説明

母乳パッド

【課題】 吸水コア体の位置ズレや型くずれを抑制するとともに装着性の向上を図る。
【解決手段】 内部に吸水コア体6を封装して内面シート体4と外面シート体5を一体化した積層素材10を素材として、乳房収納空間部15の頂頭部位に乳首収納空間部16を膨出形成した段付き椀状に形成されるとともに、乳首収納空間部16を中心として乳房収納空間部15の周面に内面シート体4の内周面に形状保持溝19Bを開口させ外面シート体5の外周面に形状保持リブ19Aを突出させて内層において構成部材を湾曲させて保持する複数の形状保持リブ部19を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産婦等により用いられて乳房から滲み出る母乳を吸収して保水する母乳パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
母乳パッドとしては、様々な形態のものが提供されており、紙製のいわゆる使い捨て型のものや洗濯することにより繰り返し使用することが可能な布製のものがある。布製母乳パッドは、紙製母乳パッドと比較して繰り返し使用による経済性やゴワゴワ感が少なく使い勝手がよい等の特徴を有している。母乳パッドは、一般に不織布等を素材とした透水性を有する内面シート体と、合成樹脂フィルムや撥水処理を施した不織布等を素材とした不透水性を有する外面シート体と、高吸水性のポリマ等を素材とする吸水コア体を積層した積層体を素材に形成される。
【0003】
母乳パッドは、内面シート体と外面シート体の相対する外周部位を全周に渡って接合することにより内部に吸水コア体を封装するとともに、全体が略椀形の立体形状に成形される。母乳パッドは、乳房から滲み出る母乳を内面シート体を介して吸収して吸水コア体内に取り込むとともに外面シート体により漏れを防止することにより、乳房を清潔かつムレの無い状態とするとともに母乳の漏れによる衣服の汚れ防止等の様々な機能を奏する(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
母乳パッドにおいては、非常にデリケートな女性の乳房にあてがわれて使用されることから、肌に優しくかつ使用勝手の向上を図る様々な対応が図られている。特許文献2や特許文献3には、内面シート体として透水性を有するとともに肌に優しい柔軟性を有する不織布等が用いられ、内面シート体と外面シート体の接合部位が直接肌に触れないようにする対応を図った母乳パッドが開示されている。また、特許文献4には、外面シート体の表面に滑り止め材を設けることにより、使用者の動作に対しても常に乳房にあてがわれた状態が保持されるようにして全体の位置ズレを低減するとともに授乳時における着脱操作が容易とする対応を図った母乳パッドが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−60409号公報
【特許文献2】特開平9−192154号公報
【特許文献3】特開2000−239903号公報
【特許文献4】特開平10−118112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の母乳パッドにおいては、上述したように内面シート体と外面シート体の内部に封装される吸水コア体が、乳房にフィットする柔軟性を必要とするとともに部分的な仕切による全体的な吸水特性の低下を防ぐ等のために内面シート体や外面シート体に接合されない構造となっている。したがって、母乳パッドにおいては、洗濯や授乳時の着脱操作等により吸水コア体が内部で位置ズレを生じて母乳を確実に吸収して上述した所定の作用を奏することが困難となったり、型くずれが生じる虞があった。
【0007】
上述した特許文献4に開示された母乳パッドは、外面シート体の表面に滑り止め材を設けることにより、使用者の動作に伴う全体の位置ズレを低減するとともに授乳時における着脱操作を容易とする配慮がなされている。しかしながら、かかる母乳パッドも、使用者の動き等にとなって内部における吸水コア体の位置ズレを防止する構成を備えるものでは無い。
【0008】
