説明

毛髪化粧料組成物及び多剤式毛髪化粧料組成物

【課題】毛髪のダメージ修復の効果を確保したもとで、毛髪の根元部から毛先部に至る各部における手触りを良好かつ均一に改善する毛髪化粧料組成物を提供する。
【解決手段】(A)成分:トレハロース又はその誘導体の1種以上を0.01〜5質量%の範囲内、(B)成分:ミツロウを0.01〜5質量%の範囲内、(C)成分:フェニル変性シリコーンの1種以上を0.1〜5質量%の範囲内及び(D)成分:アミノ変性シリコーンの1種以上を0.01〜3質量%の範囲内で含有する毛髪化粧料組成物。これを含んで構成される多剤式毛髪化粧料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は毛髪化粧料組成物及び多剤式毛髪化粧料組成物に関する。更に詳しくは本発明は、毛髪の根元部から毛先部に行くにつれてダメージ度合いが異なっていても均一な手触りとツヤを付与し、処理後の毛髪パサ付きの改善効果にも優れる毛髪化粧料組成物と、この毛髪化粧料組成物を含んで構成され、上記の効果が更に顕著である多剤式毛髪化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、染毛処理やパーマネントウェーブ処理その他の原因による毛髪のダメージを修復するために、ヘアトリートメント等の毛髪化粧料組成物が広く使用されている。これらの毛髪化粧料組成物は通常、油分を補い毛髪に柔らかさを付与するための動植物油脂や合成エステル油類、指通りを良くし艶を与えるためのシリコーン類といった成分を種々に組み合わせて配合している。
【0003】
例えば、下記の特許文献1は、炭化水素、脂肪酸エステル、ジメチルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、ロウ類を含有し、更に(A)グリコシルトレハロースと(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤とを一定の質量比で含有する毛髪化粧料組成物を開示する。
【0004】
一方、多種の成分を単独の組成物に配合する場合、成分間の相乗的作用を期待できる一方で、組成物中の各成分の濃度が相対的に低くなったり、特定の成分が持つ優れた効果が成分間の負の相互作用により相殺されたりする恐れがあるという懸念から、多種の成分を複数の剤に分散して配合する多剤式の毛髪化粧料組成物も提供されている。
【0005】
下記の特許文献2は、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル及びジカプリン酸ネオペンチルグリコールを含有し、好ましくは更に多価アルコール、油性成分としてのエステル類やシリコーン類等を含有するヘアトリートメントI剤と、ジカプリリルエーテル及びオレイン酸フィトステリルを含有するヘアトリートメントII剤とを含む多剤式のヘアトリートメントセットを開示する。これらの毛髪への適用に当たっては、I剤を塗布した後に洗い流し、次いでII剤を塗布するが、II剤は洗い流さないタイプであるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−179593号公報
【0007】
【特許文献2】特開2009−286774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、染毛処理やパーマネントウェーブ処理その他の原因による毛髪のダメージ度合いは、通常、毛髪の根元部から毛先部に行くにつれて大きくなる。なぜなら、毛髪の新生部分である根元部は上記の毛髪処理その他のダメージ原因となる化学的、物理的刺激をほとんど受けていないが、毛先部に行くにつれて上記の刺激を受けた履歴は増大するからである。このような毛髪は、根元部から毛先部に行くにつれて手触りが悪くなるという問題がある。染毛処理やパーマネントウェーブ処理等を繰り返して受けたハイダメージ毛では、この問題が特に顕著である。
【0009】
従来の毛髪化粧料組成物による毛髪ダメージの修復においても、ダメージ修復の対象は毛髪全体であり、毛髪の根元部から毛先部に至る各部のダメージがそれなりに修復されることを期待できる。しかしその場合、「毛髪の根元部から毛先部に至る各部のダメージの度合いが異なる」という前提が軽視されると、毛髪の根元部は十分に良好な手触りとなるが、毛先部に行くにつれて手触りの改善効果が相対的に悪いという不均一が生じる。このような不均一は「毛髪の各部における手触りが一様に悪い」という場合とは異なった不快感を与える。
