説明

母乳パッド

【課題】 予め乳房の形状に沿った湾曲形状を呈し、母乳が乳房をつたって外部に漏れ出ることを抑制し、速やかに吸収することのできる母乳パッドの提供。
【解決手段】 吸液性パネル14の両側縁14c,14d沿いには縦軸Pの方向へ収縮可能な弾性部材21が配設されており、体液吸収層12の吸液性パネル14の存在域において、肌対向面から非肌対向面に向かって凹となる複数の圧縮凹部32を有する折曲案内域33が形成されている。折曲案内域33は、体液吸収層12の中央部に位置する中央圧縮部位34と横軸Qの方向へ延びる横断圧縮部位35とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、母乳パッドに関し、より詳しくは、予め乳房の形状に沿った湾曲状を呈し、母乳の漏れを確実に防止することのできる母乳パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、予め乳房の形状に沿った湾曲形状を有する母乳パッドは公知である。例えば、特許文献1には、不透液性の外面シートと、透液性の内面シートと、両シート間に介在した吸液性コアとを有し、その両側縁の内面側において一対の弾性部材が配設されており、弾性部材と並行して延びる、内面から外面に向かって凹曲する凹状溝が形成された母乳パッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−11705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の母乳パッドによれば、弾性部材と凹状溝との協働作用によって、母乳パッドを予め立体的なドーム形状とすることができ、また、保形性に優れている。したがって、着用操作中及び着用中において型崩れをするおそれはない。
【0005】
しかし、かかる母乳パッドでは、ライン状に延びる凹状溝以外の部位が乳房に向かって凸曲した形状となり、母乳パッドの内面全体が乳房の表面に当接せず、乳首から流れ出た母乳が吸液性コアに吸収されずに乳房を伝って下方へ向かって外部に漏れ出るおそれがある。また、乳首が凹条溝が形成された部位と対向する場合には、凹条溝の底部と乳首との間にスペースが形成されて母乳が溜まり、吸液性コアへの吸収、浸透が遅くなるとともに、着用者に違和感を与えるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、確実に乳房の形状に沿った湾曲形状を呈し、母乳が乳房をつたって外部に漏れ出ることを抑制し、速やかに吸収することのできる母乳パッドの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明が対象とするのは、縦軸及びそれに直交する横軸を有し、肌対向面及び非肌対向面と、非肌対向面側に位置する不透液性の外面シートと、前記外面シートの前記肌対向面側に位置する吸液性パネルを有する体液吸収層と、前記吸液性パネルの両側縁沿いにおいて前記縦軸の方向へ収縮可能に配置された弾性部材とを含む母乳パッドである。
【0008】
本発明の特徴とするところは、前記吸液性パネルの存在域において、前記肌対向面から前記非肌対向面に向かって凹となる複数の圧縮凹部を有する折曲案内域が形成されており、前記折曲案内域は、前記体液吸収層の中央部に位置する中央圧縮部位と前記横軸の方向へ延びる横断圧縮部位とを有することにある。
【0009】
本発明の実施態様の一つにおいて、前記吸液性パネルの存在域において、前記吸液性パネルの外周縁のうちの少なくとも外端縁沿いに形成された剛性付与域をさらに含み、前記折曲案内域と前記剛性付与域との間には非圧縮域が画成されている。
【0010】
本発明の他の実施態様の一つにおいて、前記体液吸収層は透液性の内面シートを有し、前記外面シートと前記内面シートとの前記吸液性パネルの前記外端縁の前記縦軸の方向の外方に延出する部分どうしが互いに重なりあってエンドフラップが形成されており、前記外面シートと前記内面シートとの前記吸液性パネルの両側縁の前記横軸の方向の外方に延出する部分どうしが互いに重なりあってサイドフラップが形成されており、前記弾性部材は、前記サイドフラップの一部を形成する前記外面シートのスリーブ内に固定されている。
【0011】
本発明のさらに他の実施態様の一つにおいて、前記外面シートの前記スリーブ内において、前記吸液性パネルの外側縁に沿って前記縦軸の方向へ延びる第1弾性部材と、前記第1弾性部材と前記横軸の方向において所与寸法離間し、前記スリーブの外端縁に沿って前記縦軸の方向へ延びる第2弾性部材とが固定されている。
