説明

毛髪化粧料

【課題】 固着に基づく毛髪(へアスタイル)の固定が可能であり、なおかつアレンジ力(再整髪力も含む)にも優れた毛髪化粧料を提供する。
【解決手段】 特定構造を有するモノマーを組み合わせて重合することにより得られる、皮膜形成時に程よい固さと高い粘着力を有する新規な粘着性セット樹脂をセット樹脂として配合した毛髪化粧料。本発明の毛髪化粧料は、糖、糖アルコール及びEO/PO誘導体から選択される少なくとも1種を更に含有するが好ましい。
【効果】 固定力とアレンジ力を兼ね備えた毛髪化粧料が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定力とアレンジ力(再整髪力も含む)を両立させた毛髪化粧料に関する。より詳細には、新規なポリマーを含有せしめることにより、固着により毛髪を固定できるとともに、再整髪が可能な毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアスタイリングは、ヘアスタイルを作ることと、作ったヘアスタイルを保持することという2つの機能を含んでいる。これらの2つの機能を発揮する原理は、固着と粘着であると言われている(非特許文献1)。
【0003】
固着によるヘアスタイリングは、セット剤と呼ばれる皮膜形成剤(ポリマー樹脂)が固形皮膜を形成して毛髪を固定するものである。例えば、従来のヘアジェル、ヘアスプレーなどは、主にセット樹脂を用いた整髪メカニズムに基づいている。例えば、特許文献1には、セット樹脂として、主にポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン−ポリ酢酸ビニル共重合体等の皮膜形成ポリマーを用いた毛髪化粧料が記載されている。特許文献2には、シリル化ウレタン樹脂をセット樹脂として用いた毛髪化粧料が開示され、柔らかさと固さとが両立した皮膜を形成し、自然な風合いと高いキープ力を持つとされている。
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載されたような樹脂を用いた毛髪化粧料では、セット樹脂が固い皮膜を形成するため、一度作った髪型からの再整髪ができず、皮膜を崩してしまうと整髪機能を失うという欠点があった。即ち、セット樹脂による固着に基づくスタイリング剤は、髪型の固定には長けているがアレンジ力に乏しいという問題があった。
【0005】
一方、粘着に基づくスタイリングは、毛髪同士が油性成分によって粘着されるものであり、ポリアルキレングリコールのような粘着性油性成分を主基剤とするヘアリキッドや、固形油分の粘着性を用いて近年若年層に嗜好されているヘアワックス等が知られている。例えば、特許文献3には、ロウ類と曳糸性のある水溶性高分子を配合し、再整髪性に優れた毛髪用化粧料が記載されている。
【0006】
しかし、このような油性成分の粘着性に基づくヘアスタイリングは、油性成分が毛髪上で流動性と粘着性を保っているため、指やブラシを通して再スタイリング可能であるという特徴を有し、いわゆるアレンジ力に長けているものの、セット樹脂を用いた毛髪化粧料のような固定力(キープ力)が得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「機能性化粧品の開発II」、鈴木正人監修、シーエムシー出版発行、1996年、第10章 整髪剤の機能と最新の技術
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−213706号公報
【特許文献2】特開2003−171244号公報
【特許文献3】特開平10−45546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、本発明における課題は、固着に基づく毛髪(へアスタイル)の固定が可能であり、なおかつアレンジ力(再整髪力も含む)にも優れた毛髪化粧料を提供することにある。
本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、皮膜形成時に程よい固さと高い粘着力を有する新たな粘着性セット樹脂をセット樹脂として配合することにより、固定力とアレンジ力を兼ね備えた毛髪化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち本発明は、
下記式(A):
【化1】

(式中、R1はH又はCHであり、nは0〜30の整数であって(CHは分岐鎖を含み、R2はH、OH、OCH、OCHCH又はフェニルである)で表されるモノマーの少なくとも1種(以下、「モノマーA」とする);
及び/又は
下記式(B):
【化2】

