説明

毛房を駆動させるための加圧バルブシステム

歯科用クリーニング器具は、毛領域ハウジング32,52と、ハウジング内の流体とをもつ器具本体部30,73を含む。柔軟膜34は、ハウジング内に配置されるか、又は、ハウジング内の開口部60内に液体密封の関係54で配置される。デュアルピストンシステム22,24,28又はポンプ及びバルブシステム70,68,68を含む流体圧力システムは、流体に対して圧力を与え、膜の上及び下に交互の圧力を生成するような態様で、ピストンが交互に動作するか、又は、バルブが交互に開閉し、歯に向かって歯から離れるように膜及び毛領域を動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、概して、歯ブラシやマウスピースのような歯科用クリーニング器具に関し、より詳細には、他の手法でクリーニング動作と干渉するのに十分なキャビテーションを生成することなく、これらの器具において毛房を歯に向かって歯から離れるように駆動させるためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシ及びマウスピースの双方を含む歯科用クリーニング器具において、歯表面のクリーニングに有用な特定の毛ストロークは、タッピング又は軽いハンマリングタイプの動作において歯に向かって歯から離れるようになっている。この特定の動作を作り出す種々の手法が可能である。しかしながら、一の望ましい手法は流体圧力の使用によるものである。効果的なクリーニング動作のために、0.9〜3.22mmの毛ストローク及び100〜300Hzの周波数が望ましいことが見出されている。しかしながら、斯様な構成をもつ既知の問題は、全体流量の慣性が取り除かれなければならないので、毛ストロークを作り出すために流体を前後に移動させるためのポンプの使用がゆっくりであるとともにエネルギを消費することである。更に、斯様なシステムによれば、もし仮に高周波数、即ち100Hzよりも高い周波数であったとしても、ポンプ動作により生成された流体のキャビテーション効果に起因して、毛房がほんの少ししか動かないことも知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それ故、100〜300Hzの所望の周波数範囲内の流体加圧で駆動された毛房の運動を実現するためのシステムが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
斯様な歯科用クリーニング器具の一態様は、2つの別個の内部チャンネルと器具本体部の先端部にある毛領域ハウジングとをもつ前部分を含む器具本体部と、前記2つのチャンネル内に流体密封の関係で配置された2つの可動ピストン部材と、前記毛領域ハウジング内に配置される一方で、前記2つのチャンネルがそれぞれ柔軟膜の上下に延在し、流体が前記2つのチャンネル間の流体連通を伴うことなく前記2つのチャンネル内に存在する、前記柔軟膜と、前記膜に取り付けられ、前記ハウジングを介して密封的に延在する複数の毛房と、前記膜が上下に動作し、歯に向かって歯から離れるように前記毛領域を動作させるように、前記2つのチャンネル内においてこれらのピストンを逆動作で交互に動作させるためのアクチュエータアセンブリとを有する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】単一房を示す流体圧駆動器具の一実施形態を示す簡素化された断面図である。
【図2】流体圧駆動房システムの他の実施形態を示す簡素化された断面図である。
【図3】歯ブラシ全体における図1の実施形態の概念の断面図である。
【図4A】図3の歯ブラシの毛房動作を示す断面図である。
【図4B】図3の歯ブラシの毛房動作を示す断面図である。
【図5】マウスピースにおける図1の実施形態の概念の断面図である。
【図6】歯ブラシ全体における図2の実施形態の概念の断面図である。
【図7A】図6の歯ブラシの毛房動作を示す断面図である。
【図7B】図6の歯ブラシの毛房動作を示す断面図である。
【図8】マウスピースにおける図2の実施形態の概念の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1は、ユーザの歯に向かって歯から離れるように毛領域を駆動させ、歯のクリーニングのために歯に対するタッピング動作を作り出すための流体圧システムの第1の実施形態を示している。流体圧力システムは、歯ブラシの毛領域又はマウスピースの毛領域を動作させるために用いられ得る。図1は、歯ブラシのブラシヘッド部分12と明確さの目的で単一の毛房のみを含む毛領域14とを示している。典型的には、毛房は、90程度の個別の毛を含む一方で、歯ブラシ用の毛領域は、典型的には、約20の毛房を含むだろう。図1は歯ブラシにおいてより適したブラシヘッド12を示し、その一方で、以下で更に詳細に述べられるように、同様の構成がマウスピースのために作られ得る。