【0012】
本発明のさらに他の実施態様の一つにおいて、前記横断圧縮部位は、前記横軸とほぼ重なるように配置されており、前記横断圧縮部位の形成された部分には、前記体液吸収層の前記肌対向面側どうしが当接するように折曲する折曲案内ラインが形成されている。
【0013】
本発明のさらに他の実施態様の一つにおいて、前記剛性付与域を形成する前記圧縮凹部の前記体液吸収層の厚さ方向における長さ寸法は、前記折曲案内域を形成する前記圧縮凹部の前記体液吸収層の前記厚さ方向における長さ寸法よりも小さくなっている。
【0014】
本発明のさらに他の実施態様の一つにおいて、前記外面シートの前記非肌対向面側には、複数の止着手段が配置されており、前記止着手段は、それぞれ、前記縦軸の方向において所与寸法離間している。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る母乳パッドによれば、吸液性パネルの両側縁沿いには縦軸の方向へ収縮可能な弾性部材が配設されていることから、半剛性の吸液性パネルをその収縮力によって湾曲させることができる。また、体液吸収層の吸液性パネルの存在域において、複数の圧縮凹部から形成された、体液吸収層の中央部に位置する中央圧縮部位と横軸の方向へ延びる横断圧縮部位とが画成されているので、母乳パッドを中央部がほぼ平らなお椀形状とすることができ、母乳を速やかにかつ確実に吸収させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態の母乳パッドを外面から見た斜視図。
【図2】母乳パッドを内面から見た平面図。
【図3】図2のIII−III線に沿う模式横断面図。
【図4】図2のIV−IV線に沿う模式縦断面図。
【図5】セパレータを仮想線で示す、セパレータを取り除いた状態の図2と同様の平面図。
【図6】母乳パッドが包装シートに被包されて形成された個包装体の一部破断斜視図。
【図7】母乳パッドを包装シートから取り出したときの図2と同様の平面図。
【図8】母乳パッドの使用状態を示す図。
【図9】図8におけるIX−IX線に沿う模式縦断面図。
【図10】第2実施形態における図2と同様の平面図。
【図11】第3実施形態における図2と同様の平面図。
【図12】第4実施形態における図2と同様の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1〜4を参照すれば、母乳パッド10は、縦軸P及びそれに直交する横軸Qを有し、肌対向面及びそれに対向する非肌対向面と、非肌対向面側に位置する不透液性の外面シート(体液防漏性シート)11と、体液吸収層12とを含む。体液吸収層12は、肌対向面側に位置して着用者の肌に当接する内面シート13と、内外面シート11,13間に介在する吸液性パネル14とを有する。
【0018】
また、母乳パッド10は、縦軸Pの外方へ凸曲する外端縁10a,10bと、横軸Qの方向において互いに対向して縦軸Pの方向へ延びる両側縁10c,10dとから画成された扁平形状を有する。母乳パッド10は、横軸Qから外端縁10a側に延びる第1部位18Aと、横軸Qから外端縁10b側に延びる第2部位18Bとを有する。
【0019】
外面シート11は、吸液性パネル14の非肌対向面側に位置する不透液性かつ透湿性のプラスチックフィルムから形成された第1シート15と、第1シート15の非肌対向面側に位置する、第2シート16とを有する。第2シート16は、第1シート15よりも外形寸法が大きく、質量約10〜40g/mの不透液性のSMS(スパンボンド・メルトブローン・スパンボンド)繊維不織布、スパンボンド繊維不織布、または、ポリエチレン製のプラスチックシートやそれらのラミネートシートから形成することができる。第1シート15と第2シート16とは、それらの内面に塗布された公知の接合手段、たとえば、ホットメルト接着剤(図示せず)を介して互いに接合されている。
【0020】
内面シート13は、吸液性パネル14の肌対向面側に位置する透液性の繊維不織布、多孔性プラスチックフィルム又はそれらのラミネートシートなどから形成されており、好ましくは、質量約10〜40g/mのエアスルー繊維不織布、スパンボンド繊維不織布から形成することができる。
【0021】
