説明

毛髪化粧料

【課題】毛髪に塗布した際に、乾燥後にべたつかず、毛髪にハリ・コシとうるおいを与え、艶のある髪に仕上げ、さらには、きしまず滑らかで、まとまり性のある毛髪にすることができる毛髪化粧料の提供。
【解決手段】(A)式1で示される第4級アンモニウム塩を0.4〜4質量%、(B)炭素数が14〜22の直鎖のアルコールを1〜8質量%、(C)グリコシルトレハロースを0.5〜8質量%、(D)式2で示されるポリアルキレングリコール誘導体を0.3〜5質量%を含有することを特徴とする毛髪化粧料。




(式中、R5とR6は同一又は異なってもよい水素原子又は炭素数12〜20の脂肪酸残基であり、R5およびR6に占める炭素数12〜20の脂肪酸残基の割合は0.65〜0.95である。nは、5〜20の値である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料に関するものであり、具体的にはヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアリンス、ヘアパック等の毛髪化粧料に関するものである。さらに詳しくは、毛髪に塗布した際に、乾燥後にべたつかず、毛髪にハリ・コシとうるおいを与え、艶のある髪に仕上げ、さらには、きしまず滑らかで、まとまり性のある毛髪にすることができる毛髪化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の清潔志向およびおしゃれ意識の高まりに伴い、シャンプーによる洗髪回数の増加や、ヘアカラー、ヘアブリーチ、コールドパーマ等の頻度が増加している。しかし、シャンプーの主成分である界面活性剤やヘアカラー等の化学的処理によって、毛髪の皮脂や蛋白質の溶出が起こり、キューティクルの剥離が見られ、毛髪は損傷を受けた状態となっている。また、ドライヤーやヘアーアイロンの熱や紫外線等の外的な要因によって、毛髪内部の水分が奪われることで、損傷を受けやすくなっている。このようにして損傷を受けた毛髪は、艶やハリ・コシが欠如したり、まとまり性が悪くなったり、また枝毛や切れ毛が生じやすくなって、健やかな髪からはかけ離れた状態となっている。そのため、洗髪後に使用するインバス用の毛髪化粧料、例えばヘアコンディショナーやヘアトリートメント、ヘアリンス、ヘアパック等の毛髪化粧料、ヘアミルクやヘアクリーム、ヘアオイル等のアウトバス用の毛髪化粧料を使用することで、傷んだ毛髪を補修して、まとまり性を良くし、艶やハリ・コシといったコンディショニング効果を発揮し、健やかな髪を保たせようとしている。
【0003】
通常これらの毛髪化粧料には、特許文献1で提案されているようにジメチルポリシロキサンやアミノ変性シリコーン等の各種シリコーン化合物が配合されている。これらのシリコーン化合物は表面張力が低く、潤滑性に優れるため、毛髪に良好な指通り性を付与できるものの、ハリ・コシを失う傾向にあるといった問題があった。
【0004】
そこで、ハリ・コシを付与する方法として、コラーゲンやケラチン等の蛋白質を配合する方法が提案されている。特許文献2では1価又は2価の金属塩とセリシン加水分解物を配合した毛髪処理剤が提案され、特許文献3ではケラチン及び加水分解ケラチンを配合した毛髪化粧料用組成物が提案されている。これらの毛髪化粧料はべたつきがなく、毛髪にハリ・コシを付与することができるが、毛髪に艶を付与することはできず、また滑らかさやまとまり性において十分に満足のできるものではなかった。
【0005】