【0010】
前記した特許文献1、特許文献2に係る単剤式又は多剤式の毛髪化粧料組成物においても、毛髪全体又はその各部における保湿性、柔軟性、滑らかさ等の改善が検討・評価されているが、毛髪の各部におけるダメージ度合いが異なることを前提とした「毛髪の根元部から毛先部に至る各部での手触り改善の均一性」という課題は提起されていないし、そのような課題の解決手段も検討されていない。
【0011】
そこで本発明は、毛髪のダメージ修復を主目的とする毛髪化粧料の基本的効果を確保したもとで、毛髪の根元部から毛先部に至る各部における手触りを良好かつ均一に改善する毛髪化粧料組成物を提供することを、解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための第1発明の構成は、(A)成分:トレハロース又はその誘導体の1種以上を0.01〜5質量%の範囲内、(B)成分:ミツロウを0.01〜5質量%の範囲内、(C)成分:フェニル変性シリコーンの1種以上を0.1〜5質量%の範囲内及び(D)成分:アミノ変性シリコーンの1種以上を0.01〜3質量%の範囲内で含有する、毛髪化粧料組成物である。
【0013】
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための第2発明の構成は、前記第1発明に係る毛髪化粧料組成物において、(B)成分の含有量に対する(A)成分の含有量の質量比(A)/(B)が0.1〜50の範囲内である、毛髪化粧料組成物である。
【0014】
(第3発明の構成)
上記課題を解決するための第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明に係る毛髪化粧料組成物において、(D)成分の含有量に対する(C)成分の含有量の質量比(C)/(D)が0.05〜30の範囲内である、毛髪化粧料組成物である。
【0015】
(第4発明の構成)
上記課題を解決するための第4発明の構成は、前記第1発明〜第3発明のいずれかに係る毛髪化粧料組成物が、更に(E)成分:マイクロクリスタリンワックスを0.05〜3質量%の範囲内で含有する、毛髪化粧料組成物である。
【0016】
(第5発明の構成)
上記課題を解決するための第5発明の構成は、微粒子化したロウ類を含有する第1組成物と、それぞれ液状油である植物油、パラフィン類、飽和脂肪酸エステル及びトリグリセリドから選ばれる1種以上を合計で50質量%以上含有する第2組成物と、第1発明〜第4発明のいずれかに記載の毛髪化粧料組成物である第3組成物とを含んで構成され、これらの組成物をそれぞれ別個の剤として毛髪に重ねて塗布するものである、多剤式毛髪化粧料組成物である。
【0017】
上記の第5発明において、第1組成物〜第3組成物のそれぞれを重ねて塗布する順序は限定されない。「重ねて塗布する」とは、中間にすすぎ、シャンプー、リンス等の水洗処理を介在させることなく重ね塗りすることを意味する。但し、上記の第1組成物〜第3組成物以外の他剤を第1組成物〜第3組成物に先立って、又は第1組成物〜第3組成物の中間に、あるいは第1組成物〜第3組成物の塗布後に重ねて塗布することを妨げない。この点は、次に述べる第6発明においても同様である。
【0018】
(第6発明の構成)
上記課題を解決するための第6発明の構成は、前記第5発明に係る多剤式毛髪化粧料組成物において、第1組成物〜第3組成物を、第1組成物、第2組成物、第3組成物の順に毛髪に重ねて塗布するものである、多剤式毛髪化粧料組成物である。
【発明の効果】
【0019】
第1発明の毛髪化粧料組成物で毛髪を処理すれば、毛髪のダメージ修復を主目的とする毛髪化粧料の基本的効果、例えば毛髪のツヤ、パサツキ(特に毛先のパサツキ)の改善等を確保したもとで、毛髪の根元部から毛先部に至る各部での手触りを良好かつ均一に改善できる。
【0020】
この毛髪化粧料組成物において、(A)成分と(B)成分とが組合わせて配合されている点は、毛髪の中間部のまとまりと中間部から毛先部にかけての均一な手触りという効果にとって重要である。この効果は(A)成分と(B)成分の少なくとも一方が欠落すると確保されない。又、(C)成分と(D)成分との組合わせ配合は、髪の毛先部のまとまりと中間部から毛先部にかけての均一な手触りという効果にとって重要である。この効果は(C)成分と(D)成分の少なくとも一方が欠落すると確保されない。
【0021】
