説明

毛髪化粧料組成物

【課題】毛髪になめらかさ、まとまりを付与し、その効果を翌日のシャンプー直前まで持続させることができ、かつ、コンディショニング処理後に毛髪にべたつき感を与えず、ひんやり感が付与され、心地よい感触が得られる。
【解決手段】成分A、成分B及び成分Cを含む毛髪化粧料組成物;成分A:重量平均分子量Mwが1000〜50000のポリアミン、成分B:下記式(1)で示される末端分岐脂肪酸(B−1)、及び炭素数14〜22の直鎖脂肪酸とイソステアリン酸との混合脂肪酸(混合比率(質量)が0.25〜4.0)(B−2)から選択される脂肪酸
【化1】


(式中、Rはメチル基またはエチル基を示し、nは9〜17の整数を示す。)
成分C:カチオン性またはアニオン性界面活性剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、毛髪が、高湿環境下において水を吸収することにより、まとまりが悪くなるのを防ぐために、耐水性であり、顔料等の転写不能な防湿バリアを毛髪表面に付与するスタイリング処理組成物、すなわち少なくとも一つのポリアミン、少なくとも一つの酸、少なくとも一つの非水溶性成分、少なくとも一つのフィルムフォーマー、溶剤を含有するスタイリング処理組成物が開示されている。引用文献1には、このような組成物が、毛髪に適用したときに、耐水性、高湿下での縮れ防止、シャンプー後の櫛通り、高湿下でのカール保持性などの観点で、優れた効果を示すことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2067467号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、コンディショニング剤には、毛髪になめらかで軽い感触、およびまとまりを付与するというコンディショニング効果が期待されている。しかしながら、特許文献1では、このような観点からの検討はなされていない。
【0005】
また、ポリカチオンのみ、または脂肪酸のみによって毛髪になめらかさ、まとまりなどを付与する技術はすでに報告されているが、それらは持続性に乏しく翌日のシャンプーまでにはなめらかさやまとまりといった感触が落ちるものであった、さらに、ポリカチオンや脂肪酸を多量に配合させることでコンディショニング効果を高めることができる。しかし、この場合、毛髪にべたつき感が生じ、毛髪が揃いにくくなり、重たい感触が残るものであった。
【0006】
毛髪にべたつき感がなくなると、毛髪一本一本がばらけやすくなることから軽さを実現することができ、さらに毛髪が揃いやすくなるため、手で触れたときに毛髪がひんやりと感じられ、心地よい感触となることが本発明者らにより見出された。
【0007】
そこで、本発明者らは、特定のポリカチオンであるポリアミンと特定の脂肪酸とを組み合わせた毛髪化粧料を用いることで、毛髪になめらかさ、まとまりを付与し、その効果を翌日のシャンプー直前まで持続させることができることを見出した。また、このような毛髪化粧料は、毛髪にべたつき感を与えず、毛髪一本一本をばらけやすくすることから軽さを実現し、かつ、毛髪が揃いやすくなるため、ひんやり感が付与され、心地よい感触が得られることを見出して、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、成分A、成分B及び成分Cを含む毛髪化粧料組成物である;
成分A:重量平均分子量Mwが1000〜50000のポリアミン、
成分B:下記式(1)で示される末端分岐脂肪酸(B−1)、または炭素数14〜22の直鎖脂肪酸と、イソステアリン酸との混合脂肪酸(混合比率(質量)が0.25〜4.0)(B−2)から選択される脂肪酸
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Rはメチル基またはエチル基を示し、nは9〜17の整数を示す。)
成分C:カチオン性またはアニオン性界面活性剤。
【0011】
本発明は、成分A、成分B及び成分Cを含む毛髪処理剤組成物である;
成分A:重量平均分子量Mwが1000〜50000のポリアミン、
成分B:下記式(1)で示される末端分岐脂肪酸(B−1)、または炭素数14〜22の直鎖脂肪酸と、イソステアリン酸との混合脂肪酸(混合比率(質量)が0.25〜4.0)(B−2)から選択される脂肪酸
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、Rはメチル基またはエチル基を示し、nは9〜17の整数を示す。)
