説明

毛様体筋過緊張による疲れ目の改善・予防のための経口投与組成物

【課題】 エンドセリン変換酵素阻害によらない、新規作用機序の毛様体筋の過緊張による疲れ目の改善又は予防のための経口投与組成物を提供する。
【解決手段】 植物由来のポリフェノール、トリテルペンとその誘導体、フラボン類縁体及びこれらの塩から選択されるものを有効成分として、毛様体筋の過緊張による疲れ目の改善又は予防用の経口投与組成物に含有させる。前記ポリフェノール、トリテルペンとその誘導体、フラボン類縁体及びこれらの塩から選択されるものは、植物体の一部乃至は全部を熱水で抽出し、有機溶剤との液液抽出により、分画精製し、分画された画分であって、該画分における、ホスホジエステラーゼ阻害活性を調べた時、100μg/mLの濃度に於いて30%以上の阻害活性を示す画分として含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口投与組成物に関し、更に詳細には、毛様体筋の過緊張による疲れ目を改善・予防するのに有用な経口投与組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会は車の運転やVDT(Visual Display Terminal)作業、パソコンやテレビなど目を使い続ける時代である。加えて、睡眠時間が極端に短くなり、起きている時間が長くなるなどライフスタイル自体も目に対して負担を強いるものになっている。環境の面では、大気汚染に由来するオゾンホールの拡大が、紫外線の地上到達量を激増させ、紫外線による目の損傷も増えていると言える。斯くの如くに、現代社会は、目にとって負担の極めて多い環境と言え、それに伴い、疲れ目や眼精疲労などの目のトラブルに悩む人が急増している。この為、疲れ目等の目のトラブル症状改善に有効な医薬品、食品などQOL(Quality Of Life)の向上が期待される商品が望まれている。この中で、紫外線によって生じる眼精疲労については、紫外線により角膜上皮細胞が障害を受けることがその一因であることが考えられていて、この様な細胞障害を抑制する手段が見いだされている(例えば、特許文献1を参照)が、目の過度の酷使によって生じる眼精疲労については、その原因が毛様体筋の過緊張であること、及び、該過緊張はエンドセリン変換酵素を阻害することにより緩和することが報じられている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4を参照)。しかしながら、この様な対応では十分な毛様体筋の緊張緩和は為されていないのが現状であった。これはエンドセリン変換酵素系を経由しない、或いは、それ以外の律速段階となる筋緊張が存することを示唆するものである。即ち、新規の作用機序を有する毛様体筋の過緊張を抑制する素材の開発が望まれていると言える。
【0003】
一般的には、疲れ目と眼精疲労とは区別されて認識されたり、使用されたりはしていないが、専門の眼科の定義では、この二者は明確に区別されている。すなわち、疲れ目は生理的な疲労であり、眼精疲労は病的な疲労の範疇に入る。言い換えれば、疲れ目は休息によって回復し、眼精疲労は休息によってもその症状が改善しないものと言うことができる(非特許文献1)。しかしながら眼精疲労を訴える患者の80%は単なる眼疲労であるとされており、また精神的な疲労の度合いで疲れ目が眼精疲労に、また眼精疲労が単なる疲れ目になり得ることもあるので、実態としては、このような定義、区別もあいまいと言わざるを得ない。疲れ目の中には、休息によって回復するものの、その回復に時間を要し、さりとて、その予後が良いため眼精疲労とは言い難いものがあるし、眼精疲労においては、初期症状は極めて重篤であり、病的であることには間違いがないが、その予後は極めて良く、回復に時間をそう長くは要しないものも存する。いずれにしても、この様な目のトラブルの何れにも、毛様体筋の過緊張が寄与しているものと推測されている。
【0004】