(式中、R3はH又はCHであり、R4及びR5は同一でも異なっていてもよく、H又は(CHR’であって、lは1〜3の整数であり、R’はH、OH又は-NR”R’”であって、R”及びR’”は同一でも異なっていてもよく、H又はC1〜C3のアルキル基である)で表されるモノマーの少なくとも1種(以下、「モノマーB」とする);
及び
下記式(C):
【化3】

(式中、R6はH又はCHであり、pは1〜100の整数であり、mは0〜30の整数であり、R7はH、OH、OCH、OCHCH、又はフェニルであり、Xはオキシエチレン基(EO)、オキシプロピレン基(PO)、オキシブチレン基(BO)、又はグリセリル基である)で表されるモノマーの少なくとも1種(以下、「モノマーC」とする);
及び
下記式D:
【化4】

(式中、R8はH又はCHであり、qは1〜100の整数であり、Yはオキシエチレン基(EO)、オキシプロピレン基(PO)、オキシブチレン基(BO)、炭素数5以上の直鎖または分岐のオキシアルキレン基、又はグリセリル基である(但し、Yが炭素数5以上の直鎖または分岐のオキシアルキレン基であるときは、qは1である))で表されるモノマーの少なくとも1種(以下、「モノマーD」とする)
を重合させて得られる粘着性セット樹脂、アルコール、及び水を含有する毛髪化粧料を提供する。
本発明の毛髪化粧料は、前記粘着性セット樹脂に加えて、糖、糖アルコール及びEO/PO誘導体から選択される少なくとも1種を含有するが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の毛髪化粧料は、前記の新規な粘着性セット樹脂を配合したことによって、従来のセット樹脂では不可能であった固定力とアレンジ力とを両立することが可能になった。
さらに、前記粘着性セット樹脂と、糖、糖アルコール及びEO/PO誘導体から選択される少なくとも1種とを組み合せることによって粘着機能(アレンジ力)を更に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の毛髪化粧料は、上記したモノマーA及び/又はモノマーB及びモノマーC及びモノマーDを重合させて得られる粘着性セット樹脂を必須成分として含有している。即ち、 本発明の粘着性セット樹脂においては、モノマーC及びモノマーDを含むことが必須であり、モノマーA及びモノマーBは、いずれか一方又は両方を含んでいればよい。モノマーC又はモノマーDを欠いた樹脂(ポリマー)では、良好な粘着力、アレンジ力(再整髪力)が得られない。
【0013】
本発明で使用される粘着性セット樹脂は、下記式(I)で表される構造を有するものが特に好ましい。