一方で、特許文献4では毛髪にうるおいを与える目的でグリコシルトレハロースと特定の非イオン性界面活性剤を配合した毛髪化粧料組成物が提案されている。また毛髪に艶を付与する目的で、特許文献5では特定のポリアルキレングリコール誘導体を配合した毛髪化粧料が、特許文献6では特定の共重合体を配合した毛髪用化粧料が提案されている。しかしながらこれらの化粧料においても、毛髪にきしみが生じ、滑らかでなかったり、ハリ・コシやうるおい、べたつきの点において不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−67781号公報
【特許文献2】特開2009−132648号公報
【特許文献3】特開2006−282637号公報
【特許文献4】特開2009−179593号公報
【特許文献5】特開2009−235024号公報
【特許文献6】特開2010−275512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑み、毛髪に塗布した際に、乾燥後にべたつかず、毛髪にハリ・コシとうるおいを与え、艶のある髪に仕上げ、さらには、きしまず滑らかで、まとまり性のある毛髪にすることができる毛髪化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、(A)第4級アンモニウム塩、(B)炭素数が14〜22の直鎖のアルコールとともに、(C)グリコシルトレハロース、(D)ポリアルキレングリコール誘導体を特定の比率で組み合わせることで、上記課題を解決することができる毛髪化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(A)式1で示される第4級アンモニウム塩を0.4〜4質量%、(B)炭素数が14〜22の直鎖のアルコールを1〜8質量%、(C)グリコシルトレハロースを0.5〜8質量%、(D)式2で示されるポリアルキレングリコール誘導体を0.3〜5質量%を含有することを特徴とする毛髪化粧料である。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中R1は炭素数16〜24の直鎖のアルキル基を表し、R2は炭素数16〜24の直鎖のアルキル基、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基を表し、R3,R4はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R5とR6は同一又は異なってもよい水素原子又は炭素数12〜20の脂肪酸残基であり、R5およびR6に占める炭素数12〜20の脂肪酸残基の割合は0.65〜0.95である。nはオキシテトラメチレン基の平均付加モル数であり、5〜20の値である。)
【0014】
また、本発明の毛髪化粧料は、(E)(e−1)式3で示される単量体5〜90モル%と、(e−2)式4で示される単量体5〜90モル%と、(e−3)式5で示される単量体3〜80モル%とから得られる共重合体を0.005〜0.5質量%含有していても良い。
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、R7は水素原子又はメチル基を表し、R8は炭素数1〜4のアルキレン基を表す。)
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、R9は水素原子又はメチル基を表し、Yはイソボルニル基、ベンジル基、フェノキシエチル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基から選ばれる基である。)
【0019】
【化5】