【0007】
ブラシヘッド部分12は、長尺部材22により2つのチャンネル18及び20に分割された首部15を含む。長尺部材22は、上下の首部壁23,25間のおおよそ中ほどに配置されている。ピストン22,24が流体密封の関係でチャンネル18,20内に配置されている。ピストン22,24は、歯ブラシの本体部30内に配置された、28で概ね示されたアクチュエーションシステムにより前後に移動される。
【0008】
ブラシヘッド12の先端に配置されこのブラシヘッド12と流体連通している毛領域ハウジング32内には、柔軟膜34が取り付けられている。示された実施形態における膜34は、従来の歯ブラシの毛領域のおおよそのサイズである、10mmの幅で20mmの長さであり、示された実施形態においては、約0.1mmの厚さである。膜34は、軟質ゴム又はエラストマ材料から作られている。毛領域を有する、単一の毛房14が示されることにより示された個々の毛房のグループは、膜34に対して密封されるとともに、流体の漏出を阻止するために、毛領域ハウジング32,35に対しても密封される。双方のチャンネル18,20において、水のような流体がピストン22,24のブラシヘッド側に位置する一方で、ピストン22,24の左側には空気が位置する。
【0009】
動作において、ピストン22,24は、それぞれ他方に対して厳密に反対方向に、即ち180°離れるように移動する。一方のピストンが右に移動する場合には、他方のピストンは左に移動し、逆もまた同様である。例えば下側のピストン24が右側に移動するときには、チャンネル20の容積が減少することにより、膜34の下に過圧が生成される。同時に、ピストン22が左に移動し、膜34の上側の低圧をもたらす。これは、膜34及び毛房領域が、歯の方向において、図1における上方へ移動することをもたらす。典型的には、ストロークは、約3.2mmになるが、このストロークは、多少(即ち、0.9〜3.2mmの範囲内において)異なってもよく、依然として効果的なクリーニングを作り出す。
【0010】
交互に、上側のピストン22は、毛領域ハウジングに向かって右に移動し、膜34の上側表面上に過圧を生成するので、ピストン24は、左側に移動し、膜の下側表面上に低圧をもたらす。これは、膜が下方に移動することをもたらし、それ故に毛房領域が歯から離れるように移動する。
【0011】
ピストン22,24の継続した往復動作は、毛房領域の迅速な前後運動をもたらし、歯に対するタッピング又は軽いハンマリングタイプの動作を作り出し、効果的なクリーニングをもたらす。毛房ハウジングにおいてチャンネル18,20内の(周囲より高い)一貫性のある圧力を伴うダブルピストン構成の使用は、口内に存在する流体においてキャビテーションが生じるのを相当程度阻止し、これにより、効果的なストローク長を伴う、より高い毛領域周波数、即ち100〜300Hzの範囲内の周波数を可能にする。
【0012】
図3は、より詳細な歯ブラシ35を示している。これは、歯ブラシ本体部36及びブラシヘッド37を含んでおり、ブラシヘッド37は、その先端に毛房ハウジング38をもち、複数の毛房アセンブリ39が、ハウジング38内に配置され、このハウジングに対する上/下運動のために取り付けられている。毛房アセンブリ39の毛房ホルダ部分は、毛房ハウジング38に対して密封されている。毛房ホルダは、更に、ハウジング38内に配置された柔軟膜40に接続されている。
【0013】
流体で満たされた2つのチャンネル41,42は、ブラシヘッド37の長さで毛房ハウジング38に延在している。流体チャンネルの後端部には、前記実施形態のようなピストン43,44がある。これらは、常に周囲より高い圧力によりこれらのチャンネル内の液体に圧力をかけるように、典型的には0.5mmのストロークで反対方向に駆動される。
【0014】
ピストン43,44は、トラック若しくはトロリー49又は同様のものに沿ってスライドして移動するリニアアクチュエータアセンブリ45により別個に動かされる。本システムは、電源48を備えたコントローラ47をもつ。図4A及び4Bは、ピストンが互いに反対に移動した場合に膜40により上下する毛房アセンブリ39の動作を示している。
【0015】