この様な目のトラブルの内、特に近年その対応が必要とされているのは、前述の如く、ピントが合いにくい等の症状を伴う疲れ目であって、その原因がコンピューターなどの作業に起因すると推定されるものであり、その回復に時間を要する、比較的重篤なものである。これは、この様な症状が近年急増している状況が存するためである。ひどい疲れ目の自覚者に対して行った本発明者らのアンケート調査によれば、ピント調節能不全をその症状の一つに訴える人は60%を超えている。いわば、毛様体筋過緊張による疲れ目は社会的な問題であるとも言える。この様な過緊張に対する処置はエンドセリン変換酵素阻害剤の投与のみであり、又、この様なエンドセリン変換酵素阻害剤を有効成分とする、毛様体筋過緊張抑制用の組成物は、目薬の剤形が知られているのみであり、この為、薬効成分の持続時間の短さに課題も存する。
【0005】
一方、日常的な食品を通じて疲れ目を改善する試みとしては、例えば、ブルーベリーの様なアントシアニンを多く含む果実を摂取しやすいジャムなどの形に加工して、摂取することなどが知られている。(例えば、特許文献5を参照)しかしながら、この方法では、通常の疲れ目には対応できても、回復に時間のかかる疲れ目への効果は得られていない。これは絶対的な有効成分量が少ないためと思われる。
【0006】
又、ホスホジエステラーゼの亢進が筋緊張と関連しているとの報告は存する(例えば、特許文献6を参照)が、疲れ目とホスホジエステラーゼとの関係は全く知られていない。
【0007】
加えて、キサンチンなどの化合物にホスホジエステラーゼ阻害活性が存することは知られているが、ポリフェノールとホスホジエステラーゼの間には何の関係も知られていない。(例えば、特許文献7を参照)
【0008】
【特許文献1】特開2005−60279号公報
【特許文献2】特開平09−143099号公報
【特許文献3】特開平09−59173号公報
【特許文献4】特開平07−133225号公報
【特許文献5】特開2001−224320号公報
【特許文献6】特表2004−516329号公報
【特許文献7】特表2001−522791号公報
【非特許文献1】渥美一成 「調節・眼精疲労」、第5−6頁、講談社、2001年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、エンドセリン変換酵素阻害によらない、新規作用機序の毛様体筋の過緊張による疲れ目の改善又は予防のための経口投与組成物を提供することを課題とする。ここで、毛様体筋の過緊張による疲れ目は、ピントが合わせづらいなどの症状より知ることができ、この為の計測機器も市販されている。簡易的には、動体に対するピント調整能を見極めることにより鑑別できる。疲れ目を感じていて、且つ、急激に目を対象に近づけたり、離した場合に見えにくい場合は、毛様体筋の過緊張による疲れ目であることが推定される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、エンドセリン変換酵素阻害によらない、新規作用機序の毛様体筋の過緊張による疲れ目の改善又は予防手段を求め、鋭意研究努力を重ねた結果、疲れ目とホスホジエステラーゼ活性の間の因果関係を見いだし、ホスホジエステラーゼ活性阻害作用を指標にスクリーニングを重ねた結果、植物由来のポリフェノール、トリテルペンとその誘導体、フラボン類縁体及びこれらの塩にその様な作用が存することを見いだし、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
(1)植物由来のポリフェノール、トリテルペンとその誘導体、フラボン類縁体及びこれらの塩から選択されるものを有効成分として含有する、毛様体筋の過緊張による疲れ目の改善又は予防用の経口投与組成物。
(2)前記ポリフェノール、トリテルペンとその誘導体は、アントシアニン、プロアントシアニジン、ウルソール酸配糖体、オレアノール酸配糖体及びこれらの塩から選択されるものであることを特徴とする、(1)に記載の経口投与組成物。
(3)前記ポリフェノール、トリテルペンとその誘導体、フラボン類縁体及びこれらの塩から選択されるものは、植物体の一部乃至は全部を熱水で抽出し、有機溶剤との液液抽出により、分画精製し、分画された画分であって、該画分における、ホスホジエステラーゼ阻害活性を調べた時、100μg/mLの濃度に於いて30%以上の阻害活性を示す画分として含むものであることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の経口投与組成物。
