説明

殺菌装置および容器の殺菌方法

【課題】容器全体を確実に殺菌することのできる殺菌装置および容器の殺菌方法を提供することを目的とする。
【解決手段】殺菌装置の上流側から送り込まれてきたボトル100を、一方のチェーン31のボトルホルダ54において口部100aで保持し、ボトル100の底部100b側に電子線の照射を受ける。この後、一方のチェーン31から他方のチェーン32へとボトル100を受け渡し、底部100bを他方のチェーン32のボトルホルダ54Bで保持した状態で、ボトル100の口部100a側に電子線の照射を受けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品・飲料・医薬品等を充填する容器の殺菌装置および容器の殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品・飲料・医薬品等の充填物を容器に充填する充填工程においては、容器に充填物を充填するに先立ち、容器の殺菌が行われる。
【0003】
容器の殺菌には、過酢酸・過酸化水素や紫外線照射が多く用いられているが、近年、紫外線よりも殺菌力に勝る電子線照射による殺菌技術が注目され、鋭意開発が行われている。
電子線照射を用いる場合、量産工程においては、容器を略一定間隔の整列状態で搬送して電子線の照射領域内を通過させつつ、電子線を照射する。
このとき、容器に対して電子線を均一に照射するのが好ましい。このため、容器を回転させながら、電子線を容器に対して斜めから照射する手法(例えば、特許文献1参照。)や、容器側面から電子線を照射しつつ、容器を少なくとも一定角度回転させる手法(例えば、特許文献2参照。)等が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−211520号公報
【特許文献2】特開平11−19190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、容器がペットボトル等、キャップを装着する構成のものである場合、容器の胴部に比較し容器の口部は肉厚が大きく形状も複雑であり、この部分の十分な殺菌は難しい。また、容器の底部も、胴部に比較して肉厚が大きく形状も複雑であり、同様に、十分な殺菌を行うのが難しい。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、容器全体を確実に殺菌することのできる殺菌装置および容器の殺菌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもとになされた本発明の殺菌装置は、電子線を照射することで容器を殺菌する殺菌装置であって、電子線を容器に照射する電子線照射部と、電子線照射部からの電子線の照射領域内を容器が通過するよう、容器を搬送する容器搬送部と、を備える。そして、容器搬送部は、殺菌すべき容器の一端側を保持し、この容器を電子線照射部における電子線の照射領域内を通過させる第一の搬送部材と、容器の他端側を保持し、この容器を電子線照射部における電子線の照射領域内を通過させる第二の搬送部材と、容器を第一の搬送部材から第二の搬送部材に受け渡す受け渡し機構と、を備えることを特徴とする。
このような殺菌装置においては、殺菌すべき容器の一端側を第一の搬送部材で保持した状態で、この容器を電子線照射部における電子線の照射領域内を通過させる。これにより、照射された電子線によって、容器の他端側が主に殺菌される。この殺菌後、受け渡し機構により、容器を第一の搬送部材から第二の搬送部材に受け渡す。そして、第二の搬送部材で容器の他端側を保持し、この容器を電子線照射部における電子線の照射領域内を通過させる。すると、容器の一端側が主に殺菌される。これによって、容器の一端側と他端側、つまり、例えば容器がペットボトルである場合には、容器の肉厚が大きくまた複雑な形状を有している口部や底部を十分に殺菌することが可能となる。
【0007】
ここで、第一の搬送部材と第二の搬送部材は、上記したようにして容器の殺菌を行えるのであればいかなる構成としても良い。例えば、第一の搬送部材と第二の搬送部材を、電子線照射部から照射される電子線の照射領域の中心部を挟んで対向するように配置し、それぞれ、第一の搬送部材と第二の搬送部材の間において容器を保持するようにしても良い。一般に、電子線は、その照射領域の中心部が最も強い強度分布となる。したがって、上記のような構成とすることで、第一の搬送部材で容器を保持した状態では、容器の他端側が電子線の照射領域の中心寄りに位置するため、ここに、より強い電子線が照射される。また、第二の搬送部材で容器を保持した状態では、容器の一端側が電子線の照射領域の中心寄りに位置するため、ここに、より強い電子線が照射される。
【0008】
