説明

殺菌消毒剤組成物、およびその製造方法

【課題】容器回収など液状組成物の問題を解消するとともに、水への溶解性が優れ、残滓が生じることもなく、計量や希釈作業時にべとつきを生じず、畜産、医療機関、食品工場などにおいて簡便に使用される、固形化した殺菌消毒剤組成物を提供する。
【解決手段】4級アンモニウム塩化合物を有効成分として含有する液状の殺菌消毒剤組成物と、尿素とを混合することにより固形化した殺菌消毒剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜産、医療機関、食品工場などにおいて簡便に使用される殺菌消毒剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、畜産、医療機関、食品工場などにおける施設や器具、或いは周辺機器の殺菌消毒に用いられている、例えば、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、または、塩化ベンザルコニウムなどの4級アンモニウム塩化合物である殺菌消毒剤は、これらの有効成分を10%前後含有する水溶液、またはアルコールを含む溶液として市販されているのが通常であり、使用時に用途に応じた希釈倍率で希釈する作業が必要であった。
【0003】
しかしながら、殺菌消毒する対象物によっては、一度に大量の殺菌消毒剤を使用することがあり、この場合、液状の殺菌消毒剤では計量や希釈作業などに困難を来すことがあり、また、使用済みの4級アンモニウム塩化合物溶液の容器の回収に、専門業者による格別の注意と手数を要し、コスト高となるものであった。
【0004】
そこで、従来の不都合を解決するために、液状で提供されていた殺菌消毒剤を粉末化することが考えられ、例えば、塩化ジデシルジメチルアンモニウム溶液を可溶性デンプンで粉末化する技術(例えば特許文献1参照)や、塩化ジデシルジメチルアンモニウム溶液をアルカリ金属塩で固形化する技術(例えば特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2932361号公報
【特許文献2】特開平7−89907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、従来の粉末化法で得られる組成物は、水分含量が比較的高く、計量作業時にべとつきが生じて取り扱い難いものであり、しかも、希釈作業時に組成物が固まりやすい性質を有していることから、組成物の溶解に長時間を要しており、また、従来の固形化法で得られる組成物は、希釈液に沈殿物を生じるため、殺菌消毒用器具の配管などに残滓が詰まるなどのおそれを多分に有していたことである。
【0007】
そこで本発明は、通常水溶液、またはアルコールを含む溶液として市販されている4級アンモニウム塩化合物を有効成分として含有する殺菌消毒剤組成物を高濃度の固形状とすることにより軽量化を図り、運搬保管を容易とすると共に、大量の殺菌消毒剤使用時の容器の回収問題を解決しようとするものである。
【0008】
しかも、水への溶解性が優れ、残滓が生じることもなく、計量や希釈作業時にべとつきを生じない殺菌消毒剤を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の殺菌消毒剤組成物は、4級アンモニウム塩化合物を有効成分として含有する液状の殺菌消毒剤組成物と、尿素とを混合して固形化したことにある。
【0010】
より詳細には、式R(式中、R,R,RおよびRはそれぞれ炭素数が1〜18の直鎖、または、分岐鎖のアルキル基、(置換)アリール基であり、Xはハロゲンイオンを表わす。)で示される4級アンモニウム塩化合物、もしくはそれらの混合物を有効成分として含有する液状の殺菌消毒剤組成物と、尿素とを混合して固形化したのである。
【0011】
また、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウムの中から選ばれる1種または2種以上の4級アンモニウム塩化合物を有効成分として含有する液状の殺菌消毒剤組成物と、尿素とを混合して固形化したのである。
【0012】
更に、4級アンモニウム塩化合物である、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、または塩化ベンザルコニウム、またはこれらの混合物を有効成分として含有する液状の殺菌消毒剤組成物と、尿素とを混合して固形化したのである。
【0013】
4級アンモニウム塩化合物の含量が5〜60重量%であり、且つ、組成物中の水分含量が5重量%以下としたことにある。
【0014】
更に詳細に説明を加えると、本発明における4級アンモニウム塩化合物とは、式R(式中、R,R,RおよびRはそれぞれ炭素数が1〜18の直鎖、または、分岐鎖のアルキル基、(置換)アリール基であり、Xはハロゲンイオンを表わす。)で示される化合物、もしくはそれらの混合物を意味するものである。
