説明

毛髪化粧料組成物

【課題】染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として用いられる毛髪化粧料組成物において、炭酸塩又は過炭酸塩由来の炭酸ガスの発生を低減させるとともに泡質を向上させることができる毛髪化粧料組成物を提供する。
【解決手段】本発明の毛髪化粧料組成物は、染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として構成され、使用時に(A)炭酸塩及び過炭酸塩から選ばれる少なくとも一種を含有する第1剤と、(B)界面活性剤を含有するとともにpH5〜8に調整される第2剤とを混合し、振とうにより発泡させる発泡操作によって泡状の剤型とされることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸塩又は過炭酸塩を含有し、染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として構成され、使用時に泡状の剤型として毛髪に適用される毛髪化粧料組成物に関する発明である。さらに詳しくは、炭酸塩又は過炭酸塩由来の炭酸ガスの発生を低減させるとともに泡質を向上させることができる毛髪化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、毛髪化粧料組成物として、例えばアルカリ剤及び酸化剤を含有する染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤が知られている。染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤は、例えば溶剤、界面活性剤等を含有し、クリーム状又は液状として構成される。ところで、従来より、粉末状の酸化剤として過炭酸塩、粉末状のアルカリ剤として炭酸塩を配合する粉末染毛剤組成物が知られている。かかる粉末染毛剤組成物は、例えば使用時に溶剤と混合された後、毛髪に塗布して染毛処理に用いられる。粉末染毛剤組成物は、クリーム状又は液状の染毛剤組成物に比べて使用法が簡便であり、取り扱い性及び携帯性に優れるという特長を有する。例えば、特許文献1は、毛髪を脱色するアルカリ成分として過炭酸ナトリウム等を含有する固体状の染毛剤について開示する。かかる染毛剤は、水に溶解されることにより使用される。特許文献2は、アルカリ剤として炭酸アンモニウム及び酸化染料等を含有する第1剤と、過酸化水素等を含有する第2剤とから構成される染色剤組成物について開示する。
【0003】
また、酸化染料及びアンモニアを含有する第1剤、並びに酸化剤を含有する第2剤から構成される染毛剤において、酸化染料の反応速度を低下させ、色むらの発生を抑制するために、第1剤に炭酸イオンを配合した染毛剤が知られている。例えば、特許文献3は、酸化染料、アンモニア、及び炭酸水素アンモニウム等を含有する第1剤と、染毛力を向上させる過酸化水素等を含有する第2剤とから構成される染毛剤について開示する。特許文献2,3において、過酸化水素を含有する第2剤は、過酸化水素の安定性の観点からpH2.5〜4の範囲に調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−96727号公報
【特許文献2】特表2009−544689号公報
【特許文献3】特開2010−6804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、使用時の剤型が泡状(フォーム状)の染毛剤及び毛髪脱色・脱染剤が知られている。こうした泡状の剤型の毛髪化粧料組成物は、剤型が液状の組成物に比べて、液だれの心配が少なく、毛髪への塗布性及び使用感が良好であるという特長を有する。しかしながら、特許文献2,3の毛髪化粧料組成物において、炭酸塩を含有する第1剤と強酸の水溶液である第2剤を混合することにより泡状の剤型を形成する際、炭酸が遊離し、炭酸ガスが発生する。発生した炭酸ガスにより、発泡性及び泡質が低下するという問題があった。また、特に密閉容器を用いて振とうにより泡を形成する場合、密閉容器の蓋を開けた際に、発生した炭酸ガスにより、内容物が勢いよく吐出する場合があるという問題があった。
【0006】
本発明は、本発明者らの鋭意研究の結果、使用時に炭酸塩を含有する第1剤と第2剤とを混合し、振とうにより発泡させる発泡操作によって泡状の剤型とされる毛髪化粧料組成物において、第2剤に界面活性剤を配合するとともに、所定のpHに調整することにより、上記課題が解決されることを見出した。
【0007】
本発明の目的とするところは、染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として用いられる毛髪化粧料組成物において、炭酸塩又は過炭酸塩由来の炭酸ガスの発生を低減させるとともに泡質を向上させることができる毛髪化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の毛髪化粧料組成物は、染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として構成され、使用時に(A)炭酸塩及び過炭酸塩から選ばれる少なくとも一種を含有する第1剤と、(B)界面活性剤を含有するとともにpH5〜8に調整される第2剤とを混合し、振とうにより発泡させる発泡操作によって泡状の剤型とされることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の毛髪化粧料組成物において、前記毛髪化粧料組成物中における(A)炭酸塩の含有量及び過炭酸塩の含有量の合計が1〜9質量%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として用いられる毛髪化粧料組成物及びその使用方法において、炭酸塩又は過炭酸塩由来の炭酸ガスの発生を低減させるとともに泡質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る毛髪脱色・脱染剤を含む毛髪化粧用品の使用方法を示す説明図。