説明

毛繊維の防縮加工方法

【課題】単純な工程にて高い生産性を維持しながら均一にかつ安定して所期の防縮性を確保することができる毛繊維の防縮加工方法を提供する。
【解決手段】天然原料を基に作成され、蛋白組織の再生、編成、保全作用を有する蛋白組織補修物質と、浸透性界面活性を有する浸透促進物質とを含有する助剤を溶解したアルカリ性の浴中に毛繊維を浸漬して処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羊毛などの毛繊維の防縮加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛繊維は、絹などとともにタンパク繊維の一種で、羊毛を代表として、モヘヤ、カシミヤ、ラクダ、アルパカ、ビュキナ、アンゴラ兎毛などの毛を含んでいる。この毛繊維は、洗濯時などに水分等を含むと、繊維の外面を覆っているキューティクルとも呼ばれるスケール(外皮細胞)が繊維の膨潤差によって反り返った状態となり、その状態で外力を受けるとスケール同士が引っ掛かって繊維が絡み合い、繊維製品に縮みを生じるという課題があった。
【0003】
このような毛繊維製品の縮みを防止するため従来から種々の防縮加工方法が提案されている。従来の防縮加工法は、大きく分けて「酸化法」と「付加法」と「併用法」の3つの方法がある。「酸化法」は、スケールを酸化又は塩素化によって除去又は削って丸めることで、絡み合いを抑制する方法であり、「付加法」は、スケールを薄い樹脂コーティング膜で覆う方法であり、「併用法」はこれらの両方の処理を行う方法である。最も多い防縮加工法は、毛繊維を塩素処理した後、アルカリで余分なスケールを除去し、その後樹脂コーティングを行っている。そして、こうして防縮加工を施した毛繊維に対して、その後に染色と洗いを行っている。
【0004】
また、環境負荷を与えないように塩素や樹脂を用いずに、防縮性を与える方法として、酸化チタン粒子をスケールのエッジに選択的に付着させ、紫外線照射することによりスケールのエッジ部分のみを分解することで、スケール同士が引っ掛かるのを防止するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
その他にも、オゾン処理によりスケールを改質した後、糸にしてからアルカリ処理を施し、その後染色する方法も知られている。さらに、スケールを削るのではなく、繊維同士を点接着することで、繊維同士が絡み合うのを防止する方法なども知られている。
【特許文献1】特開2001−140166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、現在最も多い塩素処理と樹脂コーティングを組み合わせた防縮加工法では、塩素や樹脂を用いるため環境負荷や廃水処理負荷が大きいという問題がある。また、その他の酸化チタンの付着と紫外線照射の組み合わせや、オゾン処理とアルカリ処理の組み合わせなどによって、スケールのエッジ部分を除去処理する方法では、複雑な工程を経るために高い生産性を確保するのが困難でかつ均一にかつ安定して所期の防縮性を確保することが困難であるという問題があり、さらに繊維同士の点接着による方法も同様の問題がある。また、従来の防縮加工法では、何れも染色前の処理に限定されるという問題もあった。
【0007】
本発明は、上記従来の課題に鑑み、単純な工程にて高い生産性を維持しながら均一にかつ安定して所期の防縮性を確保することができる毛繊維の防縮加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の毛繊維の防縮加工方法は、天然原料を基に作成され、蛋白組織の再生、編成、保全作用を有する蛋白組織補修物質と、浸透性界面活性を有する浸透促進物質とを含有する助剤を溶解したアルカリ性又は酸性の浴中に毛繊維を浸漬して処理するものである。
【0009】
