説明

母乳中サイトカイン/ケモカイン値に基づく乳児アトピー性皮膚炎の発症予知

【課題】母乳中に含まれる多様なサイトカイン/ケモカインのレベルと、アトピー性皮膚炎の発症との関連性を明らかにし、これに基づき、母乳中サイトカイン/ケモカイン値に基づく乳児アトピー性皮膚炎の発症予知方法を提供すること。
【解決手段】乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定する方法であって、
(1)当該乳児が摂取する初乳中のIL−1β、IL−6、IL−7、IL−12p40、IL−13及びMIP−1αからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカイン、或いは当該乳児が摂取する成熟乳中のIL−1α、IL−4、IL−6、IL−7、IL−12p40、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2及びMIP−1αからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカイン又はケモカインの濃度を測定すること;及び
(2)(1)において測定したサイトカイン又はケモカインの濃度と、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクとを相関付けること
を含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、母乳中サイトカイン/ケモカイン値に基づく乳児アトピー性皮膚炎の発症予知方法、及びそれに使用する診断薬等に関する。
【背景技術】
【0002】
母乳栄養は、乳児におけるアトピー性皮膚炎(AD)等の多くのアレルギー性疾患の発症に関連する1つの因子である。2001年における17の過去の研究のメタ解析は、生後3カ月間の母乳栄養が、アトピー性皮膚炎の成立に対して防御的な効果を有することを示している(非特許文献1)。しかしながら、1つの報告は、母乳栄養は防御的効果がないことを報告しており(非特許文献2)、他の報告はアトピー性皮膚炎を発症するリスクを増加させることを示唆している(非特許文献3及び4)。従って、母乳栄養がアトピー性皮膚炎の発症から乳児を予防したことを示した研究は1つもない。母乳栄養はアトピー性皮膚炎を予防するかもしれないが、母乳栄養とアトピー性皮膚炎の発症との間の関係が確証されているとはいえない。アトピー性皮膚炎及び他のアレルギー性疾患に関連する母乳栄養の効果についての研究が結論を見ていない理由の1つは、母乳の構成因子の複雑さ、及び乳児における腸環境と免疫系との間の相互作用の複雑さにあるであろう。
【0003】
ヒト母乳は、多様なサイトカイン/ケモカインを含有する(非特許文献5)。それらのレベルは、母親のアレルギー状態等によって、個々の女性の間で大きく異なっている(非特許文献6〜11)。特に重要なのは、ヒト母乳中に存在するいくつかのサイトカインは、胃において消化されず、むしろ乳児の消化管においてその生物学的な活性を維持するという事実である(非特許文献5及び12)。母乳を介して免疫調節作用を発揮するかもしれない多くの炎症性及び抗炎症性サイトカインが母乳中に含有されていることを考えると、母乳に含まれる幾つかのサイトカイン/ケモカインは乳児のアトピー性皮膚炎の発症を予防するように作用すると考えられているが、他のサイトカイン/ケモカインは、逆に作用するかもしれない。
【0004】
近年、多くの研究者が母乳栄養のアレルギー関連効果を明らかにするため、母乳サイトカインを調べている。何人かの研究者が、母乳中に含有される特定のサイトカインがアレルギー疾患の成立に関連している可能性を示している(非特許文献13及び14)。しかしながら、これらの研究の結果は明確なものではない。また、過去の研究は異なる時期に採取した母乳を使用している。アトピー性皮膚炎に関連する初乳及び成熟乳の双方におけるサイトカイン/ケモカインを調べた研究はほとんどない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Gdalevich M, Mimouni D, David M, Mimouni M. Breast-feeding and the onset of atopic dermatitis in childhood: a systematic review and meta-analysis of prospective studies. J Am Acad Dermatol. 2001;45(4):520-527.
【非特許文献2】Ludvigsson JF, Mostrom M, Ludvigsson J, Duchen K. Exclusive breastfeeding and risk of atopic dermatitis in some 8300 infants. Pediatr Allergy Immunol. 2005;16(3):201-208.
【非特許文献3】Benn CS, Wohlfahrt J, Aaby P, Westergaard T, Benfeldt E, Michaelsen KF, et al. Breastfeeding and risk of atopic dermatitis, by parental history of allergy, during the first 18 months of life. Am J Epidemiol. 2004;160(3):217-223.
【非特許文献4】Pesonen M, Kallio MJ, Ranki A, Siimes MA. Prolonged exclusive breastfeeding is associated with increased atopic dermatitis: a prospective follow-up study of unselected healthy newborns from birth to age 20 years. Clin Exp Allergy. 2006;36(8):1011-1018.
【非特許文献5】Field CJ. The immunological components of human milk and their effect on immune development in infants. J Nutr. 2005;135(1):1-4.
【非特許文献6】Bottcher MF, Jenmalm MC, Bjorksten B, Garofalo RP. Chemoattractant factors in breast milk from allergic and nonallergic mothers. Pediatr Res. 2000;47(5):592-597.
【非特許文献7】Bottcher MF, Jenmalm MC, Garofalo RP, Bjorksten B. Cytokines in breast milk from allergic and nonallergic mothers. Pediatr Res. 2000;47(1):157-162.
【非特許文献8】Laiho K, Lampi AM, Hamalainen M, Moilanen E, Piironen V, Arvola T, et al. Breast milk fatty acids, eicosanoids, and cytokines in mothers with and without allergic disease. Pediatr Res. 2003;53(4):642-647.
【非特許文献9】Prokesova L, Lodinova-Zadnikova R, Zizka J, Kocourkova I, Novotna O, Petraskova P, et al. Cytokine levels in healthy and allergic mothers and their children during the first year of life. Pediatr Allergy Immunol. 2006;17(3):175-183.
【非特許文献10】Rigotti E, Piacentini GL, Ress M, Pigozzi R, Boner AL, Peroni DG. Transforming growth factor-beta and interleukin-10 in breast milk and development of atopic diseases in infants. Clin Exp Allergy. 2006;36(5):614-618.
【非特許文献11】Marek A, Zagierski M, Liberek A, Aleksandrowicz E, Korzon M, Krzykowski G, et al. TGF-beta(1), IL-10 and IL-4 in colostrum of allergic and nonallergic mothers. Acta Biochim Pol. 2009;56(3):411-414.
【非特許文献12】Calhoun DA, Lunoe M, Du Y, Staba SL, Christensen RD. Concentrations of granulocyte colony-stimulating factor in human milk after in vitro simulations of digestion. Pediatr Res. 1999;46(6):767-771.
