説明

毛髪処理剤用の酸化剤含有組成物

【課題】 本発明は、酸化剤の安定性を保持すると共に、使用感に優れ、毛髪に良好な感触を付与することができる毛髪処理剤用の酸化剤含有組成物を提供することを課題とする。
【解決方法】 プルランと、α,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体とを、特定の割合で配合した毛髪処理剤用の酸化剤含有組成物を提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染毛処理剤、毛髪脱色・脱染処理剤、パーマネントウェーブ用処理剤等の毛髪処理剤に使用される酸化剤含有組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、毛髪処理剤として使用される酸化剤含有組成物中に含まれる酸化剤は不安定な化合物であって、その分解を防止するため各種の安定化剤の検討がなされてきた。例えば、過酸化水素の安定化剤としては、尿素、フェナセチン、スズ酸ナトリウム、エチレングリコールフェニルエーテル、8−オキシキノリン、リン酸等が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、過酸化水素含有組成物を毛髪処理剤に使用する場合、使用感や毛髪の感触を向上させるために過酸化水素含有組成物にはアミノ変性シリコーンなどが配合される場合がある(例えば、特許文献2を参照)。
【0003】
しかしながら、過酸化水素含有組成物にアミノ変性シリコーンなどの化合物を配合すると、過酸化水素の安定性を低下させてしまう場合があるという問題があった。酸化剤の化学的安定性は酸化染料の物理的安定性を確保するために重要であり、酸化物含有組成物中の酸化物の安定性を十分に保持し、且つ、使用感や毛髪の感触を向上させることができる毛髪処理剤用の酸化物含有組成物の開発が望まれている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−148455号公報
【特許文献2】特開2002−265338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、酸化剤を安定に保持すると共に、使用感に優れ、毛髪に良好な感触を付与することができる毛髪処理剤用の酸化剤含有組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために、糖質の利用について鋭意研究したところ、プルランと、α,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体とを特定の割合で配合した酸化剤含有組成物が、効果的に過酸化水素を安定性に保持することができると共に、使用感に優れ、毛髪に良好な感触を付与することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、プルランと、α,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体とを、特定の割合で配合した毛髪処理剤用の酸化剤含有組成物を提供することにより、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の酸化剤含有化合物は、酸化剤の安定性が向上すると共に、その使用感が優れ、毛髪に良好な感触を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明でいう毛髪処理剤用の酸化剤含有組成物とは、酸化染料、アルカリ剤、界面活性剤等を含有する第1剤(以下、単に「第1剤」と略記する場合がある。)と、酸化剤を含有する第2剤(以下、単に「第2剤」と略記する場合がある。)とを混合して使用する2剤形態(3剤以上を混合する形態のものを含む)の毛髪処理剤(染毛処理剤、毛髪脱色・脱染処理剤、パーマネントウェーブ用処理剤等)において、その第2剤として使用する酸化剤を含有する組成物をいい、毛髪脱色・脱染処理剤の場合には1剤形態のものも含む。
【0010】
本発明で用いられるプルランは、上記酸化剤含有組成物に配合して、酸化剤の安定化、当該組成物の使用感の向上、及び/又は、毛髪の感触向上に寄与できるものであれば、その由来や製造方法に制限はなく、培養法、酵素法、合成法などを用いて調製してもよく、市販されているものを使用してもよい。通常、入手しやすさ及び価格の点で有利であることから、澱粉部分分解物を含有する培地中でオーレオバシディウム属などの酵母を培養することにより製造されたプルランが有利に用いられる。例えば、株式会社林原生物化学研究所販売の「プルラン」(化粧品用)などが好適に使用できる。また、必要に応じて、プルランに、任意の置換度のエステル化などの修飾を施すなどして誘導体化したプルランを用いることもできる。本発明において用いられるプルランの重量平均分子量(以下、「平均分子量」という。)としては、通常、5,000ダルトン以上、好ましくは、10,000ダルトン乃至1,000,000ダルトン、より好ましくは50,000ダルトン乃至500,000ダルトンの範囲から選ばれる。なお、プルランの平均分子量や分子量分布を選択することによって、作製された毛髪処理剤の塗布性や使用感を調節することができるので、用途に応じて適宜の平均分子量及び分子量分布のものを用いればよい。配合する他の成分にもよるが、一般的に、プルランの平均分子量が5,000ダルトン未満であると使用感の向上が、1,000,000ダルトンを越えると、毛髪処理剤調製時の溶解性の低下、粘度上昇や、これを使用して毛髪を処理する際の粘度上昇に伴う塗布ムラの発生や使用感の低下が認められる場合があるので、5,000ダルトン乃至1,000,000ダルトンの範囲が望ましい。
【0011】
本発明で使用するα,α−トレハロースの糖質誘導体は、上記酸化剤組成物に配合して、酸化剤の安定化、当該組成物の使用感の向上、及び/又は、毛髪の感触向上に寄与できるものであれば、その由来や製造方法に制限はない。本発明の毛髪処理剤に含有せしめるα,α−トレハロースの糖質誘導体とは、分子内にα,α−トレハロース構造を有する3個以上のグルコースからなる非還元性オリゴ糖から選ばれる1種又は2種以上の糖質であれば、何れでもよく、より具体的には、α,α−トレハロース分子の少なくとも一方のグルコースに、モノ−グルコース、ジ−グルコース、トリ−グルコース及びテトラ−グルコースから選ばれる何れかが結合したものをいう。望ましくは、例えば、先に、本出願人が特開平7−143876号公報、国際公開WO 2004/071472号明細書などにおいて開示した、α−グルコシルα,α−トレハロース、α−イソマルトシルα−グルコシドなどのモノ−グルコシルα,α−トレハロースや、α−マルトトリオシルα−グルコシド(別名α−マルトシルα,α−トレハロース)、α−マルトシルα−マルトシド、α−イソマルトシルα−マルトシド、α−イソマルトシルα−イソマルトシドなどのジ−グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトテトラオシルα−グルコシド(別名α−マルトトリオシルα,α−トレハロース)、α−マルトシルα−マルトトリオシド、α−パノシルα−マルトシドなどのトリ−グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトペンタオシルα−グルコシド(別名α−マルトテトラオシルα,α−トレハロース)、α−マルトトリオシルα−マルトトリオシド、α−パノシルα−マルトトリオシドなどのテトラ−グルコシルα,α−トレハロースなど、グルコース重合度が3乃至6からなるα,α−トレハロースの糖質誘導体が好ましい。
【0012】
これらのα,α−トレハロースの糖質誘導体は、その由来や製法は問わず、培養法、酵素法、合成法などを用いて、調製してもよく、市販されているものを使用してもよい。これらの糖質は、例えば、本出願人が、特開平7−143876号公報、国際公開WO 2004/071472号明細書などで開示した酵素法により澱粉や澱粉の部分加水分解物から直接製造してもよく、或いは、同公報で開示したマルトテトラオース生成アミラーゼ、特公平7−14962号公報で開示したマルトペンタオースを高率に生成するα−アミラーゼ或いは特開平7−236478号公報で開示したマルトヘキサオース・マルトヘプタオース生成アミラーゼなどを併用することにより、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオースなどの特定のオリゴ糖の含量を酵素的に高めた澱粉部分加水分解物に、特開平7−143876号公報、国際公開WO 2004/071472号明細書などで開示した非還元性糖質生成酵素を作用させて製造することも随意である。また、澱粉、或いは、澱粉の部分加水解物とα,α−トレハロースとを含有する溶液にシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼなどのグリコシル基の転移能を有する酵素を作用させて調製することも随意である。これらの方法により得られる反応液は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有する糖質を含む溶液として、そのままで、又は、部分精製して、或いは、高純度に精製して使用することも随意である。また、これらの製造方法は、豊富で安価な澱粉質を原料とし、高効率、且つ、安価にα,α−トレハロースの糖質誘導体を製造できることから、工業的に有利に利用できる。
