説明

毛髪化粧料

【課題】細く絡まりやすい毛髪に対し、ふんわりとしたボリュームを与えかつ長時間維持すると共に、柔軟な感触と見た目に自然な仕上がり感を与える毛髪化粧料の提供。
【解決手段】成分(A)及び(B)を(A)/(B)=1.6以上の質量比で含有する毛髪化粧料。
(A)分子量1万〜10万のオルガノポリシロキサンセグメントに分子量800〜1600のポリ(アシルアルキレンイミン)セグメントが結合してなり、両者の質量比が73/27〜80/20、前記結合間のオルガノポリシロキサンセグメントの分子量が1500〜3500であるオルガノポリシロキサン
(B)分子量5万〜15万のオルガノポリシロキサンセグメントに分子量500〜4000のポリ(アシルアルキレンイミン)セグメントが結合してなり、両者の質量比が82/18〜99/1、前記結合間のオルガノポリシロキサンセグメントの分子量が10000〜40000であるオルガノポリシロキサン

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有するオルガノポリシロキサンを特定の比率で含有する毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
オルガノポリシロキサンは、多くの優れた特徴を有していることから、様々な形態のものが、シャンプー、ヘアコンディショナー等に感触向上剤等として多用されている。例えば、特許文献1には、一定の伸長率の範囲で破断又は塑性変形を生じないポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性オルガノポリシロキサンを含有する毛髪セット剤組成物が開示されている。この毛髪セット剤は、従来の皮膜形成樹脂を使用した毛髪セット剤組成物に比べ、毛髪のセット能力及びその保持性に優れ、整髪後の毛髪に柔軟でゴワつき感のない良好な感触を付与でき、しかも洗髪により容易に洗い流すことができるという優れた性能を有する。しかし、この毛髪セット剤組成物では、ボリューム感を出しにくい細く絡まりやすい髪に対し、ふんわりとしたボリューム感のあるヘアスタイルにセットする効果、及び髪に指を通した場合のボリューム感の維持が十分ではない。
【0003】
また特許文献2には、文献1で用いているものとは変性比率等が異なるポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性オルガノポリシロキサンが、優れた伸張性を有し、しかも水や低級アルコールに対する溶解性・分散性に優れるものとして開示されている。このオルガノポリシロキサンを含有する毛髪化粧料は、カール形状を保持し、毛の揃い・流れを保持するといったセット目的に対して良好な感触と、外的要因(手指を髪に通す、風、振動等)に対してもヘアスタイルが崩れない柔軟さと、自然な仕上がりが得られるものであるが、ボリューム感を出しにくい細く絡まりやすい毛髪に対し、ふんわりとしたボリューム感を与えかつ維持するといった目的に対しては不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07-133352号公報
【特許文献2】特開2009-24114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ボリューム感を出しにくい細く絡まりやすい毛髪に対し、ふんわりとしたボリュームを与えかつ長時間維持すると共に、柔軟な感触と見た目に自然な仕上がり感を与えることができる毛髪化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の構造を有する2種のポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性オルガノポリシロキサンを特定の比率で配合した毛髪化粧料とすることで、上記の課題を解決し得ることを見出した。
【0007】
本発明は、次の成分(A)及び(B)を(A)/(B)=1.6以上の質量比で含有する毛髪化粧料を提供するものである。
成分(A):主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、下記一般式(1);
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1は水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、アラルキル基又はアリール基を示し、nは2又は3を示す。)
で表される繰り返し単位からなるポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントが結合してなるオルガノポリシロキサンであって、
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの数平均分子量が800〜1,600であり、
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメント(a)と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(b)との質量比(a/b)が73/27〜80/20であり、
隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量が1,500〜3,500であり、
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量が10,000〜100,000である、
オルガノポリシロキサン
成分(B):主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、上記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントが結合してなるオルガノポリシロキサンであって、
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの数平均分子量が500〜4,000であり、
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメント(a)と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(b)との質量比(a/b)が82/18〜99/1であり、
隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量が10,000〜40,000であり、
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量が50,000〜150,000である、
オルガノポリシロキサン
【0010】
更に本発明は、上記の毛髪化粧料を毛髪に適用した後、洗い流すことなく、送風乾燥又は自然乾燥を行う毛髪処理方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の毛髪化粧料は、ボリューム感を出しにくい細く絡まりやすい髪に、ふんわりとしたボリューム感を与えかつ長時間維持させると共に、柔軟な感触と見た目に自然な仕上がり感を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔成分(A):第一のオルガノポリシロキサン〕
成分(A)のオルガノポリシロキサンは、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介してポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントが所定間隔で、かつ所定の割合で結合した特有の構造を備えている。すなわち、親水性が高いポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントと親油性が高いオルガノポリシロキサンセグメントが特定の比率で存在し、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントが特定の間隔で存在する。
【0013】
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントは、オルガノポリシロキサンセグメントを構成する任意のケイ素原子に、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して少なくとも2つ結合することが可能であるが、両末端を除く1以上のケイ素原子に上記アルキレン基を介して結合していることが好ましく、両末端を除く2以上のケイ素原子に上記アルキレン基を介して結合していることがより好ましい。
【0014】
ヘテロ原子を含むアルキレン基は、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの連結基として機能する。かかるアルキレン基としては、例えば、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を1〜3個含む炭素数2〜20のアルキレン基が例示され、中でも下記式(i)〜(viii)のいずれかで表される基が好ましく、下記式(i)〜(iii)のいずれかで表される基がより好ましい。なお、式中、An-は4級アンモニウム塩の対イオンを示し、例えば、エチル硫酸イオン、メチル硫酸イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、過塩素酸イオンが例示される。
【0015】
【化2】

