説明

毛髪化粧料用基剤及び毛髪化粧料

【課題】毛髪化粧料から形成される皮膜のべたつきを低減すると共に平滑性を向上し、しかも皮膜の柔軟性を維持すると共に毛髪化粧料の過度の粘度上昇を抑制する。
【解決手段】エチレン性不飽和単量体成分を親水性溶媒又は水と親水性溶媒の混合溶媒の存在下にラジカル重合開始剤を用いて溶液共重合させる。エチレン性不飽和単量体成分が、(a)下記一般式(1)で表されるポリシロキサン基含有ラジカル重合性単量体、(b)分子内にカルボキシル基を少なくとも一つ有するエチレン性不飽和単量体、(c)(メタ)アクリル酸と炭素数1〜18の直鎖状、脂環状又は分岐鎖を有する脂肪族モノアルコールとのエステル、及び他のエチレン性不飽和単量体を含有する。Xはポリエーテル変性又はアルキル変性のアクリロイル基、mは自然数、nは2以上の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は毛髪化粧料用基剤、及びこの毛髪化粧料用基剤を含有する毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘアスプレー、ヘアムース、ヘアセットローション、ヘアジェル等の整髪用の化粧料(毛髪化粧料)として、種々の皮膜形成用の基剤(毛髪化粧料用基剤)を含有するものが提供されている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
また、近年、整髪後の毛髪のべたつき低減、平滑性向上、使用感の向上、光沢の付与などの目的で、片末端タイプの単官能もしくは両末端タイプの二官能のポリシロキサン基含有単量体とその他の単量体を重合させて得られる共重合体を毛髪化粧料用基剤として用いることが提案されている(特許文献4,5等参照)。
【0004】
しかし、片末端タイプの単官能のポリシロキサン基含有単量体を用いる場合には、整髪後の毛髪に形成される皮膜のべたつき低減、平滑性の向上などが十分ではないという問題がある。
【0005】
また両末端タイプの二官能のポリシロキサン基含有単量体を用いる場合には共重合体の粘度上昇が激しく、この共重合体を毛髪化粧料用基剤として用いると、整髪後の毛髪の柔軟性が悪化したり、エアゾールスプレーで噴霧する場合の噴霧性に悪影響を及ぼしたりするという問題がある。このため、両末端タイプの二官能のポリシロキサン基含有単量体は、毛髪化粧料の過度の粘度上昇を抑制するため、微量しか使用することができず、整髪後の毛髪に形成される皮膜のべたつき低減や平滑性向上などの効果が充分には得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3310150号公報
【特許文献2】特開平9−328414号公報
【特許文献3】特開2002−167316号公報
【特許文献4】特開平03−220114号公報
【特許文献5】特開平11−263708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、毛髪化粧料に配合される毛髪化粧料用基剤であって、毛髪化粧料から形成される皮膜のべたつきを低減すると共に平滑性を向上することができ、しかもこの皮膜の柔軟性を維持すると共に毛髪化粧料の過度の粘度上昇を抑制することができる毛髪化粧料用基剤、並びにこの毛髪化粧料用基剤を含有する毛髪化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る毛髪料用基剤は、エチレン性不飽和単量体成分を、親水性溶媒又は水と親水性溶媒の混合溶媒の存在下に、ラジカル重合開始剤を用いて溶液共重合させて得られる共重合体からなり、
前記エチレン性不飽和単量体成分が、
(a)下記一般式(1)で表されるポリシロキサン基含有ラジカル重合性単量体、
(b)分子内にカルボキシル基を少なくとも一つ有するエチレン性不飽和単量体、
(c)(メタ)アクリル酸と炭素数1〜18の直鎖状、脂環状又は分岐鎖を有する脂肪族モノアルコールとのエステル、及び
(d)前記(a)〜(c)成分以外のエチレン性不飽和単量体
を含有することを特徴とする。
【0009】
【化1】

【0010】
Xはポリエーテル変性又はアルキル変性のアクリロイル基、mは自然数、nは2以上の整数である。
【0011】
本発明においては、前記エチレン性不飽和単量体成分中における前記(a)成分の割合が0.5〜20質量%の範囲であることが好ましい。
【0012】
また、本発明において、毛髪料用基剤は塩基性化合物で中和されていることが好ましい。
【0013】
本発明に係る毛髪料は、前記毛髪料用基剤を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、毛髪化粧料用基剤がポリシロキサン基含有ラジカル重合性単量体を含むエチレン性不飽和単量体成分の共重合体であることから、毛髪化粧料による整髪後の毛髪のべたつきを低減すると共に平滑性を向上することができ、しかもこのポリシロキサン基含有ラジカル重合性単量体が一般式(1)で表される多官能のポリシロキサン基含有ラジカル重合性単量体であるため、共重合体中で分子間での架橋が生じにくくなって高分子量化が抑制され、この毛髪化粧料用基剤を含有する毛髪化粧料の粘度上昇を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。尚、以下の化合物名の表記における「(メタ)アクリ((meth)acry−)」は、「アクリ(acry−)」および「メタクリ(methacry−)]のうち一方又は双方を意味する。
