説明

殺菌消毒剤

【課題】 匂いや皮膚刺激を低減した殺菌消毒剤及び、その殺菌消毒剤を含有するウェットワイパーを提供することを目的とする。
【解決手段】 アルキル基がラウリル基あるいはミリスチル基であるアルキルジメチルベンジルアンモニウムまたはその塩の1種または2種以上を96質量%以上含むことを特徴とする殺菌消毒剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキル基がラウリル基あるいはミリスチル基であるアルキルジメチルベンジルアンモニウムまたはその塩の1種または2種以上を96質量%以上含む殺菌消毒剤及び殺菌消毒剤含有ウェットワイパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、塩化ベンザルコニウムが殺菌消毒、消臭、防黴を目的として医療分野、食品分野、化粧品分野、工業分野等で広く用いられており、高い効果も有しているため、一般的に使用されている。
通常、塩化ベンザルコニウムは第14改正日本薬局方によれば式(1)で示され、RがC17〜C1837で主としてC1225(ラウリル基)及びC1429(ミリスチル基)からなると定義されているが、その割合については特に規定されていない。また、不純物についても規定されていない。
また、ウェットティッシュのような布帛などに色々な含浸液を含浸させたウェットワイパーにも塩化ベンゼルコニウムは製品の防菌防黴の目的のために使用されている。

〔CCHN(CHR〕Cl・・・・・(1)
【0003】
従来、広く一般的に使用されている殺菌消毒剤である塩化ベンザルコニウムは、匂いがする、経口毒性や皮膚刺激が高いという欠点も有している。
また、布帛などに塩化ベンザルコニウムを含浸させたウェットワイパーがボトルやピロー包装、ボックスの中に装填された一般品は、部分的に乾燥されると黄色くなる現象が起きる問題もある(特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特公平6−102604号公報
【特許文献2】特公平7−59482号公報
【特許文献3】特開2000−191403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は匂いや皮膚刺激を低減した殺菌消毒剤及び、その殺菌消毒剤を含有するウェットワイパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の式(2)で表せるアルキル基がラウリル基あるいはミリスチル基であるアルキルジメチルベンジルアンモニウムまたはその塩の1種または2種以上を96質量%以上含む殺菌消毒剤が、その目的に適合しうることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
〔CCHN(CHR〕X・・・・・(2)
(式中、Rはラウリル基あるいはミリスチル基を表し、Xはハロゲンイオンを表す)
【0006】
すなわち、本発明は下記に示す通りである。
1.アルキル基がラウリル基あるいはミリスチル基であるアルキルジメチルベンジルアンモニウムまたはその塩の1種または2種以上を96質量%以上含むことを特徴とする殺菌消毒剤。
2.上記1.記載の殺菌消毒剤を0.0001〜30質量%含むことを特徴とする殺菌消毒剤。
3.さらに、界面活性剤、低級アルコール、殺菌剤およびキレート剤から選ばれる1種または2種以上を含むことを特徴とする1.または2.記載の殺菌消毒剤。
4.上記1.〜3.のいずれかに記載の殺菌消毒剤で対象面を拭き取った直後、アデノシン3リン酸測定器で測定した相対発光量が拭き取る前の相対発光量に比べ50%以下に減少することを特徴とする殺菌消毒剤。
5.上記1.〜4.のいずれかに記載の殺菌消毒剤で対象面を拭き取り、24時間後にアデノシン3リン酸測定器で測定した相対発光量が拭き取る前の相対発光量に比べ50%以下であることを特徴とする殺菌消毒剤。
6.上記1.〜5.のいずれかに記載の殺菌消毒剤を布帛に含浸させてなる殺菌消毒剤含有ウェットワイパー。
7.布帛1質量部に対し1.〜5.のいずれかに記載の殺菌消毒剤を0.5質量部以上含むことを特徴とする殺菌消毒剤含有ウェットワイパー。
8.布帛が親水性繊維を2質量%以上含むことを特徴とする6.〜7.のいずれかに記載の殺菌消毒剤含有ウェットワイパー。
【発明の効果】
【0007】
本発明のアルキル基がラウリル基あるいはミリスチル基であるアルキルジメチルベンジルアンモニウムまたはその塩の1種または2種以上を96質量%以上含む殺菌消毒剤は匂い及び皮膚刺激低減の効果を有する。また、布帛などに本発明のアルキル基がラウリル基あるいはミリスチル基であるアルキルジメチルベンジルアンモニウムまたはその塩を1種または2種以上を96質量%以上含む殺菌消毒剤を含浸させたウェットワイパーがボトルやピロー包装、ボックスの中に装填された一般品は、部分的に乾燥しても黄変するなどの現象が生じない効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明のアルキルジメチルベンジルアンモニウムまたはその塩は特に限定されるものではなくF、Cl、Br、I、Atのハロゲンイオンであれば何でも良い。特にCl、Br、Iが好ましい。
