説明

殺菌剤組成物

【課題】強力な殺菌力をもち、且つその殺菌力が長時間持続する過酢酸系の殺菌洗浄剤を提供すること。
【解決手段】(A)成分として過酢酸、(B)成分として過酸化水素、(C)成分として酢酸、(D)成分として下記の一般式(1)で表わされる化合物、(E)成分として下記の一般式(2)で表される基を2つ以上含有する化合物を含有することを特徴とする殺菌剤組成物。
【化1】


(式中、R〜Rは炭素数1〜30の炭化水素基又は炭素数1〜4のアルカノール基を表す。ただし、R〜Rの少なくとも一つは炭素数8〜30の炭化水素基である。)
【化2】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌性が長期間低下しない過酢酸を含有した殺菌剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
過酢酸は、細菌、真菌、ウイルス等に対して優れた殺菌作用を示し、更に、人に対する感作性や変異原性が低く、分解生成物が酢酸と過酸化水素という比較的安全な化合物であることから、安全性の高い消毒薬として各種洗浄剤や殺菌剤等に用いられ、更に、これらの洗浄剤や殺菌剤の洗浄効果を補強する目的等から、ノニオン界面活性剤等の界面活性剤を配合している場合もある(例えば、特許文献1〜3を参照)。しかし、こうした洗浄剤や殺菌剤でも特定の菌(例えば、セレウス菌等)を効果的に殺菌することができず、過酢酸の濃度を上げたり、洗浄時間を延ばしたり、洗浄回数を増やしたりするなどして対応していた。
【0003】
こうした状況の中、アミンオキシドと過酢酸とを併用することにより、セレウス菌等の特定の菌も容易に殺菌できる消毒剤組成物が知られるようになった(例えば、特許文献4を参照)。アミンオキシドと過酢酸とを併用することにより、相乗作用で殺菌力を向上させ、セレウス菌等の特定の菌も容易に殺菌することができる。しかしながら、過酢酸とアミンオキシドを含む組成物は、短時間の間にその殺菌力が低下してしまうという問題があった。このため、過酢酸とアミンオキシドを含む洗浄剤は、工業的に製造して販売することには適さず、市場では、セレウス菌等の菌も容易に殺菌できる強力な殺菌力を持ち、且つ殺菌力が長時間持続する過酢酸系の殺菌洗浄剤が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平8−502518号公報
【特許文献2】特開2001−072996号公報
【特許文献3】特開2007−084589号公報
【特許文献4】特開平11−116990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は、強力な殺菌力をもち、且つその殺菌力が長時間持続する過酢酸系の殺菌洗浄剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者等は鋭意検討した結果、特定のリン化合物が殺菌力を長時間持続させることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、(A)成分として過酢酸、(B)成分として過酸化水素、(C)成分として酢酸、(D)成分として下記の一般式(1)で表わされる化合物、(E)成分として下記の一般式(2)で表される基を2つ以上含有する化合物を含有することを特徴とする殺菌剤組成物である。
【0007】
【化1】

(式中、R〜Rは炭素数1〜30の炭化水素基又は炭素数1〜4のアルカノール基を表す。ただし、R〜Rの少なくとも一つは炭素数8〜30の炭化水素基である。)
【0008】
【化2】

【発明の効果】
【0009】
本発明の効果は、強力な殺菌力をもち、且つその殺菌力が長時間持続する過酢酸系の殺菌剤組成物を提供したことにある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の殺菌剤組成物は、(A)成分として過酢酸、(B)成分として過酸化水素、(C)成分として酢酸、(D)成分として下記の一般式(1)で表されるアミンオキシド化合物、及び(E)成分として下記の一般式(2)で表される基を2つ以上含有する化合物の混合物である。
【0011】
【化3】

(式中、R〜Rは炭素数1〜30の炭化水素基又は炭素数1〜4のアルカノール基を表す。ただし、R〜Rの少なくとも一つは炭素数8〜30の炭化水素基である。)
【0012】
【化4】