この構成においては、従来は毛繊維のスケールの除去と固定によってスケール同士の引っ掛かりによる繊維の絡み合いを防止していたのに対して、皮膚や毛髪のダメージを修復する作用を有する成分として知られている蛋白組織補修物質を、アルカリ又は酸と浸透促進物質にて毛繊維のスケールの内側のコルテックス(皮質細胞)内に浸透させることで、防縮性を向上できることを見い出したことに基づいている。その理由は、理論的に詳細かつ正確には分からないが、毛繊維のコルテックスには元々種々の組織欠陥が存在しており、その状態で水分を吸湿することで膨潤差が偏って大きく現れ、それによってスケールの反り返りの大きい部分が発生し、繊維の絡み合いが強くなっていたものが、コルテックス内に微量の蛋白組織補修物質を浸透させることによって、コルテックス内で蛋白組織補修物質に含まれる酵素が作用してATP(アデノシン三リン酸)が生成され、蛋白組織の欠陥が整備され、それによってスケールの大きな反り返りが防止され、繊維の絡み合いが弱くなって防縮性が向上するものと考えられる。
【0010】
また、蛋白組織の再生、編成、保全作用を有する蛋白組織補修物質として、トレハロース、ニコチン酸アミド、トコフェロール、パパイン、レシチン、アラントイン、パンテノール、米糠エキス、小麦胚芽エキス、コラーゲン、アルギニン、納豆エキス、クロエラエキス、サフランエキス、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、インペルターゼ、 疑乳酵素、ペクチナゼ、リパーゼ、ヘスペリジナーゼ、カタラーゼ、グルコースオキターゼ、ラクターゼ、ナリンジナーゼ、ペニシリナーゼ、シゾサッカロミセス、サッカロミセス、イゴサッカロミセス、クルイフェロミセス、ピヒア、ハンゼヌラ、デバリオミセス、サッカロミコプシス、A.オリゼ、A.ニガー、A.ニベウス、B.アミロリクエファシエンス、R.ニベウス、B.ズブチリス、R.デレマ、ミクロコッカス、バチルス、コリネバクテリウム、ロイコノストック、メゼンテロイデス、火落菌などが好適に用いられ、これらの群から選ばれた1又は複数の物質を用いることができる。また、EM菌やIM菌を混合しても良い。
【0011】
さらに、蛋白組織補修物質として、トレハロース、ニコチン酸アミド、トコフェロール、パパイン、レシチン、アラントイン、パンテノール、米糠エキス、小麦胚芽エキス、コラーゲン、アルギニン、納豆エキス、クロエラエキス、サフランエキス、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、インペルターゼ、 疑乳酵素、ペクチナゼ、リパーゼ、ヘスペリジナーゼ、カタラーゼ、グルコースオキターゼ、ラクターゼ、ナリンジナーゼ、ペニシリナーゼ、シゾサッカロミセス、サッカロミセス、イゴサッカロミセス、クルイフェロミセス、ピヒア、ハンゼヌラ、デバリオミセス、サッカロミコプシス、A.オリゼ、A.ニガー、A.ニベウス、B.アミロリクエファシエンス、R.ニベウス、B.ズブチリス、R.デレマを第1群とし、ミクロコッカス、バチルス、コリネバクテリウム、ロイコノストック、メゼンテロイデス、火落菌を第2群とし、これら第1群と第2群からそれぞれ選択した1又は複数の物質を混合して用いるのが好適である。というのは、第1群の蛋白組織補修物質は大きな組織欠陥を補修でき、第2群の蛋白組織補修物質は小さな組織欠陥を補修できので、両者を併用することで、組織欠陥をより緻密に補修できて、より高い防縮性が得られるためである。
【0012】
また、浸透性界面活性を有する浸透促進物質としては、ベンチノール、ジメチコポリオール、塩化アルキル、メチルアンモニウム、マントールなどが好適であり、これらの群から選ばれた1又は複数の物質を、助剤の全重量の0.1〜10重量%混合するのが好適である。
【0013】
また、助剤に、天然原料を基に作成され、毛繊維のスケールを柔らかくしたり、傷を補修したりする柔軟化物質を混合すると、上記蛋白組織補修物質がスケールの間を通って皮質細胞内に浸透するのを促進することができ、より高い防縮性が得られる。
【0014】
