説明

殺虫殺菌器具

【課題】殺虫殺菌剤の流出による紛失を防止でき、長期に亘って殺虫殺菌効果を維持でき、殺虫殺菌剤を無駄なく使い切ることができる殺虫殺菌器具を提供する。
【解決手段】殺虫殺菌器具1Aは、水中の殺虫殺菌に用いられる水接触型固形殺虫殺菌剤20を、水が滞留する雨水ます2A内に保持するものであって、該水接触型固形殺虫殺菌剤20と該水接触型固形殺虫殺菌剤20が収容される容器部11の外周に設けられたフロート部15とを有する殺虫殺菌剤保持体10と、該殺虫殺菌剤保持体10を、該雨水ます2A内の水位に合わせて鉛直方向に移動自在とし、かつ水平方向の移動範囲を規制するガイド筒部5Aと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の殺虫殺菌をするための水接触型固形殺虫殺菌剤を、雨水ますや貯留槽などの水が滞留する水滞留部内に保持して虫や菌の発生を防止する殺虫殺菌器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
雨水ますや貯留槽などの水が滞留する水滞留部において、ボウフラや蚊の発生を防止しようとする構成は、いくつか提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
特許文献1には、雨水ますにおいてボウフラが発生するのを防止するボウフラ発生防止具が開示されており、該ボウフラ発生防止具は、雨水ます内の水に浮揚されて使用される。また特許文献2には、蚊の発生を防止した防蚊雨水ますが開示されている。かかる構成は、雨水ますの水が滞留する所要箇所に銅部材または銅合金部材が固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−38578号公報
【特許文献2】特開2000−154589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された構成は、ボウフラ発生防止具が雨水ますに設けられた流出口等を介して雨水ますの外へ流れ出てしまうおそれがあった。ここで、ボウフラ発生防止具の流出を防止すべく、該流出口等より大きな寸法のボウフラ発生防止具を採用することが提案されるものの、このようなボウフラ発生防止具を雨水ます内に配置すると、該雨水ますの貯水容量を小さくしてしまうという問題が生ずる。また、雨水ます内の水深が浅すぎると、該ボウフラ発生防止具が倒れて適切に浮遊しなくなり、場合によっては該ボウフラ発生防止具の上に砂泥等が堆積して水との接触が断たれ、殺虫効果が得られなくなるおそれもあった。
【0006】
特許文献2に開示された構成においても、銅部材等の上に砂泥等が堆積あるいは定着してしまい、殺虫効果が得られなくなるという問題がある。また、銅部材等は雨水ますに対して固定されているため、長期間水に浸る部位に錆が生じやすい。錆び付いた部位は殺虫効果がほとんど得られないため部材交換を要するが、該銅部材等にまだ錆が発生していない部位が残っていても、全体として部材交換しなければならず、無駄が生じやすい。
【0007】
そこで、本発明は、水が滞留する水滞留部において、殺虫殺菌剤の流出による紛失を防止できる殺虫殺菌器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水中の殺虫殺菌に用いられる水接触型固形殺虫殺菌剤を、水が滞留する水滞留部内に保持する殺虫殺菌器具であって、該水接触型固形殺虫殺菌剤と該水接触型固形殺虫殺菌剤を水に浮かべるためのフロート部とを有し、該フロート部の浮力で該水滞留部内の水に浮かべられると、該水接触型固形殺虫殺菌剤が該水滞留部内の水に接触する殺虫殺菌剤保持体と、該水滞留部内の水に浮かべられた該殺虫殺菌剤保持体を、該水滞留部内の水位に合わせて鉛直方向に移動自在とし、かつ水平方向の移動範囲を規制するガイド部と、を備えていることを特徴とする殺虫殺菌器具である。
【0009】