【非特許文献13】Kalliomaki M, Ouwehand A, Arvilommi H, Kero P, Isolauri E. Transforming growth factor-beta in breast milk: a potential regulator of atopic disease at an early age. J Allergy Clin Immunol. 1999;104(6):1251-1257.
【非特許文献14】Oddy WH, Halonen M, Martinez FD, Lohman IC, Stern DA, Kurzius-Spencer M, et al. TGF-beta in human milk is associated with wheeze in infancy. J Allergy Clin Immunol. 2003;112(4):723-728.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
母乳中の多様なサイトカイン/ケモカインの存在と、母乳を摂取した乳児におけるアトピー性皮膚炎の発症との間の可能性のある関連性は、非常に興味深い。幾つかのサイトカインやケモカインがネットワークにおいて機能し、乳児免疫系の異常な活性化を統合することにより、アトピー性皮膚炎に関連するかもしれない。なぜなら、多様なサイトカイン/ケモカインがアトピー性皮膚炎の病態に寄与しているので、アトピー性皮膚炎の成立に影響を与える母乳中の個々のサイトカインやケモカインをバラバラに評価するのは効率的でない。従って、多くの種類の母乳サイトカイン/ケモカインの量を同時に評価することは価値あることである。
【0007】
本発明の目的は、母乳中に含まれる多様なサイトカイン/ケモカインのレベルと、アトピー性皮膚炎の発症との関連性を明らかにし、これに基づき、母乳中サイトカイン/ケモカイン値に基づく乳児アトピー性皮膚炎の発症予知方法、及びそれに使用する診断薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討したところ、6ヶ月齢において、アトピー性皮膚炎を発症している乳児が摂取した母乳と、コントロール乳児が摂取した母乳との間には、初乳中のIL−1β、IL−6、IL−7、IL−12p40、IL−13及びMIP−1αの濃度、及び成熟乳中のIL−1α、IL−4、IL−6、IL−7、IL−12p40、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2及びMIP−1αの濃度に有意差があることを見出した。ロジスティック回帰分析により、高レベルの初乳中のIL−6、IL−12p40及びIL−13、及び高レベルの成熟乳中のエオタキシン及びIFN−α2、且つ低レベルの成熟乳中のIL−1αは、ADの発症にとってリスク因子であることが示された。成熟乳中のエオタキシン、IFN−α2及びIL−1αを包含するケモカイン/サイトカインの濃度を特定のカットオフポイントに設定することにより、非常に高い受動者動作特性曲線(ROC)下面積を有する乳児アトピー性皮膚炎予想モデルを構築することができた。これらの知見に基づき、更に検討を重ねた結果、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は以下に関する。
[1]乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定する方法であって、
(1)当該乳児が摂取する初乳中のIL−1β、IL−6、IL−7、IL−12p40、IL−13及びMIP−1αからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカイン、或いは当該乳児が摂取する成熟乳中のIL−1α、IL−4、IL−6、IL−7、IL−12p40、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2及びMIP−1αからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカイン又はケモカインの濃度を測定すること;及び
(2)(1)において測定したサイトカイン又はケモカインの濃度と、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクとを相関付けること
を含む、方法。
[2]乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定する方法であって、
(1)当該乳児が摂取する初乳中のIL−6、IL−12p40及びIL−13、或いは成熟乳中のエオタキシン、IFN−α2及びIL−1αの濃度を測定すること;及び
(2)(1)において測定したサイトカイン又はケモカインの濃度と、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクとを相関付けること
を含む、方法。
[3]抗ヒトIL−1β抗体、抗ヒトIL−1α抗体、抗ヒトIL−4抗体、抗ヒトIL−6抗体、抗ヒトIL−7抗体、抗ヒトIL−12p40抗体、抗ヒトIL−13抗体、抗ヒトエオタキシン抗体、抗ヒトG−CSF抗体、抗ヒトGM−CSF抗体、抗ヒトIFN−α2抗体及び抗ヒトMIP−1α抗体からなる群から選択される少なくとも1つの抗体を含む、乳児が摂取する初乳又は成熟乳中のサイトカイン又はケモカイン濃度に基づき、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定するための診断薬。
[4]抗ヒトIL−6抗体、抗ヒトIL−12p40抗体及び抗ヒトIL−13抗体を含む抗体の組み合わせ、或いは抗ヒトエオタキシン抗体、抗ヒトIFN−α2抗体及び抗ヒトIL−1α抗体を含む抗体の組み合わせを含む、[3]記載の診断薬。
[5]被検物質が、初乳中のIL−1β、IL−6、IL−7、IL−12p40、IL−13又はMIP−1α、或いは成熟乳中のIL−4、IL−6、IL−7、IL−12p40、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2又はMIP−1αの濃度を抑制し得るか否か、或いは成熟乳中のIL−1α濃度を上昇させ得るか否か評価すること、及び
初乳中のIL−1β、IL−6、IL−7、IL−12p40、IL−13又はMIP−1α、或いは成熟乳中のIL−4、IL−6、IL−7、IL−12p40、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2又はMIP−1αの濃度を抑制した被検物質、或いは成熟乳中のIL−1α濃度を上昇させた被検物質を、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症を予防する物質として選択すること
を含む、乳児のアトピー性皮膚炎の発症を予防する物質のスクリーニング方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、母乳中サイトカイン/ケモカイン値に基づき、乳児アトピー性皮膚炎の発症リスクを高い精度で評価することが可能である。また、本発明によれば、乳児のアトピー性皮膚炎の発症を予防する候補物質をスクリーニングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】初乳中のサイトカイン及びケモカインのレベルをAD群とコントロール群との間で比較した結果を示す。最小値、25th、50th、75th及び最大値を示した(n=試料の数)。検出限界以下の試料中のサイトカイン濃度を1.6pg/mlと定義した。