成分C:カチオン性またはアニオン性界面活性剤。
【0014】
又、本発明は、成分A、成分B,及び成分Cを含む毛髪化粧料組成物を頭髪に付与する工程と、
前記工程の後、水を用いて該頭髪をすすぐ工程と、
を含む毛髪の処理方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、毛髪になめらかさ、まとまりを付与し、その効果を翌日のシャンプー直前まで持続させることができ、かつ、コンディショニング処理後に毛髪にべたつき感を与えず、ひんやり感が付与され、心地よい感触が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、その好ましい実施形態に基づいて説明する。
【0017】
本発明は、成分A、成分B及び成分Cを含む毛髪化粧料組成物;
成分A:重量平均分子量Mwが1000〜50000のポリアミン、
成分B:下記式(1)で示される末端分岐脂肪酸(B−1)、及び
炭素数14〜22の直鎖脂肪酸とイソステアリン酸との混合脂肪酸(混合比率(質量)が0.25〜4.0)(B−2)から選択される脂肪酸
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、Rはメチル基またはエチル基を示し、nは9〜17の整数を示す。)
成分C:カチオン性またはアニオン性界面活性剤。
また、本発明の毛髪化粧料組成物は、例えば、毛髪処理剤組成物として用いることもできる。
【0020】
成分Aのポリアミンは、毛髪になめらかさ、まとまりを付与する効果の持続性と、べたつき感を与えない観点から、重量平均分子量で1000〜50000であることが好ましく、より好ましくは2000〜30000、最も好ましくは3000〜20000である。なお、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)等の公知の測定方法により測定され、測定装置の例としては、東ソー製HLC−8220シリーズ等が挙げられる。
【0021】
このようなポリアミンとしては、例えばポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリリジン、アミノ基を分子内に含む(メタ)アクリル酸誘導体のポリマー等が挙げられる。
【0022】
ポリアリルアミンは、水溶液として入手することができる。ポリアリルアミンの市販品としては、例えば、日東紡製「PAA−01」、「PAA−03」、「PAA−05」、「PAA−10」、「PAA−10C」、「PAA−15C」、「PAA−25」などが挙げられる。またポリアリルアミンは、特開昭60−106801号公報に記載の方法など、公知の方法によって合成することもできる。
【0023】
ポリビニルアミンは、市販品を用いることができる。ポリビニルアミンの市販品としては、例えば、BASF製のLupamineシリーズ等が挙げられる。またポリビニルアミンは、特開2003−147007、特開2006−257287に記載の方法で製造できる。
【0024】
ポリエチレンイミンは、市販品を用いることができる。ポリエチレンイミンの市販品としては、例えば、日本触媒社製のエポミンSP006、018、P1000等が挙げられる。
【0025】
ポリリジンは、市販品を用いることができる。ポリリジンの市販品としては、例えば、チッソ社製のε−ポリリジン25%水溶液等が挙げられる。
【0026】
アミノ基を分子内に含む(メタ)アクリル酸誘導体のポリマー(以下、アミノ基含有アクリル酸ポリマー、ともいう)とは、次の式(2)で示されるモノマーを含む重合体である。
【0027】
【化4】

【0028】
(R及びRは同一又は異なっており、水素原子又はメチル基であり;R及びRは同一又は異なっており、直鎖状又は分岐状で1〜30の炭素原子を有するアルキル基であり;ZはNH基又は酸素原子であり;lは2〜5の整数である。)
【0029】
上式で示されるモノマーの具体例としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、及びジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びそれらの混合物が挙げられ、好ましくはジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びそれらの混合物である。
【0030】