かかる構成にあって、前記水接触型固形殺虫殺菌剤は、水に接触することでその水中に対して殺虫殺菌効果を発揮するものであり、略全溶するまで殺虫殺菌効果が発揮される水溶性のものも、殺虫殺菌効果が失われても全溶せずに外形がほぼそのまま残る非水溶性のものも含まれる。該水接触型固形殺虫殺菌剤は前記水滞留部内の水に浮かべられた状態で水に接触しており、該水滞留部内の水位の変動に関わらず一定深さで水に浸ることになる。このため、水と接触する水接触型固形殺虫殺菌剤の量が一定となり、殺虫殺菌効果が安定して持続することとなる。また、前記ガイド部が該殺虫殺菌剤保持体の水平方向の移動範囲を規制しているため、該水滞留部の外に該殺虫殺菌剤保持体が誤って流れ出てしまうことが防止され、紛失してしまうことがない。なお、該ガイド部材は、殺虫殺菌剤保持体の上下動は許容しているため、該水滞留部内の水位に応じて該殺虫殺菌剤保持体を適切に浮かべておくことができる。
【0010】
また、前記ガイド部が、前記水滞留部の内周面から突設されたガイド壁部であり、前記殺虫殺菌剤保持体が、該ガイド壁部と該水滞留部の内周面とで囲まれ、かつ該水滞留部内の水が流入可能な空間内に配置されていてもよい。
【0011】
かかる構成にあっては、該水滞留部の内周面の一部を用いて殺虫殺菌剤保持体をガイドすることが可能となり、殺虫殺菌器具の簡素化及び水滞留部の省スペース化が図れる。
【0012】
また、前記ガイド部が、前記水滞留部内に略鉛直方向に沿って配設されたガイド筒部であり、該ガイド筒部の側壁には透水部が形成され、該透水部を介して該水滞留部内の水が流入する該ガイド筒部内に、前記殺虫殺菌剤保持体が配置されていてもよい。
【0013】
かかる構成にあっては、該ガイド筒部を該水滞留部内の所望位置に配設することが可能となるため、設計の自由度が向上する。また、ガイド筒部の側壁によって囲まれた空間内に殺虫殺菌剤保持体が配置されるため、殺虫殺菌剤保持体の流出を確実に防止することができる。
【0014】
さらに、前記ガイド部が、前記水滞留部内に略鉛直方向に沿って配設されたガイド柱部であり、前記殺虫殺菌剤保持体には、略鉛直方向に開口し、該ガイド柱部の外径より大きい孔径の貫通孔が形成され、該ガイド柱部が該殺虫殺菌剤保持体の貫通孔内に挿通されていてもよい。
【0015】
かかる構成とすることにより、簡素な構造によって、水滞留部内の水に浮かべた殺虫殺菌剤保持体を、該水滞留部内の水位に合わせて鉛直方向に移動自在とし、かつ水平方向の移動範囲を規制することが可能となる。
【0016】
さらに、前記ガイド部が、前記水滞留部の内周面に略鉛直方向に沿って設けられたガイド係合部であり、前記殺虫殺菌剤保持体は、該ガイド係合部に係合する被係合部を備え、該被係合部が該ガイド係合部に係合した状態で、該殺虫殺菌剤保持体が、該ガイド係合部に沿って水滞留部内の水位に合わせて鉛直方向に移動自在であり、かつ水平方向の移動範囲が規制されている構成としてもよい。
【0017】
かかる構成にあっても、水滞留部内の水に浮かべた殺虫殺菌剤保持体を、該水滞留部内の水位に合わせて鉛直方向に移動自在とし、かつ水平方向の移動範囲を規制することが可能となる。
【0018】
ところで、水接触型固形殺虫殺菌剤に対してフロート部を設ける手段としては、水接触型固形殺虫殺菌剤の外表面および/またはフロート部の外表面に結合部を設けて互いを直接結合させる構成が提案される。しかし、このような構成は、水接触型固形殺虫殺菌剤が水溶性であると、該水接触型固形殺虫殺菌剤が部分的に水に溶解して結合部における外形が変化してしまい、水接触型固形殺虫殺菌剤とフロート部との結合が解除されてしまうおそれがある。
【0019】
そこで、前記水接触型固形殺虫殺菌剤は、水溶性であり、前記殺虫殺菌剤保持体が、該水接触型固形殺虫殺菌剤が収容され、側壁に透水部が形成されている容器部を有し、該容器部に前記フロート部が配設されており、該殺虫殺菌剤保持体の該容器部の透水部を介して該水接触型固形殺虫殺菌剤が前記水滞留部内の水と接触している構成が好ましい。
【0020】
このように、水接触型固形殺虫殺菌剤が収容される容器部にフロート部を形成するようにすると、水溶性の水接触型固形殺虫殺菌剤が水に溶解して外形が変形しても該水接触型固形殺虫殺菌剤とフロート部とが分離してしまうことを防止でき、該水接触型固形殺虫殺菌剤を使い切るまで該水接触型固形殺虫殺菌剤を水に浮かべ続けることが可能となる。