アルキル基がラウリル基あるいはミリスチル基であるアルキルジメチルベンジルアンモニウムまたはその塩の1種または2種以上を96質量%以上含む殺菌消毒剤が0.0001質量%以上であれば十分に殺菌性能が得られ、30質量%以下であれば皮膚刺激を押さえることができる。つまり0.0001〜30質量%含まれていれば、特にその効果は顕著である。更に好ましくは殺菌消毒剤が0.5〜10質量%である。
【0009】
アルキル基がラウリル基あるいはミリスチル基であるアルキルジメチルベンジルアンモニウムまたはその塩の1種または2種以上を96質量%以上含む殺菌消毒剤に更に界面活性剤、低級アルコール、殺菌剤およびキレート剤から選ばれる1種または2種以上を組み合わせて殺菌性能や洗浄機能を向上させたりすることができる。
【0010】
本発明に使用できる界面活性剤としては界面活性能を示すものであれば何でも良い。例えばノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
ノニオン系界面活性剤の具体例としてはレシチン、高分子乳化剤、グリセリン脂肪酸エステル、親油型モノステアリン酸グリセリン等のグリセリン脂肪酸エステル類、モノオレイン酸ポリグリセリル、ペンタオレイン酸ポリグリセリル、デカオレイン酸ポリグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル類、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ等のポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油類、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル等のポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロール類、モノステアリン酸エチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド類、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等を挙げる事ができる。この中でも特に好ましいノニオン系界面活性剤としてレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、親油型モノステアリン酸グリセリン等のグリセリン脂肪酸エステル類、モノオレイン酸ポリグリセリル、ペンタオレイン酸ポリグリセリル、デカオレイン酸ポリグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル類、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等を挙げる事ができる。
【0011】
両性界面活性剤の具体例としてはラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、塩化アルキルジアミノエチルグリシン、ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシエトキシエチル−N−カルボキシエチルエチレンジアミン2ナトリウム等のグリシン型両性界面活性剤、ヤシ油脂肪酸アシル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のラウリルアミノプロピオン酸塩等のアミノプロピオン酸型両性両性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルベタインナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインラウリン酸アミドプロピル酢酸ベタイン等のアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。この中でも特に好ましい両性界面活性剤としてラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、塩化アルキルジアミノエチルグリシン、ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシエトキシエチル−N−カルボキシエチルエチレンジアミン2ナトリウム等のグリシン型両性界面活性剤、ヤシ油脂肪酸アシル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のラウリルアミノプロピオン酸塩等のアミノプロピオン酸型両性両性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルベタインナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインラウリン酸アミドプロピル酢酸ベタイン等のアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤等を挙げる事ができる。