(a)は使用前の毛髪脱色・脱染剤の第1剤と第2剤を収容した容器を示す図。(b)は第1剤と第2剤を容器の容器本体に投入している図。(c)は容器本体に蓋体を装着して容器を上下に振っている図。(d)は容器本体内の泡状の毛髪脱色・脱染剤を手で直接取り出して毛髪に塗布するために容器本体から蓋体を取り外した図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る毛髪化粧料組成物を毛髪脱色・脱染剤に具体化した第1実施形態について説明する。毛髪化粧料組成物は2剤式の毛髪脱色・脱染剤として、毛髪の脱色及び脱染に使用される。また、毛髪化粧料組成物は、3剤式の脱色・脱染剤としても使用される。
【0013】
<2剤式の毛髪脱色・脱染剤>
2剤式の毛髪脱色・脱染剤における、毛髪化粧料組成物は、例えば(A)炭酸塩及び過炭酸塩から選ばれる少なくとも一種等を含有する固体状の第1剤と、例えば溶剤及び(B)界面活性剤等を含有する液状の第2剤から構成される。この第1剤と第2剤とが混合された後、振とうにより発泡させる発泡操作によって泡状の剤型が形成された後、毛髪脱色及び脱染剤として毛髪に適用される。
【0014】
<第1剤>
第1剤は、(A)炭酸塩及び過炭酸塩から選ばれる少なくとも一種を含有する。炭酸塩(炭酸水素塩を含む)は、アルカリ剤として毛髪を膨潤させるとともに、酸化剤の作用を促進することにより、毛髪の脱色性又は脱染性を向上させる。炭酸塩としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、及び炭酸水素アンモニウムが挙げられる。
【0015】
過炭酸塩は、酸化剤として毛髪に含まれるメラニンを脱色する。過炭酸塩としては、例えば過炭酸ナトリウム及び過炭酸カリウムが挙げられる。過炭酸塩として、酸化力及び脱色性に優れる観点から、過炭酸ナトリウムが好ましく用いられる。
【0016】
第1剤と第2剤が混合された毛髪脱色・脱染剤中における炭酸塩の含有量は、適宜設定されるが、好ましくは0.1〜9質量%、より好ましくは、0.2〜5質量%である。炭酸塩の含有量が0.1質量%未満の場合、酸化剤による脱色作用が十分に促進されないおそれがある。炭酸塩の含有量が9質量%を超えると、泡質が低下するとともに、炭酸ガスの発生が多くなるおそれがある。
【0017】
第1剤と第2剤が混合された毛髪脱色・脱染剤中における過炭酸塩の含有量は、適宜設定されるが、好ましくは0.1〜9質量%、より好ましくは、1〜8質量%である。過炭酸塩の含有量が0.1質量%未満の場合、酸化作用が低く、毛髪の明度を十分に向上することができない場合がある。過炭酸塩の含有量が9質量%を超えると、泡質が低下するとともに、炭酸ガスの発生が多くなるおそれがある。
【0018】
第1剤と第2剤が混合された毛髪脱色・脱染剤中における炭酸塩の含有量及び過炭酸塩の含有量の合計は、好ましくは1〜9質量%、より好ましくは1〜8質量%、さらに好ましくは1〜7質量%である。炭酸塩の含有量及び過炭酸塩の含有量の合計が1質量%未満の場合、酸化作用が低く、毛髪の明度を十分に向上することができない場合がある。炭酸塩の含有量及び過炭酸塩の含有量の合計が9質量%を超えると、泡質が低下するとともに、炭酸ガスの発生が多くなるおそれがある。
【0019】
第1剤は、必要に応じて、前述した成分以外の成分、例えば上記以外のアルカリ剤、上記以外の酸化剤、水溶性高分子化合物、油性成分、界面活性剤、糖、防腐剤、安定剤、上記以外のpH調整剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、香料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート化剤、顔料、賦形剤、及び添加剤を含有してもよい。
【0020】
アルカリ剤は、毛髪を膨潤させるとともに、酸化剤の作用を促進することにより、毛髪の脱色性又は脱染性をより向上させる。本実施形態の第1剤においては、アルカリ剤は、常温(25℃)で固体状のものが使用され、例えばケイ酸塩、メタケイ酸塩、硫酸塩、塩化物、及びリン酸塩が挙げられる。ケイ酸塩としては、例えばケイ酸ナトリウム、及びケイ酸カリウムが挙げられる。メタケイ酸塩としては、例えばメタケイ酸ナトリウム、及びメタケイ酸カリウムが挙げられる。硫酸塩としては、例えば硫酸アンモニウムが挙げられる。塩化物としては、例えば塩化アンモニウムが挙げられる。リン酸塩としては、例えばリン酸第1アンモニウム、及びリン酸第2アンモニウムが挙げられる。
【0021】
アルカリ剤の含有量は、好ましくは第1剤及び第2剤を混合した毛髪脱色・脱染剤においてpHが7〜12の範囲となる量である。pHが7未満では、酸化剤による脱色作用が十分に促進されないおそれがある。混合液のpHが12を超えると、毛髪脱色・脱染剤が毛髪に塗布されたときに、毛髪に損傷等が発生しやすくなるおそれがある。尚、アルカリ剤及び後述するpH調整剤は、第1剤及び第2剤の保存時における安定性を向上させるために、別剤(第3剤)として構成してもよい。また、アルカリ剤及び後述するpH調整剤は、第1剤又は第2剤への配合が剤型の相違により又はpH範囲の相違により困難な場合においても、別剤(第3剤)として構成してもよい。
【0022】
酸化剤は、毛髪に含まれるメラニンをより脱色する。本実施形態の第1剤において、酸化剤は、常温(25℃)で固体状のものが使用され、例えば過酸化メラミン、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、及びピロリン酸塩の過酸化水素付加物が挙げられる。
【0023】