【0016】
本発明に係る毛髪料用基剤は、エチレン性不飽和単量体成分を、親水性溶媒又は水と親水性溶媒の混合溶媒の存在下に、ラジカル重合開始剤を用いて溶液共重合させて得られる共重合体である。
【0017】
前記エチレン性不飽和単量体成分は、(a)ポリシロキサン基含有ラジカル重合性単量体、(b)分子内にカルボキシル基を少なくとも一つ有するエチレン性不飽和単量体、(c)(メタ)アクリル酸と炭素数1〜18の直鎖状、脂環状又は分岐鎖を有する脂肪族モノアルコールとのエステル、及び(d)前記(a)〜(c)成分以外のエチレン性不飽和単量体を含有する。
【0018】
(a)成分は、下記一般式(1)で表される。
【0019】
【化2】

【0020】
式(1)中、Xはポリエーテル変性又はアルキル変性のアクリロイル基を示す。nは2以上の整数を示し、好ましくは2〜8の整数である。mは自然数であり、式(3)で示される化合物の分子量が1000〜20000となるような値であることが好ましい。
【0021】
エチレン性不飽和単量体成分中における前記(a)成分の割合は0.5質量%以上であることが好ましく、この場合、毛髪化粧料用基剤を含有する毛髪化粧料から形成される皮膜のべたつきを充分に抑制すると共に、その平滑性及び耐湿性を充分に向上することができる。またこの(a)成分の割合は20質量%以下であることが好ましく、この場合、毛髪化粧料用基剤の粘度上昇を抑制することで、毛髪化粧料用基剤としての使用性、及び毛髪化粧料基剤を含有する毛髪化粧料としての使用性を高めることができる。また、毛髪化粧料用基剤の毛髪への密着性を充分に高く維持することができ、これにより毛髪化粧料の使用時におけるフレーキングの発生を抑制することができる。
【0022】
(b)成分は、重合体中にカルボキシル基を導入することで、共重合体を塩基性化合物で中和する場合に皮膜に水溶性を付与し、皮膜の洗髪時除去性を向上させる。また、皮膜に高い洗髪時除去性が必要とされない場合でも、(b)成分は皮膜に適度な硬さを与えるために適量配合される。
【0023】
前記(b)成分の使用量は、エチレン性不飽和単量体成分全量中で10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であれば更に好ましい。この場合、皮膜を洗髪時に容易に洗浄除去することができると共に皮膜に適度な硬さを付与することができる。またこの(b)成分の使用量は40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であれば更に好ましい。この場合、皮膜の耐湿性を向上すると共に、整髪料を調製した場合に毛髪のセット力を長時間維持することができるようになる。特にこの使用量が15〜35質量%であれば、皮膜の洗髪除去性と耐湿性のバランスがとれ、整髪料を調製した場合には高湿下でのセット力を保ちつつ、洗髪時には皮膜を容易に洗い落とすことができると共に、共重合体を塩基性化合物で中和して用いる場合に、その皮膜に充分な水溶性を付与することができる。
【0024】
(b)成分における一分子中のカルボキシル基の数は特に制限されないが、例えば1〜2個とすることができる。(b)成分の具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸;マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等の不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル、2−メタアクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート;アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−プロペノイックアシッド、3−(2−カルボキシエトキシ)−3−オキシプロピルエステル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
【0025】
(c)成分は、樹脂の親油性及び皮膜の硬さ、柔軟性に関与する。この(c)成分を適宜配合することで、特に毛髪化粧料用基剤の液化石油ガスに対する溶解性を更に向上し、また皮膜の硬さを調整して毛髪化粧料用基剤が塗布された毛髪のセット性や乾燥時のフレーキング現象を大きく低減し、洗髪性を確保することができる。
【0026】
この(c)成分の使用量は特に制限されないが、エチレン性不飽和単量体成分中で5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であれば更に好ましい。この場合、毛髪化粧料用基剤の液化石油ガスに対する溶解性を特に向上することができる。またこの使用量は90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であれば更に好ましい。この場合、皮膜の洗髪除去性を特に向上することができる。