アミノ基含有アクリル酸ポリマーは、式(2)のモノマーを重合させたホモポリマーでもよいし、以下に例示されるモノマーと共重合した共重合体ても構わない。共重合されるモノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、窒素が低級アルキル(炭素数1〜6)で置換されたアクリルアミド及びメタクリルアミド、アクリル酸又はメタクリル酸又はそのエステル、例えばビニルピロリドン又はビニルカプロラクタム等のビニルラクタム、及びビニルエステルの誘導体が挙げられる。
【0031】
本発明のアミノ基含有アクリル酸ポリマーにおける上式(2)のモノマーの共重合比率は、全モノマー中60〜100モル%、好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%である。
【0032】
アミノ基含有アクリル酸ポリマーは、モノマーを含む溶液をアミン、チオール、アルコールなどの連鎖移動剤の共存下において常法に従ってラジカル重合させる事により得る事ができる。
【0033】
ポリアミンの中では、毛髪になめらかさ、まとまりを付与する効果の持続性の観点からポリアリルアミンが好ましい。
また、毛髪化粧料組成物中に、成分Aのポリアミンは、毛髪になめらかさ、まとまりを付与する効果の持続性を付与し、かつべたつき感を与えない観点から0.001〜10.0質量%含まれ、0.01〜5.0質量%で含まれることが好ましく、0.02〜5.0質量%で含まれることがより好ましい。
【0034】
成分Bの脂肪酸は、下記式(1)で示される末端分岐脂肪酸(B−1)、及び炭素数14〜22の直鎖脂肪酸とイソステアリン酸との混合脂肪酸(混合比率(質量)が0.25〜4.0)(B−2)から選択される。
【0035】
【化5】

【0036】
式中、Rはメチル基又はエチル基を示し、nは9〜17の整数を示す。
【0037】
末端分岐脂肪酸(B−1)の具体例としては、20−メチルヘンエイコサン酸、19−メチルヘンエイコサン酸、19−メチルエイコサン酸、18−メチルエイコサン酸、18−メチルノナデカン酸、17−メチルノナデカン酸、17−メチルオクタデカン酸、16−メチルオクタデカン酸、16−メチルヘプタデカン酸、15−メチルヘプタデカン酸、15−メチルヘキサデカン酸、14−メチルヘキサデカン酸、14−メチルペンタデカン酸、13−メチルペンタデカン酸、13−メチルテトラデカン酸、12−メチルテトラデカン酸、12−メチルトリデカン酸、11−メチルトリデカン酸が挙げられる。また、ラノリンからの抽出物、すなわちラノリン脂肪酸も用いることができる。
【0038】
混合脂肪酸(B−2)を構成する炭素数14〜22の直鎖脂肪酸としては、飽和又は不飽和脂肪酸が挙げられ、毛髪の揃いやすさという観点から飽和脂肪酸が好ましい。毛髪の乾燥後の摩擦、まとまりの観点から炭素数は14以上、さらに16以上が好ましく、炭素数22以下、さらに20以下が好ましく、中でも炭素数18のステアリン酸がより好ましい。
【0039】
混合脂肪酸(B−2)を構成するイソステアリン酸としては、多分岐型イソステアリン酸及び下記式(3)で示されるイソステアリン酸が挙げられる。
【0040】
【化6】

【0041】
(式中、a、b、cの総和は、a+b+c=15であり、bは1である分岐の飽和脂肪酸。)
【0042】
イソステアリン酸は、例えば「化粧品原料基準 第二版注解I(1984)薬事日報社」P.87(C)イソステアリン酸に記載されている分岐脂肪酸であり、メチル基が側鎖であり、位置は特定されていないが、オレイン酸からダイマー酸を合成する際に副生される不飽和側鎖脂肪酸に水素添加して得られるC18の脂肪酸であると記載されている。
本発明においてもそのような脂肪酸を用いることができる。
【0043】
多分岐型イソステアリン酸としては、例えば日油製のイソステアリン酸、イソステアリン酸N、イソステアリン酸Tが挙げられ、式(3)に示したようなイソステアリン酸としては、例えば高級アルコール工業製のイソステアリン酸EXが挙げられる。
【0044】
混合脂肪酸(B−2)において、直鎖脂肪酸と、イソステアリン酸との混合比(質量)は、毛髪になめらかさを付与する観点から0.25〜4.0である。また、0.67〜1.5であることが好ましい。
【0045】
また、毛髪化粧料組成物中に、成分Bの脂肪酸は、0.001〜10.0質量%で含まれ、0.01〜5.0質量%で含まれることが好ましく、0.02〜5.0質量%で含まれることがより好ましい。
さらに、当然に(B−1)と(B−2)を併用することも可能である。
【0046】