図2及び3を参照すれば、第2シート16は第1シート15の外周縁から延出した部分が母乳パッド10の内方へ折り返されることによってスリーブ20が形成されている。スリーブ20の内部には、吸液性パネル14の両側縁14c,14dとほぼ並行して縦軸Pの方向へ延びる弾性部材21が収縮可能に配設されている。また、スリーブ20には、図1に示すとおり、弾性部材21の収縮によって複数の皺22が形成されている。
【0022】
弾性部材21には、太さが約480〜940dtex、約1.5〜2.1倍に伸長された、合成ゴム、天然ゴムから作られたストリング状又はストランド状の弾性材料を好適に用いることができる。弾性部材21は、スリーブ20内においてホットメルト接着剤を介して縦軸Pの方向へ伸長下に固定されている。
【0023】
このように、吸液性パネル14の両側縁14c,14dに沿って弾性部材21が配置されていることによって、他のシート部材に比して剛性の高い半剛性を有する扁平状の吸液性パネル14を他のシート部材とともに肌対向面側が凹面形となるように変形させることができる。また、弾性部材21は第2シート16のスリーブ20内に配置されているので、その伸長応力が着用者の肌に直接作用することはなく、着用者の肌に違和感や圧迫痕を与えるおそれはない。
【0024】
吸液性パネル14は、縦軸Pの方向の外方へ向かって凸曲する外端縁14a,14bと、横軸Qの方向において互いに対向して縦軸Pの方向へ延びる両側縁14c,14dとを有する。また、吸液性パネル14は、いわゆる超吸収性ポリマー粒子(SAP)とフラッフパルプ、オプションとして熱可塑性合成繊維とを混合して所定の形状に賦型した吸液性コア23と、その保形性及び液拡散性の向上のために吸液性コア23全体を被包する透液性の第1及び第2コアラップシート24,25とを有する。第1コアラップシート24は、肌対向面側において折り返されており、第2コアラップシート25は、第1コアラップシート24の両側部と吸液性コア23との間に配置されている。なお、第1コアラップシート24と第2コアラップシート25とは、一枚のシート部材から形成されていてもよい。
【0025】
内外面シート11,13は、吸液性パネル14の全周縁から外方において互いに重ね合わされており、それらの一方の内面に塗布されたホットメルト接着剤を介して接合されることによって、吸液性パネル14の外端縁14a,14bの外方において横軸の方向へ曲状に延びるエンドフラップ27と、吸液性パネル14の両側縁14c,14dの外方において縦軸Pの方向へ延びるサイドフラップ28とを有する。
【0026】
図2に示すとおり、体液吸収層12の吸液性パネル14の存在域において、吸液性パネル14の外端縁14a,14b及び両側縁14c,14d沿いには、内方へ向かって延びる複数条の第1圧縮凹部30を有する剛性付与域31が形成されている。また、吸液性パネル14の両側縁間14c,14dにおいては、縦軸Pの方向と横軸Qの方向とにおいて間欠的に配置された第2圧縮凹部32を有する折曲案内域33が形成されている。
【0027】
折曲案内域33は、第2圧縮凹部32が比較的に密に配置された中央圧縮部位34と、中央圧縮部位34と交差して横軸Qの方向へ延びる第2圧縮凹部32が中央圧縮部位34に比して疎に配置された横断圧縮部位35とを有する。横断圧縮部位35を形成する第2圧縮凹部32は、横軸Qとほぼ重なるように配置されている。
【0028】
なお、剛性付与域及び折曲案内域31,33の形状、大きさ、第1及び第2圧縮凹部30,32の形状、大きさ、個数等は適宜変更することができる。
【0029】
図2及び図3(図3においては、体液吸収層12の厚さ方向をZで示す)に示すとおり、剛性付与域31及び折曲案内域33では、体液吸収層12が肌対向面側から非肌対向面側へ加圧されることによって第1及び第2圧縮凹部30,32が形成されている。第1圧縮凹部30の幅寸法W1は、約1.0〜3.0mm、第2圧縮凹部32(例えば、第2圧縮凹部32C)の幅寸法W2は約1.0〜3.0mm、長さ寸法L1は約5.0〜13.0mmである。また、中央圧縮部位34を形成する縦軸Pの方向に並んだ第2圧縮凹部32A,32Bの内端縁間の離間寸法L2は約1.0〜6.0mm、横軸Qの方向に並んだ第2圧縮凹部32C,32Dの外端縁間の離間寸法L3は、約20.0〜35.0mmである。なお、縦軸Pの方向に並ぶ第2圧縮凹部32A,32Bの長さ寸法は、横断圧縮部位35を形成する第2圧縮凹部32C,32Dの長さ寸法L1よりも小さくなっている。このように、各第2圧縮凹部32A〜32Dの大きさは、適宜異なるものであってもよい。
