説明

毛成長調節剤の評価又はスクリーニング方法

【課題】入手が容易な動物を用いた毛成長調節剤の評価又はスクリーニング方法の提供。
【解決手段】被験物質の存在下、ブタの毛包を器官培養し、当該毛包の成長量を促進又は抑制する物質を評価又は選択することを特徴とする、毛成長調節剤の評価又はスクリーニング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブタの毛包を用いた毛成長調節剤の評価又はスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に人は、毛に関し、部位によって育毛や抑毛を希望することは多い。例えば、ストレスや遺伝等によって生じる薄毛や脱毛等の毛髪に悩みを抱える人は少なくない。また、いわゆるムダ毛処理に煩わしさを感じている人もいる。
毛には、男性ホルモンに依存するものとしないものが存在することが知られている。例えば、前頭部から頭頂部にかけて脱毛したり、その部分が後退する男性型脱毛症やヒゲや脚、腋毛等の毛は男性ホルモンと深く関与し、一方、側頭部、後頭部、眉毛、まつげは小さいと考えられている(非特許文献1、非特許文献2)。
従って、毛の伸長を調節する育毛剤や抑毛剤は、様々な側面から開発が行われている(特許文献1及び2)。
【0003】
近年、育毛剤や抑毛剤の探索には、迅速でかつ簡便に評価やスクリーニングを行えることから、ヒトやマウス・ラットの毛包の細胞培養や毛包の器官培養法が用いられている(非特許文献3〜5、特許文献3及び4)。ヒトの毛包の器官培養によるスクリーニングは、データの信頼性が高いものの、ヒトの毛包自体の入手が困難であり、大量のスクリーニングには適していない。また、マウス・ラットの毛包の器官培養によるスクリーニングは、常時入手は可能であるものの、実験動物を用いるため動物愛護の観点から、やはり大量のスクリーニングには適していない。
【特許文献1】特開2005−206536号公報
【特許文献2】特開2006−8657号公報
【特許文献3】特開平11−49647号公報
【特許文献4】特開2002−62289号公報
【非特許文献1】Ebling FJ et al., Clin Endocrinol Metab.、15巻、319-339(1986)
【非特許文献2】Stenn KS et al., Physiol Rev.、81巻、449-494(1993)
【非特許文献3】T. Jindo. et al., The Journal of Dermatology, Vol,20, 756-762, 1993.
【非特許文献4】宇塚 誠及び▲奏▼沢 千加,日皮誌,104(8),979-987,1994.
【非特許文献5】M.P.Philpott et al., Journal of Cell Science, 97, 463-471, 1990.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、入手が容易な動物の毛包を用いた毛成長調節剤の評価又はスクリーニング方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、毛の成長調節物質の新たな評価又はスクリーニング系を検討したところ、ブタの各部位の毛包を器官培養した場合に、その成長が5α−ジヒドロテストステロン(以下、DHTと略す。)によって影響を受けるものと受けないものが存在し、これを用いることにより、男性ホルモン依存性又は非依存性毛の成長調節剤を評価又はスクリーニングできることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、被験物質の存在下、ブタの毛包を器官培養し、当該毛包の成長を促進又は抑制する物質を評価又は選択することを特徴とする、毛成長調節剤の評価又はスクリーニング方法を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、被験物質の存在下、ブタの腹部又は背部の毛包を器官培養し、当該毛包の成長を促進又は抑制する物質を評価又は選択することを特徴とする、男性ホルモン依存性毛成長調節剤の評価又はスクリーニング方法を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、被験物質の存在下、ブタ腹部の毛包を器官培養し、当該毛包の成長を促進する物質を評価又は選択することを特徴とする、男性型脱毛症用育毛剤の評価又はスクリーニング方