(4)前記ポリフェノール、トリテルペンとその誘導体、フラボン類縁体及びこれらの塩から選択されるものは、ブドウ科ブドウの種子、ユキノシタ科クロスグリの果実、ツツジ科ビルベリーの果実、マメ科ダイズ(クロダイズ)の種皮、マメ科サンヘンズの地上部、モクセイ科ネズミモチの果実、クワ科クワの果実、又はミカン科ヘンルーダの種子を基源とすることを特徴とする、(1)〜(3)何れか1項に記載の経口投与組成物。
(5)食品であることを特徴とする、(1)〜(4)何れか1項に記載の経口投与組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エンドセリン変換酵素阻害によらない、新規作用機序の毛様体筋の過緊張による疲れ目の改善又は予防のための経口投与組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
前記の実状から、エンドセリン変換酵素阻害によらない、新規作用機序の毛様体筋の過緊張による疲れ目の改善又は予防の手段を模索するために、疲れ目に有効であると言われている、ビルベリーについて、抽出物、及び、その分画物を作成し、分画物を経口投与製剤の形に剤形化し、疲れ目を感じるパネラーを用いた使用試験を行いその効果を調べた。又、同時にこれらの画分について、種々の生理活性を調べ、相関性のある作用を検討したところ、ホスホジエステラーゼ活性阻害作用がピックアップされた。これらのデータは後記実施例に示す。ホスホジエステラーゼ活性と眼周囲組織との関連を調べたところ、毛様体筋弛緩作用が関連していることが推測された(例えば、Matsumoto et.al.;Exe.Eye.Res.,80,313~322; 2005を参照)。即ち、毛様体筋が過緊張することにより疲れ目が生じていると考えられ、ホスホジエステラーゼ活性を抑制することにより、これにより分解されるcAMPの分解が抑制され、この分解を免れたcAMPにより、プロテインキナーゼ(PKA)が活性化し、ミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)をリン酸化して不活性化し、これにより平滑筋である、毛様体筋が弛緩するメカニズムである。従って、疲れ目などに有効な生薬成分の抽出・分画精製物について、ホスホジエステラーゼ活性阻害作用を指標にスクリーニングを行い、該ホスホジエステラーゼ活性阻害作用が強い分画を選択することにより、疲れ目の改善・予防に有用な素材を得ることができる。この様な評価に用いられるホスホジエステラーゼ活性阻害試験は次のように行われる。
【0013】
(1)5mM塩化マグネシウム含有50mMのトリス・塩酸緩衝液(pH7.5)を0.2mL取り、これに2.5mg/mLウシ血清アルブミンinトリス・塩酸緩衝液溶液0.1mLを加える。
(2)0.01U/mLのホスホジエステラーゼトリス・塩酸緩衝液溶液を0.1mL加える。(終濃度:0.0004U/mL)
(3)濃度を振った試験溶液を0.05mL加え、37℃で5分間予備反応させる。
(4)0.5mg/mLcAMPトリス・塩酸緩衝液溶液を0.05mL加え、37℃で30分間反応させる。
(5)3分間沸騰水浴上で加熱し、反応を停止させる。
(6)遠心分離(2260×g、10分間)する。
(7)上清を取り、HPLCにて5’−AMPの定量を行う。HPLC条件は以下に示すとおり。
カラム:東ソーODS−80Ts(4.6×150mm)、移動相:1mMTBAPin25mMKH2PO4:アセトニトリル=90:10、流速:1.0mL/分、検出:紫外部260nm
【0014】
ホスホジエステラーゼ活性阻害率は、(1−被験試料添加時のピーク面積/コントロールのピーク面積)×100の式で算出する。
【0015】
この様な評価で、阻害率が高い値を示した画分に有効成分が多く含まれていると判断する。又、大凡の指標としては、100μg/mL程度の終濃度に於いて、30%以上の阻害率を有する画分が、本発明の経口投与組成物に好ましい画分であると判断する。
【0016】
