説明

毛髪化粧料組成物

【課題】酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物において、毛髪の明度を向上させることができる毛髪化粧料組成物を提供する。
【解決手段】アルカリ剤を含有する第1剤及び酸化剤を含有する第2剤とから構成され、該第1剤及び第2剤が混合されて染毛剤又は毛髪脱色剤として用いられる毛髪化粧料組成物において、(A)平均重合度が2を超えるポリグリセリン0.1〜5質量%、並びに(B)アミノカルボン酸系のキレート化剤及びホスホン酸系のキレート化剤から選ばれる少なくとも一種のキレート化剤が含有されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染毛剤又は毛髪脱色剤として用いられる毛髪化粧料組成物に関し、さらに詳しくは、毛髪の明度を向上させることができる毛髪化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複数の薬剤を混合することにより効果を発揮する毛髪化粧料組成物が知られている。そのような毛髪化粧料組成物としては、例えば、アルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤、例えば過酸化水素を含有する第2剤とから構成される染毛剤及び毛髪脱色剤が知られている。アルカリ剤は、第2剤に含有される酸化剤の作用を促進するとともに、毛髪を膨潤させて毛髪への染料の浸透性を向上させることにより、染色性を向上させる。酸化剤はアルカリ剤の作用によって分解され、活性酸素を放出する。放出された活性酸素は毛髪に含まれるメラニンを脱色するとともに、染料としての酸化染料を酸化して発色させる。それにより、毛髪に適度な明度が付与される。一般に、酸化剤の分解は、金属イオンによっても促進することが知られている。金属イオンが、毛髪表面に大量に存在する場合、毛髪に塗布された酸化染料は、毛髪の表面付近で重合が促進することがあった。そのため、染毛処理後の洗い流し操作により、重合した染料が毛髪内部に留まらずに容易に流出してしまうという問題があった。
【0003】
そこで従来、特許文献1に開示される毛髪化粧料組成物が知られている。特許文献1は、毛髪表面における金属イオンによる酸化剤の分解を抑制するために、キレート化剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有する酸化染毛剤について開示する。毛髪の表面に付着している金属イオンが、キレート化剤によって捕捉されるため、毛髪の表面における酸化染料の酸化重合が抑制される。それにより、アルカリ剤によって膨潤した毛髪に酸化染料が容易に浸透するため、染色された毛髪の堅牢性が向上する。
【特許文献1】特開2007−137828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に開示される酸化染毛剤に含有されるキレート化剤は、毛髪の内部に容易に浸透しないため、毛髪表面のキレート化作用に比べ、毛髪内部のキレート化作用は低いという問題があった。
【0005】
ところで、酸化剤が毛髪内部に浸透すると、例えば、コルテックス中に存在する金属イオンによって、酸化剤の分解反応が促進される。この分解反応によって発生した活性酸素によって、毛髪内部に浸透した酸化染料の酸化重合反応も促進される。ところが、この酸化剤がメラニン色素に到達する前に、コルテックス中の金属イオンによって、分解されてしまうと、メラニン色素を十分に分解することができない。そのため、毛髪に十分な明度を付与することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、本発明者らの鋭意研究の結果、酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物において、平均重合度が2を超えるポリグリセリンを所定量含有させることにより上記問題が解決されることを見出したことによりなされたものである。本発明の目的とするところは、酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物において、毛髪の明度を向上させることができる毛髪化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の毛髪化粧料組成物は、アルカリ剤を含有する第1剤及び酸化剤を含有する第2剤とから構成され、該第1剤及び第2剤が混合されて酸化染毛剤又は毛髪脱色剤として用いられる毛髪化粧料組成物において、(A)平均重合度が2を超えるポリグリセリン0.1〜5質量%、並びに(B)アミノカルボン酸系のキレート化剤及びホスホン酸系のキレート化剤から選ばれる少なくとも一種のキレート化剤が含有されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の毛髪化粧料組成物において、(B)アミノカルボン酸系のキレート化剤及びホスホン酸系のキレート化剤から選ばれる少なくとも一種のキレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、L−アスパラギン酸−N,N−二酢酸、アミノトリメチレンホスホン酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸、それらの塩、それらの誘導体、及びそれらの誘導体の塩から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の毛髪化粧料組成物において、前記毛髪化粧料組成物中における(B)アミノカルボン酸系のキレート化剤及びホスホン酸系のキレート化剤から選ばれる少なくとも一種のキレート化剤の含有量に対する(A)平均重合度が2を超えるポリグリセリンの含有量の質量比が0.01〜100であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、酸化剤を含有する毛髪化粧料組成物において、毛髪の明度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る毛髪化粧料組成物を染毛剤に具体化した第1実施形態について詳細に説明する。本実施形態に係る染毛剤は、第1剤と第2剤とから構成される2剤式の毛髪化粧料である。