上記式(I)において、R1〜R9、n、m、p、qは、上記式A〜Dと同じ意味であり、aは40<a<400、bは80≦b<300、cは30<c<300、dは0<d<10の範囲の数である。
上記の条件を満たす粘着性セット樹脂(式(I)のポリマー)における各モノマーの質量%は、およそ次のようになる。7.5<A<62.5、20≦B<45、7.5<C<60、0<D<5。
【0014】
本発明の粘着性セット樹脂は、上記モノマーA及び/又はB及びC及びDを適切な比率で混合し、必要に応じて適当な溶媒中において、標準的な方法を用いて重合反応させることにより調製することができる。例えば、エタノール中で、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等の重合開始剤を用い、約80℃において8時間熱重合させることによって得ることができ、得られたポリマーを適宜精製して使用することができる。
【0015】
本発明の毛髪化粧料における粘着性セット樹脂の配合量は、その製品形態応じて変化しうるが、一般的には0.1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜15質量%である。0.1質量%未満であるとアレンジ力が不足する場合があり、30質量%を越えて配合すると毛髪にごわつきを生じる場合がある。
【0016】
本発明の毛髪化粧料は、上記した粘着性セット樹脂に加えて、アルコール及び水を含有している。
本発明の毛髪化粧料におけるアルコールとしては、エタノール等の化粧品で一般に使用されているアルコール類から選択される1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。アルコールの配合量は、特に限定されるものではなく、毛髪化粧料の態様によって変化しうる。通常は、粘着性セット樹脂の溶媒として用いる下限量から80質量%まで配合される。また、使用性をコントロールする点で水の配合量に合わせて調整するのが好ましい場合もある。
本発明の化粧料における水の含有量は、通常は5〜80質量%、好ましくは10〜70質量%である。
【0017】
さらに、本発明の毛髪化粧料は、糖、糖アルコール、及びEO/PO誘導体から選択される少なくとも1種を含有するが好ましく、これらを配合することにより、アレンジ力を更に向上させることができる。
【0018】
本発明で用いられる糖としては、単糖類及びオリゴ糖類が挙げられる。具体的には、単糖類としては、三炭糖(例えば、D−グリセリルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン等);四炭糖(例えば、D−エリトロース、D−エリトルロース、D−トレオース等);五炭糖(例えば、L−アラビノース、D−キシロース、L−リキソース、D−アラビノース、D−リボース、D−リブロース、D−キシルロース、L−キシルロース等);六炭糖(例えば、D−グルコース、D−タロース、D−ブシコース、D−ガラクトース、D−フルクトース、L−ガラクトース、L−マンノース、D−タガトース等);七炭糖(例えば、アルドヘプトース、ヘプロース等);八炭糖(例えば、オクツロース等);デオキシ糖(例えば、2−デオキシ−D−リボース、6−デオキシ−L−ガラクトース、6−デオキシ−L−マンノース等);アミノ糖(例えば、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、シアル酸、アミノウロン酸、ムラミン酸等);ウロン酸(例えば、D−グルクロン酸、D−マンヌロン酸、L−グルロン酸、D−ガラクツロン酸、L−イズロン酸等)等が挙げられる。また、これらの誘導体(POE・POP付加、アルキル基付加、カチオン化、アニオン化、シリル化類)などが挙げられる。
【0019】
オリゴ糖類としては、ショ糖、マルトース、セロビオース、グンチアノース、ウンベリフェロース、ラクトース、プランテオース、イソリクノース類、トレハロース、ラフィノース、リクノース類、ウンビリシン、スタキオースベルバスコース類等が挙げられる。また、これらの誘導体(POE・POP付加、アルキル基付加、カチオン化、アニオン化、シリル化類)などが挙げられる。
【0020】
糖アルコールとしては、例えば、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、ソルビトール、マルチトール、イノシトール等が挙げられる。また、これらの誘導体(POE及び又はPOP付加物、アルキル基付加物、カチオン化物、アニオン化物、シリル化物)なども用いることができる。
本発明で用いられる糖及び糖アルコールは限定されないが、それらの中でも糖アルコール、特にマルチトール、ソルビトールが最適である。
【0021】
本発明の毛髪化粧料における糖及び/又は糖アルコールの配合量は、一般的には0.1〜20質量%、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは3〜10質量%である。0.1質量%未満であるとアレンジ力(再整髪力)の向上効果が十分でない場合があり、30質量%を越えて配合するとべたつきを生じる場合がある。
【0022】
本発明で用いられるEO/PO誘導体は、下記の整髪油分及びポリアルキレングリコール類を包含する化合物類である。
整髪油分とは、一価〜四価のアルコール、または一価〜三価のカルボン酸のEO/PO付加体を意味する。市販のものを利用することができ、例えば、ユニルーブ50 MB 168、ユニルーブMB370、ベルタモール P−700、ベルタモールDG−25、トリオールG−40、サボンドールSGP−7、サボンドールGP−9(以上日油株式会社)エステモール50(日清製油株式会社)などを挙げることができる。
【0023】
ポリアルキレングリコール類とは、ポリアルキレングリコール、例えば、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、ブチレンオキサイド(BO)の付加重合体を意味する。市販のものを利用することができ、例えば、EO付加重合体:PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、PEG1000、PEG1540、PEG2000、PEG4000、PEG6000、PEG11000、PEG20000(日油株式会社または東邦化学社)PO付加重合体:ユニオールD−700、ユニオールD−1000、ユニオールD−1200、ユニオールD−2000(以上日油株式会社)などを挙げることができる。
本発明で用いられるポリアルキレングリコール類は限定されないが、それらの中でもポリエチレングリコールが最適である。
【0024】
本発明の毛髪化粧料におけるEO/PO誘導体の配合量は、一般的には0.1〜20質量%、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは3〜10質量%である。0.1質量%未満であるとアレンジ力(再整髪力)の向上効果が十分でない場合があり、30質量%を越えて配合するとべたつきを生じる場合がある。
【0025】
本発明の毛髪化粧料は、新規な粘着性セット樹脂を含み、任意に糖、糖アルコール、及びEO/PO誘導体から選択される少なくとも1種を含むことにより、固定力とアレンジ力を発揮するものであるが、その形態は、ヘアリキッド、ヘアフォーム、ヘアムース、ヘアスプレー、ヘアミスト、ヘアジェル、ヘアワックス等の様々な態様で提供することができる。
【0026】
本発明の毛髪化粧料は、例えば、その形態に応じて、従来から毛髪化粧料に使用されている他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。
【実施例】
【0027】
以下に具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例等における配合量は特に断らない限り質量%を示す。
【0028】
(製造例及び比較製造例)
下記表1に示したモノマー組成で重合を行い、本発明の粘着性セット樹脂(製造例1〜6)及びモノマーCを含まない比較製造例1及びモノマーDを含まない比較製造例2を調製した。
具体的には、モノマー類100部を混合した混合物をあらかじめ用意し、この混合物の入った滴下漏斗、還流冷却気、温度計、窒素置換用管および、撹拌機が取り付けられた容量1Lの五つ口フラスコに、エタノール100部を仕込み、窒素気流下、昇温し、還流状態(約80℃)になったところで、このエタノール中に重合開始剤(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)1部を添加し、上記混合物を2時間連続して滴下する。その後、還流状態にて、8時間放置し重合反応を進行させた。次に五つ口フラスコ中の溶液から溶媒を留去および、エタノールを加えることでこの溶液の溶媒含有量を調整し、固形分濃度50%の毛髪化粧料基剤の溶液を得た。
【0029】
【表1】