【0013】
一般式(1)で表される(D)成分はアミンオキシドであり、式中のR〜Rは炭素数1〜30の炭化水素基又は炭素数1〜4のアルカノール基である。こうした炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基等の炭化水素基が挙げられる。
【0014】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、2級ブチル基、ターシャリブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、2級ペンチル基、ネオペンチル基、ターシャリペンチル基、ヘキシル基、2級ヘキシル基、ヘプチル基、2級ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、2級オクチル基、ノニル基、2級ノニル基、デシル基、2級デシル基、ウンデシル基、2級ウンデシル基、ドデシル基、2級ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、2級トリデシル基、テトラデシル基、2級テトラデシル基、ヘキサデシル基、2級ヘキサデシル基、ステアリル基、エイコシル基、ドコシル基、テトラコシル基、トリアコンチル基、2−ブチルオクチル基、2−ブチルデシル基、2−ヘキシルオクチル基、2−ヘキシルデシル基、2−オクチルデシル基、2−ヘキシルドデシル基、2−デシルテトラデシル基、2−ドデシルヘキサデシル基、モノメチル分枝−イソステアリル基等が挙げられる。
【0015】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、オレイル基等が挙げられる。
【0016】
アリール基としては、例えば、フェニル基、トルイル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基、スチレン化フェニル基、p−クミルフェニル基、フェニルフェニル基、ベンジルフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等が挙げられる。
【0017】
シクロアルキル基、シクロアルケニル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、メチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、メチルシクロペンテニル基、メチルシクロヘキセニル基、メチルシクロヘプテニル基等が挙げられる。
【0018】
炭素数1〜4のアルカノール基としては、例えば、メタノール基、エタノール基、プロパノール基、ブタノール基、イソプロパノール基、イソブタノール基、ターシャリブタノール基等が挙げられる。
【0019】
これらの中でも、過酢酸との相乗効果が優れることからR〜Rはアルキル基又は炭素数1〜4のアルカノール基であることが好ましい。また、R〜Rの少なくとも1つは炭素数8〜30の炭化水素基であるが、R〜Rの中の1つの基が炭素数8〜30の炭化水素基であることが好ましく、R〜Rの中の1つの基が炭素数8〜18の炭化水素基であることがより好ましく、R〜Rの中の1つの基が炭素数10〜16の炭化水素基であることが更に好ましい。更に、R〜Rの中の1つの基が炭素数8〜30の炭化水素基である場合、残りの2つの基は、炭素数1〜4の炭化水素基又は炭素数1〜4のアルカノール基であることが好ましく、炭素数1〜2のアルキル基又は炭素数2〜4のアルカノール基であることがより好ましく、メチル基、エタノール基又はプロパノール基であることが更に好ましい。
【0020】
上記の(A)〜(D)成分を一定の割合で配合した組成物は優れた殺菌効果を発揮するが、配合後における時間の経過とともにその殺菌効果は急激に低下していく。一般的な工業製品は、製品の輸送、倉庫への保管等で実際に殺菌剤を使用するまでに時間がかかるため、使用時に製造直後の殺菌効果を得ることができない。本発明の洗浄剤組成物は、こうした欠点を改良するために殺菌効果を低下させない(E)成分を添加している。
【0021】
本発明の殺菌剤組成物に使用できる(E)成分は、一般式(2)で表される基を分子中に2つ以上含有する化合物である。こうした化合物としては、例えば、ピロリン酸;トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ヘキサポリリン酸等のポリリン酸;(1−ヒドロキシエチリデン)ビスホスホン酸;アミノトリメチレンホスホン酸;エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)等のポリエチレンポリアミン系ホスホン酸;フィチン酸等が挙げられ、中でもピロリン酸、テトラポリリン酸、(1−ヒドロキシエチリデン)ビスホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸およびエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)が好ましい。なお、一般式(2)で表される基を分子中に1つしか持っていない化合物、例えば、リン酸、ホスホン酸、亜リン酸等では、殺菌効果を持続させる効果が得られない。
【0022】
ここで(E)成分は酸であるが、これらの(E)成分を、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等の中和物にすると、殺菌効果を持続させる効果が失われるため、塩の形にしてはならない。また、(A)〜(E)成分を混合した後、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ剤で混合した組成物を中和しても、同様に殺菌効果を持続させる効果が失われる。
【0023】
本発明の殺菌剤組成物の(A)〜(E)成分の配合量は特に規定されず、それぞれの成分について任意の量を配合させればよいが、より高い殺菌性や安定性が望めることから、(A)〜(E)成分の配合比は、(A)成分10質量部に対して、(B)成分は1〜150質量部が好ましく、5〜100質量部がより好ましく、15〜45質量部が更に好ましい。(C)成分は、(A)成分10質量部に対して、5〜200質量部が好ましく、7〜100質量部がより好ましく、10〜50質量部が更に好ましい。(D)成分は、(A)成分10質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.2〜15質量部がより好ましく、0.3〜5質量部が更に好ましい。(E)成分は、(A)成分10質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.3〜7質量部がより好ましく、0.5〜5質量部が更に好ましい。
