説明

殺菌洗浄剤組成物

【課題】本発明は、界面活性剤を配合した過酢酸系の殺菌洗浄剤において、良好な殺菌力と洗浄力と共に、容器の材質である樹脂に長期間接触しても当該樹脂を劣化させず、更に刺激臭の少ない過酢酸系の殺菌洗浄剤組成物を提供することにある。
【解決手段】本発明は、過酢酸1質量部に対して、過酸化水素を1.5〜4質量部、酢酸を10〜20質量部、下記の一般式(1)で表されるノニオン界面活性剤を0.1〜2質量部及び水を含有する組成物であって、組成物全量に対する過酢酸の濃度が2.5質量%以下であることを特徴とする殺菌洗浄剤組成物である:
−O−(−R−O−)−H (1)
(式中、Rは、炭素数8〜18の炭化水素基を表し、Rは、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、nは、6〜20の数を表す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な殺菌力と洗浄力を持ち、且つ樹脂に対する攻撃性が低く、臭いが良好な過酢酸系の殺菌洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
過酢酸、過酸化水素及び酢酸を含有する過酢酸系の洗浄剤は、殺菌洗浄剤として医療機器、食品加工工場、クリーニング施設、厨房等の機器や施設において使われているが、過酢酸、過酸化水素及び酢酸のみからなる洗浄剤は、殺菌作用は十分であるが有機あるいは無機の汚れに対する洗浄力が低い。そのため殺菌と同時に、これら有機あるいは無機の汚れを除去する目的で界面活性剤を配合することが一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1には、過酢酸、酢酸、過酸化水素、無機酸及び下記の一般式で表される非イオン性界面活性剤を含有する殺菌洗浄剤組成物が開示されている:
O−(R−O)−H
(式中、Rは、水素原子または炭化水素基を表し、Rは、アルキレン基を表し、nは1以上の数を表す)
【0004】
また、特許文献2には、過酸化水素、酢酸、過酢酸、及び界面活性剤を含有する水溶液であって、界面活性剤として少なくとも下記の一般式
HO−(PO)−(EO)−(PO)−H
(式中、POはオキシプロピレン基を表し、EOはオキシエチレン基を表し、nは3〜50の数を、mは1〜100の数を、kは3〜50の数を表す)で表される化合物を用いることを特徴とする人工透析機用殺菌洗浄剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−292996号公報
【特許文献2】特開2004−285154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のような良好な殺菌力と洗浄力を備えた過酢酸系の洗浄剤であっても、工業的にこれらを供給する場合には、更に考慮しなくてはならない問題が発生する。その一つが樹脂汚染性の問題である。過酢酸系の殺菌洗浄剤が工業製品として取り扱われる場合、通常、樹脂製の容器あるいは樹脂でコーティングした容器が使用される。こうした容器に入れられた殺菌洗浄剤は、保管や輸送のため長期保存することが前提であるが、長期の保存によって樹脂が劣化し、漏洩等の問題が発生する場合がある。特に、無機酸を使用する殺菌洗浄剤組成物では、特定の樹脂、特にシリコン樹脂に対して悪影響を与える場合がある。
【0007】
また、もう一つの問題が臭いの問題である。工業的に過酢酸系の殺菌洗浄剤を使用する場合、高濃度の溶液を水で希釈して使用するのが一般的である。取り扱う量が少量であれば問題ないが、工業的には大量の洗浄剤を取り扱うため、洗浄剤に過度の刺激臭がある場合、希釈時や使用時の取り扱いに不便を生じる場合や、取り扱う人に害を与える場合がある。
【0008】
以上のことから、過酢酸系の殺菌洗浄剤には良好な殺菌力と洗浄力と共に、容器に使用する樹脂を劣化させないこと、更に刺激臭が少ないことが望まれていた。
【0009】