【図2】成熟乳中のサイトカイン及びケモカインのレベルをAD群とコントロール群との間で比較した結果を示す。最小値、25th、50th、75th及び最大値を示した(n=試料の数)。検出限界以下の試料中のサイトカイン濃度を1.6pg/mlと定義した。
【図3】母乳サイトカイン/ケモカイン濃度による、6ヶ月齢におけるAD発症の予測のためのROC曲線。これらの曲線は、初乳中の各サイトカイン又は成熟乳中の各サイトカイン/ケモカインの標準化した値の合計値により作成した。曲線下面積を統計学的解析により決定した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定する方法
本発明は、乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定する方法であって、
(1)当該乳児が摂取する初乳中のIL−1β、IL−6、IL−7、IL−12p40、IL−13及びMIP−1αからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカイン、或いは当該乳児が摂取する成熟乳中のIL−1α、IL−4、IL−6、IL−7、IL−12p40、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2及びMIP−1αからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカイン又はケモカインの濃度を測定すること;及び
(2)(1)において測定したサイトカイン又はケモカインの濃度と、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクとを相関付けること
を含む、方法を提供するものである。
【0013】
本明細書において乳児とは、新生児期以後1年までの小児を意味する。本発明の方法により、通常、生後12ヶ月まで、好ましくは、生後6ヶ月までに、乳児がアトピー性皮膚炎を発症するリスクを判定することができる。
【0014】
本発明の判定方法の対象者は、通常、母乳育児を受けたヒト乳児である。
【0015】
本明細書において初乳とは、分娩後、長くとも7日間以内、好ましくは5日以内に母体より分泌される乳汁を意味する。一態様において、本発明には、分娩4〜5日後に母体より分泌される初乳が用いられる。
【0016】
成熟乳とは、一般的には分娩から3週間以上後、好ましくは4週間以上後に母体より分泌される乳汁を意味する。本発明において用いられる成熟乳としては、好ましくは分娩2ヶ月以内に、更に好ましくは分娩1ヶ月後に母体より分泌される成熟乳である。
【0017】
本発明の方法においては、対象乳児が摂取する初乳中のIL−1β、IL−6、IL−7、IL−12p40、IL−13及びMIP−1αからなる群から選択される少なくとも1つ(好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上)のサイトカイン、或いは当該乳児が摂取する成熟乳中のIL−1α、IL−4、IL−6、IL−7、IL−12p40、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2及びMIP−1αからなる群から選択される少なくとも1つ(好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上)のサイトカイン又はケモカインの濃度を測定する。
【0018】
一態様において、初乳中のIL−6、IL−12p40及びIL−13、或いは成熟乳中のエオタキシン、IFN−α2及びIL−1αの濃度が測定される。これらの特定のサイトカイン又はケモカイン濃度を組み合わせることにより、より精度の高いアトピー性皮膚炎の発症リスクの判定が期待できる。
【0019】
IL−1α、IL−1β、IL−4、IL−6、IL−7、IL−12p40、IL−13、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2及びMIP−1αは、いずれも周知のサイトカイン又はケモカインである。ヒト由来のこれらのサイトカイン又はケモカインの代表的なアミノ酸配列およびそのNCBIアクセッション番号は以下の通りである。
IL−1α:NP_000566.3 region 113..271(配列番号1)
IL−1β:NP_000567.1 region 117..269(配列番号2)
IL−4:NP_000580.1 region 25..153(配列番号3)
IL−6:NP_000591.1 region 30..212(配列番号4)
IL−7:NP_000871.1 region 26..177(配列番号5)
IL−12p40:NP_002178.2 region 23..328(配列番号6)
IL−13:NP_002179.2 region 35..132(配列番号7)
エオタキシン:NP_002977.1 region 24..97(配列番号8)
G−CSF:NP_000750.1 region 31..207(配列番号9)
GM−CSF:NP_000749.2 region 18..144(配列番号10)
IFN−α2:NP_000596.2 region 24..188(配列番号11)
MIP−1α:NP_002974.1 region 24..92(配列番号12)
【0020】
母乳中の各サイトカイン又はケモカインの濃度は、各サイトカイン又はケモカインを特異的に認識する抗体を用いて、免疫学的手法により測定することができる。免疫学的手法としては、抗体アレイ、フローサイトメトリー解析、放射性同位元素免疫測定法(RIA法)、ELISA法(Methods in Enzymol. 70: 419-439 (1980))、ウェスタンブロッティング、免疫組織染色等を挙げることができる。
【0021】
母乳は脂質が豊富なため、サイトカイン又はケモカイン濃度の免疫学的測定に際しては、あらかじめ遠心分離をし、脂質層を除去することにより得られる非脂肪ホエイを用いることが好ましい。
【0022】
抗体による抗原Xの「特異的な認識」とは、抗原抗体反応における、抗体の抗原Xに対するアフィニティが、抗原X以外の抗原に対するアフィニティよりも強いことを意味する。本明細書において、抗原Xを特異的に認識する抗体を「抗X抗体」と略記する。
【0023】
各サイトカイン又はケモカインを特異的に認識する抗体は、該サイトカイン又はケモカインやその抗原性を有する部分ペプチドを免疫原として用い、既存の一般的な製造方法によって製造することができる。本明細書において、抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)等の天然型抗体、遺伝子組換技術を用いて製造され得るキメラ抗体、ヒト化抗体や一本鎖抗体、およびこれらの結合性断片が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体又はこれらの結合性断片である。結合性断片とは、特異的結合活性を有する前述の抗体の一部分の領域を意味し、具体的には例えばF(ab’)、Fab’、Fab、Fv、sFv、dsFv、sdAb等が挙げられる(Exp. Opin. Ther. Patents, Vol.6, No.5, p.441-456, 1996)。抗体のクラスは、特に限定されず、IgG、IgM、IgA、IgDあるいはIgE等のいずれのアイソタイプを有する抗体をも包含する。好ましくは、IgG又はIgMであり、精製の容易性等を考慮するとより好ましくはIgGである。
【0024】
また、抗体は、適当な標識剤、例えば、放射性同位元素(例:125I、131I、H、14C、32P、33P、35S等)、酵素(例:β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等)、蛍光物質(例:フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート等)、発光物質(例:ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等)、ビオチンなどで標識されていてもよい。