【0024】
本発明の殺菌剤組成物における各成分の好ましい配合比率は上記に記載したが、成分濃度としては、殺菌剤組成物全量に対して(A)成分が0.001〜15質量%になるようにすることが好ましい。なお、本発明の殺菌剤組成物を輸送するときは、なるべく高濃度のほうが輸送コストを抑えられるため、輸送時には(A)成分の濃度が1〜15質量%であることが好ましく、3〜15質量%がより好ましく、5〜15質量%が更に好ましい。また、殺菌洗浄剤を使用するときは、(A)成分の濃度が0.001〜0.5質量%であることが好ましく、0.01〜0.2質量%がより好ましく、0.01〜0.1質量%が更に好ましい。低濃度にする場合は高濃度品を適宜水で希釈すればよい。ただし、使用時の濃度が低すぎると殺菌効果が不足する場合があり、使用時の濃度が高すぎると濃度に見合った効果が得られない場合がある。
【0025】
本発明の殺菌剤組成物は、殺菌剤や洗浄剤に使用する公知の添加剤の添加を拒むものではなく、使用目的に応じて、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤、消泡剤、キレート剤、有機溶剤、酸化防止剤、香料、色素、防腐剤等を本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。
【0026】
アニオン界面活性剤としては、例えば、高級アルコール硫酸エステル塩、硫化オレフィン塩、高級アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、硫酸化脂肪酸塩、スルホン化脂肪酸塩、リン酸エステル塩、脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、グリセライド硫酸エステル塩、脂肪酸エステルのスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩、スルホコハク酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゾイミダゾールスルホン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリンの塩、アシルオキシエタンスルホン酸塩、アルコキシエタンスルホン酸塩、N−アシル−N−カルボキシエチルタウリン又はその塩、及びアルキル又はアルケニルアミノカルボキシメチル硫酸塩等を挙げることができる。
【0027】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加形態は、ランダム状、ブロック状の何れでもよい。)、ポリエチレングリコールプロピレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、グリセリン脂肪酸エステル又はそのエチレンオキサイド付加物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸モノエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸−N−メチルモノエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸ジエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グリセリンエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸メチルエステルエトキシレート、N−長鎖アルキルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0028】
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキル(アルケニル)トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル(アルケニル)ジメチルアンモニウム塩、アルキル(アルケニル)四級アンモニウム塩、エーテル基或いはエステル基或いはアミド基を含有するモノ或いはジアルキル(アルケニル)四級アンモニウム塩、アルキル(アルケニル)ピリジニウム塩、アルキル(アルケニル)ジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキル(アルケニル)イソキノリニウム塩、ジアルキル(アルケニル)モルホニウム塩、ポリオキシエチレンアルキル(アルケニル)アミン、アルキル(アルケニル)アミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
これらの界面活性剤は、本発明の殺菌剤組成物に対して、0.001〜25質量%添加するのが好ましく、0.002〜20質量%添加するのがより好ましい。
【0029】
消泡剤としては、シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、及びこれらのシリコーン物質を使用したシリコーン系エマルション等のシリコーン系消泡剤;ポリエーテル系消泡剤等が挙げられる。これらの消泡剤は、本発明の殺菌剤組成物に対して、0.0001〜1質量%添加するのが好ましく、0.0003〜0.5質量%添加するのがより好ましい。
【0030】
キレート剤としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸等のポリカルボン酸類;ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン二酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸等のアミノカルボン酸類;リンゴ酸、クエン酸、グリコン酸、グルコヘプトン酸等のオキシカルボン酸類が挙げられる。これらのキレート剤は、本発明の殺菌剤組成物に対して、0.0001〜8質量%添加するのが好ましく、0.001〜5質量%添加するのがより好ましい。
【0031】
有機溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール等のポリオール類が挙げられる。これらの溶剤は、本発明の殺菌剤組成物に対して、0.001〜10質量%添加するのが好ましく、0.001〜8質量%がより好ましい。
【0032】