【0020】
(式中、R10は水素原子又はメチル基を表し、Lは−(CH−L1、−C(=O)O−(CH−L1、−C(=O)O−((CH−O)−L1又は−CHCH(OH)CH−L1である。nは0〜24、mは2〜5の整数を表し、L1はアミノ基、アンモニウム塩基、有機アンモニウム塩基、ピリジル基又はピリジニウム塩基を表す。)
【発明の効果】
【0021】
本発明の毛髪化粧料によれば、毛髪に塗布した際に、乾燥後にべたつかず、毛髪にハリ・コシとうるおいを与え、艶のある髪に仕上げ、さらには、きしまず滑らかで、まとまり性のある毛髪にすることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の毛髪化粧料は、下記(A)成分〜(D)成分を少なくとも含有する。これらの成分を順次説明する。
【0023】
〔(A)第4級アンモニウム塩〕
本発明に用いられる(A)成分の第4級アンモニウム塩は、前記式1で示されるものである。式中R1は炭素数16〜24の直鎖のアルキル基を表し、R2は炭素数16〜24の直鎖のアルキル基、又は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基を表し、R3,R4はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基を表す。R1,R2における炭素数16〜24の直鎖のアルキル基は、炭素数が好ましくは18〜22である。具体的なアルキル基としては、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基等が挙げられる。R2〜R4における炭素数1〜3のアルキル基もしくは炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等が挙げられる。Xはハロゲン原子を表し、具体的には塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0024】
式1で示される(A)第4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ベヘニルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、等が挙げられる。中でも、毛髪のまとまり性の点において、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムが好ましい。
【0025】
〔(B)アルコール〕
本発明に用いられる(B)成分のアルコールは、炭素数14〜22で直鎖のアルキル基を有するアルコールを指し、好ましくは炭素数16〜18である。具体的には、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール等や、これらの混合物であるセトステアリルアルコールや水添ナタネ油アルコール等が挙げられる。またこれらの化合物の中から2種類以上を組み合わせることができ、組成物の保存安定性の点から、アルコールの平均炭素数が16〜18となるように組み合わせることが好ましい。
【0026】
〔(C)グリコシルトレハロース〕
本発明で用いる(C)成分のグリコシルトレハロースは、2つのグルコースがα1位同士で結合したα−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド(α,α−トレハロース)を基本骨格とし、一方のグルコースの4位とα−グルコースの1位が結合したオリゴ糖であり、グルコースの重合度が2〜6の三糖ないし七糖の化合物である。より具体的には、重合度2であるα−マルトシルα−グルコシド、重合度3であるα−マルトトリオシルα−グルコシド、重合度4であるα−マルトテトラオシルα−グルコシド、重合度5であるα−マルトペンタオシルα−グルコシド、および重合度6であるα−マルトヘキサオシルα−グルコシドが挙げられる。具体的な製品としては、株式会社林原生物化学研究所製の「トルナーレ」(登録商標)が挙げられる。
【0027】
〔(D)ポリアルキレングリコール誘導体〕
本発明で用いる(D)成分は、式2で示されるポリアルキレングリコール誘導体である。式中、R5とR6は同一又は異なってもよい水素原子又は炭素数12〜20の脂肪酸残基である。R5およびR6における炭素数12〜20の脂肪酸残基は、脂肪酸由来のアシル基であり、その脂肪酸としては、例えば、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、分岐脂肪酸、およびヒドロキシル基置換脂肪酸が挙げられる。脂肪酸の種類として、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
【0028】
5およびR6は、好ましくはミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等の炭素数が14〜18の脂肪酸残基であり、さらに好ましくはパルミチン酸残基である。R5およびR6に占める炭素数12〜20の脂肪酸残基の割合は0.65〜0.95であり、好ましくは0.7〜0.85であり、さらに好ましくは0.7〜0.8である。
