説明

殺虫殺ダニ用乳剤

【課題】保管中に有効成分であるエトキサゾールが沈降し凝固することのないなど、安定性に優れ、しかも人体、家畜、家禽への安全性や環境保全性に優れる殺虫殺ダニ用乳剤を提供する。
【解決手段】殺虫殺ダニ用乳剤を、エトキサゾール、植物油または植物油系混合溶媒、および乳化剤を含有するものとする。植物油は菜種油、乳化剤はポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸塩および脂肪酸ポリオキシアルキレングリセリンから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺虫殺ダニ成分であるエトキサゾールを有効成分とする製剤に関し、さらに詳しくは保管中にエトキサゾールが沈降し凝固することのないなど、安定性に優れ、しかも人体、家畜、家禽への安全性や環境保全性に優れる殺虫殺ダニ用乳剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ダニは様々な生態系を持ち、自然界に広く生息しているが、人体、家畜、家禽や鳥類、植物等の外部寄生虫であり、吸血するダニ類に関しては、伝染病を媒介したり吸血により家畜の体力を奪ってしまうことから(例えばワクモ:red mite)、駆除する必要がある。
【0003】
ダニ類駆除に優れた卓効を示す(RS)−5−tert−ブチル−2−〔2−(2,6−ジフルオロフェニル)−4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾール−4−イル〕フェネトール(一般名称:「エトキサゾール」以後エトキサゾールと呼称する)は、水性フロアブル剤等(特許文献1参照)として実施化することが知られており、かくして、人畜に対する安全性を高め、環境負荷を低減することができる。しかしながら、保管中に有効成分であるエトキサゾールが沈降し凝固したハードケーキを作る等の問題が発生したり、また、製造に際しては高速ブレンダーやビーズミルの如く大がかりな製造設備を要するため、発展途上国等、高度な製造設備を有しない地域においては製造が困難であるなどといった問題があった。
【0004】
一方、医薬、農薬、香粧品、一般家庭雑貨品分野において、有効成分およびその溶剤、乳化剤から構成される乳剤(英名emulsifiable concentarte略称EC)は、製造方法が簡単(配合成分を混合するだけ)であるので製造場所を選ばないし、また高濃度の有効成分を含有する製剤の製造が可能になるなどの利点を有するため、広く使用されてきた。しかしながら、活性成分の溶解剤として有機溶媒を大量に使用する乳剤は、人畜への安全性や環境保全性の面での規制が強化され、社会的要求も高まる中で、キシレン、ナフタレン等の芳香族系溶媒は使用を避ける方向にあるのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO93/22297
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、保管中に有効成分であるエトキサゾールが沈降し凝固することのないなど、安定性に優れ、しかも人体、家畜、家禽への安全性や環境保全性に優れる殺虫殺ダニ用乳剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、エトキサゾール、乳化剤、溶剤を含有する乳剤において、植物由来の成分から得られる溶剤、及び界面活性剤として特定のものを用いることが、課題解決に資することを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
(1)エトキサゾール、植物油または植物油系混合溶媒、および乳化剤を含有することを特徴とする殺虫殺ダニ用乳剤。
【0009】
(2)植物油が菜種油であることを特徴とする前記(1)に記載の殺虫殺ダニ用乳剤。
【0010】
(3)乳化剤が、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸塩および脂肪酸ポリオキシアルキレングリセリンから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする前記(1)または(2)に記載の殺虫殺ダニ用乳剤。
【0011】
(4)エトキサゾール1〜10重量部、菜種油70〜90重量部、およびポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸塩および脂肪酸ポリオキシアルキレングリセリンから選ばれる少なくとも1種を含む乳化剤5〜30重量部を含有することを特徴とする殺虫殺ダニ用乳剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明の殺虫殺ダニ用乳剤は、保管中に有効成分であるエトキサゾールが晶出し沈降・凝固することのないなど、安定性に優れ、しかも人体、家畜、家禽への安全性や環境保全性に優れるという格別の効果を奏し、使用する際には、水にて希釈しスプレー等で対象物に散布すればよいものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の殺虫殺ダニ用乳剤におけるエトキサゾールの含有量は、効力およびコストの観点からして、本発明の殺虫殺ダニ用乳剤全体に対し、通常0.5〜50重量%、好ましくは1〜10重量%、中でも1〜5重量%の範囲で選ばれる。
【0014】
本発明の殺虫殺ダニ用乳剤において用いられる溶媒は、殺虫殺ダニ活性成分を溶解し、且つ人体、家畜、家禽への安全性や環境保全性に優れるものが好ましいことから考えると、植物油が好ましい。
【0015】
このような、植物油としては、ココナツ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ピーナッツ油、菜種油、サフラワー油、ごま油、大豆油、ひまわり油、アーモンド油、カシュー油、ヘーゼルナッツ油、マカデミア油、モンゴンゴ油、ペカン油、マツの実油、ピスタチオ油、クルミ油等を挙げることが出来るが、低温時の安定性、入手性、コスト等の観点からは、コーン油、大豆油、菜種油等が好ましく、本発明における殺虫殺ダニ用乳剤に使用するエトキサゾールの溶解性を考慮すると、菜種油がより好ましい。