【0012】
カチオン系界面活性剤の具体例としてはステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド等の脂肪族アミン塩、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化ジポリオキシエチレンアルキルメチルアンモニウム等のアルキル4級アンモニウム、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ラウリルピジニウム、塩化アルキルジメチル(エチルベンジル)アンモニウム等の環式4級アンモニウム塩等が挙げられる。この中でも特に好ましいカチオン系界面活性剤として塩化アルキルトリメチルアンモニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化ジポリオキシエチレンアルキルメチルアンモニウム等のアルキル4級アンモニウム、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ラウリルピジニウム、塩化アルキルジメチル(エチルベンジル)アンモニウム等の環式4級アンモニウム塩等を挙げる事ができる。
【0013】
アニオン系界面活性剤としはポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸及びその塩等のアルキルエーテルカルボン酸型アニオン系界面活性剤、N−アシルサルコシン塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシルアルキルタウリン塩等のN−アシル有機酸塩型アニオン系界面活性剤、α―オレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のスルホン酸塩型アニオン系界面活性剤、アルキル硫酸エステル塩等の硫酸塩型アニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等のリン酸塩型アニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類等が挙げられる。この中でも特に好ましいアニオン系界面活性剤はとしてポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸及びその塩等のアルキルエーテルカルボン酸型アニオン系界面活性剤、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシルアルキルタウリン塩等のN−アシル有機酸塩型アニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類等を挙げる事ができる。
これらの界面活性剤は1種単独あるいは2種以上と組み合わせて用いる事ができる。
【0014】
本発明に使用できる低級アルコールとしては、炭素数1〜4の水溶性アルコール類が好ましく、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−メトキシプロパノール、2−メトキシイソプロパノール等のモノオール類やエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3―プロパンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチルー1、2−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,4−ブチンジオール等のジオール類やグリセリン、1,2,4−ブタントリオール、エリスリトール等のポリオールが挙げられる。この中でも特に好ましい低級アルコールとしてエタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン等を挙げる事ができる。
これらの低級アルコールは1種単独あるいは2種以上と組み合わせて用いる事ができる。
【0015】