従って、本発明が解決しようとする課題は、界面活性剤を配合した過酢酸系の殺菌洗浄剤において、良好な殺菌力と洗浄力と共に、容器の材質である樹脂に長期間接触しても当該樹脂を劣化させず、更に刺激臭の少ない過酢酸系の殺菌洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで本発明者等は鋭意検討した結果、過酢酸系の殺菌洗浄剤において各成分の最適の配合を見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、過酢酸1質量部に対して、過酸化水素を1.5〜4質量部、酢酸を10〜20質量部、下記の一般式(1)で表されるノニオン界面活性剤を0.1〜2質量部及び水を含有する組成物であって、組成物全量に対する過酢酸の濃度が2.5質量%以下であることを特徴とする殺菌洗浄剤組成物である:
−O−(−R−O−)−H (1)
(式中、Rは、炭素数8〜18の炭化水素基を表し、Rは、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、nは、6〜20の数を表す)
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果は、界面活性剤を配合した過酢酸系の殺菌洗浄剤において、良好な殺菌力と洗浄力と共に、容器の材質である樹脂に長期間接触しても当該樹脂を劣化させず、更に刺激臭の少ない過酢酸系の殺菌洗浄剤組成物を提供したことにある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例の洗浄試験において使用した装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の殺菌洗浄剤組成物は、過酢酸、過酸化水素、酢酸、下記の一般式(1)で表されるノニオン界面活性剤及び水を含有するものである:
−O−(−R−O−)−H (1)
(式中、Rは、炭素数8〜18の炭化水素基を表し、Rは、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、nは、6〜20の数を表す。)
【0014】
一般式(1)で表されるノニオン界面活性剤のRは、炭素数8〜18の炭化水素基を表す。こうした炭化水素基としては、例えば、オクチル基、イソオクチル基、2級オクチル基、ノニル基、イソノニル基、2級ノニル基、デシル基、イソデシル基、2級デシル基、ウンデシル基、イソウンデシル基、2級ウンデシル基、ドデシル基、イソドデシル基、2級ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、2級トリデシル基、テトラデシル基、イソテトラデシル基、2級テトラデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、2級ヘキサデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、2級オクタデシル基等のアルキル基;オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基;キシリル基、クメニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等のアリール基が挙げられる。これらの中でも、アルキル基が好ましく、炭素数8〜15のアルキル基がより好ましく、炭素数9〜13のアルキル基が更に好ましい。炭素数が8未満の炭化水素基であると、良好な洗浄力が得られない場合や菌への浸透力低下に伴い殺菌力が低下する場合があるために好ましくない。また、炭素数が18より大きな炭化水素基であると、組成物内への溶解性が低下して組成物内に溶解しない場合や長期の保存で組成物が分離する場合があるために好ましくない。
【0015】
一般式(1)で表されるノニオン界面活性剤のRは、炭素数2又は3のアルキレン基を表す。こうしたアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基が挙げられる。Rはn個の繰り返し構造を有し、複数個あるRは同一でも異なっていてもよいが、n個あるRの50モル%以上がエチレン基であることが好ましく、80モル%以上がエチレン基であることがより好ましく、n個のR全てがエチレン基であることが更に好ましい。Rが炭素数4以上の場合は、組成物内への溶解性が低下して組成物内に溶解しない場合があるために好ましくない。