このような溶媒の配合割合は殺虫殺ダニ用乳剤全量に基づき、通常50〜99重量%、好ましくは70〜90重量%の範囲で選ばれる。
【0016】
また、本発明の殺虫殺ダニ用乳剤において用いられる乳化剤は、殺虫殺ダニ活性成分およびその溶媒を、施用時に水に簡単に希釈しうるものであれば特に限定されないが、なかでも界面活性剤が好ましい。
このような界面活性剤としては、非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0017】
非イオン系界面活性剤の例としては、植物油型非イオン性界面活性剤、アルコール型非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー型非イオン性界面活性剤、アルキルフェノール型非イオン性界面活性剤、糖エステル型非イオン性界面活性剤、脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤、ビスフェノール型ノニオン性界面活性剤、多芳香環型ノニオン性界面活性剤、シリコン型ノニオン性界面活性剤、フッ素型ノニオン性界面活性剤などを挙げることができる。植物油型非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシアルキレンヒマシ油(例えばポリオキシエチレンヒマシ油等)、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油(例えばポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等)が挙げられる。アルコール型非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー型非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー、アルキルポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーエーテル、アルカリフェニルポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーエーテル等が挙げられる。アルキルフェノール型ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル・ホルマリン縮合物等が挙げられる。糖エステル型ノニオン性界面活性剤としては、例えばソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル等)、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。脂肪酸エステル型ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル等が挙げられる。ビスフェノール型ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシビスフェニルエーテル等が挙げられる。多芳香環型ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレンベンジルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル等が挙げられる。シリコン型ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンエーテル型シリコン系界面活性剤、ポリオキシエチレンエステル型シリコン系界面活性剤等が挙げられる。
【0018】
また、アニオン性界面活性剤としては、例えばサルフェート型アニオン性界面活性剤アニオン性界面活性剤、スルフォネート型アニオン性界面活性剤、フォスフェート型アニオン性界面活性剤、カルボン酸型アニオン性界面活性剤などを挙げることができる。サルフェート型アニオン性界面活性剤としては、例えばアルキルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーサルフェート等が挙げられる。スルフォネート型アニオン性界面活性剤としては、例えばパラフィンスルフォネート、ジアルキルスルホサクシネート、アルキルベンゼンスルフォネート、モノアルキルナフタレンスルフォネート、ジアルキルナフタレンスルフォネート、ナフタレンスルフォネート・ホルマリン縮合物、アルキルジフェニルエーテルジスルフォネート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルフォネート等が挙げられる。フォスフェート型アニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテルフォスフェート、ポリオキシエチレンモノアルキルフェニルエーテルフォスフェート、ポリオキシエチレンジアルキルフェニルエーテルフォスフェート、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルフォスフェート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーフォスフェート、アルキルフォスフェート等が挙げられる。カルボン酸型アニオン性界面活性剤としては、例えば脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸アンモニウム、N−メチル−サルコシネート、樹脂酸ナトリウム、樹脂酸カリウム等が挙げられる。
【0019】
カチオン性界面活性剤としては、例えばアンモニウム型カチオン性界面活性剤、ベンザルコニウム型カチオン性界面活性剤等が挙げることができる。アンモニウム型カチオン性界面活性剤としては、例えばアルキルトリメチルアンモニウムクロライド、メチルポリオキシエチレンアルキルアンモニウムクロライド、アルキルN−メチルピリジニウムブロマイド、モノまたはジアルキルメチル化アンモニウムクロライド、アルキルペンタメチルプロピレンジアミンクロライド等が挙げられる。ベンザルコニウム型カチオン性界面活性剤としては、例えばアルキルジメチルベンザルコニウムクロライド、ベンゼトニウムクロライド、オクチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0020】
