説明

毛髪のリラクシングまたは直毛化方法

【課題】従来の方法と同等に有効である一方で、より安全な毛髪の直毛化もしくはリラクシング方法を提供する。
【解決手段】(a)約8.0乃至約10.5のpHを有するアルカリ組成物を毛髪と接触させることにより毛髪を予備アルカリ化して予備アルカリ化済み毛髪を形成する工程;(b)任意の、前記予備アルカリ化済み毛髪からアルカリ組成物をすすぎ落す工程;(c)(i)約0.1乃至約50重量%の少なくとも一つの弱い非水酸化物塩基;及び(ii)100%までの残量の化粧品として許容される媒質を含む、毛髪の直毛化/リラクシング組成物を準備する工程(全ての重量は毛髪の直毛化/リラクシング組成物の重量に基づく);(d)毛髪を、毛髪の直毛化/リラクシング組成物と接触させて処理済み毛髪を形成する工程;(e)任意の、前記処理済み毛髪から毛髪の直毛化/リラクシング組成物をすすぎ落す工程;(f)任意の、前記処理済み毛髪を不揮発性油で処理する工程;(g)熱と物理的に毛髪を滑らかにする手段との組み合わせを用いて前記処理済み毛髪を滑らかにする工程;を含む、毛髪の直毛化またはリラクシング方法を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
毛髪の直毛化または毛髪のリラクシングのための製品は、より真っ直ぐな、より扱いやすい毛髪を望む人々向けに50年間に亘って市販されている。市販品で最も手に入り易い毛髪リラクシング剤は、毛髪の中の結合を破壊する強い水酸化物塩基を含む。
【背景技術】
【0002】
アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム及び水酸化リチウム等のみに基づく市販の製品が、カールした/縮れた毛髪を直毛化するために典型的に使用される。主に四つの異なるタイプのアルカリ金属水酸化物毛髪直毛化剤:水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムが使用されている。直毛化製品は、通常は迅速に適用され、毛髪に留まることができるのは非常に限られた時間のみである。こうした製品のアルカリ度のため、この製品が適当な時点で毛髪からすすぎ落されなかった場合には、毛髪には損傷を、並びに頭皮及び毛髪周辺の領域には化学火傷を生じうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、従来の方法と同等に有効である一方で、より安全な毛髪の直毛化もしくはリラクシング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下の工程:
(a)約8.5乃至約10.5のpHを有するアルカリ組成物を毛髪と接触させることにより毛髪を予備アルカリ化して予備アルカリ化済み毛髪を形成する工程;
(b)前記予備アルカリ化済み毛髪に、
(i)約0.1乃至約50重量%の少なくとも一つの弱い非水酸化物塩基;及び
(ii)100%までの残量の化粧品として許容される媒質
を含む、毛髪の直毛化/リラクシング組成物を適用する工程;
(c)任意の、毛髪の直毛化/リラクシング組成物を毛髪からすすぎ落す工程;
(d)任意の、前記の処理を施した毛髪を不揮発性油と接触させて処理済み毛髪を形成する工程;及び
(g)熱と物理的に毛髪を滑らかにする手段との組み合わせを用いて前記処理済み毛髪を滑らかにする工程;
を含む毛髪の直毛化もしくはリラクシング方法に関する。
【0005】
成分の量及び/又は反応条件を表す、操作例にある以外の全ての数も、特記のない限りは全ての場合において「約」なる語によって変更されたものと理解される。
【0006】
驚くべきことに、本発明の方法を利用することにより、毛髪の直毛化/リラクシングが、使用者の皮膚及び毛髪にとって従来の毛髪の直毛化/リラクシング方法よりも害の少ない方式で達成可能であることが判明した。
【0007】
多量の水酸化物を使用する従来の製品は、前記製品中の多量の水酸化物の使用のために皮膚刺激並びに毛髪自体への損傷を引き起こしがちである。しかしながら、毛髪をまず予備アルカリ化する工程、これに次ぐ毛髪を弱い非水酸化物塩基製品で処理する工程、及びその後の熱と物理的に毛髪を滑らかにする手段との組み合わせを使用することにより毛髪を滑らかにする工程によって、皮膚と毛髪とのいずれにとってもより害の少ない方式で十分な毛髪の直毛化/リラクシングを達成可能である。
【0008】