【0012】
<第1剤>
第1剤は、アルカリ剤を含有し、例えば(A)平均重合度が2を超えるポリグリセリン、及び(B)アミノカルボン酸系のキレート化剤及びホスホン酸系のキレート化剤から選ばれる少なくとも一種のキレート化剤を含有し、好ましくは酸化染料を含有している。
【0013】
アルカリ剤は、第2剤に含有される酸化剤の作用を促進するとともに、毛髪を膨潤させて毛髪への染料の浸透性を向上させることにより、染色性を向上させる。アルカリ剤としては、例えばアンモニア、アルカノールアミン、有機アミン類、無機アルカリ、塩基性アミノ酸、及びそれらの塩が挙げられる。有機アミン類としては、例えば2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及びグアニジンが挙げられる。無機アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムが挙げられる。塩基性アミノ酸としては、例えばアルギニン、及びリジンが挙げられる。塩としては、例えばアンモニウム塩が挙げられる。これらは単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0014】
アルカリ剤の含有量は、好ましくは第1剤のpHが8〜12の範囲となる量である。第1剤のpHが8未満では、第1剤が第2剤と混合されたときに、第2剤に含有される酸化剤として例えば過酸化水素の作用が十分に促進されない場合がある。第1剤のpHが12を超えると、染毛剤が毛髪に塗布されたときに、毛髪に損傷等の不具合が発生しやすい。
【0015】
(A)ポリグリセリンは、酸化剤が毛髪内部のメラニン色素を分解する効率を高めることにより、染毛処理において毛髪に十分な明度を付与する。つまり、ポリグリセリンは、毛髪内部への浸透性が高いため、コルテックス中に存在する少量の金属イオンを効果的に捕捉する。ポリグリセリンの平均重合度は、2を超える範囲であれば特に限定されるものではないが、好ましくは3〜15、より好ましくは4〜10である。第1剤及び第2剤が所定の割合で混合された染毛剤混合物中における含有量は、0.1〜5質量%、好ましくは1〜5質量%である。ポリグリセリンの含有量が0.1〜5質量%の範囲を外れると、染毛処理において毛髪に十分な明度を付与することができない。
【0016】
(B)アミノカルボン酸系のキレート化剤及びホスホン酸系のキレート化剤から選ばれる少なくとも一種のキレート化剤は、染色された毛髪の堅牢性を向上させる。つまり、毛髪の表面に付着している金属イオンが、キレート化剤によって捕捉されるため、毛髪の表面における酸化染料の酸化重合が抑制されるとともに、アルカリ剤によって膨潤した毛髪に酸化染料が容易に浸透する。アミノカルボン酸系のキレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸(DHEDDA)、1,3−プロパンジアミン四酢酸(1,3PDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIMDA)、L−アスパラギン酸−N,N−二酢酸(ASDA)、それらの塩、それらの誘導体、及びそれらの誘導体の塩が挙げられる。ホスホン酸系のキレート化剤としては、例えばアミノトリメチレンホスホン酸(NTMP)、ヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)、それらの塩、それらの誘導体、及びそれらの誘導体の塩が挙げられる。これらは単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、EDTA、HEDTA、DTPA、及びHEDPがより好ましい。
【0017】
第1剤及び第2剤が所定の割合で混合された染毛剤混合物中における(B)キレート化剤の含有量は、好ましくは0.05〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜3質量%である。このキレート化剤の含有量が0.05質量%未満では、染色された毛髪の堅牢性を向上させることができない場合がある。このキレート化剤の含有量が5質量%を超えると、染色された毛髪の堅牢性を向上させることができない場合があるとともに、毛髪の感触を悪化させる場合がある。
【0018】
第1剤及び第2剤が所定の割合で混合された染毛剤混合物中における、(B)アミノカルボン酸系のキレート化剤及びホスホン酸系のキレート化剤から選ばれる少なくとも一種のキレート化剤の含有量に対する(A)平均重合度が2を超えるポリグリセリンの含有量の質量比((A)/(B))は、好ましくは0.01〜100であり、より好ましくは0.1〜50である。この質量比が0.01未満であると良好なメラニン色素の脱色力が得られない場合がある。一方、この質量比が100を超えるとメラニン色素の脱色力が低下する場合がある。
【0019】
酸化染料は、第2剤に含有される酸化剤による酸化重合に起因して発色可能な化合物であり、染料中間体及びカプラーに分類される。酸化染料は少なくとも染料中間体を含んでいる。
【0020】