【0030】
(実施例及び比較例)
上記製造例及び比較製造例の樹脂を用いて試料を調製し、当該試料を使用したときの固定力、粘着力、アレンジ力、再整髪力、及び髪のぱさつきについて評価した。
各特性の評価方法及び評価基準は以下の通りである。
【0031】
1.固定力
黒色バージンヘア(長さ15cm,重さ1g)に、試料を0.4g塗布し、くしを使いなじませ、まっすぐになるよう形を整え、1試料あたり5本のストランドを作製した。これを50℃で1時間乾燥させた後目盛りの付いたボードに吊り下げ、温度30℃,湿度90%RHの恒温恒湿器にてストランドの撓んだ長さを(b)を測定した。試料未塗布時にあらかじめ測定しておいた、撓んだストランドの長さ(a)を用い、次式に従い固定力(キープ力)を求めた。数値が100%に近いほど固定力が高く、耐湿性に優れることを示している。
ヘアスタイルキープ力(%)={(a−b)/a}×100
【0032】
<評価基準>
◎:値が90%以上
○:値が70〜90%未満
△:値が50〜70%未満
×:値が50%未満
【0033】
2.粘着力
1束の黒色バージンヘア(長さ20cm,質量2g)に試料を0.5g塗布し、常温にて乾燥させた後の毛束について、毛髪上の粘着力を10名の女性専門パネラーによる官能試験にて評価した。
【0034】
<評価点基準>
5点:かなり粘着を感じる
4点:やや粘着を感じる
3点:普通
2点:やや粘着を感じない
1点:粘着を感じない
<評価基準>
◎:合計点が40点以上
○:合計点が30点以上40点未満
△:合計点が20点以上30点未満
×:合計点が20点未満
【0035】
3.アレンジ力
1束の黒色バージンヘア(長さ20cm,質量2g)に試料を0.5g塗布し、常温にて乾燥させた後の毛束について、アレンジのしやすさを10名の女性専門パネラーによる官能試験にて評価した。
【0036】
<評価点基準>
5点:かなりアレンジしやすい
4点:ややアレンジしやすい
3点:普通
2点:ややアレンジしにくい
1点:アレンジしにくい
<評価基準>
◎:合計点が40点以上
○:合計点が25点以上40点未満
△:合計点が20点以上25点未満
×:合計点が20点未満
【0037】
4.再整髪力
1束の黒色バージンヘア(長さ20cm,質量2g)に試料を0.5g塗布し、常温にて乾燥させた後の毛束について、塗布直後に整髪を行い、その後1時間後に再度整髪した際のしやすさ(再整髪力)を10名の女性専門パネラーによる官能試験にて評価した。
【0038】
<評価点基準>
5点:かなり再整髪力がある
4点:やや再整髪力がある
3点:普通
2点:やや再整髪力がない
1点:再整髪力がない
<評価基準>
◎:合計点が40点以上
○:合計点が25点以上40点未満
△:合計点が20点以上25点未満
×:合計点が20点未満
【0039】
5.ぱさつきのなさ
1束の黒色バージンヘア(長さ20cm,質量2g)に試料を0.5g塗布し、常温にて乾燥させた後の毛束について、整髪する際の毛髪のぱさつきのなさを10名の女性専門パネラーによる官能試験にて評価した。
【0040】
<評価点基準>
5点:かなりぱさつかない
4点:ややぱさつかない
3点:普通
2点:ややぱさつく
1点:ぱさつく
<評価基準>
◎:合計点が40点以上
○:合計点が30点以上40点未満
△:合計点が20点以上30点未満
×:合計点が20点未満
【0041】
下記表2に掲げる組成の試料を調製した。試料は、(1)及び(2)の混合液に各ポリマーを加えて攪拌することにより調製した。次いで、前記の基準に従って各試料の特性を評価した。それらの結果を表2に併せて示す。
【表2】