水溶性高分子化合物は、第1剤と第2剤を混合して得られる混合物に適度な粘度を与える。水溶性高分子化合物の具体例としては、例えば天然高分子、半合成高分子、合成高分子、及び無機物系高分子が挙げられる。天然の水溶性高分子化合物としては、例えばグアーガム、ローカストビーンガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、トラガカントガム、ペクチン、マンナン、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、及びコラーゲンが挙げられる。
【0024】
半合成の水溶性高分子化合物としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カチオン化セルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル、及びアルギン酸塩が挙げられる。
【0025】
合成の水溶性高分子化合物としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニル重合体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体、及びアクリル酸/アクリル酸アルキル共重合体が挙げられる。また、合成高分子としては、例えばイタコン酸とポリオキシエチレンアルキルエーテルとの半エステル、又はメタクリル酸とポリオキシエチレンアルキルエーテルとのエステルと、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらのアルキルエステルから選ばれる少なくとも一つの単量体と、からなる共重合体が挙げられる。
【0026】
油性成分は、毛髪にうるおい感を付与する。そのため、第1剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において油性成分を含有する。油性成分としては、例えば油脂、ロウ、高級アルコール、炭化水素、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステル、及びシリコーンが挙げられる。
【0027】
油脂としては、例えばラノリン、オリーブ油、ツバキ油、シア脂、アーモンド油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、及び月見草油が挙げられる。ロウとしては、例えばミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、及びラノリンが挙げられる。高級アルコールとしては、例えばセチルアルコール(セタノール)、2−ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、デシルテトラデカノール、及びラノリンアルコールが挙げられる。
【0028】
炭化水素としては、例えばパラフィン、オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ミネラルオイル、スクワラン、ポリブテン、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、及びワセリンが挙げられる。高級脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、及びラノリン脂肪酸が挙げられる。アルキルグリセリルエーテルとしては、例えばバチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、及びイソステアリルグリセリルエーテルが挙げられる。
【0029】
エステルとしては、例えばアジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸2−エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、10〜30の炭素数を有する脂肪酸コレステリル/ラノステリル、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジオクチル、及び2−エチルヘキサン酸セチルが挙げられる。
【0030】
シリコーンとしては、例えばジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、650〜10000の平均重合度を有する高重合シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン(例えば、(PEG/PPG/ブチレン/ジメチコン)コポリマー)、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、及びフッ素変性シリコーンが挙げられる。これらのシリコーンのうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0031】
多価アルコールとしては、例えばグリコール、及びグリセリンが挙げられる。グリコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、及び1,3−ブチレングリコールが挙げられる。グリセリンとしては、例えばグリセリン、ジグリセリン、及びポリグリセリンが挙げられる。
【0032】
界面活性剤は、乳化剤又は各成分の可溶化剤として毛髪脱色・脱染剤を使用時に乳化又は可溶化し、粘度を調整したり粘度安定性を向上させたりする。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0033】