この様な好ましい画分としては、ブドウ科ブドウの種子、ユキノシタ科クロスグリの果実、ツツジ科ビルベリーの果実、マメ科ダイズ(クロダイズ)の種皮、マメ科サンヘンズの地上部、モクセイ科ネズミモチの果実、クワ科クワの果実、又はミカン科ヘンルーダの種子の抽出物からの分画された画分が例示できる。これらの植物体は、乾燥や、粉砕などの工程を取ることができ、この様な工程を取ることが、抽出効率を向上できるので好ましい。これらの植物体からの抽出物、画分の作成は次の手順に従って行うことが好ましい。即ち、植物体に1〜10倍量の水を加え、100℃で2〜5時間浸漬する。このとき、適宜攪拌を加えることもできる。加熱終了後、室温まで冷却し、所望により、不溶物を濾過で取り除き、しかる後に凍結乾燥する。
【0017】
分画、精製は、液液抽出による方法や、カラムクロマトグラフィーによる方法などが好ましく例示できる。液液抽出は、水と、水とは任意の割合では混合しない有機溶媒との2層で行うことが好ましく、前記水とは任意の割合では混合しない有機溶媒としては、石油エーテル、ノルマルヘキサン、ベンゼン、酢酸エチル、蟻酸メチル、クロロホルム、塩化メチレン、ノルマルブタノール、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどが好ましく例示でき、酢酸エチル、ノルマルブタノールが特に好ましい。具体的な手順としては、前記熱水抽出物の凍結乾燥物を、極性の最も低い有機溶剤と水で液液抽出し、分液し、水層に更に極性を高めた有機溶剤を加え、液液抽出し、分液し、徐々に有機溶剤の極性を高めながら液液抽出を繰り返す方法が好ましく例示できる。本発明に於いては、最初の抽出が熱水抽出であり、極性の低い成分は抽出物には含まれない蓋然性が高いため、液液抽出は最初に酢酸エチルと水で行い、しかる後に水相にノルマルブタノールを加えて液液抽出することが好ましい。酢酸エチル層、ノルマルブタノール層は減圧濃縮により溶剤を除去される。水相は減圧濃縮により有機溶剤を除去した後に、凍結乾燥により溶媒除去される。斯くして、酢酸エチル画分、ノルマルブタノール画分、水画分が得られる。
【0018】
ブドウ科ブドウの種子の抽出物の有効性成分を含有する画分に於いては、プロアントシアニジンが存在することが確認された。ユキノシタ科クロスグリの果実、ツツジ科ビルベリーの果実、マメ科ダイズ(クロダイズ)の種皮の抽出物の有効性成分を含有する画分に於いては、アントシアニンが存在することが確認された。マメ科サンヘンズ、ミカン科ヘンルーダの種子、クワ科クワの果実の地上部の抽出物の有効性成分を含有する画分に於いては、フラボン、イソフラボン、イソフラバンなどのフラボノイドと、その配糖体の存在が確認された。モクセイ科ネズミモチの果実の抽出物の有効性成分を含有する画分に於いては、ウルソール酸やオレアノール酸、ルペオール等のトリテルペン乃至はトリテルペン酸或いはそれらの配糖体等、トリテルペンとその類縁体の存在が確認された。これらの中では、そのホスホジエステラーゼ阻害効果の高さより、プロアントシアニジンを含有するブドウ科ブドウの種子の酢酸エチル画分、ノルマルブタノール画分、水画分が特に好ましい。他の植物抽出物の画分としては、ユキノシタ科クロスグリの果実については、酢酸エチル画分、ノルマルブタノール画分が好ましく、ツツジ科ビルベリーの果実については、水画分、ノルマルブタノール画分、酢酸エチル画分の何れもが好ましく、マメ科サンヘンズについては、酢酸エチル画分が好ましく、マメ科ダイズ(クロダイズ)については、酢酸エチル画分、ノルマルブタノール画分が好ましく、ミカン科ヘンルーダについては、酢酸エチル画分が好ましく、クワ科クワの果実については、酢酸エチル画分が好ましく、モクセイ科ネズミモチの果実については、酢酸エチル画分が好ましい。
【0019】
かかる画分について、前記ホスホジエステラーゼ阻害活性を調べ、100μg/mL程度の終濃度に於いて、30%以上の活性が存した場合に、本発明の経口投与組成物への含有が決定される。この様な阻害活性値を指標として利用して、抽出物の有効性を一定に保つこともできる。
【0020】