第一の搬送部材、第二の搬送部材は、それぞれ、循環駆動される無端軌道を有し、無端軌道に沿って複数が等間隔に配置されて、容器の一端側または他端側を保持する保持具を有するものによって構成することができる。
この場合、無端軌道は、ベルトコンベアや、チェーン等によって構成することができる。また、レールに沿ってボトルの保持具を走行させるような構成とすることもできる。この場合も、レールを無端状にループさせることで、無端軌道を構成することができる。
無端軌道をチェーンとする場合、保持具は、チェーンを構成する複数のリンクプレートを連結するジョイントピンに一体に設けるのが好ましい。保持具が設けられたジョイントピンは、チェーンの循環駆動によりリンクプレートと一体的に移動するので、保持具に保持される容器は、実質的にチェーンの駆動によって搬送される。
【0009】
ところで、無端軌道に沿って、少なくとも電子線照射部からの電子線の照射領域にわたって延びるガイド部材を設け、ジョイントピンには、ガイド部材に当接または噛み合うことで回転し、保持具およびジョイントピンを回転させる回転部材を備えるのが好ましい。このように、ガイド部材に回転部材が当接または噛み合うと、回転部材は回転する。この回転部材の回転により保持具およびジョイントピンが回転するので、保持具に保持される容器も回転する。これにより、少なくとも電子線の照射領域において、容器は回転しながら電子線の照射を受ける。
【0010】
第一の搬送部材と第二の搬送部材は、いかなる位置関係で設けてもよい。例えば、第一の搬送部材の無端軌道の上側ラインと第二の搬送部材の無端軌道の下側ラインとを並ぶように段違いに設けた場合、第一の搬送部材の無端軌道の上側ラインで電子線照射部における容器への電子線照射を行った後、第一の搬送部材から第二の搬送部材の無端軌道の下側ラインへの容器の受け渡しを受け渡し機構によって行い、第二の搬送部材の無端軌道の上側ラインで電子線照射部における容器への電子線照射を行うことができる。
また、第一の搬送部材と第二の搬送部材は、第一の搬送部材の無端軌道と第二の搬送部材の無端軌道とが対向するように設けてもよい。その場合、第一の搬送部材における電子線照射部による容器への電子線照射と、第二の搬送部材における電子線照射部による容器への電子線照射は、第一の搬送部材の無端軌道と第二の搬送部材の無端軌道の同じ側のラインで行うのが好ましい。
【0011】
ところで、電子線の照射により、第一の搬送部材、第二の搬送部材等は加熱され、温度が上昇する。そこで、第一の搬送部材、第二の搬送部材を冷却する冷却部をさらに備えるのが好ましい。
【0012】
本発明は、電子線を照射することで容器を殺菌する方法であって、殺菌すべき容器の一端側を保持した状態で、この容器に電子線を照射する第一の照射工程と、第一の照射工程に続き、容器の他端側を保持した状態で、この容器に電子線を照射する第二の照射工程と、を含むことを特徴とする容器の殺菌方法とすることもできる。
このとき、第一の照射工程、第二の照射工程における容器の保持手段はいかなるものであっても良い。
第一の照射工程では、容器の一端側を第一の保持具で保持した状態で、第一の保持具を電子線の照射領域内で移動させることで容器に電子線を照射し、第二の照射工程では、容器の他端側を第二の保持具で保持した状態で、第二の保持具を電子線の照射領域内で移動させることで容器に電子線を照射するようにしても良い。この場合、第一の照射工程の後に第二の照射工程に移行する先立ち、容器を第一の保持具から第二の保持具に受け渡す受け渡し工程をさらに含むのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、容器の一端側を保持した状態で容器に電子線を照射した後、容器の他端側を保持した状態で容器に電子線を照射するようにしたので、十分な殺菌が困難な容器の口部および底部を中心に強い電子線を照射することができ、容器全体を確実に殺菌することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面に示す実施形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
〔第一の実施形態〕
図1は、本実施形態におけるボトル用の殺菌装置10Aの概略構成を説明するための図である。
この図1に示す殺菌装置10Aは、ボトル(容器)100に飲料を充填する充填装置の前段側に設けられるものである。この殺菌装置10Aは、電子線を照射して殺菌を行う電子線照射装置20と、ボトル100を搬送するボトル搬送部(容器搬送部)30Aと、これらボトル搬送部30Aおよび電子線照射装置20を覆う遮蔽壁40と、を備えて構成されている。
【0015】