【0021】
さらに、前記水滞留部内に前記殺虫殺菌剤保持体が配置された初期状態において、前記容器部内の前記水接触型固形殺虫殺菌剤の上端部は該水滞留部内の水位より上方に位置している構成が好ましい。
【0022】
かかる構成にあっては、該水接触型固形殺虫殺菌剤の少なくとも水位より下方にある部分から溶解し、これに対応して水接触型固形殺虫殺菌剤が順次下降することとなる。このため、水接触型固形殺虫殺菌剤が適量だけ順次消費されることになり、殺虫殺菌効果が持続しやすく、また水接触型固形殺虫殺菌剤の全量を無駄なく使い切ることも可能となる。
【0023】
また、前記水接触型固形殺虫殺菌剤は多数の粒の集合体である構成が好ましい。
【0024】
かかる構成にあっては、水接触型固形殺虫殺菌剤が水に溶解しやすく、かつ該容器部内において該水接触型固形殺虫殺菌剤の下部の溶解によって生じる下方の隙間を該水接触型固形殺虫殺菌剤の上部が埋めるように円滑に下降するため、常時適切な量の該水接触型固形殺虫殺菌剤が水に接触することとなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の殺虫殺菌器具は、殺虫殺菌剤が水滞留部から流出して紛失してしまうことを防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1にかかる殺虫殺菌器具を示す縦断面図。
【図2】実施例1にかかる殺虫殺菌剤保持体を示す縦断面図。
【図3】実施例2にかかる殺虫殺菌器具を示す縦断面図。
【図4】実施例3にかかる殺虫殺菌器具を示し、(a)は平面図、(b)は縦断面図、(c)はその殺虫殺菌剤保持体の縦断面図。
【図5】実施例4にかかる殺虫殺菌器具を示し、(a)は縦断面図、(b)はその殺虫殺菌剤保持体の平面図。
【図6】実施例5にかかる殺虫殺菌器具を示す縦断面図。
【図7】実施例6にかかる殺虫殺菌器具を示し、(a)はその分解平面図、(b)はその変形例を示す分解平面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の殺虫殺菌器具を具体化した実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、下記に示す実施例に限定されることはなく、適宜設計変更が可能である。
【0028】
(実施例1)
図1に示すように、殺虫殺菌器具1Aは、水が滞留する水滞留部としての雨水ます2A内に、水中の殺虫殺菌に用いられる水接触型固形殺虫殺菌剤20を保持するものである。ここで、該水接触型固形殺虫殺菌剤20は、水溶性の固形材料からなり、水に接触して該水に溶解することで殺虫殺菌効果を発揮する。該水接触型固形殺虫殺菌剤20としては、ボウフラや蚊等の発生を防止する公知技術の殺虫殺菌剤が好適に用いられるが、既に市販されている多数の粒の集合体である銀系無機抗菌剤(商品名:ノバロン 東亜合成株式会社製)が特に望ましい。
【0029】
さらに詳述すると、図1に示すように、殺虫殺菌器具1Aは、雨水ます2A内に備え付けられたガイド部としてのガイド筒部5Aと、該ガイド筒部5A内に配置された、水接触型固形殺虫殺菌剤20を備える殺虫殺菌剤保持体10と、を有している。
【0030】
前記ガイド筒部5Aは、前記雨水ます2A内に略鉛直方向に沿って配設された円筒部材で構成され、該ガイド筒部5Aの側壁には透水部としての透水孔6が多数形成されている。そして、該透水孔6を介して該雨水ます2A内の水が該ガイド筒部5A内に流入可能となっている。また、該ガイド筒部5Aの上端開口は、蓋部7によって遮蔽されている。なお、該透水孔6の寸法形状は特に限定されないが、該ガイド筒部5A内への水の流入が円滑に行われ、かつ雨水ます2A内のゴミ等が該ガイド筒部5A内に流入しない程度の寸法に設定されていることが望ましい。
【0031】