マウスピースの実施形態が図5に示されている。80で示されたマウスピースは、電源86をもつコントローラ84により制御された、偏心を伴う回転DCモータ82を含む。モータ82は、マウスピースの外側アーチ状部分流体コネクタ88及び内側アーチ状流体コネクタ90に対して流体の運動を交互に制御する。柔軟膜上に取り付けられた複数の毛房アセンブリ91は、内側アーチ状部分と外側アーチ状部分との間に配置され、液体圧力が膜上で交互の態様において増大及び減少し、歯に向かって歯から離れるような毛房アセンブリ91の動作が生じ、歯のクリーニングのためのタッピング/軽いハンマリング動作を与えるようになっている。油圧アキュムレータ100は、キャビテーションを回避するために、流体を陽圧に維持する。
【0016】
図2は、流体圧力駆動された毛領域のための他の実施形態を示している。図2は、毛房ハウジング52を含む歯ブラシのブラシヘッド部分の断面図を示している。示された実施形態におけるハウジング52は、20mmの長さ、8〜10mmの幅、7mmの奥行きである。これは、プラスチック材料から作られ、約1mmの厚さである。プレート54がハウジング52の内部にある。プレート54は、ハウジング52の左右に延在するが、このプレートの両端56,58とハウジング52の内面との間に空間が存在するように配置される。それ故、流体チャンネル56は、ハウジング52とプレート54との間に規定される。
【0017】
ハウジング52は、このハウジングの左右に延在する開口部60を含む。示された実施形態において、開口部60は約8mmの幅である。柔軟膜62は開口部60内に配置される。膜62は、ゴム又は類似の可塑性材料から作られ、示された実施形態においては、約0.5mmの厚さである。毛房64の領域は、膜に取り付けられる。これは、膜への熱溶接、接着若しくは成形、又は、後に膜に取り付けられる別個のプラスチックシートへの取り付けを含む、種々の態様により行われ得る。示された実施形態においては、毛領域は、歯ブラシの実施形態に対して適切になるように構成されている。
【0018】
ハウジング52は、2つの内部バルブ66,68を含み、これらは、示された実施形態においては、回転可能なバルブである。バルブ66,68は、開口部60の両端の近い、ハウジング52の内面とプレート54との間に配置される。チャンネル56は、流体で満たされ、膜60への流体アクセスは、バルブ66,68の位置により制御される。一実施形態において、流体ポンプ70がハウジング内に配置される。代わりに、流体ポンプ71が、チャンネル56への流体ライン75をもつ器具の本体部73内に配置されてもよい。
【0019】
動作中、流体ポンプは、チャンネル56において一定の流体ポンプ変位を維持する。流体は、水等の液体又は空気であり得る。バルブ66,68は、交互に開閉する。バルブ66が閉であるときには、流体圧は、バルブ66の左で増大し、バルブ68が開になり、膜62の下で生成された低圧(不完全真空)が存在するだろう。それ故、膜は、ハウジングの内方に移動し、毛領域64が歯から離れるように引き寄せられることをもたらす。
【0020】
交互に、バルブ66が開でありバルブ68が閉であるときには、膜62の下で過圧が生成され、ハウジングから外方に膜を押し出し、歯に向かう毛房領域64の移動をもたらす。
【0021】
バルブ66,68及びそれ故に膜62の交互の動作は、歯に向かって歯から離れる毛房領域64の動作をもたらし、図1の歯ブラシの実施形態のものと同様のタッピング/軽いハンマリング動作を生成する。流体ポンプ及びバルブ66,68の交互動作により生成された一方向の一定の流体変位によれば、生成されるキャビテーションがわずかであるか又は全くないので、100〜300Hzの所望範囲内の動作の毛房領域周波数を得ることができる。
【0022】
図6は、歯ブラシ本体部111、ブラシヘッド部分112及びブラシヘッド部分112の先端にある毛房ハウジング114を含む、図2の実施形態の歯ブラシ全体110を示している。ポンプ116は、流体を2つのチャンネル118,120を介してバルブ122,124に移動させる。バルブ122,124は、制御ライン127を介して、コントローラ126の動作により交互に開閉する。コントローラ126は、ポンプ116も制御する。複数の毛房アセンブリ131は、柔軟膜128上に取り付けられる。電源129はコントローラ126に給電する。
【0023】
バルブ122が閉でありバルブ124が開である場合には、図7Aに示されるように、膜128は、内方に動き、毛房131は、歯から離れるように移動する。バルブ122が開でありバルブ124が閉である場合には、図7Bに示されるように、膜128及び毛房は、外方に動き、クリーニング動作のために歯に接触(タッピング)する。
【0024】
図8は、図2の実施形態のマウスピースの実装130を示している。ポンプ131は、バルブ132,134に対する歯科用アーチ内の流体の移動を制御する。バルブの交互動作は、コントローラ136(ポンプ131)により制御される。複数の毛房142が配置された柔軟膜140に対する流体動作は、歯に向かって歯から離れるような毛房の内外動作をもたらし、クリーニング動作をもたらす。