【0013】
なかでも、酸化剤の安定性の向上や毛髪処理剤の使用感の向上、使用後の毛髪の感触の向上などの点からは、α−グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトシルα,α−トレハロース、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース及びα−マルトテトラオシルα,α−トレハロースなど、分子の末端にトレハロース構造を持つ糖質が好ましく、とりわけ、α−マルトシルα,α−トレハロースを主成分として含有し、他に、α−グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース、これらのα,α−トレハロースの糖質誘導体以外のα−グリコシルα−グルコースから選ばれる1種又は2種以上を含有する糖質が望ましく、これらのα,α−トレハロースの糖質誘導体の2種以上を含有する糖質がより望ましく、3種以上含有するものが特に望ましい。この場合、α−マルトシルα,α−トレハロースの糖質固形物当たり含量は、無水物換算で5質量%(以下、本明細書では特に断らない限り、「質量%」を単に「%」と表記する。)以上、好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上が望ましく、50%以上が特に望ましい。市販品としては、無水物換算で、α−マルトシα,α−トレハロースを約50%含有するシラップ(株式会社林原商事販売、商品名「ハローデックス」)や、このシラップを水素添加して、共存するグルコースやマルトオリゴ糖を糖アルコールに変換したシラップ(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「トルナーレ」)がある。
【0014】
本発明の酸化剤含有組成物に含有せしめるα,α−トレハロースの糖質誘導体は、α,α−トレハロースの糖質誘導体のみで構成されていてもよいし、α,α−トレハロースの糖質誘導体と共に、その他の糖類及び/又は糖アルコール類を含有する糖質(以下、「α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有する糖質」という場合がある)であってもよい。例えば、α,α−トレハロースの糖質誘導体の製造工程において共存するグルコース、イソマルトース、マルトースをはじめとするマルトオリゴ糖、デキストリンなどの澱粉由来のα,α−トレハロースの糖質誘導体以外の糖質を含有していてもよい。なかでも、α,α−トレハロースの糖質誘導体と共に還元性糖質を含む糖質を水素添加し、その還元性の糖質を糖アルコールに変換したもののように、α,α−トレハロースの糖質誘導体と共に糖アルコールを含有する糖質は、保湿性に優れ、適度の粘性を有し、塗布時の伸びもよいことに加えて、皮膚外用剤のベタ付き感を抑制し、使用感を向上させ、皮膚や毛髪などにつやなめらかさを賦与し、また、保湿性を含む化粧持ちを向上させる効果が強いので望ましく、とりわけ、無水物換算で、α−マルトシルα,α−トレハロースを、20%以上、望ましくは50%以上、さらに望ましくは50%〜70%含有し、α−マルトシルα,α−トレハロース以外のα,α−トレハロースの糖質誘導体を合計で5%〜25%含有し、且つ、ソルビトール、マルトオリゴ糖の糖アルコールから選ばれる何れか1種又は2種以上の糖アルコールを合計で5%〜45%、望ましくは25%〜45%含有する糖質が、酸化剤の安定性の向上や他の皮膚外用剤の配合成分の作用の増強効果の強い点と、保湿性の高さ及び使用感のよさの点で特に望ましい。なお、マルトオリゴ糖の糖アルコールとしては、ソルビトール、マルチトール、マルトトリイトール及び/又はマルトテトライトールが望ましく、これらの糖質を2種以上含有するものが望ましい。また、還元性の糖質は、酸化剤などと反応したり、酸化剤含有組成物のpHによっては、変色の原因になる場合があるので少ない方が望ましい。
【0015】
本発明で使用するα,α−トレハロースは、その由来や製造方法に制限はなく、培養法、酵素法、合成法などを用いて、調製してもよく、市販されているもの(例えば、株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「トレハロース」)を使用してもよい。また、このα,α−トレハロースは、α,α−トレハロースのみで構成されていてもよいし、α,α−トレハロースと共に、その製造時に共存するα,α−トレハロース以外の糖質を含むものであってもよい。
【0016】
本発明の毛髪処理剤用の酸化剤含有組成物におけるプルランとα,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体の配合量は、酸化剤の分解が抑制されるとともに、毛髪のダメージを抑制し、良好な感触を付与することのできる量であれば、特に制限はなく、通常、プルランは、0.01%乃至5%の範囲で使用され、0.05%乃至2.5%が望ましく、0.1%乃至1%が特に望ましい。また、α,α−トレハロース及びα,α−トレハロースの糖質誘導体は、ほぼ同程度の酸化剤の分解抑制作用を有することから、通常は、その合計で0.1%乃至15%の範囲で使用され、0.5%乃至10%が望ましく、2%乃至5%が特に望ましい。何れの成分の場合にも、上記範囲より少ないと、十分な効果を得ることができない場合があり、その範囲を超えると、ベタ付きが出て使用感が低下する場合がある。また、プルランとα,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体とは、酸化剤含有組成物或いはこれを混合した組成物の粘度を適度に上昇させるため、毛髪処理剤を毛髪へ均一に塗布・染色することができるとともに、これらの組成物を染毛剤に使用した場合には、染料の毛髪への染着性を増強する効果も有している。プルランと、α,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体とは、酸化剤の安定化の目的のためには、酸化剤含有組成物に配合する必要があるが、酸化剤による毛髪のダメージの軽減や、染毛剤をはじめとする毛髪処理剤の使用感の向上や、使用後の毛髪の滑りを向上させる目的や保湿効果の増強などの目的で使用する場合には、当該酸化剤含有組成物のみでなく、当該組成物と混合して使用する第1剤などの他の組成物に配合しておくことも有利に実施できる。
【0017】
本発明の毛髪処理剤用の酸化剤含有組成物において、通常、水が溶媒として使用され、その含有量は、好ましくは50%〜98%、さらに好ましくは70%〜95%である。この含有量が50%未満では、水溶液、分散液又は乳化液を安定して形成することが困難となるおそれがある。一方、98%を超えて配合すると、当該組成物の均一性及び安定性を確保しにくくなる。
【0018】
本発明の酸化剤含有組成物には、本発明の所期の効果が得られる範囲で、カチオン性高分子化合物及び非イオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも一種の化合物を配合することが好ましい。カチオン性高分子化合物の具体例としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル等のカチオン性セルロース誘導体、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体のカチオン化物等の四級化ポリビニルピロリドン誘導体、ジメチルジアリルアンモニウムクロリドの単独重合体、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド/アクリルアミド共重合体等のジアリル四級化アンモニウム塩重合体及びその誘導体並びにカチオン化グアーガム等を挙げることができる。
【0019】
本発明の酸化剤含有組成物は、アルカリ剤、染料などを含有する組成物(第1剤)との混合性の点からは、カチオン性高分子化合物を配合することが好ましく、なかでも、カチオン性セルロース誘導体が好ましく、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリドが最も好ましい。この場合のカチオン性高分子化合物の当該酸化剤含有組成物における含有量は、好ましくは0.01%〜10%、より好ましくは0.05%〜5%、最も好ましくは0.1%〜2%である。
【0020】
非イオン性界面活性剤は、毛髪処理後の毛髪の感触を向上させるために配合される。非イオン性界面活性剤としては、エステル型非イオン性界面活性剤、エーテル型非イオン性界面活性剤等が用いられる。エステル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(以下、「POE」という)ソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル等を挙げることができる。