さらに、図2に示すように、該ガイド筒部5A内に配置されている殺虫殺菌剤保持体10は、有底円筒部材からなる容器部11と、該容器部11の外周に配設されたフロート部15と、を有している。該容器部11は、透明な樹脂材料からなり、該容器部11内には、多数の粒の集合体である水接触型固形殺虫殺菌剤20が充填されている。そして、該容器部11の上端開口にはキャップ13が装着されている。また、該容器部11下部の側壁には、透水部としての透水孔12が多数形成されている。さらに、該容器部11の外周には、フランジ形状の係合部14が形成され、該係合部14の周囲にフロート部15が係着している。該フロート部15は、発泡プラスチックや発泡ゴム等の殺虫殺菌剤保持体10が水に浮くのに充分な浮力を有する材料からなる成形体で構成されている。
【0032】
そして、該殺虫殺菌剤保持体10は、該ガイド筒部5A内において前記フロート部15の浮力で該雨水ます2A内の水に浮かべられており、該殺虫殺菌剤保持体10の水接触型固形殺虫殺菌剤20が透水孔12を介して該雨水ます2A内の水と接触している。
【0033】
ここで、図1に示すように、該ガイド筒部5Aは、殺虫殺菌剤保持体10を該雨水ます2A内の水位に合わせて鉛直方向に移動自在とし、かつ水平方向の移動範囲を規制する役割を果たしている。なお、該ガイド筒部5Aの内径は、該殺虫殺菌剤保持体10の保守管理や、該ガイド筒部5A内の砂泥等の清掃作業等が容易に行える程度の寸法に設定されている。
【0034】
これまでに述べた上記構成にあっては、前記殺虫殺菌剤保持体10における水接触型固形殺虫殺菌剤20が、雨水ます2A内の水位の高さに関わらず一定深さだけ水に浸ることになるため、水に接触する水接触型固形殺虫殺菌剤20の量が一定となり、殺虫殺菌効果が安定して持続することとなる。また、前記ガイド筒部5Aによって殺虫殺菌剤保持体10の水平方向の移動範囲が規制されているため、該雨水ます2Aに形成された管接続口(特に流出管接続口)8を介して該殺虫殺菌剤保持体10が雨水ます2Aの外へ流れ出てしまうおそれがない。また、水接触型固形殺虫殺菌剤20を容器部11に収容し、該容器部11にフロート部15を形成する構成にしたため、該水接触型固形殺虫殺菌剤20が部分的に水に溶解して外形が変化しても、該水接触型固形殺虫殺菌剤20とフロート部15とが分離して該水接触型固形殺虫殺菌剤20だけが水底に沈んでしまうおそれがない。
【0035】
なお、図2に示すように、雨水ます2A内に前記殺虫殺菌剤保持体10が配置された初期状態においては、容器部11内の水接触型固形殺虫殺菌剤20の上端部が該雨水ます2A内の水位より上方に位置し、該水接触型固形殺虫殺菌剤20の水面下に配された下部から順に溶解し、これに対応して該水接触型固形殺虫殺菌剤20の上部が容器部11内の該水接触型固形殺虫殺菌剤20の下部の溶解によって生じる下方の隙間を埋めるように順次下降する。このため、水接触型固形殺虫殺菌剤20は適量だけ順次消費されることになり、殺虫殺菌効果が持続しやすい。また、上記した多数の粒の集合体である銀系無機抗菌剤からなる水接触型固形殺虫殺菌剤20は、全部が水に対して易溶であるため、水接触型固形殺虫殺菌剤20の全量を無駄なく使い切ることができる。
【0036】
さらに上記構成は、水接触型固形殺虫殺菌剤20の残量の確認作業が容易である。例えば、図1に示すように、作業者が点検のため殺虫殺菌器具1Aにおける蓋部7を開放させた際に、前記殺虫殺菌剤保持体10の透明な容器部11を介して、水接触型固形殺虫殺菌剤20の上端部が該雨水ます2内の水位より上方にあることが視認できれば該水接触型固形殺虫殺菌剤20が十分に残留していることがわかる。これに対し、該上端部が水面下に没して視認できない状態、もしくは該容器部11にあらかじめ設けられた基準線より下にあって規定量を満たさない状態であれば補充を要する時期であることがわかり、該容器部11のキャップ13を開けて該水接触型固形殺虫殺菌剤20を適切に補充することになる。なお、水接触型固形殺虫殺菌剤20の残量を容易に視認可能とするために、上記のように容器部11を透明材料で構成してもよいし、あるいは該容器部11の上端に形成された開口部から確認するようにしてもよい。