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、被験物質の存在下、ブタ背部の毛包を器官培養し、当該毛包の成長を抑制する物質を評価又は選択することを特徴とする、男性ホルモン依存性毛用抑毛剤の評価又はスクリーニング方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、被験物質の存在下、ブタの側腹、そけい部、肩又は臀部の毛包を器官培養し、当該毛包の成長を促進又は抑制する物質を評価又は選択することを特徴とする、男性ホルモン非依存性毛成長調節剤の評価又はスクリーニング方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大量に入手が容易な食肉用ブタの毛包を使用できることから、育毛又は抑毛効果のある物質を簡便且つ効率的に評価又は選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の毛成長調節剤の評価又はスクリーニング方法は、ブタの特定部位の毛包を器官培養し、その成長を促進又は抑制する物質を評価又は選択するものである。
後記実施例に示すように、ブタの各部位の毛包を男性ホルモンの一つであるDHTの存在下で器官培養し、当該毛包の成長をDHT無添加の同部位の毛の伸長量で比較した場合、腹部の毛の伸長量は大幅に減少し、背部の毛の伸長量は大幅に増加し、側腹、そけい部、肩及び臀部の各毛の伸長量はほぼ同等であった(実施例1)。すなわち、ブタの毛包の成長には、その由来部位によってDHTの影響を受けるものと受けないものが存在することが見出された。
一方ヒトでは、前頭部から頭頂部にかけて脱毛したり、その部分が後退する男性型脱毛症は、男性ホルモンによってその症状が進行することは古くから明らかにされ、抗男性ホルモン剤が有効であることが知られている。また、ヒゲや脚の毛は、男性ホルモンにより成長が促進されることが報告され(Ebling FJら、Clin Endocrinol Metab.、15巻、319-339(1986))、側頭部、後頭部、眉毛、まつげは男性ホルモンによる影響は小さいと考えられている(Stenn KSら、Physiol Rev.、81巻、449-494(2001))。
【0013】
従って、ブタの腹部の毛包の成長は、男性ホルモン依存性で男性ホルモンによって抑制される毛、例えばヒトの前頭部から頭頂部の毛髪等の成長と類似し、ブタの背部の毛包の成長は、男性ホルモン依存性で男性ホルモンによって促進される毛、例えばヒトのヒゲ、脚の毛、胸毛、陰毛、思春期ごろの腋毛等の成長と類似し、ブタの側腹の毛包、そけい部の毛包、肩の毛包及び臀部の毛包の成長は、男性ホルモンによって影響を受けない毛、例えばヒトの側頭部・後頭部の頭髪、眉毛、まつげ、思春期以降の腋毛等の成長と類似すると考えられる。
【0014】
従って、ブタの特定部位の毛包の成長を指標として、男性ホルモン依存性毛成長調節剤、男性型脱毛症用育毛剤、男性ホルモン依存性毛抑毛剤、及び男性ホルモン非依存性毛成長調節剤等の毛成長調節剤の評価又はスクリーニングを行うことできると考えられる。
本発明の評価又はスクリーニングは、具体的には、例えば以下の工程(1)〜(3)により行うことができる。
(1)ブタの特定部位の毛包に被験物質を接触させる工程、
(2)当該毛包を器官培養して成長を測定し、該成長を被験物質に接触させない毛包の成長と比較する工程、
(3)(2)の結果に基づいて、毛包の成長を促進又は抑制させる被験物質を毛成長調節剤として評価又は選択する工程。
【0015】
ブタの毛包とは、ブタの皮膚から採取した毛根全体を取り巻く組織であり、具体的には毛幹、毛乳頭、毛母細胞、毛根等の毛の伸長に関与する器官を含む組織全体をいう。
本発明においては、斯かる毛包のうち、成長期にある毛包(成長期毛包)が使用される。
ここで、毛包採取の対象となるブタは、毛を有しているものであれば何れの品種でもよいが、一般に食肉用に掛け合わされたブタの品種を用いればよい。
食肉用として改良されたブタとしては、例えば、イギリスのヨークシャー州地方で在来種に中国種、ネポリタン種及びレスター種等を交配して作られた白色毛を有するヨークシャー種(大・中・小の3型ある);イギリスのバークシャーとウィルッシャー地方の在来種にシアメース種、中国種及びネポリタン種等を交雑して作られた黒色毛を有するバークシャー種;デンマークの在来種に大ヨークシャー種を交配して作られた白色毛を有するランドレース種;アメリカのマサチューセッツ及びケンタッキー州原産で黒色毛を有するハンプシャー種;アメリカにおいてヨーロッパ原産の赤色系のブタとニュージャージー州で改良されていた赤色系のブタから作られたデュロック種等が挙げられる。