【0030】
図3に示すとおり、第2圧縮凹部32の厚さ方向Zにおける長さ寸法(溝の深さ)R1は、体液吸収層12の厚さの約70%の大きさであって、具体的には、約3.0〜5.0mmである。また、第1圧縮凹部30の厚さ方向Zの長さ寸法R2は、厚さ寸法R1とほぼ同じであってもよいが、好ましくは、その約70%の大きさであって、具体的には、約2.0〜3.5mmである。
【0031】
なお、折曲案内域33を形成する第2圧縮凹部32は、縦軸P及び/または横軸Qの方向へ連続して延びるライン状の圧縮溝によって形成することができる。しかし、その場合には、縦軸Pの方向に連続的に延びる圧搾溝と横軸Qの方向に連続的に延びる圧搾溝とが中央部において重なり合うように交差しないことが好ましい。このように、圧搾溝どうしが互いに重なり合う交差部分では、比較的に剛性が高くなり過ぎてシート部材が破れたり、必要以上に硬化して肌に違和感を与えるおそれがあるからである。
【0032】
体液吸収層12において、剛性付与域31と折曲案内域33とが形成されている以外の部分、すなわち、剛性付与域31と折曲案内域33との間には、ほぼ弧状に延びる非圧縮域38が画成されている。非圧縮域38では、剛性付与域31及び折曲案内域33と異なり体液吸収層12が圧縮されていないので、それらに比して厚さ寸法が大きく、クッション性に優れている。
【0033】
図4に示すとおり、母乳パッド10は、全体的に弾性部材21の収縮作用によって肌対向面側(内面側)が凹曲となる湾曲状を呈する。また、剛性付与域31が吸液性パネル14の外端縁14a,14b沿いに形成されていることによって、外端縁14a,14bの剛性が高くなり、弾性部材21の収縮作用と相俟ってエンドフラップ27が外面側に、すなわち、矢印Xの方向へ、反り返って又は折曲されている。これは、弾性部材21が第2シート16のスリーブ20に固定されていることによって、その収縮作用によって内面シート13が外面側に引っ張られており、また、外端縁14a,14bが剛性付与域31によって比較的に高剛性となることにより、エンドフラップ27と吸液性パネル14の外端縁14a,14bとの剛性差によってそこを起点として折れ曲がり易くなっていることによるものである。
【0034】
剛性付与域31は、吸液性パネル14の両側縁14c,14d沿い内方にも形成されているので、両側縁14c,14は剛性付与域31によって比較的に高剛性となり、エンドフラップ27と同様にサイドフラップ28も両側縁14c,14dを起点として母乳パッド10の外側に向かって折れ曲がり易くなっている。また、弾性部材21を収縮させて母乳パッド10を湾曲させる場合には、第1弾性部材21が配設された領域における内面側(肌対向面側)の部位が外面側の部位よりもさらに湾曲して着用者の乳房に沿った形状を形成し難くなるおそれがあるところ、吸液性パネル14の両側縁14c,14dに沿って弾性部材21と重なるように剛性付与域31を賦与することによって、かかる内面側の部位の過度の湾曲を抑制することができる。また、両側縁14c,14dに剛性付与域31が形成されている場合には、サイドフラップ28に形成された皺22を第1圧縮凹部30の形状に沿って規則的な形成することができる。それにより、皺22による締め付けが局所的に強くなることはなく、肌を徒らに刺激したり、不快感を与えるおそれはない。また、皺22がランダムではなく規則的な形状となることによって、見た目にも好ましい外観を有することができる。
【0035】
また、母乳パッド10の中央部は、折曲案内域33の中央圧縮部位34が形成されていることによって、ほぼ平らな形状を有している。折曲案内域33には比較的に密に第2圧縮凹部32が形成されていることによって剛性が高くなっており、それを取り囲む非圧縮域38が弾性部材21の収縮作用によって湾曲形状を有するのに対し、その収縮力に抗してほぼ平らな形状を維持している。
【0036】