本発明の予備アルカリ化工程は、約8.0乃至約10.5、好ましくは約8.5乃至約9.5の範囲のpHを有するアルカリ組成物の使用を含む。アルカリ水酸化物であるか非水酸化物であるかによらず、上述のpH範囲を有するアルカリ組成物の生成をもたらす限りにおいては、従来のあらゆる塩基を使用してよい。使用される従来の塩基の正確な量は、選択される特定の塩基によるであろう。いったん毛髪が予備アルカリ化されれば、任意にアルカリ組成物をすすぎ落してよい。
【0009】
予備アルカリ化工程の目的は、毛髪のキューティクルを開き、これによってその後非水酸化物塩基が毛髪により浸透しやすくなるようにすることである。これは、ひいては毛髪の直毛化/リラクシング方法をより有効且つより時間のかからないものにする。
【0010】
アルカリ組成物は、あらゆる適当な形態で使用してよい。その例には、以下に限定されるものではないが、シャンプー、コンディショナー、または一般的なアルカリ溶液が含まれる。特に好ましい実施態様では、アルカリ組成物は、毛髪の予備アルカリ化と清浄化とを同時に促進するシャンプーの形態をとる。
【0011】
本発明における使用のために適当な弱い非水酸化物塩基は、約0乃至15、好ましくは約1乃至約14、さらに好ましくは約2乃至約13のpKaを有する塩基である。これらは、弱い有機塩基及び弱い無機塩基から選択してよい。
【0012】
弱い有機塩基は、水中で完全には分離しない窒素含有塩基を一般的に含む。その例には、以下に限定されるものではないが、エチルアミン、エチレンアミン、エタノールアミン、キノリン、アニリン、及び環状アミンが含まれる。
【0013】
一つの窒素を有する五員環の例には、以下に限定されるものではないが、ピロリン、ピロール、ピロリジン、及びこれらの誘導体が含まれる。
【0014】
二つの窒素を有する五員環の例には、以下に限定されるものではないが、ピラゾリン、イミダゾリジン、イミダゾール、イミダゾリン、及びこれらの誘導体が含まれる。
【0015】
一つの窒素を有する六員環の例には、以下に限定されるものではないが、モルホリン、ピリジン、ピペリジン、及びこれらの誘導体が含まれる。
【0016】
二つの窒素を有する六員環の例には、以下に限定されるものではないが、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、及びこれらの誘導体が含まれる。
【0017】
三つの窒素を有する六員環の例には、以下に限定されるものではないが、トリアジン及びその誘導体が含まれる。
【0018】
特に好ましい弱い有機塩基には、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、イミダゾール、ピロール、及びこれらの混合物が含まれる。
【0019】
弱い無機塩基は、一般的にアルカリ金属ホスフェート及びカーボネート、例えばリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、及びこれらの誘導体を含む。
【0020】
弱い無機塩基はまた、アルカリ金属のカルボン酸塩、例えば酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、クエン酸ナトリウム、及びクエン酸カリウム、並びにこれらの誘導体を含んでよい。
【0021】
特に好ましい弱い無機塩基には、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、及び炭酸ナトリウムが含まれる。
【0022】
弱い非水酸化物塩基は、毛髪の直毛化/リラクシング組成物中に、典型的には組成物全重量に基づいて約0.1乃至約50重量%、好ましくは約0.1乃至約30重量%、好ましくは約0.1乃至約10重量%の量で使用される。
【0023】
本明細書中で使用される「化粧品として許容される」なる語は、当業者には既知であり、例えば水及び/又は少なくとも一つの有機溶媒を含んでよい。
【0024】
本明細書中に開示される毛髪の直毛化/リラクシング組成物は、毛髪をできる限り固く保持するために、例えば増粘クリームの形態であってよい。これらのクリームは、例えばステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリコール、自己乳化性ワックス、脂肪アルコール、鉱物油、及びワセリンに基づく、「重い」エマルションの形態で製造される。
【0025】