両性界面活性剤としては、例えばベタイン型両性界面活性剤を挙げることができる。ベタイン型両性界面活性剤としては、例えばジアルキルジアミノエチルベタイン、アルキルジメチルベンジルベタイン等が挙げられる。
【0021】
これら各種界面活性剤の内、エトキサゾールを溶媒中に良好に溶解させ、且つ水で希釈した際に速やか且つ安定に水中乳化物を調製させる観点からすると、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル等)、ポリオキシアルキレンヒマシ油(例えばポリオキシエチレンヒマシ油等)、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油(例えばポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等)、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等)、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸塩、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ポリオキシアルキレングリセリン(例えば脂肪酸ポリオキシエチレングリセリン等)が好ましい。
これらの好適な界面活性剤は2種以上併用することができ、中でもその合計量に対し、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル10〜30重量%、ポリオキシアルキレンヒマシ油0〜60重量%、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油20〜60重量%、ソルビタン脂肪酸エステル0〜45重量%、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル0〜60重量%、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸塩5〜40重量%、脂肪酸グリセリド0〜45重量%、脂肪酸ポリオキシアルキレングリセリン0〜60重量%の範囲とするのがよい。
【0022】
このような界面活性剤は各メーカーから市販されているため単品で購入し、本発明における殺虫殺ダニ剤を調合する際に混合しても良いし、既混合品を入手して使用することも可能である。例えば、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ジアルキルスルホサクシネート、ソルビタン脂肪酸エステルの混合物としては、東邦化学社製「ソルポール4377B」が挙げられるし、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ジアルキルスルホサクシネートの既混合物としては、東邦化学社製「ソルポール4377A」が挙げられる。また、ポリオキシエチレンンルビトールテトラオレエートの一般商品名としては、東邦化学社製「ソルボンTR−843」、花王社製「レオドール430V」「レオドール440V」「レオドール460V」、日光ケミカルズ社製「NIKKOL430NV」、「NIKKOL440V」「NIKKOL460V」等が挙げられる。
【0023】
乳化剤、中でも界面活性剤の配合割合は殺虫殺ダニ用乳剤全量に基づき、通常1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%の範囲で選ばれる。
【0024】
本発明の殺虫殺ダニ用乳剤は、必要に応じ、本発明の目的を損なわない範囲内で、さらにその他の溶剤や、各種添加物、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、浸透剤、展着剤、結合剤、顔料、香料等を少量配合させてもよく、その配合割合は殺虫殺ダニ用乳剤全量に基づき、2重量%未満程度とするのがよい。
その他の溶剤としては、例えばトリメチルベンゼン、ドデシルベンゼン等のアルキルベンゼン類、フェニルキシリルエタン等のジフェニルメタン類、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸イソブチルなどのエステル系溶剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどのグリコール系溶剤、軽質流動パラフィン、流動パラフィン等のパラフィン系溶媒等を挙げることもできるが、通常は前記必須溶剤が主に使用され、アルキルベンゼン類、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤等が使用される場合は前記必須溶剤と併用されるのが一般的であり、その場合の含有量は前記必須溶剤に対し通常、2〜100重量%程度である。
【0025】
本発明の殺虫殺ダニ用乳剤において、活性成分の配合量などの変化により、乳化性が変化する。このため、これらによる乳化性の変化を考慮して、各成分の好適な配合比を選択するようにすればよい。
【0026】
本発明の殺虫殺ダニ用乳剤の駆除対象害虫、ダニとしては次のようなものが挙げられる。これらの中には昆虫、ダニ類以外の節足動物もあるが、これらも駆除することが可能である。