染料中間体としては、例えばp−フェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルアミン、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−メチルアミノフェノール、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、2−ヒドロキシエチル−p−フェニレンジアミン、o−クロル−p−フェニレンジアミン、4−アミノ−m−クレゾール、2−アミノ−4−ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4−ジアミノフェノール、及びそれらの塩が挙げられる。これらの具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0021】
カプラーは、染料中間体と結合することにより発色する。カプラーとしては、例えば5−アミノ−o−クレゾール、m−アミノフェノール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、トルエン−3,4−ジアミン、2,6−ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、N,N−ジエチル−m−アミノフェノール、フェニルメチルピラゾロン、及びそれらの塩が挙げられる。これらの具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。酸化染料は、毛髪の色調を様々に変化させることができることから、好ましくは、染料中間体の前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種と、カプラーの前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種とから構成される。第1剤は、前記酸化染料以外の染料として、例えば「医薬部外品原料規格」(1991年6月発行、薬事日報社)に収載された酸化染料、及び直接染料から選ばれる少なくとも一種を適宜含有してもよい。
【0022】
第1剤は、必要に応じて、前述した成分以外の成分、例えば水、水溶性高分子化合物、油性成分、上記以外の多価アルコール、界面活性剤、糖、防腐剤、安定剤、pH調整剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、香料、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤を含有してもよい。
【0023】
水は、各成分の可溶化剤として作用する。水溶性高分子化合物としては、アニオン性高分子化合物、カチオン性高分子化合物、非イオン性高分子化合物、及び両性の天然又は合成高分子化合物が挙げられる。非イオン性の合成高分子化合物として、例えばポリエチレングリコールが挙げられる。
【0024】
油性成分は、毛髪にうるおい感を付与する。そのため、第1剤は、好ましくは油性成分を含有する。油性成分としては、例えば油脂、ロウ、高級アルコール、炭化水素、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステル、及びシリコーンが挙げられる。
【0025】
油脂としては、例えばオリーブ油、ツバキ油、シア脂、アーモンド油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、及び月見草油が挙げられる。ロウとしては、例えばミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、及びラノリンが挙げられる。高級アルコールとしては、例えばセチルアルコール(セタノール)、2−ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、デシルテトラデカノール、及びラノリンアルコールが挙げられる。
【0026】
炭化水素としては、例えばパラフィン、オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ミネラルオイル、スクワラン、ポリブテン、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、及びワセリンが挙げられる。高級脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、及びラノリン脂肪酸が挙げられる。アルキルグリセリルエーテルとしては、例えばバチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、及びイソステアリルグリセリルエーテルが挙げられる。
【0027】
エステルとしては、例えばアジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸2−エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、10〜30の炭素数を有する脂肪酸コレステリル/ラノステリル、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、及びコハク酸ジオクチルが挙げられる。
【0028】
シリコーンとしては、例えばジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、650〜10,000の平均重合度を有する高重合シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、及びフッ素変性シリコーンが挙げられる。これらの油性成分の具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0029】
