説明

毛髪のパーマ処理方法及びヘアコンディショナー

【課題】パーマ処理後の残臭を低減させる毛髪のパーマ処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、毛髪のシスチン結合をラクトンチオールで切断し、次いで、酸化剤で上記切断されたシスチン結合を再結合させ、その後、酸化亜鉛と有機酸水溶液を反応させてなる有機酸亜鉛水溶液で後処理することを特徴とする、毛髪のパーマ処理方法に係る。酸化亜鉛と有機酸水溶液を反応させてなる有機酸亜鉛水溶液で後処理することにより、パーマ処理後の残臭が低減した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に毛髪のパーマ処理方法に関するものであり、より特定的には、パーマ処理後の臭いを効率よく消すことができるように改良された毛髪のパーマ処理方法に関する。本発明はまたそのような方法に用いるヘアコンディショナーに関する。
【背景技術】
【0002】
パーマには、毛髪にウエーブを与えるパーマネントウエーブと毛髪をストレートにする縮毛矯正がある。毛髪の結合について説明すると、毛髪を構成するケラチンタンパク質は、図1に示すように、シスチン結合(SS結合)、イオン結合、水素結合、ペプチド結合などの結合を有する。シスチン結合は、ケラチンタンパク質に特有の結合であり、還元剤で切断され、酸化剤でもとの結合に戻る。イオン結合は、プラスの性質とマイナスの性質で引き合う結合である。水素結合は、水によって切断され、乾燥させると再結合する結合である。ペプチド結合は、アミノ酸同士をつなげ、タンパク質をつくる結合である。これらの結合のうち、シスチン結合はパーマで重要な役割を担っている。
【0003】
パーマの基本原理は、図2に示すように、1剤の還元作用でシスチン結合を切断し、2剤の酸化作用で切断されたシスチン結合を再結合することである。
【0004】
酸化剤には、臭素酸ナトリウム、過酸化水素が用いられる。パーマネントウエーブ用剤や縮毛矯正剤で使用される還元剤には、チオグリコール酸やシステインが使用されていたが、最近カラーブームとなり、カラー毛にこれらを用いてパーマをすると、髪にダメージを与える、またきれいにパーマがかからないとう問題が生じてきた。そこで、カラー毛に対応するパーマ剤として、チオグリコール酸、システイン以外の還元剤として、システアミン、チオグリセリン、ラクトンチオールが用いられてきた。特に、ラクトンチオールはpHが弱酸性領域で最もよくウエーブを形成し、ダメージが少ないというメリットがあり、多く使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ラクトンチオールは、施術時の拡散臭が強く、サロン内に臭いが広がるという問題点があった。また、髪に残臭が残り、臭気の点で不快な感じを周囲に与えるという問題点があった。
【0006】
この発明の目的は、上記問題点を解決するためになされたもので、ラクトンチオールを還元剤として用いたパーマ処理後の残臭の低減を図ることができるように改良された毛髪のパーマ処理方法を提供することにある。
【0007】
この発明の他の目的は、そのような毛髪のパーマ処理方法に用いるヘアコンディショナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、毛髪のシスチン結合をラクトンチオールで切断し、次いで、酸化剤で上記切断されたシスチン結合を再結合させ、その後、酸化亜鉛と有機酸水溶液を反応させてなる有機酸亜鉛水溶液で後処理することを特徴とする、毛髪のパーマ処理方法に係る。
【0009】
本発明によれば、酸化亜鉛と有機酸水溶液を反応させてなる有機酸亜鉛水溶液で後処理することにより、パーマ処理後の残臭が低減されることが見出された。
【0010】
上記ラクトンチオールは、ブチロラクトンチオールを用いるのが好ましい。ブチロラクトンチオールの分子量は、118.15であり、沸点は94℃/0.3kPaであり、蒸気圧は1.82Pa(25℃)である。
【0011】
有機酸亜鉛水溶液での後処理は、例えば、スプレーで、パーマ処理後の髪に噴霧することで行われる。パーマ処理後の残臭は、残存するラクトンチオールの臭いによるものであるが、これが、有機酸亜鉛水溶液での後処理により、低減した。そのメカニズムについては、定かではないが、ラクトンチオールが、有機酸亜鉛を触媒にして、蒸気圧の低い別の物質に変わったものと考えている。例えば、ラクトンチオールとして、ブチロラクトンチオールを用いた場合、次の[化1]に示す反応式のように、亜鉛の作用により、ブチロラクトンチオールが2分子近接し、メルカプト基の孤立電子対が、ラクトンのカルボニル炭素を攻撃し、ラクトン環が開き、2量体ができたものと考えている。2量体になると、臭いの素であるメルカプト基(−SH)の量が半減する、しかも分子量は、118.15×2=236.3となり、沸点はより高くなり、蒸気圧が低くなる。これらの作用が相乗して、臭いが減少したものと考えている。
【化1】

