説明

殺菌性充填剤組成物

【課題】殺菌性充填剤組成物及びその製造方法の提供。
【解決手段】金属および/またはこの塩のサブミクロンサイズの粒子で変性した表面を有する無機充填剤を含む、殺菌性組成物。ラテックス塗料、溶媒をベースとする塗料、粉末塗料、しっくい塗り、パテ、予め投与された下塗りおよび疎水性密集体添加剤の調製における、当該組成物の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、殺菌性特性を有する表面的に変性された無機充填剤粒子の組成物、およびこれを製造するための方法に関する。本発明の組成物は、被膜配合物、例えば塗料、しっくい塗り、パテ、下塗りなどに殺菌活性を付与することを意図する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
静菌作用が必須である箇所において用いるための塗料の開発は、特に目的が塗装された表面すべてが細菌コロニーの形成を防止することである病院環境における、この産業についての課題を表す。これらの被膜は、高い殺菌力、人間への低い毒性、またはさらに無毒性および低い環境的影響を示さなければならない;これらの費用は、合理的であり、他の工業用塗料の範囲内でなければならない。
【0003】
いくつかの方略が、これらの目的に達するために進められた。例えば、変性された静菌剤が、ポリマーネットワーク中に含まれるように開発された。問題に対するこの方法は、いくつかの欠点を有する。他方、塗料の製造などの工業的プロセスと適合する広範囲の抗菌剤を配合することは、困難である。さらに、これらの剤は、迅速に分解し、製品の耐用年数を重大に制限する傾向がある。他の方略は、天然の粘土、例えばゼオライト中に封入された金属塩、例えば銀を用いることであった。EP 0 116 865 (1984)。この場合において、粘土を、これが塗料成分と適合性になるように加工しなければならない。他方、これらの場合において、殺菌剤は、このカプセルの内部からこれがこの殺菌活性を奏するべき箇所まで移動または拡散しなければならない。
【0004】
ここ数年、広範囲の抗生作用のためのTiO光触媒ナノ粒子(NP)を用いることの実験に成功した。(Wang, R., Kashimoto K., Fujishima A., et al; Nature 388 (1997) 431, Hagfeldt A., Gratzel M.; Chem. Rev. 95 (1995) 49, Williams A.J., Pin C.M.; Environ. Sci. Tech. 32 (1998) 2650)および特許公報WO2006/061367。TiO/M(M=Cu、Au、Ag)の組み合わされたNP系は、プラスチック、ガラス被膜、繊維および医学的目的のための材料において、静菌特性を有する粒子として用いられている(Oloffs A. et al; Biomaterials 15 (1994) 753; Kawashita M., Tsuneyama S. et al; Biomaterials 21 (2000) 393.; Q. Cheng, Ch. Li et al; Appl. Surf. Sci. (2005)および特許EP0251783 B1)。これらの化合物系において、1価の金属は、細菌の数種の必須アミノ酸と反応する際に、重要な作用を奏する。しかし、塗料において、光触媒特性を有する顔料(TiO)の存在は、これがポリマー膜を分解し得るため、逆効果を生じる。
【0005】
また、塗料の成分の1種は、塗料特性、例えば耐摩耗性、屋外耐性、浸透性、光沢などを改良するために用いられる充填剤と呼ばれる、無機粉末である。無機充填剤は、乾燥塗料膜の容積における高い割合を表すため、これらを殺菌成分の担体として用いることにより、塗料などの被膜配合物の全容積に殺菌特性を提供するのに適する方法が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の概要
本発明の目的は、表面改質無機充填剤を含む殺菌性組成物を提供することにあり、前記無機充填剤は、被膜、例えば塗料、しっくい塗り、パテ、下塗りなどの配合物において用いるタイプである。
本発明の目的は、金属および/または金属塩のサブミクロンサイズの(submicrometric)粒子で被覆された無機充填剤のコアを含み、該金属が、好ましくは金、白金、銀および銅から選択され、該塩が、好ましくは金、白金、銀および銅硫酸塩、シアン化物、塩化物、酢酸塩および硝酸塩から選択される、殺菌性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
充填剤は、被膜の乾燥膜の重要な割合を表すため、本発明の殺菌性充填剤を用いることにより、殺菌剤の一層良好な投与が可能になる。さらに、適用された後の被膜組成物の厚さ全体への充填剤の均一な分布により、この耐用年数全体を通して殺菌力の永続性が、確実になる。
有利には、本発明の充填剤は、塗料の物理化学的特性、例えばこのチキソトロピー、表面張力、沈降作用などを変化させず、したがってこの結果この配合を改変するのに必要ではない。
【0008】
本発明の他の目的は、殺菌性組成物の製造方法であって、所定の充填剤密集体を金属M塩の水溶液中に分散させ、ここでMはPt、Au、CuまたはAgであり得ること、懸濁液を加熱すること、還元剤を加えること、加熱を継続すること、冷却すること、固体を分離することおよび乾燥することを含む、前記方法である。
本発明は、ラテックス塗料、溶媒をベースとする塗料、粉末塗料、しっくい塗り、パテ、予め投与された(pre-dosed)下塗りおよび本発明の殺菌性充填剤組成物を含む疎水性密集体添加剤を提供する。
【0009】
発明の詳細な説明