【0042】
表2に示した結果から明らかなように、セット樹脂を含まない試料(比較例1)、モノマーC又はDを含まない樹脂(比較製造例1及び2)を配合した試料(比較例2及び3)では、本発明の粘着性セット樹脂を配合した実施例1〜6に比較して、粘着力、アレンジ力、再整髪力が格段に劣っていた。
【0043】
下記表3に掲げる組成の試料を調製し、前記の基準に従って各試料の特性を評価した。それらの結果を表3に併せて示す。
【表3】

【0044】
表3に示した結果から、本発明の粘着性セット樹脂(製造例3)を0.1質量%以上配合することにより(実施例3、7〜10)、アレンジ力、再整髪力が発揮されることがわかった。
【0045】
下記表4に掲げる組成(粘着性セット樹脂に加えてEO/PO誘導体を配合した組成)の試料を調製した。調整方法は、(1)及び(2)の混合液に(4)を加え、撹拌した後に(3)を加えさらに撹拌した。前記の基準に従って各試料の特性を評価した。それらの結果を表4に併せて示す。
【0046】
【表4】

【0047】
EO/PO誘導体を配合しない実施例3に比較して、EO/PO誘導体を配合した実施例12〜14では、特に粘着力、再整髪力、ぱさつきのなさの点で優れた特性を示した。
【0048】
下記表5に掲げる組成(粘着性セット樹脂に加えて糖アルコールを配合した組成)の試料を調製した。調整方法は、(1)に(4)を加えて攪拌した後、(2)を加えて攪拌し、最後に(3)を加えて撹拌した。前記の基準に従って各試料の特性を評価した。それらの結果を表5に併せて示す。
【0049】
【表5】

【0050】
糖アルコールを配合しない実施例3に比較して、糖アルコールを配合した実施例16〜18では、特に粘着力、アレンジ力、再整髪力の点で優れた特性を示した。
【0051】
下記表6に掲げる組成(粘着性セット樹脂に加えてEO/PO誘導体を2種類配合した組成)の試料を調製した。調整方法は、(1)及び(2)の混合液に(4)及び(5)を加え、撹拌した後に(3)を加えさらに撹拌した。前記の基準に従って各試料の特性を評価した。それらの結果を表6に併せて示す。
【0052】
【表6】

