説明

毛管現象を用いるサンプリング装置

本発明は、さらなる分析に供されるべき体液のサンプルのような、液体のサンプルを受け入れるための装置を提供する。装置は、少なくとも主面および副面を有する本体を備えている。サンプル受け入れチャンバは本体内に位置し、且つ本体の主面および副面内に開口する入口端部を有している。管路は、本体内に位置し、チャンバの出口端部から延び、液体が毛管現象によって出口端部から管路内に進むのを可能とするように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体のサンプルを受け入れるための装置に関し、より詳細には、しかし排他的にではなく、検定に供され得るように、血液のような体液のサンプルを受け入れるための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血糖測定のために使用される、知られている流体サンプル受け入れ装置は、フィンガスティック採血血液を非常に速やかに集める。このことは、行われる測定が能動的な移動血液または毛管駆動される血液を必要としないので、問題ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、サンプルが装置に沿って能動的に移動され、または毛管駆動されることが要求される場合に使用するための、診断装置へのフィンガプリック採血血液の適用に問題が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様において、本発明は、
少なくとも主面および副面を有する本体と、
本体内に位置し、且つ本体の主面および副面内に開口する入口端部を有する、サンプル受け入れチャンバと、
本体内に位置し且つチャンバの出口端部から延びる管路であって、液体が毛管現象によって、出口端部から管路内に進むのを可能とするように配置されている管路と、
を備える、液体のサンプルを受け入れるための装置を提供する。
【0005】
本発明は、サンプル受け入れチャンバにて、液体サンプルを装置内にまたは装置上に配置することをユーザに可能とさせる。ユーザは、サンプルの供給源(例えば指)を取り除くことができ、装置は、例えば装置の他のエリアで検定が行われることを可能とさせるべく、液体が管路を下って供給されるのを確実にする。このことは、そこでは検定の結果が直ちには生成されない血液サンプルのための診断装置にとって重要であり、例えば免疫学的検定は、試薬の免疫結合を生じさせることか、または血液凝固時間の測定につながる生物学的酵素反応を必要とする。診断または検定がサンプル受け入れチャンバから離れて行われなければならないことも、装置にとって重要である。さらなる利点は、サンプル受け入れチャンバが、装置へのユーザ保守接触がないときでさえも、その後は装置の残部に十分な液体を供給することができる液体貯蔵所として作用し、そして充填プロセスの間に装置との一定の接触をユーザに維持させる必要性を取り除くことである。このことは、小さな寸法からなる場合がある装置との一定の接触を維持することが困難であると感ずるであろう、より年配の人々にとって特に有利である。さらに、それは装置の機能不全の可能性を減少させる。充填中はいつでも液体供給源の除去が、充填不足または気泡の導入を生ずるかもしれないためである。
【0006】
チャンバは、装置に対する液体の供給源を単に与え、且つそれから供給源を取り除くためにユーザに費やされる時間よりも長い充填時間、例えば1秒以上の充填時間を有する装置にとって、有用である。
【0007】
本発明の装置は、しばしば毛管充填検査装置として知られる、化学的(特に生化学のまたは臨床の)検査プロシージャに使用される装置であってもよい。毛管充填検査装置は、通常、第2の装置、典型的には、装置の1つ以上の他の構成要素と共に液体サンプルの所定の相互作用の、または液体サンプルにおける1つ以上の検体の、存在または広がりを検出すべく設計された電子機器と、組み合わせて使用される。そのような構成要素は、電極構造および/または1つ以上の流体相互作用または検体反応合成物であってもよい。電子機器は、最も典型的には、所定のサンプル反応期間の後に光度測定または電位測定技術によって、装置におけるサンプル液を査定するのに使用されてもよい。毛管充填装置は、しばしば、装置に流体サンプルが装填される前に、電子機器内に配置されるべく設計される。毛管充填装置が、機器内に適正に配置されているとき、サンプル受け入れチャンバは、機器の外部にあり且つユーザにアクセス可能であり、そして分析が行われる装置のエリアは、所定の時間期間の後またはその間に液体の状態または状態の変化を検出し且つ報知することが可能なセンサ要素と、電気的または光伝達/光反射通信をするように位置している。