第1発明の毛髪化粧料組成物によって「毛髪の根元部から毛先部に至る各部での手触りを良好かつ均一に改善できる」という効果が得られる理由は、必ずしも明確ではないが、ダメージ度合いが異なる毛髪の中間部と毛先部それぞれで(A)〜(D)の各成分が毛髪への過剰な吸着を起こさず、ダメージ度合いに適した吸着力のコントロールが出来るためであると推定することができる。
【0022】
(A)成分、(B)成分、(D)成分のそれぞれの含有量が0.01質量%未満、(C)成分の含有量が0.1質量%未満であると、それらの絶対量の不足により、発明の効果を確保できない。(A)、(B)、(C)の各成分のそれぞれの含有量が5質量%を超えると、(A)成分については、例えば毛髪の中間部のベタつきと指通りの悪さ等の不具合を生じ、(B)成分については、例えば毛髪の硬さ等の不具合を生じ、(C)成分については、例えば毛髪のベタつきときしみ感等の不具合を生じる。又、(D)成分の含有量が3質量%を超えると、例えば毛髪のゴワツキ等の不具合を生じる。
【0023】
第2発明のように、毛髪化粧料組成物における(B)成分の含有量に対する(A)成分の含有量の質量比(A)/(B)が0.1〜50の範囲内であることが好ましい。質量比(A)/(B)がこの範囲を外れると、配合量のアンバランスのため、前記した(A)成分と(B)成分の組合わせ配合の効果が不十分となりがちである。
【0024】
第3発明のように、毛髪化粧料組成物における(D)成分の含有量に対する(C)成分の含有量の質量比(C)/(D)が0.05〜30の範囲内であることが好ましい。質量比(C)/(D)がこの範囲を外れると、配合量のアンバランスのため、前記した(C)成分と(D)成分の組合わせ配合の効果が不十分となりがちである。
【0025】
第4発明のように、毛髪化粧料組成物が更に(E)成分:マイクロクリスタリンワックスを0.05〜3質量%の範囲内で含有すると、散りついて広がる毛髪を抑え、まとめ易くする効果が得られる。(E)成分の含有量が0.05質量%未満であると、その絶対量の不足により上記の効果を確保できない。その含有量が3質量%を超えると、過剰配合により毛髪のベタツキを生じて、やはり上記の効果を確保できない。
【0026】
第5発明においては、第1発明〜第4発明に係る毛髪化粧料組成物である第3組成物に対して、重ね塗りすることを前提として、少なくとも第1組成物と第2組成物が付加される。そして、第1発明〜第4発明に関して述べた通りである第3組成物の効果に対して、第1組成物が含有する微粒子化したロウ類の毛髪表面のザラつき解消と言う役割と、第2組成物が含有する液状油の毛髪のすべり感の付与と言う役割との分担により、前記「毛髪の根元部から毛先部に至る各部での手触りを良好かつ均一に改善できる」という効果が一層顕著に発現される。
【0027】
第6発明においては、第1組成物、第2組成物、第3組成物の順に毛髪に重ねて塗布するため、第5発明における上記の役割分担が最も好ましく確保され、第5発明の効果が特に顕著に発現される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に本発明の実施形態を、その最良の形態を含めて説明する。
【0029】
〔毛髪化粧料組成物〕
本発明の毛髪化粧料組成物は、少なくとも下記(A)成分〜(D)成分を含有し、又、好ましくは、更に下記(E)成分を含有する。
【0030】
(A)成分:0.01〜5質量%の範囲内、より好ましくは0.05〜3質量%の範囲内で含有されるトレハロース又はその誘導体の1種以上。トレハロースとしては、α,α−型、β,β−型、α,β−型のいずれもが包含される。トレハロース誘導体とは、非還元性二糖であるトレハロースの基本構造を維持したままで、その任意の1又は2以上の水酸基に任意の低分子基又は高分子基が結合したものを言う。好ましいトレハロース誘導体として、グリコシルトレハロース、カチオン化トレハロース等を例示することができる。
【0031】
(B)成分:0.01〜5質量%の範囲内、より好ましくは0.05〜3質量%の範囲内で含有されるミツロウ。
【0032】
(C)成分:0.1〜5質量%の範囲内、より好ましくは0.1〜3質量%の範囲内で含有されるフェニル変性シリコーンの1種以上。フェニル変性シリコーンとしては、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、フェニルトリメチコン等が好ましく例示される。
【0033】
