説明

比較的長期保存可能な生乳を製造するための方法

本発明は、少なくとも20日間の保存可能期間を有する比較的長期保存可能な生乳を製造するための方法であって、少なくとも2段階の遠心分離細菌除去が、特に腐敗に関与する胞子形成バクテリアを除去するために実施される、方法に関する。さらに、この方法により、これらの細菌除去段階を、乳を低温殺菌するための従来的なシステムに後から組み込むことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、比較的長期保存可能な生乳を製造するための方法に関する。
【0002】
飲用乳を製造するための一般的な方法(図1)においては、原乳が、初めに事前設定された脱脂温度にまで加熱される。この温度は、タンパク質の損傷を防止するために、例えば55〜62℃の範囲であることが可能である。
【0003】
脱脂、すなわち原乳を乳脂及び脱脂乳へと分離した後に、この乳脂は、均質化される。
【0004】
任意には、次いで、この脱脂乳は、所定量の均質化された乳脂を加えることによって標準化される。
【0005】
その後、この標準化され均質化された乳は、72〜75℃の間の温度にて、15〜30秒の処理時間にわたって低温殺菌されなければならない。このステップにおいて、腐敗に関与する細菌が殺菌される。
【0006】
最後に、この乳は、6〜7℃の温度まで冷却される。かかる製造方法は、無菌包装を伴うことにより、最大で12日の保存可能期間を実現する。
【0007】
さらに、乳の保存可能期間の長期化を実現する非常に様々な方法が知られている。しかし、通常は、高温加熱処理された乳は、生乳に比べて風味が大幅に異なる。
【0008】
例えば、T≦8℃の保存温度にて少なくとも20日間の保存可能期間を有する、長期保存可能(ESL:extended shelf life)乳と呼ばれるものが知られている。
【0009】
比較的長期保存可能な乳についての重要な前提条件は、胞子形成菌の大幅な減菌及び合計細菌数の減少化である。これらは、乳の腐敗を大幅に促進するものである。
【0010】
次に、ESL乳の製造において利用される既知の方法をさらに詳細に説明する。
【0011】
ESL直接加熱システム
先発製品として、標準化され熱処理された乳又は脂肪分の標準化のみがなされた乳が、店頭販売されている。
【0012】
この直接加熱システムにおいては、製品は、70〜85℃にまで再生加熱され、次いで直接蒸気注入により127℃の最高温度まで加熱される。3秒間にわたり乳を高温維持した後に、この乳は、フラッシュクーラ内において70〜85℃にまで冷却される。次いで、70℃にて無菌均質化が実施される。
【0013】
ESL間接加熱システム
先発製品として、直接加熱によるものと同一の製品が、店頭販売されている。この乳は、70℃にまで再生加熱され、次いで無菌的に均質化される。次いで、この製品は、再生熱交換器において105〜107℃まで加熱され、ヒータセクションにおいて127℃まで2秒間にわたり加熱される。
【0014】
ESL精密濾過
ここで、原乳は、55℃の通常の脱脂温度にて分離される。次いで、脱脂乳は、同様に55℃にて精密濾過される。乳脂は、105〜125℃まで6秒間にわたり保持液と共に加熱され、脱脂乳と共に混合され、均質化され得る。次いで、この乳は、低温殺菌され、4〜6℃にまで冷却される。
【0015】
99.5%超の細菌保留率を保証するといわれている0.8〜1.4μmの孔径を有する膜が、使用される。これにより、細菌の少ない透過液及び細菌の多い保持液が得られる。細菌濃縮液(保持液)は、濃縮されてもよく、高温加熱処理後に透過液まで再循環されてもよい。
【0016】
ESL深層濾過
この方法においては、ポリプロピレンから作製されたキャンドルフィルターが使用される。前置フィルタの孔径は、0.3μmであり、メインフィルタの孔径は、0.2μmである。この濾過は、分離温度にて実施され、細菌は、保持液の形成を伴わずにフィルタの深層において分離される。加熱システムの方法手順は、精密濾過の方法手順と一致する。
【0017】
提示される方法の製品は、従来的に低温殺菌された乳と感覚刺激的に同等である。保存可能期間を延ばすために精密濾過により乳から細菌を除去することは、原則的に、特に適切であることが判明している。