多価アルコールとしては、例えばグリコール、及びグリセリンが挙げられる。グリコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、及び1,3−ブチレングリコールが挙げられる。グリセリンとしては、例えばグリセリン、及びジグリセリンが挙げられる。
【0030】
界面活性剤は、乳化剤又は各成分の可溶化剤として染毛剤を乳化又は可溶化し、粘度を調整したり粘度安定性を向上させたりする。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えばアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、及びスルホコハク酸エステルが挙げられる。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンとしては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、及びトリエタノールアミンが挙げられる。アルキル硫酸塩としては、例えばラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0031】
カチオン性界面活性剤としては、例えばアルキルトリメチルアンモニウム塩、アルケニルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ジアルケニルジメチルアンモニウム塩、ラノリン脂肪酸アミドプロピルエチルジメチルアンモニウム、アルキロイルアミドプロピルジメチルアミン、アルキルピリジニウム塩、及びベンザルコニウム塩が挙げられる。これらの界面活性剤のカチオン基の対イオンとしては、例えば塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、アルキル硫酸イオン、及びサッカリンが挙げられる。アルキルトリメチルアンモニウム塩としては、例えば塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、及び塩化ラウリルトリメチルアンモニウムが挙げられる。ベンザルコニウム塩としては、例えば塩化ベンザルコニウムが挙げられる。
【0032】
両性界面活性剤としては、例えばココベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホ酢酸ナトリウム、及びラウリルベタイン(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)が挙げられる。
【0033】
ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルサッカライド界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪酸アルカノールアミド、ポリエーテル変性シリコーン、及びアルキルアミンオキサイドが挙げられる。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えばラウレス(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、セテス(ポリオキシエチレンセチルエーテル)、ステアレス(ポリオキシエチレンステアリルエーテル)、オレス(ポリオキシエチレンオレイルエーテル)、及びパレスが挙げられる。これらの界面活性剤の具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0034】
糖としては、例えばソルビトール、及びマルトースが挙げられる。防腐剤としては、例えばパラベンが挙げられる。安定剤としては、例えばフェナセチン、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、及びタンニン酸が挙げられる。pH調整剤としては、例えば乳酸、レブリン酸、グリコール酸、酒石酸、リンゴ酸、ピロリドンカルボン酸(PCA)、コハク酸、クエン酸、グルタミン酸、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、トリエタノールアミン(TEA)、及びアルギニンが挙げられる。酸化防止剤としては、例えばアスコルビン酸、及び亜硫酸塩が挙げられる。
【0035】
第1剤の剤型は特に限定されず、具体例として、例えば液状、ゲル状、フォーム状、及びクリーム状が挙げられる。液状としては、例えば水溶液、分散液、及び乳化液が挙げられる。
【0036】
<第2剤>
第2剤は、酸化剤を含有する。酸化剤は、毛髪に含まれるメラニンを脱色するとともに、染料としての酸化染料を酸化して発色させる。酸化剤としては、例えば過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、及びピロリン酸塩の過酸化水素付加物が挙げられる。第2剤中における酸化剤の含有量は、好ましくは0.1〜15.0質量%であり、より好ましくは2.0〜9.0質量%であり、最も好ましくは3.0〜6.0質量%である。酸化剤の含有量が0.1質量%未満では、メラニンを十分に脱色することができない場合があるとともに、酸化染料を十分に酸化することができない場合がある。酸化剤の含有量が15.0質量%を超えると、毛髪に損傷等の不具合が発生するおそれがある。
【0037】