【0053】
EO/PO誘導体を配合しない実施例3に比較して、EO/PO誘導体を配合した実施例20〜22では、特に粘着力、アレンジ力、再整髪力の点で優れた特性を示した。
【0054】
その他の実施例を以下に示す。
(実施例23)
リキッド状スタイリング剤
(1)イオン交換水 残余
(2)PEG−6 5
(3)PEG−8 5
(4)PEG−32 5
(5)ソルビトール 3
(6)エタノール 35
(7)香料 適量
(8)製造例3で得られたポリマー 5
(9)(アルキル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)コポリマー 2.5
(10)クエン酸 適量
【0055】
<製法>
(1)水に(2)〜(5)の水溶性成分を加え撹拌溶解し水パーツとする。次に、(6)に(7)を加え撹拌し可溶化させた後、(8)・(9)を加え撹拌しアルコールパーツとする。水パーツとアルコールパーツとを混ぜ、(10)を加えてリキッド状のスタイリング剤を得た。
【0056】
(実施例24)
ヘアリキッド
(1)エタノール 55
(2)プロピレングリコール 5
(3)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン
ペンタエリスリトールエーテル(5EO) 25
(4)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 0.5
(5)製造例3で得られたポリマー 5
(6)色素 適量
(7)イオン交換水 残余
(8)香料 適量
【0057】
<製法>
(1)に(2)〜(5)を加えよく撹拌し溶解する。次に(8)を加え可溶化させアルコールパーツとする。一方(6)を(7)に撹拌溶解させたものを水パーツとして、それらをアルコールパーツと混合し、ヘアリキッドを得た。
【0058】
(実施例25)
ヘアワックス
(1)キャンデリラロウ 2
(2)マイクロクリスタリンワックス 12
(3)流動パラフィン 3.5
(4)水添ポリイソブテン 3.5
(5)テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 3
(6)イソステアリン酸PEG‐60グリセリル 1
(7)ステアリン酸グリセリル 1
(8)ベヘニルアルコール 3.3
(9)ステアリルアルコール 0.9
(10)トコフェロール 0.5
(11)香料 適量
(12)イオン交換水 残余
(13)PG 8
(14)ステアロイルメチルタウリンナトリウム 1.2
(15)無水ケイ酸 2.5
(16)TEA 0.4
(17)製造例3で得られたポリマー 3
(18)エタノール 5
【0059】
<製法>
(1)〜(11)を80〜90℃で攪拌溶解させ、これを油相部とする。(12)〜(14)を70℃〜80℃で攪拌溶解させ、これを水相部とする。水相部に油層部を加えホモミキサーにて乳化させた後、(15)を加える。(16)を加えて中和した後、(17)(18)を加え、脱気、冷却し、ヘアワックスを得た。
【0060】
(実施例26)
ヘアワックス
(1)メチルポリシロキサン 2.0
(2)マイクロクリスタリンワックス 12.0
(3)流動パラフィン 3.5
(4)水添ポリイソブテン 3.5
(5)テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 3.0
(6)イソステアリン酸PEG−60グリセリル 1.0
(7)ステアリン酸グリセリル 1.0
(8)脱臭セタノール(植物油系) 3.3
(9)ステアリルアルコール 0.9
(10)トコフェロール 0.5
(11)香料 0.1
(12)イオン交換水 残余
(13)プロピレングリコール 8.0
(14)塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 1.2
(15)カオリン 2.5
(16)トリエタノールアミン 0.4
(17)ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体 1.8
(18)製造例3で得られたポリマー 2.0
(19)エタノール 5.0
【0061】
<製法>
(1)〜(11)を85℃で撹拌溶解させた(油相部)。他方、(12)〜(14)を75℃で撹拌溶解させた(水相部)。水相部に油相部を加え乳化させた後、(15)を加えた。次いで(16)を加えて中和させた後、(17)・(18)・(19)を加え、脱気、冷却した。
【0062】
(実施例27)
ヘアワックス
(1)カオリン 1.0
(2)揮発性イソパラフィン 5.0
(3)オクタン酸セチル 5.0
(4)フェニルメチルポリシロキサン 0.5
(5)キャンデリラロウ 3.0
(6)パラフィンワックス 8.0
(7)プロピレングリコール 5.0
(8)ステアリン酸グリセリル 1.0
(9)モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン(5EO) 1.0
(10)イソステアリン酸 1.0
(11)カルボキシビニルポリマー 0.4
(12)水酸化カリウム(pH7.5に調製) 適量
(13)イオン交換水 残余
(14)製造例3で得られたポリマー 5.0
(15)ソルビトール 3.0
(16)EDTA−2Na・2H2O 0.05
(17)フェノキシエタノール 0.5
(18)香料 適量
(19)高重合ポリエチレングリコール 0.1
(20)エタノール 5.0
【0063】
<製法>
(13)に(16)、(7)、(15)を加え溶解後、(11)を加え均一に攪拌分散させ、(1)を加えディスパーを用いて均一分散させ85℃に加温後、同様に85℃にて攪拌溶解させた(2)〜(9)の混合物を加え、均一攪拌後(12)を加えホモミキサーにて乳化し、(14)、(15)、(17)〜(20)を順次加え25℃に冷却しヘアワックスを得た。
【0064】
(実施例28)
ヘアワックス
(1)タルク 1.0
(2)流動パラフィン 5.0
(3)テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 5.0
(4)ポリエーテル変性メチルポリシロキサン 0.5
(5)カルナバロウ 3.0
(6)ポリエチレンワックス 8.0
(7)ジプロピレングリコール 5.0