【0018】
独国特許第10036085号は、とりわけチーズ製造用の乳の製造における、乳から細菌を除去するための方法を開示している。乳から細菌を除去するために、乳は、分離器において脱脂乳及び乳脂に分離される。次いで、細菌が、精密濾過又は分離器により、脱脂乳から除去される。
【0019】
米国特許第3525629号は、チーズ製造用の乳を滅菌するための方法を開示している。この方法においては、バクテリア含有乳スラリが、2ステップの遠心分離方法において乳から分離され、滅菌され、乳回路へと再循環される。しかし、かかる乳を生乳と呼ぶことはできない。
【0020】
2ステップの遠心分離細菌除去は、「Neuer Stern in der Milchstrasse(銀河系の新星)」(Iloi Wasen著、Deutsche Molkerei Zeitung、2003年、40/41頁)という記事にも開示されている。しかし、具体的な方法手順は、この記事には開示されていない。
【0021】
「Separatoren fur Milch−Reinigung und Milch−Entkeimung(乳の純化及び乳からの細菌の除去のための分離器)」(Hanno R. Lehmann及びErnst Dolle著、scientific document No.12 Westfalia Separator AG、Oelde、初版、1986年、図20及び3章1.2)という文献は、脱脂乳からの細菌の2ステップの除去を開示している。これは、乳脂部分が、高い割合の胞子を有するか、又は加熱によって低い割合のβ−ラクトグロブリンを有するに留まるという欠点を有する。
【0022】
本発明の目的は、先述の先行技術から出立して、比較的長期保存可能な生乳を製造するための代替的な方法を提供することである。乳の又は乳成分の高温加熱処理が必ずしも必須ではない、本発明の変形形態もまた提供される。
【0023】
本発明は、請求項1及び2に記載の特徴により、この目的を達成する。
【0024】
この場合に、有利には、細菌は、生乳中に含まれる乳脂からも、1度、又は特に有利には2度にわたり除去される。
【0025】
本発明の有利な実施形態は、サブクレームに提示される。
【0026】
細菌の少なくとも2ステップの遠心分離除去を利用することにより、概して、濾過のみならず、分離前の原乳又は標準化後の飲用乳の約125℃の温度への加熱をも不要とすることが可能となる。
【0027】
細菌の少なくとも2ステップの遠心分離除去は、腐敗に関与する胞子形成菌の高い減菌を実現する。例えば、2ステップの遠心分離減菌後の1リットルの乳中には、細菌が除去された液体の10ml当たり最大で1つのセレウス菌胞子又はそれ未満が、検出され得る。正確には、この好気性胞子形成菌は、6日の期間後には何倍にも増殖し、甘性凝固により乳の保存可能期間を著しく減じる。このようにすることで、保存温度T≦8℃ではいずれの場合においても最大で21日までの保存可能期間を有し、製造時に高温加熱処理された材料を加える必要のない、比較的長期保存可能な乳が得られる。40日以上の極度の保存可能期間が、必ずしも実現されるわけではないが、従来の生乳と比較して、最小で20日以上という大幅に延びたこの保存可能期間は、高温加熱処理により風味の低下を被らない、保存可能期間の長い乳を可能にする。乳脂は、高温加熱処理される必要はないが、所望に応じてこの処理を受けることも可能である。
【0028】
本発明により製造された保存可能期間の長い生乳において達成されるラクツロース含有量、及びβ−ラクトグロブリン含有量は、生乳における対応物の含有量と同等である。
【0029】
分離器ドラムを断続的に空にすることにより除去される、細菌を多量に含有する濃縮液を、最小限に抑えることは、好ましくは、PRO+システム、すなわち分離器のディスクパッケージの外部に半径方向に配置されたフィン本体部を有する欧州特許第1786565号のタイプのシステムを使用することによって達成される。これは、非常に長い排出期間後に現れる非常に少量の濃縮液を排出することが可能となることを意味する。
【0030】