本発明の成分Aと成分Bの組成物中の含有比率(成分A/成分B)は、毛髪に持続的になめらかさ、まとまりを付与し、ひんやりとした心地よい感触を与える観点から好ましくは1/9〜9/1(質量比)で用いることができるが、より好ましくは1/3〜3/1、さらに好ましくは1/2〜2/1である。
又、成分Aと成分Bの組成物中の含有比率(成分A/成分B)は、効率よく毛髪に持続的になめらかさ、まとまりを付与し、ひんやりとした心地よい感触を与える観点から成分Aのアミノ基のモル数Mと成分Bのカルボキシル基のモル数Mとの比が1.0/4.0〜4.0/1.0が好ましく、2.0/1.0〜1.0/2.0がより好ましい。
【0047】
成分Cとしては、カチオン性またはアニオン性界面活性剤を用いることができる。
ここで、本発明の毛髪化粧料組成物をコンディショナーとして用いる場合には、成分Cとしてカチオン性界面活性剤を含有することが好ましい。
【0048】
ここで用いることができるカチオン性界面活性剤としては、下記式(4)のアミン、例えばヒドロキシエーテルアルキルアミン、エーテルアミンあるいはアルキルアミドアミン、4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0049】
以下に、一般式(4)で表される3級アミン化合物を示す。
【0050】
【化7】

【0051】
(式中、R11は総炭素数8〜35の−OCO−若しくは−COO−で表される官能基で分断されていてもよく、及び/又は−OHで置換されていてもよい直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、又は脂肪族アシルオキシ(ポリエトキシ)エチル基を示し、R12及びR13は炭素数1〜22のアルキル基、若しくはヒドロキシアルキル基、又は合計付加モル数10以下のポリオキシエチレン基を示す。)
【0052】
成分(C)として用いることができる3級アミン化合物としては、以下の(i)〜(iii)の3級アミン化合物を1種又は2種以上含むことが好ましい。
【0053】
(i)ヒドロキシエーテルアルキルアミン
例えば下記一般式(5)で表される化合物が挙げられる。
【0054】
【化8】

【0055】
(式中、R17は、炭素数6〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R18及びR19は炭素数1〜6のアルキル基又は−(AO)H(AOは炭素数2〜4のアルキレンオキシ基、fは1〜6の数を示し、f個のAOは同一でも異なってもよく、その配列は任意である)を示す。eは1〜5の数を示す。)
【0056】
具体的には、ヘキサデシルオキシ(2−ヒドロキシプロピル)ジメチルアミン、オクタデシルオキシ(2−ヒドロキシプロピル)ジメチルアミンが挙げられる。
【0057】
(ii)エーテルアミン
例えば下記一般式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0058】
【化9】

【0059】
(式中、R20は、炭素数6〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R21及びR22は炭素数1〜6のアルキル基又は−(AO)H(AOは炭素数2〜4のアルキレンオキシ基を示し、gは1〜6の数を示し、g個のAOは同一でも異なってもよく、その配列は任意である)を示す。)
具体的にはジメチル−3−ヘキサデシルオキシプロピルアミン、ジメチル−3−オクタデシルオキシプロピルアミンが挙げられる。
【0060】
(iii)アルキルアミドアミン
例えば下記一般式(7)で表される化合物が挙げられる。
【0061】
【化10】

【0062】
(式中、R23は炭素数11〜23の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R24及びR25は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、mは2〜4の数を示す。)
具体的には、(3−(ジメチルアミノ)プロピル)ドコサナミド、(3−(ジメチルアミノ)プロピル)ステアラミドが挙げられる。
【0063】
4級アンモニウム塩としては、例えば次の一般式(8)で表される4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0064】
【化11】

【0065】
