説明

毒性金属を使用することなく電気めっき法により黄色の金合金析出物を得る方法

【課題】毒性金属を含まない、厚い、黄色をした金合金層を析出させる方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、アルカリ性金シアン化物、有機金属化合物の形態の金属金、湿潤剤、金属イオン封鎖剤および遊離シアン化物を含む浴に浸漬した電極への金合金の電気めっき析出の方法に関する。本発明によれば、前記浴が、複合銅およびカリウムシアン化物形態の銅、およびシアン化物形態の銀を含み、鏡のように輝く黄色の金合金を電極上に析出させる。
本発明は電流析出の分野に関わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚い金合金層形態の電解析出物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
装飾めっきの分野において、9カラット以上の品位を有し、延性があり、10ミクロンの厚さを有し、高度の耐変色性を有する、黄色をした金の電解析出を製造する方法が知られている。これらの析出物は、金および銅に加えて0.1から3g・l-1のカドミウムを含むアルカリ性の電解浴における電気分解によって得られる。
【0003】
しかし、これらの既知の方法で得られる析出物は、1から10%の間のカドミウム含有率を有する。カドミウムは、厚い層、すなわち、1から800ミクロンの間の層の析出を促進し、合金に含まれる銅の量を減少させながら、黄色をした合金をもたらす。しかし、カドミウムは、極めて有毒であり、いくつかの国において禁止されている。
【0004】
銅および亜鉛を含む、カドミウムを含まない18カラットの合金も知られている。しかし、これらの析出物は、過度にピンク色の色調(銅が過剰)を有する。最後に、これらの析出物は、耐食性が乏しく、このことは急速に変色することを意味している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
その主成分として亜鉛もカドミウムも有さない、厚い、黄色をした金合金層を析出させるための製造方法を提供することによって、前述の欠点の全てまたは一部を克服することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、アルカリ性の金シアン化物、有機金属化合物の形態の金属金、湿潤剤、金属イオン封鎖剤および遊離シアン化物を含む浴に浸漬させた電極に、金合金を電気めっき析出させる方法に関し、特に、前記浴が、複合の銅およびカリウムシアン化物(double copper and potassium cyanide) の形態の銅、およびシアン化物形態の銀を含み、鏡のように輝く黄色の金合金を電極上に析出させることを特徴とする。
【0007】
本発明の他の有利な特徴によれば、
−上記浴は、アルカリ性のシアン化金形態の1から10g・l-1の金属金を含み、
−上記浴は、アルカリ性の複合シアン化物(double cyanide)形態の30から80g・l-1の金属銅を含み、
−上記浴は、錯体形態の10mg・l-1から1g・l-1の銀金属を含み、
−上記浴は、15から35g・l-1のシアン化物を含み、
−湿潤剤は、0.05から10ml・l-1の間の濃度を有し、
−湿潤剤は、ポリオキシアルケン、エーテルホスフェート、ラウリルサルフェート、ジメチルドデシルアミン−N−オキシド、ジメチル(ドデシル)アンモニウムプロパンスルホネートのうちから選択され、
−上記浴は、0.01から5ml・l-1の間の濃度のアミンを含み、
−上記浴は、0.1mg・l-1から20mg・l-1の間の濃度の減極剤を含み、
−上記浴は、リン酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩および/またはホスホン酸塩タイプの導電塩を含み、
−上記浴の温度は、50から80℃の間に保たれ、
−上記浴のpHは、8から12の間に保たれ、
−当該方法は、0.05から1.5A・dm-2の間の電流密度を用いて実施され、
−上記浴は、9.08%の金、90.85%の銅および0.07%の銀の比率を守る。
【0008】
本発明は、請求項のいずれかに記載の方法から得られた金合金形態の電解析出物に関わり、厚さが1から800ミクロンの間に構成され、銅を含み、そして、第3の主要化合物として銀を、75%の金、21%の銅および4%の銀の比率で含んでいて、輝く3N色が得られることを特徴とするものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、3N色を有する金合金の電解析出に関わり、驚くべきことに、Au−Cu−Agを主要化合物として知られていない比率で含むものであり、3N色すなわち輝きを呈する黄色が得られる。
【0010】
上記の実施形態の析出物には、毒性の金属またはメタロイドを含まない、特にカドミウムを含まない、3N黄色、200ミクロンの厚さ、優れた輝きを有し、極めて高度の摩耗および変色に対する耐性を有する金合金が存在する。
【0011】
この析出物は、次のタイプの電気分解によって電解浴にて得られる。
−金:5.5g・l-1
−銅:55g・l-1
−銀:40mg・l-1
−KCN:26g・l-1
−pH:10.5;
−温度:65℃;
−電流密度:0.3A・dm-2
−湿潤剤:0.05ml・l-1NN_ジメチルドデシルN−オキシド;
−イミノ二酢酸:20g・l-1
−エチレンジアミン:0.5ml・l-1
−ガリウム、セレンまたはテルル:10mg・l-1
【0012】