また、特許文献2や特許文献3には、接合処理を施すことにより硬くなる外周部位が直接肌に触れないようにすることによりデリケートな女性の乳房に優しい配慮が施された母乳パッドが開示されている。従来の母乳パッドにおいては、いずれも全体を包み込むように乳房にあてがわれることで頂頭部の内面に乳首が当たって使用されることにより、滲み出た母乳を内面シート体を介して吸水コア体により吸収して内部に保水する。しかしながら、かかる従来の母乳パッドにおいては、母乳の吸水性や漏れ防止の向上が図られるが、使用者の動き等により頂頭部の内面に乳首が強く圧迫されたり擦れるといった状態が生じことにより使い心地が損なわれる。
【0009】
さらに、母乳パッドにおいては、特許文献1に開示されるように、吸水コア体が高吸水性ポリマーと粉砕パルプの混合物からなり、粉砕パルプの混合割合により吸収した母乳の拡散性と保水性とともに柔軟性が異なる。すなわち、母乳パッドにおいては、肌に優しい柔軟性と型くずれが生じにくい適当な機械的強度とを有し、吸収性と保水性に優れた特性が必要とされる。従来の母乳パッドにおいては、かかる相反する特性を満足する理想的なものが提供されていない。
【0010】
したがって、本発明は、吸水コア体の位置ズレや全体の型くずれを抑制するとともに使用者に対する優しい配慮による装着性の向上を図る母乳パッドを提供することを目的に提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成する本発明にかかる母乳パッドは、少なくとも透水性を有する内面シート体と吸水コア体と不透水性を有する外面シート体とを重ね合わせた積層体を素材とし、内面シート体と外面シート体の相対する外周部位を全周に渡って接合して外周フランジ部を形成して上記吸水コア体を内層に封装するとともに、内部に略半球状の乳房収納空間部を構成した全体が略椀形の立体形状に成形される。母乳パッドは、乳房収納空間部の頂頭部を囲む所定領域部位を全体の曲率に対して小曲率に湾曲することにより乳房収納空間部の中央部に乳首収納空間部を膨出形成した段付き椀状とされる。母乳パッドは、乳首収納空間部と外周フランジ部との間の乳房収納空間部の周面部に、乳首収納空間部を中心として放射状に配列された複数の形状保持リブ部を形成する。母乳パッドは、各形状保持リブ部が、内面シート体の内周面側に形状保持溝が開口し外面シート体の外周面側に形状保持リブが膨出され、内面シート体と外面シート体の内層において吸水コア体を湾曲させて保持する。
【0012】
以上のように構成した母乳パッドは、乳房収納空間部内に乳房の全体を包み込むように納めるとともに乳首収納空間部内に乳首を納めるようにして用いられる。母乳パッドは、乳首から滲み出る母乳を内面シート体が取り込み、この内面シート体から吸水コア体が吸収して内部に拡散保水するとともに外面シート体により保水状態を保持する。母乳パッドは、乳房を清潔かつムレの無い状態とするとともに母乳の漏れによる衣服の汚れを防止する等の作用を奏する。母乳パッドは、頂頭部を囲んで乳房収納空間部に乳首収納空間部を膨出形成したことにより、使用者の動き等によっても非常にデリケートな乳首が強く圧迫されたり擦れるといった状態の発生を低減し、乳首から滲み出る母乳を確実に取り込むとともに装着性の向上が図られるようにする。
【0013】
母乳パッドにおいては、複数の形状保持リブ部により内面シート体と外面シート体の内層において吸水コア体を湾曲させて保持することで、位置ズレや撚れの発生を低減するとともに機械的強度も向上されて型くずれの発生が低減される。母乳パッドにおいては、内面シート体がその一部を形状保持リブ部を構成する形状保持溝内に押し込まれて椀型の立体形状に成形されることにより、成形歪みによる内面シート体の皺寄り発生が抑制されて平滑な内面を有する乳房収納空間部が形成される。したがって、母乳パッドにおいては、内面シート体に生じた皺が肌に擦れるといった状態の発生を低減して装着性の向上が図られるようにする。
【0014】
また、上述した目的を達成する母乳パッドは、乳首収納空間部よりも大径の消臭性或いは芳香性を有する介挿シート体を備え、この介挿シート体が、内面シート体と吸水コア体との間に乳首収納空間部と同心状態に介挿され、内層において形状保持リブ部により湾曲されて保持される。母乳パッドにおいては、介挿シート体が位置ズレ等の発生を低減されるとともに、母乳の臭いを消臭するようにする。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる母乳パッドによれば、内部に吸水コア体を封装して内面シート体と外面シート体を一体化した積層体を素材として、乳房収納空間部の頂頭部位に乳首収納空間部を膨出形成した段付き椀状に形成するとともに、乳房収納空間部の周面部に乳首収納空間部を中心として放射状に配列された複数の形状保持リブ部を形成する。