【0025】
上述の各サイトカイン又はケモカインを特異的に認識する抗体を、適切な支持体の上に結合して、抗体アレイとして提供してもよい。支持体としては、当該分野で通常用いられている支持体であれば特に限定されず、例えば、メンブレン(例えば、ナイロン膜)、ビーズ、ガラス、プラスチック、金属などが挙げられる。
【0026】
次に、工程(1)において測定した初乳又は成熟乳中の各サイトカイン又はケモカイン濃度と、乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクとを相関付ける。例えば、測定された初乳又は成熟乳中の各サイトカイン又はケモカイン濃度を、アトピー性皮膚炎を発症した乳児が摂取した初乳又は成熟乳中の対応するサイトカイン又はケモカイン濃度、及びアトピー性皮膚炎を発症しない乳児が摂取した初乳又は成熟乳中の対応するサイトカイン又はケモカイン濃度と比較する。あるいは、測定された初乳又は成熟乳中の各サイトカイン又はケモカイン濃度を、あらかじめ求めておいた、アトピー性皮膚炎を発症した多数個体の乳児についての初乳又は成熟乳中の対応するサイトカイン又はケモカイン濃度の平均値、アトピー性皮膚炎を発症していない多数個体の乳児についての初乳又は成熟乳中の対応するサイトカイン又はケモカイン濃度の平均値、アトピー性皮膚炎を発症した/発症していない多数個体の乳児についての初乳又は成熟乳中の対応するサイトカイン又はケモカイン濃度の分布図などと比較してもよい。各サイトカイン又はケモカイン濃度の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行われる。
【0027】
後述の実施例に示すように、アトピー性皮膚炎を発症した乳児が摂取する初乳中のIL−1β、IL−6、IL−7、IL−12p40、IL−13及びMIP−1α、並びに成熟乳中のIL−4、IL−6、IL−7、IL−12p40、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2及びMIP−1αの各サイトカイン又はケモカインの濃度は、アトピー性皮膚炎を発症しない乳児が摂取する初乳又は成熟乳中のそれと比較して高かった。即ち、初乳又は成熟乳中に含まれる上述の各サイトカイン又はケモカインの濃度と、当該初乳又は成熟乳を摂取する乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクとの間の正の相関に基づき、乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定することができる。例えば、初乳中のIL−1β、IL−6、IL−7、IL−12p40、IL−13及びMIP−1αからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカイン、或いは成熟乳中のIL−4、IL−6、IL−7、IL−12p40、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2及びMIP−1αからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカイン又はケモカインの濃度が相対的に高い場合には、当該初乳又は成熟乳を摂取する乳児はアトピー性皮膚炎を発症する可能性が高いと判定することができる。
【0028】
一方、後述の実施例に示すように、アトピー性皮膚炎を発症した乳児が摂取する成熟乳中のIL−1α濃度は、アトピー性皮膚炎を発症しない乳児が摂取する成熟乳中のそれと比較して低かった。即ち、成熟乳中に含まれるIL−1α濃度と、当該成熟乳を摂取する乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクとの間の負の相関に基づき、乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定することができる。例えば、成熟乳中のIL−1α濃度が相対的に低い場合には、当該初乳又は成熟乳を摂取する乳児はアトピー性皮膚炎を発症する可能性が高いと判定することができる。
【0029】
また、初乳又は成熟乳中の各サイトカイン又はケモカイン濃度のカットオフ値をあらかじめ設定しておき、測定された初乳又は成熟乳中の各サイトカイン又はケモカイン濃度とこのカットオフ値とを比較することによって行うこともできる。例えば、初乳中のIL−1β、IL−6、IL−7、IL−12p40、IL−13及びMIP−1αからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカイン、或いは成熟乳中のIL−4、IL−6、IL−7、IL−12p40、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2及びMIP−1αからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカイン又はケモカインの濃度が前記カットオフ値以上である場合には、当該初乳又は成熟乳を摂取する乳児はアトピー性皮膚炎を発症する可能性が高いと判定することができる。また、成熟乳中のIL−1α濃度が前記カットオフ値以下である場合には、当該成熟乳を摂取する乳児はアトピー性皮膚炎を発症する可能性が高いと判定することができる。
【0030】
「カットオフ値」は、その値を基準として疾患の判定をした場合に、高い診断感度(有病正診率)及び高い診断特異度(無病正診率)の両方を満足できる値である。例えば、アトピー性皮膚炎を発症した乳児で高い陽性率を示し、かつ、アトピー性皮膚炎を発症していない乳児で高い陰性率を示す、初乳又は成熟乳中の各サイトカイン又はケモカイン濃度をカットオフ値として設定することが出来る。
【0031】
カットオフ値の算出方法は、この分野において周知である。例えば、アトピー性皮膚炎を発症した乳児及びアトピー性皮膚炎を発症していない乳児が摂取した、初乳又は成熟乳中の上述サイトカイン又はケモカイン濃度を測定し、測定された値における診断感度および診断特異度を求め、これらの値に基づき、市販の解析ソフトを使用してROC(Receiver Operating Characteristic)曲線を作成する。そして、診断感度と診断特異度が可能な限り100%に近いときの値を求めて、その値をカットオフ値とすることができる。また、例えば、検出された値における診断効率(全症例数に対する、有病正診症例と無病正診症例の合計数の割合)を求め、最も高い診断効率が算出される値をカットオフ値とすることができる。
【0032】
尚、本発明の方法においては、対象乳児が摂取する初乳中のIL−1β、IL−6、IL−7、IL−12p40、IL−13及びMIP−1αからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカイン、或いは当該乳児が摂取する成熟乳中のIL−1α、IL−4、IL−6、IL−7、IL−12p40、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2及びMIP−1αからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカイン又はケモカインの濃度を測定すれば足りるが、これらのサイトカイン又はケモカインのうちの複数(例えば2以上、好ましくは3以上)の濃度を測定し、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクと相関付けることにより、より精度の高いアトピー性皮膚炎の発症リスクの判定が期待できる。
【0033】