アニオン性界面活性剤としては、例えばアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、スルホコハク酸エステル、及びそれらの誘導体が挙げられる。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンとしては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、及びトリエタノールアミンが挙げられる。より具体的には、アルキルエーテル硫酸エステル塩としては、例えばポリオキシエチレン(以下、「POE」という)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムが挙げられる。アルキル硫酸塩として、例えばラウリル硫酸ナトリウム、及びセチル硫酸ナトリウムが挙げられる。アルキル硫酸塩の誘導体として、例えばPOEラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。スルホコハク酸エステルとして、例えばスルホコハク酸ラウリル二ナトリウムが挙げられる。
【0034】
カチオン性界面活性剤としては、例えば塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、及びメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムが挙げられる。
【0035】
両性界面活性剤としては、例えばココベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホ酢酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、及びラウリルベタイン(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)が挙げられる。
【0036】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばエーテル型非イオン性界面活性剤、及びエステル型非イオン性界面活性剤が挙げられる。エーテル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばポリオキシエチレンセチルエーテル(セテス)、POEステアリルエーテル(ステアレス)、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル(オレス)、POEラウリルエーテル(ラウレス)、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、及びPOEオクチルフェニルエーテルが挙げられる。
【0037】
エステル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばモノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、及びモノミリスチン酸デカグリセリルが挙げられる。これらの界面活性剤の具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0038】
糖としては、例えばソルビトール、及びマルトースが挙げられる。防腐剤としては、例えばパラベンが挙げられる。安定剤としては、例えばフェナセチン、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、及びタンニン酸が挙げられる。pH調整剤としては、例えばクエン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ピロリン酸、グルコン酸、グルクロン酸、安息香酸、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及び塩基性アミノ酸が挙げられる。酸化防止剤としては、例えばアスコルビン酸及び亜硫酸塩が挙げられる。キレート化剤としては、例えばエデト酸(エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩類、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸及びその塩類、並びにヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)及びその塩類が挙げられる。賦形剤としては、例えば硫酸ナトリウムが挙げられる。添加剤として、さらに分散剤、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩、タルク、結晶セルロース、デンプン及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを配合してもよい。顔料としては、例えばカーボンブラック、タルク、酸化チタンが挙げられる。
【0039】
本実施形態において、第1剤の剤型は、固体状に構成される。尚、本発明における固体状は、粉末状及び粒子状を含む概念である。
<第2剤>
第2剤は、溶剤及び(B)界面活性剤を含有し、さらに、例えば酸化剤を含有してもよい。溶剤は、第1剤と第2剤が混合させた際、第1剤を構成する各成分を溶解させる。溶剤としては、例えば水、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、γ−フェニルプロピルアルコール、ケイ皮アルコール、アニスアルコール、p−メチルベンジルアルコール、α−ジメチルフェネチルアルコール、α−フェニルエタノール、フェノキシエタノール、フェノキシイソプロパノール、2−ベンジルオキシエタノール、N−アルキルピロリドン、炭酸アルキレン、及びアルキルエーテルが挙げられる。これらの中で、各成分の溶解性が優れる観点から水が好ましい。なお、溶剤として水が用いられる場合、第1剤と第2剤とが混合された混合物中における含有量(使用時の含有量)は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。
【0040】