母乳パッドによれば、乳房収納空間部に乳房の全体を納めるとともに乳首収納空間部内に乳首を納めるようにして用いられ、乳首から滲み出る母乳を内面シート体を介して吸水コア体が吸収して拡散保水することで乳房を清潔かつムレの無い状態とするとともに母乳の漏れによるによる衣服の汚れを防止し、さらに使用者の動き等によっても非常にデリケートな乳首が強く圧迫されたり擦れるといった状態の発生を低減することで装着性の向上が図られる。母乳パッドによれば、形状保持リブ部により全体の型くずれ等の発生が抑制されるとともに吸水コア体の位置ズレやよれの発生も低減され、肌に直接当たる内面シート体の皺寄りの発生も低減され装着性の向上が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態として示した母乳パッド1について、図面を参照して詳細に説明する。母乳パッド1は、図1及び図2に示すように全体が略椀形の立体形状に成形され、シャツやブラジャー等の下着の内側に介挿されて乳房2の全体を包み込むように当てがわれて使用されることにより、乳首3から滲み出る母乳を取り込んで乳房2を清潔かつムレの無い状態に保持するとともに母乳の漏れによる下着の汚れを防止する等の機能を奏する。母乳パッド1は、詳細を後述する構造により型くずれ等の発生も生じにくい。
【0017】
母乳パッド1は、図1及び図4に示すように内面シート体4と外面シート体5により外装体を構成し、この外装体の内部に吸水コア体6と、介挿シート体7と、第1ティッシュ紙8と、第2ティッシュ紙9を封装して構成する。母乳パッド1は、内層側から順に、内面シート体4、第1ティッシュ紙8、介挿シート体7、吸水コア体6、第2ティッシュ紙9、外面シート体5の順に重ね合わせた積層素材10を素材にして形成される。なお、母乳パッド1は、上述した6層構造の積層素材10を素材とすることに限定されず、少なくとも内面シート体4と外面シート体5と吸水コア体6を基材とする積層素材を用いて形成すればよい。
【0018】
母乳パッド1は、積層素材10に対して図5及び図6を参照して詳細を後述するプレス金型11を用いたプレス成形が施こされて、全体が略椀形の立体形状に成形される。プレス金型11は、詳細を後述するように雄型12と雌型13との間に所定形状のキャビティ14を構成して装填された積層素材10に対してプレス成形を施す。母乳パッド1は、内面シート体4を内層表面体としかつ外面シート体5を外層表面体として内部に乳房2を納める略半球状の乳房収納空間部15を形成するとともに、図1に示すようにその頂頭部を囲む所定領域部位が全体の曲率R1に対して小曲率R2に湾曲することにより乳房収納空間部15の中央部に乳首収納空間部16を膨出形成した段付き椀状に成形される。母乳パッド1は、内面シート体4と外面シート体5の相対する外周部位を適宜の接着剤17により接合して乳房収納空間部15の開口縁に沿って外周フランジ部18が形成される。
【0019】
母乳パッド1は、標準品として、外周フランジ部18の最外径が約120mm〜125mm、乳房収納空間部15の開口径が約105mm〜110mm、全体の高さ寸法が約40mmであり、乳首収納空間部16の開口径が約30mm、高さ寸法が約15mmに形成される。なお、母乳パッド1は、上述した標準品を基準としてサイズを異にした構成各部材により形成することで、小型や大型サイズのものが提供される。
【0020】
母乳パッド1は、内面シート体4が、肌に優しくかつ柔らかであり、乳首3から滲み出る母乳を内部へと効率的に取り込む透水性を有する例えばポリエステル繊維等の合成樹脂繊維、レーヨン等の半合成繊維或いは木綿等の天然繊維及びこれらの混合繊維からなる不織布を素材として形成される。内面シート体4は、上述した構成各部材の中で最大外径を有する部材であり、後述するプレス成形工程を施して略椀形の立体形状に成形される母乳パッド1の内層表面部材を構成する。
【0021】
母乳パッド1は、外面シート体5が、母乳を吸水コア体6内に内部に取り込んだ状態に保持する不透水性を有し、また外層表面部材を構成してプレス成形工程を施して形成した略椀形の立体形状を保持する剛性を有する。外面シート体5は、例えばポリエステル樹脂シートやポリアミド樹脂シートを素材とした、内面シート体4よりもやや小径のシート体が用いられる。なお、外面シート体5は、例えば不織布に上述した合成樹脂シートによりラミネートしたり樹脂コーティング等により撥水処理を施した不織布シート等を用いるようにしてもよい。