【0029】
nはオキシテトラメチレン基の平均付加モル数で5〜20の値であり、好ましくは7〜15である。R5およびR6が炭素数の大きい脂肪酸残基の場合は、脂肪酸残基の割合を小さくするか、またはオキシテトラメチレン基の平均付加モル数を小さくしたものを用いると、毛髪上でののび、ハリ・コシや滑らかさが十分に得られるため好ましい。
【0030】
式2で示されるポリアルキレングリコール誘導体は、公知の方法で調製することができ、例えば、ポリテトラメチレングリコールと脂肪酸とのエステル化反応や、脂肪酸メチルエステルといった短鎖アルコールエステルとのエステル交換反応で得ることができ、ジエステル、モノエステルおよびポリテトラメチレングリコールの混合物として得られる。
【0031】
〔(A)〜(D)の各成分の含有量〕
本発明において、上記の(A)第4級アンモニウム塩の含有量は、毛髪化粧料中に0.4〜4質量%であり、好ましくは0.4〜3質量%であり、さらに好ましくは0.5〜2質量%である。0.4質量%未満では得られる毛髪のまとまり性が不十分であり、安定した毛髪化粧料を調製することができず、4質量%を超えると配合に見合った効果が得られない上、べたつきが生じるおそれがあり、また保存安定性が悪くなる。
【0032】
(B)アルコールの含有量は、毛髪化粧料中に1〜8質量%であり、好ましくは2〜7質量%であり、さらに好ましくは2〜5質量%である。1質量%未満では毛髪にうるおいを付与することができず、また安定した組成物を調製することができず、8質量%を超えるとべたつきや指通り性が悪くなり、組成物が硬くなって使用性が悪くなり、また低温での保存安定性が悪くなる。
【0033】
(C)グリコシルトレハロースの含有量は、毛髪化粧料中に0.5〜8質量%であり、好ましくは1〜6質量%であり、さらに好ましくは2〜5質量%である。0.5質量%未満では毛髪にハリ・コシを与えることができず、8質量%を超えるとべたつきが生じ、また毛髪化粧料が硬くなり使用性が悪くなる。
【0034】
(D)ポリアルキレングリコール誘導体の含有量は、毛髪化粧料中に0.3〜5質量%であり、好ましくは0.5〜5質量%であり、さらに好ましくは1〜4質量%である。0.3%質量%未満では毛髪にハリ・コシやうるおいを与えることができず、また滑らかな指通り性が得られず、5質量%を超えると毛髪のまとまり性が悪くなりべたつきが生じ、また保存安定性が悪くなる。
【0035】
〔(E)共重合体〕
本発明の毛髪化粧料において、更に毛髪にハリとコシを与え、また艶のある髪に仕上げるために、(E)成分の共重合体を含有させることも可能である。
本発明で用いる(E)成分は、(e−1)上記式3で示される単量体5〜90モル%と、(e−2)上記式4で示される単量体5〜90モル%と、(e−3)上記式5で示される単量体3〜80モル%とから得られる共重合体である。
【0036】
(e−1)上記式3で示される単量体において、式中R7は水素原子又はメチル基を表し、安定性の点からメチル基が好ましい。R8は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、具体的には−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCHCHCH−のいずれかであり、毛髪への吸着の点から−CHCH−が好ましい。式3の単量体として、毛髪への吸着の点から、グリセリル−1−メタクリロイルオキシエチルウレタンが好ましい。(e−1)上記式3で示される単量体は、公知の方法で製造することができる。例えば、特開2006−151953号公報に示されるように、環状ケタールとイソシアナートとをウレタン化反応させて得られる化合物を、ウレタン化反応用触媒の存在下に水含有溶媒中で加水開環反応させる方法等により製造することができる。
【0037】
(e−2)上記式4で示される単量体は、炭素環を置換基として持つアクリル系単量体であり、この単量体において、R9は水素原子又はメチル基を表し、Yはイソボルニル基、ベンジル基、フェノキシエチル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基から選ばれる基である。具体的な化合物としては、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でも皮膜形成の点においてイソボニル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを表す。
【0038】
