説明

毛髪トリートメント組成物

本発明はケラチン繊維を着色する永久染毛剤、特にBlack MyrobalanまたはChebulic Myrobalanとしても知られるTerminalia Chebulaの抽出物を主成分とする永久染毛剤に関する。この植物はインド/ネパールから中国南西部、スリランカ、マレーシアおよびベトナムにわたる南アジアに自生する樹高30mの常緑樹であり、長さ2から4.5cmで縦方向の畝をもつ核果のような実を結ぶ。非永久染毛剤は、細孔から毛幹内に拡散することなく毛幹を被覆するだけの10オングストロームよりも長い活性種を含むか、または、細孔から毛幹内に拡散できるが同じ程度に散逸する10オングストローム以下の活性種を含む。永久染毛剤は、10オングストローム以下の長さで細孔から毛幹内に拡散でき、毛幹内部に入った後、別の種と反応して10オングストロームよりも長い生成物を形成するかまたは毛幹の内面に結合しこれによって毛幹内に閉じ込められる活性種を含む。従って本発明は、ケラチン繊維を着色するための永久染毛剤を提供する。該永久染毛剤は、(d)鉄(II)塩または鉄(III)塩の溶液、(e)Terminalia Chebulaの水性抽出物の溶液、および(f)ポリフェノール、ポリフェノールの分解生成物、その誘導体およびポリフェノールの混合物から成る群から選択された少なくとも1種類の発色剤の溶液を含み、鉄(II)塩または鉄(III)塩とポリフェノール、ポリフェノールの分解生成物およびその誘導体から成る群から選択された少なくとも1種類の発色剤とが反応して錯体を形成し、および、ポリフェノール、ポリフェノールの分解生成物、その誘導体およびポリフェノールの混合物はTerminalia Chebulaの水性抽出物の形態でない。また、かかる永久染毛剤を使用するケラチン繊維の着色方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケラチン繊維を着色する永久染毛剤、特に黒ミロバランまたはハリタキとしても知られるテルミナリア・ケブラ(Terminalia Chebula)の抽出物を主成分とする永久染毛剤に関する。この植物はインド/ネパールから中国南西部、スリランカ、マレーシアおよびベトナムにわたる南アジアに自生する樹高30mの常緑樹であり、長さ2から4.5cmで縦方向の畝をもつ核果のような実を結ぶ。
【背景技術】
【0002】
非永久染毛剤は、細孔から毛幹内に拡散することなく毛幹を被覆するだけの10オングストロームよりも長い活性種を含むか、または、細孔から毛幹内に拡散できるが同じ程度に散逸する10オングストローム以下の活性種を含む。永久染毛剤は、10オングストローム以下の長さで細孔から毛幹内に拡散でき、毛幹内部に入った後、別の種と反応して10オングストロームよりも長い生成物を形成するかまたは毛幹の内面に結合しこれによって毛幹内に閉じ込められる活性種を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はケラチン繊維を着色するための天然由来物質を主成分とする永久染毛剤に関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
発明の第一の目的において、ケラチン繊維を着色するための永久染毛剤が提供される。該永久染毛剤は、
(a)鉄(II)塩または鉄(III)塩の溶液、
(b)Terminalia Chebulaの水性抽出物の溶液、および
(c)ポリフェノール、ポリフェノールの分解生成物、その誘導体およびポリフェノールの混合物から成る群から選択された少なくとも1種類の発色剤の溶液、
を含み、
鉄(II)塩または鉄(III)塩とポリフェノール、ポリフェノールの分解生成物およびその誘導体から成る群から選択された少なくとも1種類の発色剤とが反応して錯体を形成し、および、
ポリフェノール、ポリフェノールの分解生成物、その誘導体およびポリフェノールの混合物はTerminalia Chebulaの水性抽出物の形態でない。
【0005】