塗料は、ビヒクルと呼ばれる媒体中の顔料の分散体であると定義することができる。当該ビヒクルは、通常結合剤または樹脂と呼ばれるポリマー物質の溶媒への溶解により、形成する。しかし、塗料および被膜の配合物において、一般的に、添加剤と呼ばれる他の成分を用い、これらは、極めて多様な化学的性質を有する;これらの機能は、極めて多様である:製造プロセスを補助すること、完成した製品に安定性を付与すること、レオロジー、光沢、適用の容易を調節することなど。充填剤は、特に、屋外耐性、浸透性、摩耗および亀裂の形成に対する耐性、光沢などの主な特性を改変する、低価格の材料である。当該充填剤は、ビヒクルに実質的に不溶性の粉末である。最も一般的な充填剤の中で、重晶石(硫酸バリウム)、方解石(炭酸カルシウム)、硫酸カルシウム、タルク、雲母、石英(SiO)、微斜長石(KAlSiO)、ケイ酸アルミニウムおよび/またはケイ酸マグネシウム、雲母、白雲石、カオリンなどを挙げることができる。
【0010】
本発明において、殺菌性特性を有し、被膜の配合物において用いることになっている、表面的に変性された無機充填剤を、調製し、これらの充填剤を、殺菌性特性を有する金属および/または金属塩粒子により被覆されたコアとして、構成する。
本発明の変性された充填剤の製造を、所定の充填剤密集体を金属塩の水溶液中に分散させることにより行う。この懸濁液を加熱する。次に、適切な還元剤を加え、加熱を継続する。反応が終了した後に、これを放冷する;固体を分離し、乾燥する。
【0011】
開始の充填剤粒子は、塗料、しっくい塗り、パテ、予め投与された下塗り、疎水性密集体添加剤、例えば粗い下塗りにおいて用いるものなどの被膜において慣用的に用いられる充填剤であってもよい。好ましくは、充填剤を、白墨、方解石、炭酸カルシウム、白雲石、珪藻岩、雲母および重晶石から選択することができる。
本発明の変性充填剤の製造において用いる金属塩を、金、銅、銀または白金塩から選択してもよく、塩のアニオンを、好ましくは硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩および尚一層好ましくは塩化物およびシアン化物から選択する。
【0012】
還元化合物は、ナトリウムボロハイドライド、ジメチルアミノボラン、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、ヒドロキノン、クエン酸ナトリウムおよび/またはホルムアルデヒドであってもよい。好ましくは、ナトリウムボロハイドライドおよびジメチルアミノボランを用いる。反応温度は、0℃〜100℃の範囲内であってもよい。反応時間は、少なくとも30分、好ましくは30〜120分である。
【0013】
反応が完了した後に、混合物を、これが室温に達するまで攪拌する。固体を、適切な方法、例えば遠心分離または濾過により分離する。固体を、27℃〜100℃の範囲内の温度にて、好ましくは100℃±2℃にて、好ましくは加熱炉中で乾燥する。
得られた充填剤粒子表面を、コアまたは別個の金属および/または金属塩殺菌性粒子により被覆する。コアまたは粒子の大きさは、50〜300nmの範囲内である。
【0014】
好ましい態様において、本発明の変性充填剤の製造を、シアン化銀およびナトリウム、シアン化ナトリウムおよび水酸化ナトリウムの水溶液中に所定の充填剤密集体を分散することにより、行う。懸濁液を加熱し、この間攪拌し、その後適切な還元剤、例えばジメチルアミノボランを加える。反応を、これを攪拌し、加熱している間に行う。反応が終了した後に、これを放冷し;固体を分離し、次に洗浄し、乾燥する。得られた充填剤粒子の表面を、殺菌性銀および/または銀化合物のコアまたは別個の粒子により、被覆する。コアまたは粒子の大きさは、50〜300nmの範囲内である。
【0015】
定義
前に示したように、塗料を、ビヒクルと呼ばれる媒体中の顔料の分散体であると定義することができる。当該ビヒクルは、通常結合剤または樹脂と呼ばれるポリマー材料の溶媒への溶解により構成され、これは、顔料および充填剤と共に、塗料の4つの主な構成成分である。この定義の問題は、これが、粉末塗料を含まないことであり、これを、固体状態にある樹脂、硬化剤、顔料および添加剤の混合物として、定義することができる。
【0016】
塗料は、必ずしもこれらの構成成分をすべて有しているわけではない。例えば、粉末塗料は、溶媒を何ら含んでおらず、ワニスは、顔料または充填剤を何ら有していない。
【0017】
樹脂は、単一の生成物であるか、または各々の生成物が、この特有の特性(粘着性、光沢、耐化学性など)を当該化合物に付与する数種の生成物の組み合わせであってもよい。溶媒の役目は、製造プロセスの間および適用プロセスの間の塗料の粘度を調節することである。また、溶媒の蒸発速度により、塗料の乾燥時間が決定される。
【0018】
最後に、塗料配合物において、添加剤と呼ばれる他の成分を用い、これは、全く異なった化学的性質を有する成分である;これらはしばしば、配合物中で少数成分であり、これらの機能は、極めて多様である:これらを、製造プロセスにおいて補助するために、完成した製品に安定性を付与するために、レオロジー、光沢、適用の容易を調節するためなどに、用いてもよい。
【0019】
樹脂
樹脂の機能は、顔料粒子を分散させ、塗料の基板への固定として作用することである。これは、良好な結合能力並びに、同時に良好な耐化学性および機械抵抗を有しなければならない。具体的な用途のための樹脂を選択する場合の決定的な基準の2つは、粘着性および耐化学性である。
【0020】
塗料の配合物において用いる樹脂を、成膜機構により分類することができる。これらの機構は、以下のものである:
i)化学反応によるもの:樹脂モノマーを、ビヒクル内に溶解する。塗料を適用した後に、溶媒を蒸発させ、膜を収縮させ、これにより樹脂モノマーの重合の結果として膜を「硬化」させる。
【0021】