(e−3)上記式5で示される単量体は、アミノ基、アンモニウム塩基、有機アンモニウム塩基、ピリジル基又はピリジニウム塩基を置換基として持つ単量体であり、この単量体において、R10は水素原子又はメチル基を表し、Lは−(CH−L1、−C(=O)O−(CH−L1、−C(=O)O−((CH−O)−L1又は−CHCH(OH)CH−L1である。nは0〜24、mは2〜5の整数を表し、L1はアミノ基、アンモニウム塩基、有機アンモニウム塩基、ピリジル基又はピリジニウム塩基を表す。ここで、L1のアンモニウム塩基としては、アンモニウムクロライド、アンモニウムブロマイド、アンモニウムアセテート、アンモニウムサルフェートが挙げられ、有機アンモニウム塩基としてトリメチルアンモニウムクロライドが挙げられ、ピリジル基としては2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基が挙げられ、ピリジニウム塩基としてはピリジニウムクロライド、ピリジニウムブロマイド、ピリジニウムアセテートが挙げられる。中でも毛髪への吸着の点において、トリメチルアンモニウムクロライドが好ましい。(e−3)の具体的な化合物としては、アミノエチル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N,N−トリメチル−N−(2−(メタ)アクリルオキシエチル)アンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−ベンジル−N−(2−(メタ)アクリルオキシエチル)アンモニウムクロライド、N,N,N−トリメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリルオキシエチル)アンモニウムクロライドが毛髪への吸着の点において好ましい。
【0039】
(e−1)、(e−2)および(e−3)の各単量体から得られる(E)共重合体の重量平均分子量は、5,000〜5,000,000、好ましくは10,000〜2,000,000の範囲である。5,000,000を超えると、共重合体の粘度が極度に高くなり、ハンドリング性が悪い上に化粧料への配合が困難となるおそれがある。なお、(E)共重合体は、上記(e−1)、(e−2)および(e−3)の各単量体から得られるものであっても良く、あるいは(e−1)、(e−2)および(e−3)の各単量体と他の単量体とから得られるものであっても良い。
【0040】
(E)共重合体において、(e−1)の割合は5〜90モル%であり、好ましくは10〜50モル%であり、(e−2)の割合は5〜90モル%であり、好ましくは10〜60モル%であり、(e−3)の割合は3〜80モル%であり、好ましくは10〜60モル%である。(e−1)の割合が5モル%未満の場合、得られる共重合体の皮膚に対する適合性が損なわれるおそれがあり、(e−2)の割合が5モル%未満の場合、艶のある髪に仕上がるには不十分であったり、(e−3)の割合が3モル%未満の場合、毛髪への吸着性が不十分である。
【0041】
本発明の共重合体は常法により得ることができ、例えば、エタノール/水(=8:2、質量/質量)混合溶媒に各単量体を溶解させた後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを添加し、窒素ガス雰囲気で、40〜100℃で、3〜15時間重合させ、溶媒を減圧留去することにより得られる。
【0042】
本発明において、上記の(E)成分の共重合体の含有量は、毛髪化粧料中に0.005〜0.5質量%であり、好ましくは0.01〜0.3質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.2質量%である。0.005質量%未満では、十分な艶が得られず、0.5質量%を超えると毛髪にきしみが生じ、指通り性が悪くなる。
【0043】
本発明の毛髪化粧料は、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアリンス、ヘアパック等に適用することができ、それぞれ通常の方法に従って製造することができる。なお、本発明の毛髪化粧料には、化粧料に常用されている他の成分を、本発明の性能を損なわない範囲で、配合することができる。なお、本発明の毛髪化粧料は、pHが4〜7であることが好ましく、この場合、より高い効果が得られるとともに、経時安定性にも優れたものとすることができる。pHは、クエン酸、グルタミン酸や乳酸などの有機酸やその塩を使用して調整することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、下記の%は質量%を意味する。
【0045】
〔実施例1〜6および比較例1〜9〕
毛髪化粧料として表1に示すヘアトリートメントを調製し、下記の方法により評価を行った。その結果を表1に示す。なお、クエン酸およびクエン酸ナトリウムによりヘアトリートメントのpHを4.0〜5.0に調整した。
【0046】
(1)毛髪のべたつき
20名の男女(25〜47才)をパネラーとし、洗髪後の濡れた頭髪に各ヘアトリートメント5gを塗布し洗い流して、タオルドライ後2時間乾燥した時の感触について下記の基準で評価した。
2点:毛髪がべたつかないと感じた場合。