その柔軟化物質としては、サリチル酸ナトリウム、シャクヤクエキス、アミノ酪酸、アルテアエキス、カロチン、ヨクイニンエキス、オタネニンジンエキス、酵母エキス、リボフラビン、葉酸、ナイアシンアミドなどが好適であり、これらの群から選ばれた1又は複数の物質を用いることができる。
【0015】
また、助剤の蛋白組織補修物質や柔軟化物質は、天然原料を基に作成されたものであるので、安息香酸ソーダ、ベンタジオール、エタノール、ヒノキチオールなどの腐敗防止剤を混合して腐敗を防止するようにするのが好ましい。
【0016】
また、助剤に抗ピリング剤を混合して、ピリング防止効果も同時に得られるようにするのが好ましい。その抗ピリング剤としては、カチオン系の第4級アンモニウム塩、キッチン、キトサン、シルクパウダーから選択された1又は複数の水溶性の物質と、グリセリン、コラーゲン、ヒアルロンサン、ビタミンB、ビタミンEから選択された1又は複数の油成分の物質とを、エタノールでエマルジョン化した物質を用いるのが好適である。
【0017】
また、具体的には、毛繊維又は毛繊維と他の繊維を混紡してなるワタ、糸、織物布、編み物布、またはそれらから成る二次製品を、任意の染料による染色工程前又は染色工程後に、pH8〜10に調整し、毛繊維重量の3〜6重量%の助剤を投入し、70〜90℃に加温した浴中に30〜60分浸漬して処理することによって、上記のように毛繊維中のコルテックス内に蛋白組織補修物質を確実に浸透させることができて、コルテックス中の蛋白組織の欠陥を整備し、毛繊維のスケールの大きな反り返りを防止して防縮性を向上することができる。
【0018】
また、本発明の毛繊維の防縮加工助剤は、天然原料を基に作成された、トレハロース、ニコチン酸アミド、トコフェロール、パパイン、レシチン、アラントイン、パンテノール、米糠エキス、小麦胚芽エキス、コラーゲン、アルギニン、納豆エキス、クロエラエキス、サフランエキス、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、インペルターゼ、 疑乳酵素、ペクチナゼ、リパーゼ、ヘスペリジナーゼ、カタラーゼ、グルコースオキターゼ、ラクターゼ、ナリンジナーゼ、ペニシリナーゼ、シゾサッカロミセス、サッカロミセス、イゴサッカロミセス、クルイフェロミセス、ピヒア、ハンゼヌラ、デバリオミセス、サッカロミコプシス、A.オリゼ、A.ニガー、A.ニベウス、B.アミロリクエファシエンス、R.ニベウス、B.ズブチリス、R.デレマ、ミクロコッカス、バチルス、コリネバクテリウム、ロイコノストック、メゼンテロイデス、火落菌からなる群から選ばれた1又は複数からなる物質蛋白組織補修物質と、ベンチノール、ジメチコポリオール、塩化アルキル、メチルアンモニウム、マントールからなる群から選ばれた1又は複数の物質からなる浸透促進物質とを含むものであり、この防縮加工助剤を用いることで上記のように毛繊維の防縮性を向上することができる。
【0019】
また、助剤には、天然原料を基に作成された、サリチル酸ナトリウム、シャクヤクエキス、アミノ酪酸、アルテアエキス、カロチン、ヨクイニンエキス、オタネニンジンエキス、酵母エキス、リボフラビン、葉酸、ナイアシンアミドからなる群から選ばれた1又は複数の物質からなる柔軟化物質を含むのが好適である。
【0020】
また、助剤には、安息香酸ソーダ、ベンタジオール、エタノール、ヒノキチオールからなる群から選ばれた1又は複数の物質からなる腐敗防止剤を含むのが好適である。
【0021】
また、助剤には、カチオン系の第4級アンモニウム塩、キッチン、キトサン、シルクパウダーから選択された1又は複数の水溶性の物質と、グリセリン、コラーゲン、ヒアルロンサン、ビタミンB、ビタミンEから選択された1又は複数の油成分の物質とを、エタノールでエマルジョン化した物質からなる抗ピリング剤を含むのが好適である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の毛繊維の防縮加工方法によれば、蛋白組織補修物質をアルカリ又は酸と浸透促進物質にて毛繊維のスケールの内側のコルテックス内に浸透させることで、コルテックスにおける蛋白組織の欠陥を整備でき、それによって膨潤差によるスケールの大きな反り返りを防止でき、繊維の絡み合いを少なくして防縮性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の毛繊維の防縮加工方法の一実施形態について説明する。