【0027】
(c)成分の具体例として、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸オレイル等が挙げられる。これらは一種単独で用いられ、或いは複数種が併用される。
【0028】
(d)成分は、例えば毛髪化粧料から形成される皮膜の硬さ、柔軟性、耐湿性、毛髪への密着性などを調節するために配合される。
【0029】
単量体(d)の使用量は特に制限されないが、エチレン性不飽和単量体成分中で60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であれば更に好ましい。この場合、皮膜の硬さ、柔軟性、耐湿性及び毛髪への密着性を特に良好なものとすることができ、セット保持力の低下、フレーキング等の毛髪化粧料に用いた場合に生じる不適切な性質を抑えることができ、毛髪化粧料用基剤として重要な性質を維持することができる。
【0030】
(d)成分としては、ノニオン性不飽和単量体(d1)及びイオン性不飽和単量体(d2)から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。前記イオン性不飽和単量体(d2)にはアニオン性不飽和単量体、カチオン性不飽和単量体及び両性不飽和単量体が含まれる。前記両性不飽和単量体には、両性不飽和単量体の前駆体、すなわち両性化により両性不飽和単量体となる単量体も含まれる。
【0031】
ノニオン性不飽和単量体(d1)の具体例としては、例えばアクリロニトリル;酢酸ビニル;スチレン;ビニルピロリドン;アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−t−オクチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の、(メタ)アクリル酸のエステル類;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等の、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル等の、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の、ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル類;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の、前記ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル類の水酸基末端がアルキルエーテル化されたもの;(メタ)アクリル酸グリセリル等の単官能不飽和単量体が挙げられる。これらのノニオン性不飽和単量体(d1)は一種単独で使用され、或いは二種以上が併用される。
【0032】
ノニオン性不飽和単量体(d1)のうち、特にN,N−ジメチルアクリルアミドが使用される場合、毛髪化粧料用基剤の水、アルコール及び液化石油ガスへの溶解性が特に向上する。この水、アルコール及び液化石油ガスは、毛髪化粧料に許容されている溶媒のなかでも、特に広く使用されている。特にN,N−ジメチルアクリルアミドの含有量がエチレン性不飽和単量体成分の総量に対して10〜100質量%である場合には、毛髪化粧料用基剤が優れた水溶性、アルコール溶解性、及び液化石油ガス溶解性を兼ね備えたものになる。
【0033】
イオン性不飽和単量体(d2)のうち、アニオン性不飽和単量体としては、例えばスルホン酸基含有単量体、リン酸基含有不飽和単量体等が挙げられる。
【0034】
上記アニオン性不飽和単量体のうち、スルホン酸基含有単量体としては、例えばビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸等のアルケンスルホン酸、α−メチルスチレンスルホン酸等の芳香族ビニル基含有スルホン酸;スルホン酸基含有(メタ)アクリルエステル系単量体、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド系単量体等が挙げられる。
【0035】
またアニオン性不飽和単量体のうち、リン酸基含有不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等のメタアクリロイルオキアルキルリン酸モノエステル等が挙げられる。
【0036】
上記イオン性不飽和単量体(d2)のうち、カチオン性不飽和単量体としては、例えば1〜3級アミノ基含有不飽和単量体、第4級アンモニウム塩基含有不飽和単量体等が挙げられる。
【0037】
上記カチオン性不飽和単量体のうち、1〜3級アミノ基含有不飽和単量体としては、例えば(メタ)アリルアミン、アミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノスチレン等のアミノ基含有芳香族ビニル系単量体等が挙げられる。
【0038】