1点:毛髪がややべたつくと感じた場合。
0点:毛髪がべたつくと感じた場合。
【0047】
20名の合計点を求めて、下記の基準で評価して表1中に表示した。
◎:合計点が30点以上、かつ、0点がいない:毛髪のべたつき感を感じない化粧料である。
○:合計点が30点以上、かつ、0点が1人又は2人:毛髪のべたつき感をほとんど感じない化粧料である。
△:合計点が20点以上30点未満:毛髪のべたつき感をやや感じる化粧料である。
×:合計点が20点未満:毛髪のべたつき感のある化粧料である。
【0048】
(2)毛髪のハリ・コシ
20名の男女(25〜47才)をパネラーとし、洗髪後の濡れた頭髪に各ヘアトリートメント5gを塗布し洗い流して、タオルドライ後2時間乾燥した時の毛髪のハリ・コシについて下記の基準で評価した。
2点:毛髪にハリ・コシがあると感じる。
1点:毛髪にややハリ・コシがあると感じる。
0点:毛髪にハリ・コシがなく、ボリューム感がないと感じる。
【0049】
20名の合計点を求めて、下記の基準で評価して表1中に表示した。
◎:合計点が30点以上、かつ、0点がいない:毛髪にハリ・コシが非常にある化粧料である。
○:合計点が30点以上、かつ、0点が1人又は2人:毛髪にハリ・コシがある化粧料である。
△:合計点が20点以上30点未満:毛髪にハリ・コシがややある化粧料である。
×:合計点が20点未満:毛髪にハリ・コシがない化粧料である。
【0050】
(3)毛髪のうるおい(しっとり感)
20名の男女(25〜47才)をパネラーとし、洗髪後の濡れた頭髪に各ヘアトリートメント5gを塗布し洗い流して、タオルドライ後2時間乾燥した時の感触について下記の基準で評価した。
2点:毛髪がとてもうるおっていると感じた場合。
1点:毛髪がややうるおっていると感じた場合。
0点:毛髪がばさつき、全くうるおっていないと感じた場合。
【0051】
20名の合計値を求めて、下記の基準で評価して表1中に表示した。
◎:合計点が30点以上、かつ、0点がいない:毛髪のうるおいが非常に良好な化粧料である。
○:合計点が30点以上、かつ、0点が1人又は2人:毛髪のうるおいが良好な化粧料である。
△:合計点が20点以上30点未満:毛髪のうるおいがやや良好な化粧料である。
×:合計点が20点未満:毛髪がばさつき、うるおっていない化粧料である。
【0052】
(4)毛髪の艶
各ヘアトリートメントの10%水溶液に長さ10cmの毛束を30分間浸漬し1Lの溜め水ですすいだ。タオルドライ後、恒温恒湿室(23℃・50RH)に2時間静置して処理毛とした。20名の男女(25〜47才)をパネラーとし、目視により各処理毛束の艶について下記の基準で評価した。
2点:処理毛にとても艶があると感じた場合。
1点:処理毛にやや艶があると感じた場合。
0点:処理毛に全く艶がないと感じた場合。
【0053】
20名の合計点を求めて、下記の基準で評価して表1中に表示した。
◎:合計点が30点以上、かつ、0点がいない:毛髪に艶がとてもある化粧料である。
○:合計点が30点以上、かつ、0点が1人又は2人:毛髪に艶がある化粧料である。
△:合計点が20点以上30点未満:毛髪に艶があまりない化粧料である。
×:合計点が20点未満:毛髪に艶がない化粧料である。
【0054】
(5)毛髪の滑らかさ
20名の男女(25〜47才)をパネラーとし、洗髪後の濡れた頭髪に各ヘアトリートメント5gを塗布し洗い流して、タオルドライ後2時間乾燥した時の感触について下記の基準で評価した。
2点:毛髪の指通りがとても良好で、滑らかであると感じた場合。
1点:毛髪の指通りが良好で、まあまあ滑らかであると感じた場合。
0点:毛髪がきしみ、指通りが悪いと感じた場合。
【0055】
20名の合計点を求めて、下記の基準で評価して表1中に表示した。
◎:合計点が30点以上、かつ、0点がいない:毛髪がきしまず、指通り性が非常に良好な化粧料である。
○:合計点が30点以上、かつ、0点が1人又は2人:毛髪の指通り性が良好な化粧料である。
△:合計点が20点以上30点未満:毛髪の指通り性がやや良好な化粧料である。
×:合計点が20点未満:毛髪がきしみ、指通り性が悪い化粧料である。
【0056】
(6)毛髪のまとまり性
20名の男女(25〜47才)をパネラーとし、洗髪後の濡れた頭髪に各ヘアトリートメント5gを塗布し洗い流して、タオルドライ後2時間乾燥した時の感触について下記の基準で評価した。
2点:毛髪のまとまり性が良好であると感じた場合。
1点:毛髪のまとまり性がまあまあであると感じた場合。
0点:毛髪のまとまり性が悪いと感じた場合。
【0057】
20名の合計点を求めて、下記の基準で評価して表1中に表示した。
◎:合計点が30点以上、かつ、0点がいない:毛髪のまとまり性が非常に良好な化粧料である。
○:合計点が30点以上、かつ、0点が1人又は2人:毛髪のまとまり性が良好な化粧料である。
△:合計点が20点以上30点未満:毛髪のまとまり性がやや良好な化粧料である。
×:合計点が20点未満:毛髪のまとまり性が悪い化粧料である。
【0058】
【表1】