本発明の経口投与組成物としては、経口で投与されるものであれば特段の限定無く適用することができ、例えば、菓子や、パン、麺などの一般食品、目の過労を予防乃至は改善を目的とした、カプセル剤や、錠剤の形態を取る、健康増進の目的を有する食品群(例えば、特定保健用食品等)、顆粒剤、粉末剤、カプセル剤や、錠剤の形態を取る、経口投与医薬などが例示でき、それぞれの製剤で許容される任意成分を含有することができる。この様な任意成分としては、食品であれば、塩、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、酢などの調味成分、着色成分、フレーバーなどの矯臭成分、増粘剤、乳化・分散剤、保存料、安定剤などが好適に例示でき、健康増進の目的を有する食品群や医薬であれば、結晶セルロース、乳糖などの賦形剤、アラビヤガムやヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤、クロスカルメロースナトリウム、デンプンなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、矯味、矯臭剤、着色剤などが好ましく例示できる。これらを常法に従って処理することにより、本発明の経口投与組成物は製造することができる。
【0021】
斯くして得られた、本発明の経口投与組成物は、それを飲用することにより、疲れ目を改善する作用、或いは、疲れ目を形成するのを予防する作用に優れる。この様な作用を発揮させるためには、前記植物の抽出物(分画された画分を含む)を総量で、1日あたり、10〜1000mgを1回乃至は数回に分けて飲用することが好ましい。
【0022】
以下に、実施例を挙げて、本発明について、更に詳細に説明を加えるが、本発明が、かかる実施例にのみ限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0023】
ユキノシタ科クロスグリの成熟果実500gに水2Lを加え、ミキサーにかけて、しかる後に3時間加熱還流した。これを室温まで冷却した後、吸引濾過により、不溶物を取り除き、凍結乾燥に賦した。凍結乾燥物500mgに水1Lと酢酸エチル1Lを加えて、液液抽出し、酢酸エチル層を取り、減圧溜去して溶媒を除去し、酢酸エチル画分(8mg)とした。又、水層には、ノルマルブタノール1Lを加え、液液抽出し、ノルマルブタノール層を取り、減圧溜去して溶媒を除去し、ノルマルブタノール画分(65mg)とした。水層は、減圧溜去し、水画分(451mg)とした。これらのホスホジエステラーゼ阻害活性(PDEIA)を調べたところ、酢酸エチル画分が60%、ノルマルブタノール画分が35%、水画分が28%であった。
【0024】
これらと同様に製造された画分を用いて、下記に示す処方に従って、目の過労を予防乃至は改善を目的とした、健康増進の目的を有する食品(錠剤)を作成した。即ち、処方成分を流転動層造粒装置(不二パウダル株式会社製「ニューマルメライザー」)を用いて、10質量部の水を噴霧(約1時間)しながら造粒し、40℃の風を2時間流して乾燥させて、粗顆粒を得た。このものを打錠し、錠剤1〜3(100mg錠)を得た。これらの錠剤1〜3を用いて、疲れ目の自覚のあるパネラー21名(1群7名、3群21名)を用いて使用テストを行った。即ち、それぞれの錠剤を朝、昼、晩に2錠ずつ飲用し、これを30日続けた。試験終了後、アンケートにより、疲れ目の改善を、スコア1:改善せず、スコア2:やや改善、スコア3:改善が明確に認められるの3段階評価で評価してもらった。この結果を出現例数として、表2に示す。これより、疲れ目の改善効果と、ホスホジエステラーゼ阻害活性は相関しており、その有効性の閾値はホスホジエステラーゼ阻害活性に換算して、30%前後であることがわかる。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【実施例2】
【0027】
実施例1と同様にブドウ種子の熱水抽出物より、酢酸エチル画分(161mg:PDEIA86%)、ノルマルブタノール画分(242mg:PDEIA90%)、水画分(104mg:PDEIA81%)を得た。これを用いて、実施例1と同様に錠剤4〜6を作成した。これらは何れも疲れ目自覚者の疲れ目の程度を改善した。
【0028】
【表3】