多量の検査液体が、毛管現象(および場合によっては他の力)によって管路内に引き込まれ、管路を通って分析が行われる装置のエリア内に引き込まれるべく、サンプル受け入れチャンバに供給される。機器は、管路を通る検査液体の流動を検出するセンサを装備し得て、随意的に該機器は、検査シーケンスを開始させるためにそのような検出された流動を使用すべく設計され得る。いくつかの液体検査アプリケーションにおいては、例えば、血液の凝固特性を決定するために毛管充填装置を使用すべく設計されたある機器においては、毛管流管路を通る液体の流動速度が検知され、且つ検査シーケンスにおけるパラメータとして使用される。そのような検査アプリケーションにおいては、管路は、付加的に、検査エリアにそのまま供給される検査液体の流動特性、すなわち粘性を測定するための手段を提供するのに適する。
【0008】
装置の本体は、毛管検査装置について従来からそうであるように、概して直線状ストリップであってもよい。そのようなストリップは、互いに平行ではない、端壁、側壁および/または頂面および底面またはそれらの一部を有していてもよい。代替的には、それが、その中にサンプル受け入れチャンバの入口端部が開口している主面および副面を有しているならば、それは、円筒状、くさび形状、円盤形状または他の都合の良い形状であってもよい。
【0009】
サンプル受け入れチャンバの入口端部は、本体の主面および副面となる外面に開口している。主面および副面は、概して互いに垂直であってもよく、そして副面が、主面よりもかなり小さな表面積を有していてもよい。副面は、側壁の端部であってもよく、且つ主面は、頭頂面(本体が例えば、直線状ストリップまたはくさび形状または円盤形状であるとき)であってもよい。そのような場合において、装置の側面を、主面として考えることはできない。一実施形態において、副面は端壁であり、且つ主面は外側面である(例えば、本体が円柱状であるとき)。本体の形状にかかわらず、入口端部の開口は、好ましくは、主面および副面に連続している。
【0010】
副面に開口しているサンプル受け入れチャンバの部分は、主面に開口している部分よりも小さくてもよい。例えば、主面に開口しているチャンバの面積は、副面へのチャンバ開口の1.3から3倍、一実施形態においては1.6倍である。
【0011】
サンプル受け入れチャンバは、入口端部から出口端部へテーパ状に形成していても良く、概してV字またはU字形状であってもよい。例えば、入口端部の幅が、出口端部の幅のほぼ10倍から15倍であってもよく、そしてサンプル受け入れ部分の長さの0.5倍から1.5倍であってもよい。
【0012】
管路は、液体サンプルが毛管現象によって移動するのを可能とするように構成されるが、管路に沿う動きをそれに生じさせる、静水圧および/またはポジティブディスプレースメントのような他の力が液体に作用してもよい。例えば、長手軸に対して垂直な断面で見たときに、管路の最大寸法は、0.5mm、0.4mmまたは0.3mmよりも小さくてもよい。一実施形態において、最大寸法は、0.25mmから0.3mmまでの範囲内であり、約0.28mmであってもよい。管路は、約200より小さいレイノルズ数を有していてもよく、この数は、次式に従って計算される。
【数1】

【0013】
ここで、Re=レイノルズ数、ρ=流体密度、V=流体速度、d=長さスケール、η=動粘性係数である。200以下のレイノルズ数は、表面張力(毛管引力)によって単独で受動的に(微細構造または微細チャネルであるとみなされ得る)管路が充填されるようにさせる。
【0014】
少なくともサンプル受け入れチャンバおよび管路は、都合の良いことに、そこのあらゆる全ての壁部上に施され得る、親水性コーティングによってコーティングされている。コーティングは、90°以下、30°以下、または20°以下の接触角度を提供してもよい。接触角度は、5°から15°までの範囲であってもよく、11°であってもよい。ただ1つの壁部にのみそれが施されることを条件に、110°の接触角度を与えるようにしてもよい。接触角度は、NguyenとWerelyの「マイクロ流体工学の基礎と応用(Fundamental and Applications of Microfluidics)」(Artech House、2002年9月30日発行、ISBN 1580533434)の46ページに記述されているようにして決定されてもよい。
【0015】
サンプルされる液体は、どのような液体であってもよい。好ましい実施形態においては、液体は、全血、血漿、間質液、脳脊髄液(CSF)、尿、血清、唾液、涙および汗のような体液である。
【0016】
第2の態様において、本発明は、
少なくとも端壁を有する本体と、
本体内に位置し、且つ本体の端壁内に開口する入口端部を有する、概してV字形状のサンプル受け入れチャンバと、