【0059】
※1:塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム
※2:臭化ステアリルトリメチルアンモニウム
【0060】
【表2】

【0061】
※3:セタノール
※4:ステアリルアルコール
※5:グリコシルトレハロース、表中の数字は「トルナーレ」(株式会社林原生物化学研究所製、登録商標)に含まれるグリコシルトレハロースの含有量を表す。(トルナーレ中約47%)
※6:「WIRBRIDE CP−9」(日油株式会社製)、式2中の基や数値は以下のとおりである。
【0062】
【表3】

【0063】
※7:「Ceracute−G」(日油株式会社製、登録商標)、表中の数字は「Ceracute−G」に含まれる(E)成分の含有量を表す。(Ceracute−G中3.5%)
なお、(E)成分を構成する(e−1)、(e−2)および(e−3)の各式中の基は以下のとおりであり、式3中のR7およびR8が下記表4記載の単量体20モル%と、式4中のR9およびYが下記表4記載の単量体40モル%と、式5中のR10、LおよびL1が下記表5記載の単量体40モル%から得られる共重合体である。
【0064】
【表4】

【0065】
【表5】

【0066】
※8:ジラウリン酸PEG−8
【0067】
実施例1〜6より、本発明の毛髪化粧料はいずれも、毛髪に塗布した際に、乾燥後にべたつかず、毛髪にハリ・コシとうるおいを与え、艶のある髪に仕上げ、さらに、きしまず滑らかでまとまり性のある毛髪にすることができるといった効果が得られていた。
【0068】
一方、比較例1〜9では十分な性能が得られていない。すなわち、比較例1では、(D)成分の配合量が本発明規定範囲の下限値より少ないことから、毛髪に艶が出ておらず、また毛髪のハリ・コシとうるおい、滑らかさが不十分であり、比較例2では、(C)成分の配合量が本発明規定の上限値を超えていることから、毛髪にべたつきが生じ、毛髪のハリ・コシや滑らかさ、まとまり性が不十分である。比較例3では、(B)成分の配合量が本発明規定範囲の上限値を超えていることから、滑らかさが悪く、また毛髪にべたつきが生じ、まとまり性が不十分であり、比較例4では、(A)成分の配合量が本発明規定範囲の下限値より少なく、かつ、(E)成分の配合量が本発明規定範囲の上限値を超えていることから、滑らかさとまとまり性が悪く、またうるおいが不十分である。比較例5では、(C)成分が配合されていないことから、毛髪のハリ・コシとうるおいが不十分であり、比較例6では、(A)成分の配合量が本発明規定範囲の上限値を超えており、かつ、(C)成分が他の成分に置き換えられていることから、毛髪にべたつきが生じ、ハリ・コシと艶が不十分である。比較例7では、(D)成分の配合量が本発明規定範囲の上限値を超えていることから、毛髪にべたつきが生じ、滑らかさとまとまり性が悪く、又はリ・コシと艶が不十分であり、比較例8では、(D)成分が他のアルキレンオキシド誘導体に置き換えられていることから、ハリ・コシとうるおい、艶や滑らかさが不十分である。比較例9では、(A)成分と(C)成分、(E)成分の配合量が本発明規定範囲の上限値を超えていることから、毛髪にべたつきが生じ、滑らかさやまとまり性が悪く、ハリ・コシとうるおいが不十分である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式1で示される第4級アンモニウム塩を0.4〜4質量%、(B)炭素数が14〜22の直鎖のアルコールを1〜8質量%、(C)グリコシルトレハロースを0.5〜8質量%、(D)式2で示されるポリアルキレングリコール誘導体を0.3〜5質量%を含有することを特徴とする毛髪化粧料。
【化1】

(式中R1は炭素数16〜24の直鎖のアルキル基を表し、R2は炭素数16〜24の直鎖のアルキル基、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基を表し、R3,R4はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
【化2】

(式中、R5とR6は同一又は異なってもよい水素原子又は炭素数12〜20の脂肪酸残基であり、R5およびR6に占める炭素数12〜20の脂肪酸残基の割合は0.65〜0.95である。nはオキシテトラメチレン基の平均付加モル数であり、5〜20の値である。)
【請求項2】
(E)(e−1)式3で示される単量体5〜90モル%と、(e−2)式4で示される単量体5〜90モル%と、(e−3)式5で示される単量体3〜80モル%とから得られる共重合体を0.005〜0.5質量%含有する請求項1記載の毛髪化粧料。
【化3】

(式中、R7は水素原子又はメチル基を表し、R8は炭素数1〜4のアルキレン基を表す。)
【化4】

(式中、R9は水素原子又はメチル基を表し、Yはイソボルニル基、ベンジル基、フェノキシエチル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基から選ばれる基である。)
【化5】

(式中、R10は水素原子又はメチル基を表し、Lは−(CH−L1、−C(=O)O−(CH−L1、−C(=O)O−((CH−O)−L1又は−CHCH(OH)CH−L1である。nは0〜24、mは2〜5の整数を表し、L1はアミノ基、アンモニウム塩基、有機アンモニウム塩基、ピリジル基又はピリジニウム塩基を表す。)


【公開番号】特開2012−140339(P2012−140339A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292444(P2010−292444)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】