【0021】
エーテル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレン(以下、POEという)アルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POE・ポリオキシプロピレン(以下、「POP」という)アルキルエーテル類等が挙げられる。POEアルキルエーテル類の具体例としては、POEラウリルエーテル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル等が挙げられる。なかでも、エステル型非イオン界面活性剤は毛髪処理後の毛髪の感触をさらに向上させることができる点で好ましい。
【0022】
また、本発明の酸化剤含有組成物のpHは、好ましくは中性又は酸性側、より好ましくは2〜7、さらに好ましくは2〜6、最も好ましくは2〜5である。このpHがアルカリ性側であると、酸化剤の保存安定性が十分に得られなくなる。一方、2未満としても安定性に及ぼす影響に差は認められない。
【0023】
さらに、本発明の酸化剤含有組成物には、その他の成分として、前記非イオン性界面活性剤以外の界面活性剤、油性成分、上記以外の多価アルコール類等を含有させることができ、界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤を例示することができる。
【0024】
カチオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン等を挙げることができる。
【0025】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のPOEアルキル硫酸塩、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸エステル塩、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、POEラウリルエーテルリン酸及びその塩等を挙げることができる。
【0026】
両性界面活性剤の具体例としては、例えば、2−ウンデシル−N,N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、ココアミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等を挙げることができる。
【0027】
これらの界面活性剤は単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。これらの界面活性剤のなかでも、好ましくはカチオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも一種、より好ましくは塩化ステアリルトリメチルアンモニウム及び塩化セチルトリメチルアンモニウムから選ばれる少なくとも1種である。
【0028】
本発明の酸化剤含有組成物における界面活性剤の配合量は、配合する界面活性剤の合計で、好ましくは0.01%〜10%、より好ましくは0.05%〜7%、さらに好ましくは0.1%〜5%、最も好ましくは0.5%〜4%である。
【0029】
油性成分の具体例としては、例えば、炭化水素、油脂、ロウ、高級アルコール、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステル、シリコーン等を挙げることができる。これらの成分は単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0030】
炭化水素としては、例えば、α−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、合成スクワラン、植物性スクワラン、スクワラン、ポリブテン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、オゾケライト、セレシン、パラフィン、ポリエチレン末、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等を挙げることができる。
【0031】
油脂としては、例えば、オリーブ油、ツバキ油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、牛脂、カカオ脂、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アーモンド油、アボカド油、カロット油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、ミンク油、卵黄油等を挙げることができる。
【0032】
ロウとしては、例えば、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリン等が挙げられる。高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ラノリンアルコール等を挙げることができる。
【0033】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リシノール酸、ラノリン脂肪酸等を挙げることができる。
【0034】
アルキルグリセリルエーテルとしては、例えば、バチルアルコール(モノステアリルグリセリルエーテル)、キミルアルコール(モノセチルグリセリルエーテル)、セラキルアルコール(モノオレイルグリセリルエーテル)、イソステアリルグリセリルエーテル等を挙げることができる。
【0035】
エステルとしては、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸−2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸トリイソデシル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸2−エチルへキシル、乳酸ラウリル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、乳酸オクチルドデシル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ラノリン誘導体等を挙げることができる。
【0036】
シリコーンとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン高重合度アミノ変性シリコーン等を挙げることができる。
【0037】
これらの油性成分の本発明の酸化剤含有組成物への配合量は、好ましくは0.1%〜20%、さらに好ましくは0.5%〜10%、最も好ましくは1%〜7%である。
【0038】
上記以外の多価アルコール類としては、例えば、α,β−トレハロース、α−サイクロデキストリン、β−サイクロデキストリン、γ−サイクロデキストリン、国際公開WO 02/10361号明細書などに開示されたサイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の構造を有する環状四糖(サイクロニゲロシルニゲロース:Cyclonigerosylnigelose)、特開平2005−95148号公報などに開示されたサイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の構造を有する環状四糖(サイクロマルトシルマルトース:Cyclomaltosylmaltose)、国際公開W02006/035725号明細書(国際特許願PCT/JP2005/17642号)に開示されたサイクロ{→6)−[α−D−グルコピラノシル−(1→4)]n−α−D−グルコピラノシル−(1→}(nは4又は5を意味する)の構造を有する環状五糖や環状六糖やこれらの環状オリゴ糖の糖質誘導体などの非還元性糖質を挙げることができる。また、エリスリトール、キシリトール、グルコース重合度が5以上のマルトオリゴ糖の糖アルコール類等の上記以外の糖アルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン等のグリセリン類を挙げることができる。また、例えば、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、マルメロ種子抽出物、アラビアガム、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアーガム、グアーガム、デキストラン、トラガントガム、セルロース、澱粉、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天などの天然高分子物質、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの半合成高分子物質、可溶性澱粉、分岐澱粉、同じ出願人が国際特願PCT/JP2006/304962号明細書などに開示した6−α−マルトシル分岐構造及び/又は6−α−マルトテトラオシル分岐構造を有する分岐澱粉、α−1,4及びα−1,6結合に加えてα−1,3やα−1,2などの分岐構造を有するグルコ糖質、さらには、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ビニルアルコール・酢酸ビニル共重合体などの合成高分子物質などの水溶性高分子を挙げることができる。なかでも、サイクロデキストリンやその他の環状糖質は、過酸化水素の分解を抑制する作用を有する点で望ましい。また、6−α−マルトシル分岐構造及び/又は6−α−マルトテトラオシル分岐構造を有する分岐澱粉やα−1,4及びα−1,6結合に加えてα−1,3やα−1,2などの分岐構造を有するグルコ糖質は、毛髪のすべりを改善するので、本発明の毛髪処理剤の使用感向上の点で望ましい。また、必要に応じて、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質に含有されるグルコース、マルトース等の還元性糖類やソルビトール、マルチトールなどの糖アルコール類をさらに添加することも随意である。