【0016】
一般式(1)で表されるノニオン界面活性剤のnは、6〜20の数を表すが、6〜15の数が好ましい。nの数が6未満の場合は、組成物内への溶解性が低下して組成物内に溶解しない場合があり、20より大きい場合は、配合した過酢酸や過酸化水素が過剰に分解し、過酸化水素や過酢酸濃度が低下して殺菌性や洗浄性に悪影響を与える場合があるために好ましくない。
【0017】
なお、界面活性剤にはアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤あるいは両性界面活性剤もあるが、アニオン界面活性剤は殺菌洗浄中の泡立ちが多くて実用に耐えられず、カチオン界面活性剤や両性界面活性剤では、死滅が困難なセレウス菌に対して殺菌効果が得られない場合や洗浄力が不足する場合があるために好ましくない。また、ノニオン界面活性剤であるプルロニック型の界面活性剤(ポリオキシプロピレンポリオキシエチレン共重合体)では死滅が困難な菌、例えばセレウス菌等に対して高い殺菌効果が得られないために好ましくない。
【0018】
本発明の殺菌洗浄剤組成物に使用される各成分は特定の比率で配合される。具体的には、過酸化水素は、過酢酸1質量部に対して1.5〜4質量部配合され、2〜3質量部配合するのが好ましい。過酸化水素の量が1.5質量部より少ないと殺菌力が低下する場合があり、4質量部を超えると容器の材質である樹脂を劣化させる場合があるために好ましくない。酢酸は、過酢酸1質量部に対して10〜20質量部配合され、12〜16質量部配合するのが好ましい。酢酸の量が10質量部より少ないと無機物の汚れを除去する効果が低下する場合があり、20質量部を超えると酢酸の臭いが激しくなるため取扱いが困難になる場合があるために好ましくない。一般式(1)で表されるノニオン界面活性剤は、過酢酸1質量部に対して0.1〜2質量部配合され、0.5〜1.5質量部配合するのが好ましい。ノニオン界面活性剤の量が0.1質量部より少ないと有機物の汚れを除去する効果が低下する場合や、殺菌力が低下する場合があり、2質量部を超えると配合した過酢酸や過酸化水素が分解する場合や使用時の泡立ちが問題になる場合があるために好ましくない。
【0019】
更に、本発明の殺菌洗浄剤組成物は、組成物全量に対する過酢酸の濃度が2.5質量%以下でなければならず、0.001〜2.3質量%の範囲内であることが好ましい。過酢酸の濃度が2.5質量%を超えると、過酢酸の臭いが激しくなるため取扱いが困難になる場合や、容器の材質である樹脂を劣化させる場合があり、0.001質量%未満の場合は殺菌力や洗浄力が低下する場合があるために好ましくない。
【0020】
本発明の殺菌洗浄剤組成物について、輸送や倉庫での保管、あるいは殺菌洗浄剤を任意の濃度に希釈できることを考慮すると、濃度の高い濃縮液の状態で流通させることが好ましい。従って、本発明の殺菌洗浄剤濃縮液組成物は、各成分を上記の割合で、且つ一定の濃度で配合したものである。具体的には、過酢酸を1.5〜2.5質量%、過酸化水素を4〜6質量%、酢酸を25〜30質量%及び一般式(1)で表されるノニオン界面活性剤を0.15〜5質量%であり、過酢酸を1.7〜2.3質量%、過酸化水素を4.5〜5.5質量%、酢酸を26〜30質量%及び一般式(1)で表されるノニオン界面活性剤を0.5〜3質量%であることが好ましい。過酢酸の濃度が2.5質量%を超えると過酢酸の臭いが激しくなるため取扱いが困難になる場合や、容器の材質である樹脂を劣化させる場合があり、1.5質量%より低いと濃縮液としてのメリットが生かせない場合や殺菌力が低下する場合があるために好ましくない。また、過酸化水素の濃度が4質量%より低いと殺菌力が低下する場合があり、過酸化水素の濃度が6質量%を超えると容器の材質である樹脂を劣化させる場合や、性能とは直接関係ないが、過酸化水素が6質量%を超えると毒劇物法の規制対象品となるため、取扱い上好ましくない。酢酸の濃度が30質量%超えると酢酸の臭いが激しくなるため取扱いが困難になる場合があり、25質量%より低いと無機物の汚れを除去する効果が低下する場合があるために好ましくない。ノニオン界面活性剤の濃度が5質量%を超えると配合した過酢酸や過酸化水素が分解する場合や使用時の泡立ちが問題になる場合があり、0.15質量%より低いと有機物の汚れを除去する効果が低下する場合や、殺菌力が低下する場合があるために好ましくない。