本体内に位置し且つチャンバの出口端部から延びる管路であって、液体が毛管現象によって、出口端部から管路内に進むのを可能とするように配置されている管路と、
を備える、液体のサンプルを受け入れるための装置を提供する。
【0017】
本発明の装置は、血液凝固および/またはプロトロンビン時間のような他の止血量の測定に供される血液を受け入れるために使用されてもよい。それらは、また、免疫学的検定、ホルモン測定、心臓マーカの検出、癌マーカの検出、感染症病原体の検出、等に供される体液を受け入れるために使用されてもよい。これらの検査は、装置の検定チャンバにおいて行われてもよい。
【0018】
本発明の各態様の好ましい特徴は、他の態様の各々について必要な変更を加えたものである。
【0019】
本発明は、添付している図面を参照してさらに説明されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1から図4を参照すると、装置1が、部分的に示されている。装置1は、頭頂(主)面2および端部(副)面3およびそれぞれの側面4を有している。装置の底面は見えない。装置1は、端面3に向かってテーパ状に形成されている。いくつかの実施形態において、装置1は、このテーパを有しておらず、他のものにおいては、それはハンマヘッド形状を有している。サンプル受け入れチャンバ5は、それが頭頂面2内および端面3内に開口するようにして、装置1に凹所形成されている。代替的な実施形態においては、サンプル受け入れチャンバ5は、頭頂面2お内よび側面4内に開口している。
【0021】
サンプル受け入れチャンバ5は、入口端部、および管路6内に開口する出口端部を有している。入口端部は、チャンバ5が出口端部に向かってV字形状にテーパ状を形成するように、出口端部よりも実質的に大きい。代替的な、概してV字またはU字状に形成されたチャンバが図5AおよびBに示されている。一実施形態において、サンプル受け入れチャンバ5は、入口端部から出口端部にかけて寸法Aの値が減少するようにして、テーパを形成する。一般に、サンプルチャンバは、液体サンプルが、毛管現象によって入口端部から出口端部へ進むことができる限り、どのような形状および寸法からなっていてもよい。チャンバ内の流体の通過速度を速める目的で、チャンバの形状および寸法は、出口端部における毛管引力が、入口端部における毛管引力よりも大きくなるように選定されてもよい。
【0022】
図に示されるように、管路6は、頭頂面2内に凹所形成されたチャネルである。図示されていないが、管路6は、頭頂面2上に敷設された薄膜層によって閉じられている。層は、サンプル受け入れチャンバ5の全体または一部を覆っていてもよいが、もしもそれがサンプル受け入れチャンバ5の全体を覆っていれば、チャンバ5を覆う層によって提供される付加的な摩擦が、液体が管路6を移動し得る速度を減少させるので、それは好ましくない。サンプル受け入れチャンバ5の部分的な覆いは、それがサンプル受け入れチャンバに施され且つ管路6へのサンプルの進入を助けるときは、サンプルの表面張力を壊すために有利である場合がある。部分的な覆いは、敷設されたサンプル受け入れチャンバに加えられ得るよりも大きなサンプル量の付加をも可能とする。管路6のその他の端部は、液体の分析または検定が行なわれ得る装置のエリア(図示せず)につながっている。
【0023】
一実施形態においては、寸法Aは0.9mm、Bは2.5mm、Cは0.2mm、Dは3mm、そしてEは0.2mmである。
【0024】
本発明の装置は、当技術分野において知られている種々の技術を用いて構成され得る。例えば、適切な型を用いるインジェクション成形またはマイクロインジェクション成形が使用され得る。代替として、構造が材料にプレスされるエンボス加工技術、およびシリコンエッチングおよび/またはフォトリソグラフィを用いる技術も使用され得る。
【0025】
まださらなる代替案として、装置は、2つ以上の層を積層することによって作られてもよい。図7を参照すると、そのような装置が、3つの層を備えていてもよい。ベース層7は、チャンバ5およびチャネル6の底面を形成する。中間層8は、チャンバ5およびチャネル6の壁部を形成すべく、それを通る切断部を有している。頭頂層9は、チャネル6の頭頂面を形成している。図示された実施形態において、頭頂層9は、層8の切断側面およびベース層7の頭頂面によって形成される、サンプル受け入れチャンバ5を部分的に覆っている。図7の平面図が、図8に示されており、図8の線X−Xに沿う断面が、図9に示されている。
【0026】
一実施形態において、寸法Aは0.275mm、Bは3mm、Cは0.3mm、Dは2.5mm、Eは0.175mm、そしてFは2mmである。
【0027】
本発明に従った積層された装置は、その開示が参照して本明細書に組み込まれる、英国特許出願第0327094.9号に記載されている通り作られてもよい。