鱗翅目害虫、イガ、コイガ双翅目害虫イエカ類:アカイエカ、コガタアカイエカ等、ヤブカ類:ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ等、ハマダラカ類:シナハマダラカ等イエバエ類:イエバエ、オオイエバエ等クロバエ類、ニクバエ類、ハナバエ類:ヒメイエバエ、タネバエ、タマネギバエ等ユスリカ類、ミバエ類、ショウジョウバエ類、チョウバエ類、アブ類、ブユ類、サシバエ類等膜翅目害虫アシナガバチ類、スズメバチ類、アリガタバチ類、アリ類:イエヒメアリ、オオハリアリ等ゴキブリ目害虫ゴキブリ類:チャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ワモンゴキブリ、トビイロゴキブリ、コバネゴキブリ等半翅目害虫カメムシ類:クサギカメムシ、スコットカメムシ等シロアリ目害虫シロアリ類:ヤマトシロアリ、イエシロアリ等直膜翅目害虫カマドウマ類:マダラカマドウマ、カマドウマダニ目マダニ類:オウシマダニ等室内塵性ダニ類:コナダニ類、チリダニ類、ツメダニ類、イエダニ類等昆虫、ダニ類以外の節足動物としてはクモ類:アシダカグモ、オオヒメグモ、イエオニグモ等ムカデ類:トビズムカデ、アオズムカデ等ヤスデ類:ヤケヤスデ、アカヤスデ等ゲジ類:オオゲジ、ゲジ等その他、ワラジムシ、オカダンゴムシ等
【0027】
また、本発明の殺虫殺ダニ用乳剤は、有用植物、具体的には野菜類、果樹、花卉類、庭木類等に寄生する種々の有害昆虫・ダニ類、例えば、モモアカアブラムシ、ワタアブラムシ、ニセダイコンアブラムシ、リンゴワタアブラムシ、ナシミドリオオアブラムシ、モモコフキアブラムシ等のアブラムシ類;チャノキイロアザミウマ、ミナミキイロアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、カキクダアザミウマ等のスリップス類;コナガ、アオムシ、ヨトウ、ハスモンヨトウ、シロイチモジョトウ、タマナギンウワバ、チャハマキ、チノコカクモンハマキ、キンモンホソガ、モモハモグリガ、ミカンハモグリガ、ナシヒメシンクイ、モモシンクイ、ニカメイガ、アワノメイガ等の鱗翅目類;ナミハダニ、カンザワハダニ、ミカンハダニ、リンゴハダニ等のハダニ類にも有効である。
【0028】
かかる害虫、ダニの駆除においては、本乳剤を水で希釈し、例えば、害虫、ダニに直接、あるいは害虫、ダニのいる密閉空間や通り道、寄生植物やその周辺に、更には窓や壁、網戸等、あるいは害虫の巣などの生息地等に散布、噴霧あるいは噴射することにより施用することができる。この際の施用量は有効成分により異なるが、有効成分量として、通常0.01〜100mg/m程度あるいは0.01〜50mg/m程度である
【実施例】
【0029】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によりなんら限定されるものではない。
【0030】
実施例1
200ml容ガラス容器に入れた、予め80℃まで加熱した12gのソルポール4377Bと3gのレオドール430Vの混合物にエトキサゾール2.6gを加え、完全溶解を目視にて確認後、同じく80℃まで加熱した菜種白絞油(日清オイリオ社製)82.4gを添加し、80℃を維持したまま5分間攪拌し完全に溶解し、本発明における殺虫殺ダニ用乳剤(1)を得た。
こうして得られた殺虫殺ダニ用乳剤は、透明淡黄色均一溶液状外観を呈する。
【0031】
実施例2
上記ソルポール4377Bを4377Aに変えた以外は、上記実施例1と同様にして殺虫殺ダニ用乳剤(2)を得た。
【0032】
比較例1、2
実施例1における溶媒を、同重量のカネダ社製薬局方ハイコールM−52、出光興産社製IPソルベント2028MUに変えた以外は、実施例1と同様にして対照殺虫殺ダニ用乳剤(イ)、(ロ)を得た。
【0033】
(試験例1)製剤のエトキサゾール溶解性
上記各実施例及び比較例の殺虫殺ダニ用乳剤(1)〜(2)及び(イ)〜(ロ)をサイクル試験用サンプルとして用い、40℃で4時間維持した後、2時間かけて−15℃にまで冷却し、−15℃で4時間維持し、更に2時間かけて40℃まで昇温するサイクル実験機にて1週間保管後、各溶液の状況を一旦室温に戻し、目視判定した。その結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
(試験例2)製剤の安定性試験
上記製剤例(1)を54℃で1ヶ月間虐待試験を行い、下記表の各試験項目における初期及び54℃1ヶ月後の試験結果を下記に示した。

【0036】
これより、各対照殺虫殺ダニ用乳剤では有効成分であるエトキサゾールが沈降し凝固するなどの問題があるのに対し、各実施例の殺虫殺ダニ用乳剤は、そのような問題が起こらず、保管安定性に優れていることが分る。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の殺虫殺ダニ用乳剤は、保管中に有効成分であるエトキサゾールが晶出・沈降し凝固することのないなど、安定性に優れ、しかも人体、家畜、家禽への安全性や環境保全性に優れるという格別の効果を奏し、使用する際には、水にて希釈しスプレー等で対象物に散布すればよいので、産業上大いに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エトキサゾール、植物油または植物油系混合溶媒、および乳化剤を含有することを特徴とする殺虫殺ダニ用乳剤。
【請求項2】
植物油が菜種油であることを特徴とする請求項1に記載の殺虫殺ダニ用乳剤。
【請求項3】
乳化剤が、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸塩および脂肪酸ポリオキシアルキレングリセリンから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の殺虫殺ダニ用乳剤。
【請求項4】
エトキサゾール1〜10重量部、菜種油70〜90重量部、およびポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸塩および脂肪酸ポリオキシアルキレングリセリンから選ばれる少なくとも1種を含む乳化剤5〜30重量部を含有することを特徴とする殺虫殺ダニ用乳剤。

【公開番号】特開2011−148756(P2011−148756A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24730(P2010−24730)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(591057511)ヤシマ産業株式会社 (12)
【出願人】(000221797)東邦化学工業株式会社 (188)
【Fターム(参考)】