上記カチオン性不飽和単量体のうち、第4級アンモニウム塩基含有不飽和単量体としては、例えば、上記の3級アミノ基含有不飽和単量体を、4級化剤(炭素数が1〜12のアルキルクロライド、ジアルキル硫酸、ジアルキルカーボネート、ベンジルクロライド等)を用いて4級化したもの等が挙げられる。具体的には、第4級アンモニウム塩基含有不飽和単量体として、例えば(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルモルホリノアンモニウムクロライド等のアルキル(メタ)アクリレート系第4級アンモニウム塩、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリエチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等のアルキル(メタ)アクリロイルアミド系第4級アンモニウム塩、ジメチルジアリルアンモニウムメチルサルフェート、トリメチルビニルフェニルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0039】
両性不飽和単量体としては、例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアミン誘導体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体、モノクロロ酢酸のアミノメチルプロパノール塩、モノクロロ酢酸のトリエタノールアミン塩、モノクロロ酢酸カリウム、モノブロモプロピオン酸ナトリウム等のハロゲン化脂肪酸塩による変性物、プロピオラクトン等のラクトン類、プロパンサルトン等のサルトン類による変性物等が挙げられる。
【0040】
また、両性不飽和単量体の前駆体として、例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアミン誘導体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体等が挙げられる。
【0041】
エチレン性不飽和単量体成分に両性不飽和単量体の前駆体が含まれる場合には、エチレン性不飽和単量体成分の重合後、この重合により得られる重合体中の、前記前駆体に由来する構造単位が、両性化剤(モノクロロ酢酸、モノブロモプロピオン酸、プロピオラクトン等のラクトン類;プロパンサルトン等のサルトン類等)で両性化される。両性化により副次的に生成する塩は、必要に応じて濾過、イオン交換等の適宜の手法で除去される。このように両性不飽和単量体の前駆体が使用されると、予め両性化された単量体が使用される場合よりもエチレン性不飽和単量体成分の重合反応が安定化する。
【0042】
前記重合方法として、親水性溶媒又は水と親水性溶媒の混合溶媒を用いた溶液共重合法が採用される。溶液共重合法が採用される場合、例えば親水性溶媒又は混合溶媒中にエチレン性不飽和単量体成分を溶解すると共にラジカル重合開始剤を添加して反応溶液を調製し、この反応溶液を窒素気流下、溶媒の沸点又はそれに近い温度で攪拌することによってエチレン性不飽和単量体成分を重合させることができる。この反応溶液中には重合反応の開始当初からエチレン性不飽和単量体成分に含まれる単量体の全種及び全量が溶解していてもよいが、エチレン性不飽和単量体成分に含まれる単量体の種類、量等に応じて、重合反応を進行させながら反応溶液中にエチレン性不飽和単量体成分を分割して添加し、或いは重合反応を進行させながら反応溶液中にエチレン性不飽和単量体成分を連続滴下してもよい。前記親水性溶媒の使用量は、重合反応終了時の溶液中の樹脂固形分濃度が20〜80質量%の範囲となるように調整されることが好ましい。
【0043】
溶液共重合に使用される溶媒は、上記のとおり親水性溶媒又は水と親水性溶媒の混合溶媒である。親水性溶媒は、水に対する溶解度が10g/水100g(25℃)以上である有機溶媒であることが好ましい。このような親水性溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコール及びグリセリン等の炭素数が1〜4の脂肪族1〜4価アルコール;アセトン;メチルセロソルブ;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のグリコールエーテル;ジオキサン;酢酸メチル;酢酸エチル;ジメチルホルムアミド等が挙げられる。親水性溶媒は一種単独で使用され、或いは二種以上が併用される。なお、毛髪化粧料用基剤は、人体の皮膚に付着する可能性があることを考慮すれば、重合時の溶媒としては、エタノール又は2−プロパノールを単独で使用し、或いは双方を併用するのがよい。
【0044】
ラジカル重合開始剤としては適宜のものが使用されるが、例えば過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化水素等の過酸化物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、4,4’−アゾビスー4−シアノ吉草酸、2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)−ジヒドロクロリド等のアゾ系化合物等を使用することが好ましい。