(B)界面活性剤は、毛髪化粧料組成物の使用時の泡質を向上させるために配合される。界面活性剤の具体例は、第1剤において例示した界面活性剤と同じである。これらの中で、泡質の向上及び炭酸ガスの発生抑制効果の観点からアニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が好ましい。
【0041】
酸化剤は、毛髪に含まれるメラニンの脱色性をより向上させる。また、第1剤に酸化剤として過炭酸塩が配合されない場合に配合される。酸化剤としては、例えば過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、及びピロリン酸塩の過酸化水素付加物が挙げられる。第2剤中における酸化剤の含有量は、適宜設定されるが、好ましくは0.1〜15.0質量%であり、より好ましくは2.0〜9.0質量%であり、最も好ましくは3.0〜6.0質量%である。酸化剤の含有量が0.1質量%未満では、メラニンを十分に脱色することができない場合がある。酸化剤の含有量が15.0質量%を超えると、毛髪に損傷等が発生するおそれがある。
【0042】
酸化剤として過酸化水素を第2剤に配合する場合、過酸化水素の安定性を向上させるために、好ましくは、第2剤は、安定化剤、例えばエチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩を含有する。ヒドロキシエタンジホスホン酸塩としては、例えばヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム、及びヒドロキシエタンジホスホン酸二ナトリウムが挙げられる。第2剤は、毛髪脱色・脱染剤に一般的に含有され、且つ前述した各成分の作用を阻害しない各成分を含有してもよい。例えば、前述した第1剤に含有される成分を本発明の効果を阻害ない範囲内において適宜含有してもよい。
【0043】
第2剤においてpHは5〜8の範囲に調整される。第2剤のpHは、上述したアルカリ剤及びpH調整剤により調整することができる。第2剤のpHが5未満では、使用時の泡質が低下するとともに、第1剤と第2剤の混合時の炭酸ガスの発生が多くなるおそれがある。第2剤のpHが8を超えると、第2剤が皮膚、特に手に付着した場合に刺激が生ずるおそれがある。
【0044】
第2剤の剤型は特に限定されず、具体例として、例えば液状、ゲル状、フォーム状、及びクリーム状が挙げられる。液状としては、例えば乳化液が挙げられる。毛髪脱色・脱染剤は、使用時に第1剤及び第2剤を混合することにより混合物が調製される。毛髪脱色・脱染剤は、第1剤と第2剤を混合して振とうにより発泡させることによって泡状の剤型とした後、必要量だけ薄手の手袋をした手、コーム(櫛)又は刷毛で毛髪に塗布される。
【0045】
<3剤式の毛髪脱色・脱染剤>
3剤式の毛髪脱色・脱染剤における、毛髪化粧料組成物は、例えば(A)炭酸塩及び過炭酸塩から選ばれる少なくとも一種を含有する第1剤、2剤式の毛髪脱色・脱染剤に係る第2剤と同じ第2剤、並びに2剤式の毛髪脱色・脱染剤に係る第1剤の(A)成分以外の成分を含有する第3剤から構成される。この第1剤〜第3剤は、全て混合された後、毛髪の脱色又は脱染に使用される。3剤式の毛髪脱色・脱染剤と構成することにより、配合成分の保存安定性をより向上させることができる。
【0046】
次に、泡状の剤型を有する毛髪脱色・脱染剤を調製するのに使用される毛髪化粧用品について図1を参照して説明する。以下の説明は、2剤式の毛髪脱色・脱染剤を使用した場合の例を示しているが、3剤式の毛髪脱色・脱染剤を使用した場合もこれとほぼ同様である。
【0047】
図1に示されるように、毛髪化粧用品は、毛髪脱色・脱染剤10と、毛髪脱色・脱染剤10を振とうするための発泡用具としての液密に閉塞可能な容器20とを含む。毛髪脱色・脱染剤10の第1剤11及び第2剤12は、使用時まで個別に包装された状態で容器20内に収容して保管される。第1剤11及び第2剤12の包装形態は、特に限定されず、例えばボトル包装、ピロー包装、及びチューブ包装のいずれであってもよい。
【0048】
図1(a)に示されるように、容器20は、有底円筒状の容器本体21と、容器本体21の開口部を閉塞する半球状の蓋体22とを備えている。容器本体21は、底部よりも開口部が拡径した形状を有している。また、容器本体21の内面は曲面状をなしている。
【0049】
蓋体22の周縁にはフランジ状の嵌合部が形成されており、この嵌合部は容器本体21の開口部に嵌合するようになっている。図1に示す容器20では、蓋体22の嵌合部を容器本体21の開口部に嵌合させて蓋体22を回転させることで容器本体21に対して蓋体22が液密に装着される。容器本体21を閉塞させる構造は特に限定されない。例えば、蓋体に凹条を形成するとともにその凹条を容器本体の開口部周縁に形成した凸条に圧入させる構造により閉塞可能としてもよい。
【0050】
容器20は、個別に包装された状態の第1剤11及び第2剤12を収容可能に形成されている。すなわち、図1(a)に示されるように、容器20は、毛髪脱色・脱染剤10の使用時まで第1剤11及び第2剤12をまとめて保管する外装容器として使用される。容器20の中には、第1剤11及び第2剤12だけでなく、毛髪の脱色・脱染処理時に用いられる手袋、説明書等の付属品を収容してもよい。容器20は、軽量化の観点から、樹脂、又は耐水性を付与した紙から形成されることが好ましい。また、容器本体21の外面には、例えばシュリンクフィルムを用いた印刷を付与することもできる。
【0051】