(式中、R31及びR32は、水素原子、炭素数1〜28のアルキル基又はベンジル基を示すが、同時に水素原子又はベンジル基となることはなく、少なくとも1つは炭素数8以上のアルキル基である。R33及びR34は、炭素数1〜5のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基、又は付加モル数10以下のポリオキシエチレンを有する(ヒドロキシ)アルキル基を示し、Anは、陰イオンを示す。)
【0066】
ここでR31又はR32がアルキル基である場合は、炭素数16〜24、中でも炭素数22のものが好ましく、また直鎖アルキル基が好ましい。Anとしては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン、エチル硫酸イオン、炭酸メチルイオン等の有機アニオン等が挙げられ、ハロゲン化物イオン、中でも塩化物イオンが好ましい。
【0067】
4級アンモニウム塩としては、モノ長鎖(R31の炭素数が8〜28、R32の炭素数が1〜6)四級アンモニウム塩が好ましく、具体的には、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化アラキルトリメチルアンモニウム等が挙げられ、中でも塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムが好ましい。
【0068】
また、4級アンモニウム塩には、一般式(9)で示されるエーテル型4級アンモニウム塩も包含される。
【0069】
【化12】

【0070】
(式中、R41は、炭素数6〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R42〜R44は、炭素数1〜6のアルキル基、ベンジル基又は−(DO)H(Dは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、fは1〜6の平均付加モル数を示し、f個のDは同一でも異なってもよく、その配列は任意である。)を示し、Anは、陰イオンを示す。)
【0071】
ここで、R41は炭素数12〜22、さらに16〜18のものが好ましく、また直鎖のアルキル基が好ましい。R42〜R44は炭素数1〜6のアルキル基及び−(CHCHO)Hが好ましく、炭素数1〜6のアルキル基としてはメチル基及びエチル基が好ましく、メチル基がより好ましく、−(CHCHO)Hとしてはkが1〜3、特に1であるものが好ましい。特にR42〜R44のいずれか1つは、メチル基及びエチル基が好ましく、中でもメチル基が好ましい。Anとしては、前に挙げたものと同様のものが好ましい。
エーテル型4級アンモニウム塩としては、例えば塩化ステアロキシプロピルトリメチルアンモニウムが挙げられる。
【0072】
カチオン性界面活性剤として用いられる好ましい3級アミン化合物は、本発明の毛髪化粧料組成物の毛髪への塗布時及びすすぎ時の滑らかさの観点から(ii)エーテルアミンまたは(iii)アルキルアミドアミンが好ましい。
その中でも(ii)エーテルアミンが好ましく、ジメチル−3−ヘキサデシルオキシプロピルアミン、ジメチル−3−オクタデシルオキシプロピルアミンが好ましく、中でも、ジメチル−3−オクタデシルオキシプロピルアミンがより好ましい。
【0073】
成分(C)のカチオン性界面活性剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができ、本発明の毛髪化粧料組成物中に0.01〜20重量%、特に0.1〜10重量%、更に0.5〜5重量%配合すると、使用感が良好であり好ましい。
【0074】
また、本発明の毛髪化粧料組成物を洗浄剤に用いる場合には、C成分であるアニオン性界面活性剤を含有させる。
【0075】
このようなアニオン性界面活性剤として、具体的には、硫酸系、スルホン酸系、カルボン酸系のものが使用できる。硫酸系のものとして、例えばアルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩が挙げられる。スルホン酸系のものとして、スルホコハク酸アルキルエステル塩、ポリオキシアルキレンスルホコハク酸アルキルエステル塩、アルカンスルホン酸塩等が挙げられる。また、カルボン酸系のものとして、高級脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等が挙げられる。なかでもポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩が好ましく、特に次の一般式(10)又は(11)で表されるものが好ましい。