【0025】
それ故、幾つかの実施形態が開示され、これらは、100〜300Hzの範囲内の所望の周波数で毛房領域を動かすための流体圧駆動動作を与え、これらの実施形態は、実質的にキャビテーションを阻止するように設計され、所望の周波数が実現されることを可能にする。
【0026】
本発明の好ましい実施形態は、例示の目的で開示されたが、種々の変更、修正及び置換は、特許請求の範囲により規定された本発明の精神から逸脱することなく本実施形態に組み込まれ得ることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの別個の内部チャンネルと器具本体部の先端部にある毛領域ハウジングとをもつ前部分を含む前記器具本体部と、
前記2つのチャンネル内に流体密封の関係で配置された2つの可動ピストン部材と、
前記毛領域ハウジング内に配置される一方で、前記2つのチャンネルがそれぞれ柔軟膜の上下に延在し、流体が前記2つのチャンネル間の流体連通を伴うことなく前記2つのチャンネル内に存在する、前記柔軟膜と、
前記膜に取り付けられ、前記ハウジングを介して密封的に延在する複数の毛房と、
前記膜が上下に動作し、歯に向かって歯から離れるように毛領域を動作させるように、前記2つのチャンネル内においてこれらのピストンを逆動作で交互に動作させるためのアクチュエータアセンブリとを有する、歯科用クリーニング器具。
【請求項2】
前記毛領域の動作の周波数は、100〜300Hzの範囲内にある、請求項1に記載の歯科用クリーニング器具。
【請求項3】
歯に向かって歯から離れるように動作する前記毛領域のストロークは、0.9〜3.22mmの範囲内にある、請求項1に記載の歯科用クリーニング器具。
【請求項4】
当該歯科用クリーニング器具は、歯ブラシである、請求項1に記載の歯科用クリーニング器具。
【請求項5】
当該歯科用クリーニング器具は、マウスピースである、請求項1に記載の歯科用クリーニング器具。
【請求項6】
動作中、一方のピストンが前記毛領域ハウジングに向かって移動する一方で他方のピストンが前記毛領域ハウジングから離れるように移動し、その逆も同様である、請求項1に記載の歯科用クリーニング器具。
【請求項7】
開口部を含む、流体で満たされた毛領域ハウジングを含む器具本体部と、
前記ハウジングと流体密封の関係をもつ、前記開口部内に配置された柔軟膜と、
前記膜上に取り付けられた毛房領域と、
前記ハウジングにおいて流体に対する圧力を維持するためのポンプ及びバルブシステムであって、バルブが、前記膜の下の流体圧が交互に増大及び減少し、歯に向かって歯から離れるような前記膜及び前記毛房領域の動作をもたらすように、前記ハウジング内に設けられる、ポンプ及びバルブシステムとを有する、歯科用クリーニング器具。
【請求項8】
前記毛房領域の動作の周波数は、100〜300Hzの範囲内にある、請求項7に記載の歯科用クリーニング器具。
【請求項9】
ポンプが前記ハウジング内に配置される、請求項7に記載の歯科用クリーニング装置。
【請求項10】
ポンプが、当該ポンプと前記ハウジングとの間の接続ラインをもつ前記器具本体部内に配置される、請求項7に記載の歯科用クリーニング器具。
【請求項11】
前記ハウジング内の流体は液体である、請求項7に記載の歯科用クリーニング器具。
【請求項12】
前記ハウジング内の流体は空気である、請求項7に記載の歯科用クリーニング器具。
【請求項13】
前記ハウジング内に配置された剛性部材を含み、
前記バルブは、前記膜の両端に近い、前記剛性部材と前記ハウジングとの間に配置され、動作中、これらのバルブが交互に開閉し、前記膜の下の過圧及び低圧を交互にもたらし、歯に向かって歯から離れるような前記膜及び前記毛領域の動作をもたらす、請求項7に記載のクリーニング器具。
【請求項14】
当該歯科用器具は、歯ブラシの形式である、請求項7に記載の歯科用クリーニング器具。
【請求項15】
当該歯科用器具は、マウスピースの形式である、請求項7に記載の歯科用クリーニング器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−513798(P2012−513798A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542942(P2011−542942)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055605
【国際公開番号】WO2010/076702
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】