本発明に使用できる防腐剤としては安息香酸、安息香酸ナトリウム、ウンデレン酸、サリチル酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル類及びその塩等の有機酸及びその誘導体、イソプロピルメチルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン、クレゾール、クロロチモール、クロロフェネシン、クロロクレゾール、ジクロロキシレノール、ジクロロベンジルアルコール、チオビスクロロフェノール、チモール、トリクロロカルバニリド、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル、ナトリウムフェノキシド、パラクロロフェノール、ハロカルバン、フェニルエチルアルコール、フェニルフェノール、フェニルフェノールナトリウム、、フェノキシエタノール、フェノール、フェキサクロロフェン、ベンジルアルコール等のフェノール類、塩化ステアリルジメチルベンジルアルコール、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルピリジニウム、塩化ラウロイルコラミノホルミルメチルピリジニウム、臭化アルキルイソキノリニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ドミフェン、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン等の4級アンモニウム塩、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等の両性界面活性剤、プラトニン、ピオニン、ルミネキス、感光素NK143等の感光素、茶エキス、ヒノキキチオール、リンゴエキス、ポリリジン等の抗菌活性を持つ植物抽出液、その他グルタラール、クロラミンT、クロルヘキシジン、ジイセチオン酸ジプロモプロパミジン、ジンクピリチオン、トリクロサン、ピリチオンNa、フルフラール、クロラミンT等が挙げられる。この中でも特に好ましい防腐剤として安息香酸及びその塩、サリチル酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル類、塩化セチルピリジウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、茶エキス、ヒノキキチオール、リンゴエキス、ポリリジン、トリクロサン等を挙げる事ができる。
これら防腐剤は1種単独あるいは2種以上と組み合わせて用いる事ができる。
【0016】
本発明に使用できるキレート剤は、金属捕獲作用があれば何でも良いが、コンプレキサン、アラニン、エチレンジアミンヒドロキシエチル3酢酸3ナトリウム、エデト酸、エデト酸2ナトリウム、エデト酸2ナトリウムカルシウム、エデト酸3ナトリウム、エデト酸4ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、フィチン酸、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等が好ましい。この中でも特に好ましいキレート剤として、アラニン、エデト酸2ナトリウム、エデト酸2ナトリウムカルシウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等を挙げる事ができる。これら防腐剤は1種単独あるいは2種以上と組み合わせて用いる事ができる。
【0017】
また、その他の成分として着色剤や香料、安定剤等を本発明の殺菌消毒剤に添加しても差し支えない。
本発明の殺菌消毒剤は固体表面に付着している汚れを除去する性能を有している。アデノシン3リン酸測定器(以下ATP測定器と略す)は動物(食肉等)、植物(野菜等)、微生物(細菌)などには必ずアデノシン3リン酸(以下ATPと略す)が含まれており、このATPを測定することにより固体表面に残された汚れ(食肉、野菜、微生物)を定量的に測定できる装置である。また、このATPを抽出して蛍の酵素を含んだ発光試薬を添加するとATPの量に応じて光の強さが変化し、その強さを数値化したものが相対発光量(RLU:Relative Light Unit)である。そこで、その洗浄効果をATP測定器(BIOTRACE社製:UNI―LITE NG)を用いて測定を行った。本発明の殺菌消毒剤を対象物に接触させ拭き取った後、その値を測定すると拭き取る前の値に比べると相対発光量(RLU)が50%以下であり、24時間後にもう一度測定しても相対発光量は同様に50%以下と効果を持続することができる。
【0018】
次に、本発明の殺菌消毒剤を布帛等に含浸させる事で殺菌消毒剤含有ウェットワイパーとすることができる。殺菌消毒剤含有ウェットワイパーに用いることができる布帛としては特に限定されるものでないが例えば、脱脂綿、紙、コットン、麻、パルプ、絹、リネン等の天然繊維、コットンリンター、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、溶剤紡糸レーヨン等の再生繊維、ナイロン(ポリアミド系繊維)、ポリエステル(ポリエステル系繊維)、アクリル(ポリアクリロニトリル系繊維)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリプロピレン(ポリプロピレン系繊維)、ビニリデン(ポリ塩化ビニリデン系繊維)、ポリウレタン(ポリウレタン系繊維)、ポリエチレン等の合成繊維を単独または混合物として使用できる。これらの中でも特に公定水分率が1%以上の親水性繊維を2%以上含む布帛が望ましく、それを用いることで本発明の殺菌消毒剤を布帛に充分に含浸させることができ、その効果が十分に得られる。
【0019】
