説明

毛髪および/または毛包強化因子産生促進剤

【課題】高い毛髪および/または毛包強化因子の産生促進効果を有する毛髪および/または毛包強化因子産生促進剤を提供する。
【解決手段】蒲公英から得られる抽出物を有効成分とする毛髪および/または毛包強化因子産生促進剤である。下記一般式(1)、


(式中、R〜Rは、各々独立に、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示し、XおよびXは、各々独立に、エチレン基またはビニレン基を示す)で表される骨格を有する化合物を有効成分とする毛髪および/または毛包強化因子産生促進剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪および/または毛包強化因子産生促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
蒲公英(以下、「ホコウエイ」とも記す)は、キク科のモウコタンポポ(Taraxacum mongolicum)等の各種 Taraxacum 属植物の根つき全草であり、特許文献1には、ホコウエイを有効成分とする5α−リダクターゼ阻害剤が開示されている。
【0003】
一方、毛髪の主要構成要素は毛髪ケラチンとKAPs(Keratin−associated proteins)であり、ヒトにおける毛髪ケラチンはタンパクレベルで54種、S100タンパク質などのKAPsは遺伝子レベルで21ファミリー、80種以上が知られている。また、ロリクリン、レペチン、トリコヒアリン、インボルクリン等の角化関連タンパク質がこれら主要構成タンパク質と一緒になって毛髪を形成している(非特許文献1および2)。特に、トリコヒアリンがキューティクルの構成タンパク質であることが報告されている(非特許文献1)。
【0004】
かかるレペチン、トリコヒアリン、インボルクリン等のタンパク質は、上皮系の細胞が脱核するときに表面の膜を固めていく働きがあると考えられている(非特許文献1)。また、レペチンとトリコヒアリンは内毛根鞘に存在すると報告されており、内毛根鞘を強くするタンパク質であると考えられている(非特許文献1)。これらのことから、レペチン、トリコヒアリン、インボルクリンのタンパク質は、皮膚の表皮、爪および毛髪の硬さを決めると推測されている。
【0005】
そこで、インボルクリンの産生促進を目的として、特許文献2には、シラカンバ樹液を有効成分とする皮膚外用剤が開示され、特許文献3には、サンショウ、セイヨウハッカ等を含有したインボルクリン発現促進剤が開示され、さらに、特許文献4には、酵母、モモ、アロエ等を有効成分とするインボルクリン産生促進剤が開示されている。
【0006】
また、特許文献5には、セリン、アセチルセリン等の塩を有効成分とする毛髪はり・こし改善剤が開示されている。さらに、特許文献6および7には、血管内皮増殖促進剤(VEGF)の産生を促進する育毛剤が開示されている。
【特許文献1】特開2000−95648号公報
【特許文献2】特開2007−217326号公報
【特許文献3】特開2007−277149号公報
【特許文献4】特開2008−7412号公報
【特許文献5】特開2006−143649号公報
【特許文献6】特開2006−282597号公報
【特許文献7】特開2006−160698号公報
【非特許文献1】J. Biol. Chem., Vol. 278, Issue 42, 41409-41419, 2003
【非特許文献2】フレグランスジャーナル, No.12 p24(2007)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2〜4記載の方法は、インボルクリンの産生についての効果はあるものの、毛髪および/または毛包強化因子(以下、「毛髪等強化因子」とも称する)の産生としては十分ではなく、より毛髪等強化因子の産生促進効果の高い毛髪および/または毛包強化因子産生促進剤(以下、「毛髪等強化因子産生促進剤」とも称する)が求められている。
【0008】
また、特許文献5記載の方法は、毛髪関連の遺伝子の発現には効果があり、特許文献6および7記載の方法は、血管内皮増殖促進剤(VEGF)の産生については効果があるものの、毛髪等強化因子の産生促進効果については、いずれも不明である。
【0009】
さらに、特許文献1は、ホコウエイに関して5α−リダクターゼ阻害効果については開示されているものの、毛髪等強化因子の産生促進効果については考慮されていない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、高い毛髪等強化因子の産生促進効果を有する毛髪等強化因子産生促進剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、キク科の特定の抽出物に高い毛髪等強化因子の産生促進効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明の毛髪等強化因子産生促進剤は、ホコウエイから得られる抽出物(以下、「ホコウエイ抽出物」とも称す)を有効成分とすることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の毛髪等強化因子産生促進剤は、下記一般式(1)、