本実施形態の電子線照射装置20は、電子線発生源21と、ホーン22と、コントローラ(図示無し)とを備える。
電子線発生源21としては、いわゆる電子銃を用いることができる。この電子線発生源21では、ビーム状の電子線を発生し、これを、ボトル搬送部30Aによって搬送されるボトル100に照射する。このとき、電子線照射装置20には、図示しないスキャン用磁石が備えられている。スキャン用磁石は、それぞれ、印加される電流に応じて発生する磁界が変化するものであり、コントローラの制御により発生する磁界を変化させることで、電子線発生源21で発生した電子線を所定の方向にスキャンさせるようになっている。ここで、電子線はボトル100の搬送方向に対してほぼ直角方向にスキャンするのが望ましい。
【0016】
ホーン22は、電子線発生源21から離れるに従い、その断面寸法が拡大する筒状で、スキャン用磁石によって電子線のスキャンを行っているときの、電子線の照射領域を取り囲むように設けられる。
【0017】
ボトル搬送部30Aは、電子線照射装置20の下方を横切るように設けられ、所定の方向にボトル100を搬送しながら、このボトル100に電子線照射装置20からの電子線が照射されるようにするものである。
【0018】
遮蔽壁40は、これら電子線照射装置20、ボトル搬送部30Aを囲うように形成されている。この遮蔽壁40は、コンクリート、鉄、鉛、あるいはこれらの材料の組み合わせ等から形成され、電子線の発生に使用される電子銃における加速エネルギに応じて決まる厚さとされ、電子線、および電子線の照射によって生じるX線に対する所要の遮蔽性能を発揮する。この遮蔽壁40には、殺菌すべきボトル100を遮蔽壁40内に入れるための供給口41と、殺菌後のボトル100を遮蔽壁40外に排出するための排出口42とが形成されている。これら供給口41、排出口42には、電子線および電子線の照射によって生じるX線が外部に漏洩するのを防ぐため、ラビリンス構造、開閉可能なシャッター、回転式の扉等を適宜設けるのが好ましい。
【0019】
図2に示すように、ボトル搬送部30Aは二組のチェーン31、32を有している。チェーン31、32は、無端状で、図示しないモータ等の駆動機構によって循環駆動されるようになっている。これらチェーン31、32は、スプロケット33、34により、Uターンするような軌道とされ、一方のチェーン31の上側ライン31Uと、他方のチェーン32の下側ライン32Lとが、ほぼ同じ高さで平行に位置するようになっている。
【0020】
図3に示すように、チェーン31、32は、通常のチェーンと同様、対向配置された二枚一対のリンクプレート50が、ジョイントピン51によって複数組連結された構成であり、ジョイントピン51はローラ52に挿通されて、このローラ52が図2に示したスプロケット33、34に噛み合うようになっている。本実施形態において、ジョイントピン51は、一本おきに、二枚一対のリンクプレート50の両側に突出するよう設けられている。ジョイントピン51の一方の端部には、ピニオンギヤ(回転部材)53が一体に設けられ、他方の端部にはボトルホルダ(保持具)54が設けられている。
【0021】
図1に示したように、一方のチェーン(第一の搬送部材、無端軌道)31の上側ライン31Uと、他方のチェーン(第二の搬送部材、無端軌道)32の下側ライン32Lには、ピニオンギヤ53と噛み合うラックギヤ(ガイド部材)55が、上側ライン31U、下側ライン32Lに沿うように、少なくとも、電子線照射装置20における電子線の照射領域にわたって設けられている。これにより、チェーン31、32が循環駆動されたときに、ラックギヤ55が設けられている部分においてピニオンギヤ53がラックギヤ55に噛み合い、これによってピニオンギヤ53が回転するようになっている。
このピニオンギヤ53には、ジョイントピン51を介してボトルホルダ54が連結されているため、ピニオンギヤ53に連動してボトルホルダ54が回転する。
【0022】
ボトルホルダ54には、ボトル100の口部(一端側)100aを保持するボトルホルダ54A、ボトル100の底部(他端側)100bするボトルホルダ54Bがある。図4に示すように、ボトルホルダ54A、54Bは、それぞれ3個以上の爪部54aを有し、これら爪部54aは図示しないスプリング等のバネ部材、あるいは爪部54a自身の弾性により、ボトル100の口部100aまたは底部100bが挿入されたときに、このボトル100を保持する。このとき、ボトルホルダ54A、54Bに対し、ボトル100を挿抜する動作を円滑に行うため、爪部54aの内周側先端部はテーパ状に面取りするのが好ましい。また、爪部54aは、保持したボトル100が落下しないよう、ボトル100の挿入深さや、図示しないスプリングや爪部54a自身の弾性を適宜設定するのが好ましい。