【0037】
(実施例2)
以下、実施例2にかかる殺虫殺菌器具1Bについて説明するが、実施例1と共通する部分については説明を簡略又は省略し、また図中では同じ符号を付すこととする。
【0038】
図3に示すように、殺虫殺菌器具1Bにかかる水滞留部は、雨水ます等の内部に配置されるバケット2Bで構成されている。
【0039】
該バケット2Bは、砂泥等が堆積、あるいは雨水が滞留するバケット本体部31と該バケット本体部31の上縁部に取り付けられた略コ字状の把持部32とで構成されている。さらに、該把持部32の根元部には、ガイド筒部支持部33が取り付けられており、該ガイド筒部支持部33にガイド筒部5Bが着脱自在に接続されている。該ガイド筒部5Bには、多数の透水孔6が設けられていると共に、該ガイド筒部5B内には、殺虫殺菌剤保持体10が浮かべられている。
【0040】
このように、ガイド筒部5Bは、水滞留部としてのバケット2Bに対して着脱自在に取り付けられている。このような構成とすると、水接触型固形殺虫殺菌剤20の補充等のメンテナンス作業が容易に行える。
【0041】
(実施例3)
以下、実施例3にかかる殺虫殺菌器具1Cについて説明するが、実施例1,2と共通する部分については説明を簡略又は省略し、また図中では同じ符号を付すこととする。
【0042】
図4a,図4bに示すように、殺虫殺菌器具1Cは、水滞留部としてのバケット2Bの内周面から突設された左右一対のガイド壁部5C,5Cを備えている。該ガイド壁部5Cは、図4aに示すように、平面視L字状に形成されていると共に、図4bに示すように、バケット本体部31の下端から上端にかけて連続状に形成されている。また、左右一対のガイド壁部5C,5C間には、縦長のスリットからなる透水部35が形成されている。そして、該透水部35を介して、該ガイド壁部5C,5Cと該バケット2Bの内周面とで囲まれた空間にはバケット2B内の水が流入可能となっている。
【0043】
また、図4cに示すように、殺虫殺菌剤保持体10は、上端にフランジ状の係合部22を有する成形体からなる水接触型固形殺虫殺菌剤20と、前記係合部22に直接係着するフロート部15とで構成されている。このように、水接触型固形殺虫殺菌剤20にフロート部15を直接結合する場合は、殺虫殺菌効果が失われても全溶せずに外形がほぼそのまま残る非水溶性の水接触型固形殺虫殺菌剤20が好適である。
【0044】
かかる構成にあって、図4,図4bに示すように、前記殺虫殺菌剤保持体10は、該ガイド壁部5C,5Cと該バケット2Bの内周面とで囲まれた空間内に配置されている。かかる構成とすることにより、該バケット2Bの内周面の一部を用いて殺虫殺菌剤保持体10を水平方向の移動範囲を規制しつつ水位に合わせて鉛直方向に移動自在にガイドすることが可能となり、殺虫殺菌器具1Cの簡素化及びバケット2B内の省スペース化を図ることができる。
【0045】
なお、前記ガイド壁部5Cは、バケット本体部31の下端から上端にかけて非連続状に形成されていてもよい。また、ガイド壁部5Cは、必ずしも平面視L字状に形成されている必要はなく、例えば平面視C字状であってもよいし、さらには一対のガイド壁部5C,5Cをそれぞれ平板部材で構成し、これらをバケット2Bの中心部に向かって互いの距離が縮まるような平面視ハの字状に配設し、該ガイド壁部5C,5Cとバケット2Bの内周面とからなる空間内に該殺虫殺菌剤保持体10を配置する構成としてもよい。
【0046】
(実施例4)
以下、実施例4にかかる殺虫殺菌器具1Dについて説明するが、実施例1〜3と共通する部分については説明を簡略又は省略し、また図中では同じ符号を付すこととする。
【0047】
図5aに示すように、殺虫殺菌器具1Dは、雨水ます2A内に鉛直方向に固定されたガイド部材としてのガイド柱部5Dを備えている。また、図5bに示すように、殺虫殺菌剤保持体10は、円環状の水接触型固形殺虫殺菌剤20及び同形状のフロート部15が上下に積層されてなり、これにより該殺虫殺菌剤保持体10の中央には鉛直方向に開口した貫通孔39が形成されている。該貫通孔39の孔径は、ガイド柱部5Dの外径に比べて大きく、該ガイド柱部5Dが該貫通孔39内に挿通されている。