日本において系統維持されている登録品種としては、中ヨークシャー種(Y)、バークシャー種(B)、ランドレース種(L)、大ヨークシャー種(W)、ハンプシャー種(H)、デュロック種(D)の6品種がある。一般的な食肉用ブタとしては、純粋なバークシャー種のみの黒豚以外は、これらの品種同士を組み合わせた雑種が多く、例えば、ランドレース種(L)の系統豚「トチギL」に大ヨークシャー種(W)を交配した「LW雌豚」に、さらにデュロック種(D)を交配して生産された「とちぎLaLaポーク」;北京黒豚種にバークシャー種とデュロック種を掛け合わせて作った「Tokyo X」等が挙げられる。
このうち、成長期毛を判断しやすいヨークシャー種、ランドレース種等の白色毛を有する品種及びその雑種を用いるのが好ましい。食肉用ブタを使用した場合、食肉を取得した後のブタの皮膚から毛包を取得することが可能であり、毛包の取得の為だけに動物を傷つけることが無いので好ましい。
【0016】
使用部位は、腹部、背部、側腹、そけい部、肩又は臀部等が挙げられ、評価目的に応じて選択される。すなわち、男性型脱毛症育毛剤の評価又はスクリーニングには腹部の毛包、ヒゲや腕・脚・胸・陰部・思春期ごろの腋の毛等の男性ホルモン依存的に成長が促進される毛の成長調節(育毛又は抑毛)剤の評価又はスクリーニングには背部の毛包、ヒトの側頭部・後頭部の頭髪、眉毛、まつげ、思春期以降の腋毛等の男性ホルモン非依存性毛の成長調節(育毛又は抑毛)剤の評価又はスクリーニングには側腹の毛包、そけい部の毛包、肩の毛包又は臀部の毛包をそれぞれ使用するのが好ましい。
【0017】
毛包の採取は、評価目的に応じた部位の豚皮を切り取り、無菌下にて、脂肪組織を除いた後、毛包を単離することにより行えばよい。
【0018】
毛包と被験物質との接触は、例えば被験物質を所定の濃度になるように予め培養液中に添加した後、毛包を培養液に載置すること、或いは、毛包が載置された培養液に、被験物質を所定の濃度になるように添加することにより行うことができる。
【0019】
毛包の器官培養は、マウスのヒゲの毛包の器官培養(非特許文献4)等の公知の毛包の器官培養方法を用いて行うことができ、例えば、培養液を染み込ませた滅菌メッシュ等のディッシュ上に採取した毛包を載せ、37℃の温度下、CO2を含む空気気相下で、通常2〜56日間、好ましくは4〜21日間培養することにより行うことができる。
培養液は、例えば、RPMI1640培地、Willam's E培地、DMEM/HamF12(1:1)培地等が挙げられ、適宜寒天やゼラチンを添加してもよい。また、必要に応じて、抗生物質、アミノ酸、血清、成長因子、生体抽出物等を添加してもよい。
【0020】
毛包の成長の測定は、例えば、画像解析や顕微鏡下でミクロメーター用いて毛の伸長量や太さの増減を計測する方法、器官培養後の毛包中の細胞増殖活性あるいは増殖細胞数を計測する方法、毛包の成長の強さと反比例して毛包中に多く見られるアポトーシス細胞を計測する方法等が挙げられる。
【0021】
毛包の成長の測定において、画像解析や顕微鏡下でミクロメーター用いて毛の伸長量や太さの増減を計測する方法を用いる場合、例えば、毛球部基底部から毛幹先端までの長さを測定し、培養開始時からの毛の伸長量を計測すること又は伸長した毛幹の太さを毛先と根元近くで比較することで、太さの増減を計測すること等が挙げられる。
上記の場合、毛包の成長を促進又は抑制する物質の評価は、毛包を被験物質に接触させ、器官培養し、測定した毛の伸長量あるいは太さを、被験物質に接触させない毛の伸長量あるいは太さ(コントロール)と比較し、コントロールを100としたときの伸長率(%)あるいは太さの変化率(%)を求め、その結果に基づき行えばよい。そして、高い値ほど毛の成長を促進する又は低い値ほど毛の成長を抑制すると評価する。
【0022】
また、毛包中の細胞の増殖活性、呼吸活性又は増殖細胞数を測定する場合は、例えば、器官培養の培地にブロモデオキシウリジンを添加し、DNAへのブロモデオキシウリジン取り込み量からDNA合成能を計測して、細胞増殖活性を測定すること、又はアラマーブルーアッセイやMTTアッセイ(基質として添加したテトラゾリウム塩がミトコンドリアのNADHにより還元され、その生成物の吸光度や蛍光を測定する方法)等で細胞呼吸活性を測定すること、又は増殖細胞マーカーであるKi67やPCNA(Poliferation Cell Nuclear Antigen)の抗体による染色で増殖細胞数を計測すること等が挙げられる。