(式中、R〜Rは、各々独立に、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示し、XおよびXは、各々独立に、エチレン基またはビニレン基を示す)で表される骨格を有する化合物を有効成分とすることを特徴とするものである。
【0014】
さらに、本発明の毛髪等強化因子産生促進剤は、ホコウエイ抽出物または上記一般式(1)で表される骨格を有する化合物に加えて、ショウキョウ、ニンジン、センブリおよびボタンピよりなる群から選ばれた1種以上の抽出物を配合してなることが好ましい。
【0015】
さらにまた、本発明の毛髪等強化因子産生促進剤は、毛髪等強化因子が、レペチン、トリコヒアリンおよびインボルクリンよりなる群から選ばれた1種以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、高い毛髪等強化因子の産生促進効果を有する毛髪等強化因子産生促進剤を提供することが可能である。また、本発明は、高い毛髪等強化因子の産生促進効果を有することから、毛髪や毛包そのものを硬くすることができ、ハリ・コシが強く抜けにくい毛髪や毛包とすることができる。また、裂毛、切毛、枝毛を防ぎ、キューティクルを整えるため、髪の艶をあげることが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適実施形態につき具体的に説明する。
本発明においては、ホコウエイは、キク科のモウコタンポポ(Taraxacum mongolicum)等の各種 Taraxacum 属植物の根つき全草のことを指し、セイヨウタンポポ、モウコタンポポ等が例示される。これらの中でも植物としてはモウコタンポポが好ましく、使用する部位としては根が好ましい。また、本発明で用いるホコウエイ抽出物とは、かかる全草等を乾燥し又は乾燥することなく粉砕した後、常温又は加温下に、溶剤により抽出するか又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出することにより得られる各種溶媒抽出液、その希釈液、その濃縮液、あるいはその乾燥末を意味するものである。
【0018】
ここで、ホコウエイの抽出に使用される溶媒は特に限定されず、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール等の低級アルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の液状多価アルコール、酢酸エチル等の低級アルキルエステル、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素、ジエチルエーテル、アセトン等の公知の溶媒が挙げられ、これらの溶媒は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でもエタノール水溶液が好ましく、70%エタノール水溶液が特に好ましい。なお、ホコウエイの抽出は常法で行ない、得られたホコウエイ抽出物はそのまま用いてもよいが、さらに必要により濃縮、濾過等の処理したものを用いることができる。
【0019】
本発明の毛髪等強化因子産生促進剤は、ホコウエイ抽出物を有効成分とするものであり、優れた毛髪等強化因子産生促進効果を有し、剤型としては錠剤、カプセル剤、散剤、内服液、細粒剤、顆粒剤等の経口投与剤の形態となすことができ、また、適当な基剤、薬剤などと混合した皮膚外用剤や頭髪化粧料等の外用形態とすることができる。具体的には、ローション、乳液、軟膏、クリーム、ジェル、オイル、パック、シャンプー、リンス、トリートメント、ヘアートニック、ヘアーリキッド等の形態を採ることができる。さらに上記のような外用剤の他にも、例えば、石鹸、入浴剤といったものに配合して用いてもよい。
【0020】
また、本発明において、ホコウエイ抽出物を処理したものも使用でき、例えば、ホコウエイの根からの抽出物を酢酸エチル/水で分配処理し、処理して得られた水可溶画分をn−ブタノール/水で分配処理して得られた水可溶画分(以下、「水画分」と称す)があり、さらに、n−ブタノール/水で分配処理して得られた水画分を、樹脂吸着クロマトグラフィーにかけ得られたメタノール溶出画分(以下、「メタノール画分」と称す)等が挙げられる。
【0021】
さらに、本発明の毛髪等強化因子産生促進剤は、下記一般式(1)、

(式中、R〜Rは、各々独立に、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示し、XおよびXは、各々独立に、エチレン基またはビニレン基を示す)で表される骨格を有する化合物を有効成分とするものである。ここで、R〜Rで表される炭素数1〜3のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
【0022】
上記一般式(1)の化合物は、植物からの抽出、単離、または既知の方法による合成により得ることができる。特に、上記の方法によりホコウエイの根からホコウエイ抽出物を得た後、単離することにより、好適に得ることができる。単離方法は特に制限されるものではないが、液−液分配、各種クロマトグラフィー、再結晶化などの手法により好適に単離することができる。
【0023】
また、本発明において、上記一般式中のR〜Rが水素原子で、XおよびXがビニレン基である下記式、