また、ボトルホルダ54Aでは、図5(a)、(b)に示すように、ボトル100の口部100aだけではなく、胴部100cを保持するようにしても良い。口部100aよりも太い胴部100cでボトル100を保持することで、ボトル100を安定して保持できるからである。
さらに、ボトルホルダ54Aの爪部54aには、図6に示すように、開口部54bを形成するようにしても良い。これにより、開口部54bを通してボトル100の口部100aに電子線を照射することができ、爪部54aによって電子線が遮られるのを抑えることができる。
【0023】
さて、図2に示したように、これらチェーン31、32は、ボトルホルダ54A、54Bでボトル100を保持した状態で、ボトル100がチェーン31、32間に位置するようになっている。
そして、殺菌装置10Aの上流側から送り込まれてきた電子線を照射すべきボトル100は、一方のチェーン31の上側ライン31Uにおいて第一の保持具としてのボトルホルダ54Aに装着され、口部100a側が保持される。ボトル100は、チェーン31によってその循環駆動方向に搬送されていき、上側ライン31Uにおいて、ボトル100の底部100b側に、電子線照射装置20の電子線照射領域A内において電子線の照射を受ける。この後、一方のチェーン31から他方のチェーン32へとボトル100は受け渡され、その底部100bが他方のチェーン32の第二の保持具としてのボトルホルダ54Bによって保持される。そして、ボトル100は、底部100b側がボトルホルダ54Bで保持された状態で、他方のチェーン32の上側ライン32Uに移動していき、上側ライン32Uにおいてボトル100の口部100a側に、電子線照射領域A内において電子線照射装置20による電子線の照射を受ける。しかる後、電子線が照射されたボトル100は、他方のチェーン32の上側ライン32Uにおいてボトルホルダ54Bから引き抜かれ、後工程へと搬送されていく。
なお、上記一連の動作は、チェーン31、32が一定の速度で循環駆動されている間に連続的に行われる。
【0024】
上記のような流れを行うため、殺菌装置10Aには、電子線を照射すべきボトル100を、一方のチェーン31のボトルホルダ54Aに対し差し込むための機構、一方のチェーン31から他方のチェーン32にボトル100を受け渡すための機構、他方のチェーン32のボトルホルダ54Bから電子線照射後のボトル100を引き抜き、殺菌装置10Aの下流側に送り出す搬出機構に受け渡すための機構が必要である。
これらの機構としては、ボトルホルダ54A、54Bに対しボトル100を抜き差しできる機構であればいかなるものを採用しても良い。例えば、開閉可能なチャックやクランパによりボトル100の胴部100c等を挟み込み、これをボトル100の軸線方向に移動させてボトルホルダ54A、54Bに対しボトル100を抜き差しする機構等がある。これ以外にも、所要の機能を果たすことができるのであれば、いかなる構成のものを用いても良い。
【0025】
図7は、一方のチェーン31から他方のチェーン32へとボトル100を受け渡すボトル受け渡し機構60の一例である。ボトル受け渡し機構60は、一方のチェーン31と他方のチェーン32との間でスライド可能に設けられたホルダ61を備えている。このホルダ61は、ボトル100の胴部100cを保持する略U字状の受け具61aと、ボトル100の口部100aを保持する口部保持具61bとを有している。このホルダ61を、一方のチェーン31のボトルホルダ54Aに保持されたボトル100に下方から接近させ、受け具61aでボトル100の胴部100cを保持するとともに、口部保持具61bをボトル100の口部100aに係合させた後、他方のチェーン32側にスライドさせると、ボトル100は、一方のチェーン31のボトルホルダ54Aから引き抜かれる。そして、ホルダ61をさらに他方のチェーン32側にスライドさせ、ボトルの底部100bを、他方のチェーン32のボトルホルダ54Bに挿入した後、ホルダ61をボトル100の下方側へ離間させることで、ボトル100の一方のチェーン31から他方のチェーン32への受け渡しが完了する。
【0026】
このようなホルダ61の動作は、チェーン31、32の駆動速度に同期・連動して行うのが好ましい。つまり、循環駆動されるチェーン31、32により一定の速度でボトル100が搬送された状態のまま、ボトル受け渡し機構60によりボトル100の受け渡しを行うのである。このため、ボトル受け渡し機構60も、循環駆動されるチェーン63、64を備え、このチェーン63、64間に設けられたプレート65に沿ってホルダ61をスライド自在に設ける。そして、ボトル100の受け渡しを行う部分にカム66を設け、ホルダ61にはカムフォロワ61cを形成する。チェーン63、64の循環駆動によってプレート65が、ボトル100と等速度で移動し、ホルダ61のカムフォロワ61cがカム66に当たると、カム66に沿ってホルダ61を一方のチェーン31側から他方のチェーン32側へ移動させることができる。