酸化剤として過酸化水素を第2剤に配合する場合、過酸化水素の安定性を向上させるために、好ましくは、第2剤は、安定化剤、例えばエチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸及びその塩を含有する。1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸塩としては、例えば1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸四ナトリウム、及び1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸二ナトリウムが挙げられる。第2剤は、染毛剤に一般的に含有され、且つ前述した各成分の作用を阻害しない各成分を含有してもよい。例えば、前述した第1剤に含有される、酸化染料及びアルカリ剤以外の成分を適宜含有してもよい。
【0038】
第2剤の剤型は特に限定されず、具体例として、例えば液状、ゲル状、フォーム状、及びクリーム状が挙げられる。液状としては、例えば水溶液、分散液、及び乳化液が挙げられる。染毛剤の使用時には、第1剤及び第2剤を混合することにより混合物が調製される。次いで、必要量の混合物がコーム(櫛)又は刷毛に付着されて毛髪に塗布される。
【0039】
本実施形態に係る染毛剤は以下の利点を有する。
(1)本実施形態に係る染毛剤は、(A)平均重合度が2を超えるポリグリセリン0.1〜5質量%、並びに(B)アミノカルボン酸系のキレート化剤及びホスホン酸系のキレート化剤から選ばれる少なくとも一種のキレート化剤を配合している。したがって、染毛処理された毛髪の明度を向上させることができる。
【0040】
酸化剤がメラニン色素に到達するのを妨害する金属イオンを、(B)キレート化剤、及び(A)ポリグリセリンによって捕捉し、酸化剤がメラニン色素に到達するまで分解を抑制する。そして、酸化剤の分解により発生する活性酸素によってメラニン色素が分解され、毛髪の明度が上昇する。
【0041】
尚、(B)キレート化剤は、キレート化能は高いが毛髪への浸透性は、低いため、主に毛髪表面の金属イオンを捕捉する。一方、(A)ポリグリセリンはキレート化能は、(B)キレート化剤に比べ、高くないが、毛髪内部への浸透性が高いため、コルテックス中に存在する少量の金属イオンを効果的に捕捉する。
【0042】
(2)好ましくは、(B)アミノカルボン酸系のキレート化剤及びホスホン酸系のキレート化剤から選ばれる少なくとも一種のキレート化剤は、EDTA、HEDTA、DTPA、及びHEDPである。この場合、染毛処理された毛髪の堅牢性をより向上させることができる。
【0043】
(3)好ましくは、本実施形態に係る染毛剤の(B)アミノカルボン酸系のキレート化剤及びホスホン酸系のキレート化剤から選ばれる少なくとも一種のキレート化剤の含有量に対する(A)平均重合度が2を超えるポリグリセリンの含有量の質量比((A)/(B))が0.01〜100である。この場合、メラニン色素の脱色力の低下を抑制することができる。
【0044】
前記実施形態は以下のように変更されてもよい。
・前記実施形態の染毛剤において、(A)平均重合度が2を超えるポリグリセリン、及び(B)アミノカルボン酸系のキレート化剤及びホスホン酸系のキレート化剤から選ばれる少なくとも一種のキレート化剤は第1剤に含有されている。しかしながら、それらの成分は、第1剤と第2剤のいずれに含有してもよく、例えば第2剤に含有してもよく、さらに第1剤と第2剤の両方に含有してもよい。
【0045】
・前記実施形態の染毛剤は第1剤と第2剤とから構成され、第1剤及び第2剤は染毛剤の使用直前に混合される。しかしながら、染毛剤に含有される全ての成分を含む溶液から構成される1剤式として染毛剤が構成されてもよい。染毛剤の第1剤及び第2剤を構成する成分が任意に分離されることによって、染毛剤が3剤式以上に構成されてもよい。
【0046】
(第2実施形態)
以下、本発明に係る毛髪化粧料組成物を毛髪脱色剤に具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態に係る毛髪脱色剤は、第1剤と第2剤とから構成される2剤式の毛髪化粧料である。
【0047】
第1剤は、アルカリ剤を含有し、例えば(A)平均重合度が2を超えるポリグリセリン、及び(B)アミノカルボン酸系のキレート化剤及びホスホン酸系のキレート化剤から選ばれる少なくとも一種のキレート化剤を含有している。第1剤としては、第1実施形態に係る第1剤から染料が除かれた薬剤を含有する。
【0048】
毛髪脱色剤における第2剤は、アルカリ剤等を含有する第1剤と混合された後、毛髪の脱色に使用される。第2剤の具体的な構成は、第1実施形態に係る第2剤と同じである。
第1剤及び第2剤の剤型は特に限定されず、具体例として、例えば液状、ゲル状、フォーム状、及びクリーム状が挙げられる。液状としては、例えば水溶液、分散液、及び乳化液が挙げられる。毛髪脱色剤の使用時には、第1剤及び第2剤を混合することにより混合物が調製される。次いで、必要量の混合物がコーム(櫛)又は刷毛に付着されて毛髪に塗布される。
【0049】
本実施形態に係る毛髪脱色剤は第1実施形態の効果に加えて以下の利点を有する。
(1)本実施形態に係る毛髪脱色剤は、(A)平均重合度が2を超えるポリグリセリン0.1〜5質量%、並びに(B)アミノカルボン酸系のキレート化剤及びホスホン酸系のキレート化剤から選ばれる少なくとも一種のキレート化剤を配合している。したがって、脱色処理された毛髪の明度を向上することができる。
【0050】
前記実施形態は以下のように変更されてもよい。
・前記実施形態の毛髪脱色剤において、(A)平均重合度が2を超えるポリグリセリン、及び(B)アミノカルボン酸系のキレート化剤及びホスホン酸系のキレート化剤から選ばれる少なくとも一種のキレート化剤は第1剤に含有されている。しかしながら、それらの成分は、第1剤と第2剤のいずれに含有してもよく、例えば第2剤に含有してもよく、さらに第1剤と第2剤の両方に含有してもよい。
【実施例】
【0051】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。