【0045】
また、反応溶液中には、分子量調節等のため、必要に応じて連鎖移動剤が添加されてもよい。連鎖移動剤としては、特に限定されないが、例えばラウリルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリセロール等のメルカプタン基を有する化合物;次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の無機塩等が挙げられる。連鎖移動剤の使用量は、重合体の分子量が所望の範囲となるように適宜決定されるが、通常、エチレン性不飽和単量体成分の総量100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲が好ましい。
【0046】
また、リビングラジカル重合法によりエチレン性不飽和単量体成分を重合させてもよい。この場合、重合体の重量平均分子量の調整が容易になると共に、連鎖移動剤を使用する場合よりも分子量分布の狭い重合体が生成する。
【0047】
エチレン性不飽和単量体成分の重合時の温度、時間等の重合条件は、エチレン性不飽和単量体成分やラジカル重合開始剤の種類等に応じ、高い反応率で重合反応が進行するように適宜設定される。重合反応は、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスの雰囲気下で行ってもよい。重合反応終了時の未反応モノマーの残存量は少量であるほど好ましい。
【0048】
このようなエチレン性不飽和単量体成分の重合反応により、エチレン性不飽和単量体成分の共重合体からなる毛髪化粧料用基剤を含有する溶液が生成する。
【0049】
また、この共重合体を、塩基性化合物で中和してもよい。この場合、毛髪化粧料用基剤に良好な水溶性を付与することができる。
【0050】
塩基性化合物として適宜の有機又は無機の塩基性化合物を使用することができる。有機の塩基性化合物は水溶性を有することが好ましい。この有機の塩基性化合物としては、例えば、モルホリン、N,N−ジメチルアミン、N−N−ジエチルアミン、エタノールアミン、N−N−ジエタノールアミン、N,N,N−トリエタノールアミン、2−アミノ−2メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。また無機の塩基性化合物としては、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。
【0051】
これらの塩基性化合物は一種単独で使用され、或いは二種以上が併用される。共重合体の中和率は適宜設定されるが、毛髪化粧料用基剤に充分に高い水溶性が付与されるためには、中和率が50〜100%の範囲であることが好ましい。
【0052】
この毛髪化粧料用基剤に必要に応じて紫外線防止剤、酸化防止剤、毛髪栄養剤等の種々の成分を配合することで、適宜の毛髪化粧料を調製することができる。この場合、溶液重合法によって生成した毛髪化粧料用基剤の溶媒溶液に必要に応じて種々の成分を配合して毛髪化粧料を調製することができる。また、この溶媒溶液から溶媒を留去して得られる固形状の毛髪化粧料用基剤に必要に応じて種々の成分を配合することで、毛髪化粧料を調製することもできる。
【0053】
例えば毛髪化粧料用基剤を、炭素数1〜4の脂肪族アルコール、エタノール濃度95体積%の含水エタノール等の含水アルコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の親水性溶媒及び水から選択される溶剤に溶解させることで、ヘアスプレー剤を調製することができる。このヘアスプレー剤中の毛髪化粧料用基剤の固形分濃度は0.5〜10質量%の範囲が好ましい。
【0054】
このヘアスプレー剤を噴射剤と共に耐圧容器内に加圧封入することで、ヘアスプレーを作製することができる。上記噴射剤としては、プロパン、ブタン、イソブタンを主成分とする液化石油ガス(LPG);トリクロロモノフルオロメタン(フロン11)、ジクロロジフルオロメタン(フロン12)、ジクロロテトラフルオロエタン(フロン114)、メチレンクロライド、ハイドロフルオロカーボン(HFC152a等)等を成分とするハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル;炭酸ガス等が挙げられる。これらの噴射剤は一種単独で使用され、或いは二種以上が併用される。耐圧容器内には、ヘアスプレー剤と噴射剤とを2:8〜8:2の質量比で封入することが好ましい。
【0055】
また、この毛髪化粧料用基剤の親水性溶媒溶液又は混合溶媒溶液に、更に各種添加剤を加えることで、ヘアクリーム、ヘアワックス、ヘアローション、ノンガスエアゾール剤(ヘアミスト剤)、ヘアジェル、ヘアスタイリングフォーム(ヘアムース)、カーラーウォーター等の毛髪化粧料を調製することができる。
【0056】
尚、この毛髪化粧料用基剤は、美顔パックのフィルム形成成分、ハンドクリームのバリヤー形成成分等の皮膚創面の被覆剤用としても好適に用いることができ、さらに、シャンプーやリンスの添加剤としても有用である。