【0076】
10O(CH2CH2O)SO3M (10)
10OSO3M (11)
(式中、R10は平均炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基を示し、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルカノールアミン又は塩基性アミノ酸由来のカチオンを示し、pは1〜5の数を示す。)
【0077】
この中でも、毛髪洗浄時のすばやい泡立ちと良好な泡の感触を両立する観点から、上記一般式(9)中のR10が平均炭素数12〜14のアルキル基、pが0.5〜2.0であり、Mがアンモニウム又はナトリウムであるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が好ましい。
【0078】
成分(C)のアニオン性界面活性剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができ、またその含有量は、毛髪洗浄時の泡立ち、使用時の液性、洗浄性の点から、本発明の毛髪化粧料組成物中に1〜30質量%が好ましく、更には5〜25質量%、よりさらには8〜20質量%が好ましい。
【0079】
本発明では、A成分である特定のポリアミンと、B−1成分である特定の末端分岐脂肪酸またはB−2成分である特定の混合脂肪酸と、C成分であるカチオン性またはアニオン性界面活性剤を組み合わせて用いることで、これら成分の相乗効果により、毛髪になめらかさ、まとまりを付与している。さらに、A成分とB成分の相乗作用によりその効果を翌日のシャンプー直前まで持続させることができ、かつ、コンディショニング処理後に毛髪にべたつき感を与えず、ひんやり感が付与され、心地よい感触を得ているものと推察される。これは、成分Aのアミノ基と成分Bのカルボキシル基が静電相互作用により結合した状態で毛髪表面に結合する事でB成分の撥水性が毛髪表面で効率よく発揮されているためと推定している。
【0080】
本発明の毛髪化粧料組成物は、通常の方法で製造することができる。
例えば、ヘアコンディショナーとしては次のような方法で製造する事ができる。水相としてイオン交換水、酸類、およびカチオン性またはアニオン性界面活性剤を入れ、攪袢しながら加熱する。その後、脂肪族アミンを、高級アルコール、ポリアミン、および脂肪酸を含有する油相を溶解した後、上記水相中に添加し、攪拌して乳化させる。引き続き攪拌しながら放冷することでヘアコンディショナー基材またはシャンプー基材とする。
【0081】
本発明の毛髪化粧料組成物は、製造に際し水や界面活性剤を用いるもので簡便な流動性ある組成物を得るものであるが、成分A及び成分Bからなる毛髪処理剤としても利用できる。
【0082】
本発明の毛髪化粧料組成物には、上述した成分以外に、通常の化粧品分野で用いられる成分を、目的に応じて加えることができる。このような任意の成分としては、例えば可溶化剤、界面活性剤、希釈剤、有機溶剤、感触向上剤、毛髪補修剤、キレート剤、増粘剤、防腐剤、酸化防止剤、保湿剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、香料などが挙げられる。
【0083】
本発明の毛髪化粧料組成物は、それを用いて、毛髪の処理を行う方法も提供する。つまり、本発明の毛髪化粧料組成物を頭髪に付与する工程、その後、水を用いて該頭髪をすすぐ工程を含む毛髪の処理方法を提供する。
なお、頭髪に付与する工程では、本毛髪処理組成物を乾いた或いは湿った頭髪に付与する。付与は手で行ってもよいし、ブラシ等の道具を介して行ってもよい。その後、組成物を頭髪の内部あるいは表面に浸透させる為に手や道具を用いて揉み込む。その時間は15分以内、好ましくは30秒〜5分である。次に、水を用いて該頭髪をすすぐ。水温は身体に負担にならない温度であればよく、15℃〜50℃、好ましくは25〜45℃が好ましい。すすぐ時間は5秒〜3分あれば十分である。
【実施例】
【0084】
<重量平均分子量測定(GPC分析)>
以下の合成例で得られた各種ポリマーの重量平均分子量は下記条件のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法)により測定した。
カラム:TOSO社製 TSKgel G400PWXL,G2500PWXL
検出器:RI
カラム温度:40℃
溶離液:0.15M Na2SO4、 1%CHCOOH/水
標準物質:プルラン