【0039】
これら多価アルコール類の本発明の酸化剤含有組成物への配合量は、好ましくは0.1%〜20%、さらに好ましくは0.5%〜10%、最も好ましくは1%〜7%である。
【0040】
また、本発明の酸化剤含有組成物には、上記以外にも、酸化剤の安定性を向上させるために、その他の成分として酸及びそのアルカリ塩を配合することもできる。そのような酸及びそのアルカリ塩としては、硫酸、リン酸、酢酸、乳酸、酒石酸、これらのアルカリ塩等が挙げられる。酸のアルカリ塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。さらに、本発明の酸化剤含有組成物に配合することができるその他の成分としては、水溶性高分子化合物、粘度調整剤、保湿剤、帯電防止剤、毛髪柔軟剤、酸化防止剤、防腐剤、金属封鎖剤、賦形剤、色素、香料等が挙げられる。
【0041】
本発明の酸化剤含有組成物は、染毛処理剤、毛髪脱色・脱染処理剤、パーマネントウェーブ用処理剤などの毛髪処理剤の用途に応じて、アルカリ剤、染料、還元剤、及び、その他の成分から選ばれる成分を適宜配合した第1剤と混合して使用する。
【0042】
当該第1剤に配合するアルカリ剤は、酸化剤組成物中の酸化剤の分解を促進し、酸化作用を促進するために配合される。アルカリ剤の具体例としては、例えば、アンモニア、アルカノールアミン、アンモニウム塩、有機アミン類(2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、グアニジン等)、無機アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン等)及びそれらの塩等を挙げることができる。
【0043】
これらのアルカリ剤は単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。このアルカリ剤の配合量は、第1剤のpHが8〜12の範囲となる量に設定することが好ましい。第1剤のpHが8未満では、第1剤と第2剤とを混合したときに酸化剤の作用を十分に促進することができない場合がある。一方、pHが12を超えると、毛髪処理を施したとき毛髪に損傷等の不具合が発生しやすい。
【0044】
また、第1剤に配合する染料の具体例としては、酸化染料中間体、直接染料、レゾルシン、ピロガロール、カテコール、m−アミノフェノール、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノール、1,2,4−ベンゼントリオール、トルエン−3,4−ジアミン、トルエン−2,4−ジアミン、ハイドロキノン、α−ナフトール、2,6−ジアミノピリジン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、5−アミノオルトクレゾール、パラメチルアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、没食子酸、タンニン酸、没食子酸エチル、没食子酸メチル、没食子酸プロピル、五倍子、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール及びそれらの塩等が挙げられる。
【0045】
酸化染料中間体は、第2剤中に含まれる酸化剤により酸化されることによって毛髪を染色する。酸化染料中間体の具体例としては、フェニレンジアミン類(但し、m−フェニレンジアミンを除く。)、アミノフェノール類(但し、m−アミノフェノール及び2,4−ジアミノフェノールを除く。)、トルイレンジアミン類、ジフェニルアミン類、ジアミノフェニルアミン類、N−フェニルフェニレンジアミン類、ジアミノピリジン類、それらの塩類等が挙げられる。塩類としては塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。
【0046】
酸化染料中間体のなかでも、染毛力が強いことからp−フェニレンジアミン、p−トルイレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルアミン、2−クロロ−p−フェニレンジアミン、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、2,6−ジクロロパラフェニレンジアミン、p−アミノフェニルスルファミン酸及びそれらの塩類から選ばれる少なくとも一種が好ましい。これらの酸化染料中間体は単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0047】
直接染料は、4−ニトロ−m−フェニレンジアミン、4−ニトロ−o−フェニレンジアミン、2−ニトロ−p−フェニレンジアミン、ピクラミン酸、1−アミノ−4−メチルアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、2−アミノ−4−ニトロフェノール、2−アミノ−5−ニトロフェノール及びそれらの塩、並びに、「医薬品等に使用することができるタール色素を定める省令」(昭和41年告示、厚生省)により定められた酸性染料や油溶性染料等が挙げられる。なお、前記酸性染料には、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号の(1)、赤色105号の(1)、赤色106号、赤色201号、赤色227号、赤色230号の(1)、赤色230号の(2)、赤色231号、赤色232号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号、黄色4号、黄色5号、黄色202号の(1)、黄色202号の(2)、黄色203号、黄色402号、黄色403号の(1)、黄色406号、黄色407号、だいだい色205号、だいだい色207号、だいだい色402号、緑色3号、緑色204号、緑色205号、緑色401号、緑色402号、紫色401号、青色1号、青色2号、青色202号、青色203号、青色205号、かっ色201号、黒色401号等があり、前記油溶性染料には、赤色215号、赤色218号、赤色225号、だいだい色201号、だいだい色206号、黄色201号、黄色204号、緑色202号、紫色201号、赤色501号、赤色505号、だいだい色403号、黄色404号、黄色405号、青色403号等がある。さらには、Basic Blue 3, Basic Blue 6, Basic Blue 7, Basic Blue 9, Basic Blue 26, Basic Blue 41, Basic Blue 47, Basic Blue 99, Basic Brown 4, Basic Brown 16, Basic Brown17, Basic Green 1, Basic Green 4, Basic Orange 1, Basic Orange 2, Basic Orange 31, Basic Red 1, Basic Red 2, Basic Red 22, Basic Red 46, Basic Red 51, Basic Red 76, Basic Red 118, Basic Violet 1, Basic Violet 3, Basic Violet 4, Basic Violet 10, Basic Violet 11:1, Basic Violet 14, Basic Violet 16, Basic Yellow 11, Basic Yellow 28, Basic Yellow 57, Basic Yellow 87, HC Blue No.2, HC Blue No.4, HC Blue No.5, HC Blue No.6, HC Blue No.7, HC Blue No.8, HC Blue No.9, HC Blue No.10, HC Blue No.11, HC Blue No.12, HC Blue No.13, HC Blue No.14, HC Brown No.1, HC Brown No.2, HC Green No.1, HC Orange No.1, HC Orange