説明

毛髪処理剤および毛髪処理洗濯方法

【課題】10〜70℃の低〜中温で毛髪除去が可能であるため洗濯対象物を傷めずに、洗濯対象物に付着した毛髪を効果的に除去する毛髪処理剤を提供する。
【解決手段】チオグリコール酸、ジチオグリコール酸、システイン、アセチルシステイン、システアミン、チオ乳酸、及びそれらの塩からなる群から選択された1種又は2種以上を含有してなるものとする毛髪処理剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪処理剤および毛髪処理洗濯方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯対象物に付着した毛髪処理には、一般的には高温・高アルカリ性条件にて、処理する方法が行われている。しかし、高温処理を行った場合、洗濯対象物を傷めるだけでなく、二酸化炭素の排出が大きく、環境に適応した方法とは言えない。
【0003】
これに対し、洗浄対象物の損傷を防ぐ毛髪処理剤及び処理方法も提案され、例えば特許文献1には、アルカリ性薬剤に酸化物を併用する毛髪処理剤及び処理方法が記載されているが、毛髪除去効果が十分に得られないなどの問題がある。
【0004】
従って、洗濯対象物に残存した毛髪は手作業によって除去される場合が多く、作業効率を下げる原因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2628010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、従来のような高温処理を必要とせず、10〜70℃程度の低〜中温域で毛髪除去が可能であり、従って洗濯対象物を傷めることなしに、洗濯対象物に付着した毛髪を効果的に除去できる毛髪処理剤を提供する。さらに、その毛髪処理剤を用いた二酸化炭素排出量の低減もできる毛髪処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の毛髪処理剤は、上記の課題を解決するために、チオグリコール酸、ジチオグリコール酸、システイン、アセチルシステイン、システアミン、チオ乳酸、及びそれらの塩からなる群から選択された1種又は2種以上を含有してなるものとする。
【0008】
上記本発明の毛髪処理剤は、さらにアルカリ剤を含有するものとすることができる。
【0009】
また本発明の毛髪処理洗濯方法は、チオグリコール酸、ジチオグリコール酸、システイン、アセチルシステイン、システアミン、チオ乳酸、及びそれらの塩からなる群から選択された1種又は2種以上の濃度が0.01〜5重量%である、上記本発明の毛髪処理剤の水溶液を調製し、この水溶液を10〜70℃の温度範囲内にして、毛髪が付着した繊維製品をこの水溶液で撹拌洗浄するか、あるいはこの水溶液に浸漬する方法とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の毛髪処理剤および毛髪処理洗濯方法によれば、低温〜中温域での毛髪処理が可能であるため、洗濯時に洗濯対象物である繊維製品を傷めることなく、かつ毛髪を効果的に除去することができる。従って洗濯の作業効率が向上するとともに、対象繊維製品を長期間使用することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の毛髪処理剤は、チオグリコール酸、ジチオグリコール酸、システイン、アセチルシステイン、システアミン、チオ乳酸等のメルカプト基含有化合物、又はそれらの塩を含有するものである。それらの塩の好適な例としては、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリコール酸カリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジチオグリコール酸ジアンモニウム等を挙げることができる。これらの化合物及びその塩は、単独で用いてもよく、2種類以上混合して用いてもよい。これらを含有する処理剤を水溶液にして、10〜70℃程度の低〜中温度域で使用することにより、洗濯対象物を傷めることなく、毛髪のみを除去することが可能となる。
【0012】
本発明の毛髪処理剤は、毛髪除去効率のさらなる向上のために、上記チオグリコール酸等のメルカプト基含有化合物又はそれらの塩に加えてアルカリ剤をさらに含有するものとすることもできる。
【0013】
アルカリ剤とは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、メタケイ酸ナトリウムなどのメタケイ酸塩、オルトケイ酸ナトリウムなどのオルトケイ酸塩、ポリリン酸ナトリウムなどのリン酸塩が挙げられ、好ましい例は、安価であり、取扱いも容易であることからメタケイ酸ナトリウムなどのメタケイ酸塩である。これらアルカリ剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0014】