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、2、5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、DL−α−トコフェノール等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、本発明の殺菌剤組成物に対して、0.0001〜5質量%添加するのが好ましく、0.001〜3質量%がより好ましい。
【0033】
本発明の殺菌剤組成物は、強力な殺菌力を長期間持続するため、幅広い分野での殺菌に有用である。例えば、医療施設、養護施設、老人福祉施設、学校、保育園、食品加工工場、クリーニング施設、厨房等の壁、床、窓あるいはそれらの施設等で用いられる衣類、タオル、寝具等の備品や、プラスチック、ゴム、金属、ガラス、タイル、コンクリート、セラミックス等からなる機器類、容器、器具等、更にトイレ、浴槽、台所等に用いることができる。これらの中でも、菌が繁殖しやすい衣類、タオル、寝具等の布類の殺菌に使用することが好ましい。
【0034】
本発明の殺菌方法は本発明の殺菌剤を、殺菌の必要のある対象物に接触させればよく、例えば、壁や床等の硬質物の殺菌には、本発明の殺菌剤組成物をしみこませた布等で拭けばよく、布類等の場合であれば、一定の濃度に希釈した本発明の殺菌剤組成物に布類を浸し、10〜80℃程度の温度で10秒〜1時間攪拌し、その後水ですすぎを行って乾燥させればよい。殺菌の時間や温度等は、付着していると考えられる菌によって適宜変えてやればよい。
【0035】
連続洗濯機等の機械で大量の布類等を処理する場合は、予備洗浄工程、本洗浄工程、すすぎ工程および仕上げ工程等の複数の工程を組み合わせて洗浄してもよい。この場合、本発明の殺菌洗浄剤組成物は、予備洗浄工程および本洗浄工程の両方またはどちらかの工程に使用すればよく、本発明の殺菌洗浄剤組成物をどちらか一方の工程に使用した場合は、もう一方の工程には公知の洗浄剤を使用すればよい。洗浄方法としては、予備洗浄工程終了後に本洗浄工程を行えばよく、その際洗浄温度は10〜80℃が好ましく、20〜70℃がより好ましい。洗浄温度が低すぎると殺菌や洗浄が不十分になる場合があり、洗浄温度が高すぎると、布類等が痛む場合や高温による洗浄時の危険性が高まる恐れがある。また、洗浄時間としては、1分〜1時間が好ましく、5〜30分がより好ましい。洗浄時間が短すぎると殺菌や洗浄が不十分になる場合があり、洗浄時間が長すぎると時間に見合った効果が表れない場合がある。また、これらの洗浄工程においては漂白剤を使用してもよい。漂白剤としては、例えば、過ホウ酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、尿素・過酸化水素付加物、過硫酸カリウム等の無機過酸化物;次亜塩素酸、塩素化イソシアヌル酸等の塩素系漂白剤が挙げられる。
【0036】
本洗浄工程終了後、すすぎ工程および仕上げ工程を行うが、すすぎ工程にて布類に付着した洗浄剤の除去を行い、仕上げ工程では、糊剤、柔軟剤、サワー剤等の仕上げ剤を使用して布類の処理を行えばよい。なお、ユーザー等の希望により、仕上げ工程は省略することも可能である。すすぎ工程あるいは仕上げ工程終了後は、公知の方法で脱水や乾燥行えばよい。
【実施例】
【0037】
以下本発明を実施例により、具体的に説明する。尚、以下の実施例等においてppmは特に記載が無い限り質量基準である。
【0038】
<殺菌剤組成物の製造>
200mlビーカーに、45%濃度の過酸化水素水溶液を24.5g、80%濃度の酢酸を23.5gおよび純水を52g添加して均一になるまで混合した後、溶液が平衡状態になるまで室温で1日放置した。得られた溶液は、過酢酸が10%、過酸化水素20%および酢酸16%の溶液(過酢酸溶液)であった。次いで10lの容器に、前記配合により作製した過酢酸溶液18g、ドデシルジメチルアミンオキシドを0.18gおよびピロリン酸0.15g添加し、更に純水を5981.67g添加して全体を6000gにした後、均一になるまで混合して実施例1の殺菌剤組成物を得た。
なお、実施例2〜9および比較例1〜9の組成物については、表1および表2に記載している配合量になるように、実施例1と同様の方法で配合した。
【0039】
<殺菌力の試験方法>
試験に使用した化合物を、表1及び表2に記載の配合量で混合し、実施例1〜9及び比較例1〜9の試験液を得た。調整した各試験液を40℃の恒温槽内で保存し、50時間後、100時間後、200時間後及び300時間後毎の試験液をサンプリングし、サンプリングしたそれぞれの試験液(保存前のサンプルを含む)を三角フラスコに60ml取って40℃に保ち、そこに接種菌数2×10 cfu/mlのセレウス菌液(レーベンジャパン株式会社製のSuspension型)を0.3mlを入れて均一に混合した後、5分、10分、15分、20分、25分、30分及び35分毎に三角フラスコから1mlずつを採取し、還元性物質であるチオ硫酸ナトリウム0.135g、SCDLPブイヨン培地(栄研化学株式会社製)0.342gの入った水溶液9mlの中に入れ、35℃インキュベーターにて24hr培養した。チオ硫酸ナトリウムは、過酢酸の殺菌活性を停止させる効果がある。試験液の殺菌性能が良好であれば、菌との接触時間が短くても菌は死滅するので、5〜35分のいずれの時間で菌が死滅したかを見れば、試験液の殺菌性を評価することができる。試験液で菌が死滅すると菌は培養されず、菌が残っていると菌は培養されるが、菌が培養されると培地が白濁し、菌が培養されないと培地は透明のままであることから目視にて菌の生死を確認した。結果を表3に示した。
【0040】
<使用した化合物>
D−1:ドデシルジメチルアミンオキシド
D−2:ドデシルジエタノールアミンオキシド
D−3:オクタデシルジメチルアミンオキシド
E−1:ピロリン酸
E−2:テトラポリリン酸
E−3:(1−ヒドロキシエチリデン)ビスホスホン酸
E−4:アミノトリメチレンホスホン酸
E−5:エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)
F−1:リン酸
F−2:ホスホン酸
F−3:エチレンジアミンモノ(メチレンホスホン酸)
F−4:テトラポリリン酸カリウム
F−5:エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)ナトリウム
F−6:ピロリン酸アンモニウム
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分として過酢酸、(B)成分として過酸化水素、(C)成分として酢酸、(D)成分として下記の一般式(1)で表わされる化合物、(E)成分として下記の一般式(2)で表される基を2つ以上含有する化合物を含有することを特徴とする殺菌剤組成物。
【化1】