ii)物理的乾燥によるもの:この場合において、ビヒクルは、熱可塑性ポリマー溶解物である。膜を、溶媒の単なる蒸発により形成する。膜の形成の間に化学反応はなく、樹脂分子は、凝集力により互いに結合する。
【0022】
水性分散体を得るために最も用いられている樹脂の中で、以下のものを挙げることができる:ポリ酢酸ビニル、スチレン−ブタジエン、アクリル樹脂、スチレン化アクリル樹脂など。
【0023】
1つのタイプの樹脂を選択する場合に評価しなければならない特性は、以下のものである:費用、粘着性、顔料の湿潤能力、粘度、水平化、硬さ、他の樹脂との適合性、耐久性、多孔質基板中に浸透する能力、光沢および時間単位での光沢保持力、色および色保持力(ある時間の後に黄変する樹脂は、白色塗料を配合するのには適切ではない)、耐熱性並びに乾燥時間および条件。
【0024】
溶媒
溶媒は、液体塗料におけるビヒクルの揮発性部分を形成する。これらの主な機能は、塗料の製造および適用の間に系の粘度を調節することである。塗料を適用した後に、溶媒は、ある時間以内に蒸発し、系の一部であることを停止する。
【0025】
所定のビヒクル中に存在する溶媒は、以下の3つの機能の1つを奏し得る:
a)真の溶媒:真の溶媒は、これ自体、樹脂と共に澄んだ、透明な溶解物を形成することができる。この存在は、ビヒクルの粘度を薄くするのに最も寄与する。
b)潜在的な溶媒:この溶媒は、これ自体樹脂を溶解することができないが、真の溶媒の存在下で、これは、真であるかのように挙動し、したがってこれはまた、系の粘度を薄くするのに寄与する。
c)シンナー:これは、樹脂を溶解することができないが、ある比率において系により耐久される。これはまた、しばしば粘度を低下させることにより適用性を改善するために加えられる。
【0026】
顔料
顔料は、ビヒクル中に分散する塗料の部分である;顔料は、事実上ビヒクルに不溶である細粒状の無機または有機固体粒子により、形成される。
【0027】
塗料内でのこの機能は、多様である:
−これは、塗料に不透明性を付与する。この特性は、光の散乱性分散により得られる。これは、樹脂−顔料界面における屈折率値の変化に関連する。差異が大きくなるに伴って、得られる不透明性は大きくなる。この特性はまた、塗料を製造する際に得られる分散速度に依存する。不透明性の測定により、塗料の膜の被覆能力を評価することが可能になる。
【0028】
−これは、塗料に特定の色を付与して、ある装飾効果が得られる。着色顔料の数は、可能な色の膨大な色相と同等である。
顔料はまた、例えば亜鉛が豊富な塗料におけるように、さび止め保護として有用である。
【0029】
最も一般的な顔料の中で、二酸化チタン、酸化鉄、クロム酸亜鉛、黒煙、銅フタロシアニンなどを挙げることができる。
【0030】
充填剤
充填剤は、事実上ビヒクルに不溶の粉末により、構成される。一般的に、これらは、屋外耐性、浸透性、耐摩耗性、光沢、亀裂の形成などの重要な特性を改変する、低価格の材料である。最も一般的な充填剤の中で、以下のものを挙げることができる:重晶石(硫酸バリウム)、方解石(炭酸カルシウム)、硫酸カルシウム、タルク、雲母、石英(SiO)、微斜長石(KAlSiO)、アルカリ性のケイ酸アルミニウムであるカオリナイト、白雲石、カオリンなど。
【0031】
添加剤
これらは、所望の特性を得るために、または特定の問題を解決するために、種々の機能を有する塗料の配合物中で用いられる極めて多様な群の製品である。しかし、しばしば、添加剤を用いることにより、1つまたはいくつかの特性(多機能性)が改善され得、また同時に、添加剤は、他の特性に対して好ましくない効果を有し得る。この理由により、添加剤を選択する場合、および用いるべき用量を決定する場合には、ある種の添加剤が、1種の配合物について良好に機能し得、また他のものにおいて何ら効果を有しない場合があるため、注意しなければならない。
【0032】
添加剤により発揮される重要な機能のいくつかは、以下のものである:
−製造プロセスを補助すること。例えば、湿潤、分散、消泡添加剤。
−完成した塗料の安定性に寄与すること。例えば、沈降防止、皮張り防止添加剤。
−適用方法に関連したいくつかの興味深い特性を付与すること。例えば、増粘、水はね防止(anti-splashing)、水平化、垂れ防止添加剤。
−乾燥後に塗料膜にいくつかの所望の特性を付与すること。例えば、可塑化、つや消し、引っかき防止、UV吸収、殺菌性添加剤。
【0033】
添加剤の主なタイプを、これらが作用するこれらの機能および機構と共に、以下に記載する。
【0034】
分散添加剤
これらを用いて、顔料の表面上に吸収され、樹脂と共に連結点を確立する顔料の個別の粒子の分離を促進する;これらは、顔料と樹脂との間の結合架橋として機能する。安定な分散体を得るために、分散体を通しての顔料−樹脂結合は、顔料粒子間の引力よりも強くなければならない。
分散プロセスは、エマルジョン溶媒をベースとする塗料および水をベースとする塗料において、異なる特徴を示す。
【0035】
主に溶解樹脂が良好な湿潤剤である場合には、溶解樹脂の存在により、これ自体、分散プロセスが容易になる。当該樹脂は、顔料粒子を被覆し、したがって分散作用が停止した後にこれらが再編成するのを防止し得る。樹脂が良好な湿潤剤ではない場合には、主な作用が樹脂の表面張力を弱くすることである分散添加剤を用いて、この湿潤能力を改善する。
分散剤を用いることは、粉砕が終了した後に軟凝集(顔料粒子の再編成)を回避するために必須である。
【0036】
アニオン系分散剤は、主に用いられる分散剤である:顔料表面上に吸収され、これに電荷を付与するポリリン酸またはポリカルボン酸のナトリウム塩またはカリウム塩。同一の電荷の電荷の間の反発効果により、粒子は分離して保持される。