【0085】
<ポリマーの製造例1>
温度計、攪拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド5.0g、イソプロピルアルコール100g、2、2'−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)V−65(和光純薬社製)78mgを入れ、窒素雰囲気下で混合し、80℃まで昇温した。そこへ、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド35.0gを毎分0.30gの割合で滴下し、同時に、V−65 550mgをイソプロピルアルコール22.0gに溶解させたものを毎分0.18gの割合で滴下した。滴下終了後2時間80℃に保温し、その後室温まで冷却した。重合体を含む溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、得られた濃縮物に蒸留水100gを加えて再び溶解させた。それを透析膜(スペクトラムラボラトリーズ、MWCO=1000)に入れ、蒸留水中で3日間透析を行い、乾燥させて目的とするポリマーであるポリジメチルアミノアクリルアミドを得た。
得られたポリマーのGPC測定の結果、重量平均分子量は4200であった。
【0086】
<ポリマーの製造例2>
ポリマーの製造例1において、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドの代わりに、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド35.0g、ビニルピロリドン5.0gをあらかじめ混合したものを用いた。そのうち、5.0gをあらかじめ500mlセパラブルフラスコに仕込み、残りの35.0gを製造例1にならって滴下し、目的とするポリマーであるジメチルアミノプロピルアクリルアミド―ビニルピロリドン共重合体を得た。
得られたポリマーのGPC測定の結果、重量平均分子量は4800であった
【0087】
<ポリマーの製造例3>
ポリマーの製造例1において、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドの代わりに、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド36.0g、エチルアクリレート1.0g、tert−ブチルアクリルアミド1.0g、メトキシポリエチレングリコール#400メタクリレート2.0gをあらかじめ混合したものを用いた。そのうち、5.0gをあらかじめ500mlセパラブルフラスコに仕込み、残りの35.0gを製造例1にならって滴下し、目的とするポリマーを得た。
得られたポリマーのGPC測定の結果、重量平均分子量は6000であった
【0088】
(実施例1〜19、及び比較例1〜9)
表1〜3に示す毛髪化粧料を、常法により調製し、以下の評価方法により評価した。その結果を示す。例えば実施例1のヘアコンディショナーとしては次のような方法で製造する事ができる。300mlビーカーに水相としてイオン交換水167.8g、ムサシノ乳酸90を1.38g入れ、55℃までプロペラで攪袢下加熱した。その後、ファーミンDM E−80を4.90g、ステアリルアルコール(カルコール8098:花王社製)11.16g、DPG−RF(同上)1.86g、ポリアリルアミン(PAA−03:日東紡績社製)1.00g、18−メチルエイコサン酸1.00gから成る油相を80℃で均―溶解した後、水相中に添加し、10分間300rpmで攪拌して乳化した。300rpmで攪拌しながら35℃以下まで放冷してヘアコンディショナーとする。
【0089】
(評価方法1)
ストレートパーマ1回、ブリーチ2回処理を施した日本人女性の毛髪をダメージ毛髪とし、それぞれ20g(長さ15〜20cm、平均直径80μm)の毛髪束を、パネラー5名が次の方法で処理しながら官能評価を行った。
下記の処方の標準シャンプー2gを用いて洗浄した毛髪束に、表1〜3のそれぞれに示すコンディショナー2gを塗布し、毛髪全体に十分に馴染ませた後、およそ30秒間約40℃の流水下で濯ぎ、ついで、タオルドライを行い、ドライヤーで十分に乾燥させた後、1日(24時間)乾燥後に4段階で評価を行った。評価は5人のパネラーで行い、評価ポイントの積算値を求めた。
【0090】
・標準シャンプーの処方(pH7.0)
25%ポリオキシエチレン(2.5)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム塩