Terminalia Chebulaの水性抽出物の成分の少なくともいくつかは鉄(II)塩または鉄(III)塩と反応して錯体を形成すると考えられている。従って、最初に溶液(a)を毛幹に塗布して毛幹内に拡散させ、次いで溶液(b)または(c)で毛幹を処理すると、毛幹内でTerminalia Chebulaの水性抽出物の成分の少なくともいくつかと、ポリフェノール、ポリフェノールの分解生成物およびその誘導体と間で錯体が形成され、これらもまた毛幹内に拡散し、これによって、既に存在していた鉄(II)塩または鉄(III)塩は毛幹外に散逸できない極めて大きい錯体を形成し、その結果として毛幹が永久染色される。もちろん溶液類による処理の順序を逆転させ、最初に溶液(b)および(c)を毛幹に塗布し、次いで溶液(a)で毛幹を処理してもよい。
【0006】
ポリフェノールは、緑茶の水性抽出物、好ましくは80重量%超のポリフェノールと80重量%超のカテキンと1重量%未満のカフェインを含む緑茶の水性抽出物の1種以上によって提供されるエピガロカテキン、エピガロカテキン没食子酸塩、メチル没食子酸塩、没食子酸、および、それらの混合物から成る群から選択され得る。
【0007】
“カテキン”という用語は、カテキン、ガロカテキン、カテキン没食子酸塩、ガロカテキン没食子酸塩、、エピカテキン、エピガロカテキン、エピガロカテキン没食子酸塩、およびそれらの混合物から成る群から選択されたいずれかのカテキン(類)を意味する。
【0008】
好ましくは溶液(a)および(b)のpHが1から7、好ましくは3から7、最も好ましくは6から7の範囲であり、その理由は、このようなpHが皮膚および毛髪に適合し易いからである。
【0009】
1つの実施態様において、鉄塩は鉄(II)塩である。
【0010】
発明の第二の目的において、第一の目的の永久染毛剤を使用するケラチン繊維の着色方法が提供される。方法は、
(a)溶液(b)と(c)とを混合しこれにより溶液(d)を調製する段階、
(b)溶液(a)を毛髪に塗布する段階、および
(c)溶液(d)を毛髪に塗布する段階を含み、
段階(a)と(b)はどちらの順序で行ってもよい。
【0011】
好ましくは段階(b)が段階(c)に先行する。
【0012】
方法は好ましくは、段階(b)と(c)との間に毛髪を水ですすぐ追加段階を含む。これは、毛幹の外面に錯体が形成されて溶液(a)または(d)の毛幹内拡散を部分的に妨害しその結果として永久染毛のレベルが低下することを防止すると考えられる。
【0013】
好ましくは段階(b)または段階(c)の一方または双方を室温で行う。毛髪を室温で処理するときに最良結果が得られることが観察された。1つの利点は本発明方法が加熱を要する方法よりも毛髪を傷めないことである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
材料
Amigel(ブドウ糖富化培地中のSclerotium rolfsiiの発酵によって得られた分子量5から6Mドルトンのブドウ糖のホモポリマー)はAlban Muller Internationalから購入した。増粘剤Sylvaclear WF1500はArizona Chemicals(USA)から入手し、Glydant Plus(1,3−ジメチロイル−5,5−ジメチルヒダントインと3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメートとの混合物)はLonzaから入手し、Carbopol ETD2020(アクリレート/C10−30アルキルアクリレートクロスポリマー)はLubrizolから入手した。カフェインはSigma−Aldrich Companyから入手し、Terminalia Chebulaの水性抽出物はSiris Impex(Sirinagar,Vijayawada,Andhra Pradesh,INDIA,520007)から入手した。一連の緑茶すなわち、Sunphenon 40R(40%超のポリフェノール、30%超のカテキンおよび10%未満のカフェインを含む)、Sunphenon 90M(80%超のポリフェノール、75%超のカテキンおよび6%未満のカフェインを含む)、および、Sunphenon 90LB(80%超のポリフェノール、80%超のカテキンおよび1%未満のカフェインを含む)はTaiyo Kagaku Company Limitedから入手した。人毛標本(NW 10/2G RND(天然白髪、2グラム/10インチnet round)はInternational Hair Importers & Products Incorporated(Glendale,New York,USA,11385)から購入した。
【0015】
毛髪カラースケール
以下の主観的測定スケールを使用した。
【0016】
【表1】