さらに、横断圧縮部位35が形成されることによって、母乳パッド10の第1部分18Aの肌対向面と第2部分18Bの肌対向面とが向い合うように折り曲げられ、弾性部材21及び中央圧縮凹部位34と協働して母乳パッド10をより湾曲状又は立体的なお椀形状とすることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、肌対向面側から非肌対向面側に向かって第1及び第2圧縮部30,32が形成されているので、それらの外形状が外面シート11の外面から視認され難いといえるが、前記のとおり、第2圧縮凹部32は体液吸収層12の厚さ寸法に対して約70%以上の深さを有するものであるから、その外形状が外面シート11の外面から視認されることがある。また、後記の第2圧縮凹部32の形成方法によって、外面から視認されるのみではなく、外面シート11の非肌対向面側に第2圧縮凹部32に対応して凹凸形状が形成されてもよい。
【0038】
<剛性付与域31と折曲案内域33との形成方法>
剛性付与域31と折曲案内域33は、この種の衛生用品において一般的に用いられているエンボス加工によって形成されうるものであるが、その一例を述べれば、以下のとおりである。
【0039】
まず、母乳パッド10の製造工程におけるアッセンブリ工程部において、第1コアラップシート24の材料である繊維不織布から形成された第1連続ウエブ(キャリアーシート)を機械方向へ搬送する。次に、第1連続ウエブ上に質量約200〜250g/mのフラッフパルプと質量約40〜80g/mの吸収性ポリマー粒子(SAP)とを混合した吸収性・離散性材料を積層し、さらにその上に第2コアラップシート25の材料である繊維不織布から形成された第2連続ウエブを重ねて、第1連続ウエブのうちの第2連続ウエブから延出する両側部を内方へ向かって折り曲げて第2連続ウエブの上面に重ね合わせる。その後、さらに上面側から内面シート13の材料である第3連続ウエブを重ねた後、それらから形成された連続積層体をエンボス加工工程部に搬送する。
【0040】
エンボス加工工程部においては、連続積層体の上方に位置する周面に複数のエンボスピンが形成されたエンボスロールと、連続積層体の下方に位置する周面がフラットなアンビルロールとが連続積層体を挟圧した状態で対向して配置されている。連続積層体は、両ロール間を通過するときにそれらによって挟圧されてエンボスロール側において、その周面に形成されたエンボスピンによって第1及び第2圧縮凹部30,32が形成される。なお、エンボスロールは、ゲージ圧(線圧)が約0.4〜7.5kgf/cmであって、約50〜60℃に加熱されており、各エンボスピンの高さ寸法は、連続積層体の厚さ寸法の約50〜70%の大きさ、具体的には、約2.0〜4.0mmである。
【0041】
また、例えば、約60℃に加熱されたエンボスロールのゲージ圧が約6.0kgf/cm、エンボスピンの高さが連続積層体の厚さ寸法の約75%以上であって、フラットアンビルがほぼ常温であるという条件において、連続積層体にエンボス加工を施す場合には、前記のように、母乳パッド10の中央圧縮部位34において第2圧縮凹部32に対応した凹凸状の外形状を外面シート11の非肌対向面側に形成することができる。
【0042】
図5に示すとおり、母乳パッド10の外面、すなわち、外面シート11の非肌対向面側には、感圧性接着剤から形成された、母乳パッド10をブラジャーや衣服に固定するための複数の止着手段41が配置されている。止着手段41は、縦軸Pの方向へ所与寸法離間して複数配置されており、使用前の状態においてセパレータ42に剥離可能に被覆されている(図1参照)。このように止着手段41が複数に分離されている理由について述べると、たとえば、止着手段41が縦軸Pの方向へ一連に延びている場合には、母乳パッド10をブラジャーの内面に固定する際に、セパレータ42を止着手段41から剥がした後に止着手段41の部分どうしを誤って重ね合わせ、母乳パッド10をブラジャーの内面に安定的に固定することができなくなるおそれがある。特に、本実施形態のように、弾性部材21によって母乳パッド10を予め湾曲させる場合には、エンドフラップ27とサイドフラップ28とが交差する隅部近傍にも止着手段41を配置する必要があるところ、止着手段41が連続して配置されている場合には弾性部材21の配設されたサイドフラップ28が収縮して止着手段41の部分どうしが誤って止着される事態が起こりやすい。したがって、かかる事態を防ぐために、止着手段41を縦軸Pの方向へ所与寸法離間した複数部分に区分して形成することが好ましい。
【0043】