(D)成分:0.01〜3質量%の範囲内、より好ましくは0.1〜2質量%の範囲内で含有されるアミノ変性シリコーンの1種以上。アミノ変性シリコーンとしては、アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(INCI名:アミノプロピルジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(INCI名:アモジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(INCI名:トリメチルシリルアモジメチコン)、(ビスイソブチルPEG-14/アモジメチコン)コポリマー等が例示されるが、特にアモジメチコン、アミノプロピルジメチコン、(ビスイソブチルPEG-14/アモジメチコン)コポリマー等が好ましい。
【0034】
(E)成分:0.05〜3質量%の範囲内、より好ましくは0.3〜3質量%の範囲内で含有されるマイクロクリスタリンワックス。
【0035】
以上の(A)成分〜(D)成分の内、(B)成分の含有量に対する(A)成分の含有量の質量比(A)/(B)は、第2発明に関して述べた理由から、0.1〜50の範囲内であることが好ましく、特に0.1〜30の範囲内であることが好ましい。又、(D)成分の含有量に対する(C)成分の含有量の質量比(C)/(D)は、第3発明に関して述べた理由から、0.05〜30の範囲内であることが好ましく、特に0.1〜20の範囲内であることが好ましい。
【0036】
本発明の毛髪化粧料組成物は、上記の成分以外にも、ヘアトリートメント用組成物に配合されることがある各種の成分を、本発明の目的を阻害しない範囲の含有量において任意に選択して配合することができる。このような成分として、上記(B)成分〜(D)成分以外の各種の油性成分が例示され、その他にも、炭化水素、ポリペプタイド、タンパク質加水分解物、高分子化合物、カチオン性化合物、防腐剤、キレート剤、香料、セラミド類、ビタミン類等を例示することができる。
【0037】
毛髪化粧料組成物の剤型は特段に限定されないが、この種のヘアトリートメント剤として採用される、例えばクリーム状、ジェル状、ムース状、乳液状等の適宜な剤型にして用いることができる
〔多剤式毛髪化粧料組成物〕
(多剤式毛髪化粧料組成物の構成)
本発明に係る多剤式毛髪化粧料組成物は、後述する第1組成物と、第2組成物と、上記「毛髪化粧料組成物」の項で述べたいずれかの組成物である第3組成物を含んで構成される。即ち、多剤式毛髪化粧料組成物は、第1組成物〜第3組成物を含んで構成される限りにおいて、第1組成物〜第3組成物のみから構成される3剤式であり得るし、更に1つ以上の他剤を含んで構成される4剤式以上の多剤式、例えば5剤式等であり得る。多剤式毛髪化粧料組成物が4剤式以上の多剤式である場合に、第1組成物〜第3組成物以外の他剤の内容は、発明の目的を阻害しない限りにおいて特段に限定されない。
【0038】
(多剤式毛髪化粧料組成物の使用方法)
多剤式毛髪化粧料組成物は、毛髪に対して第1組成物〜第3組成物のそれぞれを重ねて塗布する。第1組成物〜第3組成物のそれぞれを毛髪に重ねて塗布する際の塗布順序は限定されないが、第1組成物、第2組成物、第3組成物の順に毛髪に重ねて塗布することが、後述する第1組成物、第2組成物の作用・効果を良好に発揮させる上で、特に好ましい。
【0039】
又、多剤式毛髪化粧料組成物が第1組成物〜第3組成物以外の他剤を含んでいる場合においては、これらの他剤を第1組成物〜第3組成物に先立って、又は第1組成物〜第3組成物の中間に、あるいは第1組成物〜第3組成物の塗布後に塗布することができる。即ち、任意の順序で塗布される第1組成物〜第3組成物の中間にすすぎ、シャンプー、リンス等の水洗処理を介在させない限りにおいて、他剤を任意の段階で塗布することができる。更に、他剤を第1組成物〜第3組成物に先立って、あるいは第1組成物〜第3組成物の塗布後に塗布する際には、当該他剤の塗布と、任意の順序による第1組成物〜第3組成物の塗布との間に、すすぎ、シャンプー、リンス等の水洗処理を介在させても良い。
【0040】
本発明の多剤式毛髪化粧料組成物を構成する第1組成物〜第3組成物の各剤を毛髪に適用した後、例えば3〜10分程度放置してから次の剤を塗布することが好ましい。その放置の間、例えば40℃前後の温度に加温することが更に好ましい。
【0041】
毛髪に対する第1組成物〜第3組成物の相対的な塗布量は特段に限定されず、それらの塗布量を適宜に設定することができる。