【0024】
本発明の防縮加工は、天然原料を基に作成され、蛋白組織の再生、編成、保全作用を有する蛋白組織補修物質と、浸透性界面活性を有する浸透促進物質とを含有する助剤を溶解したアルカリ性又は酸性の浴中に毛繊維を浸漬して処理するものであり、蛋白組織補修物質がアルカリ又は酸と浸透促進物質にて毛繊維のスケールの内側のコルテックス(皮質細胞)内に浸透し、コルテックス中の蛋白組織の欠陥が整備され、それによってスケールの大きな反り返りが防止され、繊維の絡み合いが弱くなって防縮性が向上するものである。
【0025】
この防縮加工を施す毛繊維は、従来のように染色前のわたや糸の状態での加工に限定されるものではなく、染色前でも各種染料による染色後でも可能であり、またわた、糸、織物の布、編み物の布、それらを用いた二次製品の状態でも加工することができる。その理由は、天然原料を基に作成された蛋白組織補修物質を用いて、毛繊維のコルテックスに浸透させるので、酸性でもアルカリでもその作用が変化しないことによる。
【0026】
蛋白組織補修物質としては、トレハロース、ニコチン酸アミド、トコフェロール、パパイン、レシチン、アラントイン、パンテノール、米糠エキス、小麦胚芽エキス、コラーゲン、アルギニン、納豆エキス、クロエラエキス、サフランエキス、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、インペルターゼ、 疑乳酵素、ペクチナゼ、リパーゼ、ヘスペリジナーゼ、カタラーゼ、グルコースオキターゼ、ラクターゼ、ナリンジナーゼ、ペニシリナーゼ、シゾサッカロミセス、サッカロミセス、イゴサッカロミセス、クルイフェロミセス、ピヒア、ハンゼヌラ、デバリオミセス、サッカロミコプシス、A.オリゼ、A.ニガー、A.ニベウス、B.アミロリクエファシエンス、R.ニベウス、B.ズブチリス、R.デレマ、ミクロコッカス、バチルス、コリネバクテリウム、ロイコノストック、メゼンテロイデス、火落菌などの群から選ばれた1又は複数の物質を用いるのが好適であり、EM菌やIM菌を混合しても良い。さらに、上記蛋白組織補修物質における、トレハロース、ニコチン酸アミド、トコフェロール、パパイン、レシチン、アラントイン、パンテノール、米糠エキス、小麦胚芽エキス、コラーゲン、アルギニン、納豆エキス、クロエラエキス、サフランエキス、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、インペルターゼ、 疑乳酵素、ペクチナゼ、リパーゼ、ヘスペリジナーゼ、カタラーゼ、グルコースオキターゼ、ラクターゼ、ナリンジナーゼ、ペニシリナーゼ、シゾサッカロミセス、サッカロミセス、イゴサッカロミセス、クルイフェロミセス、ピヒア、ハンゼヌラ、デバリオミセス、サッカロミコプシス、A.オリゼ、A.ニガー、A.ニベウス、B.アミロリクエファシエンス、R.ニベウス、B.ズブチリス、R.デレマを第1群とし、ミクロコッカス、バチルス、コリネバクテリウム、ロイコノストック、メゼンテロイデス、火落菌を第2群とし、これら第1群と第2群からそれぞれ選択した1又は複数の物質を混合して用いると、第1群の蛋白組織補修物質が大きな組織欠陥を補修し、第2群の蛋白組織補修物質が小さな組織欠陥を補修するので、組織欠陥をより緻密に補修できて、より高い防縮性が得られるので好適である。
【0027】
浸透促進物質としては、ベンチノール、ジメチコポリオール、塩化アルキル、メチルアンモニウム、マントールなどの群から選ばれた1又は複数の物質を、助剤の全重量の0.1〜10重量%混合するのが好適である。
【0028】