毛髪を互いに「粘着」させ、これらをリーブイン時間中に平滑な位置に保持するカルボキシビニルポリマーもしくはコポリマー等の増粘剤を含む液体またはゲルもまた使用してよい。
【0026】
本明細書中に開示される毛髪の直毛化/リラクシング組成物は、例えば溶解、分散、もしくは微小分散形態のシリコーン、非イオン性、アニオン性、カチオン性、及び両性の界面活性剤、セラミド、グリコセラミド、及びシュードセラミド、ビタミン及びパンテノールを含むプロビタミン、セラミド、グリコセラミド、及びシュードセラミド以外のワックス、水溶性及び脂溶性のシリコーンベース及び非シリコーンベースのサンスクリーン、真珠光沢剤、乳白剤、金属イオン封鎖剤、可塑剤、可溶化剤、酸性化剤、無機及び有機の増粘剤、酸化防止剤、ヒドロキシ酸、浸透剤、香料、及び保存料等から選択される少なくとも一つのアジュバントを更に含んでよい。
【0027】
本発明の組成物中に界面活性剤が使用される場合には、前記組成物はシャンプーとして使用してよい。同様に、本発明の組成物をヘアコンディショナーとして使用しようとするならば、その毛髪のトリートメント特性をいっそう改善するために、該組成物に様々なタイプのコンディショニグ剤を添加することができる。
【0028】
上述の毛髪の直毛化/リラクシング組成物で毛髪を滑らかにする工程は、熱と物理的に毛髪を滑らかにする手段との組み合わせの使用を含む。滑らかさをもたらすために必要な熱は少なくとも50℃、好ましくは少なくとも75℃、好ましくは少なくとも100℃であるべきである。使用される熱の正確な量は、組成物中に存在する非水酸化物化合物の濃度によるであろう。この熱は、いかなる適当な源、例えばヘアドライヤー又はホット/ストレートアイロンから生じるものであってよい。
【0029】
物理的に毛髪を滑らかにする手段は、物理的に毛髪を滑らかにしうるあらゆる装置、例えばヘアブラシまたは櫛であってよい。一実施態様では、毛髪を滑らかにする手段は熱発生源、例えばホット/ストレートアイロンの役割も果たす。
【0030】
本発明の一実施態様によれば、(a)約8.5乃至約10.5のpHを有するアルカリ組成物を毛髪と接触させることにより毛髪を予備アルカリ化して予備アルカリ化済み毛髪を形成する工程;(b)前記予備アルカリ化済み毛髪を、前述の毛髪の直毛化/リラクシング組成物と接触させて処理済み毛髪を形成する工程;(c)任意の、前記処理済み毛髪から毛髪の直毛化/リラクシング組成物を、その毛髪との60分間未満、好ましくは40分間未満、好ましくは30分間未満、好ましくは20分間未満の期間に亘る接触の後にすすぎ落す工程;(d)任意の、前記処理済み毛髪を、植物、動物、鉱物、及び合成の油から選択される不揮発性油で処理する工程;及び(e)熱と物理的に毛髪を滑らかにする手段との組み合わせを用いて前記処理済み毛髪を滑らかにする工程;を含む毛髪の直毛化またはリラクシングのための方法が提供される。
【0031】
上述の通り、毛髪の直毛化/リラクシング組成物は毛髪上に残されても濯ぎ落とされてもよい。不揮発性油については、使用されるならば、これは好ましくは毛髪上に残留する。
【0032】
本発明の別の実施態様によれば、(a)約8.5乃至約10.5のpHを有するアルカリ組成物を毛髪と接触させることにより毛髪を予備アルカリ化して予備アルカリ化済み毛髪を形成する工程;(b)任意の、前記処理済み毛髪を、植物、動物、鉱物、及び合成の油から選択される不揮発性油と接触させる工程;(c)熱と物理的に毛髪を滑らかにする手段との組み合わせを用いて前記処理済み毛髪を滑らかにする工程;(d)滑らかになった毛髪と毛髪の直毛化/リラクシング組成物とを接触させて処理済み毛髪を形成する工程;(e)任意の、前記処理済み毛髪から毛髪の直毛化/リラクシング組成物を、その毛髪との60分間未満、好ましくは40分間未満、好ましくは30分間未満、好ましくは20分間未満の期間に亘る接触の後にすすぎ落す工程;及び(f)任意の、熱と物理的に毛髪を滑らかにする手段との組み合わせを用いて前記処理済み毛髪を滑らかにする工程;を含む毛髪の直毛化またはリラクシングのための方法が提供される。
【0033】
毛髪と不揮発性油とを接触させることからなる工程;及び毛髪を滑らかにすることからなる工程は、毛髪の直毛化/リラクシング組成物の適用の前及び/または後に実施して良いことに留意すべきである。
【0034】