【0015】
好ましくは、R〜Rのうち2つがメチル基であり、Xが塩素イオンである化合物が挙げられ、例えば、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウムの中から選ばれる1種または2種以上である。
【0016】
より好ましくは、本発明の殺菌消毒剤組成物において、4級アンモニウム塩化合物が、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、または塩化ベンザルコニウムであることである。
【0017】
また、本発明における尿素とは、式HNCONHで示される化合物を意味するものであり、尿素は4級アンモニウム塩化合物と結晶性化合物を形成して固形化するのである。
【0018】
更に、本発明における4級アンモニウム塩化合物の含量は5〜60重量%であり、且つ、組成物中の水分含量は5重量%以下であることが好ましい。
【0019】
本発明における殺菌消毒剤組成物は、4級アンモニウム塩化合物の水溶液、またはアルコールを含む溶液と、尿素とを混合機(対流式ミキサーが好ましく、例えばリボン型、ニーダーなどが挙げられる。)により混合したのち、自然乾燥、もしくは、60〜80℃の温度条件下で熱風乾燥することにより製造される。
【0020】
また、混合後、中間乾燥して得られた半乾燥組成物を、造粒機(例えば、湿式高せん断造粒機、押し出し造粒機などが挙げられる。)により顆粒状とし、再度、60〜80℃の温度条件下で熱風乾燥することにより、固形状の殺菌消毒剤組成物を得るのである。
【0021】
更に、固形状の殺菌消毒剤組成物を、必要に応じて機械的に粉砕し、粉末状の殺菌消毒剤組成物を得ることもできる。
【0022】
本発明の殺菌消毒剤組成物は、畜産、医療機関、食品工場などにおける施設や器具、或いは周辺機器の殺菌消毒に用いられるのであって、使用に際しては、水道水などで500〜3000倍に希釈して散布するか、洗浄、もしくは清拭作業に用いられるのである。
【発明の効果】
【0023】
本発明は上記のように、従来水溶液、またはアルコールを含む溶液として市販されている殺菌消毒剤組成物を粉末状、または粉粒状の如く固形化したものであって、従来の液状の殺菌消毒剤組成物に比して大幅な軽量化を図れ、包装容器を小型化することができ、運搬保管を容易とすると共に、大量の殺菌消毒剤を必要とする床、壁などの殺菌消毒に際しても、液状の殺菌消毒剤組成物の場合において不可欠としていた専門業者による容器の回収を不要とするなどの効果を有する。
【0024】
しかも、粉末状、または粉粒状の如く固形化した殺菌消毒剤組成物は、水に対して優れた溶解性を有し、完全に溶解するまでの所要時間が短く、計量作業時や希釈作業時にべとつきの発生や、残滓による配管詰まりなどのおそれをなくし、畜産、医療機関、食品工場などにおける施設や器具、その他の付設物の殺菌消毒に至便に用いられるのである。
【0025】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例中の「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を示している。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0026】
80%塩化ジデシルジメチルアンモニウム溶液460部と、尿素540部とを混合し、70℃で中間乾燥後、造粒機により顆粒状とし、更に、80℃で乾燥して塩化ジデシルジメチルアンモニウムとして40%の顆粒を得た。その顆粒の水分含量は0.2%であった。
【実施例2】
【0027】
80%塩化ジデシルジメチルアンモニウム溶液400部と、尿素600部とを混合し、常温で中間乾燥後、篩器により粉砕し、更に、70℃で乾燥して塩化ジデシルジメチルアンモニウムとして35%の粉末を得た。その粉末の水分含量は0.4%であった。
【実施例3】
【0028】
50%の濃塩化ベンザルコニウム溶液460部と、尿素540部とを混合し、80℃で中間乾燥後、造粒機により顆粒状とし、更に、80℃で乾燥して機械的に粉砕し、塩化ベンザルコニウムとして30%の粉末を得た。その粉末の水分含量は2.5%であった。
【0029】
〔比較例1〕
塩化ジデシルジメチルアンモニウム溶液を可溶性デンプンで粉末化した殺菌消毒剤組成物であり、塩化ジデシルジメチルアンモニウムとして40%の粉末状で、水分含量は12.3%のもの(特許文献1の特許2932361号公報に記載ある組成物)。
【0030】
〔比較例2〕