また、助剤に、天然原料を基に作成され、毛繊維のスケールを柔らかくしたり、傷を補修したりする柔軟化物質、具体的にはサリチル酸ナトリウム、シャクヤクエキス、アミノ酪酸、アルテアエキス、カロチン、ヨクイニンエキス、オタネニンジンエキス、酵母エキス、リボフラビン、葉酸、ナイアシンアミドなどの群から選ばれた1又は複数の物質を混合するのが好ましい。このように柔軟化物質を混合することで、蛋白組織補修物質がスケールの間を通って皮質細胞内に浸透するのを促進することができ、より高い防縮性が得られる。
【0029】
また、助剤の蛋白組織補修物質や柔軟化物質は、天然原料を基に作成されたものであるので、安息香酸ソーダ、ベンタジオール、エタノール、ヒノキチオールなどの腐敗防止剤を混合して腐敗を防止するようにするのが好ましい。
【0030】
さらに、助剤に抗ピリング剤を混合して、ピリング防止効果も同時に得られるようにするのが好ましい。その抗ピリング剤としては、カチオン系の第4級アンモニウム塩、キッチン、キトサン、シルクパウダーから選択された1又は複数の水溶性の物質と、グリセリン、コラーゲン、ヒアルロンサン、ビタミンB、ビタミンEから選択された1又は複数の油成分の物質とを、エタノールでエマルジョン化した物質を用いるのが好適である。
【0031】
具体的な処理工程においては、酸性染料、反応染料等の任意の染料による染色工程前又は染色工程後に、毛繊維を含む繊維材料を、毛繊維重量の3〜6重量%の助剤を投入し、pHを8〜10、又はpHを4〜6に調整するとともに温度を70〜90℃に加温した処理浴中に30〜60分浸漬して処理するのが好適である。
【0032】
以下、各実施例について説明する。
【0033】
(実施例1)
染色前のウールの60番手2本取り天竺を洗い機械に投入し、浴液を入れ、防縮助剤を繊維重量の5%入れ、ソーダ灰を入れてpH9に設定し、温度を80℃に設定して30分ゆっくり回して防縮処理を施した。その後、酸性染料にて100℃で、45分染め、その後洗い、脱水、乾燥を行った。防縮助剤には、蛋白組織補修物質としてアルカリに強いシゾサッカロミセスとA−オリゼを主として含み、浸透促進物資としてベンチノールを含有するものを用いた。結果は、経2%、緯4.2%の縮率変化しかなく、防縮性機能が確認された。
【0034】
(実施例2)
実施例1と同じ糸で横編みした製品について、同様の防縮処理を行った後染色を行った。結果は、経、緯とも、3%を越える縮率変化を示したものはなく、防縮性機能が確認された。
【0035】
(実施例3)
カシミヤ100%の製品セーターを、洗い機械にて同じ手法で防縮処理を行った後、染色を行った。また、比較のため、防縮処理を行わずに一般の染色を行った。結果は、一般の染色を行ったものは、7%近くの縮小が生じたが、防縮処理を行ったものは、3.5%の縮率変化があっただけである。
【0036】
(実施例4)
実施例1と同じウールの糸を、酸性染料にて、90〜100℃で、45分染め、その後60℃にて5分、アンモニアを除去する処理を行った後、上記と同じように繊維重量の5%の防縮助剤を用い、pH9、90℃、45分で同様に防縮処理を行い、その後洗い、脱水、乾燥を行った。結果は、3%を越える縮率変化を示したものはなく、防縮性機能が確認された。
【0037】
(実施例5)
2/48糸の梳毛糸で編んだ14Gのセーター(やや粗い)を2枚作製した。一方のセーターを、酸性染料にて通常の90℃×45分で染色し、柔軟剤をつけて脱水し、自然乾燥した。他方のセーターは、酸性染料にて通常の90℃×45分で染色し、クエン酸を溶解したpH4の酸性浴中に酸に強い防縮助剤を繊維重量の5%入れ、60℃に昇温して45分機械で回し、柔軟剤をつけて脱水し、自然乾燥した。防縮助剤としては、蛋白組織補修物質として酸に強いイゴサッカロミセス、クルイフェロミセス、A−ニベウスを主として含み、浸透促進物資としてベンチノールを含有するものを用いた。結果は、一方のセーターは、身丈で15%、身幅で5%、袖丈で10%、袖幅で5%縮んだ。これに対して他方のセーターは、身丈で6%、身幅で5%、袖丈で4%、袖幅で3%縮んだだけであり、作製時よりは縮んだが一方のセーターに比べて防縮性が認められた。