No.2, HC Orange No.3, HC Orange No.5, HC Red No.1, HC Red No.3, HC Red No.7, HC Red No.8, HC Red No.9, HC Red No.10, HC Red No.11, HC Red No.13, HC Red No.14, HC Violet No.1, HC Violet No.2, HC Yellow No.2, HC Yellow No.4, HC Yellow No.5, HC Yellow No.6, HC Yellow No.7, HC Yellow No.8, HC Yellow No.9, HC Yellow No.10, HC Yellow No.11, HC Yellow No.12, HC Yellow No.13, HC Yellow No.14, HC Yellow No.15, Disperse Black 9, Disperse Blue 1, Disperse Blue 3, Disperse Brown 4, Disperse Orange 3, Disperse Red 11, Disperse Red 15, Disperse Red 17, Disperse Violet 1, Disperse Violet 4, Disperse Violet 15等が挙げられる。これらの直接染料は単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0048】
第1剤中における染料の含有量は、好ましくは0.01%〜15%である。この含有量が0.01%未満では十分な染毛力は得られない。一方、15%を超えて配合してもそれ以上の染毛力は得られにくい。
【0049】
第1剤に配合する還元剤としては、チオグリコール酸、チオグリコール酸塩、チオグリコール酸のエステル、システイン、システイン塩、メルカプト化合物、亜硫酸、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸、チオ硫酸塩等が挙げられる。具体的には、例えば、チオグリコール酸塩としては、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリコール酸モノエタノールアミン等、チオグリコール酸のエステルとしては、グリセリンチオグリコレート等を挙げることができる。また、システイン塩としては、システイン塩酸塩、N−アセチル−L−システイン等、メルカプト化合物としては、チオグリセロール、チオ乳酸、チオリンゴ酸、システアミン等が挙げられる。亜硫酸塩としては、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム等、亜硫酸水素塩としては、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム等、チオ硫酸塩としては、チオ硫酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0050】
第1剤に含有される上記以外の成分としては、糖類、糖アルコール類、界面活性剤、浸透剤、油性成分、水溶性高分子化合物、pH調整剤、粘度調整剤、保湿剤、帯電防止剤、毛髪柔軟剤、酸化防止剤、防腐剤、金属封鎖剤、溶剤、色素、香料等が挙げられる。
【0051】
本発明の酸化剤含有組成物に使用する酸化剤としては、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、過硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物、臭素酸ナトリウム等が挙げられ、そのなかでも過酸化水素が好ましい。これらの酸化剤は単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0052】
この本発明の酸化剤含有組成物の剤形は、水溶液状、分散液状、乳化液状等の液状のほか、ゲル状、フォーム状、クリーム状等が挙げられるが、その安定性、取扱いの容易性の点から液状であることが好ましい。また、当該組成物は、通常、チューブ容器、スクイズ式容器、ポンプ式容器、エアゾール容器等の各種アプリケータ容器に充填され、使用時まで保存される。このアプリケータ容器としては、コーム一体型(櫛付き型)のアプリケータ容器であっても、ノズル式のアプリケータ容器であってもよい。また、内容器と外容器との二重容器よりなるアプリケータ容器であっても、内容器がなく外容器のみの一重容器よりなるアプリケータ容器であってもよい。そして、使用者が、用時にアプリケータ容器内にアルカリ剤などを含有する第1剤を注ぎ入れて、そのアプリケータ容器を振るなどすることによって混合し、その必要量の混合物を容器から吐出して毛髪に塗布する。このとき、酸化剤の安定性が向上されているため、その酸化作用が十分に発揮されるので、染料を発色させて毛髪を染色する、毛髪のメラニンを分解して脱色する、及び/又は、毛髪のパーマネントウェーブを形成するなどの点で、良好な結果を得ることができる。
【0053】
なお、本発明の酸化剤含有組成物は、2剤形態の染毛処理剤や毛髪脱色・脱染剤の場合には、アルカリ剤、染料などを含有する第1剤と混合して使用する。この場合、酸化剤の含有量は0.01%〜15%が好ましく、より好ましくは0.1%〜10%、1%〜6%が特に好ましい。0.01%より少ない量では十分な効果を発揮することができず、15%を超えて配合しても、毛髪の損傷等の不具合が発生する場合がある。
【0054】
また、本発明の酸化剤含有組成物は、2剤形態のパーマネントウェーブ用剤の場合には、第2剤として、毛髪のウェーブ形成又は縮毛及び癖毛の矯正に使用される。この場合、酸化剤の含有量は0.01%〜10%が好ましく、0.1%〜5%がより好ましく、0.5%〜2.5%が特に好ましい。また、この場合の第1剤中における還元剤の含有量は、0.01%〜15%が好ましく、1%〜10%がより好ましい。この含有量が0.01%未満の場合、毛髪に十分なウェーブを形成することができない。一方、15%を超える場合、過度の還元作用によって毛髪に損傷が生じるおそれがある。
【0055】
本発明の酸化剤含有組成物は、毛髪脱色・脱染剤の場合、1剤形態の場合は、そのまま酸化剤含有組成物として、アプリケータ容器に充填して使用することができる。また、2剤形態の場合は、アプリケータ容器中でアルカリ剤等が含有される第1剤と混合して使用する。3剤形態の場合は、染毛処理剤の第1剤から染料を除いたものと混合して使用し、アルカリ剤、過硫酸塩等が含有される粉末状又はクリーム状の第3剤と混合して使用する。
【0056】
以下、実験に基づいて、本発明をさらに詳細に説明する。
【0057】
<実験1>
<過酸化水素の安定化に及ぼすプルランの影響>
過酸化水素の安定化に及ぼすプルランの影響を調べる試験を以下のように行った。
【0058】
<試験用の染毛処理剤の調製>
表1に示す配合処方より染毛処理剤の第1剤(以下、「染毛第1剤」という。)と、表2に示す配合処方により10種類の染毛処理剤の第2剤(以下、「染毛第2剤」という。)とを調製した。この染毛第2剤を調製後、50℃の恒温槽で4週間保存した。なお、プルランは平均分子量200,000ダルトンのもの(株式会社林原生物化学研究所販売、化粧品用)を使用した。また、α,α−トレハロースの糖質誘導体として、国際公開WO 2004/071472号明細書の実施例5に記載された方法に準じて、試薬級マルトテトラオースに、特開平7−143876号公報に開示された非還元性糖質生成酵素を作用させ、さらにβ−アミラーゼを作用させて未反応のマルトテトラオースを分解した後、アルカリ金属型強酸性カチオン交換樹脂を用いて精製した、純度98.1%のα−マルトシルα,α−トレハロースを使用した。なお、以下の実験及び実施例における各配合成分の配合量は何れも%で示し、過酸化水素、アンモニア水、チオグリコール酸アンモニウムは、各々、その水溶液の配合量で示す。
【0059】
<試験方法>
染毛第2剤中の過酸化水素量を測定し、製造直後の過酸化水素量を100とした相対値を求め、過酸化水素残存率(%)として表2に示す。さらに、パネラーとして白髪の人100名をランダムに、10名ずつ10のグループに分け、染毛処理試験を行った。すなわち、上記染毛第1剤と10種類の染毛第2剤の何れか1種を混合比(質量比)1:1.5で、ノズル付きの容器に入れて混合して染毛処理剤の標品を調製した。この10種類の染毛処理剤の(標品1乃至標品10)の何れか1種を吐出させた泡100gを、それぞれ10名のパネラーの毛髪全体に塗布し、30分間放置した後、軽く水洗、シャンプーすることにより毛髪の染色を行った。染毛処理後、下記の6項目について、下記の基準で評価し、各評価項目について、10名中最も多くのパネラーが評価した評価基準を、その項目の評価として表2に併せて示す。なお、何れの標品を使用した場合にも、10名中8名以上のパネラーが同一の評価基準と評価した。
<評価基準>
<塗布性(塗りやすさ、髪へのなじみやすさ)>
◎:毛髪の上に泡を押し当てるだけで根元までしっかり剤がなじむ
○:手グシで簡単に剤を根元までなじませることができる
