説明

毒性を低減するためのドキソルビシンアジュバントおよびその使用法

宿主毒性の低減が観察されるドキソルビシン活性物質の使用法を提供する。ドキソルビシン活性物質の有効量を被験者に、ドキソルビシン毒性低減アジュバント、例えばニトロン化合物またはニトロン化合物とビスジオキソピペラジン化合物との組み合わせと併せて投与する段階を含む方法の局面を提供する。本発明の方法を実施する際に用いるための組成物も提供する。これら方法および組成物は、様々な異なる疾患状態の治療を含む様々な異なる適用において有用である。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
35 U.S.C. § 119 (e)に従い、本出願は2009年2月12日提出の米国特許仮出願第61/028,090号の提出日に対する優先権を主張し;その開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
序論
ドキソルビシンまたはヒドロキシルダウノルビシンは化学療法において広く用いられる抗新生物薬である(Hortobagyi, Drugs, 54 (Supplement 4):1-7 (1997)(非特許文献1))。これはアンスラサイクリン系抗生物質で、ダウノマイシンに構造上密接に関連している(Minotti et al.,Pharmacologiy. Rev., 56; 185-229 (2004) (非特許文献2)。ドキソルビシン(DOX)は、血液、リンパ系、膀胱、乳房、胃、肺、卵巣、甲状腺、神経、腎臓、骨、筋および腱を含む軟部組織の癌、多発性骨髄腫、ならびにその他を含む、広範囲の癌の治療において一般的に用いられる。
【0003】
ドキソルビシンは毒性が高い薬物である。心毒性がその最も重要で、用量を制限する毒性である(Outomuro et al., Int J Cardiol.,117: 6-15 (2007) (非特許文献3))。ドキソルビシンの累積用量が増すにつれ、うっ血性心不全、拡張型心筋症および死亡を含む心副作用を発生する危険度も同様に増大する。
【0004】
ドキソルビシンの毒性を最小限に抑える試みには、組み合わせ化学療法、ドキソルビシン類縁体の合成、抗体コンジュゲート、免疫療法およびリポソームへの捕捉が含まれてきた。1つの組み合わせは、心毒性の危険度を低減するための心保護剤であるデクスラゾキサン(4-[1-(3,5-ジオキソピペラジン-1-イル)プロパン-2-イル]ピペラジン-2,6-ジオン)を用いる(Hellmann, Semin Oncol, 25: 48-54 (1998) (非特許文献4)およびHasinoff and Herman Cardioiovasc Toxicol, 7:140-144 (2007) (非特許文献5)。ダウノルビシンおよびドキソルビシンを組み合わせたリポソーム製剤も心毒性を低減するようである(Batist, Cardiovasc Toxicol, 7: 72-4 (2007) (非特許文献6)。しかし、問題はまだ解決されておらず、ドキソルビシンの毒性を低減するための新しい様式を見いだすことに関心が持たれ続けている。
【0005】
ニトロンは化学系と、その後、生化学系において、フリーラジカルを捕捉(スピントラッピングとして公知)するための物質として初めて使用されたイミンのN-オキシドである。ニトロンは神経変性疾患ならびに卒中、アルツハイマー病および癌の発生などの他の加齢関連疾患の治療において可能性を有することが明らかにされている。(Floyd et al., Free Radical Biology and Medicine, 45, 1361-1374 (2008) (非特許文献7))。酸化的ストレスを減少させ、酸化的損傷を制限するほかに、ニトロンは、細胞シグナル伝達プロセスを変えることにより、炎症関連疾患の動物モデルにおいて抗炎症活性も示した(Floyd et al., Free Radical Biology and Medicine, 45, 1361-1374 (2008) (非特許文献7))。
【0006】
α-フェニル-N-tert-ブチルニトロン(「PBN」)は、様々な神経変性および加齢関連疾患モデルにおいて強力な薬理活性を有することが判明している、広く研究されたニトロンである(Maples et al., CNS Drugs, 18(15), 1071-1084 (2004) (非特許文献8);Green et al., Pharmacol. Ther., 100(3), 195-214 (2003) (非特許文献9);Floyd et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 959, 321-329 (2002) (非特許文献10);Floyd et al., Mech. Ageing Dev., 123(8), 1021-1031 (2002) (非特許文献11);Kotake, Antioxid. Redox Signal., 1(4), 481-499 (1999) (非特許文献12))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Hortobagyi, Drugs, 54 (Supplement 4):1-7 (1997)
【非特許文献2】Minotti et al.,Pharmacologiy. Rev., 56; 185-229 (2004)
【非特許文献3】Outomuro et al., Int J Cardiol.,117: 6-15 (2007)
【非特許文献4】Hellmann, Semin Oncol, 25: 48-54 (1998)
【非特許文献5】Hasinoff and Herman Cardioiovasc Toxicol, 7:140-144 (2007)
【非特許文献6】Batist, Cardiovasc Toxicol, 7: 72-4 (2007)
【非特許文献7】Floyd et al., Free Radical Biology and Medicine, 45, 1361-1374 (2008)
【非特許文献8】Maples et al., CNS Drugs, 18(15), 1071-1084 (2004)
【非特許文献9】Green et al., Pharmacol. Ther., 100(3), 195-214 (2003)
【非特許文献10】Floyd et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 959, 321-329 (2002)
【非特許文献11】Floyd et al., Mech. Ageing Dev., 123(8), 1021-1031 (2002)
【非特許文献12】Kotake, Antioxid. Redox Signal., 1(4), 481-499 (1999)
【発明の概要】
【0008】
概要
宿主毒性の低減が観察されるドキソルビシン活性物質の使用法が提供される。本発明の方法において、ドキソルビシン活性物質の有効量を宿主に、本発明のドキソルビシン毒性低減アジュバントの投与と併せて投与し、ここでドキソルビシン活性物質およびドキソルビシン毒性低減アジュバントは逐次、同時、またはその任意の組み合わせで投与してもよい。ドキソルビシン毒性低減アジュバントはニトロン官能基を含む化合物である。同様に提供されるのは、本発明の方法を実施する際に用いるための組成物、例えば、毒性が低減されたドキソルビシン薬学的組成物およびこれを含むキットである。本発明の方法ならびに一般にニトロン化合物に典型的であるか、またはニトロン化合物の使用により利益を受ける、他の適用において用いられる、チオール修飾ニトロンを含む組成物も提供される。したがって、本発明の方法および組成物は、様々な異なる疾患状態の治療を含む、様々な異なる適用において用いられる。本発明の方法および組成物の顕著な利点を示す例示的適用は、ドキソルビシン誘導性心損傷の低減である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、代表的なニトロン試験品であるTK-115339の、ドキソルビシン誘導性毒性の1つの局面である、CD-1マウスにおける心損傷を緩和する能力を、動物血漿中の心臓トロポニンI(cTnI)の濃度により評価して示す1組のデータを示す。
【図2】図2は、ドキソルビシン誘導性毒性に対してTK-115339によりもたらされた保護の用量反応を示す1組のデータを示す。
【図3】図3は、CCRF-CEMヒト癌細胞において、TK-115339がドキソルビシンの毒性を妨害しないことを示す1組のデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
化合物、そのような化合物を含む薬学的組成物ならびにそのような化合物および組成物の使用法を記載する場合、下記の用語は特に記載がないかぎり下記の意味を有する。また、以下に定義する任意の部分は様々な置換基で置換されていてもよく、それぞれの定義はそれらの範囲内にそのような置換部分を含むことが意図されることも理解されるべきである。非限定例として、そのような置換基には、例えば、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモなど)、-CN、-CF3、-OH、-OCF3、C2-6アルケニル、C3-6アルキニル、C1-6アルコキシ、アリールおよびジ-C1-6アルキルアミノが含まれうる。
【0011】
「アシル」とは、-C(O)Rなる基であって、Rが本明細書において定義される水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルである基を意味する。代表例には、ホルミル、アセチル、シルコヘキシルカルボニル、シクロヘキシルメチルカルボニル、ベンゾイル、ベンジルカルボニルなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0012】
「アシルアミノ」とは、-NR'C(O)Rなる基であって、R'が本明細書において定義される水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルであり、Rが水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルである基を意味する。代表例には、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノ、シクロヘキシルメチル-カルボニルアミノ、ベンゾイルアミノ、ベンジルカルボニルアミノなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0013】
「アシルオキシ」とは、-OC(O)H、-OC(O)-アルキル、-OC(O)-アリールまたは-OC(O)-シクロアルキルなる基を意味する。
【0014】
「脂肪族」とは、構成成分である炭素原子の直鎖、分枝または環式配置および芳香族不飽和の欠如によって特徴づけられる、ヒドロカルビル有機化合物または基を意味する。脂肪族には、アルキル、アルキレン、アルケニル、アルケニレン、アルキニルおよびアルキニレンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。脂肪族基は典型的には1または2個から6または12個までの炭素原子を有する。
【0015】
本明細書において用いられる「アルカノイル」または「アシル」とは、-C(O)Hまたは-C(O)-アルキルなる基を意味する。
【0016】
「アルケニル」とは、直鎖または分枝でありえ、少なくとも1つ、特に1つから2つのオレフィン不飽和部位を有する、最大約11個の炭素原子、特に2から8個の炭素原子、特に2から6個の炭素原子を有する一価オレフィン不飽和ヒドロカルビル基を意味する。特定のアルケニル基には、エテニル(-CH=CH2)、n-プロペニル(-CH2CH=CH2)、イソプロペニル(-C(CH3)=CH2)、ビニルおよび置換ビニルなどが含まれる。
【0017】
「アルケニレン」とは、直鎖または分枝でありえ、少なくとも1つ、特に1から2つのオレフィン不飽和部位を有する、特に最大約11個の炭素原子、特に2から6個の炭素原子を有する二価オレフィン不飽和ヒドロカルビル基を意味する。この用語はエテニレン(-CH=CH-)、プロペニレン異性体(例えば、-CH=CHCH2-および-C(CH3)=CH-および-CH=C(CH3)-)などの基によって例示される。
【0018】
「アルコキシ」とは、-O-アルキルなる基を意味する。特定のアルコキシ基には、例として、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソキシ、1,2-ジメチルブトキシなどが含まれる。
【0019】
「アルコキシアミノ」とは、本明細書において定義される-N(H)O-アルキルまたは-N(H)O-シクロアルキルなる基を意味する。
【0020】
「アルコキシカルボニル」とは、-C(O)-アルコキシなる基であって、アルコキシが本明細書において定義されるとおりである基を意味する。
【0021】
「アルコキシカルボニルアミノ」とは、-NRC(O)OR'なる基であって、Rが水素、アルキル、アリールまたはシクロアルキルであり、R'がアルキルまたはシクロアルキルである基を意味する。
【0022】
「アルキル」とは、特に最大約11個の炭素原子、特に低級アルキルとして1から8個の炭素原子、特に1から6個の炭素原子を有する一価飽和脂肪族ヒドロカルビル基を意味する。炭化水素鎖は直鎖または分枝のいずれであってもよい。この用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチル、tert-オクチルなどの基によって例示される。「低級アルキル」なる用語は、1から6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。「アルキル」なる用語は、以下に定義する「シクロアルキル」も含む。
【0023】
「アルキルアミノ」とは、アルキル-NRR'なる基であって、RおよびR'がそれぞれ水素およびアルキルから独立に選択される基を意味する。
【0024】
「アルキルアリールアミノ」とは、-NRR'なる基であって、Rが本明細書において定義されるアルキルまたはシクロアルキル基を表し、R'がアリールである基を意味する。
【0025】
「アルキレン」とは、直鎖または分枝でありうる、特に最大約11個の炭素原子、特に1から6個の炭素原子を有する二価飽和脂肪族ヒドロカルビル基を意味する。この用語は、メチレン(-CH2-)、エチレン(-CH2CH2-)、プロピレン異性体(例えば、-CH2CH2CH2-および-CH(CH3)CH2-)などの基によって例示される。
【0026】
「アルキルチオ」とは、本明細書において定義されるとおり置換されていてもよい、本明細書において定義される-S-アルキルなる基または-S-シクロアルキル基を意味する。代表例には、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0027】
「アルキニル」とは、直鎖または分枝でありえ、少なくとも1つ、特に1つから2つのアルキニル不飽和部位を有する、特に最大約11個の炭素原子、特に2から6個の炭素原子を有するアセチレン不飽和ヒドロカルビル基を意味する。アルキニル基の特定の非限定例には、アセチレン型、エチニル(-C≡CH)、プロパルギル(-CH2C≡CH)などが含まれる。
【0028】
「アミノ」とは、-NH2なる基を意味する。
【0029】
「アミノカルボニル」とは、-C(O)NRRなる基であって、Rがそれぞれ独立に水素、アルキル、アリールもしくはシクロアルキルであるか、またはR基が一緒になってアルキレン基を形成している基を意味する。
【0030】
「アミノカルボニルアミノ」とは、-NRC(O)NRRなる基であって、Rがそれぞれ独立に水素、アルキル、アリールもしくはシクロアルキルであるか、または2つのR基が一緒になってアルキレン基を形成している基を意味する。
【0031】
「アミノカルボニルオキシ」とは、-OC(O)NRRなる基であって、Rがそれぞれ独立に水素、アルキル、アリールもしくはシクロアルキであるか、またはR基が一緒になってアルキレン基を形成している基を意味する。
【0032】
「アミノヒドロキシホスホリル」とは、-PO(OH)NH2なる基を意味する。
【0033】
「アラルキル」または「アリールアルキル」とは、上で定義された1つまたは複数のアリール基で置換されている、上で定義されたアルキル基を意味する。
【0034】
「アリール」とは、親芳香環系の1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することによって誘導される一価芳香族炭化水素基を意味する。典型的なアリール基には、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ-2,4-ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどから誘導される基が含まれるが、それらに限定されるわけではない。特に、アリール基は6から14個の炭素原子を含む。
【0035】
「アリールアルキルオキシ」とは、-O-アリールアルキル基であって、アリールアルキルが本明細書において定義されるとおりである基を意味する。
【0036】
「アリールアミノ」とは、アリール-NRR'なる基であって、RおよびR'がそれぞれ水素、アリールおよびヘテロアリールから独立に選択される基を意味する。
【0037】
「アリールオキシ」とは、-O-アリール基であって、「アリール」が本明細書において定義されるとおりである基を意味する。
【0038】
「アリールスルホニル」とは、-S(O)2Rなる基であって、Rが本明細書において定義されるアリールまたはヘテロアリール基である基を意味する。
【0039】
「アジド」とは、-N3なる基を意味する。
【0040】
「カルバモイル」とは、-C(O)N(R)2なる基であって、R基がそれぞれ独立に、本明細書において定義されるとおり置換されていてもよい、本明細書において定義される水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールである基を意味する。
【0041】
「カルボキシ」とは、-C(O)OHなる基を意味する。
【0042】
「シアノ」とは、-CNなる基を意味する。
【0043】
「シクロアルケニル」とは、3から10個の炭素原子を有し、1つの環または縮合および架橋環系を含む複数の縮合環を有し、少なくとも1つ、特に1つから2つのオレフィン不飽和部位を有する、環式ヒドロカルビル基を意味する。そのようなシクロアルケニル基には、例として、シクロヘキセニル、シクロペンテニル、シクロプロペニルなどの単環構造が含まれる。
【0044】
「シクロアルキル」とは、3から約10個の炭素原子を有し、1つの環または縮合および架橋環系を含む複数の縮合環を有する、環式ヒドロカルビル基であって、1つから3つのアルキル基で置換されていてもよい基を意味する。そのようなシクロアルキル基には、例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル、1-メチルシクロプロピル、2-メチルシクロペンチル、2-メチルシクロオクチルなどの単環構造、およびアダマンチルなどの多環構造が含まれる。
【0045】
「シクロヘテロアルキル」とは、N、OおよびSから独立に選択される1つまたは複数のヘテロ原子を含む、安定な複素環式非芳香環および縮合環を意味する。縮合複素環系は炭素環を含んでいてもよく、1つの複素環を含むことだけが必要である。複素環の例には、ピペラジニル、ホモピペラジニル、ピペリジニルおよびモルホリニルが含まれるが、それらに限定されるわけではなく、以下に例示する:

これらはアシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アルコキシ、置換アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、ニトロ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオケト、チオール、アルキル-S(O)-、アリール-S(O)-、アルキル-S(O)2-およびアリール-S(O)2-からなる群より選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよい。置換基には、例えば、ラクタムおよび尿素誘導体を提供するカルボニルまたはチオカルボニルが含まれる。上記の例において、MはCR7、NR3、O、またはSであり;QはO、NR3またはSである。
【0046】
「ジアルキルアミノ」とは、-NRR'なる基であって、RおよびR'が独立に本明細書において定義されるアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリール基を表す基を意味する。
【0047】
「ジヒドロキシホスホリル」とは、-PO(OH)2なる基を意味する。
【0048】
「ドキソルビシン薬学的組成物」とは、別々または組み合わせ製剤のいずれかで投与するための、ドキソルビシン毒性低減アジュバントとの組み合わせで用いるドキソルビシン活性物質を意味する。
【0049】
「ハロ」または「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。ハロ基はフルオロまたはクロロのいずれかでありうる。
【0050】
化合物または化合物上にある基を記載するために用いる場合の「ヘテロ」とは、化合物または基の1つまたは複数の炭素原子が窒素、酸素、または硫黄ヘテロ原子で置き換えられていることを意味する。ヘテロは、1つから5つ、特に1つから3つのヘテロ原子を有する、アルキル、例えばヘテロアルキル、シクロアルキル、例えばシクロヘテロアルキル、アリール、例えばヘテロアリール、シクロアルケニル、シクロヘテロアルケニルなどの、前述の任意のヒドロカルビル基に適用してもよい。代表的シクロヘテロアルケニルの例には下記が含まれる:

ここで、XはそれぞれCR5、NR5、OおよびSから選択され;Yはそれぞれカルボニル、N、NR5、OおよびSから選択される。
【0051】
「ヘテロアリール」とは、親芳香族複素環系の1個の原子から1個の水素原子を除去することによって誘導される一価芳香族複素環基を意味する。典型的なヘテロアリール基には、アクリジン、アルシンドール、カルバゾール、β-カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどから誘導される基が含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、ヘテロアリール基は5〜20員ヘテロアリール、または5〜10員ヘテロアリールである。特定のヘテロアリール基は、チオフェン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ピリジン、キノリン、イミダゾール、オキサゾールおよびピラジンから誘導されるものである。代表的ヘテロアリールの例には下記が含まれる:

ここでYはそれぞれカルボニル、N、NR5、O、およびSから選択される。置換を含むヘテロ原子を有する代表的アリールの例には下記が含まれる:

ここでXはそれぞれC-R5、C(R5)2、NR5、OおよびSから選択され;Yはそれぞれカルボニル、NR5、OおよびSから選択される。
【0052】
「ヒドロキシル」とは、-OHなる基を意味する。
【0053】
「ニトロ」とは、-NO2なる基を意味する。
【0054】
「R1」はそれぞれ置換または無置換脂肪族、置換または無置換アルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、置換または無置換アラルキル、および置換または無置換ヘテロアラルキルからなる群より独立に選択される。
【0055】
「R2」および「R3」はそれぞれ水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換アラルキルからなる群より独立に選択される。
【0056】
「R4」はそれぞれ水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、および置換または無置換アラルキルからなる群より独立に選択され、任意の2つのR4は一緒になってシクロアルキル、シクロヘテロアルキル環を形成してもよい。
【0057】
「R5」はそれぞれ独立に水素、アルキル、置換アルキル、アシル、置換アシル、アシルアミノ、置換アシルアミノ、アルキルアミノ、置換アルキルアミノ、アルキルチオ、置換アルキルチオ、アルコキシ、置換アルコキシ、アルコキシカルボニル、置換アルコキシカルボニル、アルキルアリールアミノ、置換アルキルアリールアミノ、アリールアルキルオキシ、置換アリールアルキルオキシ、アミノ、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、スルホキシド、置換スルホキシド、スルホン、置換スルホン、スルファニル、置換スルファニル、アミノスルホニル、置換アミノスルホニル、アリールスルホニル、置換アリールスルホニル、スルホン酸、スルホン酸エステル(すなわち、スルホネート)、ジヒドロキシホスホリル、置換ジヒドロキシホスホリル、アミノヒドロキシホスホリル、置換アミノヒドロキシホスホリル、アジド、カルボキシ、置換カルボキシ(すなわち、エステル)、カルバモイル、置換カルバモイル、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ジアルキルアミノ、置換ジアルキルアミノ、ハロ、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヒドロキシル、ニトロまたはチオである。
【0058】
「R6」は水素、-SR7、-SO2R7、-SO2NR7R8、-SO3R7、-CONR7R8、-NR7R8、-OH、-PO(OR7)NR8R9、-PO(OR7)2および-CO2R7からなる群より選択される。
【0059】
「R7」、「R8」、および「R9」はアシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アルコキシ、置換アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、ニトロ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオケト、チオール、アルキル-S(O)-、アリール-S(O)-、アルキル-S(O)2-およびアリール-S(O)2-からなる群より独立に選択される。
【0060】
「R10」、「R11」、および「R12」は独立に水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、パーフルオロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換またはヘテロアルキルなどである。
【0061】
「R13」および「R20」は独立に水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロヘテロアルキル、アルカノイル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、NR10COR11、NR10SOR11、NR10SO2R14、COOアルキル、COOアリール、CONR10R11、CONR10OR11、NR10R11、SO2NR10R11、S-アルキル、S-アルキル、SOアルキル、SO2アルキル、Sアリール、SOアリール、もしくはSO2アリールであるか;またはR13およびR20は、N、OもしくはSの群より選択される1つもしくは複数のヘテロ原子を任意に含む、5から8原子の環(飽和または不飽和)を形成する。
【0062】
「R14」、「R15」、「R16」、および「R17」は独立に水素、アルキル、置換アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、-NR18R19、-C(O)R18もしくは-S(O)2R18であるか、または任意にR18およびR19はそれら両方が結合している原子と一緒になって、シクロヘテロアルキルもしくは置換シクロヘテロアルキル環を形成する。
【0063】
「R18」、「R19」、および「R22」はそれぞれ水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換アリールアルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換シクロヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換ヘテロアリールアルキルからなる群より独立に選択される。
【0064】
「R21」はR22または-S-R22である。
【0065】
「空間異性体(Spatial isomers)」とは、構造異性体以外の異性体を意味する。例には、鏡像異性体などの立体異性体、ジアステレオマー、幾何異性体、互変異性体、シス-トランス異性体、同位体異性体、およびスピン異性体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0066】
「置換(されている)」とは、1つまたは複数の水素がそれぞれ独立に同じまたは異なる置換基で置き換えられている基を意味する。典型的な置換基には、-X、-R14、-O-、=O、-OR14、-SR14、-S-、=S、-NR14R15、=NR14、-CX3、-CF3、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO2、=N2、-N3、-S(O)2O-、-S(O)2OH、-S(O)2R14、-OS(O2)O-、-OS(O)2R14、-P(O)(O-)2、-P(O)(OR14)(O-)、-OP(O)(OR14)(OR15)、-C(O)R14、-C(S)R14、-C(O)OR14、-C(O)NR14R15、-C(O)O-、-C(S)OR14、-NR16C(O)NR14R15、-NR16C(S)NR14R15、-NR17C(NR16)NR14R15および-C(NR16)NR14R15が含まれるが、それらに限定されるわけではなく、ここでXはそれぞれ独立にハロゲンである。
【0067】
「置換アルケニル」には、本明細書の「置換(されている)」の定義において挙げられる基が含まれ、特に、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アルコキシ、置換アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、ニトロ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオケト、チオール、アルキル-S(O)-、アリール-S(O)-、アルキル-S(O)2-およびアリール-S(O)2-からなる群より選択される、1つまたは複数の置換基、例えば1つから5つの置換基、特に1つから3つの置換基を有するアルケニル基を意味する。
【0068】
「置換アルコキシ」には、本明細書の「置換(されている)」の定義において挙げられる基が含まれ、特に、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アルコキシ、置換アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ハロゲン、ヘテロアリール、ヒドロキシル、ケト、ニトロ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオケト、チオール、アルキル-S(O)-、アリール-S(O)-、アルキル-S(O)2-およびアリール-S(O)2-からなる群より選択される、1つまたは複数の置換基、例えば1つから5つの置換基、特に1つから3つの置換基を有するアルコキシ基を意味する。
【0069】
「置換アルキル」には、本明細書の「置換(されている)」の定義において挙げられる基が含まれ、特に、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アルコキシ、置換アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、ヘテロアリール、ケト、ニトロ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオケト、チオール、アルキル-S(O)-、アリール-S(O)-、アルキル-S(O)2-、およびアリール-S(O)2-からなる群より選択される、1つまたは複数の置換基、例えば1つから5つの置換基、特に1つから3つの置換基を有するアルキル基を意味する。
【0070】
「置換アルキレン」には、本明細書の「置換(されている)」の定義において挙げられる基が含まれ、特に、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アルコキシ、置換アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、ニトロ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオケト、チオール、アルキル-S(O)-、アリール-S(O)-、アルキル-S(O)2-、およびアリール-S(O)2-からなる群より選択される、1つまたは複数の置換基、例えば1つから5つの置換基、特に1つから3つの置換基を有するアルキレン基を意味する。
【0071】
「置換アルキニル」には、本明細書の「置換(されている)」の定義において挙げられる基が含まれ、特に、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アルコキシ、置換アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、ニトロ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオケト、チオール、アルキル-S(O)-、アリール-S(O)-、アルキル-S(O)2-およびアリール-S(O)2-からなる群より選択される、1つまたは複数の置換基、例えば1つから5つの置換基、特に1つから3つの置換基を有するアルキニル基を意味する。
【0072】
「置換アミノ」には、本明細書の「置換(されている)」の定義において挙げられる基が含まれ、特に、-N(R)2なる基であって、Rがそれぞれ水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキルからなる群より独立に選択される基、および両方のR基が一緒になってアルキレン基を形成する基を意味する。
【0073】
「置換アミノヒドロキシホスホリル」には、本明細書の「置換(されている)」の定義において挙げられる基が含まれ、特に、アミノ基が1つまたは2つの置換基で置換されているアミノヒドロキシホスホリルを意味する。特定の態様において、ヒドロキシル基が置換されていることもある。
【0074】
「置換アリール」には、本明細書の「置換(されている)」の定義において挙げられる基が含まれ、特に、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アルケニル、置換アルケニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキル、置換アルキル、アルキニル、置換アルキニル、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオール、アルキル-S(O)-、アリール-S(O)-、アルキル-S(O)2-およびアリール-S(O)2-からなる群より選択される、1つまたは複数の置換基、例えば1つから5つの置換基、特に1つから3つの置換基で置換されていてもよいアリール基を意味する。代表的な置換アリールの例には下記の構造が含まれる:

【0075】
「置換シクロアルケニル」には、本明細書の「置換(されている)」の定義において挙げられる基が含まれ、特に、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アルコキシ、置換アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、ニトロ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオケト、チオール、アルキル-S(O)-、アリール-S(O)-、アルキル-S(O)2-およびアリール-S(O)2-からなる群より選択される、1つまたは複数の置換基、例えば1つから5つの置換基、特に1つから3つの置換基を有するシクロアルケニル基を意味する。
【0076】
「置換シクロアルキル」には、本明細書の「置換(されている)」の定義において挙げられる基が含まれ、特に、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アルコキシ、置換アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、ニトロ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオケト、チオール、アルキル-S(O)-、アリール-S(O)-、アルキル-S(O)2-およびアリール-S(O)2-からなる群より選択される、1つまたは複数の置換基、例えば1つから5つの置換基、特に1つから3つの置換基を有するシクロアルキル基を意味する。
【0077】
「置換ジヒドロキシホスホリル」には、本明細書の「置換(されている)」の定義において挙げられる基が含まれ、特に、1つまたは両方のヒドロキシル基が置換されているジヒドロキシホスホリル基を意味する。
【0078】
「置換チオアルコキシ」には、本明細書の「置換(されている)」の定義において挙げられる基が含まれ、特に、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アルコキシ、置換アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、ニトロ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオケト、チオール、アルキル-S(O)-、アリール-S(O)-、アルキル-S(O)2-およびアリール-S(O)2-からなる群より選択される、1つまたは複数の置換基、例えば1つから5つの置換基、特に1つから3つの置換基を有するチオアルコキシ基を意味する。
【0079】
「スルファニル」とは、-SHなる基を意味する。「置換スルファニル」とは、Rが本明細書に記載の任意の置換基である、-SRなどの基を意味する。
【0080】
「スルホン」とは、-SO2Rなる基を意味する。特定の態様において、RはH、低級アルキル、アルキル、アリールおよびヘテロアリールから選択される。
【0081】
「スルホニル」とは、-S(O2)-なる二価の基を意味する。「置換スルホニル」とは、Rが本明細書に記載の任意の置換基である、R-(O2)S-などの基を意味する。「アミノスルホニル」とは、H2N(O2)S-なる基を意味し、「置換アミノスルホニル」とは、Rがそれぞれ独立に本明細書に記載の任意の置換基である、R2N(O2)S-などの基を意味する。
【0082】
「チオアルコキシ」とは、-S-アルキルなる基を意味する。
【0083】
「チオアリールオキシ」とは、-S-アリールなる基を意味する。
【0084】
「チオケト」とは、=Sなる基を意味する。
【0085】
「チオール」とは、-SHなる基を意味する。
【0086】
当業者であれば、それが芳香族であるか、または非芳香族であるかにかかわらず、安定で、化学的に実現可能な複素環におけるヘテロ原子の最大数は、環のサイズ、不飽和度、およびヘテロ原子の原子価によって決まることを理解するであろう。一般に、複素環は、芳香族複素環が化学的に実現可能かつ安定であるかぎり、1から4個のヘテロ原子を有していてもよい。
【0087】
詳細な説明
宿主毒性の低減が観察されるドキソルビシン活性物質の使用法が提供される。本発明の方法において、ドキソルビシン活性物質の有効量を宿主に、本発明のドキソルビシン毒性低減アジュバントの投与と併せて投与し、ここでドキソルビシン活性物質およびドキソルビシン毒性低減アジュバントは逐次、同時、またはその任意の組み合わせで投与してもよい。同様に提供されるのは、本発明の方法を実施する際に用いるための組成物、例えば、毒性が低減されたドキソルビシン薬学的組成物およびこれを含むキットである。本発明の方法ならびに一般にニトロン化合物に典型的であるか、またはニトロン化合物の使用により利益を受ける、他の適用において用いられる、チオール修飾ニトロンを含む組成物も提供される。本発明の方法および組成物は、様々な異なる疾患状態の治療を含む、様々な異なる適用において用いられる。本発明の方法および組成物の顕著な利点を示す例示的適用は、ドキソルビシン誘導性心損傷の低減である。
【0088】
本発明を詳細に記載する前に、記載する特定の態様は当然のことながら変動しうるため、本発明はそのような記載する特定の態様に限定されないことが理解されるべきである。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書において用いられる用語は特定の態様を記載するためのものにすぎず、限定的である意図はないことも理解されるべきである。
【0089】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間にはさまれる、文脈からそうでないことが明示されないかぎり下限の単位の10分の1までのそれぞれの値、および規定の範囲における任意の他の規定の値、または間にはさまれる値は、本発明に含まれることが理解される。規定の範囲において任意の具体的に除外される限界値があると仮定して、これらのより小さい範囲の上限および下限は独立にそのより小さい範囲に含まれてもよく、本発明にも含まれる。規定の範囲が限界値の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界値のいずれかまたは両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0090】
特定の範囲は本明細書において前に「約」なる用語のついた数値で示される。「約」なる用語は本明細書において、その後にくる正確な数、ならびにその用語の後にくる数に近い数または近似の数についての文字による支持を提供するために用いられる。数が具体的に挙げられた数に近いか、または近似であるかどうかを判定する際に、近い、または近似の挙げられていない数は、それが示されている文脈において、具体的に挙げられた数の実質的等価物を提供する数でありうる。
【0091】
特に記載がないかぎり、本明細書において用いられるすべての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者であれば一般に理解するものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等価の任意の方法および材料も本発明の実施または試験において用いることができるが、代表的な例示的方法および材料をここで記載する。
【0092】
本出願において引用するすべての出版物および特許は、それぞれ個々の出版物または特許が参照により本明細書に組み入れられると具体的かつ個別に示されたかのごとく、参照により本明細書に組み入れられ、かつそれらに関して出版物が引用される方法および/または材料を開示および記載するために、参照により本明細書に組み入れられる。いかなる出版物の引用も、提出日よりも前にそれが開示されているためであって、本発明が先行発明のためにそのような出版物に先行する権利がないとの自認であると解釈されるべきではない。さらに、提供される出版物の日付は実際の出版日とは異なることがあり、これらは個別に確認する必要がありうる。
【0093】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈からそうでないことが明示されないかぎり、複数の指示物を含むことに注目される。特許請求の範囲はいかなる任意の要素も除外するよう立案されうることにもさらに注目される。したがって、この言明は、特許請求の範囲の要素の列挙に関する「単独で」、「だけ」などの排他的な用語の使用、または「負」の限定の使用のための、先行基準として役立つことが意図される。
【0094】
本開示を読めば当業者には明らかになるであろうとおり、本明細書において記載および例示される個々の態様はそれぞれ、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、任意の他のいくつかの態様の特徴から容易に分離しうる、またはそれらと容易に組み合わせうる、別々の成分および特徴を有する。任意の挙げられた方法は、挙げられた事象の順で、または論理的に可能な任意の他の順で実施することができる。
【0095】
本発明をさらに詳細に記載する際に、本発明の方法をまず詳細に記載し、続いて本発明の方法において用いうる様々な組成物、例えば、製剤およびキットの概説、ならびに本発明の方法および組成物を用いる様々な代表的適用の議論を記載する。
【0096】
方法
上で概要を記載したとおり、本発明は、例えば、ドキソルビシン活性物質によって治療可能な疾患または状態(以下に詳細に記載する)を患っている宿主を治療するために、ドキソルビシン活性物質をそれを必要としている被験者に投与する方法を提供する。本発明の方法の1つの局面は、ドキソルビシン活性物質を被験者に、ニトロン化合物であるドキソルビシン毒性低減アジュバントとの組み合わせで投与する方法である。「組み合わせで」とは、ドキソルビシン毒性低減アジュバントの一定量を、ドキソルビシン活性物質と同時から最大5時間以上、例えば、10時間、15時間、20時間またはそれ以上前または後のどこかで投与することを意味する。特定の態様において、ドキソルビシン活性物質およびドキソルビシン毒性低減アジュバントを逐次投与し、例えば、ここでドキソルビシン活性物質をドキソルビシン毒性低減アジュバントの前または後に投与する。さらに他の態様において、ドキソルビシン活性物質およびドキソルビシン毒性低減アジュバントを同時に投与し、例えば、ここでドキソルビシン活性物質およびドキソルビシン毒性低減アジュバントを2つの別々の製剤として、または被験者に投与する1つの組成物中に合わせて同時に投与する。ドキソルビシン活性物質およびドキソルビシン毒性低減アジュバントを、上で例示したとおり、逐次または同時のいずれで投与するかにかかわらず、物質は本発明の目的のために一緒に、または組み合わせで投与すると考えられる。2つの物質の投与経路は変動しえ、代表的な投与経路を以下に詳細に記載する。
【0097】
本発明の方法において、ドキソルビシン活性物質の有効量をそれを必要としている宿主にドキソルビシン毒性低減アジュバントの有効量との組み合わせで投与する。ドキソルビシン活性物質とは、ドキソルビシンまたはその類縁体/誘導体、例えば、本来のドキソルビシンおよびその類縁体を意味する。ドキソルビシンは最初は真菌ストレプトマイセス・ピウセチウス(Streptomyces peucetius)から単離されたアンスラサイクリン系抗生物質である。ドキソルビシンの化学構造は四環式の環と、グリコシド結合によって連結された糖ダウノサミンからなる。構造的に、ドキソルビシンはダウノマイシン(ダウノルビシン)と関連しており、「A」環の「9」位におけるアルキル側鎖のヒドロキシル置換(水素の代わりに)でのみ異なる。しかし、ダウノルビシンは急性白血病でのみ有用であるのに対し、ドキソルビシンは広範囲の癌に対して用いることができる。(www.fda.gov、2007 Physicians Desk Referenceおよび他の類似の参照文献における「ドキソルビシン」の内容参照)。ドキソルビシンの塩酸塩は最も一般的な形の1つである。これは、塩酸ドキソルビシン;塩酸14-ヒドロキシダウノルビシン;塩酸3-ヒドロキシアセチルダウノルビシン;および5,12-ナフタセンジオン,10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-.アルファ.-L-リキソ-ヘキソピラノシル)オキシ]-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-8-(ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-,塩酸塩、(8S-cis)-(9CI)などの様々な名称で呼ばれる。塩酸ドキソルビシンは分子式C27H29NO11.HCl、分子量(MW)580.0、およびCAS番号25316-40-9を有する。これは水溶性で、メタノールにわずかに可溶性である。
【0098】
ドキソルビシンは、アンスラサイクリン系のダウノルビシン、エピルビシンおよびイダルビシンの原型化合物と考えることができる。心毒性が少なく、同じ、または改善された抗腫瘍効果を再現する試みにおいて、ドキソルビシンの多くの誘導体が作成されているが、ドキソルビシンはアンスラサイクリン系の中で最も広く投与され続けている。それにもかかわらず、広い範囲の類縁体が合成されて、本来のドキソルビシンによって提供されるものとは異なる抗腫瘍スペクトル、より良い治療指数および低減された毒性を提供している(例えば、Weiss, RB, Semin Oncol., 19:670 (1992)参照)。例えば、本来の化合物とほぼ同等から1000倍までもの抗増殖活性を有し、いくつかは著しく低減された毒性を有し、他は抗増殖活性および低減された毒性の両特性を有する、ドキソルビシンの類縁体が作成されている(Nagy et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 93 (6):2464 (1996);Nagy et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 95 (4):1794 (1998);Wasowska et al., Anticancer Res. 25(3B):2043 (2005);Fan et al., J Org Chem. 72(8):2917 (2007);Zhang et al., J Med Chem. 49(5):1792 (2006);Battisti et al., Mol Pharm. 4(1):140 (2007);Fang et al., J Med Chem. 49(3):932 (2006);Partugal et al., J Med Chem. 48(26):8209 (2005);Haj et al., Chem Biol Interact. 145(3):349 (2003);Suarato et al., Curr Pharm Des. 5(3):217 (1999);Chaires et al., J Med Chem. 40(3):261 (1997);およびRipamonti et al., Invest New Drugs. 14(2):139 (1996))。より毒性が高い類縁体は遊離型での静脈内投与のためには望ましくないが、そのような類縁体は薬物毒性を低減するリポソーム捕捉型で用いてもよい。
【0099】
本発明のドキソルビシン活性物質には、ドキソルビシン、および本発明の毒性低減アジュバントと併せて投与した場合にその毒性が低減される、その任意の類縁体または誘導体が含まれる。所与のドキソルビシン活性物質が本発明による使用に適しているか否かは、以下の実験項において使用する検定を用いて容易に判定することができる。一般に、ドキソルビシン活性物質は、以下の実験項において記載するとおりインビトロおよび/またはインビボで判定することができる、その毒性が100分の1以下を含む、10分の1以下などの、2分の1以下に低減されている場合、本発明の方法における使用に適している。特定の態様において、ドキソルビシン活性物質は、以下の実験項において記載するマウス検定で観察される、観察可能な毒性副作用の発生率および/または強度を低減するものである。
【0100】
ドキソルビシン毒性低減アジュバントとは、ドキソルビシン活性物質の有害な毒性を低減する物質を意味する。関心対象の毒性低減アジュバントは、以下の実験項において記載するとおりインビトロおよび/またはインビボで判定することができる、ドキソルビシン活性物質の毒性を100分の1以下を含む、10分の1などの、2分の1以下に低減する物質である。特定の態様において、関心対象の毒性低減アジュバントは、以下の実験項において記載するマウス検定で観察される、所与のドキソルビシン活性物質の観察可能な毒性副作用の発生率および/または強度を低減するものである。
【0101】
関心対象のドキソルビシン毒性低減アジュバントには、ニトロン化合物が含まれる。いくつかの態様において、ニトロンは式(I)の化合物:

;もしくは式(II)による式(I)のニトロン化合物:

;もしくは式(III)による式(II)のニトロン化合物:

;またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、およびプロドラッグ型、ならびにその空間異性体であり;
式中:
Lは-[C(R3)2]m-X*-[C(R4)2]n-であり;mは0から6までの整数であり;nは0から6までの整数であり;
X*は原子なし、NR3、O、S、SOおよびSO2からなる群より選択され;
Rは水素、チオール、またはチオール結合体であり;
Cyはそれぞれ置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換シクロヘテロアルキル、ビシクロアルケニル、ビシクロヘテロアルケニル、ビシクロアリール、またはビシクロヘテロアリール環からなる群より独立に選択され;
R1はそれぞれ置換または無置換脂肪族、置換または無置換アルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、置換または無置換アラルキル、および置換または無置換ヘテロアラルキルからなる群より独立に選択され;
R2はそれぞれ水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換アラルキルからなる群より独立に選択され;
R3はそれぞれ水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換アラルキルからなる群より独立に選択され;
R4はそれぞれ水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、および置換または無置換アラルキルからなる群より独立に選択され、かつ任意の2つのR4は一緒になってシクロアルキル、シクロヘテロアルキル環を形成してもよく;
かつX*に隣接する炭素原子上のR3の1つおよびR4の1つは一緒になって5〜7原子の複素環を形成してもよい。
【0102】
式(I)、(II)および(III)におけるニトロン化合物はニトロン官能基の炭素-窒素二重結合の1つの異性体を示しているが、本発明の範囲は、例えば、各ニトロン官能基の炭素-窒素二重結合のすべての異性体(例えば、EおよびZ異性体)を含む、式(I)、(II)および(II)のニトロン化合物のすべての幾何異性体を含む。示した構造はそれぞれ、EおよびZ異性体の両方、もしくはそのいずれか一方、またはその混合物を含むか、または表す。
【0103】
前述の式に関して、Nが正の電荷を有し、Oが負の電荷を有するような、ニトロン部分がOとNとの間の二重結合を含まない、構造(I)、(II)および(III)も書きうることに注目される。例えば、構造IIは構造II(a)として書いてもよい:

【0104】
または、以下の特定の構造において示すとおり、ニトロン部分は矢印がNからOを指す構造によって表される。
【0105】
特定の態様において、本発明は式(I)、(II)または(III)のアリール、芳香族複素環および二環式アリールニトロン化合物を提供し、ここでCyは

であり、
式中:
アリールニトロンについては、WおよびZは一緒になって5から8原子の置換または無置換シクロアルケニルまたはアリール環を形成し;芳香族複素環ニトロンについては、WおよびZは一緒になって5から8原子の置換または無置換シクロヘテロアルケニルまたはヘテロアリール環を形成し;かつ二環式アリールニトロンについては、WおよびZは一緒になって8から11原子のビシクロアルケニル、ビシクロヘテロアルケニル、ビシクロアリール、またはビシクロヘテロアリール環を形成する。
【0106】
特定の態様において、本発明は式(I)、(II)および(III)のアリールおよび芳香族複素環ニトロン化合物を提供し、ここでCyは

であり、
式中:W、W'、X、YおよびZのm'はNであり、残りはそれぞれ独立にC-R5であり;かつm'は0から3の整数である。
【0107】
特定の態様において、本発明は式(I)、(II)または(III)の芳香族複素環ニトロン化合物を提供し、ここでCyは

であり、
式中:W、W'、X、およびZはC-R5、O、S、SO、SO2、NR3およびNから独立に選択され;かつ点線は一重または二重結合である。
【0108】
特定の態様において、本発明は式(I)、(II)または(III)の二環式アリールニトロン化合物を提供し、ここでCyは

であり、
式中、W、W'、X、YおよびZはシクロアルケニル、アリール、シクロヘテロアルケニルまたはヘテロアリール環の構成員であり;かつW、W'、X、YおよびZの任意の隣接する対はさらに一緒になって、W、W'、X、YおよびZを含むシクロアルケニル、アリール、シクロヘテロアルケニルまたはヘテロアリール環と共にビシクロアルケニル、ビシクロヘテロアルケニル、ビシクロアリール、またはビシクロヘテロアリール環を形成する。
【0109】
特定の態様において、本発明は式(I)、(II)または(III)の二環式アリールニトロン化合物を提供し、ここでCyは置換または無置換の:

から選択され、
式中A、YおよびZはC=O、CR5、NR3、O、およびSから独立に選択され;かつ点線は一重または二重結合を表す。
【0110】
特定の態様において、本発明は式(I)、(II)または(III)の二環式アリールニトロン化合物を提供し、ここでCyは置換または無置換の:

から選択され、
式中、W、W'、XおよびX'はそれぞれ独立にNR3またはC-R5であり;YおよびZはそれぞれ独立にC-R5またはカルボニルであり;AおよびQはC-R5、NR3、O、およびSから独立に選択され;かつ点線は一重または二重結合を表す。
【0111】
特定の態様において、本発明は式(I)、(II)または(III)の二環式アリールニトロン化合物を提供し、ここでCyは置換または無置換の:

から選択される。
【0112】
特定の態様において、本発明は式(I)、(II)または(III)のニトロン化合物を提供し、ここでR2は水素である。
【0113】
特定の態様において、本発明は式(I)、(II)または(III)のニトロン化合物を提供し、ここでLは-[C(R3)2]m-X*-[C(R4)2]n-である。
【0114】
さらなる態様において、本発明は式(I)、(II)または(III)のニトロン化合物を提供し、ここでLは-[CH2]m-X*-[CH2]n-である。
【0115】
さらなる態様において、本発明は式(I)、(II)または(III)のニトロン化合物を提供し、ここでLは-CH2-、-(CH2)2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-(CH2)5-、-OCH2--、-O(CH2)2-、-O(CH2)3-、-O(CH2)4-、-O(CH2)5-、-SCH2-、-S(CH2)2-、-S(CH2)3-、-S(CH2)4-、-S(CH2)5-、-SOCH2-、-SO(CH2)2-、-SO(CH2)3-、-SO(CH2)4-、-SO(CH2)5-、-N(Me)CH2-、-SO2CH2-、-SO2(CH2)2-、-SO2(CH2)3-、-SO2(CH2)4-、-SO2(CH2)5-、-N(Me)(CH2)2-、-N(Me)(CH2)3-、-N(Me)(CH2)4-、-N(Me)(CH2)5-、-CH2-O-CH2-、-CH2-O-(CH2)2-、-CH2-O-(CH2)3-、-(CH2)2-O-CH2-、-(CH2)2-O-(CH2)2-、-(CH2)3-O-CH2-、-(CH2)3-O-(CH2)2-、-CH2-S-CH2-、-CH2-S-(CH2)2-、-CH2-S-(CH2)3-、-(CH2)2-S-CH2-、-(CH2)2-S-(CH2)2-、-(CH2)3--S-CH2-、-(CH2)3-S-(CH2)2-、-CH2-SO-CH2-、-CH2-SO-(CH2)2-、-CH2-SO-(CH2)3-、-(CH2)2-SO-CH2-、-(CH2)2-SO-(CH2)2-、-(CH2)3-SO-CH2-、-(CH2)3-SO-(CH2)2-、-CH2-SO2-CH2-、-CH2-SO2-(CH2)2-、-CH2-SO2-(CH2)3-、-(CH2)2-SO2-CH2-、-(CH2)2-SO2-(CH2)2-、-(CH2)3-SO2-CH2-、-(CH2)3-SO2-(CH2)2-、-CH2-N(Me)-CH2-、-CH2-N(Me)-(CH2)2-、-CH2-N(Me)-(CH2)3-、-(CH2)2-N(Me)-CH2-、-(CH2)2-N(Me)-(CH2)2-、-(CH2)3-N(Me)-CH2-、および-(CH2)3-N(Me)-(CH2)2-から 選択される。
【0116】
さらなる態様において、本発明は式(I)、(II)または(III)のニトロン化合物を提供し、ここでLは原子なしである。
【0117】
特定の態様において、本発明は式(I)、(II)または(III)のニトロン化合物を提供し、ここでR1はtert-ブチルである。
【0118】
特定の態様において、本発明は式(I)、(II)または(III)のニトロン化合物を提供し、ここでR1はシクロヘキシルである。
【0119】
特定の態様において、本発明は式(I)、(II)または(III)のニトロン化合物を提供し、ここでR1はベンジルである。
【0120】
式(I)、(II)または(III)により前述したアリールニトロンの中で、特定の態様において、WおよびZは一緒になって6員アリール環を形成する。
【0121】
式(I)、(II)または(III)により前述した芳香族複素環ニトロンの中で、特定の態様において、WおよびZは一緒になって6員ヘテロアリール環を形成する。ヘテロアリール環は当業者には公知の任意の5から8員ヘテロアリール環でありうる。特定の態様において、ヘテロアリール環はピリジン、ピリミジン、フラン、チオフェンまたはピロール環である。
【0122】
式(I)、(II)または(III)の二環式アリールニトロンに関して、特定の態様において、R1はフェニル、置換フェニルまたはメチル以外の基で置換されている。他の態様において、R1はフェニル、置換フェニルまたは低級アルキル以外の基で置換されている。例えば、R1は置換もしくは無置換ヘテロアルキル、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換アラルキル、または置換もしくは無置換ヘテロアラルキルでありうる。
【0123】
同じく式(I)、(II)または(III)の二環式アリールニトロンに関して、特定の態様において、R2は水素以外の基で置換されうる。例えば、R2は置換もしくは無置換(C1-C6)アルキル、置換もしくは無置換(C1-C6)シクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換アラルキルでありうる。
【0124】
また式(I)、(II)または(III)の二環式アリールニトロンに関して、特定の態様において、WおよびZは一緒になって第二の環に縮合している6員環を形成する。第二の環は、例えば、5員または6員環でありえ、ヘテロ原子を含みうる。第二の環は第一の環における任意の隣接する原子対に縮合しうる。
【0125】
同じく式(I)、(II)または(III)の二環式アリールニトロンに関して、特定の態様において、WおよびZは一緒になって第二の環に縮合している7員環を形成する。第二の環は、例えば、5員環でありえ、ヘテロ原子を含みうる。第二の環は第一の環における任意の隣接する原子対に縮合しうる。例えば、二環式芳香環はアズレンでありうる。
【0126】
式(I)、(II)または(III)のアリールおよび芳香族複素環ニトロンの特定の態様において、CyのWおよびXはC-R6である。WおよびXのR6置換基は独立に変動しうるが、特定の態様において、両方のR6は同じである。特定の態様において、R6がSO2R7またはSO3Hである時にこれらは同じである。
【0127】
式(I)、(II)または(III)のニトロン化合物の中で、特定の態様において、R2はさらなる置換を伴う、または伴わない、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アラルキルまたはアリールである。いくつかの態様において、R2は水素である。
【0128】
いくつかの態様において、R5基の1つまたは複数は水素である。
【0129】
いくつかの態様において、R6は水素、-SR7、-SO2R7、-SO2NR7R8、-SO3R7、-CONR7R8、-NR7R8、-OH、および-CO2R7である。特定の態様において、R6は水素、-SO2R7、-SO2NR7R8、-SO3R7、-CONR7R8、および-CO2R7である。
【0130】
本発明の芳香族複素環ニトロン化合物において、特にXが自由原子価を有する炭素またはヘテロ原子である化合物において、Xで示される原子は置換されていても、無置換でもよい。特定の態様において、Xは水素以外の任意の基で置換されうる。例えば、Xは-SR7、-SO2R7、-SO2NR7R8、-SO3R7、-CONR7R8、-NR7R8、-OH、-PO(OR7)NR8R9、-PO(OR7)2または-CO2R7で置換されうる。
【0131】
式(I)、(II)または(III)の芳香族複素環ニトロン化合物に関して、Cyについてのいくつかの態様において、6員ヘテロアリール環は1個の窒素原子を含み、他の態様において、ヘテロアリール環は2個の窒素原子を含む。さらなる態様において、環は3個の窒素原子を含む。
【0132】
式(I)、(II)または(III)のヘテロアリール環(Cy)が2個の窒素原子を含む場合、2個の窒素原子はW、X、YおよびZのいずれにあってもよい。例えば、2個の窒素原子はWおよびX、WおよびY、WおよびZ、XおよびY、XおよびZ、またはYおよびZにありうる。
【0133】
式(I)、(II)または(III)で記載する二環式アリールニトロン化合物の中で、特定の態様において、WおよびZは一緒になって5または6員シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリール環に縮合している6員アリールまたはヘテロアリール環を形成する。
【0134】
同じく前述の式の二環式アリールニトロン化合物の中で、いくつかの態様において、R1はアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルである。特定の態様において、R1は低級アルキルを含むアルキルである。特定の態様において、低級アルキルは1位炭素に分枝、例えば、シクロプロピル、イソプロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、シクロブチル、1-メチルシクロプロパ-1-イル、sec-ペンチル、tert-ペンチル、シクロペンチル、1-メチルシクロブタ-1-イルなどを有する。特定の態様において、R1はtert-ブチルである。
【0135】
いくつかの態様において、R2はさらなる置換を伴う、または伴わない、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アラルキルまたはアリールである。
【0136】
いくつかの態様において、R5基の1つまたは複数は水素である。
【0137】
いくつかの態様において、R6は水素、-SR7、-SO2R7、-SO2NR7R8、-SO3R7、-CONR7R8、-NR7R8、-OH、および-CO2R7である。特定の態様において、R6は水素、-SO2R7、-SO2NR7R8、-SO3R7、-CONR7R8、および-CO2R7である。
【0138】
本発明の二環式アリールニトロン化合物において、特にXが自由原子価を有する炭素またはヘテロ原子である化合物において、Xで示される原子は置換されていても、無置換でもよい。特定の態様において、Xは水素以外の任意の基で置換されうる。例えば、Xは水素、-SR7、-SO2NR7R8、-SO3R7、-CONR7R8、-NR7R8、-OH、-PO(OR7)NR8R9、-PO(OR7)2、または-CO2R7で置換されうる。
【0139】
特定の態様において、化合物が式(I)である場合、Lは原子なしであり、R1はtert-ブチルであり、R2は水素であり、かつCyは

であり;
式中
R21はR22またはR22-S-であり、かつ
R22はそれぞれ水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換アリールアルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換シクロヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換ヘテロアリールアルキルからなる群より独立に選択される。
【0140】
特定の態様において、化合物が式(I)である場合、Lは原子なしであり、R1はtert-ブチルであり、R2は水素であり、かつCyは

であり;
式中、R21はR22-S-である。
【0141】
特定の態様において、化合物はα-フェニル-tert-ブチルニトロン(「PBN」)であり、ここで化合物は式(I)であり、Lは原子なしであり、R1はtert-ブチルであり、R2は水素であり、かつCyはベンゼンである。
【0142】
特定の態様において、化合物が式(III)である場合、化合物は対称である。
【0143】
特定の態様において、化合物が式(III)である場合、Lは原子なしであり、R1はtert-ブチルであり、R2は水素であり、かつCyは

であり;
式中
R22はそれぞれ水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換アリールアルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換シクロヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換ヘテロアリールアルキルからなる群より独立に選択される。本態様の化合物は下記の構造:

ならびにその塩、溶媒和物、水和物、およびプロドラッグ型などのその誘導体や、その空間異性体、ならびにその薬学的製剤を有する。
【0144】
特定の態様において、チオール修飾ニトロン化合物がアルファ-(4-スルファニルフェニル)-N-tert-ブチルニトロンの対称ジスルフィド結合体である場合、化合物は、以下に示す、Lは原子なしであり、R1はtert-ブチルであり、R2は水素であり、かつCyはベンゼンである、式(III)のもの(本明細書においてTK-115339とも呼ぶ):

ならびにその塩、溶媒和物、水和物、およびプロドラッグ型などのその誘導体や、その空間異性体、ならびにその薬学的製剤である。
【0145】
したがって特定の態様において、ニトロン化合物は、式(III)に示すジスルフィド結合体、ならびにCyがチオール基を含む式(I)の特定の化合物、または式(II)の化合物となどのそのチオール結合体などのチオール修飾ニトロン化合物である。
【0146】
「チオール結合体(thiol conjugate)」とは、チオール基への結合が可能な任意の化合物または分子が意図される。チオール結合体の例には、チオールと反応してジスルフィド、チオエーテル、チオアセタールおよびチオエステルから選択される結合を形成する化合物または分子が含まれるが、それらに限定されるわけではない(例えば、''March's Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, 6th Edition,'' Michael B. Smith, Jerry March, 2007, John Wiley & Sons Inc.参照)。これにはチオール保護基が含まれる(例えば、''Greene's Protective Groups in Organic Synthesis, 4th Edition,'' Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts, 2006, John Wiley & Sons Inc;および''March's Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, 6th Edition,'' Michael B. Smith, Jerry March, 2007, John Wiley & Sons Inc.参照)。特に関心対象であるのは、式(I)のジスルフィド結合体である、チオール修飾ニトロン化合物である。
【0147】
特定の態様において、チオール修飾ニトロン化合物が式(I)である場合、CyはRS-Cyであり、これはR1、R2、LおよびCyは上で定義されたとおりであり、かつRは水素またはチオール結合体である、式(II)の化合物である。
【0148】
特定の態様において、チオール修飾ニトロン化合物が式(II)である場合、Cyは

であり;
式中、R22は上で定義されたとおりである。
【0149】
特定の態様において、チオール修飾ニトロン化合物が式(II)である場合、Lは原子なしであり、R1はtert-ブチルであり、R2は水素であり、かつCyは

であり;
式中、R22は上で定義されたとおりである。本態様の化合物は下記の構造:

ならびにその塩、溶媒和物、水和物、およびプロドラッグ型などのその誘導体や、その空間異性体、ならびにその薬学的製剤を有する。
【0150】
特定の態様において、チオール修飾ニトロン化合物が式(II)である場合、Lは原子なしであり、R1はtert-ブチルであり、R2は水素であり、かつCyは

であり;
式中、R22はそれぞれ水素である。本態様の化合物は下記の構造:

ならびにその塩、溶媒和物、水和物、およびプロドラッグ型などのその誘導体や、その空間異性体、ならびにその薬学的製剤を有する。
【0151】
特定の態様において、チオール修飾ニトロン化合物が式(II)である場合、RはR22である。
【0152】
特定の態様において、チオール修飾ニトロン化合物がアルファ-(4-スルファニルフェニル)-N-tert-ブチルニトロンである場合、化合物は、以下に示す、Lは原子なしであり、R1はtert-ブチルであり、R2は水素であり、Cyはベンゼンであり、かつRは水素である、式(II)のもの:

ならびにその塩、溶媒和物、水和物、およびプロドラッグ型などのその誘導体や、その空間異性体、ならびにその薬学的製剤である。
【0153】
式(II)の化合物の特定の態様において、チオール修飾ニトロン化合物は、以下に示すものなどの、アルファ-(4-スルファニルフェニル)-N-tert-ブチルニトロンの非対称ジスルフィド結合体である。

この例において、チオール修飾ニトロンを、抗炎症、抗癌および神経保護効果を有するもう一つの強力な抗酸化剤、修飾レスベラトロールにカップリングする(Rocha-Gonzalez et al., CNS Neurosci Ther., 14: 234-47 (2008);Rhone M et al., Nutr Rev., 66: 465-72 (2008);Udenigwe et al., Nutr Rev, 66: 445-54 (2008);Fan et al., Int J Vitam Nutr Res.; 78: 3-8 (2008);Calabrese et al., Bellia et al., Neurochem Res., 33: 2444-71 (2008);Singletary and Milner, Cancer Epidemiol Biomarkers Prev., 17:1596-610 (2008);Jiang, Biochem Biophys Res Commun., 373, 341-4 (2008);Kundu and Surh, Cancer Lett., 269, 243-61 (2008);Raval et al., Curr Med Chem.;15, 1545-51 (2008))。
【0154】
もう一つの態様は、以下に示すとおり、アルファ-(4-スルファニルフェニル)-N-tert-ブチルニトロンの、サリチル酸などの抗血栓溶解/抗炎症薬との非対称ジスルフィド結合体である。