また、ホルダ61のボトル100に対する下方からの接近・離間動作は、図8に示すように、チェーン31、32の両端部のスプロケット(図示無し)の部分においてホルダ61は上下方向に移動するため、これを利用しても良いし、また、別途スプロケットやガイド等により、ホルダ61を上下方向に変位させるようにしても良い。
【0027】
さて、殺菌装置10Aにおいては、上記したように、一方のチェーン31のボトルホルダ54Aでボトル100の口部100a側を保持した状態で、上側ライン31Uでボトル100の底部100b側に電子線照射装置20により電子線を照射し、他方のチェーン32のボトルホルダ54Bでボトル100の底部100b側を保持した状態で、その上側ライン32Uにおいてボトル100の口部100a側に、電子線照射装置20により電子線を照射する。このため、電子線照射装置20の電子線照射領域A内において、電子線の照射中心ラインの一方の側にチェーン31が位置し、照射中心ラインを挟んだ他方の側にチェーン32が位置し、それぞれ電子線が照射されるようになっている。このとき、図9に示すように、一方のチェーン31の上側ライン31Uと、他方のチェーン32の上側ライン32Uは上下に段違いに配置されているため、電子線照射装置20においては、一方のチェーン31の上側ライン31Uと、他方のチェーン32の上側ライン32Uを結ぶ線に対しほぼ直交する方向、つまり斜め方向から電子線を照射するのが好ましい。
電子線は、電子線のスキャン方向においてその中心部分で強度が最も強くなるような放物線状の分布となる。このため、一方のチェーン31のボトルホルダ54Aでボトル100を保持しているときには、ボトル100の底部100bに最も強い電子線が照射され、ボトル100の胴部100cにはそれより弱い電子線が照射される。他方のチェーン32のボトルホルダ54Bでボトル100を保持しているときには、ボトル100の口部100aに最も強い電子線が照射され、ボトル100の胴部100cにはそれより弱い電子線が照射される。これにより、一本のボトル100には、口部100aと底部100bに強い電子線が照射され、胴部100cにはそれより弱い電子線が2回照射されることになる。これによりボトル100の長さ方向においても、電子線をほぼ均一に照射することができるようになっている。
【0028】
このとき、電子線照射装置20の電子線照射領域A内においてチェーン31、32によって搬送されるボトル100の下方には、電子線を反射する反射部材25を備えている。反射部材25は、反射した電子線を、一方のチェーン31のボトルホルダ54Aに保持されたボトル100の底部100b、他方のチェーン32のボトルホルダ54Bに保持されたボトル100の口部100aに照射するように形成されている。
これにより、電子線は、ボトル100の口部100a、胴部100cおよび底部100bの外面には、直接照射、反射部材25による反射照射がなされ、ボトル100の胴部100cおよび底部100bの内面には、透過照射がなされ、ボトル100の口部100aの内面には、反射部材25による反射照射、それにボトル100自体を透過しての透過照射がなされる。さらに、本実施形態においては、電子線は斜めから照射されるため、ボトル100の口部100aの内面には、電子線照射装置20からの直接照射もなされる。
このようにしてボトル100の口部100aには、強い電子線を照射するだけでなく、胴部100cや底部100bに比較してより多くの電子線を照射できるようになっている。
【0029】
さらに、一方のチェーン31、他方のチェーン32の双方において、ボトルホルダ54A、54Bは、電子線照射領域A内においてピニオンギヤ53とラックギヤ55の噛み合いにより回転するため、ボトルホルダ54A、54Bに保持されたボトル100は回転しながら移動することになり、ボトル100の周方向の全周にわたって均一に電子線を照射できる。
このようにして、ボトル100に対し、より均一に電子線を照射することが可能となり、特に形状が複雑であったり肉厚が大きかったりするボトル100の口部100a、底部100bに対し、電子線を十分に照射することが可能となり、殺菌効果を高めることができる。
【0030】
ところで、電子線照射装置20において電子線を照射すると、この電子線はボトル100のみならずボトルホルダ54A、54Bやチェーン31、32にも照射される。これによりボトルホルダ54A、54B、チェーン31、32は加熱されるため、図2に示したように、これらを冷却する冷却部70を備えるのが好ましい。冷却部70は、いかなる構成であっても良いが、例えば、チェーン31、32の軌道を囲むようにトンネル状に形成し、その内側を通過するチェーン31、32、ボトルホルダ54A、54Bに対し、冷風を吹き付けるような構成とすることができる。