【0042】
〔第1組成物〕
第1組成物は微粒子化したロウ類を含有する。第1組成物は、限定はされないが、水を60質量%以上、より好ましくは65質量%以上含有する水性の組成物であることが好ましく、このような水性の組成物において微粒子化したロウ類を界面活性剤の使用によって水中油型のエマルションの形態として含有していることが、ロウ類微粒子の凝集防止や、ロウ類微粒子の毛髪への浸透促進等の点から好ましい。界面活性剤の種類は限定されないが、例えばカチオン性界面活性剤が好ましい。界面活性剤の使用量は限定されない。
【0043】
微粒子化したロウ類の種類は限定されないが、コレステロール、フィトステロール及びラノリンから選ばれる1種以上であることが好ましく、とりわけコレステロールが好ましい。その他にも、ロウ類として、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、鯨ロウ、コメヌカロウ、サトウキビロウ、パームロウ、モンタンロウ、綿ロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、カポックロウ、セラックロウ等を例示できる。
【0044】
第1組成物に含有されるロウ類の微粒子の大きさは0.05〜2μm程度の範囲内であることが好ましい。微粒子が上記の範囲より過小であると毛髪へ定着しづらくなって効果が低下し易くなり、過大であると毛髪へ浸透しづらくなって同じく効果が低下し易くなる。又、第1組成物における微粒子化したロウ類の含有量は限定されないが、第1組成物中の0.01〜1質量%程度であることが好ましい。その含有量が上記の範囲より過少であるとロウ類微粒子の効果が不足し易くなり、過剰であると毛髪の感触がごわつくといった不具合が生じる。
【0045】
第1組成物には、上記の成分以外にも、ヘアトリートメント組成物に配合されることがある各種の成分を、本発明の目的を阻害しない範囲の含有量において任意に選択して配合することができる。このような成分として、ロウ類以外の油性成分、炭化水素、ポリペプタイド、タンパク質加水分解物、高分子化合物、カチオン性化合物、防腐剤、キレート剤、香料、セラミド類、ビタミン類等を例示することができる。
【0046】
ロウ類以外の油性成分としては多価アルコール、高級アルコール、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、シリコーン類等を挙げることができる。炭化水素としては、α−オレフィンオリゴマー、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等を挙げることができる。高分子化合物としては、カチオン性高分子化合物、アニオン性高分子化合物、両性高分子化合物、水溶性高分子化合物を挙げることができる。
【0047】
第1組成物の剤型は特段に限定されないが、クリーム状、ジェル状、ムース状等の適宜な剤型にして用いることができる
〔第2組成物〕
第2組成物は、それぞれ液状油である植物油、パラフィン類、飽和脂肪酸エステル及びトリグリセリドから選ばれる1種以上を合計で50質量%以上、より好ましくは80質量%以上含有する。又、第2組成物は10質量%以下のシリコーン油を含有することができるが、好ましくはシリコーン油を含有しない。更に第2組成物は、限定はされないが、水を実質的に含まないか、あるいは含むとしても含有量が10質量%以下の油性組成物であることが好ましい。第2組成物は、液状の油性組成物としてそのまま、あるいは、耐圧容器にLPG,DME、圧縮ガス等の噴射剤とともに充填してスプレー状、フォーム状等の適宜な剤型にして用いることができる。
【0048】
液状油である植物油としては、マカデミアナッツ油、オリーブ油、アボカド油、ローズヒップ油、ツバキ油、液状シア脂、アーモンド油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、カロット油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油等が例示される。
【0049】
液状油であるパラフィン類としては、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン等が挙げられる。
【0050】