好ましい態様において、初乳中のIL−6、IL−12p40及びIL−13、或いは成熟乳中のエオタキシン、IFN−α2及びIL−1αの濃度が測定される。これらの特定のサイトカイン又はケモカイン濃度の組み合わせることにより、より精度の高いアトピー性皮膚炎の発症リスクの判定が期待できる。
【0034】
例えば、初乳中のIL−6、IL−12p40及びIL−13の濃度が相対的に高い場合には、当該初乳を摂取する乳児はアトピー性皮膚炎を発症する可能性が高いと判定することができる。或いは、成熟乳中のエオタキシン及びIFN−α2の濃度が相対的に高く、且つ成熟乳中IL−1αの濃度が相対的に低い場合には当該成熟乳を摂取する乳児はアトピー性皮膚炎を発症する可能性が高いと判定することができる。
【0035】
或いは、初乳中のIL−6、IL−12p40及びIL−13濃度、或いは成熟乳中のエオタキシン、IFN−α2及びIL−1α濃度のカットオフ値をあらかじめ設定しておき、測定された初乳又は成熟乳中の各サイトカイン又はケモカイン濃度とこのカットオフ値とを比較することによって行ってもよい。初乳中のIL−6、IL−12p40及びIL−13の濃度が、それぞれ前記カットオフ値以上である場合には、当該初乳又は成熟乳を摂取する乳児はアトピー性皮膚炎を発症する可能性が高いと判定することができる。或いは、成熟乳中のエオタキシン及びIFN−α2の濃度が、それぞれ前記カットオフ値以上であり、且つIL−1α濃度が前記カットオフ値以下である場合には、当該成熟乳を摂取する乳児はアトピー性皮膚炎を発症する可能性が高いと判定することができる。
【0036】
或いは、アトピー性皮膚炎を発症した乳児及びアトピー性皮膚炎を発症していない乳児が摂取した、初乳中のIL−6、IL−12p40及びIL−13濃度又は成熟乳中のエオタキシン、IFN−α2及びIL−1α濃度を測定し、市販の解析ソフトを使用して、各サイトカイン濃度のデータを三分位値又は中央値にカテゴライズし、アトピー性皮膚炎の発症に対する各サイトカイン又はケモカインの独立した効果を評価する多重ロジステッィク回帰モデルを構築し、ROC曲線を作成することにより、初乳中のIL−6、IL−12p40及びIL−13濃度、又は成熟乳中のエオタキシン、IFN−α2及びIL−1α濃度と、乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクとの相関式を構築した上で、測定した対象乳児が摂取した初乳中のIL−6、IL−12p40及びIL−13濃度又は成熟乳中のエオタキシン、IFN−α2及びIL−1α濃度をこの相関式に導入することにより、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを評価することができる。或いは、初乳中のIL−6、IL−12p40及びIL−13濃度、或いは成熟乳中のエオタキシン、IFN−α2及びIL−1α濃度を標準化スコアに変換することにより、異なったスケールで測定された上記のサイトカイン及びケモカインを相対的な得点とする。初乳中のIL−6、IL−12p40及びIL−13の得点の和、成熟乳中のエオタキシン、IFN−α2及びIL−1αの得点の和(IL−1αは、アトピー性皮膚炎を発症した乳児が摂取していた成熟母乳中で有意に低値であったことから、スコアの係数を−1とする)を変数としたROC解析を行うことで、これらの得点が高いほど当該乳児アトピー性皮膚炎を発症するリスクが高いと評価することができる。
【0037】
2.診断薬
本発明は、乳児が摂取する初乳又は成熟乳中のサイトカイン又はケモカイン濃度に基づき、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定するための診断薬であって、抗ヒトIL−1β抗体、抗ヒトIL−1α抗体、抗ヒトIL−4抗体、抗ヒトIL−6抗体、抗ヒトIL−7抗体、抗ヒトIL−12p40抗体、抗ヒトIL−13抗体、抗ヒトエオタキシン抗体、抗ヒトG−CSF抗体、抗ヒトGM−CSF抗体、抗ヒトIFN−α2抗体及び抗ヒトMIP−1α抗体からなる群から選択される少なくとも1つの抗体を含む、診断薬を提供するものである。本発明の診断薬を用いれば、上記本発明の方法により、容易に乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定することが可能となる。
【0038】
「抗体」の定義及び態様は、上記1の項で記載した通りである。
【0039】
本発明の診断薬が、乳児が摂取する初乳中のサイトカイン又はケモカイン濃度に基づき、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定するための診断薬である場合、該診断薬は、抗ヒトIL−1β抗体、抗ヒトIL−6抗体、抗ヒトIL−7抗体、抗ヒトIL−12p40抗体、抗ヒトIL−13抗体、及び抗ヒトMIP−1α抗体からなる群から選択される少なくとも1つ(好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上)の抗体を含む。この場合、一態様において、本発明の診断薬は、抗ヒトIL−6抗体、抗ヒトIL−12p40抗体及び抗ヒトIL−13抗体を含む抗体の組み合わせを含む。上記本発明の方法により、該態様の診断薬を用いて、初乳中のIL−6、IL−12p40及びIL−13濃度を測定することにより、高い精度で当該初乳を摂取する乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定することができる。
【0040】
本発明の診断薬が、乳児が摂取する成熟乳中のサイトカイン又はケモカイン濃度に基づき、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定するための診断薬である場合、該診断薬は、抗ヒトIL−1α抗体、抗ヒトIL−4抗体、抗ヒトIL−6抗体、抗ヒトIL−7抗体、抗ヒトIL−12p40抗体、抗ヒトエオタキシン抗体、抗ヒトG−CSF抗体、抗ヒトGM−CSF抗体、抗ヒトIFN−α2抗体及び抗ヒトMIP−1α抗体からなる群から選択される少なくとも1つ(好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上)の抗体を含む。この場合、一態様において、本発明の診断薬は、抗ヒトエオタキシン抗体、抗ヒトIFN−α2抗体及び抗ヒトIL−1α抗体を含む抗体の組み合わせを含む。上記本発明の方法により、該態様の診断薬を用いて、成熟乳中のエオタキシン、IFN−α2及びIL−1α濃度を測定することにより、高い精度で当該成熟乳を摂取する乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定することができる。
【0041】
本発明の診断薬に含まれる抗体は、通常、水もしくは適当な緩衝液(例:TEバッファー、PBSなど)中に適当な濃度となるように溶解されるか、あるいは凍結乾燥された状態で提供される。
【0042】
或いは、抗体を適切な支持体の上に結合して、抗体アレイとして提供してもよい。支持体としては、当該分野で通常用いられている支持体であれば特に限定されず、例えば、メンブレン(例えば、ナイロン膜)、ビーズ、ガラス、プラスチック、金属などが挙げられる。
【0043】
本発明の診断薬は、免疫学的測定方法の種類に応じて、当該方法の実施に必要な他の成分を構成としてさらに含む診断用キットとして提供することもできる。例えば、本発明の診断薬は、標識二次抗体、発色基質、ブロッキング液、洗浄緩衝液、ELISAプレート、ブロッティング膜等をさらに含むことができる。
【0044】