表1〜3に示す各成分を含有する、毛髪脱色剤の第1剤及び第2剤を調製した。表1〜3における各成分を示す欄中の数値は当該欄の成分の含有量を示し、その単位は質量%である。そして、第1剤と第2剤とを1:1の質量比で混合して毛髪脱色剤を調製した。得られた毛髪脱色剤を、黒毛の人毛毛束(以下、単に毛束という。)に刷毛を用いて塗布し、室温(25℃)にて30分間放置した。次に、毛束に付着した毛髪脱色剤を水で洗い流した後、毛束にシャンプーを2回、及びリンスを1回施した。続いて、毛束を温風で乾燥した後、一日間放置した。表中「成分」欄における(A),(B)の表記は、本願請求項記載の各成分に対応する化合物を示す。一方、表中「成分」欄における(a)の表記は、本願請求項記載の各成分の対比化合物を示す。
【0052】
また、表1〜3において、“ポリグリセリンの質量比”欄は、毛髪脱色剤中における、(B)アミノカルボン酸系のキレート化剤及びホスホン酸系のキレート化剤から選ばれる少なくとも一種のキレート化剤の含有量に対する(A)平均重合度が2を超えるポリグリセリン含有量の質量比(A/B)を示す。
【0053】
<明度>
脱色処理が施された毛束のL値を分光測色計(ミノルタ株式会社製、型番:CM−508d)を用いて測定した。脱色処理後のL値から比較例1のL値を差し引いた値であるΔL値によって明度の評価を行った。なお、このLは、L表色系(JIS Z 8729−1994に記載)のLである。ΔL値が大きいほど脱色性に優れることを意味する。例えば、0≦ΔL<0.5の範囲では、目視ではあまり差が感じられない程度であり、0.5≦ΔL<1.0の範囲では、目視できちんと比べれば差が分かる程度であり、1.0≦ΔLでは目視でも容易に差が分かる程度である。結果を表1〜3に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

表1,2に示されるように、各実施例に係る毛髪脱色剤においては、優れた脱色性を発揮することが分かった。表1,2に示されるように、平均重合度が2を超えるポリグリセリンとキレート化剤は、第1剤及び第2剤のいずれに含有しても優れた脱色性を発揮することが分かった。
【0057】
表1〜3に示されるように、毛髪脱色剤が平均重合度が2を超えるポリグリセリン及びキレート化剤を含有しない比較例1は、各実施例に対し脱色性が最も低いことが分かった。平均重合度が2を超えるポリグリセリンの代わりにジグリセリンを含有する比較例2は、各実施例に対し、脱色性が低いことが分かった。平均重合度が2を超えるポリグリセリンを含有しない比較例3は、各実施例に対し、脱色性が低いことが分かった。キレート化剤を含有しない比較例4は、各実施例に対し、脱色性が低いことが分かった。平均重合度が2を超えるポリグリセリンの含有量が0.1〜5質量%の範囲を外れる比較例5,6は、各実施例に対し、脱色性が低いことが分かった。
【0058】
表1〜3に示される各実施例及び比較例の毛髪脱色剤に酸化染料を配合し、各実施例及び比較例に対応する染毛剤を調製し、上記毛髪脱色剤と同様の方法により毛髪に施術した。その結果、各実施例は、比較例1に対し、毛髪の明度が向上するとともに鮮やかさが増したことが分かった(データ不添付)。比較例2〜6は、比較例1に対し、毛髪の明度及び鮮やかさもほとんど差がないことが分かった(データ不添付)。
【0059】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記毛髪化粧料組成物中における(B)アミノカルボン酸系のキレート化剤及びホスホン酸系のキレート化剤から選ばれる少なくとも一種のキレート化剤の含有量は0.05〜5質量%である前記毛髪化粧料組成物。
【0060】
(b)前記ポリグリセリンの平均重合度は3〜15である前記毛髪化粧料組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤を含有する第1剤及び酸化剤を含有する第2剤とから構成され、該第1剤及び第2剤が混合されて染毛剤又は毛髪脱色剤として用いられる毛髪化粧料組成物において、(A)平均重合度が2を超えるポリグリセリン0.1〜5質量%、並びに(B)アミノカルボン酸系のキレート化剤及びホスホン酸系のキレート化剤から選ばれる少なくとも一種のキレート化剤が含有されていることを特徴とする毛髪化粧料組成物。
【請求項2】
前記毛髪化粧料組成物中における(B)アミノカルボン酸系のキレート化剤及びホスホン酸系のキレート化剤から選ばれる少なくとも一種のキレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、L−アスパラギン酸−N,N−二酢酸、アミノトリメチレンホスホン酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸、それらの塩、それらの誘導体、及びそれらの誘導体の塩から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項3】
前記毛髪化粧料組成物中における(B)アミノカルボン酸系のキレート化剤及びホスホン酸系のキレート化剤から選ばれる少なくとも一種のキレート化剤の含有量に対する(A)平均重合度が2を超えるポリグリセリンの含有量の質量比が0.01〜100であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の毛髪化粧料組成物。

【公開番号】特開2009−263319(P2009−263319A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118296(P2008−118296)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】