【0022】
外面シート体5は、上述したように内面シート体4等と重ね合わされて積層素材10を構成するとともに内面シート体4との外周部位を接着剤17を用いて接合することにより外周フランジ部18を形成する。外面シート体5は、内面シート体4よりもやや小径のシート体が用いられることから、図1に示すようにその外周縁が内面シート体4の外周縁よりも内側に位置して外周フランジ部18を形成する。したがって、母乳パッド1においては、外周フランジ部18が、やや剛性を有する外面シート体5の外周縁部位を柔らかで肌触りのよい内面シート体4の外周縁部で覆った構造となり、外面シート体5や接着剤17の硬化による硬い部位が肌に擦れたり接合の際に生じる皺寄り等による隙間からの母乳の垂れ落ちが防止される。
【0023】
なお、母乳パッド1は、内面シート体4と外面シート体5の外周部位を接着剤17を用いて全周に亘って接合するようにしたが、かかる接合構造に限定されるものでは無い。母乳パッド1は、樹脂コーティングを施した外面シート体5を用いる場合に、例えばホットプレス成形法を採用することにより外面シート体5の樹脂が溶融・硬化して内面シート体4との接合剤として機能させることで接着剤17を不要とするようにしてもよい。
【0024】
母乳パッド1は、吸水コア体6として、従来の母乳パッドに一般に用いられている吸水コア体と同等品、例えば高吸水性ポリマーに粉砕パルプを混合したある程度の厚みを有する混合物が用いられる。吸水コア体6は、後述する第1ティッシュ紙8及び第2ティッシュ紙に保持されて全体として内面シート体4や外面シート体5の、接着剤17により接合されて外周フランジ部18を形成する外周部位よりもやや小径のシート体として構成される。吸水コア体6は、後述するプレス成形工程を施して略椀形の立体形状に成形される母乳パッド1において、外面シート体5によりその形状を保持されるとともに内面シート体4と外面シート体5内に封装されて母乳パッド1の内層部材を構成する。
【0025】
吸水コア体6は、高吸水性ポリマーの混合割合が大きい場合に全体として柔軟性や吸水特性が大きくなるが、拡散性や保水性が低くなる特性を有する。また、吸水コア体6は、高吸水性ポリマーの混合割合が小さい場合に拡散性や保水性が大きくなるが、全体として硬くなるとともに素早い吸水性が低下する特性を有する。したがって、母乳パッド1は、高吸水性ポリマーと粉砕パルプの混合割合が適宜選択されることにより、例えば標準、硬め或いは柔らかめのものが提供される。
【0026】
母乳パッド1には、内面シート体4と吸水コア体6の間に介挿されて介挿シート体7が設けられる。介挿シート体7には、例えば上述した内面シート体4の素材繊維と同等繊維を素材とする不織布を基材とし、この基材に消臭機能を有するトルマリンや竹炭等の吸臭剤を含浸させた消臭シートや適宜の芳香エキスを含浸させた芳香シート或いは吸臭剤と芳香エキスを含浸させた消臭・芳香シートが用いられる。介挿シート体7には、少なくとも乳首収納空間部16よりもやや大径でありかつ内面シート体4よりも小径のシート体が用いられる。
【0027】
介挿シート体7は、後述するプレス成形工程を施して略椀形の立体形状に成形される母乳パッド1において、外面シート体5によりその形状を保持される。介挿シート体7は、内面シート体4と外面シート体5内に乳首収納空間部16と同心状態に介挿されて母乳パッド1の内層部材を構成する。介挿シート体7は、吸水コア体6に取り込んだ母乳から発生する気になる発酵臭を吸収して消臭したり芳香を発生させることにより、使用者に対して良好な使用状態が保持されるようにするとともに周囲への気兼ね等が低減されるようにする。
【0028】
母乳パッド1においては、高吸水性ポリマーと粉砕パルプを混合した吸水コア体6を層内において所定形状に保持するために、吸水コア体6が第1ティッシュ紙8と第2ティッシュ紙9により包み込まれる。第1ティッシュ紙8は、吸水特性が大きい内面シート体4と吸水特性がやや低い吸水コア体6の間に介在することにより、内面シート体4から取り込んだ母乳を一時保水して吸水コア体6に徐々に取り込ませる機能を奏する。すなわち、第1ティッシュ紙8は、内面シート体4から母乳を素早く吸収することによりこの内面シート体4のサラサラ感が保持されるようにするとともに、吸水コア体6に効率よく拡散、保水されるようにする。