一方、本実施形態のように、止着手段41が複数形成されている場合において母乳パッド10をブラジャーの内面に固定するときには、まず、止着手段41のうちの中央に位置する部分41Aをブラジャーの内面の中央近傍に止着し、次に、その上下に位置する部分41B,41Cのいずれかを順に又はそれらをほぼ同時に止着することによって、スムーズに止着することができ、止着手段41が部分的に重なり合うおそれもない。なお、かかる効果を奏するために、止着手段41Aの縦軸Pの方向における長さ寸法R3は約5.0〜25.0mm、より好ましくは、約10.0〜20.0mm、また、止着手段41どうしの離間寸法R4は約5.0〜25.0mm、より好ましくは、10〜20.0mmとすることができる。離間寸法R4が5.0mm以下の場合には、離間寸法R4が小さすぎて、中央部分41Aをブラジャーの内面に止着したときに、それとほぼ同時に上下部分41B,41Cもブラジャーの内面の予定していない部分に誤って止着されてしまうおそれがある。一方、離間寸法R4が25.0mm以上の場合には、止着手段41A,41B,41Cどうしの離間部位が着用者の肌から浮き上がるようにして離間して、母乳パッド10の位置ずれを生じ、母乳が外部に漏れ出るおそれがある。
【0044】
なお、前記のように、折曲案内域33において第2圧縮凹部32に対応する凹凸形状が外面シート11の肌対向面に形成される場合には、中央圧縮部位34と対向する止着手段41Aの外面が凹凸状となる。かかる場合には、止着手段41Aの全面がブラジャーの内面に固定されず部分的に止着されることになるので、止着及び取り外し操作が容易となる。
【0045】
図6は、母乳パッド10が繊維不織布製又はプラスチックフィルム製の包装シート44に被包されて形成された個包装体45の斜視図、図7は、包装シート44から母乳パッド10を取り出した後の母乳パッド10の図2と同様の内面から見た平面図、図8は、母乳パッド10の使用状態を示す図、図9は、図8のIX−IX線に沿う模式縦断面図である。なお、図9において、説明の便宜上、乳房53と乳首54は仮想線で示し、それらと母乳パッド10とを離間させている。
【0046】
図6に示すとおり、個包装体45は、外側縁45a,45bと両端縁45c,45dとから画成された略矩形状であって、上面側に位置する母乳パッド10を取り出すための取り出し口46と、互いに重なり合う包装シート44の部分どうしを熱融着手段またはホットメルト接着剤などの接着剤を介してライン状にシールすることによって形成されたサイド封止部47とを有する。かかる個包装体45の内部において、母乳パッド10は、横軸Qに沿って2つ折りにされた状態で包装シート44に被包されており、セパレータ42の外面側に塗布された接着剤49を介して包装シート44の内面に止着されている。なお、個包装体45の包装態様の詳細については省略するが、取り出し口46近傍を摘んで母乳パッド10の被包されている側へ、すなわち、矢印Yの側へ引っ張ることによって、包装シート44を展開して母乳パッド10を取り出すことができる。
【0047】
図7に示すとおり、包装シート44から取り出した母乳パッド10には、両側縁間10c,10dを横軸に沿って延びる折曲案内ライン50が形成される。折曲案内ライン50は、折曲案内域33の横断圧縮部位35を形成する第2圧縮凹部32と重なるように形成される。
【0048】
折曲案内ライン50の形状にも依るが、母乳パッド10を横断する方向に折曲案内ライン50が比較的に深く形成された場合には、母乳パッド10が所要の湾曲形状を形成することができず、折曲案内ライン50の配置された部位が外方へ凸となって突出部位が形成され、乳房と母乳パッド10の内面との間にスペースが形成されるおそれがある。しかし、このように、折曲案内ライン50と重なる位置に横断圧縮部位35が形成されていることによって、母乳パッド10を折曲状態から展開したときに、横断圧縮部位35によって剛性が付与されていることによって、それがリブのような機能を果たし、折曲案内ライン50が大きく折れ曲がった状態のまま保持されることはない。それにより、母乳パッド10は、その内面全体が乳房に当接するように立体的な湾曲形状を有することができる。
【0049】
また、折曲案内ライン50は、母乳パッド10を折曲状態から展開したときに、母乳パッド10の第1部分18Aと第2部分18Bとが湾曲形状に広がるように作用するので、母乳パッド10の湾曲形状の形成、維持に寄与するものであるともいえる。
【0050】