上記の場合、毛包成長を促進又は抑制する物質の評価は、毛包に被験物質に接触させ、器官培養し、上記のように測定した増殖活性や増殖細胞数を、被験物質に接触させない毛包の増殖活性あるいは増殖細胞数(コントロール)と比較し、コントロールを100としたときの増殖活性比率(%)あるいは増殖細胞数比率(%)を求め、その結果に基づいて行えばよい。そして、高い値ほど毛の成長を促進する又は低い値ほど毛の成長を抑制すると評価する。
【0023】
また、毛包中のアポトーシス細胞を測定する場合は、例えば、アポトーシスが進行する際の断片化DNA量を測定すること又はTUNEL法等によるアポトーシス細胞数を計測すること等が挙げられる。
上記の場合、毛包成長を促進又は抑制する物質の評価は、毛包に被験物質に接触させ、器官培養し、上記のように測定した断片化DNA量あるいはアポトーシス細胞数を、被験物質に接触させない毛包の断片化DNA量あるいはアポトーシス細胞数(コントロール)と比較し、コントロールを100としたときの断片化DNA量比率(%)あるいはアポトーシス細胞数比率(%)を求め、その結果に基づいて行えばよい。そして、低い値ほど毛の成長を促進する又は高い値ほど毛の成長を抑制すると評価する。
【実施例】
【0024】
実施例1
(1)毛包の単離
豚皮は、日本で食肉用ブタとして飼育されている白色毛を有する雑種のブタから得られた皮膚を用い、適当な大きさに切り分け、余分な脂肪を切り取り、無菌下で、ヒビテン液(5%ヒビテン液(住友製薬)を水で5〜20倍に希釈)に5分〜10分浸し、消毒を行い、次に、D−PBSで数回洗浄を行った。
次に、処理した豚皮より実体顕微鏡下においてピンセットとメス(FEATHER No10)を用い、毛包を単離し培地中に集めた。培地は、RPMI1640培地(Gibco cat.No.11835-030)、Willam's E培地(Gibco cat.No.12551-032)及びDMEM/HamF12(1:1)培地(Gibco cat.No.11039-021)を用いた。
【0025】
(2) ブタの毛包器官培養に対するDHTの影響
ブタの背部、側腹、腹部、そけい部、臀部、肩より、(1)の方法に従いブタの毛包を得た。単離した毛包を24穴培養プレートに、1ウェルに1本ずつ入れた。培地はWillam's E培地(Gibco cat.No.12551-032)を1ウェルに400μLずつ入れた。培地には、ペニシリン/ストレプトマイシン (Gibco cat.No.15140-122)溶液を1%添加したものを使用した。
上記Willam's E培地を用い、DHT(Sigma cat.No.A-8380)は、培地中の最終濃度が10ng/mLになるように調製した。37℃、5%CO2インキュベーター中で6日間培養を行った。
1日、又は2日置きに培地の交換を行い、培養6日後の毛の伸長量をコントロールと比較した。
コントロールとして、DHT無添加のWillam's E培地を用い、器官培養後の毛の伸長量を100%とした。
尚、毛の伸長量の測定は、培養を開始した日を0日目とし、0日目及び6日目に実態顕微鏡画像をCCDカメラ(pixera model.No.PVC 100C)で撮影し、その画像から毛球部基底部から毛幹先端までの長さ変化を測定することによって行った。
【0026】
【表1】

【0027】
表1より、ブタの毛包においてもDHTがその成長に影響を及ぼすことが示され、更に部位によってDHTの影響の程度が異なることが示された。
腹部の毛包は、DHTで成長が抑制されたことから、同毛包の伸長促進剤は、男性型脱毛症に有効な育毛剤となり得る。
また、背部の毛包は、DHTで成長が促進されたことから、同毛包の伸長抑制剤は、男性ホルモン依存性で男性ホルモンによって成長が促進される毛の抑毛剤となり得る。
その他の部位の毛包ではDHTによる影響が少なかったことから、同毛包の伸長促進剤又は抑制剤は、男性ホルモン作用を介さずに作用する毛の育毛剤又は抑毛剤となり得る。
【0028】
実施例2 毛成長調節剤の評価
(1)t−フラバノン及びTGF−β2
実施例1と同様にし、ブタの臀部の毛包を得た。培地は、RPMI1640培地(Gibco cat.No.11835-030)を用いた。RPMI1640培地には、ペニシリン/ストレプトマイシン (Gibco cat.No.15140-122)溶液を1%添加したものを使用した。