で表されるチコリ酸(chicoric acid)であることが好ましい。チコリ酸は、ホコウエイ抽出物から定法により単離することもできるし、SYNTHETIC COMMUNICATIONS,28(4),737(1998)記載の方法等により合成することもできる。
【0024】
本発明において、ホコウエイ抽出物の配合量は、添加形態および投与形態によっても異なるが、外用剤の場合には、全組成物中0.0001〜90質量%配合することが好ましく、0.001〜50質量%配合することがより好ましく、0.001〜10質量%配合することがさらにより好ましい。また、経口投与剤の場合には、成人1日あたり0.001〜100gになるようにするのが好ましい。
【0025】
また、本発明の毛髪等強化因子産生促進剤には、さらに、ホコウエイ以外の植物抽出物を配合することができ、ショウキョウ、ニンジン、センブリおよびボタンピよりなる群から選ばれた1種以上の抽出物を配合することが好ましい。ホコウエイ抽出物または上記一般式(1)で表される骨格を有する化合物に加えて、かかる植物抽出物を配合することで、毛髪等強化因子産生促進効果をより高めることができる。
【0026】
本発明において、毛髪等強化因子としては、毛髪および/または毛包(以下、「毛髪等」とも称する)を強化する因子であれば限定されず、例えば、毛髪等の主要構成タンパク質あるいは角化関連タンパク質等が挙げられる。なお、毛髪と毛包は密接な関係があり、例えば、毛髪の太さと毛包の大きさは毛芽の発達期に働くsonic hedgehogの量による影響をともに受ける(「最新の毛髪化学」、p18、フレグランスジャーナル社(2003))。そのため、通常は、毛髪強化因子は、毛包強化因子ともなりえるものである。
【0027】
また、本発明においては、毛髪等強化因子が、レペチン(repetin)、トリコヒアリン(trichohyalin)およびインボルクリン(involucrin)よりなる群から選ばれた1種以上であることが好ましい。かかる毛髪等強化因子の産生を促進することにより、毛髪や毛包そのものをより硬くすることができ、ハリ・コシが強く抜けにくい毛髪や毛包とすることができる。また、裂毛、切毛、枝毛を防ぎ、キューティクルを整えるため、髪の艶をあげることが期待できる。
【0028】
本発明の毛髪等強化因子産生促進剤には、さらに必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧品や医薬品等に一般に用いられている保湿剤、油性成分、界面活性剤、ビタミン類、蛋白分解酵素、増粘剤、防腐剤、粉体、酸化防止剤、紫外線吸収剤、乳化剤、アルコール類、色素、水性成分、脂肪酸類、香料、キレート剤、pH調整剤、精製水等の添加成分を配合することができる。
【0029】
保湿剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール、ソルビット、マンニット等の糖アルコール、ヒアルロン酸塩、コンドロイチン硫酸塩、キトサン等の水溶性高分子、尿素、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸塩等が挙げられる。
【0030】
油性成分としては、例えば、大豆油、コメヌカ油、アボカド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ脂、ゴマ油、パーシック油、ヒマシ油、ヤシ油、ミンク油、牛脂、豚脂等の天然油脂、これらの天然油脂を水素添加して得られる硬化油及びミリスチン酸グリセリド、2−エチルヘキサン酸グリセリド等の合成グリセリド、ジグリセリド等の油脂類、ホホバ油、カルナウバロウ、鯨ロウ、ミツロウ、ラノリン等のロウ類、流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、スクワラン、プリスタン等の炭化水素類、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラノリン酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸類、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、コレステロール、2−ヘキシルデカノール、ホホバアルコール等の高級アルコール類、オクタン酸セチル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸デシル、イソステアリン酸コレステロール等のエステル類、精油類およびシリコーン油類が挙げられる。
【0031】
界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、ショ糖脂肪酸エステル、高級脂肪酸アルカノールアミド等の非イオン性界面活性剤、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを付加したアルキルエーテルカルボン酸塩又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル、アミノ酸型界面活性剤、リン酸エステル型界面活性剤、タウリン型界面活性剤、アマイドエーテルサルフェート型界面活性剤等の陰イオン性界面活性剤、カルボキシベタイン型、アミノカルボン酸、スルホベタイン型等の両性界面活性剤および4級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0032】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンK、ビタミンP、ビタミンU、カルニチン、フェルラ酸、γ−オリザノール、リポ酸、オロット酸及びその誘導体等が挙げられる。蛋白分解酵素としては、例えば、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン、カテプシン、パパイン、ブロメライン、フィシン及び細菌、酵母、カビ由来のプロテアーゼ等が挙げられる。
【0033】
増粘剤としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、カラギーナン、ゼラチン、キサンタンガム、ポリアクリル酸塩等の水溶性高分子化合物、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩が挙げられる。防腐剤としては、例えば、フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。粉体としては、例えば、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、シリカ、ベントナイト、バーミキュライト、亜鉛華、雲母、雲母チタン、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、ベンガラ、酸化鉄、群青等が挙げられる。その他の成分としては、香料、色素、殺菌剤等を挙げることができる。
【0034】
また、本発明の毛髪等強化因子産生促進剤は、他の成分を併用せずにホコウエイ抽出物だけで用いてもよいが、さらに脱毛防止、養毛・育毛効果を増強する目的で血行促進剤、局所刺激剤、角質溶解剤、抗脂漏剤、抗菌剤、抗炎症剤、毛包賦活剤、抗男性ホルモン剤、保湿剤等の他の成分と併用してもよい。
【0035】
さらに、本発明の毛髪等強化因子産生促進剤は、ホコウエイ抽出物および任意成分を組み合わせて、常法に従って製造することができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例に従い、詳細に説明する。
(ホコウエイ抽出物の調製例)
モウコタンポポ根(乾燥品)1kgに70%エタノール10Lを加えて2時間加熱還流抽出を行った。濾過により、必要に応じオリ(沈殿物)を除き、濾液を減圧濃縮し、その後凍結乾燥を行い、約270gのホコウエイ抽出物(ホコウエイ根抽出末)を得た。
【0037】
(水画分の調製例)
得られたホコウエイ抽出物200gに酢酸エチルおよび水を加え分配処理し、得られた水層部分にn−ブタノールを加え分配処理した。得られた水層部分を減圧濃縮し、水画分を得た。
【0038】
(メタノール画分の調製例)
得られた水画分170gを、DIAION HP20(三菱化学(株)製)を用いたカラムクロマトグラフィーに付し、メタノール溶出部分を濃縮し、水画分のメタノール画分5.5gを得た。
【0039】
(チコリ酸の調製例)
得られたメタノール画分360mgを下記条件でODS−AMおよびODSゲルを用いたカラムクロマトグラフィーに順次付することにより分離精製し、下記式で示すチコリ酸35mgを得た。
カラム:ODS S−343(15μm,20mm I.D.×250mm)
カラム温度 : 室温
移動相 : 0.1%HPO/MeOH(67:33)
目的ピークを確認後、MeOHで溶出
流速 : 3mL/min
検出器 : UV 254nm
【0040】
チコリ酸