(8)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60EO) 2.0
(9)イソステアリン酸 1.0
(10)ステアリルアルコール 1.0
(11)(PEG−240/デシルテトラデセス−20/HDI)
コポリマー 2.0
(12)トリエタノールアミン(pH7.5に調製) 適量
(13)イオン交換水 残余
(14)製造例3で得られたポリマー 10.0
(15)(アルキル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)コポリマー 1.0
(16)2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−
ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン 5.0
(17)フェノキシエタノール 0.5
(18)香料 適量
(19)高重合ポリアクリル酸ナトリウム 0.1
(20)エタノール 5.0
【0065】
<製法>
実施例26と同様にして得た。
【0066】
(実施例29)
ヘアスタイリングジェル
(1)カルボキシビニルポリマー 0.7
(2)製造例2のウレタン系樹脂水分散物(実分40質量%) 5.0
(3)グリセリン 2.5
(4)1,3−ブチレングリコール 2.5
(5)ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル(20EO) 0.5
(6)ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン 1.0
(7)水酸化ナトリウム(pH7.5に調製) 適量
(8)エタノール 20.0
(10)香料 0.1
(11)エデト酸三ナトリウム 0.03
(12)イオン交換水 残余
(13)製造例3で得られたポリマー 5.0
【0067】
<製法>
(3)、(4)、(5)、一部の(12)に(6)を添加し、ホモミキサーにより乳化する。次いで、一部の(12)を加えて乳化部とする。一方、残りの(12)に(1)、(2)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)(13)を均一溶解し、これに先の乳化部を添加し、乳化状ヘアスタイリングジェルを得た。
【0068】
(実施例30)
ヘアスタイリングジェル
(1)(PEG−240/デシルテトラデセス−20/HDI)コポリマー2.0
(2)製造例3で得られたポリマー 1.0
(3)ジグリセリン 2.5
(4)ポリエチレングリコール1000 2.5
(5)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40EO) 0.5
(6)両末端ヒドロキシ変性ジメチルポリシロキサン
(1,000,000mPa・s) 1.0
(7)水酸化ナトリウム(pH7.5に調製) 適量
(8)エタノール 20.0
(9)ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル 0.1
(10)香料 0.1
(11)エデト酸三ナトリウム 0.03
(12)イオン交換水 残余
(13)(アルキル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)コポリマー 1.0
【0069】
<製法>
実施例29に準じて製造した。
【0070】
(実施例31)
スタイリングムース
(1)ジメチルポリシロキサン(20mPa・s) 5.0
(2)イソパラフィン 5.0
(3)高分子量ポリシロキサン 2.0
(4)アミノ変性高分子量シリコーン 0.5
(5)1,3−ブチレングリコール 3.0
(6)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40EO) 2.0
(7)製造例3で得られたポリマー 10.0
(8)ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンデシルエーテル
(12EO・2PO) 1.0
(9)塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 0.1
(10)フェノキシエタノール 0.1
(11)エタノール 8.0
(12)イオン交換水 残余
(13)香料 適量
(14)(オクチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシプロピル/
メタクリル酸ブチルアミノエチル)コポリマー 1.0
【0071】
<製法>
(1)、(2)に(3)、(4)を撹拌溶解したものを(5)、(6)、一部の(12)に添加し、ホモミキサーにて乳化する(乳化パーツ)。一方、残部の(12)に(7)を添加しておく(水相パーツ)。(11)に(8)、(9)、(10)、(13)、(14)を添加し、撹拌溶解し、これを先の水相パーツに添加し、さらに、乳化パーツを添加し、均一に混合して、原液とする。この原液90部をエアゾール用の缶の詰め、弁をし、10部の液化石油ガス(LPG)を充填し、スタイリングムースを得た。
【0072】
(実施例32)
スタイリングムース
(1)ジメチルポリシロキサン(6mPa・s) 5.0
(2)イソパラフィン 5.0
(3)(PEG/アモジメチコン)コポリマー 1.0
(4)1,3−ブチレングリコール 3.0
(5)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40EO) 2.0
(6)製造例3で得られたポリマー 1.0
(7)ラウリン酸ジエタノールアミド 0.2
(8)ステアロキシヒドロキシプロピルアミン 0.1
(9)フェノキシエタノール 0.1
(10)エタノール 8.0
(11)イオン交換水 残余
(12)香料 適量
(13)(オクチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシプロピル/
メタクリル酸ブチルアミノエチル)コポリマー 0.5
【0073】
<製法>
実施例31に準じて製造した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A):
【化1】