使用時にはまず、容器本体21から蓋体22を取り外し、個別包装された第1剤11及び第2剤12を容器本体21内から取り出す。次に、第1剤11及び第2剤12の包装を開封し、図1(b)に示されるように第1剤11及び第2剤12を容器本体21に投入する。これにより、容器本体21内で第1剤11と第2剤12が接触し、混合物13が得られる。続いて、図1(c)に示されるように容器本体21に蓋体22を装着し、容器20を上下に振る。このとき、容器20内では、第1剤11と第2剤12の混合が進むとともに、振とうにより混合物13に空気が混入される。こうして混合物13に空気を振り混ぜることにより、混合物13は発泡する。そして、容器20を所定の回数振った後、振るのを止めることで、発泡は完了する。こうして得られた泡状の毛髪脱色・脱染剤14は、図1(d)に示されるように、容器本体21から蓋体22を取り外した後、容器本体21内から例えば薄手の手袋をした手で直接取り出して毛髪に塗布される。毛髪脱色・脱染剤は泡状であるために、液だれを起こすことなく毛髪に容易に馴染むことができる。毛髪に毛髪脱色・脱染剤を塗布した後、放置している間に毛髪の脱色又は脱染は進行する。所定時間の経過後、水又は温水で毛髪を洗って毛髪上の毛髪脱色・脱染剤を落とし、毛髪の脱色又は脱染処理は完了する。
【0052】
本実施形態に係る毛髪脱色・脱染剤は以下の利点を有する。
(1)本実施形態に係る毛髪脱色・脱染剤は、(A)炭酸塩及び過炭酸塩から選ばれる少なくとも一種を含有する固体状の第1剤と、(B)界面活性剤及び溶剤を含有し、pH5〜8に調整される液状の第2剤から構成されるとともに、使用時に第1剤と第2剤とを混合し、振とうにより発泡させる発泡操作によって泡状の剤型が形成される。したがって、炭酸塩又は過炭酸塩由来の炭酸ガスの発生を低減させるとともに泡質を向上させることができる。
【0053】
(2)本実施形態に係る毛髪脱色・脱染剤は、第2剤のpHの上限が8に規定される。したがって、第1剤と第2剤の混合時、第2剤が皮膚、特に手に付着した場合に生ずる刺激を防止することができる。
【0054】
(3)本実施形態に係る毛髪脱色・脱染剤は、第2剤に(B)界面活性剤を配合した。したがって、毛髪処理後の泡質又は明度をより向上させることができる。
(4)好ましくは、第1剤と第2剤が混合された毛髪脱色・脱染剤中における炭酸塩の含有量及び過炭酸塩の含有量の合計は、1〜9質量%である。したがって、毛髪の明度をより十分に向上することができ、泡質の低下及び炭酸塩又は過炭酸塩由来の炭酸ガスの発生をより抑制することができる。
【0055】
(5)本実施形態の毛髪脱色・脱染剤は、アルカリ剤等を含有する固体状の第1剤と、例えば溶剤等を含有する液状の第2剤から構成した。固体状(粉末状)の毛髪脱色・脱染剤を主剤(第1剤)とすることにより、クリーム状又は液状の毛髪脱色・脱染剤に比べて使用法が簡便であり、取り扱い性及び携帯性を向上させることができる。
【0056】
(第2実施形態)
以下、本発明に係る毛髪化粧料組成物を染毛剤に具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態に係る染毛剤は、第1剤と第2剤とから構成される2剤式の毛髪化粧料組成物である。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0057】
本実施形態に係る染毛剤は、例えば(A)炭酸塩及び過炭酸塩から選ばれる少なくとも一種、並びに酸化染料等を含有する固体状の第1剤と、例えば溶剤及び(B)界面活性剤等を含有する液状の第2剤から構成される。この第1剤と第2剤とが混合された後、振とうにより発泡させる発泡操作によって泡状の剤型が形成された後、染毛剤として毛髪に適用される。
【0058】
第1剤は、(A)炭酸塩及び過炭酸塩から選ばれる少なくとも一種、並びに酸化染料を含有する。酸化染料は、第1剤に配合される酸化剤として作用する過炭酸塩又は第2剤に配合される酸化剤による酸化重合に起因して発色可能な化合物であり、染料中間体及びカプラーに分類される。酸化染料は少なくとも染料中間体を含んでいる。
【0059】
染料中間体としては、例えばp−フェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン(パラトルイレンジアミン)、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルアミン、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−メチルアミノフェノール、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、2−ヒドロキシエチル−p−フェニレンジアミン、o−クロル−p−フェニレンジアミン、4−アミノ−m−クレゾール、2−アミノ−4−ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4−ジアミノフェノール、及びそれらの塩が挙げられる。これらの具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0060】
カプラーは、染料中間体と結合することにより発色する。カプラーとしては、例えばレゾルシン、5−アミノ−o−クレゾール、m−アミノフェノール、α−ナフトール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、トルエン−3,4−ジアミン、2,6−ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、N,N−ジエチル−m−アミノフェノール、フェニルメチルピラゾロン、及びそれらの塩が挙げられる。これらの具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。酸化染料は、毛髪の色調を様々に変化させることができることから、好ましくは、染料中間体の前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種と、カプラーの前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種とから構成される。第1剤は、前記酸化染料以外の染料として、例えば「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載された酸化染料、及び直接染料から選ばれる少なくとも一種を適宜含有してもよい。また、第1剤に含有される、前述した成分以外の成分としては、第1実施形態に係る第1剤に含有される(A)炭酸塩及び過炭酸塩以外の成分が挙げられる。