上記RPMI1640培地を用い、医薬部外品育毛剤有効成分であり、ラットのヒゲの毛包の器官培養で毛成長促進が確認されているt−フラバノン(トランス−3,4'−ジメチル−3−ヒドロキシフラバノン(堀田ら、フレグランスジャーナル、31巻2号、33-40(2003)))を、培地中の最終濃度が1μMになるように調製した(合成方法は、特開2000-198779を参照)。さらに、ヒトの毛包の器官培養で毛成長抑制が確認されているTGF−β2(R&D Systems, Inc., 品番:102-B2-001/CF)(Philpottら、 J Cell Sci、97巻、463-47(1990)、Somaら、J Invest Dermatol、118巻、993-997(2002))についても、10ng/mLになるように調製した。
37℃、5%CO2インキュベーター中で8日間培養を行った。1日、又は2日置きに培地の交換を行い、培養8日後の毛の伸長量を測定しコントロールと比較した。
毛包の成長量の評価は、実施例1と同様の方法を用いた。
コントロールとして、被験物質無添加のRPMI1640培地を用い、器官培養後の毛の伸長量を100%とした。
【0029】
【表2】

【0030】
t−フラバノンでは、コントロールと比較して、145%にまで毛伸長促進が認められた。一方、TGF−β2においては、59%にまで毛伸長の抑制が認められた。
【0031】
(2)サイクロスポリンA
実施例1と同様にし、ブタの臀部の毛包を得た。培地は、William’s E培地(Sigma cat.No.W1878)を用いた。William’s E培地には、ペニシリン/ストレプトマイシン (Gibco cat.No.15140-122)溶液を1%添加したものを使用した。
上記William’s E培地を用い、ヒト毛包の器官培養で毛成長促進が確認されているサイクロスポリンA(CsA)(Sigma cat.No.C-1832 )(Taylorら、J Invest Dermatol、100巻、237-239(1993))を、培地中の最終濃度が100ng/mL、1000ng/mLになるように調製した。
37℃、5%CO2インキュベーター中で7日間培養を行った。1日、又は2日置きに培地の交換を行い、培養7日後の毛の伸長量を測定しコントロールと比較した。
毛包の成長量の評価は、実施例1と同様の方法を用いた。
コントロールとして、被験物質無添加のWilliam’s E培地を用い、器官培養後の毛の伸長量を100%とした。
【0032】
【表3】

【0033】
CsA(100ng/mL)では、コントロールと比較して、116%にまで毛伸長促進が認められた。また、CsA(1000ng/mL)においては、120%にまで毛伸長促進が認められた。
【0034】
(3)まとめ
従って、ブタ臀部の毛の伸長量を指標として、毛成長調節剤の評価が可能であることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験物質の存在下、ブタの毛包を器官培養し、当該毛包の成長を促進又は抑制する物質を評価又は選択することを特徴とする、毛成長調節剤の評価又はスクリーニング方法。
【請求項2】
被験物質の存在下、ブタの腹部又は背部の毛包を器官培養し、当該毛包の成長を促進又は抑制する物質を評価又は選択することを特徴とする、男性ホルモン依存性毛成長調節剤の評価又はスクリーニング方法。
【請求項3】
被験物質の存在下、ブタの腹部の毛包を器官培養し、当該毛包の成長を促進する物質を評価又は選択することを特徴とする、男性型脱毛症用育毛剤の評価又はスクリーニング方法。
【請求項4】
被験物質の存在下、ブタの背部の毛包を器官培養し、当該毛包の成長を抑制する物質を評価又は選択することを特徴とする、男性ホルモン依存性毛用抑毛剤の評価又はスクリーニング方法。
【請求項5】
被験物質の存在下、ブタの側腹、そけい部、肩又は臀部の毛包を器官培養し、当該毛包の成長を促進又は抑制する物質を評価又は選択することを特徴とする、男性ホルモン非依存性毛成長調節剤の評価又はスクリーニング方法。

【公開番号】特開2009−139353(P2009−139353A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338801(P2007−338801)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】