また、本発明の目的を離れない範囲であれば、漂白剤、再汚染防止剤、抗菌剤、蛍光剤等の繊維用洗浄剤に通常含まれる添加物を含有するものとしてもよい。
【0015】
本発明の毛髪処理剤の水溶液は、上記チオグリコール酸等のメルカプト基含有化合物、およびそれらの塩から選ばれた1種又は2種以上の濃度が0.01〜5重量%であるものとするのが好ましく、より好ましくは当該濃度が0.05〜2重量%となるようにする。また、アルカリ剤を併用するときは、その濃度が0.1〜4重量%となるようにするのが好ましい。
【0016】
本発明の毛髪処理洗濯方法は、毛髪が付着した繊維製品を上記本発明の毛髪処理剤の水溶液で撹拌洗浄するか、あるいはこの水溶液に浸漬する方法である。本発明によれば、上記のように、水溶液の温度が10〜70℃の低〜中温度域で優れた毛髪除去効果が得られるが、タンパク質であることから、40〜70℃が好ましい。撹拌洗浄又は浸漬する時間は、特に限定されないが、実用性を考えると20〜30分間程度が好ましい。
【0017】
洗濯対象物は特に限定されないが、典型的には、おしぼり、モップ、マットなどのダストコントロール用製品、シーツ・シーツカバーなどのリネン製品などの繊維製品が該当する。
【実施例】
【0018】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において、特に言及しない限り、配合量等は重量基準とする。
【0019】
綿金巾(30cm×30cm)と人毛0.1g、チャージ布をターゴトメーターに入れて、浴比1:33の条件で洗濯試験を行った。試験に供した処理剤条件(水溶液温度及び処理剤の組成)は、表1,2及び下記に記載の通りである。回転数は100rpm、試験時間は10分とした。試験後、内容物を取り出し、毛髪の状態および生地の脆化を下記の通り評価した。結果を表1,2に併記する。
【0020】
(1)使用薬剤
チオグリコール酸:ナカライテスク 試薬グレード
水酸化ナトリウム:ナカライテスク 試薬グレード
メタケイ酸ナトリウム:石田化学工業社製 メタケイ酸ソーダ9水塩 工業品グレード
【0021】
(2)評価
毛髪;目視にて観察して、次の基準で評価した。
◎:ほぼ完全に溶解除去した、○:毛髪の切断・脱色・細毛化が見られた、△:わずかに強度劣化が認められた、×:ほとんど変化なし
生地の脆化;綿金巾の1片を固定し、反対側片の中央部分に、重さ5kgの分銅をつけ、10分以内に生地が裁断されなかった場合を○、裁断された場合を×として評価した。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
表1に示されたように、実施例のものはいずれも、生地の脆化が生じない低〜中温度域での処理でも毛髪除去効果に優れることが確認された。一方、表2に示されたように、比較例1,2では、高温・高アルカリ処理のため、生地が脆化してしまった。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の毛髪処理剤および毛髪処理洗濯方法は、おしぼり、モップ、マットなどのダストコントロール用製品、シーツ・シーツカバーなどのリネン製品などの繊維製品から毛髪を除去するために用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオグリコール酸、ジチオグリコール酸、システイン、アセチルシステイン、システアミン、チオ乳酸、及びそれらの塩からなる群から選択された1種又は2種以上を含有してなる毛髪処理剤。
【請求項2】
さらにアルカリ剤を含有することを特徴とする、請求項1に記載の毛髪処理剤。
【請求項3】
前記チオグリコール酸、ジチオグリコール酸、システイン、アセチルシステイン、システアミン、チオ乳酸、及びそれらの塩からなる群から選択された1種又は2種以上の濃度が0.01〜5重量%である、請求項1又は2に記載の毛髪処理剤の水溶液を調製し、
この水溶液を10〜70℃の温度範囲内にして、毛髪が付着した繊維製品をこの水溶液で撹拌洗浄するか、あるいはこの水溶液に浸漬することを特徴とする毛髪処理洗濯方法。

【公開番号】特開2011−157415(P2011−157415A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17872(P2010−17872)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】