これにより、循環駆動されることで何度も繰り返し電子線が照射されるチェーン31、32、ボトルホルダ54A、54B等が加熱されるのを抑えることができる。
【0031】
上記実施形態において、電子線照射装置20においてはボトル100の斜め上方から電子線を照射する構成としたが、これに限るものではなく、ボトル100の上方や下方、斜め下方から電子線を照射するようにしても良い。
また、ボトルホルダ54A、54Bを回転させるための機構として、ピニオンギヤ53とラックギヤ55を用いたが、これに代えて、図10に示すように、ローラ(回転部材)57と、ガイドバー(ガイド部材)58を用いるようにしても良い。ローラ57がガイドバー58に当たったときに、双方の間に生じる摩擦力により回転することで、ボトルホルダ54A、54Bを回転させることができる。
【0032】
〔第二の実施形態〕
図11は、本実施形態におけるボトル用の殺菌装置10Bの概略構成を説明するための図である。
この図に示す殺菌装置10Bは、上記第一の実施形態で示した殺菌装置10Aに対し、ボトル搬送部(容器搬送部)30Bのチェーン31、32の配置、ボトル100の流れが主に異なる。なお、以下の説明において、上記第一の実施形態で示した殺菌装置10Aと共通する構成については、同符号を付してその説明を省略する。
図11に示す殺菌装置10Bにおいては、ボトル搬送部30Bの一方のチェーン31と他方のチェーン32は同じ高さに設置されている。そして、ボトル100は、一方のチェーン31の上側ライン31Uにおいて供給され、その口部100aがボトルホルダ54Aに保持され、電子線照射装置20の電子線照射領域A内において電子線の照射を受ける。ボトル100は、一方のチェーン31の下側ライン31Lに移動すると、図7に示したようなボトル受け渡し機構60等により、一方のチェーン31から他方のチェーン32の下側ライン32Lに受け渡され、その底部100bが保持される。この後、ボトル100は他方のチェーン32の上側ライン32Uに移動し、電子線照射装置20の電子線照射領域A内において電子線の照射を受ける。
【0033】
このとき、図12に示すように、一方のチェーン31と他方のチェーン32は同じ高さに設置され、電子線照射は上側ライン31U、32Uで行われるため、電子線照射装置20においては、電子線を上方から照射することができる。これに伴い、反射部材25は、一方のチェーン31の上側ライン31Uと、他方のチェーン32の上側ライン32Uの間の下方に配置されている。
これにより、電子線は、ボトル100の口部100a、胴部100cおよび底部100bの外面には、直接照射、反射部材25による反射照射がなされ、ボトル100の胴部100cおよび底部100bの内面には、透過照射がなされ、ボトル100の口部100aの内面には、反射部材25による反射照射、それにボトル100自体を透過しての透過照射がなされる。
【0034】
このような構成の殺菌装置10Bにおいても、上記第一の実施形態における殺菌装置10Aと同様、ボトル100に対し、より均一に電子線を照射することが可能となり、特に形状が複雑であったり肉厚が大きかったりするボトル100の口部100a、底部100bに対し、電子線を十分に照射することが可能となり、殺菌効果を高めることができる。
さらに、チェーン31、32は、同じ高さに設けられているので、第一の実施形態における殺菌装置10Aに比較し、殺菌装置10Bの高さを抑え、小型化を図ることが可能となる。
【0035】
ところで、上記したような殺菌装置10Bは、図13に示すように、上下を反転したような構成とすることも可能である。この場合、電子線照射装置20においては、電子線を下方から照射するような構成となる。
このとき、電子線照射装置20を地下に形成したピット内に収めることで、殺菌装置10Bの高さをさらに抑え、一層の小型化を図ることが可能となる。
【0036】
なお、上記第二の実施形態においては、殺菌装置10Bを90℃回転させるように設け、ボトル100を立てた状態で搬送しながら、横方向から電子線を照射して殺菌を行うようにしても良い。
【0037】
〔第三の実施形態〕
図14は、本実施形態におけるボトル用の殺菌装置10Cの概略構成を説明するための図である。
なお、以下の説明において、上記第一の実施形態で示した殺菌装置10Aと共通する構成については、同符号を付してその説明を省略する。
図14に示す殺菌装置10Cにおいては、遮蔽壁40の開口部43の部分に、それぞれ、ラビリンス構造を実現するため、遮蔽壁40の内方に少なくとも1枚の壁体80が形成され、この壁体80は、開口部43と電子線照射装置20のホーン22とを結ぶ線を塞ぐように配置され、これによって、ボトル100を、上下方向に上げ下げしながら搬送しながら遮蔽壁40内に出し入れするようになっている。