【0048】
かかる構成にあっては、殺虫殺菌剤保持体10が雨水ます2A内の水位の変動に応じて鉛直方向に移動可能であり、かつ水平方向の移動範囲は規制されている。
【0049】
なお、前記ガイド柱部5Dは、厳密に鉛直方向に沿って起立している必要は無く、略鉛直方向に沿って起立していればよい。また、かかる構成は、前記フロート部15の貫通孔39の内周縁と該ガイド柱部5Dの外周との接触によって前記殺虫殺菌剤保持体10の水平方向への移動範囲が規制されることから、余計な抵抗を排除するために前記貫通孔39及び前記ガイド柱部5Dの形状はそれぞれ平面視円形が望ましい。
【0050】
(実施例5)
以下、実施例5にかかる殺虫殺菌器具1Eについて説明するが、実施例1〜4と共通する部分については説明を簡略又は省略し、また図中では同じ符号を付すこととする。
【0051】
図6に示すように、殺虫殺菌器具1Eにおける殺虫殺菌剤保持体10の中央には貫通孔39が形成され、該貫通孔39内には、雨水ます2Aの内部に配置されるバケット2Bのバケット本体部31が挿通されている。さらに、バケット本体部31の下部には、スリット状の透水孔38が形成され、該雨水ます2A内の雨水が該バケット本体部31内にも流入可能となっている。
【0052】
かかる構成にあっては、殺虫殺菌剤保持体10が雨水ます2A内の水位の変動に応じて鉛直方向、すなわちバケット本体部31の深さ方向に沿って移動可能であり、かつ水平方向の移動範囲は規制されている。したがって、本実施例のバケット本体部31は、ガイド柱部5Eとしての機能も果たしている。そして、該水接触型固形殺虫殺菌剤20は、雨水ます2A及びバケット本体部31内の雨水に対して殺虫殺菌効果を発揮する。
【0053】
(実施例6)
以下、実施例6にかかる殺虫殺菌器具1Fについて説明するが、実施例1〜5と共通する部分については説明を簡略又は省略し、また図中では同じ符号を付すこととする。
【0054】
図7aに示すように、雨水ます2Aの内周面には、凹形状のガイド係合部5Eが略鉛直方向に沿って設けられている。一方、殺虫殺菌剤保持体10には、凸形状の被係合部40が設けられている。そして、該被係合部40が該ガイド係合部5E内に挿入されて互いに係合した状態となると、該殺虫殺菌剤保持体10は、該ガイド係合部5Eに沿って雨水ます2A内の水位に合わせて鉛直方向に移動自在となり、かつ水平方向の移動範囲が規制される。
【0055】
なお、図7bに示すように、略鉛直方向に沿って設けられた前記ガイド係合部5Eが凸形状とされ、一方、殺虫殺菌剤保持体10の被係合部40が、該ガイド係合部5Eに係合する凹形状とされていても勿論よい。
【0056】
本発明は、これまでに述べた実施例1〜6に限定されることはなく、適宜変更可能である。例えば、水接触型固形殺虫殺菌剤20にフロート部15を設ける構成としては、水接触型固形殺虫殺菌剤20とフロート部15とを互いに嵌着、螺着等させて直接結合させる構成でもよい。また、ガイド筒部5A,5B、及び容器部11には透水部として透水孔6,12が多数形成されているが、孔に限定されず、スリットであってもよいし、複数に限定されず、単数であってもよい。また、水滞留部として雨水ます2A、バケット2Bを例に挙げて説明したが、水滞留部としては、これらに限定されず、貯留槽など水が滞留する可能性のあるあらゆる場所が適用可能である。また、水溶性の水接触型固形殺虫殺菌剤20としては、銀系無機抗菌剤の他、水中における抗菌効果が高いことが知られている銅系のものであってもよい。また、水溶性の水接触型固形殺虫殺菌剤20の形状は、水に溶解しやすく、しかも容器部11内において流動性がよいため粒状が好ましいが、これに限定されることはなく、他の形状であってもよい。さらに、銅部材や銅合金部材などを水に接触させることにより殺虫殺菌効果が得られる非水溶性の水接触型固形殺虫殺菌剤が適宜使用されてもよい。また、殺虫殺菌剤保持体10の容器部11の形状やガイド筒部5Aの形状は、完全な円筒形状である必要は無く、一部が切欠された形状や角筒形状であっても勿論よい。また、ガイド筒部5Aは、厳密に鉛直方向に沿って配置される必要は無く、略鉛直方向に沿って配置されていればよい。
