説明

母乳流量計装置および方法

本発明により、直母授乳中に乳児が摂取する母乳の量を測定する装置が提供される。この装置は、乳児に授乳をするために乳房を露出できるように開口部を設けたブラジャー型の下着(30)を備えている。前記ブラジャーの内側には裏地(32)が取り付けられている。超音波ドップラー効果送信機プローブ(44)と受信機プローブ(46)が、授乳者の各乳首の方向に向けてブラジャー裏地に付加されている。また、プローブ(44、46)が測定した流量測定値を容量単位に変換する手段を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直母授乳中における乳児の母乳摂取量を監視および測定する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乳児の授乳は、栄養と病気に対する免疫とを含んだ重要な医療および道徳的行為である。さらに、授乳工程は母子の絆を強める助けにもなる。
【0003】
乳児が毎食時に摂取した母乳の量を監視および測定することが必要不可欠である。
【0004】
従来、乳児が摂取した母乳の量を測定するための旧式で多少原始的な方法は、授乳の前後に乳児の体重を測定するというものであった。この方法は非常に不正確であり、リアルタイムの情報を提供できない。
【0005】
米国特許5、827、191号(Rosenfeld)は、摂取母乳量に関するリアルタイムの情報を提供するために、埋め込み式で推進ベースの流量計を装備した弾性乳首を採用することを提案してこの問題に取り組んだ。
【0006】
この方法の実施に伴う障害は技術的に克服不能と思われることに加えて、この乳首が乳児と母親の身体との自然な触れ合いの妨げとなるという明らかな欠点を備えている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これは、国際公開WO01/54488号(Vaslov Traders (Pty) Ltd.)にも適合する。そのため、本発明の主要な目的は、授乳中に摂取された母乳の量に関するリアルタイムな測定情報を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、乳児と母親の乳房との間の妨げとなることなく、直母授乳時に乳児が摂取する母乳の量を精密に測定できる方法および装置を提供することである。
【0009】
本発明のまたさらなる目的は、ドップラー効果型の超音波流量計を利用して、乳児が摂取する母乳の量を測定することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの局面によれば、本発明は、直母授乳の最中に乳児が摂取する母乳の量を測定する方法であり、授乳タイプのブラジャーを提供するステップと、ブラジャーの2つの乳房保持部分の各々の、ブラジャーを装着している授乳者の乳首付近に向いた位置に、超音波ドップラー効果送信機プローブと受信機プローブを付加するステップと、直母授乳中にプローブを作動させて、各乳首を通る母乳流量を測定するステップと、流量測定値を摂取量の容量単位に変換し、累積させるステップとを備えている。
【0011】
本発明の別の局面によれば、直母授乳中に乳児が摂取する母乳の量を測定する装置が得られ、この装置は、乳児に授乳するために乳房を露出できる開口部を設けたブラジャー型の下着と、ブラジャーに、授乳者の乳首付近の方向に向けて付加された超音波ドップラー効果送信機プローブと、ブラジャーに、授乳者の乳首付近の方向に向けて付加された超音波ドップラー効果プローブとを備えている。
【0012】
この装置はさらに、プローブを、流量測定手段として機能させるべく作動させる手段と、流量測定値を容量単位に変換し、累積させる手段と、総摂取量を表示するための読み出しユニットとを備えている。
【0013】
本発明のこれらおよび追加の特徴は、以下の例証のみの方法による好ましい実施形態の説明を添付の図面を参照しながら考慮することでさらに明確に理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の詳細を参照する前に、ドップラー測定技術はもちろん、直母授乳に関する生理学とについて特別に前置き的な説明が必要である。
液体の流れを測定するドップラー型超音波流量計の使用は工業用途さらに科学および医療用途向けとして知られている。例えば、米国特許第5,682、896号では、血管内の血液の体積流量測定を開始させる方法および装置について説明している。血管の断面(通常は直径)が明らかになったら、この断面に平均速度と経過時間を乗算するだけで流量が算出される。
【0015】
同様の内容の特許は非常に多くある。
図1に示すように乳房は腺であり、母乳製造範囲をサポートおよび保護するための連結した脂肪細胞10から成る。母乳は、腺胞と呼ばれる細胞群12にて製造され、導管と呼ばれる薄管14を下流に流れ、収集容器として機能する乳洞に達する。乳洞16は乳首の乳口18を介して乳房からの排液を行う。乳首は、多数の小孔を設けた乳輪20の中心に位置している。
【0016】
各乳房には15〜20本の乳管14が存在し、母乳はこれらの乳管を流れて乳首の乳口18に到達する。
前述の説明を斟酌すると、直母授乳にドップラーベースの測定方法を適用するには、まず乳首の乳口18の総断面範囲を確認する必要がある(または、乳管14のうち1本の総断面範囲を確認し、次にこれに乳管の本数を乗算する)と理解できるだろう。
【0017】
あるいは、システムを使用する前に、例えば時間単位毎の母乳供給量を実際に測定することで、初期較正手順を適用することができる。
また別の可能性では、多くの場合に適用可能であるとされる平均断面範囲の存在を経験的に証明する。
次に、図2〜図7を参照して、本発明の目的を果たように仕立てられたブラジャーの好ましい実施形態を例証する。