80%塩化ジデシルジメチルアンモニウム溶液500部と、無水ピロリン酸カリウム580部とを混合し、110℃の温度条件下で乾燥して、塩化ジデシルジメチルアンモニウムとして40%の粉末状の殺菌消毒剤組成物で、水分含量は0.3%のもの(特許文献2の特開平7−89907号公報に記載ある組成物)。
【0031】
実施例1〜3、比較例1〜2の殺菌消毒剤組成物について以下の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0032】
(秤量、希釈などの操作における扱い易さの評価)
○:べとつきが無い
×:べとつきがある
【0033】
(水への溶解性試験)
5℃の水道水500mLに、実施例1〜3、比較例1〜2の殺菌消毒剤組成物1gを静かに加え、一定の速度で撹拌し、溶解するまでの時間を測定した。
【0034】
(水溶液の外観評価)
水への溶解性試験で得られた水溶液の外観を評価した。
○:透明で沈殿物が無い
×:沈殿物(残滓)がある
【0035】
【表1】

【0036】
表1から、本発明の殺菌消毒剤組成物は、べとつきが無いため秤量、希釈などの作業時において取り扱いが容易であり、また、水への溶解性試験においてはいずれも1分未満で溶解することから、希釈性に極めて優れていることが明らかであり、更には、その水溶液には沈殿物(残滓)がなく、配管などを詰まらせるおそれはないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4級アンモニウム塩化合物を有効成分として含有する液状の殺菌消毒剤組成物と、尿素とを混合して固形化してなる殺菌消毒剤組成物。
【請求項2】
式R(式中、R,R,RおよびRはそれぞれ炭素数が1〜18の直鎖、または、分岐鎖のアルキル基、(置換)アリール基であり、Xはハロゲンイオンを表わす。)で示される4級アンモニウム塩化合物、もしくはそれらの混合物を有効成分として含有する液状の殺菌消毒剤組成物と、尿素とを混合して固形化してなる殺菌消毒剤組成物。
【請求項3】
塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウムの中から選ばれる1種または2種以上の4級アンモニウム塩化合物を有効成分として含有する液状の殺菌消毒剤組成物と、尿素とを混合して固形化してなる殺菌消毒剤組成物。
【請求項4】
4級アンモニウム塩化合物である、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、または塩化ベンザルコニウム、またはこれらの混合物を有効成分として含有する液状の殺菌消毒剤組成物と、尿素とを混合して固形化してなる殺菌消毒剤組成物。
【請求項5】
4級アンモニウム塩化合物の含量が5〜60重量%であり、且つ、組成物中の水分含量が5重量%以下である請求項1ないし4に記載の殺菌消毒剤組成物。
【請求項6】
4級アンモニウム塩化合物を有効成分として含有する液状の殺菌消毒剤組成物と、尿素とを混合して固形化する殺菌消毒剤組成物の製造方法。
【請求項7】
式R(式中、R,R,R,およびRはそれぞれ炭素数が1〜18の直鎖、または、分岐鎖のアルキル基、(置換)アリール基であり、Xはハロゲンイオンを表わす。)で示される4級アンモニウム塩化合物、もしくはそれらの混合物を有効成分として含有する液状の殺菌消毒剤組成物と、尿素とを混合して固形化する殺菌消毒剤組成物の製造方法。
【請求項8】
塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウムの中から選ばれる1種または2種以上の4級アンモニウム塩化合物を有効成分として含有する液状の殺菌消毒剤組成物と、尿素とを混合して固形化する殺菌消毒剤組成物の製造方法。
【請求項9】
4級アンモニウム塩化合物である、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、または塩化ベンザルコニウム、またはこれらの混合物を有効成分として含有する液状の殺菌消毒剤組成物と、尿素とを混合して固形化する殺菌消毒剤組成物の製造方法。
【請求項10】
4級アンモニウム塩化合物の含量が5〜60重量%であり、且つ、組成物中の水分含量が5重量%以下である請求項6ないし9に記載の殺菌消毒剤組成物の製造方法。

【公開番号】特開2012−51903(P2012−51903A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220153(P2011−220153)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【分割の表示】特願2004−329776(P2004−329776)の分割
【原出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(591220746)株式会社科学飼料研究所 (11)
【Fターム(参考)】