【0021】
本発明の殺菌洗浄剤組成物は、上記の配合量及び配合比により、強力な殺菌力及び洗浄力、良好な長期保存安定性、樹脂に対する攻撃性の緩和及び刺激臭の低減を実現でき、更に洗浄対象の種類や、汚れや菌の種類を考慮して任意の濃度に希釈して使用することが可能である。
【0022】
本発明の殺菌洗浄剤濃縮液組成物の製造方法に指定はなく、最終的に各成分が均一に混合されていればよい。一般的に過酢酸は、過酢酸、酢酸及び過酸化水素の3成分が混合した組成物(過酢酸組成物)で販売されている。これらの3成分は平衡状態で存在しており、通常、酢酸と過酸化水素とを混合することで過酢酸が生成させ、更に一定の時間静置させて各成分の濃度を平衡状態にすることで得ることができる。具体的には、酢酸と過酸化水素の配合比を調整することで各成分の組成比が異なる過酢酸組成物を得ることができ、こうした過酢酸組成物に一般式(1)で表されるノニオン界面活性剤を配合することで本発明の殺菌洗浄剤組成物を得ることができる。しかし、当該ノニオン界面活性剤を配合することで過酢酸組成物の平衡状態が微妙に変化するため、平衡状態にするためには再度一定時間静置しなければならない。よって、過酢酸組成物にノニオン界面活性剤を配合する方法では2度の静置工程が必要となるため、製造時間の短縮という観点から、一定量の酢酸、過酸化水素及び一般式(1)で表されるノニオン界面活性剤を一括で配合した後、一度の静置工程で平衡状態にして製品化することが好ましい。更に、本発明の殺菌洗浄剤組成物は各成分の配合比が狭い範囲で規定されており、平衡状態の微妙な変化によって本発明で規定している配合比の組成物が得られない場合もある。よって、静置時間は長いほうが好ましい。具体的には、20〜45℃、好ましくは25〜40℃、より好ましくは30〜40℃の温度で、静置時間としては3日以上が好ましく、5日以上がより好ましく、7日以上が更に好ましい。なお、いずれの温度においても静置時間が30日あれば平衡状態に達するため、30日を超える静置は静置時間に見合う効果が得られない。一方、温度が20℃より低いと平衡状態に達するまで時間がかかりすぎ、45℃を超えると容器内の加圧で容器が変形する場合や、過酸化水素の分解等の問題が生じる場合があるために好ましくない。
【0023】
本発明の殺菌洗浄剤組成物を使用する対象は特に指定がないが、例えば、医療施設、養護施設、老人福祉施設、学校、保育園、食品加工工場、クリーニング施設、厨房等の壁、床、窓あるいはそれらの施設等で用いられる衣類、タオル、寝具等の備品や、プラスチック、ゴム、金属、ガラス、タイル、コンクリート、セラミックス等からなる機器類、容器、器具等、更にトイレ、浴槽、台所等に用いることができる。これらの中でも、菌が繁殖しやすい衣類、タオル、寝具等の布類の殺菌洗浄、あるいは高度な殺菌洗浄を要求する医療施設の医療機器等に使用することが好ましい。
【0024】
本発明の殺菌洗浄剤組成物を使用する殺菌洗浄方法としては、本発明の殺菌洗浄剤組成物を殺菌の必要のある対象物に接触させればよい。具体的には、例えば、壁や床等の硬質物の殺菌洗浄には、一定の濃度に調整した本発明の殺菌洗浄剤組成物をしみこませた布等で拭けばよく、布類等の場合であれば、一定の濃度に希釈した本発明の殺菌剤組成物に布類を浸し、10〜80℃程度の温度で10秒〜1時間攪拌し、その後水ですすぎを行って乾燥させればよい。また、液体を流す機器類等であれば、一定の濃度に希釈した本発明の殺菌洗浄剤組成物を当該機器類に一定時間流した後、純水ですすぎを行えばよい。なお使用時には、本発明の殺菌洗浄剤組成物の各成分を分割して被洗浄物に投入してもよく、例えば、一定濃度及び量の過酢酸、過酸化水素及び酢酸からなる組成物を先に添加し、その後一定濃度及び量のノニオン界面活性剤を添加して洗浄することも可能である。
【0025】