【0038】
上記列挙した蛋白組織補修物質と浸透促進物質を組み合わせた防縮助剤についても、同様の試験を行ったところ、同様の防縮効果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の毛繊維の防縮加工方法は、蛋白組織補修物質を毛繊維のスケールの内側のコルテックス内に浸透させてコルテックスにおける蛋白組織の欠陥を整備し、それによってスケールの大きな反り返りを防止して防縮性を向上できるため、毛繊維を含む各種繊維製品の防縮加工に好適に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然原料を基に作成され、蛋白組織の再生、編成、保全作用を有する蛋白組織補修物質と、浸透性界面活性を有する浸透促進物質とを含有する助剤を溶解したアルカリ性又は酸性の浴中に、毛繊維を浸漬して処理することを特徴とすることを特徴とする毛繊維の防縮加工方法。
【請求項2】
蛋白組織補修物質として、トレハロース、ニコチン酸アミド、トコフェロール、パパイン、レシチン、アラントイン、パンテノール、米糠エキス、小麦胚芽エキス、コラーゲン、アルギニン、納豆エキス、クロエラエキス、サフランエキス、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、インペルターゼ、 疑乳酵素、ペクチナゼ、リパーゼ、ヘスペリジナーゼ、カタラーゼ、グルコースオキターゼ、ラクターゼ、ナリンジナーゼ、ペニシリナーゼ、シゾサッカロミセス、サッカロミセス、イゴサッカロミセス、クルイフェロミセス、ピヒア、ハンゼヌラ、デバリオミセス、サッカロミコプシス、A.オリゼ、A.ニガー、A.ニベウス、B.アミロリクエファシエンス、R.ニベウス、B.ズブチリス、R.デレマ、ミクロコッカス、バチルス、コリネバクテリウム、ロイコノストック、メゼンテロイデス、火落菌からなる群から選ばれた1又は複数の物質を用いることを特徴とする請求項1記載の毛繊維の防縮加工方法。
【請求項3】
蛋白組織補修物質として、トレハロース、ニコチン酸アミド、トコフェロール、パパイン、レシチン、アラントイン、パンテノール、米糠エキス、小麦胚芽エキス、コラーゲン、アルギニン、納豆エキス、クロエラエキス、サフランエキス、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、インペルターゼ、 疑乳酵素、ペクチナゼ、リパーゼ、ヘスペリジナーゼ、カタラーゼ、グルコースオキターゼ、ラクターゼ、ナリンジナーゼ、ペニシリナーゼ、シゾサッカロミセス、サッカロミセス、イゴサッカロミセス、クルイフェロミセス、ピヒア、ハンゼヌラ、デバリオミセス、サッカロミコプシス、A.オリゼ、A.ニガー、A.ニベウス、B.アミロリクエファシエンス、R.ニベウス、B.ズブチリス、R.デレマを第1群とし、ミクロコッカス、バチルス、コリネバクテリウム、ロイコノストック、メゼンテロイデス、火落菌を第2群とし、これら第1群と第2群からそれぞれ選択した1又は複数の物質を混合して用いることを特徴とする請求項2記載の毛繊維の防縮加工方法。
【請求項4】
浸透促進物質として、ベンチノール、ジメチコポリオール、塩化アルキル、メチルアンモニウム、マントールからなる群から選ばれた1又は複数の物質を、助剤の全重量の0.1〜10重量%混合することを特徴とする請求項1記載の毛繊維の防縮加工方法。
【請求項5】
助剤に、天然原料を基に作成され、毛繊維のスケールを柔らかくしたり、傷を補修したりする柔軟化物質を混合することを特徴する請求項1〜4の何れか1つに記載の毛繊維の防縮加工方法。
【請求項6】
柔軟化物質として、サリチル酸ナトリウム、シャクヤクエキス、アミノ酪酸、アルテアエキス、カロチン、ヨクイニンエキス、オタネニンジンエキス、酵母エキス、リボフラビン、葉酸、ナイアシンアミドからなる群から選ばれた1又は複数の物質を用いることを特徴とする請求項5記載の毛繊維の防縮加工方法。
【請求項7】