【0018】
参照符号30で示すブラジャーは、肩ストラップ34を備えたいわゆる基本構造32で構成された多層式のものであるが、従来の授乳用ブラジャーで知られているように、乳児に直母授乳を行うために乳房を露出できるよう、乳首周囲に大きな開口部を設けている。
このブラジャー30の第2構成要素は、図5中で参照符号36にて総体的に示している裏地部材から成る。これは押しボタン38によって基本構造32に内部から接着されるようになっている。裏地36は、好ましくは図示にあるように布地に縫い付けた配線40を設けている。配線40は、2対の離間した超音波ドップラー効果送信機プローブ44と受信機プローブ46(またはトランシーバ)に制御およびデータ処理ユニット42を接続する。この際、プローブが使用者の乳首付近の点Xに向かう形で接続する(図3、図4)。
【0019】
各対(異なる平面内に位置している)のプローブ間の角度α、βは、従来技術で知られているドップラー測定における相対パラメータ処理であり、また、使用中に何らかの不安定な支持が原因で生じた小さい変化ではなく定数であると考えることができる。
【0020】
図5、図7に見られるように、各乳房用のキャップ50が、押しボタン38によってブラジャーに接続可能に設けられている。
【0021】
直母授乳時にはこのカバー50の一方または他方が取り外される。
【0022】
読み出しユニット52は配線54によって処理ユニット42に配線接続されて、便利に使用者の首から下げられる(図2)。
【0023】
ユニット52で生成された測定値は、任意の所与時間に監視された母乳の流れの存在および密度(即ち品質)を示すものでもあることが容易に理解されるだろう。
【0024】
上記のブラジャー設計は有利と考えられるが、本発明に多くの変更を加えて実施することも可能である。
【0025】
本発明に関係する当業者は、付属の請求項において、またこれにより定義された本発明の真の精神および範囲から逸脱しない限り、多数の変更、応用および改造が可能である点を容易に理解するだろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】人間の乳房の略断面図である。
【図2】本発明の原理に基づく設計のブラジャーを使用した授乳者の三次元略図である。
【図3】超音波ドップラー送信機プローブと受信機プローブの乳房に対する場所を示す平面略図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】プローブおよびこれに関連する配線キャリアとして使用されるブラジャーの裏地を示す。
【図6】下に裏地を取り付けた状態のブラジャーを示す。
【図7】前部カバーキャップを備えた授乳用ブラジャーを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直母授乳の最中に乳児が摂取する母乳の量を測定する方法であり、
授乳タイプのブラジャー(30)を提供するステップと、
前記ブラジャーの2つの乳房保持部分の各々に、超音波ドップラー効果送信機プローブと受信機プローブ(44、46)を、ブラジャーを装着している授乳者の乳首付近に向けて付加するステップと、
直母授乳中にプローブを作動させて、各乳首を通る母乳流量を測定するステップと、
前記流量測定値を摂取量の容量単位に変換し、累積させるステップとを備える方法。
【請求項2】
前記流量の測定値を時間の関数としての容量単位に較正するステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
直母授乳中に乳児が摂取する母乳の量を測定する装置であり、
乳児への授乳のために乳房を露出できる開口部を設けたブラジャー型の下着(32)と、
前記ブラジャーに、前記授乳者の乳首付近の方向に向けて付加された超音波ドップラー効果送信機プローブ(44)と、
前記ブラジャーに、前記授乳者の乳首付近の方向に向けて付加された超音波ドップラー効果受信機プローブ(46)と、
前記プローブを、流量測定手段として機能させるべく作動させる手段(42)と、
前記流量測定値を容量単位に変換し、累積させる手段と、
前記総摂取量を表示するための読み出しユニット(52)とを備えた装置。
【請求項4】
前記プローブは、前記ブラジャーに内側から取り付けることが可能な内側裏地部材(36)に搭載されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ブラジャーはさらに、前記開口部と前記プローブを被服するキャップ(50)を設けている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記ブラジャーの中央に搭載された制御およびデータ処理ユニット(42)と、前記制御およびデータ処理ユニットに接続して設けられた読み出しユニット(52)とをさらに備える、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記読み出しユニット(52)は前記授乳者の首周囲に装着される、請求項6に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2008−520329(P2008−520329A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542500(P2007−542500)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【国際出願番号】PCT/IL2005/001196
【国際公開番号】WO2006/054287
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(507147552)マムセンス リミテッド (1)
【Fターム(参考)】