【0028】
(実施例)
ポリスチレン装置が、図1から図4に示されるようにサンプル受け入れチャンバと共にインジェクション成形された。これらの装置は、次の処理の接触角度がほぼ11°となるように、親水性分子層によって表面をコーティングするためにプラズマ化学気相成長法によって処理された。このようにする技術は、当業者に良く知られている。装置は次に、薄膜が管路6を覆うが、サンプル受け入れチャンバ5を覆わないようにして、親水性薄膜層(接触角度11°)によって積層された。
【0029】
種々の量の新しい全血が、サンプル受け入れチャンバ5にピペットで移された(フィンガプリック採血源からの血液も、サンプル受け入れチャンバに直接的に供給され得る)。血液が管路6を下って固定点へ移動するのに要する時間が決定された。装置に加えられる全血の量に対して示されたこれらの充填時間が、図6に示されている。
【0030】
5μl以下の量では、結果として約20秒より長い充填時間となり、7μl以上の量では、充填時間に少ししか影響しないことが認められ得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態の部分的等角図である。
【図2】図1の装置の平面図である。
【図3】図2における線X−Xに沿う断面図である。
【図4】図2における線X−Xに沿う断面の等角図である。
【図5】本発明の代替的な実施形態を示す平面図である。
【図6】本発明に従った装置に加えられた全血の量に対する充填時間を描いたグラフである。
【図7】本発明の他の一実施形態の前端部の部分的等角図である。
【図8】図7の装置の平面図である。
【図9】図8における線X−Xに沿う断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも主面および副面を有する本体と、
本体内に位置し、且つ本体の主面および副面内に開口する入口端部を有する、サンプル受け入れチャンバと、
本体内に位置し且つチャンバの出口端部から延びる管路であって、毛管現象によって、液体が出口端部から管路内に進むのを可能とするように配置されている管路と、
を備える、液体のサンプルを受け入れるための装置。
【請求項2】
サンプル受け入れチャンバの入口端部の開口は、主面と副面とに連続している、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
本体は、概して直線状のストリップであるか、あるいはくさび状または円盤状である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
副面は本体の端壁または側壁であり、主面は本体の頂面である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
本体は概して円筒形である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項6】
副面は端壁であり、主面はシリンダの外壁である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
サンプル受け入れチャンバは、入口端部から出口端部へ向かってテーパ状に形成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
サンプル受け入れチャンバは、概してV字形状またはU字形状である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも端壁を有する本体と、
本体内に位置し、且つ本体の端壁内に開口する入口端部を有する、概してV字形状のサンプル受け入れチャンバと、
本体内に位置し且つチャンバの出口端部から延びる管路であって、毛管現象によって、液体が出口端部から管路内に進むのを可能とするように配置されている管路と、
を備える、液体のサンプルを受け入れるための装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−504438(P2007−504438A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524423(P2006−524423)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003683
【国際公開番号】WO2005/020817
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(302044591)インバーネス・メデイカル・スウイツツアーランド・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (38)
【Fターム(参考)】