図8及び図9に示すとおり、母乳パッド10はセパレータ42を剥がした後に、止着手段41を介してブラジャー52の内面に止着する。母乳パッド10は、その使用状態において、全体として湾曲した形状を有し、着用者の乳房53にその内面全体が当接しており、中央圧縮部位34の位置する中央部は乳首54に対向している。中央部はほぼ平らな形状を有しており、中央部が乳首54と対向することによって、該部位は乳首54の先端と面状に当接することができ、乳首から流れ出る母乳を確実かつ速やかに吸液性パネル14に吸収させることができる。また、エンドフラップ27が外方(ブラジャー52の内面側)に向かって折曲されていることによって、シート材料のカットエッジであるエンドフラップ27の端縁が直接着用者の肌に接触することはなく、着用者に違和感や痒みを与えるおそれはない。
【0051】
さらに、前記のとおり、母乳パッド10は、着用前の状態において立体的な湾曲形状またはお椀形状を呈するものであるから、着用操作中及び着用中においてそれを平らにしようとする力が作用しても、湾曲形状を維持することができる。なお、熱処理によって予め立体形状を形成することもできるが、その場合には、シート材料が硬化して柔軟性が著しく損なわれるおそれがある。一方、本実施形態の母乳パッド10のように弾性部材21と折曲案内域33の作用によって湾曲形状とする場合には、シート材料の柔軟性が損なわれることはないので、全体として肌当たりが良好であって柔軟性に優れている。
【0052】
<第2実施形態>
図10は、本発明の第2実施形態における図2と同様の平面図である。母乳パッド10の基本的な構成は第1実施形態と同様であるので、相違する点について以下に述べる。
【0053】
本実施形態においては、サイドフラップ28において、縦軸Pの方向へ延びる第1弾性部材59とそれに並行して延びる第2弾性部材60とが収縮可能に配設されている。具体的には、第1弾性部材59と第2弾性部材60とは、第2シート16のスリーブ20内に配設されており、第1弾性部材59は吸液パネル14の両側縁14c,14dに沿って配置され、第2弾性部材60はスリーブ20の外側縁(母乳パッド10の両側縁10c,10d)に沿って配置されている。
【0054】
このように、スリーブ20内に第1及び第2弾性部材59,60が配設されている場合には、第1実施形態のようにスリーブ20に単数の弾性部材21が配設されている場合に比べて、それらの収縮力の協働作用によって母乳パッド10をより湾曲形状とすることができる。また、第2弾性部材60がスリーブ20の外側縁に沿って配置されているので、その収縮力によってサイドフラップ28が強く収縮してエンドフラップ27をより確実に外方へ折曲させることができる。
【0055】
<第3実施形態>
図11は、本発明の第3実施形態における図2と同様の平面図である。母乳パッド10の基本的な構成は第1実施形態と同様であるので、相違する点についてのみ以下に述べる。
【0056】
本実施形態では、折曲案内域33を形成する第2圧縮凹部32が吸液性パネル14の両側縁14c,14d間の比較的に広範囲に亘って縦軸P及び横軸Qの方向に間欠的かつ散点的に配置されており、いわば、千鳥状に配置されている。第2圧縮凹部32がかかる配置パターンで配置されていても、折曲案内域33において中央圧縮部位34と横断圧縮部位35とに対応する部位が形成されているといえるので、第1実施形態と同様に本願発明における所望の効果を奏するものである。したがって、かかる必須の構成態様を有する限りにおいて、このように第2圧縮凹部32が比較的に広範囲に亘って不規則かつ複数配置されていてもよい。
【0057】
<第4実施形態>
図12は、本発明の第4実施形態における図2と同様の平面図である。母乳パッド10の基本的な構成は第1実施形態と同様であるので、相違する点について以下に述べる。
【0058】
本実施形態の場合には、第1及び第2圧縮部30,32が大小の略ハート形状であって、また、折曲案内域33を形成する第2圧縮凹部32が母乳パッド10の中央部から外周に向かって放射状に配置されている。このように、第2圧縮凹部32が全方向に間欠的に配置されている場合であっても、中央圧縮部位34と横断圧縮部位35とに相当する部位が形成されているといえるので、実施形態1と同様の効果を奏することができる。ただし、他の実施形態に比して、非圧縮域38の総面積が小さいので、母乳パッド10を所望の湾曲形状とし難くものといえる。したがって、第1実施形態に比して、弾性部材21として高い伸長応力を有する弾性材料を配置するか、弾性材料を複数条配置するなどしてその収縮力を高めることが必要となる。
【0059】