【0155】
したがって、特定の態様において、ニトロン化合物は、式(II)および(III)に示す、ジスルフィド結合体、対称および非対称ジスルフィドなどのチオール修飾ニトロン化合物、ならびにCyがチオール基またはそのチオール結合体を含む式(I)の特定の化合物である。例えば、Rがチオール結合体であり、上で定義したR1、R2および/またはLで置換されているCyからなる、式(II)のニトロン化合物、チオール結合体部分は分子のクリアランスまたは分布を改変するために加えられる確立されたファルマコフォアまたは物質であることが多い。式(II)または(III)の特定の非対称ジスルフィドについてなどの、いくつかの態様において、化合物の生物薬剤学的または薬動力学的(すなわち、吸収、分布、代謝、および/または排出)特徴の1つまたは複数を調節またはそうではなく改善もしくは最適化するためにのみ提供される、ニトロン含有部分(例えば、アルファ-(4-スルファニルフェニル)-N-tert-ブチルニトロン)のチオール基にカップリングされた化合物は、それ自体で生物学的に活性、または生物学的に不活性でありうる。
【0156】
理解されうるとおり、前述の化合物の誘導体には、その塩、溶媒和物、水和物、およびプロドラッグ型や、その立体異性体および幾何異性体などの空間異性体、ならびにその薬学的製剤が含まれるだけでなく、適当な誘導体には本発明のニトロン化合物の検出可能に標識されたものが含まれ、それらは放射性標識、蛍光体、発光団などでありうる。例えば、チオール結合体は本発明のチオール修飾ニトロン化合物のチオール基に結合された検出可能な標識を含み、チオール基への組込みまたは結合の化学および標識は周知で、市販されている。
【0157】
前述のニトロン化合物および他のニトロン誘導体は市販されているか、または当業者には公知の技術によって通常どおり調製することができる。式(II)または(III)の化合物はチオール化したニトロンまたは他の適当なカップリング基をカップリングすることによって合成することができる。例えば、様々なニトロン化合物およびその誘導体、ならびにその合成/調製を記載している代表的な特許には、米国特許第3,849,934号;第4,596,874号;第4,661,433号;第4,758,669号;第5,025,032号;第5,036,097号;第5,091,449号;第5,310,620号;第RE35,112号;第5,475,032号;第5,488,145号;第5,498,778号;第5,508,305号;第RE35,213号;第5,723,502号;第5,780,510号;第5,849,771号;第5,900,227号;第5,942,507号;第5,972,977号;第5,998,469号;第6,015,831号;第6,034,250号;第6,040,444号;第6,051,571号;第6,083,988号;第6,083,989号;第6,127,408号;第6,140,356号;第6,194,461号;第6,197,825号;第6,197,826号;第6,258,852号;第6,291,702号;第6,310,092号;第6,342,523号;第6,376,540号;第6,545,056号;第6,569,902号;第6,730,700号;第6,762,322号;第6,815,459号;第6,835,754号;および第6,998,419号;ならびに公開された米国特許出願第2005/0059638号、第2005/0182060号、第2005/0192281号、および第2006/0100289号が含まれ;これらの開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0158】
関心対象のドキソルビシン毒性低減アジュバントは、ニトロン化合物をビスジオキソピペラジン化合物と共に含むこともでき、本発明の薬学的組成物、キットまたは方法において用いることができる。例えば、1つのそのような方法は、ドキソルビシン活性物質の有効量をドキソルビシン毒性低減アジュバントの有効量と併せて投与することを含み、ここでドキソルビシン毒性低減アジュバントは(i)ニトロン化合物またはその誘導体、および(ii)任意の別々の、または混和された成分として、ビスジオキソピペラジン化合物を含む。したがって、本発明のこの局面を実施するための薬学的組成物およびキットも提供される。
【0159】
関心対象のニトロン化合物の例は、下記から選択されるものである:5,5-ジメチル-1-ピロリン-N-オキシド;アルファ-フェニル-N-tert-ブチルニトロン;アルファ-(2,4-ジスルホフェニル)-N-tert-ブチルニトロン、アルファ-(4-スルファニルフェニル)-N-tert-ブチルニトロン、およびアルファ-(4-スルファニルフェニル)-N-tert-ブチルニトロンの対称ジスルフィド結合体。特に関心対象であるニトロン化合物は、アルファ-フェニル-N-tert-ブチルニトロン(「PBN」)である。特に関心対象であるもう一つのニトロン化合物は、アルファ-(4-スルファニルフェニル)-N-tert-ブチルニトロンである。特に関心対象であるのは、アルファ-(4-スルファニルフェニル)-N-tert-ブチルニトロンの対称ジスルフィド結合体(すなわち、「TK-115339」)、またはジスルフィドを通じてチオール修飾レスベラトロールもしくはサリチル酸に結合されているアルファ-(4-スルファニルフェニル)-N-tert-ブチルニトロンなどのアルファ-(4-スルファニルフェニル)-N-tert-ブチルニトロンの非対称ジスルフィド結合体などの、スルファニル基が第二の化合物に結合しているその結合体を含む、アルファ-(4-スルファニルフェニル)-N-tert-ブチルニトロンおよびその誘導体を含む化合物である。
【0160】
関心対象のビスジオキソピペラジン化合物の例は下記から選択されるものである:4-[1-(3,5-ジオキソピペラジン-1-イル)プロパン-2-イル]ピペラジン-2,6-ジオン(デクスラゾキサン);4-[1-(3,5-ジオキソピペラジン-1-イル)エタン-2-イル]ピペラジン-2,6-ジオン;4-[1-(3,5-ジオキソピペラジン-1-イル)1-メチル-ブタン-2-イル]ピペラジン-2,6-ジオン;4-[1-(3,5-ジオキソピペラジン-1-イル)1-メチル-プロパン-2-イル]ピペラジン-2,6-ジオン;および4-[1-(3,5-ジオキソピペラジン-1-イル)ブタン-2-イル]ピペラジン-2,6-ジオン。関心対象のビスジオキソピペラジン化合物は4-[1-(3,5-ジオキソピペラジン-1-イル)プロパン-2-イル]ピペラジン-2,6-ジオンで、「デクスラゾキサン」とも呼ばれる。
【0161】
いくつかの態様において、ニトロン化合物はアルファ-フェニル-N-tert-ブチルニトロン(すなわち、「PBN」)で、ビスジオキソピペラジン化合物は4-[1-(3,5-ジオキソピペラジン-1-イル)プロパン-2-イル]ピペラジン-2,6-ジオン(すなわち、「デクスラゾキサン」)である。他の態様において、ニトロン化合物はアルファ-(4-スルファニルフェニル)-N-tert-ブチルニトロンまたはその非対称ジスルフィド結合体、もしくはその対称ジスルフィド結合体(すなわち、「TK-115339」)であり、ビスジオキソピペラジン化合物はデクスラゾキサンである。
【0162】
デクスラゾキサンは、アンスラサイクリン誘導性心毒性に対して保護する金属キレート剤EDTAのプロドラッグ類縁体であり、おそらくは鉄-ドキソルビシン錯体から鉄を除去して傷害性の反応性酸素種の生成を防止することにより作用する(Cvetkovic et al., Drugs 65(7):1005 (2005))。ドキソルビシンなどのアンスラサイクリンの抗腫瘍効果は、デクスラゾキサンの使用によって変化する可能性が低い((Hochster et al., Semin Oncol. 25(4 Suppl 10):37 (1998);およびMarty et al., Ann Oncol. 17(4):614 (2006))。また、デクスラゾキサンは、アンスラサイクリン系抗癌薬のドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシンおよびイダルビシン使用の重篤な合併症でありうる、これらの薬剤使用による偶発的血管外漏出傷害を治療するためにも有用であるようである(Hasinoff, BB, Future Oncol., 2(1):15-20 (2006)。したがって、ニトロン化合物とビスジオキソピペラジン化合物との組み合わせは、ドキソルビシン活性物質の有害副作用を低減するために、さらに患者の役に立ちうると考えられる。
【0163】
前述のビスジオキソピペラジン化合物および他のビスジオキソピペラジン誘導体は市販されているか、または当業者には公知の技術によって通常どおり調製することができる。例えば、様々なニトロン化合物およびその誘導体、ならびにその合成/調製を記載している代表的な特許には、米国特許第3,941,790号;第4,755,619号;第4,764,614号;第4,902,714号;第4,943,578号;第4,963,551号;第4,963,679号;第5,149,710号;第5,162,372号;第5,242,901号;第5,278,187号;第5,438,057号;第5,492,913号;第5,618,936号;第5,688,797号;第5,760,039号;および第6,693,100号が含まれ;これらの開示は参照により本明細書に組み入れられる。特定の態様において、ニトロン化合物は、例えば、米国特許第5,508,305号に開示されている、2,4-ジスルホニルα-フェニルtert-ブチルニトロンではない。
【0164】
上で示したとおり、本発明の方法において毒性低減アジュバントの有効量を用いる。特定の態様において、用いる毒性低減アジュバントの量は用いるドキソルビシン活性物質のおよその量を超えない。特定の態様において、用いる毒性低減アジュバントの量は投与するドキソルビシン活性物質の量の等モル未満の量である。典型的に、投与する毒性低減アジュバントの量はドキソルビシン活性物質の量の約75%未満、約50%未満、約25%未満ならびに多くの態様は約15%未満、約10%未満およびさらには約5%または1%未満である。他の態様において、有効量は活性物質の量と同じであり、特定の態様において、有効量はドキソルビシン活性物質の量よりも多い量である。有効量は以下の実験項に提供するデータを用い、経験的に容易に決定することができる。
【0165】
ドキソルビシン毒性低減アジュバントを治療機会のウィンドウ(window)内に投与する、標準の投薬法を用いることができる。例えば、ドキソルビシン毒性低減アジュバントを投与するための1つの方法は、ドキソルビシン投与法の開始の約3〜6時間前から約3〜6時間後などの、特定のドキソルビシン投与法の開始の約6〜12時間前から約6〜12時間後である。したがって一つの態様において、ドキソルビシン毒性低減アジュバントをそれを必要としている患者に、その患者の治療機会のウィンドウ内に、すなわち、ドキソルビシン投与法の開始の数時間前または数時間後の間に投与する。
【0166】
集団の薬動力学モデル、標的集団に関連する経験的共変動分布、ならびに標的達成基準および節減に基づく標的定義を用いて推定される、代謝物クリアランスパラメーターまたは体重に基づいて投薬を個別化する、最適な投薬戦略を用いることもできる。例えば、ドキソルビシン毒性低減アジュバント(別の、または組み合わせ成分として)を短期間の間に有効血漿濃度に達するための負荷用量として投与し、任意に、続いて所与の期間、所望の血漿レベルを維持するための1回または複数回の後続(または持続的)用量として投与することができる。負荷-維持用量アプローチの特定の例は、ドキソルビシン毒性低減アジュバントを負荷用量として約1〜2時間かけて投与し、続いて維持用量を24〜72時間投与するものである。したがって、負荷ならびに維持、または標準の投薬は、特定の代謝物のクリアランスをモニターするなどの薬動力学的パラメーターと、併せて投薬の量および速度を増大または減少させるカットオフ値に基づいて、個別化することができる。投薬法は、様々な治療の間の回復期間などの、中間回復期間を含みうることが理解されよう。
【0167】
本発明の範囲は、ドキソルビシン活性物質およびドキソルビシン毒性低減アジュバントのプロドラッグを含む。そのようなプロドラッグは、一般に、必要とされる化合物にインビボで容易に変換可能な、化合物の機能的誘導体である。したがって、本発明の方法において、「投与すること」なる用語は、具体的に開示された化合物または具体的に開示されていないかも知れないが、それを必要としている被験者に投与後、インビボで指定の化合物に変換される化合物を投与することを含む。適当なプロドラッグ誘導体を選択および調製するための通常の方法は、例えば、Wermuth, ''Designing Prodrugs and Bioprecursors'' in Wermuth, ed. The Practice of Medicinal Chemistry, 2d Ed., pp. 561-586 (Academic Press 2003)に記載されている。プロドラッグにはインビボ(例えば、ヒトの体内)で加水分解して、本発明に適した本明細書に記載の化合物を生成するエステルが含まれる。適当なエステル基には、薬学的に許容される脂肪族カルボン酸、特にアルキルまたはアルケニル部分がそれぞれ6個以下の炭素原子を有する、アルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸およびアルカン二酸が含まれるが、それらに限定されるわけではない。例示的エステルには、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、アクリル酸エステル、クエン酸エステル、コハク酸エステル、およびエチルコハク酸エステルが含まれる。
【0168】
製剤
同様に提供されるのは、本発明の方法において用いるドキソルビシン活性物質および/またはドキソルビシン毒性低減アジュバントを含む薬学的組成物である。したがって、ドキソルビシン活性物質および/またはドキソルビシン毒性低減アジュバントを、本発明の方法において用いるための経口または非経口投与用に、例えば、前述の薬学的に許容される塩の形で製剤することができる。特定の態様において、例えば、化合物を別々の製剤として(化合物を逐次投与する態様においてなど)投与する場合、それぞれ異なる活性物質を含む、別々の、または別個の薬学的組成物が提供される。さらに他の態様において、ドキソルビシン活性物質および/またはドキソルビシン毒性低減アジュバントの両方を含む単一の製剤(すなわち、両方の活性物質を含む1つの組成物)が提供される。
【0169】
例示のために、ドキソルビシン活性物質および/またはドキソルビシン毒性低減アジュバントを通常の薬学的に許容される担体および賦形剤(すなわち、媒体)と混和し、水性液剤、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤などの形で用いることができる。そのような薬学的組成物は、特定の態様において、約0.1から約90重量%の活性化合物、より一般的には約1から約30重量%の活性化合物を含む。薬学的組成物は、トウモロコシデンプンまたはゼラチン、ラクトース、デキストロース、スクロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、リン酸2カルシウム、塩化ナトリウム、およびアルギン酸などの、一般的な担体および賦形剤を含んでいてもよい。本発明の製剤において一般的に用いる崩壊剤には、クロスカルメロース、微結晶セルロース、トウモロコシデンプン、デンプングリコール酸ナトリウムおよびアルギン酸が含まれる。
【0170】
液体組成物は一般に、適当な液体担体、例えば、エタノール、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコールなどの非水性溶媒、油または水中の、化合物または薬学的に許容される塩と、懸濁化剤、保存剤、界面活性剤、湿潤剤、着香または着色剤の懸濁液または溶液からなる。または、液体製剤は再構成可能な粉末から調製することもできる。
【0171】
例えば、活性化合物、懸濁化剤、スクロースおよび甘味料を含む粉末を水で再構成して、懸濁剤を生成することができ、シロップ剤を活性成分、スクロースおよび甘味料を含む粉末から調製することもできる。
【0172】
錠剤の形の組成物は、固体組成物を調製するために日常的に用いられる任意の適当な薬学的担体を用いて調製することができる。そのような担体の例には、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、ラクトース、スクロース、微結晶セルロースおよび結合剤、例えば、ポリビニルピロリドンが含まれる。錠剤はカラーフィルムコーティングを施して、または担体の一部として含まれる色素と共に提供することもできる。加えて、活性化合物を、親水性または疎水性基質を含む錠剤として制御放出剤形に製剤することもできる。
【0173】
カプセル剤の形の組成物は、日常的カプセル化手順を用いて、例えば、活性化合物および賦形剤のゼラチン硬カプセルへの取り込みによって調製することができる。または、活性化合物および高分子量ポリエチレングリコールの半固体基質を調製し、ゼラチン硬カプセルに充填することもでき;あるいはポリエチレングリコール中の活性化合物の溶液または食用油;例えば、流動パラフィンもしくはヤシ油中の懸濁液を調製し、ゼラチン軟カプセルに充填することもできる。
【0174】
含まれうる錠剤結合剤は、アカシア、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、スクロース、デンプンおよびエチルセルロースである。用いることができる滑沢剤には、ステアリン酸マグネシウムまたは他のステアリン酸金属塩、ステアリン酸、シリコーン液、タルク、ワックス、油およびコロイド状シリカが含まれる。
【0175】
ペパーミント、冬緑油、サクランボ着香剤などの着香剤を用いることもできる。加えて、剤形の外観をより魅力的にする、または生成物の特定を助けるために、着色剤を加えることが望ましい場合もある。
【0176】
非経口投与した場合に活性である、本発明の化合物およびそれらの薬学的に許容される塩を筋肉内、くも膜下腔内、または静脈内投与のために製剤することができる。
【0177】
筋肉内またはくも膜下腔内投与のための典型的な組成物は、油、例えば、落花生油またはゴマ油中の活性成分の懸濁液または溶液のものである。静脈内またはくも膜下腔内投与のための典型的な組成物は、例えば、活性成分ならびにデキストロースもしくは塩化ナトリウム、またはデキストロースおよび塩化ナトリウムの混合物を含む無菌等張水溶液である。他の例は乳酸加リンゲル液、乳酸加リンゲル液+デキストロース注射液、Normosol-Mおよびデキストロース、Isolyte E、アシル化リンゲル液などである。任意に、共溶媒、例えば、ポリエチレングリコール、キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸、および抗酸化剤、例えば、メタ重亜硫酸ナトリウムが製剤中に含まれていてもよい。または、溶液を凍結乾燥し、次いで投与直前に適当な溶媒で再構成することもできる。
【0178】
直腸投与後に活性である、本発明の化合物およびそれらの薬学的に許容される塩を坐剤として製剤することができる。典型的な坐剤製剤は一般に、活性成分と、ゼラチンもしくはカカオ脂または他の低融点植物性もしくは合成ワックスもしくは脂肪などの結合および/または滑沢剤から構成されることになる。
【0179】
局所投与後に活性である、 本発明の化合物およびそれらの薬学的に許容される塩を経皮組成物または経皮送達装置(「パッチ」)として製剤することができる。そのような組成物には、例えば、裏打ち、活性化合物貯蔵所、制御膜、ライナーおよび接触接着剤が含まれる。そのような経皮パッチを用いて、制御された量の本発明の化合物の持続的または断続的注入を提供してもよい。薬剤送達のための経皮パッチの構築および使用は当技術分野において周知である(例えば、米国特許第5,023,252号を参照されたく、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。そのようなパッチは薬剤の持続的、拍動性、または応需型送達のために構築しうる。
【0180】
関心対象の特定の態様において、ドキソルビシン活性物質およびドキソルビシン毒性低減アジュバントを、活性物質および毒性低減アジュバントの有効量を含むことに加えて、他の適当な化合物および担体を含む、単一の薬学的製剤として投与し、また他の活性物質との組み合わせで用いてもよい。したがって、本発明は、薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物も含む。薬学的に許容される賦形剤には、例えば、任意の適当な媒体、アジュバント、担体または希釈剤が含まれ、一般に容易に入手可能である。本発明の薬学的組成物は、当技術分野において周知のとおり、他の活性物質をさらに含んでいてもよい。
【0181】
当業者であれば、本発明の製剤を被験者または宿主、例えば、それを必要としている患者に投与する様々な適当な方法が利用可能で、特定の製剤を投与するために複数の経路を用いることができるが、特定の経路は別の経路よりも即時で効果的な反応を提供しうることを理解するであろう。薬学的に許容される賦形剤も当業者には周知で、容易に入手可能である。賦形剤の選択は部分的には、特定の化合物によって、ならびに組成物を投与するために用いる特定の方法によって決定することになる。したがって、本発明の薬学的組成物の様々な適当な製剤がある。以下の方法および賦形剤は単なる例示であって、決して限定的なものではない。
【0182】
経口投与に適した製剤は、(a)化合物の有効量を水、食塩水、またはオレンジジュースなどの希釈剤に溶解したものなどの液剤;(b)それぞれあらかじめ決められた量の活性成分を、固体または顆粒で含む、カプセル剤、サシェ剤または錠剤;(c)適当な液体中の懸濁剤;および(d)適当な乳剤。錠剤はラクトース、マンニトール、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、微結晶セルロース、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ならびに他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、加湿剤、保存剤、着香剤、および薬理学的に適合する賦形剤の1つまたは複数を含みうる。ロゼンジ剤形は活性成分を着香剤、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカント中に含むことができ、同様に香錠はゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤中に活性成分を含み、乳剤、ゲル剤などは活性成分に加えて、適宜当技術分野において公知のものなどの賦形剤を含みうる。
【0183】
本発明の製剤は、吸入により投与するエアロゾル製剤に作成することができる。これらのエアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの許容される加圧噴射剤中に加えることができる。これらはネブライザーまたはアトマイザー用などの非加圧調製物用の薬剤として製剤してもよい。
【0184】
非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、抗菌剤、および製剤を意図する受容者の血液と等張にする溶質を含みうる、水性および非水性の等張無菌注射液剤、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、および保存剤を含みうる、水性および非水性の無菌懸濁剤が含まれる。製剤は、アンプルおよびバイアルなどの、単位用量または複数用量の密封容器に入れて提供することができ、使用の直前に、注射用の無菌液体賦形剤、例えば、水の添加だけを必要とする、凍結乾燥(freeze-dried)(凍結乾燥(lyophilized))状態で保存することができる。即時調合用注射液剤および懸濁剤を前述の種類の無菌散剤、顆粒剤、および錠剤から調製することができる。
【0185】
局所投与に適した製剤を、活性成分に加えて、適宜当技術分野において公知のものなどの担体を含む、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、またはフォーム剤として提供してもよい。
【0186】
坐剤製剤も、乳化基剤または水溶性基剤などの様々な基剤と混合することによって提供される。膣投与に適した製剤を、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤として提供してもよい。
【0187】
シロップ剤、エリキシル剤、および懸濁剤などの経口または直腸投与用の単位剤形を提供してもよく、ここで各用量単位、例えば、小さじ1杯、大さじ1杯、錠剤または坐剤は、1つまたは複数の阻害剤を含む組成物のあらかじめ決められた量を含む。同様に、注射または静脈内投与用の単位剤形は、阻害剤を組成物中に、無菌水、生理食塩水または別の薬学的に許容される担体中の溶液として含んでいてもよい。
【0188】
本明細書において用いられる「単位剤形」なる用語は、ヒトおよび動物被験者用の単位用量として適当な物理的に個別の単位を意味し、各単位は所望の効果を生じるのに十分な量で計算された本発明の化合物のあらかじめ決められた量を、薬学的に許容される希釈剤、担体または媒体と共に含む。本発明の新規の単位剤形の明細は、用いる特定の化合物および達成すべき効果、ならびに宿主における各化合物に関連する薬力学に依存する。
【0189】
当業者であれば、用量レベルは特定の化合物、送達媒体の性質などの関数として変動しうることを容易に理解するであろう。所与の化合物に適した用量は当業者であれば様々な手段によって容易に決定可能である。
【0190】
本発明の状況において、動物、特にヒトに投与する用量は、妥当な時間枠で動物において予防または治療反応を誘発するのに十分であるべきである。当業者であれば、用量は用いる特定の化合物の強度、動物の状態、および動物の体重、ならびに病気の重症度および疾患の段階を含む様々な因子に依存することを理解するであろう。用量のサイズは、特定の化合物の投与に付随しうる任意の有害副作用の存在、性質、および程度によっても決定されることになる。適当な用量および投薬法は、所望の増殖阻害または免疫抑制反応を誘発することが公知の抗癌剤または免疫抑制剤との比較によって決定することができる。本発明の化合物による個人の治療において、高用量投薬法を非悪性細胞に対する救援剤と併せて用いることが望ましい場合もある。そのような治療において、シトロボラム因子、葉酸誘導体、またはロイコボリンなどの、非悪性細胞の救援が可能な任意の物質を用いることができる。そのような救援剤は当業者には周知である。救援剤には、本発明の化合物の細胞機能を調節する能力を妨害しないものが含まれる。
【0191】
任意に、薬学的組成物は、緩衝剤、界面活性剤、抗酸化剤、粘性改変剤、保存剤などの他の薬学的に許容される成分を含んでいてもよい。これらの成分はそれぞれ当技術分野において周知である(例えば、米国特許第5,985,310号を参照されたく、その開示は参照により本明細書に組み入れられる)。