殺菌洗浄の時間や温度等は、付着していると考えられる菌の種類や量、及び有機汚れあるいは無機汚れの種類や量によって適宜選択すればよい。また、殺菌洗浄時の本発明の殺菌洗浄剤組成物の濃度も適宜選択すればよく、原液あるいは任意の濃度に希釈して使用すればよいが、過酢酸の濃度が0.001〜1質量%になるように希釈して使用することが好ましく、0.002〜0.5質量%がより好ましく、0.003〜0.1質量%が更に好ましい。過酢酸の濃度が0.001質量%未満で使用すると、殺菌洗浄に時間がかかる場合や殺菌や洗浄が完全に行われない場合があり、1質量%を超えると濃度に見合った効果が得られない場合があるために好ましくない。
【0026】
本発明の殺菌洗浄剤組成物は、殺菌剤や洗浄剤に使用する公知の添加剤の添加を拒むものではなく、使用目的に応じて、一般式(1)で表されるノニオン界面活性剤以外のノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤、消泡剤、キレート剤、有機溶剤、酸化防止剤、香料、色素、過酸化物の安定化剤等を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例により、更に具体的に説明する。
<殺菌剤組成物の製造>
200mlビーカーに、45質量%濃度の過酸化水素水溶液を100g、80質量%濃度の酢酸を28gおよび純水を35.4g添加して室温で1時間混合した後、界面活性剤1を1.5g添加して、室温で3時間混合した。その後、溶液が平衡状態になるまで40℃で7日放置した。得られた溶液は、過酢酸が2.0質量%、過酸化水素5.1質量%、酢酸27.9質量%及びノニオン界面活性剤1が2.3質量%の溶液(本発明品1)であった。
なお、同様の手法で、過酸化水素及び酢酸の量等を調整して、本発明品2〜8及び比較品1〜15の各試験液を製造した。各試験液の組成を表1〜表3に記載する。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
(試験に使用した界面活性剤)
界面活性剤1:ドデシルアルコールエチレンオキシド9モル付加物[一般式(1)にお
いて、R=ドデシル基、R=エチレン基、n=9](ノニオン界面活
性剤)
界面活性剤2:ドデシル硫酸ナトリウム
界面活性剤3:塩化ドデシルトリメチルアンモニウム
界面活性剤4:ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン
界面活性剤5:ポリオキシプロピレン(30)ポリオキシエチレン(10)共重合体(プ
ルロニック型界面活性剤)
【0032】
<試験>
試験1.殺菌力の試験
表1〜表3に記載の本発明品1〜8及び比較品1〜15の試験液を過酢酸が100ppmの濃度になるように純水で調整し、調整した各試験液を三角フラスコに60ml取って40℃に保ち、そこに接種菌数2×10cfu/mlのセレウス菌液(レーベンジャパン株式会社製のSuspension型)を0.3mlを入れて均一に混合した後、5分、10分、15分、20分、25分、30分及び35分毎に三角フラスコから1mlずつを採取し、還元性物質であるチオ硫酸ナトリウム0.135g、SCDLPブイヨン培地(栄研化学株式会社製)0.342gの入った水溶液9mlの中に入れ、35℃インキュベーターにて24時間培養した。チオ硫酸ナトリウムは、過酢酸の殺菌活性を停止させる効果がある。試験液の殺菌性能が良好であれば、菌との接触時間が短くても菌は死滅するので、5〜35分のいずれの時間で菌が死滅したかを見れば試験液の殺菌性を評価することができる。試験液で菌が死滅すると菌は培養されず、菌が残っていると菌は培養されるが、菌が培養されると培地が白濁し、菌が培養されないと培地は透明のままであることから目視にて菌の生死を確認した。結果を表5に示した。
【0033】
試験2.臭いの試験
100mlの蓋つき容器に、本発明品1〜8及び比較品1〜15の各試験液を50ml入れて蓋をし、25℃で1時間放置後取り出し、10人のパネラーによって取り出した容器の蓋を開けたときの臭いについて評価した。臭いの評価は以下の基準で行い、○を選択した人数の割合を算出した。例えば、○を選択した人数が6人であれば60%である。
○:臭いはあるが耐えられないものではないと感じる。
×:長時間嗅いでいるには耐えられない臭いであると感じる。
【0034】