【0041】
(毛髪等強化因子産生促進効果の評価)
指定の濃度の試験試料を含有したケラチノサイト基礎培地を使用して、正常ヒトケラチノサイトを、24時間培養した。培養後、トリプシン溶液を用いて細胞を剥離し、RNeasy mini Kit(Qiagen社)を用いてtotal RNAを抽出した。細胞は剥離させた後、溶解液を加え、ジルコニアビーズを用いて破壊した後、カラム処理を行った。DNase I 処理を実施し、得られたtotal RNAの吸光度をND−1000(NanoDrop社)を用いて測定し、各サンプルを100ng/μLに希釈した。希釈したtotal RNAを70℃で5分間インキュベートした後、氷中で急冷した。次に、total RNA 1000ngをTaqMan Reverse Transcription Reagents(ABI社)を用いてcDNAを合成した。
【0042】
Real Time−PCR
合成したcDNAを各種プライマーおよびTaqMan Universal PCR Master Mix (ABI社) を用い、Prism 7900HT sequence detection system(ABI社)によりmRNA発現量(dCt値)を求めた。
【0043】
mRNA発現量(dCt値)は、下記式、
dCt値(ΔCt値)=2^(−|A−B|)
(式中、Aはハウスキーピング遺伝子(GAPDH)のサイクル数(Ct値:Threshold Cycle)を示し、Bはターゲット遺伝子のサイクル数(Ct値:Threshold Cycle)を示す)で求めた。
【0044】
(実験例1)
試験試料として、ホコウエイ抽出物を使用し、毛髪等強化因子産生促進効果として、レペチン、トリコヒアリン、インボルクリンのmRNA発現量により評価した。mRNA発現量は、ホコウエイ抽出物を添加していないコントロールを1とした指数(mRNA発現量指数)で示し、数字が大きい程、毛髪等強化因子産生促進効果が高いことを示す。得られた結果を表1〜3および図1〜3に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
(実験例2)
試験試料として、チコリ酸を使用し、毛髪等強化因子産生促進効果として、レペチン、インボルクリンのmRNA発現量により評価した。mRNA発現量は、チコリ酸を添加していないコントロールを1とした指数(mRNA発現量指数)で示し、数字が大きい程、毛髪等強化因子産生促進効果が高いことを示す。得られた結果を表4、5および図4、5に示す。
【0049】
【表4】