【0192】
もう一つの態様において、水性シクロデキストリン溶液はデキストロース、例えば、5%デキストロースをさらに含む。本発明の製剤において用いるのに適した他の成分は、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mace Publishing Company, Philadelphia, Pa., 17th ed. (1985)において見いだすことができる。
【0193】
有用性
本発明の方法は、ドキソルビシン投与が指示される治療的適用において用いられる。代表的な治療的適用は、細胞増殖疾患状態、例えば、異常な細胞増殖付随物によって特徴づけられる癌および関連状態の治療である。そのような疾患状態には、癌/新生物疾患および望まれない細胞増殖、例えば、過形成などの存在によって特徴づけられる他の疾患が含まれる。これらの可能性において、本発明の組成物の使用は、所望のドキソルビシン活性を保持しつつ、有害な毒性を低減する結果となるであろう。
【0194】
治療とは、宿主を苦しめている状態に関連する症状の少なくとも改善が達成されることを意味し、ここで改善は広い意味で用いられ、少なくとも治療中の状態に関連するパラメーター、例えば、症状の大きさの低減を意味する。したがって、治療は、宿主がドキソルビシン治療の副作用または少なくとも副作用を特徴づける症状をもはや患うことがないように、病的状態、または少なくともそれに関連する症状が完全に阻害される、例えば、発生が防止される、または止められる、例えば、停止される状況も含む。
【0195】
関心対象の特定の適用は、ドキソルビシン誘導性心毒性を改善するための本発明のニトロン化合物の使用である。ドキソルビシンの累積用量が450〜550mg/m2に達すると、うっ血性心不全、拡張型心筋症、および死亡を含む、心副作用を発生する危険度が劇的に高まる。ドキソルビシン心毒性はミトコンドリアにおける酸化的リン酸化の用量依存的低下によって特徴づけることができる。次いで、ドキソルビシンと鉄との相互作用によって生成する反応性酸素種が筋細胞(心細胞)を損傷し、筋原線維損失および細胞質空胞化を引き起こしうる。加えて、患者の中には、腫脹、疼痛および紅斑によって特徴づけられる手掌または足底の皮膚発疹によって特徴づけられる「手足症候群」を発生する者もある。
【0196】
ドキソルビシン心毒性は、心臓の筋肉(心筋)への損傷の非常に敏感で特異的な指標である、トロポニンの特定の亜型(心臓トロポニンIおよびT)によっても特徴づけることができる。心損傷は血中の心臓トロポニンレベルの上昇を引き起こす。したがって、心筋梗塞に起因する心損傷を含む、損傷した心筋について試験するために、血中または血漿中の心臓トロポニンIおよび/またはTのレベルを容易に測定することができる。
【0197】
したがって、特定の態様において、ドキソルビシン活性物質の有効量を、ドキソルビシン毒性低減アジュバントの宿主のドキソルビシン誘導性心毒性を低減するのに有効な量と併せての、それを必要としている宿主の治療法が提供され、ここでドキソルビシン毒性低減アジュバントは式(I)、(II)または(III)のニトロン化合物である。関連する態様において、ドキソルビシン誘導性心毒性は、ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化の低下および心臓トロポニンレベルの上昇から選択される1つまたは複数の特性によって特徴づけられる。関心対象は、被験者のドキソルビシン誘導性心毒性を低減するためのドキソルビシン毒性低減アジュバントとしての、式(I)、(II)および(III)のチオール修飾ニトロン化合物、特に式(II)および(III)のチオール修飾ニトロン化合物、特に化合物TK115339の使用である。
【0198】
ドキソルビシン誘導性心毒性の低減は、ドキソルビシン活性物質による宿主の治療に起因する心毒性の発症の可能性の防止、軽減、または低減によって特徴づけられる。これには、ドキソルビシン活性物質の有効量を、ドキソルビシン毒性低減アジュバントの宿主のドキソルビシン誘導性心毒性を低減するのに有効な量と併せての、それを必要としている宿主の治療が含まれ、ここでドキソルビシン毒性低減アジュバントは、(i)防止、すなわち、臨床症状を発生しないようにすること、例えば、ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化の低下および/もしくは心筋への損傷を防止すること、ならびに/またはこれらの特徴の1つまたは複数の有害な段階への進行を防止すること;(ii)阻害、すなわち、臨床症状の発生またはさらなる発展を停止すること、例えば、心毒性の活動性(進行中)の特徴を軽減または完全に阻害して、特徴がもはや重篤に有害ではない程度にまで減少し、この減少は宿主からの心毒性の完全な除去を含みうること;および/または(iii)解放、すなわち、臨床症状の緩解を引き起こすこと、例えば、ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化の低下および/もしくは心筋への損傷、ならびに/またはドキソルビシン活性物質による宿主の治療によって起こる他の症状からの解放を引き起こすことを含む、心毒性の1つまたは複数の特徴が起こった場合にそれをうまく防止または除去する可能性を改善する。
【0199】
式(I)、(II)および(III)のチオール修飾ニトロン化合物、特に式(II)および(III)のチオール修飾ニトロン化合物、特に化合物TK115339は、米国特許第5,025,032号;第5,036,097号;第5,622,994号;第5,780,510号;第6,083,988号;第6,107,315号;第6,1978,25号;第6,291,702号;および第6,815,425号に記載されているなどの、ニトロン化合物に基づく療法に反応する他の障害の治療においても用いられることがある。
【0200】
様々な被験者が本発明の方法に従って治療可能である。一般に、そのような宿主は「哺乳動物」または「哺乳綱の動物」であり、ここでこれらの用語は、食肉目(例えば、イヌおよびネコ)、齧歯目(例えば、マウス、モルモット、およびラット)、および霊長目(例えば、ヒト、チンパンジー、およびサル)を含む、哺乳綱の範囲内である生物を記載するために広く用いられる。多くの態様において、被験者はヒトである。
【0201】
特定の態様において、被験者は診断され、したがって活性物質の投与を必要としている被験者である。特定の態様において、方法は、活性物質の投与によって治療すべき疾患状態の存在について被験者を診断することを含みうる。
【0202】
本発明の方法は、適用の中でも特に、新生物疾患状態、すなわち癌を含む、細胞増殖疾患状態の治療において用いられる。そのような適用において、ドキソルビシン活性物質の有効量およびドキソルビシン毒性低減アジュバントをそれを必要としている被験者に投与する。治療は、上で定義したとおり、すなわち、少なくとも疾患の症状の1つまたは複数における改善、ならびにその完全な休止、ならびに疾患状態の逆転および/または完全な除去、すなわち治癒を含むように、広く用いられる。
【0203】
細胞増殖の調節不全に関連する多くの障害、すなわち、細胞過剰増殖障害がある。
【0204】
そのような状態には、平滑筋細胞、および/または炎症細胞の血管内膜層への増殖および/または移動があって、その血管を通過する血流の制限、すなわち新生内膜閉塞傷害を引き起こすものが含まれる。関心対象の閉塞性血管状態には、アテローム性動脈硬化症、移植後の移植冠血管疾患、移植静脈狭窄、吻合周囲人工血管狭窄、血管形成術またはステント設置後の再狭窄などが含まれる。
【0205】
関心対象の他の状態には、過剰増殖および組織リモデリングまたは生殖組織の修復がある疾患、例えば、子宮、精巣および卵巣癌、子宮内膜症、子宮頸の扁平上皮および腺上皮癌などが含まれる。
【0206】
治療のための関心対象の腫瘍には、癌腫、例えば、結腸癌、十二指腸癌、前立腺癌、乳癌、黒色腫、腺管癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、子宮内膜癌、胃癌、異形成口腔粘膜、ポリープ症、侵襲性口腔癌、非小細胞肺癌、尿路移行上皮および扁平上皮癌など;神経系悪性病変、例えば、神経芽腫、神経膠腫など;血液悪性病変、例えば、小児急性白血病、急性骨髄性白血病、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、悪性皮膚T細胞、菌状息肉腫、非MF皮膚T細胞リンパ腫、リンパ腫様丘疹症、T細胞を多く含む皮膚リンパ様過形成、水疱性類天疱瘡、円板状紅斑性狼瘡、扁平苔癬などが含まれる。
【0207】
特に関心対象のいくつかの癌には、原発時には腺癌亜型である乳癌が含まれる。管内癌(DCIS)は非侵襲性乳癌の最も一般的な型である。DCISでは、悪性細胞は管壁を通じて乳房の脂肪組織に転移していない。浸潤性(すなわち侵襲性)腺管癌(IDC)は管壁を通じて転移し、乳房の脂肪組織に侵襲している。浸潤性(すなわち侵襲性)小葉癌(ILC)は、体内の他所に転移する可能性を有するという点で、IDCと同様である。侵襲性乳癌の約10%〜15%は侵襲性小葉癌である。
【0208】
同じく関心対象であるのは、非小細胞肺癌である。非小細胞肺癌(NSCLC)は肺癌の3つの一般的亜型からなる。類表皮癌(扁平上皮癌とも呼ばれる)は通常、大きい気管支の1つで発生し、比較的ゆっくり増殖する。これらの腫瘍のサイズは非常に小さいものからかなり大きいものまでの範囲でありうる。腺癌は肺の外側表面の付近で増殖し始め、サイズおよび増殖速度のいずれも変動しうる。いくつかのゆっくり増殖する腺癌は肺胞細胞癌として記載される。大細胞癌は肺の表面付近で発生し、急速に増殖し、診断時には増殖は通常かなり大きい。他の一般性が低い肺癌の形はカルチノイド、円柱腫、粘膜表皮、および悪性中皮腫である。
【0209】
関心対象のもう一つの疾患は、メラニン細胞の悪性腫瘍である黒色腫である。ほとんどの黒色腫は皮膚で発生するが、粘膜表面から、または神経冠細胞がそれに向かって移動する他の部位で生じるものもある。黒色腫は主に成人に発生し、症例の半数以上は皮膚の見かけ上正常な領域に生じる。予後は臨床および組織学的因子、ならびに病変の解剖学的位置によって影響を受ける。黒色腫の厚さおよび/または侵襲のレベル、分裂指数、腫瘍浸潤性リンパ球、ならびに原発部位の潰瘍化または出血が予後に影響をおよぼす。臨床病期は、腫瘍が局所リンパ節または遠隔部位に伝播しているかどうかに基づいている。臨床上、原発部位に限定されている疾患について、黒色腫の局所侵襲が厚くて深いほど、リンパ節転移の可能性は高く、予後は悪い。黒色腫は局所拡張(リンパ管を通じて)および/または血行性経路によって遠隔部位へと伝播することができる。いかなる臓器も転移が波及しうるが、肺および肝臓が一般的部位である。
【0210】
関心対象の他の過剰増殖疾患は、表皮過剰増殖、組織リモデリングおよび修復に関係する。例えば、乾癬の慢性皮膚炎症は、過形成表皮ケラチン生成細胞ならびにCD4+記憶T細胞、好中球およびマクロファージを含む、浸潤性単核細胞に関連している。
【0211】
本発明の方法は、皮膚、結合組織、脂肪、乳房、肺、胃、膵臓、卵巣、子宮頸、子宮、腎臓、膀胱、結腸、前立腺、中枢神経系(CNS)、網膜および血液などから選択される細胞由来の腫瘍を含む、ほとんどではないとしても多くの悪性病変を治療する、非常に一般的な方法を提供することができる。関心対象の代表的な癌には下記が含まれるが、それらに限定されるわけではない:頭頸部および肺組織(例えば、頭頸部扁平上皮癌、非小細胞肺癌、および小細胞肺癌)、胃腸管および膵臓(例えば、胃癌、結腸直腸腺腫、結腸直腸癌、膵臓癌)、肝組織(例えば、肝細胞癌)、腎臓および尿路(例えば、異形成尿路上皮、膀胱癌、腎臓癌、ウィルムス腫瘍)、乳房(例えば、乳癌)、神経組織(例えば、網膜芽細胞腫、乏突起神経膠腫、神経芽腫、悪性髄膜腫、皮膚(例えば、正常表皮、扁平上皮癌、基底細胞癌、黒色腫など)、血液組織(例えば、リンパ腫、慢性骨髄性白血病(CML)、急性前骨髄球性白血病(APL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)など)など。
【0212】
本発明の状況において、動物、特にヒトに投与する用量は、妥当な時間枠で動物において予防または治療反応に影響をおよぼすのに十分であるべきである。当業者であれば、用量は用いる特定の化合物の強度、ドキソルビシンの用量、ドキソルビシンに対して用いる投薬法、動物の状態、および動物の体重、ならびに病気の重症度および疾患の段階を含む様々な因子に依存することを理解するであろう。
【0213】
用量のサイズは、特定の化合物の投与に付随しうる任意の有害副作用の存在、性質、および程度によっても決定されることになる。
【0214】
本発明の方法および組成物が用いられる特定の適用には、米国特許第6,251,355号;第6,224,883号;第6,130,245号;第6,126,966号;第6,077,545号;第6,074,626号;第6,046,044号;第6,030,783号;第6,001,817号;第5,922,689号;第4,322,391号;および第4,310,515号に記載のものが含まれ、これらの開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0215】
本発明のドキソルビシン活性物質とドキソルビシン毒性低減アジュバントとの組み合わせが用いられる追加の適用には、さらに米国特許第6,541,506号に記載のもの(医用器具または埋込物のコーティング、農業への適用など)が含まれ、その開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0216】
キット&システム
同様に提供されるのは、前述の本発明の方法を実施する際に用いられるキットおよびシステムである。例えば、本発明の方法を実施するためのキットおよびシステムは、ドキソルビシン活性物質およびドキソルビシン毒性低減アジュバントの一方または両方を含む、1つまたは複数の薬学的製剤を含んでいてもよい。したがって、特定の態様において、キットは、1つまたは複数の単位用量で存在する単一の薬学的組成物を含んでいてもよく、ここで組成物はドキソルビシン活性物質およびドキソルビシン毒性低減アジュバントの両方を含む。さらに他の態様において、キットは、それぞれドキソルビシン活性物質またはドキソルビシン毒性低減アジュバントのいずれかを含む、複数の別の薬学的組成物を含んでいてもよい。
【0217】
前述の成分に加えて、本発明のキットは本発明の方法を実施するための説明書をさらに含んでいてもよい。これらの説明書は本発明のキットにおいて様々な形で含まれてもよく、その1つまたは複数がキットに含まれてもよい。これらの説明書が含まれうる1つの形は、適当な媒体または基体に印刷された情報、例えば、情報が印刷された1枚または複数枚の紙、キットの包装、添付文書などである。さらにもう一つの手段は、情報が記録されている、コンピューターで判読可能な媒体、例えば、ディスク、CDなどであろう。含まれうるさらにもう一つの手段は、インターネットを介して遠隔場所の情報を利用するために用いうる、ウェブサイトアドレスである。任意の好都合な手段がキットに含まれていてもよい。
【0218】
本明細書において用いられる「システム」なる用語は、本発明の方法を実施するためにまとめられる、単一または異なる組成物で存在する、ドキソルビシン活性物質およびドキソルビシン毒性低減アジュバントの集まりを意味する。例えば、本発明に従い、まとめて被験者に同時投与する、または逐次投与する、または別の治療法の一部として投与する、別々に得たドキソルビシン活性物質およびドキソルビシン毒性低減アジュバント剤形は、本発明のシステムである。
【実施例】
【0219】
以下の実施例は、本発明をさらに詳細に例示するもので、いかなる様式でもその範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0220】
実験結果
I. マウス試験
細胞毒性物質による治療に関連する有害事象を最小限にする物質が利用可能であれば、癌化学療法の有効性を改善することができる。本試験の目的は、マウスにおけるドキソルビシン誘導性毒性に対して保護するニトロン化合物の用量を明らかにすることであった。
【0221】
このために、代表的ニトロン試験品(TK-115339)を、動物血漿中の心臓トロポニンI(cTnI)濃度によって評価しての、CD-1マウスにおけるドキソルビシン誘導性毒性である心損傷の1つの局面を軽減する、その能力について調べた(Li et al., Circulation, 113:535-43 (2006) and Hou et al., J Lab Clin Med., 146: 299-303 (2005)。ドキソルビシンはXinchem Corporation (China)から購入した。TK-115339はUniversity of California, Santa Cruzで合成した。
【0222】
体重20〜25gの8〜10週齢雄CD-1マウス(Charles River, Hollister, CA)を気候制御した環境に収容し、照明を制御し(明暗12:12)、動物に飼料および水を自由に与えた。1日目、動物(10匹/処置群)に、媒体(pH7.4緩衝化食塩水)、25mg/kgドキソルビシン、または25mg/kgドキソルビシンに加えてドキソルビシン処置の3時間前および後に1.0もしくは3.0mg/kg TK-115339を、腹腔(ip)(200μl量)投与した。注射には1mlシリンジおよび27G1/2針を用い、ドキソルビシンまたはTK-115339いずれかの全注射量は200μLであった。
【0223】
第2、3および4日に、1または3mg/kgいずれかのTK-115339の1回ip注射をマウスに投与した。第5日(ドキソルビシンの初回投与の96時間後)に、血漿試料を各動物から75mm未処理プラスティッククラッドヘマトクリット管を用いて眼窩後穿刺により採取した。次いで、マウスを二酸化炭素窒息により安楽死させた。血漿試料を、市販のELISA試験を製造業者の推奨に従って用い(Life Diagnostics, Inc., Cat. No. 2010-1-HSP)、cTnIについて分析した。
【0224】
データをSPSSソフトウェア(SPSS Inc., Chicago, IL)を用いて解析した。母分散の比較のためにマン-ホイットニーU検定を用い、続いて独立試料T検定を行った。
【0225】
代表的なデータ組を図1に示す。これは、血漿心臓トロポニンの測定により推定して、TK-115339がマウスをドキソルビシン誘導性心損傷から保護することを示している。図1に示すデータを代表して、1日目にマウス(10匹/治療群)に、媒体(pH7.4緩衝化食塩水)、25mg/kgドキソルビシン、または25mg/kgドキソルビシンに加えてドキソルビシン処置の3時間前および後に1.0もしくは3.0mg/kg TK-115339を、ip投与した。第2、3および4日に、1または3mg/kgいずれかのTK-115339の1回ip注射をマウスに投与した。第5日(ドキソルビシンの初回投与の96時間後)に、血漿試料を各動物から眼窩後眼出血により採取し、マウスを屠殺した。血漿試料を、トロポニンI用の市販のELISA試験を用い、cTnIについて分析した。試験からのトロポニン所見のボックスプロットを図1に示す。
【0226】
II. マウス用量反応試験
本試験の目的は、ドキソルビシン関連心毒性に対してTK-115339により提供される保護の用量反応を確立することであった。
【0227】
体重30〜35gの8〜10週齢雄CD-1雄マウス(Charles River, Hollister, CA)を気候制御した環境に収容し、照明を制御し(明暗12:12)、動物に飼料および水を自由に与えた。1日目に動物(12匹/処置群)に、25mg/kgドキソルビシンまたは25mg/kgドキソルビシンに加えてドキソルビシン処置の3時間前および後に0.0001、0.001、0.01、0.1もしくは1.0mg/kg TK-115339を、ip(200μl量)投与した。注射には1mlシリンジおよび27G1/2針を用い、ドキソルビシンまたはTK-115339いずれかの全注射量は200μLであった。
【0228】
第2および3日に、食塩水(ドキソルビシン単独群)またはTK-1153393(用量範囲実験群)いずれかの1回ip注射をマウスに投与した。第5日(ドキソルビシンの初回投与の96時間後)に、血漿試料を各動物から75mm未処理プラスティッククラッドヘマトクリット管を用いて眼窩後穿刺により採取した。次いで、マウスを二酸化炭素窒息により安楽死させた。血漿試料を、市販のELISA試験を製造業者の推奨に従って用い(Life Diagnostics, Inc., Cat. No. 2010-1-HSP)、cTnIについて分析した。
【0229】
データをSPSSソフトウェア(SPSS Inc., Chicago, IL)を用いて解析した。母分散の比較のためにマン-ホイットニーU検定を用い、続いて独立試料T検定を行った。
【0230】
代表的なデータ組を図2に示す。これは、血漿心臓トロポニンの測定により推定した、TK-115339により提供されるドキソルビシン誘導性心損傷からの保護は、用量に比例することを示している。図2に示すデータを代表して、1日目にマウス(12匹/治療群)に、25mg/kgドキソルビシンまたは25mg/kgドキソルビシンに加えてドキソルビシン処置の3時間前および後に0.0001、0.001、0.01、0.1もしくは1.0mg/kg TK-115339をip投与した。第5日(ドキソルビシンの初回投与の96時間後)に、血漿試料を各動物から眼窩後眼出血により採取し、マウスを屠殺した。血漿試料を、市販のELISA試験を用い、cTnIについて分析した。試験からのトロポニン所見のボックスプロットを図2に示す。
【0231】
III. 細胞培養試験
本試験の目的は、インビトロで代表的ニトロン試験品TK-115339がドキソルビシンの所望の活性を妨害するか否かを調べることであった。
【0232】
細胞培養試験のための腫瘍細胞株はATCCからのCCRF-CEM(Human T-ALL, CCL-119)で、細胞を、製品情報シートに従い、75cm2培養フラスコを56.7cm2ペトリ皿で置き換え、1%ペニシリン-ストレプトマイシン溶液および1%GlutaMAX(商標)を培地に加えて培養した。化合物TK-115339をDMSOに溶解し、次いで希釈して1、10および100μMの初期希釈標準溶液を得た。試験において、培地中の100倍希釈液を作成して、0.01、0.1および1.0μMの最終検定濃度を得た。ドキソルビシンを滅菌ろ過したPBSに溶解した。3つの100×溶液を作成して、0.01、0.1および1.0μMの最終検定濃度を得た。
【0233】
細胞をATCCプロトコルに従って解凍し、滅菌ろ過した増殖培地10mLに播種した。細胞を3から7回継代培養した後、実験を開始した。細胞懸濁液を対数増殖期の間に、細胞懸濁液1mLを新鮮増殖培地4mLへの比で希釈した。この懸濁液100μLの一定量を96穴マイクロタイタープレートに播種し、ATCC推奨大気条件化で培養した。24時間後、培地100μLおよび試験溶液2μLを各ウェルに加えて、72時間インキュベートした。ドキソルビシンを、0.01、0.1および1.0μMの濃度で単独または0.01、0.1および1.0μMの濃度のTK-115339との組み合わせで評価した。加えて、同じ濃度のTK-115339を単独で試験した。各条件について、n=12であった。
【0234】
インキュベーション終了時、細胞生存度を、供給業者Biosourceによって提供される標準プロトコルを用い、λ=570および600nmのalamarBlue(登録商標)の吸光度によってもとめた。データをSPSS 14.0ソフトウェア(SPSS Inc., Chicago, IL)を用いて解析した。実験群間の差の統計学的有意性を、一元配置ANOVAと、続いてボンフェローニの事後分析を用いて計算した。
【0235】
典型的結果のボックスプロットを図3に提供し、これはTK-115339がドキソルビシンの腫瘍細胞抗増殖活性を妨害しないことを示している。前述のとおりに細胞を調製し、試験した。ドキソルビシンを、0.01、0.1および1.0μMの濃度で単独または0.01、0.1および1.0μMの濃度のTK-115339との組み合わせで評価した。TK-115339を0.01、0.1および1.0μMの濃度の単独でも試験した。各条件について、12の重複測定を解析した。インキュベーション終了時、細胞生存度を、λ=570および600nmの吸光度測定を用い、alamarBlue(登録商標)によってもとめた。図3に示すとおり(第1群=ドキソルビシン0.01μM;第2〜4群=ドキソルビシン0.01μM+0.01、0.1、および1.0μMのTK-115339;第5群=ドキソルビシン0.1μM;第6〜8群=ドキソルビシン0.1μM+0.01、0.1、および1.0μMのTK-115339;第9群=ドキソルビシン1.0μM;第10〜12群=ドキソルビシン1.0μM+0.01、0.1、および1.0μMのTK-115339)、代表的ニトロン試験品であるTK-115339は、ドキソルビシンの所望の細胞毒性を妨害しない。動物データと合わせて、TK-115339などのニトロン化合物はドキソルビシン誘導性毒性を低減することができるが、ドキソルビシンの有益な抗新生物活性に顕著な影響を持たないことが明らかである。
【0236】
前述の結果および考察から、本発明はドキソルビシン活性物質の望まれない毒性を低減する一方で、それらの所望の活性を保持することが明らかである。したがって、本発明は様々な異なる適用において用いられ、当技術分野への著しい貢献を表す。
【0237】
本明細書において引用するすべての出版物および特許出願は、それぞれ個々の出版物または特許出願が具体的かつ個別に参照により本明細書に組み入れられると示されているかのごとく、参照により本明細書に組み入れられる。いかなる出版物の引用も、本出願日よりも前にそれが開示されたためであり、本発明が、先行する発明のためにそのような出版物に先行する資格を有さないことの自認であると解釈されるべきではない。
【0238】
前述の発明を、理解を明らかにするために例示および実例によってある程度詳細に記載してきたが、当業者であれば、本発明の教示に照らして、特定の変更および改変を、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく、それに対して行いうることが容易に明らかになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドキソルビシン活性物質の有効量を、それを必要としている被験者に投与する方法であって、
被験者にドキソルビシン活性物質の有効量を、ドキソルビシン活性物質の毒性を低減するのに有効なドキソルビシン毒性低減アジュバントの量と併せて投与する段階を含み、ここでドキソルビシン毒性低減アジュバントはニトロン化合物である、方法。
【請求項2】
ニトロン化合物が、式(I)の化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、およびプロドラッグ型、ならびにその空間異性体のうちの化合物である、請求項1記載の方法:

式中、
Lは-[C(R3)2]m-X'-[C(R4)2]n-であり;mは0から6までの整数であり;nは0から6までの整数であり;
X'は原子なし、NR2、O、S、SOおよびSO2からなる群より選択され;
Cyは置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換シクロヘテロアルキル、ビシクロアルケニル、ビシクロヘテロアルケニル、ビシクロアリール、またはビシクロヘテロアリール環からなる群より選択され;
R1は置換または無置換脂肪族、置換または無置換アルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、置換または無置換アラルキル、および置換または無置換ヘテロアラルキルからなる群より選択され;
R2は水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換アラルキルからなる群より選択され;
R3は水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換アラルキルからなる群より選択され;
R4は水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、および置換または無置換アラルキルからなる群より選択され、かつ任意の2つのR3は一緒になってシクロアルキル、シクロヘテロアルキル環を形成してもよく;
かつX'に隣接する炭素原子上のR3の1つおよびR4の1つは一緒になって5〜7原子の複素環を形成してもよい。
【請求項3】
CyがRS-Cyであり、かつ前記化合物が式(II)のものである、請求項2記載の方法:

式中、Rは水素、チオール、またはチオール結合体である。
【請求項4】
Rがチオール結合体であり、かつ前記化合物が式(III)のものである、請求項3記載の方法:

式中、R1、R2、LおよびCyはそれぞれ独立に同じまたは異なり、かつ該化合物は対称または非対称である。
【請求項5】
Lが原子なしであり、R1がtert-ブチルであり、R2が水素であり、かつCyが以下である、請求項2記載の方法:

式中、
R21はR22またはR22-S-であり、かつ
R22はそれぞれ水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換アルキル、置換または無置換アリールアルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換シクロヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換ヘテロアリールアルキルからなる群より独立に選択される。
【請求項6】
R21がR22-S-である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
R22がそれぞれ水素である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
R21が水素またはチオールであり、かつR22がそれぞれ水素である、請求項5記載の方法。
【請求項9】
Lが原子なしであり、R1がtert-ブチルであり、R2が水素であり、かつCyが以下である、請求項4記載の方法:

式中、
R22はそれぞれ水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換アルキル、置換または無置換アリールアルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換シクロヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換ヘテロアリールアルキルからなる群より独立に選択される。
【請求項10】
R22がそれぞれ水素およびヒドロキシルからなる群より独立に選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
Rが、生物学的に活性であっても生物学的に不活性であってもよいチオール結合体であって、前記化合物の生物薬剤学的および/または薬動力学的特徴の1つまたは複数を調節することができるチオール結合体である、請求項3記載の方法。
【請求項12】
化合物が、

からなる群より選択されるか、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、およびプロドラッグ型、その空間異性体からなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項13】
ドキソルビシン活性物質およびドキソルビシン毒性低減アジュバントを同時に投与する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
ドキソルビシン活性物質およびドキソルビシン毒性低減アジュバントを、単一の製剤で投与するか、または別々の製剤として投与する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
ドキソルビシン活性物質およびドキソルビシン毒性低減アジュバントを逐次投与する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
ドキソルビシン活性物質をドキソルビシン毒性低減アジュバントの前または後に投与する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
ドキソルビシン毒性低減アジュバントの量がドキソルビシン活性物質のおよその量を超えない、請求項1記載の方法。
【請求項18】
ドキソルビシン毒性低減アジュバントの量がドキソルビシン活性物質のおよその量よりも多い、請求項1記載の方法。
【請求項19】
ドキソルビシン活性物質がドキソルビシンである、請求項1記載の方法。
【請求項20】
ドキソルビシン活性物質の毒性が心毒性である、請求項1記載の方法。
【請求項21】
薬学的に許容される媒体中にドキソルビシン活性物質およびドキソルビシン毒性低減アジュバント両方の有効量を含む薬学的組成物であって、該ドキソルビシン毒性低減アジュバントがニトロン化合物である、薬学的組成物。
【請求項22】
ニトロン化合物が、式(I)の化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、およびプロドラッグ型、その空間異性体のうちの化合物である、請求項21記載の薬学的組成物:

式中、
Lは-[C(R3)2]m-X'-[C(R4)2]n-であり;mは0から6までの整数であり;nは0から6までの整数であり;
X'は原子なし、NR2、O、S、SOおよびSO2からなる群より選択され;
Cyは置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換シクロヘテロアルキル、ビシクロアルケニル、ビシクロヘテロアルケニル、ビシクロアリール、またはビシクロヘテロアリール環からなる群より選択され;
R1は置換または無置換脂肪族、置換または無置換アルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、置換または無置換アラルキル、および置換または無置換ヘテロアラルキルからなる群より選択され;
R2は水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換アラルキルからなる群より選択され;
R3は水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換アラルキルからなる群より選択され;
R4は水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、および置換または無置換アラルキルからなる群より選択され、かつ任意の2つのR3は一緒になってシクロアルキル、シクロヘテロアルキル環を形成してもよく;
かつX'に隣接する炭素原子上のR3の1つおよびR4の1つは一緒になって5〜7原子の複素環を形成してもよい。
【請求項23】
CyがRS-Cyであり、かつ前記化合物が式(II)のものである、請求項22記載の薬学的組成物:

式中、Rは水素、チオール、またはチオール結合体である。
【請求項24】
Rがチオール結合体であり、かつ前記化合物が式(III)のものである、請求項23記載の薬学的組成物:

式中、R1、R2、LおよびCyはそれぞれ独立に同じまたは異なり、かつ該化合物は対称または非対称である。
【請求項25】
Lが原子なしであり、R1がtert-ブチルであり、R2が水素であり、かつCyが以下である、請求項22記載の薬学的組成物:

式中、
R21はR22またはR22-S-であり、かつ
R22はそれぞれ水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換アルキル、置換または無置換アリールアルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換シクロヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換ヘテロアリールアルキルからなる群より独立に選択される。
【請求項26】
R21がR22-S-である、請求項25記載の薬学的組成物。
【請求項27】
R22がそれぞれ水素である、請求項26記載の薬学的組成物。
【請求項28】
R21が水素またはチオールであり、かつR22がそれぞれ水素である、請求項25記載の薬学的組成物。
【請求項29】
Lが原子なしであり、R1がtert-ブチルであり、R2が水素であり、かつCyが以下である、請求項24記載の薬学的組成物:

式中、
R22はそれぞれ水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換アルキル、置換または無置換アリールアルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換シクロヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換ヘテロアリールアルキルからなる群より独立に選択される。
【請求項30】
R22がそれぞれ水素およびヒドロキシルからなる群より独立に選択される、請求項29記載の薬学的組成物。
【請求項31】
Rが、生物学的に活性であっても生物学的に不活性であってもよいチオール結合体であって、かつ前記化合物の生物薬剤学的および/または薬動力学的特徴の1つまたは複数を調節することができるチオール結合体である、請求項23記載の薬学的組成物。
【請求項32】
前記化合物が、

からなる群より選択されるか、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、およびプロドラッグ型、その空間異性体からなる群より選択される、請求項22記載の薬学的組成物。
【請求項33】
ドキソルビシン毒性低減アジュバントの量がドキソルビシン活性物質のおよその量を超えない、請求項21記載の薬学的組成物。
【請求項34】
ドキソルビシン毒性低減アジュバントの量がドキソルビシン活性物質のおよその量よりも多い、請求項21記載の薬学的組成物。
【請求項35】
ドキソルビシン活性物質がドキソルビシンである、請求項21記載の薬学的組成物。
【請求項36】
細胞増殖疾患状態を患っている被験者を治療する方法であって、該被験者が該細胞増殖疾患状態について治療されるように、該被験者にドキソルビシン活性物質の有効量を、該ドキソルビシン活性物質の毒性を低減するのに有効なドキソルビシン毒性低減アジュバントの量と併せて投与する段階を含み、ここで該ドキソルビシン毒性低減アジュバントはニトロン化合物である、方法。
【請求項37】
ニトロン化合物が、式(I)の化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、およびプロドラッグ型、その空間異性体のうちの化合物である、請求項36記載の方法:

式中、
Lは-[C(R3)2]m-X'-[C(R4)2]n-であり;mは0から6までの整数であり;nは0から6までの整数であり;
X'は原子なし、NR2、O、S、SOおよびSO2からなる群より選択され;
Cyは置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換シクロヘテロアルキル、ビシクロアルケニル、ビシクロヘテロアルケニル、ビシクロアリール、またはビシクロヘテロアリール環からなる群より選択され;
R1は置換または無置換脂肪族、置換または無置換アルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、置換または無置換アラルキル、および置換または無置換ヘテロアラルキルからなる群より選択され;
R2は水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換アラルキルからなる群より選択され;
R3は水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換アラルキルからなる群より選択され;
R4は水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、および置換または無置換アラルキルからなる群より選択され、かつ任意の2つのR3は一緒になってシクロアルキル、シクロヘテロアルキル環を形成してもよく;
かつX'に隣接する炭素原子上のR3の1つおよびR4の1つは一緒になって5〜7原子の複素環を形成してもよい。
【請求項38】
CyがRS-Cyであり、かつ前記化合物が式(II)のものである、請求項37記載の方法:

式中、Rは水素、チオール、またはチオール結合体である。
【請求項39】
Rがチオール結合体であり、かつ前記化合物が式(III)のものである、請求項38記載の方法:

式中、R1、R2、LおよびCyはそれぞれ独立に同じまたは異なり、かつ該化合物は対称または非対称である。
【請求項40】
Lが原子なしであり、R1がtert-ブチルであり、R2が水素であり、かつCyが以下である、請求項37記載の方法:

式中、
R21はR22またはR22-S-であり、かつ
R22はそれぞれ水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換アルキル、置換または無置換アリールアルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換シクロヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換ヘテロアリールアルキルからなる群より独立に選択される。
【請求項41】
R21がR22-S-である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
R22がそれぞれ水素である、請求項41記載の方法。
【請求項43】
R21が水素またはチオールであり、かつR22がそれぞれ水素である、請求項40記載の方法。
【請求項44】
Lが原子なしであり、R1がtert-ブチルであり、R2が水素であり、かつCyが以下である、請求項39記載の方法:

式中、
R22はそれぞれ水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換アルキル、置換または無置換アリールアルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換シクロヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換ヘテロアリールアルキルからなる群より独立に選択される。
【請求項45】
R22がそれぞれ水素およびヒドロキシルからなる群より独立に選択される、請求項44記載の方法。
【請求項46】
Rが、生物学的に活性であっても生物学的に不活性であってもよいチオール結合体であって、かつ前記化合物の生物薬剤学的および/または薬動力学的特徴の1つまたは複数を調節することができるチオール結合体である、請求項38記載の方法。
【請求項47】
前記化合物が、

からなる群より選択されるか、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、およびプロドラッグ型、その空間異性体からなる群より選択される、請求項37記載の方法。
【請求項48】
ドキソルビシン活性物質およびドキソルビシン毒性低減アジュバントを同時に投与する、請求項36記載の方法。
【請求項49】
ドキソルビシン活性物質およびドキソルビシン毒性低減アジュバントを、単一の製剤で投与するか、または別々の製剤として投与する、請求項48記載の方法。
【請求項50】
ドキソルビシン活性物質およびドキソルビシン毒性低減アジュバントを逐次投与する、請求項36記載の方法。
【請求項51】
ドキソルビシン活性物質をドキソルビシン毒性低減アジュバントの前または後に投与する、請求項50記載の方法。
【請求項52】
ドキソルビシン毒性低減アジュバントの量がドキソルビシン活性物質のおよその量を超えない、請求項36記載の方法。
【請求項53】
ドキソルビシン毒性低減アジュバントの量がドキソルビシン活性物質のおよその量よりも多い、請求項36記載の方法。
【請求項54】
ドキソルビシン活性物質がドキソルビシンである、請求項36記載の方法。
【請求項55】
ドキソルビシン活性物質の毒性が心毒性である、請求項36記載の方法。
【請求項56】
細胞増殖疾患状態を患っている被験者を治療する際に用いるキットであって、
(a)ドキソルビシン活性物質;および
(b)ドキソルビシン毒性低減アジュバント
を含み、ここで該ドキソルビシン毒性低減アジュバントはニトロン化合物である、キット。
【請求項57】
ニトロン化合物が、式(I)の化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、およびプロドラッグ型、ならびにその空間異性体のうちの化合物である、請求項56記載のキット:

式中、
Lは-[C(R3)2]m-X'-[C(R4)2]n-であり;mは0から6までの整数であり;nは0から6までの整数であり;
X'は原子なし、NR2、O、S、SOおよびSO2からなる群より選択され;
Cyは置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換シクロヘテロアルキル、ビシクロアルケニル、ビシクロヘテロアルケニル、ビシクロアリール、またはビシクロヘテロアリール環からなる群より選択され;
R1は置換または無置換脂肪族、置換または無置換アルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、置換または無置換アラルキル、および置換または無置換ヘテロアラルキルからなる群より選択され;
R2は水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換アラルキルからなる群より選択され;
R3は水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換アラルキルからなる群より選択され;
R4は水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、および置換または無置換アラルキルからなる群より選択され、かつ任意の2つのR3は一緒になってシクロアルキル、シクロヘテロアルキル環を形成してもよく;
かつX'に隣接する炭素原子上のR3の1つおよびR4の1つは一緒になって5〜7原子の複素環を形成してもよい。
【請求項58】
CyがRS-Cyであり、かつ前記化合物が式(II)のものである、請求項57記載のキット:

式中、Rは水素、チオール、またはチオール結合体である。
【請求項59】
Rがチオール結合体であり、かつ前記化合物が式(III)のものである、請求項58記載のキット:

式中、R1、R2、LおよびCyはそれぞれ独立に同じまたは異なり、かつ該化合物は対称または非対称である。
【請求項60】
Lが原子なしであり、R1がtert-ブチルであり、R2が水素であり、かつCyが以下である、請求項57記載のキット:

式中、
R21はR22またはR22-S-であり、かつ
R22はそれぞれ水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換アルキル、置換または無置換アリールアルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換シクロヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換ヘテロアリールアルキルからなる群より独立に選択される。
【請求項61】
R21がR22-S-である、請求項60記載のキット。
【請求項62】
R22がそれぞれ水素である、請求項61記載のキット。
【請求項63】
R21が水素またはチオールであり、かつR22がそれぞれ水素である、請求項60記載のキット。
【請求項64】
Lが原子なしであり、R1がtert-ブチルであり、R2が水素であり、かつCyが以下である、請求項59記載のキット:

式中、
R22はそれぞれ水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換アルキル、置換または無置換アリールアルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換シクロヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換ヘテロアリールアルキルからなる群より独立に選択される。
【請求項65】
R22がそれぞれ水素およびヒドロキシルからなる群より独立に選択される、請求項64記載のキット。
【請求項66】
Rが、生物学的に活性であっても生物学的に不活性であってもよいチオール結合体であって、かつ前記化合物の生物薬剤学的および/または薬動力学的特徴の1つまたは複数を調節することができるチオール結合体である、請求項58記載のキット。
【請求項67】
前記化合物が、

からなる群より選択されるか、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、およびプロドラッグ型、ならびにその空間異性体からなる群より選択される、請求項57記載のキット。
【請求項68】
ドキソルビシン毒性低減アジュバントの量がドキソルビシン活性物質のおよその量を超えない、請求項56記載のキット。
【請求項69】
ドキソルビシン毒性低減アジュバントの量がドキソルビシン活性物質のおよその量よりも多い、請求項56記載のキット。
【請求項70】
ドキソルビシン活性物質がドキソルビシンである、請求項56記載のキット。
【請求項71】
細胞増殖疾患状態を患っている被験者を治療する際に用いるキットであって、
(a)ドキソルビシン毒性低減アジュバントを用いるための説明書、および
(b)ドキソルビシン活性物質、ドキソルビシン毒性低減アジュバント、またはその組み合わせのうちの、1つまたは複数を含む薬学的組成物
を含み、ここで該ドキソルビシン毒性低減アジュバントはニトロン化合物またはその誘導体を含み、かつ該ドキソルビシン毒性低減アジュバントは任意に別々の、または混和された成分として、ビスジオキソピペラジン化合物を含む、キット。
【請求項72】
ニトロン化合物が下記からなる群より選択される、請求項71記載のキット:5,5-ジメチル-1-ピロリン-N-オキシド;アルファ-フェニル-N-tert-ブチルニトロン;アルファ-(2,4-ジスルホフェニル)-N-tert-ブチルニトロン;アルファ-(4-スルファニルフェニル)-N-tert-ブチルニトロン;およびアルファ-(4-スルファニルフェニル)-N-tert-ブチルニトロンの対称または非対称ジスルフィド結合体。
【請求項73】
ビスジオキソピペラジン化合物が下記からなる群より選択される、請求項71記載のキット:4-[1-(3,5-ジオキソピペラジン-1-イル)プロパン-2-イル]ピペラジン-2,6-ジオン(デクスラゾキサン);4-[1-(3,5-ジオキソピペラジン-1-イル)エタン-2-イル]ピペラジン-2,6-ジオン;4-[1-(3,5-ジオキソピペラジン-1-イル)1-メチル-ブタン-2-イル]ピペラジン-2,6-ジオン;4-[1-(3,5-ジオキソピペラジン-1-イル)1-メチル-プロパン-2-イル]ピペラジン-2,6-ジオン;および4-[1-(3,5-ジオキソピペラジン-1-イル)ブタン-2-イル]ピペラジン-2,6-ジオン。
【請求項74】
ニトロン化合物がアルファ-(4-スルファニルフェニル)-N-tert-ブチルニトロン、またはその対称もしくは非対称ジスルフィド結合体であり、かつビスジオキソピペラジン化合物が4-[1-(3,5-ジオキソピペラジン-1-イル)プロパン-2-イル]ピペラジン-2,6-ジオンである、請求項71記載のキット。
【請求項75】
ドキソルビシン毒性低減アジュバントを含む薬学的組成物であって、ニトロン化合物またはその誘導体、およびビスジオキソピペラジン化合物またはその誘導体を含む組成物。
【請求項76】
ニトロン化合物またはその誘導体が下記からなる群より選択される、請求項75記載の薬学的組成物:5,5-ジメチル-1-ピロリン-N-オキシド;アルファ-フェニル-N-tert-ブチルニトロン;アルファ-(2,4-ジスルホフェニル)-N-tert-ブチルニトロン;アルファ-(4-スルファニルフェニル)-N-tert-ブチルニトロン;およびアルファ-(4-スルファニルフェニル)-N-tert-ブチルニトロンの対称または非対称ジスルフィド結合体。
【請求項77】
ビスジオキソピペラジン化合物またはその誘導体が下記からなる群より選択される、請求項75記載の薬学的組成物:4-[1-(3,5-ジオキソピペラジン-1-イル)プロパン-2-イル]ピペラジン-2,6-ジオン(デクスラゾキサン);4-[1-(3,5-ジオキソピペラジン-1-イル)エタン-2-イル]ピペラジン-2,6-ジオン;4-[1-(3,5-ジオキソピペラジン-1-イル)1-メチル-ブタン-2-イル]ピペラジン-2,6-ジオン;4-[1-(3,5-ジオキソピペラジン-1-イル)1-メチル-プロパン-2-イル]ピペラジン-2,6-ジオン;および4-[1-(3,5-ジオキソピペラジン-1-イル)ブタン-2-イル]ピペラジン-2,6-ジオン。
【請求項78】
ニトロン化合物がアルファ-(4-スルファニルフェニル)-N-tert-ブチルニトロンまたはその対称もしくは非対称ジスルフィド結合体であり、ビスジオキソピペラジン化合物が4-[1-(3,5-ジオキソピペラジン-1-イル)プロパン-2-イル]ピペラジン-2,6-ジオンである、請求項75記載の薬学的組成物。
【請求項79】
ドキソルビシン活性物質を含む、請求項75記載の薬学的組成物。
【請求項80】
ドキソルビシン活性物質が塩酸ドキソルビシンである、請求項79記載の薬学的組成物。
【請求項81】
式(II)のチオール修飾ニトロン化合物を含むか、またはその塩、溶媒和物、水和物、およびプロドラッグ型、ならびにその空間異性体のうちのチオール修飾ニトロン化合物を含む、組成物:

式中、Rは水素、チオール、またはチオール結合体である。
【請求項82】
Rがチオール結合体であり、かつ前記化合物が式(III)のものである、請求項81記載の組成物:

式中、
Lは-[C(R3)2]m-X'-[C(R4)2]n-であり;mは0から6までの整数であり;nは0から6までの整数であり;
X'は原子なし、NR2、O、S、SOおよびSO2からなる群より選択され;
Cyはそれぞれ置換もしくは無置換シクロアルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換ヘテロアリール、置換もしくは無置換シクロヘテロアルキル、ビシクロアルケニル、ビシクロヘテロアルケニル、ビシクロアリール、またはビシクロヘテロアリール環からなる群より独立に選択され;
R1はそれぞれ置換または無置換脂肪族、置換または無置換アルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、置換または無置換アラルキル、および置換または無置換ヘテロアラルキルからなる群より独立に選択され;
R2はそれぞれ水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換アラルキルからなる群より独立に選択され;
R3はそれぞれ水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換アラルキルからなる群より独立に選択され;
R4はそれぞれ水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、および置換または無置換アラルキルからなる群より独立に選択され、かつ任意の2つのR3は一緒になってシクロアルキル、シクロヘテロアルキル環を形成してもよく;
かつX'に隣接する炭素原子上のR3の1つおよびR4の1つは一緒になって5〜7原子の複素環を形成してもよい。
【請求項83】
Lが原子なしであり、R1がtert-ブチルであり、R2が水素であり、かつCyが以下である、請求項81記載の組成物:

式中、
R22はそれぞれ水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換アルキル、置換または無置換アリールアルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換シクロヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換ヘテロアリールアルキルからなる群より独立に選択される。
【請求項84】
R22がそれぞれ水素である、請求項83記載の組成物。
【請求項85】
Rが水素である、請求項83記載の組成物。
【請求項86】
R22がそれぞれ水素であり、かつRが水素である、請求項83記載の組成物。
【請求項87】
前記化合物が対称である、請求項82記載の組成物。
【請求項88】
Lが原子なしであり、R1がtert-ブチルであり、R2が水素であり、かつCyが以下である、請求項82記載の組成物:

式中、
R22はそれぞれ水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換アルキル、置換または無置換アリールアルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換シクロヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換ヘテロアリール、および置換または無置換ヘテロアリールアルキルからなる群より独立に選択される。
【請求項89】
R22がそれぞれ水素である、請求項88記載の組成物。
【請求項90】
薬学的製剤である、請求項81記載の組成物。
【請求項91】

からなる群より選択されるか、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、およびプロドラッグ型、ならびにその空間異性体からなる群より選択される、化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−524851(P2011−524851A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546880(P2010−546880)
【出願日】平成21年2月11日(2009.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/033825
【国際公開番号】WO2009/102808
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(502039997)トスク インコーポレーティッド (2)
【Fターム(参考)】