これらの繊維を用いた布帛の形態は、紙、不織布、布などとすることができ、またその製造方法としては、公知の紙、不織布、布の製造方法であれば特に限定されないが、不織布は簡便性やコスト等を考慮すればとくに好ましい。
繊維シートの目付量は薄すぎても厚すぎても使用しにくいため10〜120g/m2 で使用することが好ましく、更には15〜80g/m2で使用することが好ましい。
【0020】
本発明の殺菌消毒剤含有ウェットワイパーは上記記載の殺菌消毒剤を上記記載の布帛に含浸したものであるが、ウェットワイパー中のこれらワイパー用組成液の総量が布帛質量1部に対して0.5部以上であれば殺菌効果が発揮され、拭き残りも少なく更には1〜5部含浸させることが好ましい。
本発明の殺菌消毒剤含有ウェットワイパーは各種表面の清浄、殺菌、抗菌等、例えば食品工場のベルトコンベヤや作業台、ステンレスバッドやボウル等の作業用具、冷蔵庫や料理を作るときに使用する道具、玩具、便座、窓ガラス、車両の窓ガラス、洗面台、人体の清浄、殺菌消毒等に好適に用いられる。
【実施例】
【0021】
下記に本発明の実施例を詳細に説明する。
実施例、比較例で使用する原料名(略称)、布帛名称は下記の通りである。
ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(ラウリル基の純度99質量%以上):以下、C12と略称する。
ミリスチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(ミリスチル基の純度96質量%以上):以下、C14と略称する。
ミリスチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(ミリスチル基の純度80質量%以上):以下、C14−1と略称する。
ショ糖ラウリン酸エステル(商品名:コスメライクL−160A 第一工業製薬社製 ショ糖ラウリン酸エステル40質量%):以下、L−160Aと略称する。
【0022】
塩化ベンザルコニウム(50質量%水溶液):以下、CAと略称する。
消毒用アルコール(商品名:日本薬局方 消毒用アルコール 和光純薬工業社製 76.9〜81.4v/v%):以下、70%ETOHと略称する。
レーヨン/PP、PE複合繊維(商品名:AS40(スパンレース) 大和紡績社製 公定水分率:80%親水性繊維が80%):以下、AS40と略称する。
アクリル繊維(商品名:シャレリア 旭化成せんい社製 公定水分率2% 親水性繊維が2%):以下、シャレリアと略称する。
PP不織布(商品名:シンテックスM 東レ・ファイン社製 公定水分率0% 親水性繊維が0%):以下、シンテックスMと略称する。
【0023】
実施例、比較例中で行う性能評価試験方法は下記の通りである。
殺菌効果の評価:殺菌消毒剤10mlを滅菌試験管に分注し、各種(黄色ブドウ球菌、緑膿菌、大腸菌:初期菌数は10〜10cfu/ml)菌液を各0.1ml接種し20℃15秒間作用させた後、SCDLP寒天培地に各試験管から0.1mlを塗抹し、35℃48時間培養後、菌数を測定し判定する。評価基準は以下の通りである。
○:10cfu/ml以下
△:11〜10未満cfu/ml
×:10cfu/ml以上
【0024】
皮膚刺激(A)性評価:殺菌消毒剤を適量、手にとって良く擦り合わせ後に皮膚の感じ方を官能評価にて判定する。評価基準は以下の通りである。
○:手に若干刺激を感じる
△:手に刺激を感じる
×:手にヒリヒリする刺激を感じる
【0025】
皮膚刺激(B)性評価:日本白色種ウサギ雄の背部を除毛した健常皮膚部に殺菌消毒剤含有ワイパーを2.5cm×2.5cmに裁断したものを直接貼付し、24時間閉塞貼付を行い、3,24、48時間後にそれぞれ刺激反応の観察を行いDraize法の判定基準に従って判定する。評価基準は以下の通りである。
一次刺激率が、
○:1.00以下
△:1.01〜3.00
×:3.01以上
【0026】
匂いの評価:直接、殺菌消毒剤あるいは殺菌消毒剤含有ワイパーの匂いを嗅いで官能評価にて判定する。評価基準は以下の通りである。
○:不快臭がしない
△:僅かに不快臭がする
×:不快臭が強くする
【0027】
黄変性評価:幅160mm×長さ200mmのAS40不織布150枚をロール状にした不織布ロール1部に対し2部の殺菌消毒剤を上方から含浸したウェットワイパーをボトルにプリセットした後、蓋をしないで1ケ月間、室温で開放した状態を観察し判定する。評価基準は以下の通りである。
○:変化なし
△:やや黄変している
×:黄変している
【0028】
ATP測定:10×13cmのステンレスバッドに食肉を付着させATP測定器(BIOTRACE社製:商品名、UNI―LITE NG)にて相対発光量(RLU:Relative Light Unit)を測定する(初期値)。その後直ちに殺菌消毒剤含有ワイパーで食肉が付着している箇所を縦5回、横5回を均等な力で拭き取り、相対発光量を測定する(直後値)。更にその状態で24時間放置し拭き取った箇所を先と同様に縦5回、横5回を均等な力で拭き取り、相対発光量を測定する(24H値)評価基準は下記の通りである。(直後値/初期値×100)%あるいは(24H値/初期値×100)%の値が