また、本発明の診断薬は、検量線作成のため、測定対象のサイトカイン又はケモカインを既知量含むサイトカイン又はケモカイン溶液を含んでいてもよい。この検量線作成用のサイトカイン又はケモカイン溶液は、好ましくは、測定対象のサイトカイン又はケモカインのヒト母乳(又はそのホエイ)中の溶液である。本発明の診断薬が、乳児が摂取する初乳中のサイトカイン又はケモカイン濃度に基づき、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定するための診断薬である場合、該診断薬は、測定対象のサイトカイン又はケモカインのヒト初乳(又はそのホエイ)中の溶液を検量線作成用として含み得る。本発明の診断薬が、乳児が摂取する成熟乳中のサイトカイン又はケモカイン濃度に基づき、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定するための診断薬である場合、該診断薬は、測定対象のサイトカイン又はケモカインのヒト成熟乳(又はそのホエイ)中の溶液を検量線作成用として含み得る。
【0045】
これらの各構成要素は、各々別個に(あるいは可能であれば混合した状態で)水もしくは適当な緩衝液(例:TEバッファー、PBSなど)中に適当な濃度となるように溶解されるか、あるいは凍結乾燥された状態で、適切な容器内に収容される。
【0046】
3.スクリーニング方法
上述のように、アトピー性皮膚炎を発症した乳児が摂取する初乳中のIL−1β、IL−6、IL−7、IL−12p40、IL−13及びMIP−1α、並びに成熟乳中のIL−4、IL−6、IL−7、IL−12p40、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2及びMIP−1αの各サイトカイン又はケモカインの濃度は、アトピー性皮膚炎を発症しない乳児が摂取する初乳又は成熟乳中のそれと比較して高い。また、アトピー性皮膚炎を発症した乳児が摂取する成熟乳中のIL−1α濃度は、アトピー性皮膚炎を発症しない乳児が摂取する成熟乳中のそれと比較して低い。従って、被検物質が、初乳中のIL−1β、IL−6、IL−7、IL−12p40、IL−13又はMIP−1α、或いは成熟乳中のIL−4、IL−6、IL−7、IL−12p40、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2又はMIP−1αの濃度を抑制し得るか否か評価し、或いは成熟乳中のIL−1α濃度を上昇させ得るか否か評価し、初乳中のIL−1β、IL−6、IL−7、IL−12p40、IL−13又はMIP−1α、或いは成熟乳中のIL−4、IL−6、IL−7、IL−12p40、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2又はMIP−1αの濃度を抑制した被検物質、或いは成熟乳中のIL−1α濃度を上昇させた被検物質を、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症を予防する物質として選択することができる。本発明は、このような乳児のアトピー性皮膚炎の発症を予防する物質のスクリーニング方法を提供する。
【0047】
スクリーニング方法に供される被検物質は、いかなる公知化合物及び新規化合物であってもよく、例えば、核酸、糖質、脂質、蛋白質、ペプチド、有機低分子化合物、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリー、固相合成やファージディスプレイ法により作製されたランダムペプチドライブラリー、あるいは微生物、動植物、海洋生物等由来の天然成分等が挙げられる。食品、飲料、又はそれらの抽出物も被検物質としてまた好ましい。
【0048】
本発明のスクリーニング方法は、被検物質の、哺乳動物への投与により行われ得る。該動物としては、例えば、哺乳動物としては、ヒト及びヒトを除く哺乳動物を挙げることが出来る。ヒトを除く哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、サル、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類を挙げることが出来る。当該哺乳動物としては、妊娠している、又は母乳を分泌している雌性哺乳動物が好ましい。
【0049】
例えば、被検物質を哺乳動物へ投与し、該哺乳動物が分泌する初乳中のIL−1β、IL−6、IL−7、IL−12p40、IL−13又はMIP−1α、或いは成熟乳中のIL−1α、IL−4、IL−6、IL−7、IL−12p40、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2又はMIP−1αの濃度を測定する。次いで、被検物質を投与した哺乳動物が分泌した初乳中のIL−1β、IL−6、IL−7、IL−12p40、IL−13又はMIP−1α、或いは成熟乳中のIL−1α、IL−4、IL−6、IL−7、IL−12p40、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2又はMIP−1αの濃度を、被検物質を投与していない哺乳動物が分泌した初乳又は成熟乳中の当該サイトカイン又はケモカインの濃度と比較する。濃度の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行なわれる。比較の結果、初乳中のIL−1β、IL−6、IL−7、IL−12p40、IL−13又はMIP−1α、或いは成熟乳中のIL−4、IL−6、IL−7、IL−12p40、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2又はMIP−1αの濃度を抑制した被検物質、或いは成熟乳中のIL−1α濃度を上昇させた被検物質を、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症を予防する候補物質として選択する。
【0050】
一態様において、被検物質を哺乳動物へ投与し、該哺乳動物が分泌する初乳中のIL−6、IL−12p40及びIL−13濃度を測定する。次いで、被検物質を投与した哺乳動物が分泌した初乳中のIL−6、IL−12p40及びIL−13の濃度を、被検物質を投与していない哺乳動物が分泌した初乳中IL−6、IL−12p40及びIL−13の濃度と比較する。濃度の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行なわれる。比較の結果、初乳中のIL−6、IL−12p40及びIL−13の濃度を抑制した被検物質を、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症を予防する候補物質として選択する。
【0051】
一態様において、被検物質を哺乳動物へ投与し、該哺乳動物が分泌する成熟乳中のエオタキシン、IFN−α2及びIL−1α濃度を測定する。次いで、被検物質を投与した哺乳動物が分泌した成熟乳中のエオタキシン、IFN−α2及びIL−1αの濃度を、被検物質を投与していない哺乳動物が分泌した成熟乳中のエオタキシン、IFN−α2及びIL−1αの濃度と比較する。濃度の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行なわれる。比較の結果、成熟乳中のエオタキシン及びIFN−α2の濃度を抑制し、且つIL−1αの濃度を上昇させた被検物質を、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症を予防する候補物質として選択する。
【0052】
本発明のスクリーニング方法によって得られ得る乳児のアトピー性皮膚炎の発症を予防する候補物質は、医薬品開発のための候補化合物とすることができる。また、医薬として製剤化することにより、乳児のアトピー性皮膚炎を予防するために、母体に適用される医薬組成物とすることができる。或いは、乳児のアトピー性皮膚炎を予防するために、母体が摂取するための食品組成物とすることもできる。
【0053】