好ましくは、電気分解後に、最適な品質の析出物を得るために、200から450℃の間の温度における1から30分間の熱処理を行う。
【0013】
これらの条件は、98mg・A・min-1の陰極の収率をもたらし、上記実施形態の場合、1時間当たり約10μmの析出速度をもたらす。
【0014】
したがって、驚くべきことに、本発明による浴は、3N色、18カラット析出物に対応する、約75%の金、21%の銅および4%の銀の比率の析出物をもたらし、当該比率は、上記の色に関する通常の電解析出における比率(約75%の金、12.5%の銅および12.5%の銀と言う比率になる傾向にある)とは非常に異なっている。
【0015】
上記浴は光沢剤も含み得る。これは好ましくは、ブチンジオール誘導体、ピリジノ−プロパンスルホネートまたは前記二者の混合物、スズ塩、ロート油、メチルイミダゾール、チオカルバミドなどのジチオカルボン酸、チオバルビツール酸、イミダゾリジンチオンまたはチオリンゴ酸である。
【0016】
これらの実施形態において、上記電解浴は、断熱被覆されたポリプロピレンまたはPVC浴保持器に収容される。上記浴は、石英、PTFE、磁器、または安定化ステンレス鋼の浸漬電熱器(thermo-plunger)を用いて加熱する。良好な陰極棒の動きおよび電解液の流れを保つ必要がある。陽極は、白金めっきチタン、ステンレス鋼、ルテニウム、イリジウムまたは後二者の合金からなる。
【0017】
当然、本発明は、示した実施形態に限定されることはなく、当業者には明らかである様々な変形および変更が可能である。特に、上記浴は、極微量の以下の金属:Zr、Se、Te、Sb、Sn、Ga、As、Sr、Be、Biを含み得る。
【0018】
さらに、湿潤剤は、アルカリ性シアン化物媒体中でぬれることができる任意のタイプのものであってよい。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ性の金シアン化物、有機金属化合物の形態の金属金、湿潤剤、金属イオン封鎖剤および遊離シアン化物を含む浴に浸漬した電極に、金合金を電気めっき析出させる方法であって、前記浴が、複合銅およびカリウムシアン化物形態の銅、およびシアン化物形態の銀を含み、鏡のように輝く黄色の金合金を前記電極上に析出させ、前記浴が、9.08%の金、90.85%の銅および0.07%の銀の比率に守られている、ことを特徴とする金合金の電気めっき析出方法。
【請求項2】
前記浴が、アルカリ性シアン化金形態の5.5g・l-1の金属金、55g・l-1の複合アルカリ性シアン化物形態の金属銅および錯体形態の40mg・l-1の金属銀を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記浴が、15から35g・l-1のシアン化物を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記湿潤剤が、0.05から10ml・l-1の間の濃度を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記湿潤剤が、ポリオキシアルケン、エーテルホスフェート、ラウリルサルフェート、ジメチルドデシルアミン−N−オキシド、ジメチル(ドデシル)アンモニウムプロパンスルホネートのタイプのうちから選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記浴が、0.01から5ml・l-1の間の濃度のアミンを含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記浴が、0.1mg・l-1から20mg・l-1の間の濃度の減極剤を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記浴が、リン酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩および/またはホスホン酸塩タイプの導電塩を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記浴の温度が、50から80℃の間に維持されることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記浴のpHが、8から12の間に維持されることを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
0.3A・dm-2の電流密度で実施されることを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の方法から得られる金合金形態の電解析出物であって、厚さが1から800ミクロンの間であり、銅を含み、そして、第3の主要化合物として銀を含み、輝く3N色が得られる、ことを特徴とする電解析出物。
【請求項13】
金、銅および銀の合金形態の電解析出物であって、75%の金、21%の銅および4%の銀を含み、輝く3N色が得られる、ことを特徴とする電解析出物。


【公開番号】特開2011−84815(P2011−84815A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232903(P2010−232903)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(506425538)ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド (46)
【Fターム(参考)】