液状油である飽和脂肪酸エステル、トリグリセリドとしては、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルへキシル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、トリカプリル酸グリセリル等が挙げられる。
【0051】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヒドロキシ末端基を有するジメチルポリシロキサン(ジメチコノール)、メチルフェニルポリシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、アミノ変性シリコーン等が挙げられる。
【0052】
第2組成物には、上記の成分以外にも、ヘアトリートメント組成物に配合されることがある各種の成分を、本発明の目的を阻害しない範囲の含有量において任意に選択して配合することができる。このような成分として、上記以外の油性成分の他、第1組成物に関して前記した炭化水素、ポリペプタイド、タンパク質加水分解物、高分子化合物、カチオン性化合物、防腐剤、キレート剤、香料、セラミド類、ビタミン類等を例示することができる。
【実施例】
【0053】
次に本発明の実施例を説明する。本発明の技術的範囲は、以下の実施例によって限定されない。
〔毛髪化粧料組成物の調製〕
末尾の表1〜表4に示す実施例1〜実施例18及び比較例1〜比較例6に係る組成の毛髪化粧料組成物を常法に従って調製した。実施例1〜実施例13及び比較例1〜比較例5に係る毛髪化粧料組成物は、表においては便宜上、「III剤」と表記しているが、単剤式の毛髪化粧料組成物である。又、実施例14〜実施例18及び比較例6に係る毛髪化粧料組成物は、表に示すI剤、II剤及びIII剤から構成される多剤式の毛髪化粧料組成物である。これらのI剤、II剤及びIII剤は、それぞれ多剤式毛髪化粧料組成物の第1組成物、第2組成物及び第3組成物に相当する。
【0054】
表1〜表4に示すI剤、II剤及びIII剤において、成分の含有量を示す数値は、それぞれI剤、II剤又はIII剤中における当該成分の質量%の表記である。又、I剤、II剤及びIII剤の剤型は、I剤、III剤ではクリーム状、II剤ではムース状である。又、表に示す各成分中、(A)〜(E)と表記した成分はそれぞれ本発明の(A)成分〜(E)成分であり、(b)と表記した成分は本発明の(B)成分に対する比較用の成分である。
【0055】
多剤式毛髪化粧料組成物の実施例及び比較例においては、表の「塗布順」の欄に各剤の塗布の順序を表記した。例えば実施例14において塗布順を「III/I/II」としているのは、III剤、I剤、II剤の順に「重ねて塗布する」こと、即ち、中間にすすぎ、シャンプー、リンス等の水洗処理を介在させることなく、重ね塗りすることを意味する。この点に関して、比較例6における「II/III
WI」との表記における「W」はすすぎ、シャンプー、リンス等の水洗処理を意味している。従って比較例6においては、II剤の次にIII剤を重ね塗りし、次いで水洗処理を介在させた後、I剤を塗布している。
【0056】
又、各表に示す「(A/B)の質量比」は、単剤式毛髪化粧料組成物における、あるいは多剤式毛髪化粧料組成物のIII剤における、(B)成分の含有量に対する(A)成分の含有量の質量比(A)/(B)を意味する。「(C/D)の質量比」は、同様に、(D)成分の含有量に対する(C)成分の含有量の質量比(C)/(D)を意味する。
【0057】
〔評価用毛髪〕
パーマやヘアカラー等の化学処理を行っていない毛髪に対して、市販のブリーチ剤〔ホーユー(株)製の「プロマスターEX LT」〕で処理し、その後パーマ剤〔ホーユー(株)製の「ルテアTG」〕で常法によりパーマ処理した後に、乾燥させた。続いて、その毛束を酸化染毛剤〔ホーユー(株)製の「プロマスターEX B 7/6」〕を用いて茶色に染色することで、試験用の毛束サンプルを作製した。
【0058】
〔評価方法〕
評価用毛髪を水で濡らした後、各実施例、比較例に係る単剤式の毛髪化粧料組成物を塗布し、又は多剤式の毛髪化粧料組成物を表の「塗布順」に示す手順に従って塗布した。これらの塗布を終えた後、いずれの実施例、比較例の場合も、評価用毛髪を40℃の恒温槽に5分間放置し、次いでしっかりと水洗してから、ドライヤーで乾燥させた。
【0059】
〔評価項目と評価基準〕
上記の「評価方法」に示す手順に従って処理した各実施例、比較例に係る評価用毛髪について、「ツヤ」、「中間から毛先にかけての均一な手触り」、「毛先のぱさつき改善効果」を以下の評価基準に従って評価した。
