷却装置
12 殺菌剤バッファタンク
13 調合タンク
14 冷却装置
15 熱交換装置
C 濃度計測手段
CA 第一濃度計測手段
CB 第二濃度計測手段
P1 配管
P2 配管
P3 配管
P4 配管
P7 配管
P8 配管
P9 配管
PA、PB、PC ポンプ
T 矢印
V1 開閉弁
V9 開閉弁
W 清水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌剤溶液が循環タンクから殺菌機へ加熱装置で加熱された後に供給され、被殺菌物を殺菌した後の前記殺菌剤溶液が、前記殺菌機から前記循環タンクへ回収される殺菌剤溶液の処理方法において、
前記被殺菌物を殺菌した後の前記殺菌剤溶液が、前記循環タンクへの循環回路の途中に設けた冷却装置を経由することによって、所定温度まで冷却されて前記循環タンクへ回収されるようにしたことを特徴とする殺菌剤溶液の処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載する殺菌剤溶液の処理方法において、前記殺菌機から前記冷却装置へ向う前記循環回路の途中に熱交換装置を設け、前記循環タンクから前記加熱装置へ向う低温状態の殺菌剤溶液も前記熱交換装置を経由するようにして、前記加熱装置による加熱前の前記殺菌剤溶液と前記冷却装置による冷却前の前記殺菌剤溶液とが、前記熱交換装置で熱交換されるようにしたことを特徴とする殺菌剤溶液の処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載する殺菌剤溶液の処理方法において、前記冷却装置から前記循環タンクへ向う前記殺菌剤溶液の循環回路の途中に設けた第一濃度計測手段、又は、前記加熱装置から前記殺菌機へ向う前記殺菌剤の循環回路の途中に設けた第二濃度計測手段、或いは、前記第一濃度計測手段と前記第二濃度計測手段の両方によって殺菌剤溶液の濃度を計測して、該殺菌剤溶液の濃度の計測値を基にして、制御装置からの指令により前記循環タンク内の殺菌剤溶液が所定濃度となるように殺菌剤原液或いは殺菌に使用する濃度以上の濃度の殺菌剤溶液を前記循環回路に自動注入するようにしたことを特徴とする殺菌剤溶液の処理方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載する殺菌剤溶液の処理方法において、前記殺菌剤溶液の循環回路に配管接続された殺菌剤バッファタンクから濃度を調合済の前記殺菌剤を前記循環回路に自動注入するようにしたことを特徴とする殺菌剤溶液の処理方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載する殺菌剤溶液の処理方法において、前記殺菌剤溶液を過酢酸溶液としたことを特徴とする殺菌剤溶液の処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載する殺菌剤溶液の処理方法において、前記過酢酸溶液が殺菌力強化のための添加剤として所定量のカタラーゼを添加した過酢酸溶液であることを特徴とする殺菌剤溶液の処理方法。
【請求項7】
殺菌剤溶液が循環タンクから殺菌機へ加熱装置で加熱された後に供給され、被殺菌物を殺菌した後の前記殺菌剤溶液が、前記殺菌機から前記循環タンクへ回収される殺菌剤溶液の処理装置において、
前記殺菌機から前記循環タンクへ向う前記循環回路の途中に、被殺菌物を殺菌した後の殺菌剤溶液を所定温度まで冷却する冷却装置を設けたことを特徴とする殺菌剤溶液の処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載する殺菌剤溶液の処理装置において、前記殺菌機から前記冷却装置へ向う前記循環回路の途中に熱交換装置を設けて、前記循環タンクから前記加熱装置へ向う低温状態の殺菌剤溶液も前記熱交換装置を経由して、前記加熱装置による加熱前の前記殺菌剤溶液と前記冷却装置による冷却前の前記殺菌剤溶液とが、前記熱交換装置で熱交換を行うようにしたことを特徴とする殺菌剤溶液の処理装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載する殺菌剤溶液の処理装置において、前記循環回路に濃度計測手段を設け、該濃度計測手段によって計測された前記殺菌剤溶液の濃度の計測値を制御装置に取り込んで、該制御装置の制御により前記循環タンク内の殺菌剤溶液が所定濃度となるように前記循環回路における前記殺菌剤溶液より高濃度の殺菌剤溶液を前記循環回路に自動注入する自動注入装置を設けたことを特徴とする殺菌剤溶液の処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載する殺菌剤溶液の処理装置において、所定濃度に調合済の殺菌剤溶液が貯留される殺菌剤バッファタンクを前記循環回路に配管接続して設け、該配管の途中に前記自動注入装置を設けて、前記制御装置からの指令によって前記殺菌剤バッファタンクから所定濃度の殺菌剤溶液を前記循環回路に自動注入するように構成したことを特徴とする殺菌剤溶液の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−200456(P2012−200456A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68734(P2011−68734)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(505193313)三菱重工食品包装機械株式会社 (146)
【Fターム(参考)】