この少なくとも2段階の遠心分離細菌除去は、脱脂するステップに加えて、様々な箇所において、生乳を保存するための方法に組み込むことが可能である。この場合には、細菌除去ステップは、相互に継続する必要はない。
【0031】
脱脂中に乳から固形物をさらに分離することにより、同様に、乳からの細菌の幾分かの排出が、既に実現され得る。しかし、脱脂ステップは、このコンテクストにおいては、予備的な細菌除去の類としてのみ見なされるべきであり、完全な細菌除去ステップとして見なされるべきではない。
【0032】
このコンテクストにおいて、細菌除去は、好ましくは分離器、特にディスク分離器を使用して、細菌、胞子、及びバクテリア等の固形物からの浄化のための、乳又は脱脂乳の対象設定された処理を意味する。
【0033】
この細菌除去においては、液相(流入乳)が、遠心分離により固形物から浄化される。さらに、必須ではないが、このようにして浄化された液体のサブストリーム(substream)を細菌除去分離器の供給装置へと再循環させることにより、任意に細菌除去効果をさらに最適化することも考えられる。
【0034】
少なくとも2ステップの遠心分離細菌除去を上述の一般的な製造方法に組み込むことにより、最小で20日間まで乳の保存可能期間を有利に延ばすことが、概して達成され得る。
【0035】
問題となっている好気性細菌形成菌の個数が、以降のプロセスステップの種々の加熱プロセス前には、好ましくは検出限度以下の値にまで既に劇的に低減されているように、この少なくとも2つの細菌除去ステップが、脱脂前に連続的に既に実施されると、有利である。
【0036】
さらなる一変形形態においては、少なくとも1つの細菌除去ステップが、脱脂前に既に実施され得るが、第2の細菌除去ステップは、脱脂乳の加工中に、この方法に組み込まれる。
【0037】
さらなる一変形形態においては、細菌が、標準化の後に、すなわち脱脂乳にある量の乳脂を供給した後に、2つの連続的な遠心分離ステップにおいて全乳から除去され得る。
【0038】
第1の遠心分離細菌除去により、最大で90%まで対応する好気性胞子形成菌の個数が低減されるが、後に、脱脂乳からの別個の細菌除去が、さらなる遠心分離細菌除去ステップにおいて実施され得る。
【0039】
この変形形態においては、細菌の除去を確実にするために、脱脂分離ステップの後に、乳脂が好ましくは100〜140℃の間の温度にまで短期的に加熱されることにより、乳脂から細菌を確実に除去するのみならず、混合後の脱脂乳からも確実に除去することが、有利である。
【0040】
乳脂からの細菌の除去が、余分な乳脂の保存において有利であることが判明しているため、乳脂は、細菌が余分な乳脂からも除去されるように、脱脂の直後の短期間において、及び定量分割の前に、加熱され得る。
【0041】
比較的長期保存可能な生乳の保存中に細菌の除去を確実にするためには、本質的に既知の無菌包装が有利である。
【0042】
以下、図面を参照として、複数の作業例を参照しつつ、本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】生乳を製造するための一方法の概略的な手順を示す図である。
【図2】比較的長期保存可能な生乳を製造するための方法の本発明による第1の変形形態の概略的な手順を示す図である。
【図3】本発明による第1の変形形態を実施するための一装置の概略回路図である。
【図4a】比較的長期保存可能な生乳を製造するための一方法の本発明による一変形形態の概略的な手順を示す図である。
【図4b】比較的長期保存可能な生乳を製造するための一方法の本発明による一変形形態の概略的な手順を示す図である。
【図5】本発明による第2の変形形態を実施するための一装置の概略回路図である。
【0044】
図1は、「従来的に製造される生乳」のための既知の製造プロセスを反映した流れ図/ブロック図を示す。
【0045】
この場合には2〜8℃の温度で保存された生乳100が、ステップ200において、プレート熱交換器を使用して、50〜60℃、好ましくは55℃の脱脂温度にまで温められるか、又は温め直される。次いで、この原乳が、ステップ300において、分離器にて乳脂310及び脱脂乳360に遠心分離されるか、又は脱脂される。次いでステップ320において、乳脂310は、乳の所望の乳脂含有量に応じて分割され、余分な乳脂(ステップ340)は、所望に応じて同様に保存され得る(ステップ350)。次いで、生乳は、ステップ330において、クリーミングに対する安定性のために脂肪球の破壊が得られるような態様で均質化される。