62.0質量%
ラウリン酸ジエタノールアミド 2.3質量%
エデト酸二ナトリウム 0.15質量%
安息香酸ナトリウム 0.5質量%
塩化ナトリウム 0.8質量%
75%リン酸 適量
香料、メチルパラベン 適量
精製水 残量
【0091】
(評価基準)
(1)1日経過後のなめらかさ
4:非常になめらか
3:なめらか
2:あまりなめらかでない
1:なめらかでない
【0092】
(2)1日経過後の髪のまとまりやすさ
4:非常にまとまりやすい
3:まとまりやすい
2:あまりまとまりやすくない
1:まとまりやすくない
【0093】
(3)1日経過後、毛髪に手で触れた時のひんやり感
4:非常にひんやりする
3:ひんやりする
2:あまりひんやりしない
1:ひんやりしない
【0094】
(4)1日経過後の髪の揃い易さ
4:非常に髪が揃い易い
3:髪が揃い易い
2:あまり髪が揃い易くない
1:髪が揃い易くない
【0095】
(評価方法2)
ストレートパーマ1回、ブリーチ2回処理を施した日本人女性の毛髪をダメージ毛髪とし、それぞれ20g(長さ15〜20cm、平均直径80μm)の毛髪束を、上記の組成の標準シャンプー2gを用いて洗浄した毛髪束に、表2に示すコンディショナーを2g塗布し、毛髪全体に十分に馴染ませた後、およそ30秒間約40℃の流水下で濯ぎ、ついで、タオルドライを行い、ドライヤーで十分に乾燥させた。乾燥した毛髪について以下に示す熱移動量(qmax)を10回繰り返し測定し、それらの平均値をひんやり感の評価とした。
KEF−F7 フィンガーロボットサーモラボ(カトーテック社製)を測定機として使用し、測定部位(センサー)を上記毛束に接触させ、その時の熱移動量qmax(mW/cm)を測定した。
熱移動量は、以下のようにして測定した。
H.Tanamachi, Temperature as a moisture cue in haptics on hair, Int.J.Cos.Sci.,2011. 33. 25−36に記載した方法に従い、20℃、40%RH環境下において、約20gの毛束にKEF−F7 フィンガーロボットサーモラボ(カトーテック株式会社製)のシリコーンゴムで覆われた温度センサー部を体温と同じ36℃に暖め、接触させた。接触時に温度センサーの熱が毛束に移動するが、その時の熱信号変化から熱移動速度qを計測し、ピーク値qmaxを算出した。その値が大きいほど、熱移動速度が高いことを表し、ひんやり感が得られやすいことを示す。
【0096】
参考例として、上記評価方法2にて準備したダメージ毛髪20gの毛髪束を、上記の標準シャンプー2gを用いて洗浄した毛髪束に対して、タオルドライを行い、ドライヤーで十分に乾燥させて、熱移動量qmaxを上述したように測定した。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分A、成分B及び成分Cを含む毛髪化粧料組成物;
成分A:重量平均分子量Mwが1000〜50000のポリアミン、
成分B:下記式(1)で示される末端分岐脂肪酸(B−1)、及び
炭素数14〜22の直鎖脂肪酸とイソステアリン酸との混合脂肪酸(混合比率(質量)が0.25〜4.0)(B−2)から選択される脂肪酸
【化1】

(式中、Rはメチル基またはエチル基を示し、nは9〜17の整数を示す。)
成分C:カチオン性またはアニオン性界面活性剤。
【請求項2】
成分Aのポリアミンがポリアリルアミンである請求項1に記載の毛髪化粧料組成物
【請求項3】
成分Aのアミノ基モル数と成分Bのカルボキシル基モル数とのモル比率が1.0/4.0〜4.0/1.0である請求項1又は2に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項4】
前記成分Cにおけるカチオン性界面活性剤が、3級アミン化合物またはその塩、あるいは4級アンモニウムである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の毛髪化粧料組成物を頭髪に付与する工程と、
前記工程の後、水を用いて該頭髪をすすぐ工程と、
を含む毛髪の処理方法。

【公開番号】特開2013−32326(P2013−32326A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169999(P2011−169999)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】