母乳パッド10を構成する各構成部材には、本明細書に記載されている材料のほかに、この種の物品において通常用いられている各種の公知の材料を制限なく用いることができる、また、本発明の明細書及び特許請求の範囲において、「第1」および「第2」の用語は、同様の要素、位置などを単に区別するために用いられている。また、本発明は、各実施形態どうしを組み合わせた態様を含むものであって、さらに、特許請求の範囲の従属項に記載した技術的事項を組み合わせた態様を含むものである。
【符号の説明】
【0060】
10 母乳パッド
11 外面シート
12 体液吸収層
13 内面シート
14 吸液性パネル
14a,14b 吸液性パネルの外端縁
14c,14d 吸液性パネルの両側縁
20 スリーブ
21 弾性部材
27 エンドフラップ
28 サイドフラップ
30 第1圧縮凹部
31 剛性付与域
32 第2圧縮凹部
33 折曲案内域
34 中央圧縮部位
35 横断圧縮部位
38 非圧縮域
41 止着手段
41A,41B,41C 止着手段
50 折曲案内ライン
59 第1弾性部材
60 第2弾性部材
P 縦軸
Q 横軸
R1 第2圧縮凹部の厚さ方向における長さ寸法
R2 第1圧縮凹部の厚さ方向における長さ寸法
R4 止着手段どうしの縦軸の方向における離間寸法
Z 体液吸収層の厚さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦軸及びそれに直交する横軸を有し、肌対向面及び非肌対向面と、非肌対向面側に位置する不透液性の外面シートと、前記外面シートの前記肌対向面側に位置する吸液性パネルを有する体液吸収層と、
前記吸液性パネルの両側縁沿いにおいて前記縦軸の方向へ収縮可能に配置された弾性部材とを含む母乳パッドにおいて、
前記吸液性パネルの存在域において、前記肌対向面から前記非肌対向面に向かって凹となる複数の圧縮凹部を有する折曲案内域が形成されており、
前記折曲案内域は、前記体液吸収層の中央部に位置する中央圧縮部位と前記横軸の方向へ延びる横断圧縮部位とを有する前記母乳パッド。
【請求項2】
前記吸液性パネルの存在域において、前記吸液性パネルの外周縁のうちの少なくとも外端縁沿いに形成された剛性付与域をさらに含み、前記折曲案内域と前記剛性付与域との間には非圧縮域が画成されている請求項1に記載の母乳パッド。
【請求項3】
前記体液吸収層は透液性の内面シートを有し、前記外面シートと前記内面シートとの前記吸液性パネルの前記外端縁の前記縦軸の方向の外方に延出する部分どうしが互いに重なりあってエンドフラップが形成されており、前記外面シートと前記内面シートとの前記吸液性パネルの両側縁の前記横軸の方向の外方に延出する部分どうしが互いに重なりあってサイドフラップが形成されており、前記弾性部材は、前記サイドフラップの一部を形成する前記外面シートのスリーブ内に固定されている請求項1または2に記載の母乳パッド。
【請求項4】
前記外面シートの前記スリーブ内において、前記吸液性パネルの外側縁に沿って前記縦軸の方向へ延びる第1弾性部材と、前記第1弾性部材と前記横軸の方向において所与寸法離間し、前記スリーブの外端縁に沿って前記縦軸の方向へ延びる第2弾性部材とが固定されている請求項3に記載の母乳パッド。
【請求項5】
前記横断圧縮部位は、前記横軸とほぼ重なるように配置されており、前記横断圧縮部位の形成された部分には、前記体液吸収層の前記肌対向面側どうしが当接するように折曲する折曲案内ラインが形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の母乳パッド。
【請求項6】
前記剛性付与域を形成する前記圧縮凹部の前記体液吸収層の厚さ方向における長さ寸法は、前記折曲案内域を形成する前記圧縮凹部の前記体液吸収層の前記厚さ方向における長さ寸法よりも小さい請求項1〜5のいずれかに記載の母乳パッド。
【請求項7】
前記外面シートの前記非肌対向面側には、複数の止着手段が配置されており、前記止着手段は、それぞれ、前記縦軸の方向において所与寸法離間している請求項1〜6のいずれかに記載の母乳パッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−219383(P2012−219383A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83141(P2011−83141)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】