【0046】
次いで、脱脂乳(ステップ360)は、所望量の乳脂と混合され、標準化され、ステップ400においてプレート熱交換器により70〜80℃、好ましくは74℃にまで温められるか又は短期間加熱され、ステップ500において対応する長期間にわたり高温に維持される。この温度にて、腐敗に関与する微生物が殺され、不要な酵素が不活性化される。
【0047】
細菌の繁殖を低下させるために、次いでこの乳は、ステップ600において、好ましくはプレート熱交換器を使用して、保存(ステップ700)のために4〜6℃、好ましくは5℃にまで冷却される。この乳のボトル中又は無菌飲用カートン中への無菌包装(ステップ800)及び包装された乳の消費は、一般的には12日間の間にわたり可能である。
【0048】
図2は、先述の既知のステップに加えて、2つの減菌ステップ900、901が追加されたブロック図である。これらの2つの減菌ステップは、脱脂前に、すなわち原乳の脱脂(ステップ300)前に、本プロセスに組み込まれる。
【0049】
この場合、50〜60℃、好ましくは55℃の分離温度への加熱(ステップ200)後に、原乳は、2つの減菌ステップ900及び901においてバクテリア及び胞子を除去される。これにより、脱脂ステップの前に既に、細菌除去、すなわちこの乳からの細菌の除去が、好ましくは55℃にて実施される。
【0050】
したがって、脱脂時には、実質的に胞子を含まない乳脂(ステップ310)のみならず、さらには細菌を含まない脱脂乳(ステップ360)が得られ、乳脂は後に、標準化のために脱脂乳に添加して戻すことが可能となる。この場合には、標準化後の飲用乳の低温殺菌は、それに応じて残りの腐敗に関与する微生物及び不要な酵素が破壊又は不活性化され得るように、74〜85℃、好ましくは80℃にて実施することが可能である。
【0051】
図3は、図2に図示される概略図にしたがって作動されるプラントの回路図を示す。この場合に、原乳は、供給装置Zを経由して貯蔵タンク1内に進み、原乳は、この貯蔵タンク内において好ましくは4〜6℃で保存される。この貯蔵タンクから、原乳は、向流型プレート熱交換器2のサブセクション2aを経由して送られ、そこで原乳は、50〜60℃、好ましくは55℃の温度まで温められる。
【0052】
次いで、原乳は、この温度で第1の細菌除去分離器3内に移送される。このステップにおいては、この原乳からの細菌の粗除去が行われ、腐敗に関与する胞子形成菌の個数を約90%低減させることが可能である。
【0053】
この細菌粗除去の後に、原乳は、第2の細菌除去分離器4内に移送される。この第2の細菌除去ステップにおいて、細菌は、少なくともセレウス菌胞子がもはや検出不能となるように、確実に除去される。
【0054】
次いで、細菌が除去された原乳は、脱脂分離器5により脱脂され、原乳は、脱脂分離器5において乳脂及び脱脂乳に分離される。
【0055】
乳脂は、ライン8を介して脱脂分離器5から出て、この場合には熱交換器9により好ましくは74℃に維持され得る。代替的には、熱交換器9は、110〜140℃、好ましくは125℃にまで乳脂を加熱することが可能であり、このようにすることで、細菌の追加的な熱的後除去につながる。さらに、任意には、分離送給ラインを介してプラントの工程間洗浄(CIP:cleaning−in−process)を行うことが可能である。
【0056】
図示しない弁により、乳脂の定量分割が行われ、乳脂の幾分かが、余分の乳脂Eとしてこのプロセスから除去され、保存され得る。代替的には、さらなる追加の乳脂を、このプロセスに送ることが可能である。乳脂量が所定値に設定された後には、乳脂は、ホモジナイザ11内に送られる。次いで、乳脂は、図示しない弁を介して脱脂乳に再循環される。
【0057】
標準化とも呼ばれるこのプロセスは、脱脂乳ラインを乳脂ラインに連結するものとしての、図示しない連結ピース内において実施される。
【0058】