分散剤を用いることは、安定な分散体を得、また粉砕局面において用いなければならないエネルギーを大幅に減少させることに寄与する。粉砕を一層容易にすることにより、製造プロセスの全体の費用は、低下する。
【0037】
可塑剤
塗料産業において用いられる樹脂の多くは、硬いが脆い膜を形成する。酢酸セルロースまたはビニル樹脂などの樹脂に特有のこの現象により、柔軟性の欠如により亀裂を生じる傾向がある塗料が生じる。可塑剤は、これらの樹脂に柔軟性を付与する。可塑剤の作用は、ある種の固体または液体の高沸点物質が、数種の樹脂の分子を溶媒和することができるという事実に基づいている。このようにして、樹脂の構造は、剛性を失い、柔軟性を得る。
【0038】
可塑剤の重要な特性は、これらが、適用した後に塗料の膜のままでなければならないことである。この要件は、通常得られるが、用いられる生成物の数種は、ある程度の揮発性を有し、ある時間の後に膜から移動し得る。これに対して、最も有効な可塑剤は、一般的に、一層揮発性が高く、逆も同様である。良好な可塑剤が従わなければならない他の要件は、樹脂との良好な適合性を有することである。最も適合性が高い可塑剤は、一層良好な溶媒和作用を有するものであり、逆も同様である。
【0039】
塗料産業において、以下のタイプの可塑剤が、一般的に用いられる:天然の不乾性油、高沸点モノマー(例えばフタル酸塩、リン酸塩、グリコール酸塩)、ポリマー(例えば塩素化パラフィン類)。
【0040】
消泡剤
塗料の製造において空気を包含させることは、望ましくない現象である。最初に、これにより、加工費用が増大する。その理由は、これが、製造時間および包装時間を長くするからである。さらに、乳化した空気が好都合に除去されない場合には、特に塗装用はけおよびローラーを用いる際に、泡立ちの問題が、適用中に起こり得る。この問題は、主に水をベースとする塗料の分野においては、極めて重要である。その理由は、水は、この極性の特徴およびこの高い表面張力により、気泡を形成する傾向が極めて高いからである。
【0041】
消泡剤は、塗料の製造中の泡の形成を回避するか、またはこれが発生した後に、これを除去する。消泡添加剤の選択のための一般的基準を、以下のように列挙することができる:i)この表面張力は、媒体の表面張力よりも低くなければならない;ii)当該添加剤は、媒体と化学的に反応してはならない;iii)当該添加剤は、塗料乾燥膜の特性に影響してはならない。
【0042】
塗料産業において主に用いられている消泡剤の中で、以下のものを挙げることができる:低HLB界面活性剤(親水性/親油性バランス)、シリコーン類、6〜10の炭素数範囲内のアルコール類。
【0043】
増粘剤
配合物の粘度は、ビヒクルおよび顔料の性質、顔料の濃度並びにこの分散速度に依存する。最初の例において、これらの要因を操作して、これらを所望の粘度に調整してもよい;いくつかの他の例において、これは、可能ではなく、したがっていくつかのタイプの添加剤は、これを調節するために用いなければならない。通常、塗料に「肉付けする」、即ちこの粘度を増大することが意図される。
【0044】
種々のタイプの系および用途のために有用な、いくつかのタイプの増粘添加剤がある。特に有用なのは、粘度を増大させる際に、これらが塗料にチキソトロピックレオロジーを付与するものである。系は、この粘度が外力を加えると低下し、当該力を撤回するとこれを取り戻す場合に、チキソトロピックであると言及される。この挙動を、以下のように説明することができる:定常状態において、相互作用ネットワークが、分子レベルで形成され、これにより、可動性を低下させることができるある種の構造が生じ、したがって流動能力が生じる。
【0045】
外力、例えば攪拌および剪断を加えた際に、前述の構造は崩壊し、可動性が増大し、この結果粘度が低下する。外力を停止させた際には、構造は自ら再構成される。チキソトロピーは、2つの理由により重要な特性である。先ず、これは、主に貯蔵の観点において、顔料が沈降する傾向を解消または低減し、塗料に安定性を付与する。第2に、これは、適用する際に液だれを解消または低減する。増粘剤を加えることは、粉砕局面の前または後の配合の時間内に、起こり得る。これらはまた、完成した塗料バッチにおける粘度補正剤として、用いることができる。
【0046】
すべての増粘剤系において期待される特性は、これが、ある時間の経過の後にこの特性を安定に保持することである。ある場合において、増粘剤は、加えた24または48時間後まで、これらの特性すべては発生しない。
【0047】
水をベースとする塗料において用いるセルロース増粘剤は、細菌の攻撃を受けやすい。このような攻撃を受ける塗料は、明らかな粘度の低下を示す。このおよび他の理由により、水をベースとする塗料を、殺菌物質と共に加えなければならない。
【0048】
沈降防止および垂れ防止添加剤
前に述べたように、増粘添加剤の多くは、さらに沈降防止または垂れ防止機能を有する。沈降の傾向は、顔料粒子の比重および大きさに正比例する。顔料の良好な分散により、沈降の傾向が低下する。顔料の分散を好む界面活性添加剤がある。即ち、これらは、凝集体を崩壊させる。これらの機構が、沈降を完全に回避しない場合があっても、上記の添加剤は、顔料粒子表面中に吸着され、分散体において安定化効果をもたらす。ある程度の沈降がある場合には、得られた沈降物は、硬質かつ高密度ではなく、むしろ柔軟であり、再び容易に加えて戻される。柔軟な沈降物の生成は、主要ではない欠陥であり、多くの場合において、これは、許容し得ると考慮される。大豆レシチンは、このタイプの添加剤の例である。
【0049】
殺生物剤
水をベースとする塗料は、細菌、真菌などの生物の成長および繁殖のための好ましい媒体を構成する。これは、望ましくない現象である。その理由は、これは、塗料の特性の変化をもたらし、またセルロース増粘剤の分解により粘度の低下を生じ、悪臭の出現をもたらす。このタイプの汚染を回避するために、生成物を加えて、これらの生物を排除し、またはこれらの繁殖を防止しなければならない;これらの添加剤が有効であるために、これらは、水溶性でなければならない。