【符号の説明】
【0057】
1A〜1F 殺虫殺菌器具
2A 雨水ます(水滞留部)
2B バケット(水滞留部)
5A,5B ガイド筒部(ガイド部)
5C ガイド壁部(ガイド部)
5D,5E ガイド柱部(ガイド部)
5F ガイド係合部(ガイド部)
6 ガイド筒部の透水孔(透水部)
10 殺虫殺菌剤保持体
11 容器部
12 容器部の透水孔(透水部)
15 フロート部
20 水接触型固形殺虫殺菌剤
39 貫通孔
40 被係合部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の殺虫殺菌に用いられる水接触型固形殺虫殺菌剤を、水が滞留する水滞留部内に保持する殺虫殺菌器具であって、
該水接触型固形殺虫殺菌剤と該水接触型固形殺虫殺菌剤を水に浮かべるためのフロート部とを有し、該フロート部の浮力で該水滞留部内の水に浮かべられると、該水接触型固形殺虫殺菌剤が該水滞留部内の水に接触する殺虫殺菌剤保持体と、
該水滞留部内の水に浮かべられた該殺虫殺菌剤保持体を、該水滞留部内の水位に合わせて鉛直方向に移動自在とし、かつ水平方向の移動範囲を規制するガイド部と、
を備えていることを特徴とする殺虫殺菌器具。
【請求項2】
前記ガイド部が、前記水滞留部の内周面から突設されたガイド壁部であり、
前記殺虫殺菌剤保持体が、該ガイド壁部と該水滞留部の内周面とで囲まれ、かつ該水滞留部内の水が流入可能な空間内に配置されている
請求項1に記載の殺虫殺菌器具。
【請求項3】
前記ガイド部が、前記水滞留部内に略鉛直方向に沿って配設されたガイド筒部であり、
該ガイド筒部の側壁には透水部が形成され、該透水部を介して該水滞留部内の水が流入する該ガイド筒部内に、前記殺虫殺菌剤保持体が配置されている
請求項1に記載の殺虫殺菌器具。
【請求項4】
前記ガイド部が、前記水滞留部内に略鉛直方向に沿って配設されたガイド柱部であり、
前記殺虫殺菌剤保持体には、略鉛直方向に開口し、該ガイド柱部の外径より大きい孔径の貫通孔が形成され、
該ガイド柱部が該殺虫殺菌剤保持体の貫通孔内に挿通されている
請求項1に記載の殺虫殺菌器具。
【請求項5】
前記ガイド部が、前記水滞留部の内周面に略鉛直方向に沿って設けられたガイド係合部であり、
前記殺虫殺菌剤保持体は、該ガイド係合部に係合する被係合部を備え、
該被係合部が該ガイド係合部に係合した状態で、該殺虫殺菌剤保持体が、該ガイド係合部に沿って水滞留部内の水位に合わせて鉛直方向に移動自在であり、かつ水平方向の移動範囲が規制されている
請求項1に記載の殺虫殺菌器具。
【請求項6】
前記水接触型固形殺虫殺菌剤は、水溶性であり、
前記殺虫殺菌剤保持体が、
該水接触型固形殺虫殺菌剤が収容され、側壁に透水部が形成されている容器部を有し、該容器部に前記フロート部が配設されており、
該殺虫殺菌剤保持体の該容器部の透水部を介して該水接触型固形殺虫殺菌剤が前記水滞留部内の水と接触している
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の殺虫殺菌器具。
【請求項7】
前記水滞留部内に前記殺虫殺菌剤保持体が配置された初期状態において、前記容器部内の前記水接触型固形殺虫殺菌剤の上端部は該水滞留部内の水位より上方に位置している
請求項6に記載の殺虫殺菌器具。
【請求項8】
前記水接触型固形殺虫殺菌剤は多数の粒の集合体である
請求項6又は請求項7に記載の殺虫殺菌器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−23950(P2013−23950A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161125(P2011−161125)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】