本明細書中で挙げられた特許及び特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、本明細書での引用により、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
【0054】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0055】
患者及び方法
コホート及び試験対象者
2007年1月から2008年5月にかけて、川鉄千葉病院において500人の新生児の前向き誕生コホート(prospective birth cohort)をセットアップした。すべての参加者は、その乳児が生まれる前にアンケートを受けた。親のアレルギー疾患及び多様な曝露についてのデータを取得した。親は、湿疹に関する症状に主に焦点をあてたアンケートに答えた。乳児が6カ月齢のときに、少なくとも2ヶ月間にわたり痒い湿疹を有する乳児をアトピー性皮膚炎と定義した。6カ月アンケートに対する完全回答率は73%であった。6カ月齢においてアトピー性皮膚炎(AD)を発症した乳児は51人で、そこから49人のAD(+)対象者を選択した。母乳の欠失のため、51人のADの乳児のうちの2人は研究対象から除いた。49人のAD(−)対象を、AD及び他のアレルギー疾患(喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギー、及び花粉症)の母体歴に関する差異がないように、ランダムに選択した。49人のAD(+)乳児のうちの20人、及び49人のAD(−)乳児のうちの20人は、1カ月齢まで主に母乳栄養であり、他の乳児は、混合栄養であった。母乳の凍結ストックを多重サイトカインアッセイに付した。妊娠の経過は全ての女性において正常であった。アレルギー疾患の履歴を除き、母体は他の医学的問題を有していなかった。AD(+)乳児とAD(−)乳児との間、及び2群の母体間に背景の有意な差はなかった(表1)。全ての参加者は、研究に参加することの書面によるインフォームドコンセントを提供した。本研究は、千葉大学大学院医学研究院の倫理委員会により許可されたものである。
【0056】
【表1】

【0057】
母体及び乳児の特徴。母体の年齢、出産歴、妊娠前のBMI、妊娠中のBMI、妊娠期間及び出生時体重をStudent’s t検定により解析した。他の特徴は、Pearson’sカイ二乗検定により解析した。
【0058】
母乳のサンプリング及び保存
母乳試料を生後4〜5日及び分娩1カ月後に採集し、長期保存のために−80℃にて凍結した。母乳試料を試験する前に素早く融解し、10000×gにて10分間遠心分離した。脂質層の除去後、非脂肪ホエイをピペットで抽出した。
【0059】
多重解析
母乳中のサイトカイン及びケモカインを、26個のサイトカイン及びケモカインのそれぞれに対する抗体で被覆されたポリスチレンビーズを含有する、ミリポアから購入した多重キットのついたBio−Plex懸濁アレイシステム(Bio−Radラボラトリー)により測定した。この技術が有利な点は、試料中の100検体にものぼる同時測定のためにわずか25μlの試料しか必要ないことである。26サイトカイン[IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−10、IL−12p40、IL−12p70、IL−13、IL−15、IL−17、IFN−α2、IFN−γ、TNF−α、TNF−β、エオタキシン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージ炎症タンパク質(MIP)−1α、MIP−1β、単球走化性タンパク質(MCP)−1、及びインターフェロンガンマ誘導性タンパク質10(IP−10)]についての多重解析を、初乳及び成熟乳について行った。母乳試料を室温にて融解し、96穴フィルター底プレートにduplicateで加えた。ビーズをウェルに加えて、プレートシェーカー上で室温にて1時間インキュベートした。ウェルを、フィルター底を通してバキュームすることにより洗浄後、抗体コンジュゲートを加え、さらに1時間撹拌を続けた。ストレプトアビジン−フィコエリスリンをウェルに加え、最終撹拌インキュベーションを行った。プレートを前述の様に洗浄し、100μlのシース液をウェルに加え、ウェルを読んだ。全ての解析対象についての標準曲線及び品質コントロールをプレート上で行った。サイトカインが結合したビーズの中間値蛍光強度を、5パラメーター論理的モデルを使用して、濃度(pg/ml)に変換した。全てのサイトカイン及びケモカインについて、キットの検出限界は、3.2pg/mlであり、キットの最大検出限界は、10000pg/mlであった。
【0060】
統計学的解析
統計学的解析を、SPSSプログラム(v.19.0., SPSS Inc.)を用いて行った。母体及び乳児の特徴の比較は、Peason’sカイ二乗検定及びStudent’s t−検定により評価した。多様なサイトカイン/ケモカインのデータは、正規分布とはならないので、ノンパラメトリック検定を用いた。群間の差は、Mann−Whitney U 検定で解析し、<0.05の確率水準を統計学的に有意とした。更に、母乳サイトカイン/ケモカインの濃度のデータをカテゴライズし、アトピー性皮膚炎の発症に対する異なる母乳サイトカイン/ケモカインの独立した効果を評価する多重ロジスティック回帰モデルを構築した;結果を、95%信頼区間(CIs)を有するオッズ比により表した。受動者動作特性曲線(ROC)曲線を作成し、どの程度母乳サイトカイン/ケモカインによりアトピー性皮膚炎の発症を予測し得るか評価した。
【0061】
結果
AD及びコントロール群における、サイトカイン/ケモカインプロファイル
母乳サイトカイン/ケモカイン濃度は大幅に広がった。初乳においては、AD群におけるIL−1β、IL−12p40及びIL−13値陽性の頻度は、コントロール群におけるIL−1β、IL−12p40及びIL−13値陽性のそれよりも大きかった(カイ二乗検定、それぞれ、P<0.001、<0.001、及び0.028、表2)。
【0062】
【表2】

【0063】
初乳中のサイトカインプロファイル。陽性結果は、検出限界を超える濃度の上記サイトカインを意味する。2群間の陽性サイトカイン値の発生可能性をカイ二乗検定により調べた。
【0064】
成熟ミルクにおいては、AD群におけるIL−4、IL−6、IL−12p40、G−CSF、GM−CSF及びMIP−1α値陽性の頻度は、コントロール群のそれよりも大きかった(カイ二乗検定、それぞれ、P<0.001、0.038、0.014、0.022、<0.001及び<0.001、表3)。ほとんどの初乳試料でIL−8、MCP−1及びIP−10の濃度は、検出限度を超えており、幾つかの成熟乳サンプルにおけるMCP−1及びIP−10濃度が検出限度を超えていた。持ち越しミルクの量の欠失のため、これらの試料のほとんどについて再測定をすることができなかったので、更なる解析から除外した。これらのケモカインについての統計学的解析は行わなかった。
【0065】
【表3】

【0066】
成熟乳中のサイトカインプロファイル。陽性結果は、検出限界を超える濃度の上記サイトカインを意味する。2群間の陽性サイトカイン値の発生可能性をカイ二乗検定により調べた。
【0067】
初乳中のサイトカイン/ケモカインのレベルの比較
母乳中のサイトカイン/ケモカインのレベルと、6か月齢におけるADの発症との間の関係を調べるため、6カ月齢のときにADを発症した乳児が摂取した母乳中のサイトカイン/ケモカインレベルと、その時点でADを発症していない乳児が摂取した母乳中のサイトカイン/ケモカインレベルを比較した(以下、それぞれ、AD群及びコントロール群と呼ぶ)。図1に示すように、初乳において、母乳サイトカイン/ケモカインの中央値濃度の重要な差異は、以下の通りであった:AD群の乳児が摂取した初乳において、IL−1β、IL−6、IL−7、IL−12p40、IL−13及びMIP−1αの濃度が、コントロール群と比較して高かった((Mann−Whitney検定、それぞれP<0.001、0.005、0.024、<0.001、0.018及び0.029)。