【0050】
フェニル酢酸水銀および他の有機水銀生成物は、エマルジョン塗料の包装内の保護のために広く用いられているが、これらの使用は、毒性および環境汚染の基準のために打ち切られた。今日では、ホルモル放出生成物および可溶性イソチアゾリノン誘導体が、とりわけ用いられている。
【0051】
同一の問題の他の側面は、塗料膜の表面上への真菌、藻類および地衣類の増殖である。これを回避するために、膜におけるこれらの永続性を確実にする、水への低い溶解性を有する殺生物剤製品を、求めなければならない。このような製品は、ベンズイミダゾール類、カルバミン酸塩類、ジチオカルバミン酸塩類およびイソチアゾリノンの低溶解性誘導体である。
【0052】
水平化剤
良好な水平化能力を有する塗料は、用いる適用方法とは無関係に、平坦な平滑な表面を生じるものである。実際に、良好な水平化を有する塗料は、塗料ばけまたははけを用いて塗布した後に、流動し、平滑な表面を生じ、したがって前述の適用方法により生じた溝を解消することができるものである。一般的に、良好な水平化を得るための最良の方法は、樹脂、顔料および溶媒の選択の混合物上に作用することである。
【0053】
ラテックスをベースとする塗料
ラテックスをベースとする塗料は、この場合において補助溶剤または融合体(coalescent)と呼ばれる、有機溶媒の割合を低下させる主要な溶媒として、水を用いる。このタイプの塗料の膜形成機構は、融合として知られており、溶媒が蒸発する間に互いに接触する樹脂粒子の融合にある。このプロセスは、融合体と呼ばれる生成物のあるタイプの補助により、なされる。これらの物質は、樹脂粒子中のポリマー物質を「湿潤させる」ことができる、低いかまたは中程度の揮発性を有する有機溶媒である。界面は、隣接する粒子間に形成され、これは、融合体が蒸発した後に一緒に残留する。したがって、当該膜は、融合体が完全に蒸発するまで、完全には形成しない。融合体の機能を、一時的な可塑剤として記載することができる。水性塗料中の分散のための最も一般的な融合体のうち2種は、ブチルグリコールおよびキシロールである。適切な融合体のタイプおよび用量は、ラテックスをベースとする塗料の最も高く評価される特性の1つに大きく影響し得、これは、洗浄性(washability)である。
【0054】
2種の基本的なタイプのラテックスをベースとする塗料がある:
−エマルジョン(乳化した樹脂を用いる)
−水溶性塗料(水溶性樹脂)
【0055】
エマルジョン
エマルジョンは、液体が他の液体を介して2つの小さい単位(ミセル)として分散可能な二相系である。分散した液体(少量)は、内部相(不連続)と呼ばれ、分散媒体は、外部相(連続)と呼ばれる。例示的なエマルジョンは、水中油型エマルジョンである。不連続相(分散)は、油(小滴における)であり、連続相は、水である。
【0056】
水をベースとするエマルジョンにおいて、以下のように区別することができる:
−エマルジョン自体:分散した粒子は、水溶性ではない;これらは、系を安定にするための保護コロイドを必要とする。
−コロイド状分散体:これは、溶液(例えば溶媒溶液中の樹脂)とエマルジョンとの間の中間的な系であり、即ち粒子は、水性媒体に部分的に可溶であるが、水不溶性部分は、容易に乳化される。
【0057】
水溶性塗料
このタイプの塗料は、溶媒に対する樹脂の汚染効果を低下させるために開発された。この主な有用性は、樹脂が、種々のタイプの油で変性したフェノール樹脂、アルキド樹脂などであってもよい合成樹脂の縮合により生成し、水溶性であることである。しかし、これらを、ラテックス塗料のエマルジョンと取り違えるべきではない。
【0058】
内部ラテックス塗料
このタイプの主に用いられている塗料のベース樹脂は、酢酸ビニルコポリマーおよび/またはアクリル樹脂であり、スチレン−ブタジエンコポリマーが、比較的安価な塗料として用いられている。このタイプの塗料は、適用するのが容易であり、悪臭を生じずに迅速に乾燥する。これを適用するために用いる塗料ばけおよびローラーを、水で洗浄する。感水性物質の存在並びに極めて高い顔料および充填剤の濃度により、このタイプのエマルジョン塗料の膜は、水蒸気に対して感受性かつ浸透性であるが、容易に洗浄され得る。
【0059】
内部ラテックス塗料の典型的な配合は、以下の通りである:
【表1】

【0060】
エマルジョン中の水をベースとする塗料を製造する一般的なプロセスを、以下に記載し、これは、分散機を用い、またこれは、配合物の一部を形成する生成物を導入する順序を示す:
1.水を反応器に加える。
2.剪断歯ディスクを有する攪拌機を起動する。
3.粘度を上昇させ、ゲルの生成を補助する増粘剤およびアンモニアを加える。
4.添加剤:湿潤剤、分散剤、消泡添加剤を加える。
5.顔料および充填剤を加える。
【0061】
6.分散機の回転数を増加させて、所望の分散を得るのに必要な時間にわたり剪断効果を増大させる。
7.分散機の回転数を減少させて、剪断効果を停止させる。
8.エマルジョン樹脂をゆっくりと加える。
9.融合体を加える。
10.着色塗料のためのヒドロユニバーサル(hydro-universal)ペーストで色を調整する。
11.所要に応じて、容積あたり25%のアンモニアでpHを8〜9に調整する。
12.所要に応じて、水を加えて、粘度、密度および重量あたりの固体などの定数を調整する。
【0062】
一般的な規則として、生成物を、常に攪拌している間に加える。「のこぎり歯」を備えた攪拌棒により、最も有効な剪断がもたらされ、一層良好に分散する。
【0063】
塗料を製造するためにボールミルを用いる場合において、成分を加える順序は、以下の通りであってもよい:
1.溶媒、分散剤、湿潤剤、消泡剤、二酸化チタンおよび充填剤。必要な溶媒の量を、ミルが適切に作動し、適切な粉砕をもたらすように、加えなければならない。
2.樹脂。
3.定数を調整するのに必要な溶媒。
4.融合体。
5.殺生物剤。
【0064】
塗料の配合
塗料産業において、配合プロセスは、以下のことを含む方策を開発することにある:
−原料の選択。
−これらの相対的な比率。
−製造プロセス。
【0065】
目的は、1つまたはいくつかの要件に従う生成物を得ることである。これらの要件は、以下のものである:
i)これが適用される基板への粘着性。これは、良好な塗料の挙動を得るのに必要な不可欠な特徴である。ii)装飾、視覚的外見。iii)耐久性。当該塗料は、保護または装飾特性の損失をもたらす外部の剤の作用により劣化してはならない。iv)表皮の形成、沈降またはゲル化を回避するための包装内の安定性。塗料と、これを含む包装との間の可能な相互作用をまた、考慮しなければならない。ラテックス塗料について、プラスチック包装が望ましい。容器が外部から影響されず、すべての溶媒の損失を回避し、したがって配合物の均整のあらゆる変化を防止するのが、重要である。
【0066】
v)費用。塗料産業において、費用の要因は、生成配合物にわたり極めて重要である。一般的目的は、最小の原料および製造費用で所望の要件を満たす生成物を得ることである。特定の配合の問題の発生により、いくつかの可能な解決方法が生じ得るが、これを解決する方法およびこれらの費用は、変化し得る。これらの1つを選択することは、合理的な費用でいずれの特性を最も重要であると考慮するかおよびいずれを犠牲にすることができるかに依存する。vi)生態系、環境および毒性。環境および健康への関心は、日々の基準で一層重要になっている基準である。有害であると考慮される生成物の配合物、例えば有機水銀、鉛を含む顔料、ある種の有機塩素化溶媒などにより形成した保存剤は、次第に排除されている。発生した廃棄物の最小化はまた、塗料を配合する際の、および特に製造プロセスを設定する際の基準でなければならない。
【0067】
製造段階
不混和性相(固体および液体)における分散体を得るために、以下の全く異なった段階を経ることが、必須である:ペースト化、粉砕、変換、調整、濾過および包装−最後のものは、製造された塗料の特徴を変化させないため、これ自体では段階ではない。
最初の局面において、ビヒクルの一部を含む保湿剤とアンモニアとの最初のプレミックス(pre-mixture)を、ゲルを形成するように製造する。その後、これを、ミルまたは他の分散装置において粉砕する。目的は、最も効率的、迅速であり、比較的安価な方法で顔料を分散させることであり、顔料粒子を分離することにより、これらの要素の粒子に凝集する。
【0068】
溶解または完成段階は、粉砕ペーストに配合物の残り:樹脂、溶媒および添加剤の残りを加えることにある.
このようにして、ペースト化において開始したプロセスは、容器中で、示した原料を混合し、攪拌することによりこれを均一化することからなる。攪拌棒は、混合特性に加えて、分散特性を有する。
【0069】
この均一化が達成された後に、顔料および充填剤により形成した凝集体を、分離しなければならない。時々、激しい攪拌が十分である(分散様式)が、ある他の場合において、一層活動的な(aggressive)方法が必要である(粉砕様式)。粉砕点は、凝集体の分離が達成されたか否かを示す。当然、所望の粉砕が得られない場合には、この段階を、これを達成するのに必要な程度に多数回繰り返さなければならない。
【0070】
所望の粉砕点に達した後に、次の段階は、変換であり、これは、原料の残り、主に樹脂および溶媒(ある場合においては、ある種の特別な添加剤)を加えることにある。この段階において、溶媒の一部を、洗浄のために残しておく。
前の段階において「軟凝集」がない場合には、色、粘度などの調整を、行う。
最後の段階は、濾過および包装を含む。
【0071】
各々の段階を、以下に個別に分析する:
ゲル生成
ゲル生成は、すべての塗料製造の最初である。この段階において、溶媒、増粘剤およびアンモニアを、ステンレススチール容器または反応器中で混合する。原料を加える順序は、無秩序ではない。その理由は、混合を以下に示すように行う場合には一層良好な結果を達成することができることが、明らかになったからである:
【0072】
1.溶媒の一部
2.増粘剤およびアンモニア/ゲルが生成するまで攪拌機を起動する。
3.湿潤、分散および消泡添加剤/製造された生成物をガラス上に広げることにより、物理的外見を制御し、軟凝集体または固体粒子の不存在を制御する。
4.無機顔料
5.充填剤を加える場合には、これらを、一層高密度ないし一層低密度の充填剤製としなければならない。
6.試料を冷却するための別の部分の溶媒/攪拌機の速度を増大させる。
7.エマルジョン樹脂
8.融合体(これが樹脂エマルジョンに包含されない場合)
9.殺菌剤
10.粘度を調整するための溶媒の残り
【0073】
粉砕
粉砕は、一次粒子における機械的な破壊および分離である。粉砕の目的は、ペースト化またはゲル生成において湿潤を伴って達成されていない最適な分散を得ることである。これは、塗料製造プロセス全体で最も時間およびエネルギーを消費する操作であり、粉砕くさびBYK GARDNERまたはSHEENで粒度を測定することにより、制御しなければならない。
【0074】
変換
この段階において、粉砕ペーストを安定化し、完成した生成物の最終的な方式を達成する。
軟凝集は、顔料のすでに分散した粒子を再編成することとして定義され、これにより、得られたよりもはるかに増粘された粉砕が得られる。これは、前の段階:粉砕に戻ることを意味するため、この段階における危険である。可能な限り濃縮された粉砕ペーストを得ることが、重要である。その理由は、このようにして、比較的少量を加工し、プロセスが比較的短いからである。一層濃縮されたペーストを製造することにより、軟凝集の危険は、ペーストと樹脂との間の濃度の差異が比較的高いため、増大する。