【0038】
この場合においても、上記第一、第二の実施形態と同様、ボトル搬送部(容器搬送部)30Cとしては2組のチェーン81、82を用い、ボトル100の搬送を行う。チェーン81、82は、それぞれ、開口部43の外部から、壁体80と遮蔽壁40の隙間を通り、遮蔽壁40内に設けられた電子線照射装置20の照射領域に至るように配置されている。
そして、一方のチェーン(第一の搬送部材、無端軌道)81においては、ボトル100の口部100aを保持した状態でこれを搬送し、ボトル100の底部100b側を中心に電子線照射装置20による電子線の照射を受ける。電子線照射後は、遮蔽壁40内に配置した、例えば図7に示したようなボトル受け渡し機構60等により、一方のチェーン81から他方のチェーン(第二の搬送部材、無端軌道)82へとボトル100が受け渡され、その底部100bが保持される。この後、ボトル100は他方のチェーン82によって搬送され、電子線照射装置20の電子線照射領域A内においてボトル100の口部100a側を中心に電子線の照射を受ける。
【0039】
このような構成によれば、上記第一の実施形態における殺菌装置10Aと同様、ボトル100に対し、より均一に電子線を照射することが可能となり、特に形状が複雑であったり肉厚が大きかったりするボトル100の口部100a、底部100bに対し、電子線を十分に照射することが可能となり、殺菌効果を高めることができる。
しかも、壁体80により、遮蔽壁40内への出入り口となる開口部43から、チェーン81、82によるボトル100の搬送経路がラビリンス状の構成とされているので、電子線や電子線の照射により生じるX線の遮蔽壁40外への漏洩を防止することができる。
【0040】
なお、上記実施形態では、殺菌装置10A〜10Cの各部の構成について言及したが、これらの構成については本発明の範囲内である限り、いかなる構成に変更しても良い。
例えば、上記各実施形態においては、チェーン31、32、あるいはチェーン81、82により、1本のボトル100を電子線照射装置20の電子線照射領域A内を2回通過させるようにしたが、2回以上通過させるような構成としても良い。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態における殺菌装置の概略構成を示す図である。
【図2】第一の実施形態におけるボトル搬送部の構成を示す斜視図である。
【図3】チェーンの構成、ボトルを回転させるための機構を示す図である。
【図4】ボトルホルダの構成を示す図である。
【図5】ボトルホルダの他の例を示す図である。
【図6】ボトルホルダのさらに他の例を示す図である。
【図7】ボトルの受け渡し機構を示す図である。
【図8】チェーンとボトル受け渡し機構との間におけるボトルの受け渡しの様子を示す図である。
【図9】第一の実施形態における電子線照射状態を示す図である。
【図10】図3の変形例を示す図である。
【図11】第二の実施形態におけるボトル搬送部の構成を示す斜視図である。
【図12】第二の実施形態における電子線照射状態を示す図である。
【図13】第二の実施形態におけるボトル搬送部の他の例を示す図である。
【図14】第三の実施形態におけるボトル搬送部の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0042】
10A、10B、10C…殺菌装置、20…電子線照射装置、25…反射部材、30A、30B、30C…ボトル搬送部(容器搬送部)、31…チェーン(第一の搬送部材、無端軌道)、32…チェーン(第二の搬送部材、無端軌道)、31L…下側ライン、31U…上側ライン、32L…下側ライン、32U…上側ライン、40…遮蔽壁、41…供給口、42…排出口、43…開口部、50…リンクプレート、51…ジョイントピン、52…ローラ、53…ピニオンギヤ(回転部材)、54、54A、54B…ボトルホルダ(保持具)、55…ラックギヤ(ガイド部材)、57…ローラ(回転部材)、58…ガイドバー(ガイド部材)、60…ボトル受け渡し機構、61…ホルダ、70…冷却部、80…壁体、81…チェーン(第一の搬送部材、無端軌道)、82…チェーン(第二の搬送部材、無端軌道)、100…ボトル(容器)、100a…口部(一端側)、100b…底部(他端側)、100c…胴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線を照射することで容器を殺菌する殺菌装置であって、
電子線を前記容器に照射する電子線照射部と、
前記電子線照射部からの電子線の照射領域内を前記容器が通過するよう、前記容器を搬送する容器搬送部と、を備え、