市販の毛髪の直毛化またはリラクシング組成物中には、毛髪を熱なしに十分に直毛化し/リラクシングさせるためには、高度苛性の水酸化物化合物、例えば水酸化ナトリウムが使用されねばならない。しかしながら、本発明においては、熱と物理的に毛髪を滑らかにすることのできる装置との組み合わせを使用することにより達成される相乗効果によって、より苛性が低く、且つ濃度の低い非水酸化物化合物を使用することができる。理論に束縛されることは意図しないが、毛髪の直毛化/リラクシングにおける相乗作用は、誘発された超収縮、及び熱と物理的平滑化との組み合わせによって引き起こされる毛髪のタンパク質の変性によって実現される。
【0035】
更にまた、より苛性の低く且つより濃度の低い非水酸化物化合物の使用のため、本発明の毛髪の直毛化/リラクシング組成物を使用する場合はバリア物質を要しない。市販の毛髪のリラクシング製品は、しばしばヘアスタイリストが頭皮周辺の皮膚及び耳の周りの領域にワセリンなどのバリア物質を適用することを要する。バリア物質は、毛髪のリラクシング製品が皮膚と接触した際に皮膚が刺激を受けることを避けるために使用される。バリア物質は、本発明の方法を利用する場合は、非水酸化物化合物の濃度及び刺激性が格段に低いために必要とされない。
【0036】
本発明は、その全てが詳説の目的のみを企図するものであって、本発明の範囲をどのようにも過度に制限することを意図しない、以下の実施例からより良く理解されるであろう。
【実施例】
【0037】
直毛化効率(SE%)を、下式を用いて算出した。
%SE=(A/B)×100
式中A=最終実測長(cm)、B=毛髪の初期長(10cm)(真っ直ぐな場合の毛髪の全長)。
【0038】
(実施例1)
この実施例では、縮れた毛髪を従来のシャンプー(15%のSLES、pH4.34)またはアルカリシャンプー(15%のSLES、pH9.65)で2分間に亘って予備処理し、10秒間濯ぎ、ブロット乾燥させ、その後2%のMEA溶液に浸け(室温にて10分間または50℃にて10分間)、ブロット乾燥させ、その後400°Fのストレートアイロンで直毛化させた(試行3回、各6秒間)。その後毛髪をシャンプーし、%SEを上述のように決定した。
【0039】
【表1】

結果は、毛髪を予備アルカリ化し、室温でMEAを用いて毛髪を処理することにより、高温でMEAを用いて毛髪を処理する場合と同程度に%SEが改善されることを示した。
【0040】
(実施例2)
実施例1のプロトコルに従って、縮れた毛髪を予備アルカリ化し、次いで室温にてピロリジンの様々な溶液で処理した。%SEは以下の通りである。
【0041】
【表2】

結果は環状アミンの濃度が増大するにつれて%SEもまた増大することを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)8.0乃至10.5のpHを有するシャンプー及びコンディショナーから選択されるアルカリ組成物を毛髪と接触させることにより毛髪を予備アルカリ化して予備アルカリ化済み毛髪を形成する工程;
(b)(i)0.1乃至50重量%の、13以下のpKaを有する少なくとも一つの弱い非水酸化物塩基;及び
(ii)100%までの残量の化粧品として許容される媒質
を含む、毛髪の直毛化組成物を準備する工程(全ての重量は毛髪の直毛化組成物の重量に基づく);
(c)毛髪を、毛髪の直毛化組成物と接触させて処理済み毛髪を形成する工程;
(d)熱と物理的に毛髪を滑らかにする手段との組み合わせを用いて前記処理済み毛髪を滑らかにする工程;
を含む、毛髪の直毛化方法であって、
前記予備アルカリ化済み毛髪からアルカリ組成物をすすぎ落す工程を前記工程(a)の後に実施する、又は実施せず、
前記処理済み毛髪から毛髪の直毛化組成物をすすぎ落す工程を前記工程(c)の後に実施する、又は実施せず、
前記処理済み毛髪を不揮発性油で処理する工程を前記工程(d)の前に実施する、又は実施せず、
前記毛髪の直毛化組成物が、還元剤も酸化剤も含まず、
前記少なくとも一つの弱い非水酸化物塩基が組成物中に存在する毛髪直毛化剤であり、且つ
毛髪を直毛化するために酸化剤を適用する工程を含まない、方法。

【公開番号】特開2013−32388(P2013−32388A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−243571(P2012−243571)
【出願日】平成24年11月5日(2012.11.5)
【分割の表示】特願2008−64725(P2008−64725)の分割
【原出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】