○:50%以下
△:51%〜100%
×:101%以上
【0029】
含浸状態の評価:160mm×200mmをロール状にした150枚のAS40不織布に殺菌消毒剤を上方から含浸させた後、不織布に含浸されている状態を官能評価にて判定する。評価基準は以下の通りである。
○:全体に含浸されている
△:部分的にしか含浸されていない
×:ほとんど含浸されていない
【0030】
[実施例1]
C12:1.0質量%を精製水:99.0質量%に溶解して殺菌消毒剤を作製した。
【0031】
[比較例1]
CA:2.0質量%を精製水:98.0質量%に溶解して殺菌消毒剤を作製した。
【0032】
[実施例7]
C14:0.1質量%を精製水:99.9質量%に溶解して殺菌消毒剤を作製した。
【0033】
[比較例3]
C14−1:0.1質量%を精製水:99.9質量%に溶解して殺菌消毒剤を作製した。
【0034】
[実施例2]
C14:3.0質量%及びL−160A:2.5質量%を混合した後、精製水:94.5質量%に溶解して作製した殺菌消毒剤をAS40:1部に対し2部を含浸させたウェットワイパーを作製した。
【0035】
[比較例2]
CA:6.0質量%及びL−160A:2.5質量%を混合した後、精製水:91.5質量%に溶解して作製した殺菌消毒剤をAS40:1部に対し2部を含浸させたウェットワイパーを作製した。
【0036】
[実施例3]
C12:3.0質量%を精製水:97.0質量%に溶解して作製した殺菌消毒剤をAS40:1部に対し2部を含浸させたウェットワイパーを作製した。
【0037】
[比較例4]
C14−1:10.0質量%を精製水:90.0質量%に溶解して作製した殺菌消毒剤をシャレリア:1部に対し3部を含浸させたウェットワイパーを作製した。
【0038】
[実施例4]
C12:3.0質量%を精製水:97.0質量%に溶解して作製した殺菌消毒剤をAS40:1部に対し0.3部を含浸させたウェットワイパーを作製した。
【0039】
[実施例5]
C14:10.0質量%を精製水:90.0質量%に溶解して作製した殺菌消毒剤をシャレリア:1部に対し3部を含浸させたウェットワイパーを作製した。
【0040】
[実施例6]
C14:10.0質量%を精製水:90.0質量%に溶解して作製した殺菌消毒剤をシンテックスM:1部に対し3部を含浸させたウェットワイパーを作製した。
【0041】
[比較例5]
70%ETOH:10.0質量%を精製水:90.0質量%に溶解して作製した殺菌消毒剤をシャレリア:1部に対し3部を含浸させたウェットワイパーを作製した。
実施例、比較例の評価結果を表1、表2に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、殺菌消毒効果を求められる食品を扱う場所や病院等の殺菌消毒剤として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル基がラウリル基あるいはミリスチル基であるアルキルジメチルベンジルアンモニウムまたはその塩の1種または2種以上を96質量%以上含むことを特徴とする殺菌消毒剤。
【請求項2】
請求項1記載の殺菌消毒剤を0.0001〜30質量%含むことを特徴とする殺菌消毒剤。
【請求項3】
さらに、界面活性剤、低級アルコール、殺菌剤およびキレート剤から選ばれる1種または2種類以上を含むことを特徴とする請求項1または2記載の殺菌消毒剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の殺菌消毒剤で対象面を拭き取った直後、アデノシン3リン酸測定器で測定した相対発光量が拭き取る前の相対発光量に比べ50%以下に減少することを特徴とする殺菌消毒剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の殺菌消毒剤で対象面を拭き取り、24時間後にアデノシン3リン酸測定器で測定した相対発光量が拭き取る前の相対発光量に比べ50%以下であることを特徴とする殺菌消毒剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の殺菌消毒剤を布帛に含浸させてなる殺菌消毒剤含有ウェットワイパー。
【請求項7】
布帛1質量部に対し請求項1〜5のいずれかに記載の殺菌消毒剤を0.5質量部以上含むことを特徴とする殺菌消毒剤含有ウェットワイパー。
【請求項8】
布帛が親水性繊維を2質量%以上含むことを特徴とする請求項6または7記載の殺菌消毒剤含有ウェットワイパー。

【公開番号】特開2006−69919(P2006−69919A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252227(P2004−252227)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】