△:毛量の多い後頭部の根元等、場所によって剤がなじみにくい場合がある
×:なじみが悪く、根元などを塗り残す
コンディショニング効果>
◎:染毛後,髪のきしみがなく,極めて滑らかな仕上りが得られる
○:染毛後,髪のきみしがほとんどなく,滑らかな仕上りが得られる
×:染毛後,髪のきしみ,ごわつきが少しある
<染色性>
◎:極めて濃く染色できる
○:濃く染色できる
△:薄くしか染色されない
×:染色されない
<染色の均一性>
◎:染色ムラがなく極めて均一に染色できる
○:ほとんど染色ムラがなく均一に染色できる
△:若干の染色ムラがある
×:染色ムラが大きい
<毛髪のつや>
◎:非常につやがある
○:つやがある
△:あまりつやがない
×:つやがほとんどない
<毛髪の感触>
◎:非常になめらかでしっとり感がある
○:なめらかでしっとり感がある
△:少しなめらかさに欠けている
×:ぱさついて、なめらかさが感じられない
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
表2から明らかなように、プルラン及びα−マルトシルα,α−トレハロースを配合していない染毛第2剤を使用した染毛処理剤(標品1)は、6つの評価項目の何れにおいても、×或いは△と評価された。また、α−マルトシルα,α−トレハロースを0.5%配合した染毛第2剤を使用した染毛処理剤(標品2)、及び、これにプルランを0.001%配合した染毛第2剤を使用した染毛処理剤(標品3)を使用した場合には、何れの評価項目においても○と評価された。これに対して、α−マルトシルα,α−トレハロースを0.5%と、プルランを0.01%乃至5%配合した染毛第2剤(標品4乃至8)を使用した場合には、何れの評価項目も◎と評価された。また、プルランを10%配合した染毛第2剤(標品9)を使用した場合には、毛髪の感触が○と評価された以外は、他の何れの項目も◎と評価され、プルランを15%配合した染毛第2剤(標品10)を使用した場合には、毛髪の感触が△、毛髪のつや及び染色の均一性が○と評価され、それ以外の項目は何れも◎と評価された。また、過酸化水素残存率についてみると、プルラン及びα−マルトシルα,α−トレハロースを配合していない染毛第2剤(標品1)では95.1%であったのに対して、α−マルトシルα,α−トレハロースを0.5%配合した染毛第2剤(標品2)、及び、これにプルランを0.001%配合した染毛第2剤(標品3)を使用した場合には、何れも97.5%となった。これに対して、α−マルトシルα,α−トレハロースを0.5%と、プルランを0.01%配合した染毛第2剤(標品4)では、98.3%、となり、0.1%乃至15%のプルランを配合した染毛第2剤(標品5乃至標品10)では、99.5%以上の残存率を示した。
【0063】
<実験2>
<過酸化水素の安定化に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体の影響>
過酸化水素の安定化に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体の影響を調べる試験を以下のように行った。
【0064】
<試験用の染毛処理剤の調製>
実験1と同様に、表1に示す配合処方より染毛第1剤を調製した。また、表3に示す配合処方により9種類の染毛第2剤を調製後、50℃の恒温槽で4週間保存した。なお、プルラン及びα,α−トレハロースの糖質誘導体は、実験1で使用したものを使用した。
【0065】
<試験方法>
実験1と同様に、染毛第2剤中の過酸化水素量を測定し、製造直後の過酸化水素量を100とした相対値を求め過酸化水素残存率(%)として表3に示す。さらに、パネラーとして白髪の人90名をランダムに、10名ずつ9のグループに分け、染毛処理試験を行った。すなわち、上記染毛第1剤と9種類の染毛第2剤の何れか1種を混合比(質量比)1:1.5で、ノズル付きの容器に入れて混合して染毛処理剤の標品を調製した。この9種類の染毛処理剤の標品(標品1乃至9)の何れか1種を吐出させた泡100gを、それぞれ10名のパネラーの毛髪全体に塗布し、30分間放置した後、軽く水洗、シャンプーすることにより毛髪の染色を行った。染毛処理後、実験1と同じ評価項目について、実験1と同じ基準により評価して、その結果を表3に併せて示す。
【0066】
【表3】

【0067】
表3から明らかなように、プルランを0.1%配合した染毛第2剤を使用した染毛処理剤(標品1)を使用した場合は、染色性及び染色の均一性が△と評価された以外の項目は何れも○と評価された。これに対して、プルランを0.1%とα−マルトシルα,α−トレハロースを0.005%配合した染毛第2剤を使用した染毛処理剤(標品2)を使用した場合には、6つの評価項目のうち、塗布性、コンディショニング効果が◎と評価され、残りの4項目は何れも○と評価された。また、プルランを0.1%とα−マルトシルα,α−トレハロースを0.05%乃至15%配合した染毛第2剤を使用した染毛処理剤(標品3乃至8)を使用した場合には、何れの評価項目においても◎と評価された。また、プルランを0.1%とα−マルトシルα,α−トレハロースを20%配合した染毛第2剤(標品9)を使用した染毛処理剤の場合には、毛髪のつや及び毛髪の感触が○と評価された以外は、他の何れの項目も◎と評価された。また、過酸化水素残存率についてみると、プルランを0.1%配合した染毛第2剤(標品1)では95.2%、プルランを0.1%とα−マルトシルα,α−トレハロースを0.005%配合した染毛第2剤では95.6%となり、プルランもα−マルトシルα,α−トレハロースも配合していない染毛第2剤(実験1の標品1)と同程度の残存率となった。また、プルランを0.1%とα−マルトシルα,α−トレハロースを0.05%配合した染毛第2剤(標品3)で、97.8%となった。これに対して、プルランを0.1%とα−マルトシルα,α−トレハロースを0.5%以上配合した染毛第2剤(標品3乃至9)では、何れも99.5%以上となった。
【0068】
<実験3>
<過酸化水素の安定化に及ぼすα,α−トレハロースの影響>
過酸化水素の安定化に及ぼすα,α−トレハロースの影響を調べる試験を以下のように行った。
【0069】
<試験用の染毛処理剤の調製>
実験1と同様に、表1に示す配合処方より染毛第1剤を調製した。また、表4に示す配合処方により9種類の染毛第2剤を調製後、50℃の恒温槽で4週間保存した。なお、プルランは、実験1で使用したものと同じものを使用した。また、α,α−トレハロースは市販の化粧品用トレハロース(株式会社林原生物化学研究所販売)を使用した。
【0070】
<試験方法>
実験1と同様に、染毛第2剤中の過酸化水素量を測定し、製造直後の過酸化水素量を100とした相対値を求め過酸化水素残存率(%)として表4に示す。さらに、パネラーとして白髪の人90名をランダムに、10名ずつ9のグループに分け、染毛処理試験を行った。すなわち、上記染毛第1剤と9種類の染毛第2剤の何れか1種とを混合比(質量比)1:1.5で、ノズル付きの容器に入れて混合し、染毛処理剤の標品を調製した。この9種類の染毛処理剤の標品(標品1乃至9)の何れか1種を吐出させた泡100gを、それぞれ10名のパネラーの毛髪全体に塗布し、30分間放置した後、軽く水洗、シャンプーすることにより毛髪の染色を行った。染毛処理後、実験1と同じ評価項目について、実験1と同じ基準により評価して、その結果を表4に併せて示す。
【0071】
【表4】

【0072】
表4から明らかなように、プルランを0.1%配合した染毛第2剤を使用した染毛処理剤(標品1)を使用した場合は、染色性及び染色の均一性が△と評価された以外の項目は何れも○と評価された。これに対して、プルランを0.1%とα,α−トレハロースを0.005%配合した染毛第2剤を使用した染毛処理剤(標品2)を使用した場合には、6つの評価項目のうち、塗布性、コンディショニング効果が◎と評価され、残りの4項目は何れも○と評価された。また、プルランを0.1%とα,α−トレハロースを0.05%乃至15%配合した染毛第2剤を使用した染毛処理剤(標品3乃至8)を使用した場合には、何れの評価項目においても◎と評価された。また、プルランを0.1%とα,α−トレハロースを20%配合した染毛第2剤(標品9)を使用した染毛処理剤の場合には、毛髪のつや及び毛髪の感触が○と評価された以外は、他の何れの項目も◎と評価された。また、過酸化水素の残存率についてみると、プルランを0,1%配合した染毛第2剤(標品1)では95.1%、プルランを0.1%とα,α−トレハロースを0.005%配合した染毛第2剤(標品2)では95.5%となり、プルランもα,α−トレハロースも配合していない染毛第2剤(実験1の標品1)と同程度の残存率となった。また、プルランを0.1%とα,α−トレハロースを0.05%配合した染毛第2剤で、97.8%となった。これに対して、プルランを0.1%とα,α−トレハロースを0.5%以上配合した染毛第2剤(標品4乃至9)では、何れも99.5%以上となった。
【0073】