【0012】
上記酸化亜鉛は、直径50nm〜70nmの酸化亜鉛ナノ粒子を含んでもよい。酸化亜鉛ナノ粒子を用いることにより、残臭の軽減の効果は増すことが認められた。ナノ粒子を使うことにより、比表面積が大きくなり、上記触媒効果が増大するためと考えられる。
【0013】
一方、局法の酸化亜鉛を用いて有機酸亜鉛水溶液を作っても相当の効果は得られた。
【0014】
上記有機酸は、乳酸および/またはクエン酸を含むのが好ましい。これらは入手容易であり、人体に安全である。
【0015】
上記有機酸亜鉛水溶液は、酸化亜鉛を2〜5重量%含むのが好ましい。酸化亜鉛を2重量%以下にすると、望ましい効果が得られにくい。酸化亜鉛の溶解性、製造の面を考慮すると、5重量%以下にするのが好ましい。
【0016】
上記後処理工程は、約40℃で行う。パーマにブロー工程があるが、有機酸亜鉛水溶液で処理(トリートメント)し、40℃のブローを行うと、残臭の軽減の効果は増すことが認められた。上記反応が促進されるからと考えている。
【0017】
上記酸化亜鉛ナノ粒子を用いる場合は、直径50nm〜70nm(1ナノは10億分の1)の酸化亜鉛ナノ粒子を含むのが好ましい。超微粒子の酸化亜鉛は有機酸に良く分散することも利点である。
【0018】
この発明の他の局面に従うヘアコンディショナーは、酸化亜鉛と有機酸水溶液を反応させてなる有機酸亜鉛水溶液を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、酸化亜鉛と有機酸水溶液を反応させてなる有機酸亜鉛水溶液で後処理することにより、パーマ処理後の残臭が低減されることが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】毛髪の結合を示した図である。
【図2】パーマの原理を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
毛髪のシスチン結合をラクトンチオールで切断し、次いで、酸化剤で上記切断されたシスチン結合を再結合させる、毛髪のパーマ処理方法において、パーマ処理後の残臭を低減させるという目的を、未反応のラクトンチオールを、酸化亜鉛と有機酸水溶液を反応させてなる有機酸亜鉛水溶液で後処理することによって実現した。
【0022】
有機酸として、乳酸とクエン酸を選んだ場合、好ましい有機酸亜鉛水溶液の配合例は、表1の通りであることが見出された。
【表1】

【実施例1】
【0023】
下記表2に示す配合例で、有機酸亜鉛水溶液を作成した。これを消臭剤として、スプレー容器に充填した。次に毛髪の毛束をカップに入れた。毛束にブチロラクトンチオールのパーマ用薬剤をスポイドを用いて、約1g塗布した。その後、スプレー容器に入れた上記配合例の有機酸亜鉛水溶液をワンプッシュ(0.3〜0.4g)、毛束に噴霧し、消臭剤を塗布した。蓋をして、10分放置した。消臭剤塗布直後のカップの臭いを嗅いで、消臭度を評価した。1〜5点で採点した(1:無臭〜5:悪臭)。消臭剤を使用しないときの臭いを5点として、相対評価した。
【0024】
その結果、評価は、2.5だった。
【表2】

【実施例2】
【0025】
本実施例は、本発明に係る消臭剤をヘアコンディショナーに組み込んだものである。配合例を表3に示す。B相にCを加え、80℃まで攪拌混合した。A相を80℃まで攪拌混合した。80℃でホモミキサー(5000rpm)で攪拌しながら、Cを加えた上記B相に、A相をゆっくり添加した。全て添加したら、80℃のまま、5分間攪拌を続けた。その後、攪拌しながら室温まで冷却を行った。得られたヘアコンディショナーは、消臭剤としての機能を果たすとともに、ペリセアの高い浸透性とダメージ補修機能により、毛髪がしっとりと纏まった。
【表3】

【0026】
上記実施例では、有機酸として、乳酸、クエン酸を用いた場合を例示したが、この発明はこれに限られるものでなく、グルコン酸、酢酸、酒石酸、りんご酸等も使用することができる。
【0027】
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、パーマ処理後の残臭の低減を図ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪のシスチン結合をラクトンチオールで切断し、次いで、酸化剤で上記切断されたシスチン結合を再結合させ、その後、酸化亜鉛と有機酸水溶液を反応させてなる有機酸亜鉛水溶液で後処理することを特徴とする、毛髪のパーマ処理方法。
【請求項2】
前記後処理は、前記有機酸亜鉛水溶液を充填したスプレーを用いて、毛髪に向けて噴霧することを含む請求項1に記載の毛髪のパーマ処理方法。
【請求項3】
前記後処理は、前記スプレーにより噴霧された毛髪を約40℃に加温する工程をさらに含む、請求項2に記載の毛髪のパーマ処理方法。
【請求項4】
前記有機酸亜鉛水溶液は、酸化亜鉛を2〜5重量%含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の毛髪のパーマ処理方法。
【請求項5】
酸化亜鉛と有機酸水溶液を反応させてなる有機酸亜鉛水溶液を含む、ヘアコンディショナー。
【請求項6】
前記酸化亜鉛は、直径50nm〜70nmの酸化亜鉛ナノ粒子を含む請求項5に記載のヘアコンディショナー。
【請求項7】
前記有機酸は、乳酸および/またはクエン酸を含む、請求項5又は6に記載のヘアコンディショナー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−236790(P2012−236790A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106044(P2011−106044)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(505172178)株式会社シガドライウィザース (9)
【Fターム(参考)】