【0057】
毛髪化粧料の調製時には、この毛髪化粧料用基剤と共に、アニオン性樹脂、カチオン性樹脂、両性樹脂及びノニオン性樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂が併用されてもよい。
【0058】
これらのアニオン性樹脂、カチオン性樹脂、両性樹脂及びノニオン性樹脂としては、例えば「薬事日報社編、「医薬部外品原料規格2006」、株式会社薬事日報社、平成18年6月16日」に適合するものが挙げられる。
【0059】
アニオン性樹脂の具体例としては、プラスサイズL−9540B(互応化学工業(株)製)等のアクリル樹脂アルカノールアミン液(成分コード500001);カーボポール940(B.F.Goodrich製)等のカルボキシビニルポリマー(成分コード101243);ウルトラホールド8(BASF社製)等のアクリル酸・アクリル酸アミド・アクリル酸エチル共重合体(成分コード522001);レジン28−1310(NSC社製)等の酢酸ビニル・クロトン酸共重合体液(成分コード522037);ガントレッツES−225(ISP社製)等のビニルメチルエーテル・マレイン酸エチル共重合体液(成分コード504304);ガントレッツES−425(ISP社製)等のビニルメチルエーテル・マレイン酸ブチル共重合体液(成分コード504305);ポリアクリル酸(成分コード108622)等が挙げられる。
【0060】
カチオン性樹脂の具体例としては、マーコート550(カルゴン社製)等のアクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体液(成分コード532001);ガフカット755(ISP社製)等のビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩液(成分コード520526);ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム液(成分コード506024)等が挙げられる。
【0061】
ノニオン性樹脂の具体例としては、ルビスコールK(BASF社製)等のポリビニルピロリドン(成分コード008805);酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体(成分コード523102);ポリアクリル酸アミド(成分コード520988)等が挙げられる。
【0062】
両性樹脂の具体例としては、プラスサイズL−401(互応化学工業株式会社製)等のポリメタクリロイルエチルジメチルベタイン液(成分コード521111);プラスサイズL−450(互応化学工業株式会社製)等のメタクリロイルエチルジメチルベタイン・塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体液(成分コード523245);ユカフォーマーAM−75(三菱化学株式会社製)等のN−メタクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体液(成分コード521112)等が挙げられる。
【0063】
これらの樹脂は固形状のものが販売され、或いはこれらの樹脂から調製された溶液や中和溶液が販売されている。これらの固形状の樹脂、溶液、中和溶液等を毛髪化粧料に配合することができる。また、固形状の樹脂から樹脂溶液や中和溶液等を調製し、この樹脂溶液や中和溶液等を毛髪化粧料中に配合してもよい。また、樹脂溶液から中和溶液を調製し、この中和溶液を毛髪化粧料に配合してもよい。
【0064】
毛髪化粧料中の毛髪化粧料用基剤の含有量は、毛髪化粧料の形態、毛髪化粧料の構成成分等に応じて適宜設定されるが、溶媒を含めた毛髪化粧料の全成分の総量に対して、好ましくは0.1〜10質量%、更に好ましくは0.5〜7質量%、特に好ましくは1〜5質量%の範囲とする。
【実施例】
【0065】
〔実施例1〜16、比較例1〜6〕
反応容器として、還流冷却器、温度計、窒素置換用管、滴下漏斗及び撹拌機が取り付けられた容量1リットルの四つ口フラスコを用い、この反応容器中にエタノール100質量部を仕込み、窒素気流下、昇温した。この反応容器中のエタノールが還流状態(約80℃)になったところで、このエタノール中に重合開始剤を添加した。
【0066】
次に、前記開始剤の添加後、表1に示すエチレン性不飽和単量体成分を反応容器内に加えて8時間重合を行なった。重合反応後、50℃で有機塩基性物質を同量のエタノールで希釈した溶液を反応容器中に、重合体の中和率が表1に示す値になるように加えた。更に反応容器内の溶液に、この溶液の不揮発分量が40質量%となるように精製水を加えて希釈した。これにより、毛髪化粧料用基剤の溶液を得た。
【0067】
この毛髪化粧料用基剤の溶液の状態を観察し、均一で透明な液状となっているものを「○」、一部にゲル化が生じているものを「△」、全体的にゲル化が生じているものを「×」と評価した。その結果を表1に併せて示す。
【0068】
【表1】

【0069】
表1中の「成分(a)」及び「シリコンアクリレート」の詳細は次の通りである;