次いで、この標準化された生乳は、ラインを介してプレート熱交換器2に送られ、そこで好ましくは55℃(セクション2b)から好ましくは74℃(セクション2c)までの通路において温め直される。この乳を加熱するために、本例においては、蒸気Dが使用される。この蒸気Dは、濃縮により向流中に所要の熱入力を導入する。次いで、乳は、高温維持のため、さらなる熱交換器7を経由して送られる。好ましくは74℃への加熱により、胞子形成菌の適度な不活性化がもたらされる。
【0059】
次いで、標準化された生乳(T=約74℃)は、プレート熱交換器のセクション2c内において、並びにセクション2b(Tmilk=約55℃)、セクション2a(Tmilk=約8℃)、及びセクション2d(Tmilk=約4℃)を経由して、4〜6℃の温度にまで冷却される。セクション2dは、冷媒供給装置CF及び冷媒出口COを使用する氷冷部として設計され得る。出口Aを介して、比較的長期保存可能な生乳が、無菌包装システムへと送られる。パラメータ(圧力、細菌数、細胞数、温度、分離器のモータ出力等)に対応する計測デバイス及び制御デバイスは、明瞭化のため、本回路プラン内には図示しない。
【0060】
図4においては、2つの細菌除去ステップ900、901が、プロセス手順の様々な箇所にて組み込まれている。第1の細菌除去900は、脱脂300の前又は原乳を乳脂(ステップ310)及び脱脂乳(ステップ360)に分離する前に実施されるが、細菌除去ステップ901は、脱脂乳(ステップ360)から細菌を除去する役割を果たす。脱脂ステップの後に分離された乳脂は、好ましくは125℃にまでさらに加熱され、このようにすることで乳脂から細菌を確実に除去する。
【0061】
余分な乳脂(ステップ340)が分離された(ステップ320)後に、所定量の乳脂が、細菌を含まない脱脂乳360に送られる。次いで、飲用乳が、再度温め直されて(ステップ400)、残りの腐敗に関与する微生物又は酵素が不活性化される。次いで、高温維持ステップ500が続き、さらに、結果的に得られる飲用乳が好ましくは5℃以下の温度にて保存及び包装され得るように、冷却プロセス(ステップ600)が続く。
【0062】
したがって、図4aの例においては、原乳からの第1の細菌除去は、分離前に実施され、脱脂乳からの第2の細菌除去は、乳脂及び脱脂乳の分離後に実施される。したがって、細菌は、このプロセスにおいては、生乳、乳脂、及び脱脂乳の各成分から別個に除去される。
【0063】
代替的には、均質化された乳脂に高温加熱処理を施すのではなく、均質化後に標準化のためにこの乳脂を脱脂乳に送り戻し、次いで脱脂乳及び乳脂のこの混合物を共に第2の細菌除去901にかけることも考えられる。次いで、この後に、包装された生乳の最終加工のために、再びステップ400〜800が続く(図4bを参照)。
【0064】
図5は、図4aに図示される概略図にしたがって作動されるシステムの回路図を示す。この場合に、原乳は、図3と同様に、プレート熱交換器2’において55℃にまで温められ、次いで細菌除去分離器3’において細菌粗除去を受ける。
【0065】
図3の作業例とは対照的に、細菌が除去された原乳は、第1の細菌除去ステップ後に既に脱脂分離器5’により脱脂される。
【0066】
脱脂後に、脱脂乳は、第2の細菌除去分離器4’内に送られ、そこで、乳脂とは別個に細菌除去を再度受ける。
【0067】
残りのプロセスステップは、装置に関しては図3と同様の態様で実現される。
【0068】
「従来的に製造される生乳」の低温殺菌における処理方法と比較した場合に、比較的長期保存可能な生乳の製造においては、原乳の品質に対して、純度に関連した処理に対して、及び冷却に関連した保存に対して、比較的大きな要求がなされる。例えば、包装については、本質的に無菌の包装が考慮に入れられる。原乳は、最高品質のものであるべきであり、一般的には48時間よりも古いものであるべきではない。
【0069】
図示される3つの変形形態の代替としては、乳の標準化後の2ステップの遠心分離細菌除去が、本発明によれば同様に可能である。このために、例えば脱脂分離器として、本出願人のモデルMSE 230−01−777が、考慮に入れられ、細菌除去分離器として、モデルCND−215−01−076(DE1786565に記載されるように、PRO+システムへとさらに転換される)及びモデルCSE−230−01−777が、考慮に入れられる。細菌除去分離器及び脱脂分離器としては、好ましくは、連続作動する自動排出ディスク分離器が使用される。