試験3.洗浄試験
使用後の人工透析装置に実際に使用されたチューブ(内径8mm)を用いて洗浄試験を行った。チューブの内部には、主にタンパク質からなる有機汚れと無機塩の結晶からなる無機汚れが付着している。最初に、チューブを10cmの長さに切断し、有機汚れを目視で確認しやすくするために、CBB溶液(クマシーブリリアントブルー溶液)にてチューブ内部を染色した。CBB溶液はタンパク質を青色に染色することができる。無機塩は染色されないので白色の結晶として肉眼ではっきり確認できる。この染色した汚染チューブ(1)と新品の未汚染チューブ(2)をそれぞれ10cmを使用し、ポンプ(3)並びに500mlの三角フラスコ(4)を用いて図1に示したように洗浄液を循環できる装置として組み立てた。未汚染チューブ(2)は、洗浄後の汚れを評価する際の比較として使用した。
所定の濃度に希釈した200mlの洗浄液を500mlの三角フラスコ(4)に入れ、500ml/分の流速で30分間循環洗浄した後、汚染チューブ(1)を取り出し、チューブの外部から及びチューブを切り裂いてチューブ内部から洗浄状態を目視で確認した。評価は、下記の表4にある5段階評価にて行った。なお、表4中に記載の「わずか」という表現は、洗浄として合格レベルであり0〜2の評価であれば洗浄試験は合格である。
【0035】
【表4】

【0036】
試験4.材質の耐久性試験
150mlの蓋つき容器(容器内が加圧にならないように空気穴がある)に、本発明品1〜8及び比較品1〜15の各試験液をそれぞれ100ml入れ、そこに各種試験片(5×5cm)を浸漬させ、40℃の恒温槽内に保存した。1ヵ月後、3ヵ月後、6ヵ月後に試験片を取り出し、水洗いした後乾燥して当該試験片の重量を測定して試験前の重量と比較し、以下の式で重量変化率を算出した。
重量変化率(%)=(試験後の試験片の重量/試験前の試験片の重量)×100
【0037】
【表5】

【0038】
【表6】

【0039】
樹脂1:テフロン樹脂
樹脂2:ポリエチレン樹脂
樹脂3:シリコン樹脂
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の殺菌洗浄剤組成物は、例えば、医療施設、養護施設、老人福祉施設、学校、保育園、食品加工工場、クリーニング施設、厨房等の壁、床、窓あるいはそれらの施設等で用いられる衣類、タオル、寝具等の備品や、プラスチック、ゴム、金属、ガラス、タイル、コンクリート、セラミックス等からなる機器類、容器、器具、医療機器等、更には、トイレ、浴槽、台所等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
1:汚染チューブ、2:未使用チューブ、3:ポンプ、4:三角フラスコ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酢酸1質量部に対して、過酸化水素を1.5〜4質量部、酢酸を10〜20質量部、下記の一般式(1)で表されるノニオン界面活性剤を0.1〜2質量部及び水を含有する組成物であって、組成物全量に対する過酢酸の濃度が2.5質量%以下であることを特徴とする殺菌洗浄剤組成物。
−O−(−R−O−)−H (1)
(式中、Rは炭素数8〜18の炭化水素基を表し、Rは炭素数2又は3のアルキレン基を表し、nは6〜20の数を表す。)
【請求項2】
過酢酸を1.5〜2.5質量%、過酸化水素を4〜6質量%、酢酸を25〜30質量%及び一般式(1)で表されるノニオン界面活性剤を0.15〜5質量%含有することを特徴とする殺菌洗浄剤濃縮液組成物。
【請求項3】
過酸化水素、酢酸及び一般式(1)で表されるノニオン界面活性剤を混合した後、20〜45℃で3日以上静置して製造することを特徴とする請求項2に記載の殺菌洗浄剤組成物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−10911(P2013−10911A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146044(P2011−146044)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】