【0029】
第1ティッシュ紙8は、介挿シート体7よりも大径であり、この介挿シート体7の存在領域においても吸水性を保持して母乳が効率よく取り込まれるようにする。また、第1ティッシュ紙8は、内面シート体4と外周シート体5を接合した外周フランジ部18の内周部位よりも小径とされることにより、内面シート体4と外周シート体5が直接接合されるようにして接合精度が損なわれないようにする。第1ティッシュ紙8は、プレス成形工程を施して略椀形の立体形状に成形される母乳パッド1において他の内層部材とともに外面シート体5によりその形状を保持される。
【0030】
第2ティッシュ紙9は、吸水コア体6と外周シート体5の間に介挿され、第1ティッシュ紙8とともに吸水コア体6を包み込むようにして吸水コア体6の全域で母乳の取り込みが行われるようにするとともに、やや硬い外周シート体5に対するクッション材として機能する。第2ティッシュ紙9も、内面シート体4と外周シート体5を接合した外周フランジ部18の内周部位よりも小径であり、内面シート体4と外周シート体5が直接接合されるようにして接合精度が損なわれないようにする。第2ティッシュ紙9は、プレス成形工程を施して略椀形の立体形状に成形される母乳パッド1において他の内層部材とともに外面シート体5によりその形状を保持される。
【0031】
母乳パッド1においては、上述したように内面シート体4と外周シート体5内に、吸水コア体6を包み込むようにして第1ティッシュ紙8と第2ティッシュ紙9が設けられる。母乳パッド1においては、吸収性に優れたこれら第1ティッシュ紙8と第2ティッシュ紙9が内面シート体4に取り込んだ母乳を素早く吸収するとともに吸収性と保水性に優れた吸水コア体6に取り込まれるようにすることで内面シート体4を乾いた状態にして乳房を清潔かつムレの無い状態に保持する。
【0032】
母乳パッド1には、図2及び図3に示すように、乳首収納空間部16と外周フランジ部18との間の乳房収納空間部15を構成する周面に、内面シート体4の内周面側から外面シート体5の外周面にそれぞれ突出する複数の形状保持リブ部19が形成される。各形状保持リブ部19は、乳首収納空間部16を中心として、乳房収納空間部15の周面に互いに円周方向に所定の間隔を以って放射状に配列されて形成される。
【0033】
各形状保持リブ部19は、外面シート体5の外周面に突出する外周リブ19Aを形成するとともに内面シート体4の内周面側に開口する形状保持溝19Bを形成した積層素材10を厚み方向に貫通する凸部として形成される。各形状保持リブ部19は、後述するようにプレス金型11を用いて積層素材10に対してプレス成形工程を施して椀形形状を成形する際に、同時に形成される。
【0034】
母乳パッド1においては、積層素材10に対してプレス成形工程を施すが、その際に積層素材10の構成各部材がシート状態から次第に椀型へと成形されるにしたがって乳房収納空間部15の構成部位が弛んで皺寄りが生じる虞がある。母乳パッド1においては、乳房2に直接当たる内面シート体4に生じた皺が肌に擦れることにより装着性を著しく低下させる。
【0035】
母乳パッド1においては、上述したように乳房収納空間部15の構成部位に複数の形状保持リブ部19を等間隔で形成することから、プレス成形工程の進行に伴って積層素材10の構成各部材の一部が内面側に形成される形状保持溝19B内に押し込まれながら次第に椀型に成形されていく。母乳パッド1においては、内面シート体4が張られた状態で成形されることにより皺寄り発生が抑制され、乳房収納空間部15の内面が平滑に形成されて装着性の向上が図られる。
【0036】
母乳パッド1においては、各形状保持リブ部19が、図3に示すように円周方向に対して互いに所定の間隔、例えば45°の角度間隔を以って放射状に配列され、それぞれ外面シート体5から所定の突出量を以って外方へと突出する形状保持リブ19Aを構成する。各形状保持リブ部19は、図4に示すように内面シート体4側に開口する形状保持溝19Bを構成する。各形状保持リブ部19は、かかる構成により内面シート体4と外面シート体5内に封装される上述した第2ティッシュ紙9と吸水コア体6と介挿シート体7と第1ティッシュ紙8の内層部材を、それぞれ円周方向の複数箇所において内面シート体4側から外面シート体5側に湾曲させることにより保持する。