(式中、R〜Rは炭素数1〜30の炭化水素基又は炭素数1〜4のアルカノール基を表す。ただし、R〜Rの少なくとも一つは炭素数8〜30の炭化水素基である。)
【化2】

【請求項2】
(E)成分が、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ヘキサポリリン酸、(1−ヒドロキシエチリデン)ビスホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びフィチン酸から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の殺菌剤組成物。
【請求項3】
(E)成分が、ピロリン酸、テトラポリリン酸、(1−ヒドロキシエチリデン)ビスホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸及びエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項2に記載の殺菌剤組成物。
【請求項4】
(A)成分10質量部に対して、(B)成分を1〜150質量部、(C)成分を5〜200質量部、(D)成分を0.1〜20質量部、(E)成分を0.1〜10質量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の殺菌剤組成物。
【請求項5】
一般式(1)で表される化合物のR〜Rのいずれか1つの基が炭素数8〜18のアルキル基であり、残りの2つの基が炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルカノール基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の殺菌剤組成物。
【請求項6】
組成物全量に対する(A)成分の濃度が0.001〜15質量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の殺菌剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の殺菌剤組成物を布類に使用することを特徴とする布類の殺菌方法。

【公開番号】特開2011−121912(P2011−121912A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281816(P2009−281816)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】