【0029】
【表4】

【実施例3】
【0030】
実施例1と同様にツツジ科ビルベリーの成熟果実の熱水抽出物より、酢酸エチル画分(108mg:PDEIA81%)、ノルマルブタノール画分(262mg:PDEIA84%)、水画分(118mg:PDEIA87%)を得た。これを用いて、実施例1と同様に錠剤7〜9を作成した。これらは何れも疲れ目自覚者の疲れ目の程度を改善した。
【0031】
【表5】

【0032】
【表6】

【実施例4】
【0033】
実施例1と同様にマメ科サンヘンズの地上部の熱水抽出物より、酢酸エチル画分(20mg:PDEIA85%)、ノルマルブタノール画分(58mg:PDEIA34%)、水画分(410mg:PDEIA<0%)を得た。これを用いて、実施例1と同様に錠剤10、11を作成した。これらは何れも疲れ目自覚者の疲れ目の程度を改善した。
【0034】
【表7】

【0035】
【表8】

【実施例5】
【0036】
実施例1と同様にマメ科ダイズ(クロダイズ)の種皮の熱水抽出物より、酢酸エチル画分(41mg:PDEIA68%)、ノルマルブタノール画分(73mg:PDEIA76%)、水画分(271mg:PDEIA21%)を得た。これを用いて、実施例1と同様に錠剤12、13を作成した。これらは何れも疲れ目自覚者の疲れ目の程度を改善した。
【0037】
【表9】

【0038】
【表10】

【実施例6】
【0039】
実施例1と同様にモクセイ科ネズミモチの果実の熱水抽出物より、酢酸エチル画分(27mg:PDEIA39%)、ノルマルブタノール画分(101mg:PDEIA21%)、水画分(350mg:PDEIA<0%)を得た。これを用いて、実施例1と同様に錠剤14を作成した。このものは何れも疲れ目自覚者の疲れ目の程度を改善した。
【0040】
【表11】

【実施例7】
【0041】
実施例1と同様にクワ科クワの果実の熱水抽出物より、酢酸エチル画分(11mg:PDEIA37%)、ノルマルブタノール画分(33mg:PDEIA9%)、水画分(385mg:PDEIA<0%)を得た。これを用いて、実施例1と同様に錠剤15を作成した。これらは何れも疲れ目自覚者の疲れ目の程度を改善した。
【0042】
【表12】

【実施例8】
【0043】
実施例1と同様にミカン科ヘンルーダの種子の熱水抽出物より、酢酸エチル画分(22mg:PDEIA70%)、ノルマルブタノール画分(68mg:PDEIA38%)、水画分(382mg:PDEIA<0%)を得た。これを用いて、実施例1と同様に錠剤16、17を作成した。これらは何れも疲れ目自覚者の疲れ目の程度を改善した。
【0044】
【表13】

【0045】
【表14】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、食品、機能性食品などに応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来のポリフェノール、トリテルペンとその誘導体、フラボン類縁体及びこれらの塩から選択されるものを有効成分として含有する、毛様体筋の過緊張による疲れ目の改善又は予防用の経口投与組成物。
【請求項2】
前記ポリフェノール、トリテルペンとその誘導体は、アントシアニン、プロアントシアニジン、ウルソール酸配糖体、オレアノール酸配糖体及びこれらの塩から選択されるものであることを特徴とする、請求項1に記載の経口投与組成物。
【請求項3】
前記ポリフェノール、トリテルペンとその誘導体、フラボン類縁体及びこれらの塩から選択されるものは、植物体の一部乃至は全部を熱水で抽出し、有機溶剤との液液抽出により、分画精製し、分画された画分であって、該画分における、ホスホジエステラーゼ阻害活性を調べた時、100μg/mLの濃度に於いて30%以上の阻害活性を示す画分として含むものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の経口投与組成物。
【請求項4】
前記ポリフェノール、トリテルペンとその誘導体、フラボン類縁体及びこれらの塩から選択されるものは、ブドウ科ブドウの種子、ユキノシタ科クロスグリの果実、ツツジ科ビルベリーの果実、マメ科ダイズ(クロダイズ)の種皮、マメ科サンヘンズの地上部、モクセイ科ネズミモチの果実、クワ科クワの果実、又はミカン科ヘンルーダの種子を基源とすることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項に記載の経口投与組成物。
【請求項5】
食品であることを特徴とする、請求項1〜4何れか1項に記載の経口投与組成物。

【公開番号】特開2008−7417(P2008−7417A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176355(P2006−176355)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】