【0068】
成熟乳中のサイトカイン/ケモカインレベルの比較
成熟乳における、母乳サイトカイン及びケモカインの中央値濃度の有意な差異は、以下の通りである:AD群の乳児が摂取した成熟乳中のIL−4、IL−6、IL−7、IL−12p40、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2及びMIP−1αの濃度が、コントロール群のそれと比較して高かった(Mann−Whitney検定、それぞれ、P<0.001、0.018、0.025、0.015、<0.001、<0.001、<0.001、<0.001及び<0.001、図2)。一方、AD群の成熟乳中のIL−1αのレベルは、コントロール群と比較して低かった(Mann−Whitney検定、P=0.005、図2)。
【0069】
母乳サイトカイン/ケモカインの多変量ロジスティック回帰解析
母乳サイトカイン/ケモカインのレベル(三分位値又は中央値に分類したもの)と、乳児のAD予後との間の相関の結果を表4に示す。
【0070】
【表4】

【0071】
ロジスティック解析を、初乳(a)及び成熟乳(b)中の異なるサイトカイン及びケモカインについて行った。OR、異なるサイトカイン/ケモカインについて調整したオッズ比;CI、信頼区間。
【0072】
乳児ADのリスクは、初乳中のIL−6、IL−12p40及びIL−13のレベルと相関していた。表4aに示すように、乳児ADのリスクは、3.627のオッズ値(OR)及び1.04−12.65の信頼区間(CI)で、中レベルのIL−6において上昇し、8.251のオッズ値(OR)及び2.194−31.03の信頼区間(CI)で、高レベルのIL−6において上昇した。乳児ADのリスクは、6.125のOR(CI 1.301−28.828)で、中レベルのIL−12p40において上昇し、11.679のOR(CI 3.64−37.85)で、高レベルのIL−12p40において上昇した。また、乳児ADのリスクは、3.627のOR(CI 1.04−12.65)で、高レベルのIL−13において上昇した。更に、乳児ADのリスクは、成熟乳中のeotaxin、IFN−α2及びIL−1αのレベルと相関した。表4(b)に示されるように、乳児ADのリスクは、高レベルのeotaxin及びIFN−α2において、それぞれ78.225のOR(CI 7.957−769.643)及び15.251のOR(CI 2.577−90.248)で、上昇した。一方、乳児ADのリスクは、高レベルのIL−1αにおいて、0.035のOR(CI 0.005−0.268)で減少した。
【0073】
ROC解析による母乳サイトカイン/ケモカインバイオマーカーの評価
IL−6、IL−12p40及びIL−13を含む初乳サイトカイン、又はエオタキシン、IFN−α2及びIL−1αを含む成熟乳サイトカイン/ケモカインについてROC曲線を作成した。初乳における母乳サイトカインの濃度によるAD発症の予測は有意であり、0.802の曲線下面積を達成した(95% CI 0.711−0.892、P<0.001)。また、成熟乳におけるサイトカイン/ケモカインの濃度による予測も有意であり、0.888の曲線下面積を達成した(95% CI 0.814−0.963, P<0.001)。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、母乳中サイトカイン/ケモカイン値に基づき、乳児アトピー性皮膚炎の発症リスクを高い精度で評価することが可能である。また、本発明によれば、乳児のアトピー性皮膚炎の発症を予防する候補物質をスクリーニングすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定する方法であって、
(1)当該乳児が摂取する初乳中のIL−1β、IL−6、IL−7、IL−12p40、IL−13及びMIP−1αからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカイン、或いは当該乳児が摂取する成熟乳中のIL−1α、IL−4、IL−6、IL−7、IL−12p40、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2及びMIP−1αからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカイン又はケモカインの濃度を測定すること;及び
(2)(1)において測定したサイトカイン又はケモカインの濃度と、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクとを相関付けること
を含む、方法。
【請求項2】
乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定する方法であって、
(1)当該乳児が摂取する初乳中のIL−6、IL−12p40及びIL−13、或いは成熟乳中のエオタキシン、IFN−α2及びIL−1αの濃度を測定すること;及び
(2)(1)において測定したサイトカイン又はケモカインの濃度と、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクとを相関付けること
を含む、方法。
【請求項3】
抗ヒトIL−1β抗体、抗ヒトIL−1α抗体、抗ヒトIL−4抗体、抗ヒトIL−6抗体、抗ヒトIL−7抗体、抗ヒトIL−12p40抗体、抗ヒトIL−13抗体、抗ヒトエオタキシン抗体、抗ヒトG−CSF抗体、抗ヒトGM−CSF抗体、抗ヒトIFN−α2抗体及び抗ヒトMIP−1α抗体からなる群から選択される少なくとも1つの抗体を含む、乳児が摂取する初乳又は成熟乳中のサイトカイン又はケモカイン濃度に基づき、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症リスクを判定するための診断薬。
【請求項4】
抗ヒトIL−6抗体、抗ヒトIL−12p40抗体及び抗ヒトIL−13抗体を含む抗体の組み合わせ、或いは抗ヒトエオタキシン抗体、抗ヒトIFN−α2抗体及び抗ヒトIL−1α抗体を含む抗体の組み合わせを含む、請求項3記載の診断薬。
【請求項5】
被検物質が、初乳中のIL−1β、IL−6、IL−7、IL−12p40、IL−13又はMIP−1α、或いは成熟乳中のIL−4、IL−6、IL−7、IL−12p40、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2又はMIP−1αの濃度を抑制し得るか否か、或いは成熟乳中のIL−1α濃度を上昇させ得るか否か評価すること、及び
初乳中のIL−1β、IL−6、IL−7、IL−12p40、IL−13又はMIP−1α、或いは成熟乳中のIL−4、IL−6、IL−7、IL−12p40、エオタキシン、G−CSF、GM−CSF、IFN−α2又はMIP−1αの濃度を抑制した被検物質、或いは成熟乳中のIL−1α濃度を上昇させた被検物質を、当該乳児のアトピー性皮膚炎の発症を予防する物質として選択すること
を含む、乳児のアトピー性皮膚炎の発症を予防する物質のスクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−233777(P2012−233777A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102014(P2011−102014)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】