【0037】
プレス金型11は、図5及び図6に示すように適宜の駆動機構により昇降動作される可動金型の雄型12と、固定金型の雌型13とから構成される。プレス金型11は、図6に示すように雌型13に対して雄型12が型締めされた状態でこれら雄型12と雌型13との間にキャビティ14を構成し、装填した積層素材10に対してプレス成形を施して上述した椀形形状の母乳パッド1を製造する。
【0038】
プレス金型11は、雄型12が、型合わせ面に突出して曲率R1の半球凸部からなる乳房収納空間形成雄型部21が形成されるとともに、この乳房収納空間形成雄型部21に連続して頂頭部を囲む所定の領域に小曲率R2の半球凸部からなる乳首収納空間形成雄型部22を形成する。雄型12には、乳房収納空間形成雄型部21の外周面に、円周方向に対して互いに所定の間隔、例えば45°の角度間隔を以って配列され、それぞれ所定の突出量を以って突出する複数の形状保持溝形成部23が形成される。雄型12は、各形状保持溝形成部23が詳細を省略するが幅方向の断面形状が略三角形とされ、リブ状凸部として乳房収納空間形成雄型部21の外周面に形成される。
【0039】
プレス金型11は、雌型13が、型合わせ面に彫り込まれて曲率R1の半球凹部からなる乳房収納空間形成雌型部24が形成されるとともに、この乳房収納空間形成雌型部24に連続して頂頭部を囲む所定の領域に小曲率R2の半球凹部からなる乳首収納空間形成雌型部25を形成する。雌型13には、乳房収納空間形成雌型部24に、上述した雄型12側の各形状保持溝形成部23に対応して、それぞれ所定の凹み量を有する複数の形状保持リブ形成部26が形成される。雌型13は、各形状保持リブ形成部26が、詳細を省略するが形状保持溝形成部23よりもやや大きな溝幅を有する幅方向の断面形状が略円弧状の凹溝として乳房収納空間形成雌型部24の内周面に形成される。
【0040】
以上のように構成されたプレス金型11には、図5に示すように雌型13に対して雄型12が上昇された型開き状態において、積層素材10が雄型12側に内面シート体4を対向させて雌型13上に位置決めして装填される。プレス金型11は、詳細を省略するが適宜の保持構造により積層素材10の外周部を保持した状態で雄型12が駆動されて雌型13に対する型締め動作が行われる。
【0041】
プレス金型11においては、型締め動作に伴ってキャビティ14内に積層素材10を押し込んで次第に椀型の成形を行うが、積層素材10が椀型へと成形されるにしたがい構成各部材に撓みが生じてキャビティ14内で円周方向の各箇所において多数の放射状の皺寄りを生じさせる。プレス金型11においては、型締めの最終工程において、雄型12の形状保持溝形成部23が雌型13の相対する形状保持リブ形成部26内に嵌合する。
【0042】
プレス金型11においては、この型締め工程時において形状保持溝形成部23が積層素材10の構成各部材を形状保持リブ形成部26内に押し込むようにしながら嵌合する。プレス金型11においては、これにより積層素材10の構成各部材に生じていた放射状の皺寄りを伸ばしながら成形を行うことにより、上述したように乳房収納空間部15に皺寄りの発生を抑制して平滑内面を有する母乳パッド1を成形する。
【0043】
プレス金型11においては、所定時間の経過後に雌型13から雄型12を離間させる片開き動作が行われて、キャビティ14内から成形された母乳パッド1の取り出しが行われる。プレス金型11は、上述した雄型12と雌型13とにより装填された積層素材10に対してプレス成形を施して、略半球状の乳房収納空間部15の頂頭部を囲んで乳首収納空間部16を膨出形成した段付き略椀形の立体形状であり、乳房収納空間部15を構成する内面シート体4の内周面に開口する形状保持溝19Bを有するとともに外面シート体5の外周面に形状保持リブ19Aを膨出形成した複数の形状保持リブ部19を有する母乳パッド1を製造する。
【0044】
母乳パッド1においては、上述したプレス金型11を用いて段付き略椀形の立体形状に成形されることで、従来の金型内等にヒータを設けて積層素材10を所定の温度に加熱した状態で成形を行うホットプレス成形法と比較して、加熱・冷却のタクトタイムを不要としてかつ温度管理も不要とする。したがって、母乳パッド1においては、製造工程の合理化と効率化を図って製造することが可能であり、また高精度の立体形状に成形される。なお、母乳パッド1においては、ホットプレス成形法により製造するようにしてもよいことは勿論である。