【0017】
配合物
成分調合型活性剤ゲル配合物(重量):
【0018】
【表2】

成分調合型活性剤ゲルは成分A、BおよびCをそれぞれ成分重量比5:2:3で合せることによって室温で調製した。
【0019】
成分調合型発色剤ゲル配合物(重量):
【0020】
【表3】

成分Cは溶液を60℃で45分間加熱し、次に溶液を高速で遠心することによって調製した。成分調合型発色剤ゲルは成分A、BおよびCを重量比3.3:13.3:33.3で合せることによって室温で調製した。
【0021】
一体型活性剤ゲル配合物(重量%):
【0022】
【表4】

一体型活性剤ゲルは全部の成分を反応容器に導入し混練することによって室温で調製した。
【0023】
一体型発色剤ゲル配合物(重量%):
【0024】
【表5】

一体型発色剤ゲルは全部の成分を反応容器に導入し混練することによって室温で調製した。
【実施例】
【0025】
実施例1から5
実施例1:成分調合型活性剤ゲルだけを毛髪標本に塗布した。
【0026】
実施例2:成分調合型発色剤ゲルだけを毛髪標本に塗布した。
【0027】
実施例3:一体型活性剤ゲルと一体型発色剤ゲルとを毛髪標本に塗布した。
【0028】
実施例4:成分調合型活性剤ゲルと一体型発色剤ゲルとを毛髪標本に塗布した。
【0029】
実施例5:成分調合型活性剤ゲルと成分調合型発色剤ゲルとを毛髪標本に塗布した。
【0030】
ゲル(成分調合型または一体型)は以下のようにして室温で毛髪に塗布した。
(A)活性剤ゲルを塗布して90分間維持し、次に水で洗い落とし、次に、
(B)発色剤ゲルを塗布して60分間維持し、次に水で洗い落とした。
【0031】
結果を以下の表1にまとめる。この表から、成分調合型活性剤ゲルと成分調合型発色剤ゲルとの組合せが最良結果を与えたことが判明する。
【0032】
【表6】

【0033】
実施例6
毛髪標本に以下の塗布方法を使用し実施例5の手順で試験した。
(A)活性剤ゲルを塗布して60分間維持し、次に水で洗い落とし、次に、
(B)発色剤ゲルを塗布して60分間維持し、次に水で洗い落とした。
【0034】
段階(A)および(B)のおのおので塗布温度を室温、35、45および60℃に変更した。結果を以下の表2にまとめる。この表から、段階(A)および(B)の双方を室温で行ったときに最良結果が観察されることが判明する。
【0035】
【表7】

【0036】
実施例7および8
Terminalia Chebula抽出物に代えてエピガロカテキン没食子酸塩を使用し実施例5および実施例4の手順で試験したものがそれぞれ実施例7および8である。毛髪カラースケール値によれば実施例7および8の結果はそれぞれ7および5であった。したがってこれらの結果は上記の実施例1から5で得られた結果の有効性を証明する。
【0037】
実施例9から15
これらの実施例は、活性剤ゲルが成分調合型活性剤ゲルの成分Aであり、発色剤ゲルが重量比1:2の成分調合型発色剤ゲルの成分Cと2w/w%のポリフェノール水溶液とから構成され、実施例6に示した方法に従って試験した。塩酸を用いて発色剤ゲルのpHを3.5に調整した。結果を以下の表3にまとめる。この表から、ポリフェノールの種類に伴って結果が変ることが判明する。
【0038】
【表8】

【0039】
実施例16から19
これらの実施例は、活性剤ゲルが成分調合型活性剤ゲルの成分Aであり、発色剤ゲルが、紅茶溶液(実施例16)であるか、または、重量比3:1の紅茶溶液と成分調合型発色剤ゲルの成分C(実施例17)もしくは2w/w%のSunphenon 90LBの水溶液(実施例18)もしくは2w/w%のSunphenon 90Mの水溶液(実施例19)から構成され、実施例6に示した方法に従って試験した。結果を以下の表4にまとめる。この表から、Terminalia Chebulaに代えて紅茶を使用すると毛髪カラースケール値に基づく色レベルが上がることが判明する。紅茶溶液はLipton Breakfast Teaの3つのバッグを200mlの熱湯に温浸し、次に温浸液をさらに20分間沸騰させることによって調製した。
【0040】
【表9】

【0041】
実施例20
この実施例は、カフェインの2重量%水溶液を未改質の発色剤ゲルに添加することによって全重量の0.28%の濃度のカフェインを含有するように改質した発色剤ゲルを使用して実施例14の手順で試験した。結果は毛髪カラースケール値の7.5であり、したがってカフェインの存在下で良好な着色が観察された。
【0042】
実施例21から24
これらの実施例は実施例6に示した方法に従って試験した。活性剤ゲルは、成分Aが3.76w/w%のFeCl.4HO水溶液であり成分Cが1.12gのプロピオン酸と1.68gのKOHだけであるか(改質した成分調合型活性剤ゲル配合物;pH5)、または、一体型活性剤ゲルであり、発色剤ゲルは、一体型発色剤ゲル(pH7から8を有している)であるかまたは実施例5の発色剤ゲル(pH3.5を有している)である。すなわち、
実施例21:改質した成分調合型活性剤ゲルと一体型発色剤ゲルとの組合せ
実施例22:改質した成分調合型活性剤ゲルと実施例15の発色剤ゲルとの組合せ
実施例23:一体型活性剤ゲルと一体型発色剤ゲルとの組合せ
実施例24:一体型活性剤ゲルと実施例15の発色剤ゲルとの組合せ。
【0043】
毛髪カラースケール値を以下の表5にまとめる。この表から、改質した成分調合型活性剤ゲルを実施例15の発色剤ゲルと組合せたときに毛髪カラースケール値で最良のカラーレベルが観察されることが判明する。実施例22は、発色剤ゲルが酸性pHを有しているときのほうが高度な着色が観察されることを示唆する。
【0044】
【表10】