【0061】
染毛剤における第2剤は、第1剤と混合された後、毛髪の染色に使用される。第2剤の具体的な構成は、第1実施形態に係る第2剤と同じである。
本実施形態において、第1剤の剤型は、固体状に構成される。第2剤の剤型は、液状に構成される。染毛剤は、第1剤と第2剤とが混合された後、振とうにより発泡させる発泡操作によって泡状の剤型が形成された後、次いで、必要量の混合物が薄手の手袋をした手、コーム(櫛)又は刷毛に付着されて毛髪に塗布される。
【0062】
本実施形態に係る染毛剤は、第1実施形態の効果に加えて以下の利点を有する。
(6)本実施形態に係る染毛剤は、(A)炭酸塩及び過炭酸塩から選ばれる少なくとも一種、並びに酸化染料等を含有する固体状の第1剤と、(B)界面活性剤及び溶剤を含有し、pH5〜8に調整される液状の第2剤から構成される。そして、使用時に第1剤と第2剤とを混合し、振とうにより発泡させる発泡操作によって泡状の剤型が形成される。したがって、炭酸塩又は過炭酸塩由来の炭酸ガスの発生を低減させるとともに泡質を向上させることができる。
【0063】
(7)本実施形態に係る染毛剤は、第2剤に界面活性剤を配合した。したがって、泡質又は毛髪処理後の明度及び染色性をより向上させることができる。
前記実施形態は以下のように変更されてもよい。
【0064】
・前記実施形態の毛髪化粧料組成物では、(A)炭酸塩等を含有する粉末状の第1剤、(B)界面活性剤等を含有する液状の第2剤から構成した。しかしながら、毛髪化粧料組成物は、2剤式に限定されず、第1剤又は第2剤に含有される成分の一部を別剤として構成することにより、複数剤式、例えば3剤式以上に構成してもよい。
【0065】
・前記実施形態の毛髪化粧料組成物では、第1剤を固体状の剤型として構成した。しかしながら、第1剤は、溶剤を加えることにより液剤として構成してもよい。その場合、過炭酸塩等の酸化剤は、炭酸塩等のアルカリ剤が含有される第1剤とは別剤として構成されることが好ましい。第1剤が液剤の場合、25℃で液状のアルカリ剤として、例えばアンモニア、及びアルカノールアミンをさらに使用することができる。アルカノールアミンとしては、例えばモノエタノールアミン、及びトリエタノールアミンが挙げられる。
【0066】
・前記発泡操作を次のように変更することができる。すなわち、毛髪化粧料組成物に振動を加えることで、毛髪化粧料組成物に空気を混入させる発泡操作、又は毛髪化粧料組成物に回転を加えることで、毛髪化粧料組成物に空気を混入させる発泡操作に変更することもできる。つまり、毛髪化粧料組成物の振とうにより発泡させる発泡操作とは、毛髪化粧料組成物を振り混ぜる操作、毛髪化粧料組成物に振動を加える操作、及び毛髪化粧料組成物に回転を加える操作の少なくとも一種の操作により発泡させることを意味する。
【0067】
こうした発泡操作の種類に応じて、毛髪化粧料組成物を発泡させるための発泡用具を変更することもできる。例えば、主として振動を加える発泡操作の場合、発泡用具としては、例えば加振機、及び手動式泡立て器が好適である。また例えば、主として回転を加える発泡操作の場合、発泡用具としては、例えば撹拌棒、撹拌子、及び電動式泡立て器が好適である。こうした発泡操作は、毛髪化粧料組成物を例えば上端に開口を有する容器に投入して、その容器内で行われる。このような発泡用具を用いた場合であっても、前記実施形態の毛髪化粧料組成物によれば、発泡性を高めることが容易となる。
【実施例】
【0068】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。
表1及び2に示す各成分を含有する、毛髪脱色剤の第1剤及び第2剤を調製した。表1及び2における各成分を示す欄中の数値は当該欄の成分の含有量を示し、その単位は質量%である。なお、本実施例及び比較例では、第1剤を粉末状に調製するとともに第2剤を液状に調製している。そして、第1剤と第2剤とを表中に示す質量比で、図1に示す閉塞可能容器を用いて混合することにより毛髪脱色剤を調製する。第3剤としてのpH調整剤は、混合後のpHが各表に示される混合後のpHになるように添加した。第3剤としてのpH調整剤は、第1剤と第2剤との混合液のpHからアルカリ側に調整する際は水酸化カリウムを使用し、酸性方向に調整する際は塩酸を使用した。pH調整剤の必要量は、第1剤と第2剤が混合された混合液の1質量%の水溶液のpHを測定し、そこに第3剤としてのpH調整剤を加えて、所望のpHに調整する必要量を算出した。
【0069】
なお、閉塞可能容器の容量は770mLであり、高さは17cmであり、内径は7cm〜8cmである。その閉塞可能容器内に、第1剤及び第2剤の混合物として150gとなるように各剤を投入して、閉塞可能容器を上下に20回振った。こうした毛髪脱色剤に空気を振り混ぜる発泡操作を行うことで、泡状の剤型とした。
【0070】
得られた泡状の毛髪脱色剤を手(手袋着用)にとり、黒毛の人毛毛束(以下、単に毛束と記載する。)に塗布した後、室温(25℃)にて30分間放置した。そして、毛束に付着した毛髪脱色剤を水で洗い流し、毛束にシャンプーを2回、及びリンスを1回施した。続いて、毛束を温風で乾燥した後、一日間放置することにより、脱色処理された毛束を得た。脱色処理された毛束の明度を下記に示す方法に従い評価した。
【0071】
また、表1及び2に示す実施例及び比較例の毛髪脱色剤を発泡させて得られた泡状の毛髪脱色剤について、泡質について下記に示す方法に従い評価を行なった。また、閉塞可能容器を用いて、発泡操作を行い、蓋体を開けて泡状の毛髪脱色剤を取り出す際に、ガスの噴出が生ずるか否かについて下記に示す方法に従い評価を行なった。また、第2剤の皮膚刺激性について、下記に示す方法に従い評価を行なった。尚、表中「成分」欄におけるA,Bの表記は、本願請求項記載の各成分に対応する化合物を示す。