【0070】
このプロセスにおいて、以前からの従来的なPasteurシステムが、2つの追加的な細菌除去分離器並びに乳脂のための加熱デバイス及び冷却デバイスに関する問題を伴うことなく、改良され得る。
【0071】
その後、好ましくは、本方法において除去されたバクテリア相及び場合によっては乳の一部が、廃棄される。加熱によるこの相の滅菌、すなわちバクテリアの破壊並びに細菌が除去された生乳へのかかる滅菌された相の再循環は、生乳の品質に、特にその含有物であるβ−ラクトグロブリン及びラクツロースに悪影響を与えるため、好ましくない。
【0072】
β−ラクトグロブリンは、牛の乳内に存在する乳漿タンパク質である。高含有量のβラクトグロブリンは、高い乳品質の指標となる。乳の加熱時には、乳タンパク質の変性が生じ、その結果、低含有量の乳漿タンパク質、及びさらには低含有量のβ−ラクトグロブリンがもたらされる。
【0073】
ラクツロースは、熱処理時に生じるラクトースの転位反応の副生成物である。ラクツロースは、下剤として作用し、人体によって利用され得ない。ラクツロースは、原乳中には存在しない。したがって、低いラクツロース含有量は、乳の鮮度及び品質の指標となる。
【0074】
以下に、欧州共同体評議会の指令92/46/EECから、ラクツロース含有量及びβラクトグロブリンの含有量についてのいくつかの指針値を列挙する。さらに、様々な加工乳品種のβ−ラクトグロブリンの含有量についてのドイツ連邦食品栄養研究所(BFEL)の提案を示す。
【0075】
【表1】

【0076】
上記の表においては、滅菌された乳、超高温処理された乳(UHT)、高温加熱処理された乳、及び低温殺菌された乳が比較され、各乳の品種の定義を可能にするために、及び消費者の一部を混乱させるリスクを回避するために、各品種についての指針値が示される。この場合に、低温殺菌された乳は、従来的に製造された生乳と同等に製造されることが可能となり、その加工方法は、図1に示される。
【0077】
次に、細菌が除去され、図2による方法の一変形形態により処理された原乳を原料とする低温殺菌された乳の各測定値を、精密濾過された乳又は直接加熱された乳の測定値と比較する。
【0078】
この場合に、低温殺菌された乳の分類は、ラクツロース及びβ−ラクトグロブリンについて上記の表において示した指針値により導かれる。
【0079】
【表2】

【0080】
これらの測定値から分かるように、細菌が除去された原乳から製造された低温殺菌乳は、低温殺菌された乳、すなわち従来的に製造された生乳と品質において同等である。
【符号の説明】
【0081】
(参照数字)
貯蔵タンク(リザーバ) 1、1’、1’’
細菌除去分離器 3、3’、3’’
脱脂分離器 5、5’、5’’
熱交換器 7、7’、7’’
熱交換器 9、9’、9’’
ホモジナイザ 11、11’、11’’
生乳ライン 13、13’、11’’
保存生乳 100
加温 200
脱脂 300
乳脂 310
下位分割 320
均質化(乳脂) 330
余分な乳脂 340
プレート熱交換器 2,2’,2’’
細菌除去分離器 4、4’、4’’
保存(余分な乳脂) 350
供給装置(原乳) Z
出口(生乳) A
余分な乳脂のための出口 E
冷媒供給装置 CF
脱脂乳ライン 6、6’、6’’
乳脂ライン 8、8’、8’’
脱脂乳 360
加熱(乳脂) 370
高温維持(乳脂) 380
短期間加熱/低温殺菌 400
高温維持 500
冷却 600
保存、液体の加熱/冷却 700
供給装置及び出口 F1
分離細菌除去I 900
分離細菌除去II 901
蒸気 D
冷媒出口 CO
包装 800
洗浄 CIP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比較的長期保存可能な生乳を製造するための方法であって、
a)標準化の前に原乳から、又は
b)標準化の後に全乳から