【0075】
濾過
調整が終了した後に、以下の段階は、包装である;濾過を、包装の際に行う。塗料が、適切な粉砕を有し得る場合であっても、これを濾過して、粉砕された大きさよりも大きい可能な汚染物を抽出する必要がある。このようにして、膜は、均一であり、自動の、またはロボット化された塗装においてフィルターおよびノズルの目詰まりがすべて回避される。濾過は、単に、透過性の手段を通してこれを通過させることによる流体からの粒子の分離にある。良好な繊維フィルターは、粒子を多くとも厚さの最初の20%に維持するものである。主に塗装産業において用いられるフィルターは、孔が、高い差圧において大きさが増大しない、固定孔(fix-pore)タイプのフィルターである。濾過の大きさを、粉砕において規定された大きさよりも少々大きく選択するのが、好都合である。
【0076】
包装
包装プロセスは、物理的な濾過を含み、したがって、選択した濾過方法とは独立して、包装の2つの区別可能なタイプがある:
−手動の包装:これは単に、予め塗料を濾過し、はかりの補助により確立された重量において包装中に充填することにある;この場合において、主に用いられているフィルターは、振動し、および前述のフィルターカートリッジである。
−自動包装:すべての取り扱いは、自動的に行われる。
【0077】
包装プロセスにおいて単一の独立した機能を遂行する、ある範囲の工具および機械があり、したがって、濾過し、投与し、包装を閉鎖する(とじ機(closer))などの商業的に入手できる機械がある。
【0078】
ここで、本発明を、実験的例により記載し、これは、本発明の組成物の調製および既知の組成物と比較してのこの殺菌剤の有効性を例示する。以下の例は、単に例示目的で提供するものであり、いかなる方法によっても本発明の範囲を限定するものと考慮するべきではない。当該分野における専門家は、本質的に同様の結果をもたらすために変更または修正し得る、種々の臨界的に重要ではないパラメーターを即座に理解する。
【0079】

例1
殺菌充填剤の調製
100gの重晶石を、秤量し、適切な容器中に配置した。2gの銀およびシアン化ナトリウムの水溶液1リットルと、1.2gのシアン化ナトリウムおよび1gの水酸化ナトリウムとを、加えた。この混合物を、回転式攪拌機で機械的に攪拌しながら60℃にて採取した。その後、2gのアミノホウ酸ジメチルを、加えた。加熱を、攪拌しながら60℃にて、30分の最小の時間の間継続した。容器を熱源から取り出し、これを放冷し、固体を濾過により分離し、固体残留物を脱イオン水で2回洗浄した。残留物を、加熱炉中で100℃±2℃にて乾燥した。銀のコアにより均一に被覆された重晶石粒子または別個の銀粒子が、電子走査顕微鏡画像および/または原子間力顕微鏡法により測定して、120nmの範囲内の大きさで得られた(図1を参照)。
【0080】
例2
殺菌性塗料の調製
変性した充填剤(例1の変性した重晶石)を有するラテックス塗料試料を、本発明に従って調製した。成分を、以下の表に示す:
【0081】
【表2】

【0082】
また、同様の試料を、慣用の変性していない充填剤を用いて調製した。
配合物を、高速分散機(VORTEX)を用いて調製した。アンモニア水およびセルロース系増粘剤を用いてゲルを生成した後、湿潤剤、分散剤および消泡剤を加え、物理的外見を制御するまで攪拌した(粉砕)。二酸化チタンを加え、くさびが5μm〜10μmとなるまでペーストを分散させ、次に水を加え、30分間分散させた。この時間の後、各々のタイプの配合物およびエマルジョンについて変性した、および変性していない充填剤、並びに安定化の目的のための水を、導入した。最後に、補助溶剤、殺菌剤および水を加えて、定数を調整した。
【0083】
当該塗料を、IRAM 1070 Normのガイドラインに従って特徴づけした。次に、前の表における配合に従って調製した本発明の表面的に変性した充填剤を有する塗料の阻害活性を、慣用の塗料と比較して決定した。
【0084】
試験した微生物は、大腸菌ATCC 25922および黄色ブドウ球菌ATCC 6538P(CCM−29−305)であった。
純粋な24時間培養液から、McFarland尺度の0.5の管の濁度(約10個の細胞/ml)と同等の懸濁液を、Luria-Bertani(LB)ブロス中に調製した。20mlのLB寒天と調製した懸濁液とを含むものを、プレートに蒔いて、コロニーのコンフルエントな成長を得た。適用した接種材料の合計の吸収を可能にした後に(約5分)、支持体としての約1.5×1cmのアルミナの断片を、無菌のクランプと共に配置し、当該断片は、変性した充填剤を有する、および有しない2種の塗料を含む。プレートを、24時間37℃にてインキュベートした。
【0085】
変性した充填剤塗料は、両方の微生物の発生に対して阻害活性を有することが明らかになり、阻害活性は、変性していない顔料を有する塗料においては出現しなかった。これは、殺菌性塗料の支持体の周囲の阻害環の形成により、証明された。
変性した充填剤を有する塗料の殺菌活性をまた、成長する細菌培養液について決定した。
【0086】
阻害活性を決定するために用いた同一の微生物の純粋な24時間培養液から、McFarland尺度0.5の管の濁度(約10個の細胞/ml)と同等の懸濁液を、無菌の生理学的溶液中に調製した。10μlの懸濁液を、両方の塗料で塗布した片の上にピペットで滴下し、これらを完全に吸収されたものとした(約2分間)。
【0087】