【0050】
【表5】

【0051】
(実験例3)
試験試料として、ホコウエイ抽出物、ショウキョウ抽出液、ニンジン抽出液、センブリ抽出液、ボタンピ抽出液を混合した混合抽出液Aと、ショウキョウ抽出液、ニンジン抽出液、センブリ抽出液、ボタンピ抽出液を混合した混合抽出液Bをそれぞれ125μg/mL使用し、毛髪等強化因子産生促進効果として、レペチン、トリコヒアリン、インボルクリンのmRNA発現量により評価した。mRNA発現量は、混合抽出液AおよびBを添加していないコントロールを1とした指数(mRNA発現量指数)で示し、数字が大きい程、毛髪等強化因子産生促進効果が高いことを示す。得られた結果を表6および図6に示す。
【0052】
【表6】

【0053】
表1〜5および図1〜5の結果から、ホコウエイ抽出物およびチコリ酸は、いずれも高い毛髪等強化因子産生促進効果を示した。また、表6および図6の結果から、ホコウエイ抽出物とショウキョウ、ニンジン、センブリおよびボタンピよりなる群から選ばれた1種以上の抽出物を添加することにより、より高い毛髪等強化因子産生促進効果を示した。
【0054】
処方例1 育毛剤
上記調製例で得られたホコウエイ根抽出末を、50%エタノール水溶液に溶解し、2.7%ホコウエイ根抽出液(以下、「2.7%ホコウエイ根抽出液」と称す)を得た。これを使用し、下記表7記載の成分と混合し、ホコウエイ根抽出液配合育毛剤を調製した。
【0055】
【表7】

【0056】
上記育毛剤は、ホコウエイ根エキスを配合していない育毛剤と比較して、毛髪等強化因子産生促進効果により、毛髪のハリ・コシを強くし抜けにくくする育毛効果において優れるものであった。
【0057】
処方例2 トニック
下記表8の処方(質量%)に従い、まず、酢酸dl−α−トコフェロール、イソプロピルメチルフェノール、パントテニルアルコール、グリチルレチン酸、エタノール(99.5%)、ミリスチン酸オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸オクチル、香料、メントールを均一に混合した。次に、センブリ抽出液、ニンジン抽出液、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、エデト酸4ナトリウム、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(50E.O)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O)、2.7%ホコウエイ根抽出液、精製水を均一に混合した。最後に両者を混合し、濾過して充填することによりホコウエイ根抽出液配合液状型トニックを調製した。
【0058】
【表8】

【0059】
処方例3 トニック
下記表9の処方(質量%)に従い、まず、酢酸dl−α−トコフェロール、イソプロピルメチルフェノール、パントテニルアルコール、エタノール(99.5%)、香料、メントールを均一に混合した。次に、センブリ抽出液、ニンジン抽出液、ジプロピレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、エデト酸4ナトリウム、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、モノラウリン酸デカグリセリル、2.7%ホコウエイ根抽出液、精製水を均一に混合した。次に両者を混合し、濾過して原液とし、最後に、原液と噴射剤を充填処方に合わせて、缶に充填することによりホコウエイ根抽出液配合エアゾール型トニックを調製した。
【0060】
【表9】

【0061】
処方例2、3は、毛髪等強化因子産生促進効果により、毛髪のハリ・コシを強くし抜けにくくする育毛効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】ホコウエイ抽出物のレペチン産生量を示すグラフである。
【図2】ホコウエイ抽出物のトリコヒアリン産生量を示すグラフである。
【図3】ホコウエイ抽出物のインボルクリン産生量を示すグラフである。
【図4】チコリ酸のレペチン産生量を示すグラフである。
【図5】チコリ酸のインボルクリン産生量を示すグラフである。
【図6】混合抽出液AおよびBの毛髪および/または毛包強化因子産生量を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒲公英から得られる抽出物を有効成分とすることを特徴とする毛髪および/または毛包強化因子産生促進剤。
【請求項2】
下記一般式(1)、

(式中、R〜Rは、各々独立に、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示し、XおよびXは、各々独立に、エチレン基またはビニレン基を示す)で表される骨格を有する化合物を有効成分とすることを特徴とする毛髪および/または毛包強化因子産生促進剤。
【請求項3】
さらに、ショウキョウ、ニンジン、センブリおよびボタンピよりなる群から選ばれた1種以上の抽出物を配合してなる請求項1または2記載の毛髪および/または毛包強化因子産生促進剤。
【請求項4】
毛髪および/または毛包強化因子が、レペチン、トリコヒアリンおよびインボルクリンよりなる群から選ばれた1種以上である請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の毛髪および/または毛包強化因子産生促進剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−70496(P2010−70496A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239874(P2008−239874)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(308040638)ツムラライフサイエンス株式会社 (12)
【Fターム(参考)】