少なくとも2ステップの遠心分離細菌除去(900、901)が実施される、方法。
【請求項2】
少なくとも2ステップの遠心分離細菌除去(900、901)が実施される、比較的長期保存可能な生乳を製造するための方法であって、少なくとも1つの細菌除去段階は、脱脂前に既に実施されるが、第2の細菌除去段階は、脱脂乳の加工中に実施される、方法。
【請求項3】
前記少なくとも2ステップの遠心分離細菌除去(900、901)に続いて、乳が加熱される(400)ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記加熱(400)が、70〜85℃にて再生的に実施されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
a)所定の脱脂温度まで原乳を加熱する(200)ステップと、
b)前記原乳を脱脂して(300)、
i)所定の指針値に基づくある量の乳脂(310)を分割する(320)ステップと、さらに
c)前記乳を標準化するステップと、
d)前記標準化された乳を加熱する(400)ステップと、
e)前記乳を高温維持する(500)ステップと、
f)前記乳を冷却する(600)ステップと、
g)包装する(800)ステップと
を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも2つのステップが連続的に続く遠心分離細菌除去(900、901)が、前記乳を標準化するステップの後に、及び包装する(800)ステップの前に実施されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの遠心分離細菌除去(900)が、前記原乳を加熱する(200)ステップの後に、及び脱脂する(300)ステップの前に実施されることと、前記脱脂された乳(360)からの少なくとも1つのさらなる遠心分離細菌除去(901)が、実施されることとを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記乳脂(310)が、前記原乳を脱脂する(300)ステップの後に細菌除去のために加熱される(390)ことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記乳脂(310)が、前記原乳を脱脂する(300)ステップの後に、及び前記ある量の乳脂(310)を分割する(320)ステップの前に細菌除去のために加熱されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
包装する(800)ステップが、無菌包装として実施されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記遠心分離細菌除去の少なくとも1つの段階が、分離ディスクから作製されたディスクスタックを有する分離器において実施されることを特徴とする、請求項1〜10いずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
フィンを有する分離器が使用され、前記フィンが、前記分離器のドラム内の分離ディスクの外部に半径方向に配置されていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
滅菌された相は、細菌が除去された生乳中に再循環されないことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−504335(P2013−504335A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529246(P2012−529246)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063511
【国際公開番号】WO2011/032957
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(508322956)ジーイーエー メカニカル エクイップメント ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】