0、1、5および24時間において任意に設定した種々の時点において、接種した片を採取し、激しい攪拌(ボルテックス)を用いて2mlの生理学的溶液中に再懸濁させた。各々の時点について、生存可能な微生物の計数を、2回行った:1/10において連続的に配列した希釈を、各々の希釈から調製し、100μlを、LB寒天を含むプレート上にDrigalskyスパチュラを用いて接種して、接種材料を拡散させた。適用した接種材料の合計の吸収を可能にした後(約5分)、プレートを、24時間37℃にてインキュベートした。
【0088】
以下の表は、得られた結果を示し、以下のパラメーターを採用する:回収の割合は、変性していない塗料を含むプレートから各々の時点において回収することができる微生物の割合を示し、これを、変性した塗料の「実質の効果」を評価するために、考慮しなければならない;細菌活性の割合は、変性した塗料の直接の、または実質の効果を示す。
【0089】
回収の割合を、初期時間(t)に関して計算し、一方殺菌活性の割合を、回収された細胞の割合(回収%)から決定した。
【0090】
【表3】

初期接種(t):大腸菌:1.8×10CFU/ml;黄色ブドウ球菌:3.6×10CFU/ml。
ND:検出可能ではない
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明による、無機充填剤上に付着した殺菌性のコアの原子間力顕微鏡画像(AFM)を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属および/またはこの塩のサブミクロンサイズの粒子で被覆された無機充填剤のコアを含む、殺菌性充填剤組成物。
【請求項2】
無機充填剤が、白墨、方解石、炭酸カルシウム、白雲石、珪藻、雲母および重晶石を含む群から選択される、請求項1に記載の殺菌性充填剤組成物。
【請求項3】
金属が、金、白金、銀および銅を含む群から選択される、請求項1に記載の殺菌性充填剤組成物。
【請求項4】
金属塩が、金、白金、銀および銅硫酸塩、シアン化物、塩化物、酢酸塩および硝酸塩から選択される、請求項1に記載の殺菌性充填剤組成物。
【請求項5】
銀のサブミクロンサイズの粒子で被覆された重晶石のコアを含む、請求項1に記載の殺菌性充填剤組成物。
【請求項6】
充填剤のコアを被覆する金属および/または金属塩粒子が、50〜300nmの大きさを有する、請求項1に記載の殺菌性充填剤組成物。
【請求項7】
殺菌性充填剤組成物の製造方法であって、無機充填剤粒子を金属塩の水溶液中に分散させること、懸濁液を加熱すること、還元剤を加えること、加熱を継続すること、冷却すること、固体を分離することおよび乾燥することを含む、前記方法。
【請求項8】
無機充填剤が、白墨、方解石、炭酸カルシウム、白雲石、珪藻、雲母および重晶石を含む群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
金属が、金、白金、銀および銅の群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
金属塩が、金、白金、銀および銅硫酸塩、シアン化物、塩化物、酢酸塩および硝酸塩から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
還元剤が、ナトリウムボロハイドライド、ジメチルアミノボラン、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、ヒドロキノン、クエン酸ナトリウムおよびホルムアルデヒドから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
反応温度が、0℃〜100℃の範囲内である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
乾燥温度が、27℃〜100℃の範囲内である、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれかに記載の殺菌性充填剤組成物の、ラテックス塗料の製造における使用。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれかに記載の殺菌性充填剤組成物の、溶媒をベースとする塗料の製造における使用。
【請求項16】
請求項1〜6のいずれかに記載の殺菌性充填剤組成物の、粉末塗料の製造における使用。
【請求項17】
請求項1〜6のいずれかに記載の殺菌性充填剤組成物の、しっくい塗りの製造における使用。
【請求項18】
請求項1〜6のいずれかに記載の殺菌性充填剤組成物の、パテの製造における使用。
【請求項19】
請求項1〜6のいずれかに記載の殺菌性充填剤組成物の、予め投与された下塗りの製造における使用。
【請求項20】
請求項1〜6のいずれかに記載の殺菌性充填剤組成物の、粗い下塗りにおいて用いるタイプの疎水性密集体材料の製造における使用。

【図1】
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【公開番号】特開2009−173624(P2009−173624A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−114709(P2008−114709)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(508127650)インスティトゥト ナシオナル デ テクノロヒア インドゥストリアル(イエネテイ) (1)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTO NACIONAL DE TECNOLOGIA INDUSTRIAL (INTI)
【住所又は居所原語表記】Av. General Paz 5445, CP1650 San Martin, Provincia de Buenos Aires, Argentina
【Fターム(参考)】