前記容器搬送部は、
殺菌すべき前記容器の一端側を保持し、当該容器を前記電子線照射部における電子線の照射領域内を通過させる第一の搬送部材と、
前記容器の他端側を保持し、当該容器を前記電子線照射部における電子線の照射領域内を通過させる第二の搬送部材と、
前記容器を前記第一の搬送部材から前記第二の搬送部材に受け渡す受け渡し機構と、
を備えることを特徴とする殺菌装置。
【請求項2】
前記第一の搬送部材と前記第二の搬送部材は、前記電子線照射部から照射される電子線の照射領域の中心部を挟んで対向するように配置され、それぞれ、前記第一の搬送部材と前記第二の搬送部材の間において前記容器を保持することを特徴とする請求項1に記載の殺菌装置。
【請求項3】
前記第一の搬送部材、前記第二の搬送部材は、それぞれ、循環駆動される無端軌道を有し、前記無端軌道に沿って複数が等間隔に配置されて前記容器の一端側または他端側を保持する保持具を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の殺菌装置。
【請求項4】
前記無端軌道はチェーンであり、前記保持具は、前記チェーンを構成する複数のリンクプレートを連結するジョイントピンに一体に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の殺菌装置。
【請求項5】
前記無端軌道に沿って、少なくとも前記電子線照射部からの電子線の照射領域にわたって延びるガイド部材が設けられ、
前記ジョイントピンには、前記ガイド部材に当接または噛み合うことで回転し、前記保持具および前記ジョイントピンを回転させる回転部材が備えられていることを特徴とする請求項4に記載の殺菌装置。
【請求項6】
前記第一の搬送部材と前記第二の搬送部材は、前記第一の搬送部材の前記無端軌道の上側ラインと前記第二の搬送部材の前記無端軌道の下側ラインとが並ぶように段違いに設けられ、
前記第一の搬送部材の前記無端軌道の上側ラインで前記電子線照射部における前記容器への電子線照射が行われた後、前記第一の搬送部材から前記第二の搬送部材へと前記容器の受け渡しが前記受け渡し機構により行われ、前記第二の搬送部材の前記無端軌道の上側ラインで前記電子線照射部における前記容器への電子線照射が行われることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の殺菌装置。
【請求項7】
前記第一の搬送部材と前記第二の搬送部材は、前記第一の搬送部材の前記無端軌道と前記第二の搬送部材の前記無端軌道とが対向するように設けられ、
前記第一の搬送部材における前記電子線照射部による前記容器への電子線照射と、前記第二の搬送部材における前記電子線照射部による前記容器への電子線照射は、前記第一の搬送部材の前記無端軌道と前記第二の搬送部材の前記無端軌道の同じ側のラインで行われることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の殺菌装置。
【請求項8】
前記第一の搬送部材、前記第二の搬送部材を冷却する冷却部をさらに備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の殺菌装置。
【請求項9】
電子線を照射することで容器を殺菌する方法であって、
殺菌すべき前記容器の一端側を保持した状態で、当該容器に電子線を照射する第一の照射工程と、
前記第一の照射工程に続き、前記容器の他端側を保持した状態で、当該容器に電子線を照射する第二の照射工程と、
を含むことを特徴とする容器の殺菌方法。
【請求項10】
前記第一の照射工程では、前記容器の一端側を第一の保持具で保持した状態で、前記第一の保持具を電子線の照射領域内で移動させることで前記容器に電子線を照射し、
前記第二の照射工程では、前記容器の他端側を第二の保持具で保持した状態で、前記第二の保持具を電子線の照射領域内で移動させることで前記容器に電子線を照射し、
前記第一の照射工程の後に前記第二の照射工程に移行する先立ち、前記容器を前記第一の保持具から前記第二の保持具に受け渡す受け渡し工程をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の容器の殺菌方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−56268(P2008−56268A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233791(P2006−233791)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(505193313)三菱重工食品包装機械株式会社 (146)