【0072】
<泡質>
各剤を混合することにより得られた泡状の毛髪脱色剤を閉塞可能容器内にて10分間放置し、閉塞可能容器の上部及び下部に位置する泡の泡質について、専門のパネラーが手で触れて観察することにより評価した。各表中の“泡質”欄において、“5”は、泡状組成物について水っぽさ又は強い弾力がなく、泡の硬さが非常に優れることを示し、“4”は、泡状組成物について水っぽさ又は強い弾力がほとんどなく、泡の硬さが優れることを示し、“3”は、泡状組成物について水っぽさ又は強い弾力があまりなく、泡の硬さが良好であることを示し、“2”は、泡状組成物について水っぽさ又は強い弾力がやや認められ、泡の硬さがやや悪いことを示し、“1”は、泡状組成物について水っぽさ又は強い弾力があり、泡の硬さが悪いことを示す。
【0073】
<閉塞可能容器の蓋体を開けた時のガスの噴出>
第1剤及び第2剤を閉塞可能容器内で振とう混合した後、ゆっくり容器の蓋体を開けた時に、内部ガスが噴出される音(シュッという音)を聞き、その大きさやガス噴出の勢いにより評価した。ガスの噴出について、音がない(5点)、音がほとんどない(4点)、少し音が聞こえるが弱い(3点)、音がはっきり聞こえる又はガス噴出の勢いが強い(2点)、音がはっきり聞こえ又はガス噴出の勢いが非常に強い(1点)の5段階で採点した。10名のパネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1点以上1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。
【0074】
<皮膚刺激性>
手の甲に第2剤を3cm×3cmの範囲に塗り広げ、刺激を感じるか否かについて、10名のパネラーが評価した。皮膚刺激の少なさについて、優れる(5点)、良好(4点)、可(3点)、やや不良(2点)及び不良(1点)の5段階で採点した。各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」及び1点以上1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。
【0075】
<明度>
10名のパネラーが毛髪脱色剤処理後の人毛毛束の明度を標準光源下で目視にて観察し、優れる(5点)、良好(4点)、可(3点)、やや不良(2点)及び不良(1点)の5段階で採点した。各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」及び1点以上1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。
【0076】
上記の各評価結果を表1,2に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

表1,2に示すように、各実施例は、各項目において良い評価が得られた。例えば、実施例12〜17に示されるように、第2剤中の界面活性剤の含有量が1〜9質量%の範囲において、泡質及び閉塞可能容器の蓋体を開けた時のガスの噴出の評価が良いことが分かった。
【0079】
一方、第1剤に(A)成分を含有しない比較例1は、各実施例に対して、明度の評価が低いことが分かった。また、第2剤に(B)界面活性剤を含有しない比較例2は、各実施例に対して、特に泡質の評価が低いことが分かった。また、第2剤のpHが5未満である比較例3は、各実施例に対して、泡質及び閉塞可能容器の蓋体を開けた時のガスの噴出の評価が低いことが分かった。第2剤のpHが8を超える比較例4は、各実施例に対して、第2剤の皮膚刺激性の評価が低いことが分かった。
【0080】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(イ)前記各請求項に記載される毛髪化粧料組成物と該毛髪化粧料組成物の使用時に発泡させるための発泡用具を備える毛髪化粧用品。(イ)の構成によれば、使用時に簡便に泡状の毛髪化粧料組成物を調製することができる。
【0081】
(ロ)酸化剤として過炭酸塩を使用することを特徴とする前記毛髪化粧料組成物。(ロ)の構成によれば、毛髪処理後の毛髪の明度を向上させることができる。
(ハ)酸化剤として過ホウ酸塩及び過酸化水素から選ばれる少なくとも一種が用いられることを特徴とする前記毛髪化粧料組成物。(ハ)の構成によれば、泡質をより向上させ、閉塞可能容器の蓋体を開けた時のガスの噴出をより抑制することができる。
【符号の説明】
【0082】
10…毛髪脱色・脱染剤、11…第1剤、12…第2剤、13…混合物、14…泡状の毛髪脱色・脱染剤、20…密閉可能容器、21…容器本体、22…蓋体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として構成され、使用時に(A)炭酸塩及び過炭酸塩から選ばれる少なくとも一種を含有する第1剤と、(B)界面活性剤を含有するとともにpH5〜8に調整される第2剤とを混合し、振とうにより発泡させる発泡操作によって泡状の剤型とされることを特徴とする毛髪化粧料組成物。
【請求項2】
前記毛髪化粧料組成物中における(A)炭酸塩の含有量及び過炭酸塩の含有量の合計が1〜9質量%であることを特徴とする請求項1に記載の毛髪化粧料組成物。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−31113(P2012−31113A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172987(P2010−172987)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】