【0045】
実施例25から28
これらの実施例はメチル没食子酸塩に代えてSunphenon 90LBを使用し実施例21から24の手順で試験した。すなわち、
実施例25:改質した成分調合型活性剤ゲル(上記の実施例21参照)と一体型発色剤ゲル(Sunphenon 90LBで改質)との組合せ
実施例26:改質した成分調合型活性剤ゲルと実施例14の発色剤ゲルとの組合せ
実施例27:一体型活性剤ゲルと一体型発色剤ゲル(Sunphenon 90LBで改質)との組合せ
実施例28:一体型活性剤ゲルと実施例14の発色剤ゲルとの組合せ。
【0046】
毛髪カラースケール値を以下の表6にまとめる。この表から、改質した成分調合型活性剤ゲル配合物を実施例14の発色剤ゲルと組合せたときに毛髪カラースケール値で最良のカラーレベルが観察されるので結果が実施例21から24を再現することが判明する。従って実施例26は、発色剤ゲルが酸性pHを有しているときのほうが高度な着色が観察されることを示唆する(pH(一体型発色剤ゲル配合物(Sunphenon 90LBで改質))7から8;pH(実施例14の発色剤ゲル)3.5)。
【0047】
【表11】

【0048】
実施例29(比較)
この実施例は、活性剤ゲルが上記の実施例21に開示した改質成分調合型活性剤ゲルであり、発色剤ゲルが塩酸でpH3.5に調整した成分調合型発色剤ゲルの成分Cであり、実施例6に示した方法にに従って試験する。結果は毛髪カラースケール値の5.0であり、したがって別のポリフェノールの非存在下では良好な着色が観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン繊維を着色するための永久染毛剤であって、
(a)鉄(II)塩または鉄(III)塩の溶液、
(b)Terminalia Chebulaの水性抽出物の溶液、および
(c)ポリフェノール、ポリフェノールの分解生成物、その誘導体およびポリフェノールの混合物から成る群から選択された少なくとも1種類の発色剤の溶液、
を含み、
鉄(II)塩または鉄(III)塩と、ポリフェノール、ポリフェノールの分解生成物およびその誘導体から成る群から選択された少なくとも1種類の発色剤とが反応して錯体を形成し、および、
ポリフェノール、ポリフェノールの分解生成物、その誘導体およびポリフェノールの混合物がTerminalia Chebulaの水性抽出物の形態でない、
永久染毛剤。
【請求項2】
ポリフェノールが、緑茶の水性抽出物、好ましくは80重量%超のポリフェノールと80重量%超のカテキンと1重量%未満のカフェインを含む緑茶の水性抽出物の1種以上によって提供されたエピガロカテキン、エピガロカテキン没食子酸塩、メチル没食子酸塩、没食子酸、および、それらの混合物から成る群から選択される請求項1に記載の永久染毛剤。
【請求項3】
溶液(a)および(b)のpHが1から7、好ましくは3から7、最も好ましくは6から7の範囲である請求項1から2のいずれか一項に記載の永久染毛剤。
【請求項4】
鉄塩が鉄(II)塩である請求項1から3のいずれか一項に記載の永久染毛剤。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の永久染毛剤を使用するケラチン繊維の着色方法であって、
(a)溶液(b)と(c)とを混合しこれにより溶液(d)を調製する段階、
(b)溶液(a)を毛髪に塗布する段階、および
(c)溶液(d)を毛髪に塗布する段階、
を含み、段階(a)と(b)はどちらの順序で行ってもよいケラチン繊維の着色方法。
【請求項6】
段階(b)が段階(c)に先行する請求項6に記載のケラチン繊維の着色方法。
【請求項7】
方法が、段階(b)と(c)との間に毛髪を水ですすぐ追加段階を含む請求項6または請求項7に記載のケラチン繊維の着色方法。
【請求項8】
段階(b)または段階(c)の一方または双方を室温で行う請求項6から8のいずれか一項に記載のケラチン繊維の着色方法。

【公表番号】特表2013−502395(P2013−502395A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525161(P2012−525161)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061978
【国際公開番号】WO2011/020833
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】