【0045】
母乳パッド1は、乳首収納空間部16内に乳首3を納めて乳房収納空間部15内に乳房2の全体を包み込むように用いられ、乳首3から滲み出る母乳を内面シート体4が取り込んでこの内面シート体4から吸水コア体6内に拡散保水することで乳房2を清潔かつムレの無い状態とするとともに母乳の漏れによる衣服の汚れを防止する等の作用を奏する。母乳パッド1は、使用者の動き等によっても乳首収納空間部16内に納めた非常にデリケートな乳首3が強く圧迫されたり擦れるといった状態の発生を低減し、乳首から滲み出る母乳を確実に取り込むとともに装着性の向上が図られるようにする。
【0046】
母乳パッド1においては、乳房収納空間部15の周面に形成した複数の形状保持リブ部19により内面シート体4と外面シート体5の内部において吸水コア体6を含む構成各部材を保持することにより、位置ズレやよれの発生を低減するとともに外面シート体5の機械的剛性も向上して型くずれの発生が低減される。母乳パッド1においては、内面シート体4が形状保持リブ部19を構成する形状保持溝19B内に押し込まれながら椀型の立体形状に成形されることにより、平滑な内面を有する乳房収納空間部15が形成される。したがって、母乳パッド1においては、乳房収納空間部15に生じた皺が肌に擦れるといった状態の発生を低減して装着性の向上が図られるようになる。
【0047】
なお、母乳パッド1においては、図3に示すように外面シート体5の外周面に剥離紙付きの粘着パッド27が接合されて提供される。母乳パッド1は、使用に際して粘着パッド27から剥離紙を剥離して下着の内側に介挿されて使用される。
【0048】
本発明は、上述した実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施の形態として示す母乳パッドの断面図である。
【図2】母乳パッドの一部切欠き斜視図である。
【図3】母乳パッドの正面図である。
【図4】母乳パッドの要部断面図である。
【図5】母乳パッドを成形するプレス金型の型開き状態の要部断面図である。
【図6】プレス金型の型締め状態の要部断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 母乳パッド、2 乳房、3 乳首、4 内面シート体、5 外面シート体、6 吸水コア体、7 介挿シート体、8 第1ティッシュ紙、9 第2ティッシュ紙、10 積層素材、11 プレス金型、12 雄型、13 雌型、14 キャビティ、15 乳房収納空間部、16 乳首収納空間部、17 接着剤、18 外周フランジ部、19 形状保持リブ部、19A 形状保持リブ、19B 形状保持溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも透水性を有する内面シート体と吸水コア体と不透水性を有する外面シート体とを重ね合わせた積層体を素材とし、上記内面シート体と上記外面シート体の相対する外周部位を全周に渡って接合して外周フランジ部を形成して上記吸水コア体を内層に封装するとともに、内部に略半球状の乳房収納空間部を構成した全体が略椀形の立体形状に成形され、
上記乳房収納空間部の頂頭部を囲む所定領域部位を全体の曲率に対して小曲率に湾曲することにより上記乳房収納空間部の中央部に乳首収納空間部を膨出形成した段付き椀状とされるとともに、上記乳首収納空間部と上記外周フランジ部との間の上記乳房収納空間部の周面部に上記内面シート体の内周面側に形状保持溝が開口し上記外面シート体の外周面側に形状保持リブが膨出されて上記吸水コア体を内層において湾曲させて保持する複数の形状保持リブ部を上記乳首収納空間部を中心として放射状に配列して形成したことを特徴とする母乳パッド。
【請求項2】
上記乳首収納空間部よりも大径の消臭性或いは芳香性を有する介挿シート体を備え、
上記介挿シート体が、上記内面シート体と上記吸水コア体との間に上記乳首収納空間部と同心状態に介挿されて、内層において上記形状保持リブ部により湾曲されて保持されることを特徴とする請求項1に記載の母乳パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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