実験1乃至実験3の結果は、染毛第2剤に、プルランと、α,α−トレハロース又はα,α−トレハロースの糖質誘導体とを配合することにより、これらを配合していない染毛第2剤、或いは、その何れか一方のみを配合した場合と較べて、染毛処理剤の染色性(塗布性、染色性、染色の均一性)及び使用感(コンディショニング効果、毛髪のつや、毛髪の感触)の何れについても向上できることを物語っている。そして、その際のプルランの配合量は、染毛第2剤の総質量の0.01%乃至5%が望ましいことを物語っている。また、α,α−トレハロース又はα,α−トレハロースの糖質誘導体の使用量は、0.05%乃至15%が望ましいことを物語っている。
【0074】
過酸化水素の保存安定性(残存率)の点からは、α,α−トレハロース又はα,α−トレハロースの糖質誘導体単独でも、過酸化水素の保存安定性を向上できるものの、その効果は、α,α−トレハロース又はα,α−トレハロースの糖質誘導体に加えてプルランを配合することにより、さらに向上することが可能であることを物語っている。その場合のα,α−トレハロース又はα,α−トレハロースの糖質誘導体の配合量は、染毛第2剤の総質量に対して0.05%乃至15%が望ましく、0.5%乃至15%が特に望ましく、また、プルランの配合量は、染毛第2剤の総質量に対して0.01%以上が望ましく、0.1%以上が特に望ましいことを物語っている。
【0075】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に何ら限定されることはない。
【実施例1】
【0076】
<染毛処理剤>
表5に示す配合処方に基づき、染毛第1剤と染毛第2剤を調製し、実験1と同じ方法で染毛処理剤を調製した(実施例1)。対照として、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質及び/又はプルランを含まない表5に示す配合処方の染毛処理剤を調製した(比較例1乃至3)。各々の処方の染毛処理剤を用いて、実験1と同様に、それぞれ白髪の10名のパネラーの毛髪を処理し、実験1と同じ評価項目について、同じ評価方法で評価して、その結果を表5に併せて示す。さらに、下記に示す方法により、これらの染毛処理剤を切除した毛髪の束(以下、「毛束」という。)に塗布した際の、平均摩擦係数及び摩擦係数変動を求め、プルラン及びα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質無添加の染毛処理剤(比較例3)を塗布したときの測定値を100とした相対値を求めて表5に併せて示す。なお、本実施例では、プルランは、平均分子量約200,000ダルトン(株式会社林原生物化学研究所販売、化粧品用)を使用した。また、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質は、固形分換算で、α−マルトシルα,α−トレハロースを約53%、これ以外のα,α−トレハロースの糖質誘導体を約12%、マルチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトールなどのマルトオリゴ糖の糖アルコールを合計で約35%含有するシラップ(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「トルナーレ」)を使用した。また、染毛第2剤は、実験1と同一条件で2ヶ月間保存したものを使用した。
<平均摩擦係数及び摩擦係数変動の測定方法>
ヒトの毛束を、表5に示す配合の実施例1或いは比較例1乃至3の染毛処理剤で、パネラーの毛髪と同様に処理した。この毛束を、テンシロン万能試験機(株式会社エー・アンド・ディ販売、型番「RTC−1325A」)を使用して、毛束上で毛根方向から毛先方向へ接触子を一定の速度(30mm/分)で牽引したときの荷重を測定して、平均摩擦係数及び摩擦係数変動を計算した。荷重は、毛束を、接触子と接触させる面を、90度ずつ時計回りに回転させて、4面について測定した。測定は、室温20℃、湿度65%の環境下で行った。接触子は底面3cm×3cm、質量約27gのものを使用し、毛束との接触面(底面)には、人工皮革(出光テクノファイン株式会社販売、製品名「サプラーレ」)を両面テープで貼り付けて使用した。
【0077】
【表5】

【0078】
表5から明らかなように、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質及びプルランを配合していない染毛処理剤(比較例3)を使用した場合には、何れの評価項目においても×又は△と評価された。また、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質を配合した染毛処理剤(比較例1)を使用した場合には、何れの評価項目も○と評価された。また、プルランを配合した染毛処理剤(比較例2)を使用した場合には、染色性及び染色の均一性が△と評価され、それ以外の項目は○と評価された。これに対して、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質及びプルランを配合した染毛処理剤(実施例1)を使用した場合には、使用感がよく、しかも、過酸化水素が安定に保持されているので、染色性に優れており、評価した6種類の何れの項目においても◎と評価された。また、平均摩擦係数及び摩擦係数変動は、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質及びプルランを配合していない染毛処理剤(比較例3)よりも、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質を配合した染毛処理剤(比較例1)或いは、プルランを配合した染毛処理剤(比較例2)を使用した場合に低下し、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質及びプルランを配合した染毛処理剤(実施例1)を使用した場合に最も低値を示し、すべり性のパラメータの値の低下と毛髪のなめらかさの感触の評価と相関した。この結果は、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質及びプルランを配合した染毛処理剤は、染色性及び使用感に優れていることを物語っている。
【実施例2】
【0079】
<染毛処理剤>
実施例1の染毛第2剤のα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質5%配合に代えてα,α−トレハロース3%、或いは、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質1%とα,α−トレハロース4%となるように配合した以外は同一の組成の2種類の染毛処理剤を調製した。これらの染毛処理剤は、何れも過酸化水素の分解が抑制され、染色性及び使用感に優れている。
【実施例3】
【0080】
<染毛処理剤>
実施例1の染毛第1剤に、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質を5%及び/又はプルランを0.3%配合した以外は同一の組成の3種類の染毛処理剤を調製した。これらの染毛処理剤は、染毛第1剤にα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質及びプルランを配合していないもの(実施例1)に比して、何れも染色性及び使用感に優れている。
【実施例4】
【0081】
<脱色・脱染用処理剤>
表6に示す配合処方に基づき、毛髪の脱色・脱染用処理剤の第1剤(以下、「脱色第1剤」という。)と第2剤(以下、「脱色第2剤」という。)(実施例4及び比較例4乃至6)とを調製した。この脱色第1剤と脱色第2剤を混合比(質量比)1:1.5で、ノズル付きの容器に入れて混合して毛髪の脱色・脱染用処理剤の標品を調製した。この脱色・脱染用処理剤の何れか1種を吐出させた泡100gを、それぞれ、黒髪の10名のパネラーの毛髪全体に塗布し、30分間放置した後、軽く水洗、シャンプーすることにより毛髪の脱色を行った。塗布性、コンディショニング効果、毛髪のつや及び毛髪の感触については、実験1と同じ評価方法で、泡立ち、泡持ち、脱色性、脱色の均一性については下記に示す評価基準で評価して、その結果を表6に併せて示す。なお、プルラン及びα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質は実施例1と同じものを使用した。脱色第2剤は、実験1と同じ条件で2ヶ月間保存したものを使用した。
【0082】
<評価基準>
泡立ち
◎:極めて均一できめ細かい泡
○:均一できめ細かい泡
△:不均一できめが粗い泡
×:泡になりきれず、水分が混じる
<泡持ち>
◎:非常に持続性が長く、放置時まで泡が持続する
○:十分な持続性を有し、塗布後もしばらく泡が持続する
△:塗布する上で問題のない持続性を有するが、塗布した後すぐに泡が消える
×:吐出後すぐに泡が消え、塗布中に液ダレを生じることがある
<脱色性>
◎:極めてよく脱色できる
○:よく脱色できる
△:少しか脱色されない
×:脱色されない
<脱色の均一性>
◎:脱色ムラがなく極めて均一に染色できる
○:ほとんど脱色ムラがなく均一に染色できる
△:若干の脱色ムラがある
×:脱色ムラが大きい
【0083】
【表6】