助剤に、腐敗防止剤を混合することを特徴する請求項1〜6の何れか1つに記載の毛繊維の防縮加工方法。
【請求項8】
腐敗防止剤として、安息香酸ソーダ、ベンタジオール、エタノール、ヒノキチオールからなる群から選ばれた1又は複数の物質を用いることを特徴とする請求項7記載の毛繊維の防縮加工方法。
【請求項9】
助剤に、抗ピリング剤を混合することを特徴する請求項1〜8の何れか1つに記載の毛繊維の防縮加工方法。
【請求項10】
抗ピリング剤として、カチオン系の第4級アンモニウム塩、キッチン、キトサン、シルクパウダーから選択された1又は複数の水溶性の物質と、グリセリン、コラーゲン、ヒアルロンサン、ビタミンB、ビタミンEから選択された1又は複数の油成分の物質とを、エタノールでエマルジョン化した物質を用いることを特徴とする請求項9記載の毛繊維の防縮加工方法。
【請求項11】
毛繊維又は毛繊維と他の繊維を混紡してなるワタ、糸、織物布、編み物布、またはそれらから成る二次製品を、任意の染料による染色工程前又は染色工程後に、pH8〜10に調整し、毛繊維重量の3〜6重量%の助剤を投入し、70〜90℃に加温した浴中に30〜60分浸漬して処理することを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の毛繊維の防縮加工方法。
【請求項12】
天然原料を基に作成された、トレハロース、ニコチン酸アミド、トコフェロール、パパイン、レシチン、アラントイン、パンテノール、米糠エキス、小麦胚芽エキス、コラーゲン、アルギニン、納豆エキス、クロエラエキス、サフランエキス、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、インペルターゼ、 疑乳酵素、ペクチナゼ、リパーゼ、ヘスペリジナーゼ、カタラーゼ、グルコースオキターゼ、ラクターゼ、ナリンジナーゼ、ペニシリナーゼ、シゾサッカロミセス、サッカロミセス、イゴサッカロミセス、クルイフェロミセス、ピヒア、ハンゼヌラ、デバリオミセス、サッカロミコプシス、A.オリゼ、A.ニガー、A.ニベウス、B.アミロリクエファシエンス、R.ニベウス、B.ズブチリス、R.デレマ、ミクロコッカス、バチルス、コリネバクテリウム、ロイコノストック、メゼンテロイデス、火落菌からなる群から選ばれた1又は複数からなる物質蛋白組織補修物質と、ベンチノール、ジメチコポリオール、塩化アルキル、メチルアンモニウム、マントールからなる群から選ばれた1又は複数の物質からなる浸透促進物質とを含むことを特徴とする毛繊維の防縮加工助剤。
【請求項13】
天然原料を基に作成された、サリチル酸ナトリウム、シャクヤクエキス、アミノ酪酸、アルテアエキス、カロチン、ヨクイニンエキス、オタネニンジンエキス、酵母エキス、リボフラビン、葉酸、ナイアシンアミドからなる群から選ばれた1又は複数の物質からなる柔軟化物質を含むことを特徴とする請求項12記載の毛繊維の防縮加工助剤。
【請求項14】
安息香酸ソーダ、ベンタジオール、エタノール、ヒノキチオールからなる群から選ばれた1又は複数の物質からなる腐敗防止剤を含むことを特徴とする請求項12又は13記載の毛繊維の防縮加工助剤。
【請求項15】
カチオン系の第4級アンモニウム塩、キッチン、キトサン、シルクパウダーから選択された1又は複数の水溶性の物質と、グリセリン、コラーゲン、ヒアルロンサン、ビタミンB、ビタミンEから選択された1又は複数の油成分の物質とを、エタノールでエマルジョン化した物質からなる抗ピリング剤を含むことを特徴とする請求項12〜14の何れか1つに記載の毛繊維の防縮加工助剤。

【公開番号】特開2009−133044(P2009−133044A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311971(P2007−311971)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(508201709)株式会社シオンテック (2)
【Fターム(参考)】