TEGORad2100は一般式(1)で表され、官能基としてアルキル変性アクリロイル基を有する5官能のポリシロキサン基含有ラジカル重合性単量体(エボニックテグサジャパン株式会社製の商品名TEGO(登録商標)Rad2100);
TEGORad2250は一般式(1)で表され、官能基としてポリエーテル変性アクリロイル基を有する2官能のポリシロキサン基含有ラジカル重合性単量体(エボニックテグサジャパン株式会社製の商品名TEGO(登録商標)Rad2250);
TEGORad2300は一般式(1)で表され、官能基としてアルキル変性アクリロイル基を有する2官能のポリシロキサン基含有ラジカル重合性単量体(エボニックテグサジャパン株式会社製の商品名TEGO(登録商標)Rad2300);
TEGORad2600は一般式(1)で表され、官能基としてアルキル変性アクリロイル基を有する8官能のポリシロキサン基含有ラジカル重合性単量体(エボニックテグサジャパン株式会社製の商品名TEGO(登録商標)Rad2600);
サイラプレーンFM−0711は官能基として片末端にアルキル変性アクリロイル基を有するポリシロキサン基含有ラジカル重合性単量体(チッソ株式会社製の商品名サイラプレーンFM−0711);
サイラプレーンFM−7711は官能基として両末端にアルキル変性アクリロイル基を有するポリシロキサン基含有ラジカル重合性単量体(チッソ株式会社製の商品名サイラプレーンFM−7711)。
【0070】
[処方例1〜16、比較処方例1〜6]
実施例1〜16及び比較例1〜6で得られた毛髪化粧料用基剤の溶液(不揮発分量40質量%)を用い、これに表2に示す割合で溶媒を加えることで、ヘアスプレー剤を調製した。
【0071】
但し、全体的にゲル化が生じている比較例5,6の毛髪化粧料用基剤の溶液を使用した比較処方例5,6では、噴霧可能なヘアスプレー剤を調製することはできなかった。
【0072】
[評価試験]
各処方例及び比較処方例(比較処方例5,6を除く)で得られたヘアスプレー剤について、次のような評価試験をおこなった。その結果を下記表1に示す。
【0073】
(1)噴霧性
スプレー噴霧時の霧状の粒子の様子を目視で観察し、次のようにして評価した。
○:粒子が細かい。
△:粒子がやや細かい。
×:粒子が粗い。
【0074】
(2)平滑性
乾燥させた長さ22cm、重さ約2gの毛束へ向けてスプレー噴霧し、この毛束の指触時の滑りの良さをどのように感じたかを、次のようにして官能評価した。
◎:非常に滑らかで滑る
○:滑らかで滑る。
△:ややごわつく。
×:ごわつく。
【0075】
(3)耐粘着性
乾燥させた長さ22cm、重さ約2gの毛束へ向けてスプレー噴霧し、この毛束の指触時の粘着性をどのように感じたかを、次のようにして官能評価した。
◎:粘着性を感じず、乾燥しているように感じる。
○:粘着性を感じず、やや乾燥しているように感じる。
△:やや粘着性を感じる。
×:粘着性を感じる。
【0076】
(4)柔軟性
乾燥させた長さ22cm、重さ約2gの毛束へ向けてスプレー噴霧し、この毛束の指触時の毛束の硬さをどのように感じたかを、次のようにして官能評価した。
○:柔軟に感じる。
△:やや硬さを感じる。
×:非常に硬く感じる。
【0077】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和単量体成分を、親水性溶媒又は水と親水性溶媒の混合溶媒の存在下に、ラジカル重合開始剤を用いて溶液共重合させて得られる共重合体からなり、
前記エチレン性不飽和単量体成分が、
(a)下記一般式(1)で表されるポリシロキサン基含有ラジカル重合性単量体、
(b)分子内にカルボキシル基を少なくとも一つ有するエチレン性不飽和単量体、
(c)(メタ)アクリル酸と炭素数1〜18の直鎖状、脂環状又は分岐鎖を有する脂肪族モノアルコールとのエステル、及び
(d)前記(a)〜(c)成分以外のエチレン性不飽和単量体
を含有することを特徴とする毛髪化粧料用基剤。
【化1】

Xはポリエーテル変性又はアルキル変性のアクリロイル基。mは自然数。nは2以上の整数。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和単量体成分中における前記(a)成分の割合が0.5〜20質量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の毛髪化粧料用基剤。
【請求項3】
塩基性化合物で中和されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の毛髪化粧料用基剤。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の毛髪化粧料用基剤を含有することを特徴とする毛髪化粧料。

【公開番号】特開2011−121910(P2011−121910A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281767(P2009−281767)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000166683)互応化学工業株式会社 (57)
【Fターム(参考)】