【0084】
表6から明らかなように、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質及びプルランを配合していない脱色・脱染用処理剤(比較例6)を使用した場合には、何れの評価項目においても×又は△と評価された。また、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質を配合した脱色・脱染用処理剤(比較例4)を使用した場合には、何れの評価項目も○と評価された。また、プルランを配合した脱色・脱染用理剤(比較例5)を使用した場合には、泡持ち、染色性及び染色の均一性が△と評価され、それ以外の項目は○と評価された。これに対して、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質及びプルランを配合した脱色・脱染用処理剤(実施例4)を使用した場合には、使用感がよく、しかも、過酸化水素が安定に保持されているの、脱色性に優れており、評価した8種類の何れの項目においても◎と評価された。この結果は、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質及びプルランを配合した脱色・脱染用処理剤は、脱色・脱染性及び使用感に優れていることを物語っている。また、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質及びプルランを加えることにより、泡立ち、泡持ち、毛髪のつや、毛髪の感触も改善されることは、これらの糖質が、当該処理剤の使用感の向上に効果的であること、その効果は両者を併用することで増強できることを物語っている。
【実施例5】
【0085】
<脱色・脱染用処理剤>
実施例4の脱色第2剤のα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質4%に代えてα,α−トレハロース2%、或いは、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質1%とα,α−トレハロース0.5%とを配合した以外は同一の組成の2種類の脱色・脱染用処理剤を調製した。これらの脱色・脱染用処理剤は、何れも過酸化水素の分解が抑制され、脱色・脱染性及び使用感に優れている。
【実施例6】
【0086】
<パーマネントウェーブ用処理剤>
表7に示す配合処方に基づき、パーマネントウェーブ用処理剤の第1剤(以下、「パーマネント第1剤」という。)と第2剤(以下、「パーマネント第2剤」という。)(実施例6及び比較例7乃至9)とを調製した。このパーマネント第1剤とパーマネント第2剤を使用し、常法により、それぞれ10名のパネラーの毛髪にパーマネント処理を施した。これらのパーマネント第1剤及び第2剤の塗布性、パーマネントウェーブ用処理剤処理後のコンディショニング効果、毛髪のつや、毛髪の感触については実験1と同じ評価方法で評価し、パーマネント効果は下記評価基準で評価して、その結果を表7に併せて示す。なお、プルラン及びα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質は実施例1と同じものを使用した。パーマネント第2剤は、実験1と同じ条件で2ヶ月間保存したものを使用した。また、パーマネント第1剤とパーマネント第2剤の塗布性の評価結果は、両者を使用したときの評価に差がなかったので、一つの欄にまとめて示した。
【0087】
<評価基準>
<パーマネント効果(ウェーブ形成又は縮毛及び癖毛の矯正)>
◎:極めて強い効果がある
○:強い効果がある
△:弱い効果しかない
×:効果がない
【0088】
【表7】

【0089】
表7から明らかなように、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質及びプルランを配合していないパーマネントウェーブ用処理剤(比較例9)を使用した場合には、何れの評価項目においても×又は△と評価された。また、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質を配合したパーマネントウェーブ用処理剤(比較例7)を使用した場合には、何れの評価項目も○と評価された。また、プルランを配合したパーマネントウェーブ用処理剤(比較例8)を使用した場合には、コンディショニング効果及びパーマネント効果が△と評価され、それ以外の項目は○と評価された。これに対して、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質及びプルランを配合したパーマネントウェーブ用処理剤(実施例5)を使用した場合には、何れの評価項目も◎と評価された。この結果は、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質及びプルランを配合したパーマネントウェーブ用処理剤は、使用感がよく、しかも、過酸化水素が安定に保持されているので、パーマネントウェーブ形成又は縮毛及び癖毛の矯正効果に優れていることを物語っている。
【実施例7】
【0090】
<パーマネントウェーブ用処理剤>
実施例6のパーマネント第2剤のα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質2%に代えてα,α−トレハロース2%、或いは、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質0.5%とα,α−トレハロース0.5%とを配合した以外は同一の組成の2種類のパーマネントウェーブ用処理剤を調製した。これらのパーマネントウェーブ用処理剤は、何れも過酸化水素の分解が抑制され、パーマネントウェーブ形成又は縮毛及び癖毛の矯正効果に優れている。
【実施例8】
【0091】
<パーマネントウェーブ用処理剤>
実施例6のパーマネントウェーブ第1剤にα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質2%及び/又はプルラン1.0%を配合した以外は同一の組成の3種類のパーマネントウェーブ用処理剤を調製した。これらのパーマネントウェーブ用処理剤は、パーマネントウェーブ第1剤にα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質及びプルランを配合していない処理剤(実施例6)に較べて、何れも過酸化水素の分解が抑制され、パーマネントウェーブ形成又は縮毛及び癖毛の矯正効果に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0092】
叙述のとおり、本発明の酸化剤含有組成物は、過酸化水素をはじめとする酸化剤の保存安定性が向上するので、毛髪処理剤として使用すると、染色性、脱色性、或いは、パーマネントウェーブ形成又は縮毛及び癖毛の矯正効果に優れている。また、本発明の酸化剤組成物乃至これを配合した毛髪処理剤は、使用用感に優れ、使用後の毛髪に、良好な感触を付与することができる。本発明は、斯くも顕著な作用効果を奏する発明であり、斯界に多大の貢献をする、誠に意義のある発明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤、平均分子量が5,000〜1,000,000ダルトンのプルラン、α,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体、及び、水を含有することを特徴とする毛髪処理剤用の酸化剤含有組成物。
【請求項2】
さらに、α,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体以外の糖類、糖アルコール類、カチオン性高分子化合物及び界面活性剤から選ばれる何れか1種又は2種以上の化合物を含有する請求項1に記載の毛髪処理剤用の酸化剤含有組成物。
【請求項3】
糖類が、α−サイクロデキストリン、β−サイクロデキストリン、γ−サイクロデキストリン、環状四糖から選ばれる何れか1種又は2種以上である請求項2に記載の毛髪処理剤用の酸化剤含有組成物。
【請求項4】
糖アルコール類が、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトールから選ばれる何れか1種又は2種以上である請求項2に記載の毛髪処理剤用の酸化剤含有組成物。
【請求項5】
剤形が、液状である請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の毛髪処理剤用の酸化剤含有組成物。
【請求項6】
染毛処理剤、脱色・脱染処理剤又はパーマネントウェーブ用剤の何れかに使用する請求項1乃至5の何れかに記載の酸化剤含有組成物。

【公開番号】特開2008−208120(P2008−208120A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19780(P2008−19780)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000155908)株式会社林原生物化学研究所 (168)
【Fターム(参考)】