(式中、R1はH又はCHであり、nは0〜30の整数であって(CHは分岐鎖を含み、R2はH、OH、OCH、OCHCH又はフェニルである)で表されるモノマーの少なくとも1種;
及び/又は
下記式(B):
【化2】

(式中、R3はH又はCHであり、R4及びR5は同一でも異なっていてもよく、H又は(CHR’であって、lは1〜3の整数であり、R’はH、OH又は-NR”R’”であって、R”及びR’”は同一でも異なっていてもよく、H又はC1〜C3のアルキル基である)で表されるモノマーの少なくとも1種;
及び
下記式(C):
【化3】

(式中、R6はH又はCHであり、pは1〜100の整数であり、mは0〜30の整数であり、R7はH、OH、OCH、OCHCH、又はフェニルであり、Xはオキシエチレン基(EO)、オキシプロピレン基(PO)、オキシブチレン基(BO)、又はグリセリル基である)で表されるモノマーの少なくとも1種;
及び
下記式D:
【化4】

(式中、R8はH又はCHであり、qは1〜100の整数であり、Yはオキシエチレン基(EO)、オキシプロピレン基(PO)、オキシブチレン基(BO)、炭素数5以上の直鎖または分岐のオキシアルキレン基、又はグリセリル基である(但し、Yが炭素数5以上の直鎖または分岐のオキシアルキレン基であるときは、qは1である))で表されるモノマーの少なくとも1種;
を重合させて得られる粘着性セット樹脂、アルコール、及び水を含有する毛髪化粧料。
【請求項2】
前記粘着性セット樹脂が、下記式(I):

(式(I)において、R1〜R9、n、m、p、qは、上記式A〜Dと同じ意味であり、aは40<a<400、bは80≦b<300、cは30<c<300、dは0<d<10の範囲の数である)で表される構造を有するものであることを特徴とする、請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
糖、糖アルコール及びEO/PO誘導体から選択される少なくとも1種を更に含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
前記糖アルコールが、マルチトール及びソルビトールから選択されることを特徴とする、請求項3に記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
前記EO/PO誘導体が、ポリエチレングリコールであることを特徴とする、請求項3に記載の毛髪化粧料。

【公開番号】特開2010−235499(P2010−235499A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84334(P2009−84334)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】