【0060】
(ツヤ)
この評価項目に関しては、「評価方法」に示す手順に従って処理した評価用毛髪に対して20名のパネラーに「良い」、「良いとは言えない」の二者択一で評価させ、20名中、「良い」と回答したパネラーが20〜17名である場合が評価点5、16〜13名である場合が評価点4、12〜9名である場合が評価点3、8〜5名である場合が評価点2、4名以下である場合が評価点1とした。その評価結果を表1〜表3の「評価」の欄における「ツヤ」の項に示す。
【0061】
(中間から毛先にかけての均一な手触り)
ここで言う「手触り」とは、「指通り」、「ざらつきのなさ」、「しっとり感」を総合した評価である。この評価項目に関しては、「評価方法」に示す手順に従って処理した評価用毛髪に対して20名のパネラーに「良い」、「良いとは言えない」の二者択一で評価させ、20名中、「良い」と回答したパネラーが20〜17名である場合が評価点5、16〜13名である場合が評価点4、12〜9名である場合が評価点3、8〜5名である場合が評価点2、4名以下である場合が評価点1とした。その評価結果を表1〜表3の「評価」の欄における「中間から毛先にかけての均一な手触り」の項に示す。
【0062】
(毛先のぱさつき改善効果)
ここで言う「毛先のぱさつき」とは、毛髪の適度な水分が足らずドライな質感であり、硬さを感じ、広がってしまって髪のまとまりが悪い状態のことである。この評価項目に関しては、「評価方法」に示す手順に従って処理した評価用毛髪に対して20名のパネラーに「良い」、「良いとは言えない」の二者択一で評価させ、20名中、「良い」と回答したパネラーが20〜17名である場合が評価点5、16〜13名である場合が評価点4、12〜9名である場合が評価点3、8〜5名である場合が評価点2、4名以下である場合が評価点1とした。その評価結果を表1〜表3の「評価」の欄における「毛先のぱさつき改善効果」の項に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明により、毛髪のダメージ修復効果を確保したもとで、毛髪の根元部から毛先部に至る各部における手触りを良好かつ均一に改善する毛髪化粧料組成物が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:トレハロース又はその誘導体の1種以上を0.01〜5質量%の範囲内、(B)成分:ミツロウを0.01〜5質量%の範囲内、(C)成分:フェニル変性シリコーンの1種以上を0.1〜5質量%の範囲内及び(D)成分:アミノ変性シリコーンの1種以上を0.01〜3質量%の範囲内で含有することを特徴とする毛髪化粧料組成物。
【請求項2】
前記(B)成分の含有量に対する(A)成分の含有量の質量比(A)/(B)が0.1〜50の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項3】
前記(D)成分の含有量に対する(C)成分の含有量の質量比(C)/(D)が0.05〜30の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項4】
更に(E)成分:マイクロクリスタリンワックスを0.05〜3質量%の範囲内で含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項5】
微粒子化したロウ類を含有する第1組成物と、それぞれ液状油である植物油、パラフィン類、飽和脂肪酸エステル及びトリグリセリドから選ばれる1種以上を合計で50質量%以上含有する第2組成物と、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の毛髪化粧料組成物である第3組成物とを含んで構成され、これらの組成物をそれぞれ別個の剤として毛髪に重ねて塗布するものであることを特徴とする多剤式毛髪化粧料組成物。
【請求項6】
前記第1組成物〜第3組成物を、第1組成物、第2組成物、第3組成物の順に毛髪に重ねて塗布するものであることを特徴とする請求項5に記載の多剤式毛髪化粧料組成物。

【公開番号】特開2013−14526(P2013−14526A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147129(P2011−147129)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】