【0016】
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントを構成するN-アシルアルキレンイミン単位において、一般式(1)中、R1における炭素数1〜22のアルキル基としては、例えば、炭素数1〜22の直鎖、分岐状又は環状のアルキル基が例示され、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ドコシル基等が例示される。中でも、水や低級アルコールに対する溶解性の高さの観点から、炭素数1〜10、更には炭素数1〜6、更には炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
【0017】
アラルキル基としては、例えば、炭素数7〜15のアラルキル基が例示され、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、トリチル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基等が例示される。中でも、炭素数7〜14、更には炭素数7〜10のアラルキル基が好ましい。
【0018】
アリール基としては、例えば、炭素数6〜14のアリール基が例示され、具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基等が例示され、中でも、炭素数6〜12、更には炭素数6〜9のアリール基が好ましい。
【0019】
これらの中でも、R1としては、炭素数1〜6、更には炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
【0020】
成分(A)におけるオルガノポリシロキサンセグメント(a)と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(b)との質量比(a/b)は、73/27〜80/20であるが、毛髪表面に適度な連続の皮膜を形成して、毛髪上での適度な弾性と粘着性を確保することで、本発明の効果を発現するのに特に適したものとする観点から、好ましくは73/27〜79/21であり、より好ましくは73/27〜78/22である。
【0021】
なお、本明細書において、質量比(a/b)は、本発明のオルガノポリシロキサンを重クロロホルム中に5質量%溶解させ、核磁気共鳴(1H-NMR)分析により、オルガノポリシロキサンセグメント中のアルキル基又はフェニル基と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント中のメチレン基の積分比より求めた値をいう。
【0022】
また、隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量(MWg)は、1,500〜3,500であるが、好ましくは1,600〜3,200、より好ましくは1,700〜3,000である。
【0023】
本明細書において、「隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメント」とは、下記式(2)に示すように、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントのオルガノポリシロキサンセグメントに対する結合点(結合点α)から、これに隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの結合点(結合点β)までの2点間において破線で囲まれた部分であって、1つのR2SiO単位と、1つのR6と、y+1個の(R2)2SiO単位とから構成されるセグメントをいう。また、「ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント」とは、上記R6に結合する−W−R7をいう。
【0024】
【化3】

【0025】
上記一般式(2)中、R2はそれぞれ独立に炭素数1〜22のアルキル基又はフェニル基を示し、R6はヘテロ原子を含むアルキレン基を示し、−W−R7はポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントを示し、R7は重合開始剤の残基を示し、yは正の数を示す。
【0026】
MWgは、上記一般式(2)において破線で囲まれた部分の分子量であるが、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント1モル当たりのオルガノポリシロキサンセグメントの質量(g/mol)と解することができる。なお、原料化合物である変性オルガノポリシロキサンの官能基がポリ(N-アシルアルキレンイミン)で100%置換されると、変性オルガノポリシロキサンの官能基当量(g/mol)と一致する。
【0027】
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの分子量(MWox)は、N-アシルアルキレンイミン単位の分子量と重合度から算出するか、又は後述するゲルパーミエションクロマトグラフィ(GPC)測定法により測定することができるが、本発明においてはGPC測定法により測定される数平均分子量をいうものとする。成分(A)のMWoxは、800〜1,600であるが、好ましくは850〜1,500、より好ましくは900〜1,400である。これにより、髪にふんわりとしたボリュームを与え、ヘアスタイルを維持するのに十分な硬さと良好な感触とを付与することができる。
【0028】
また、MWgは、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの含有率(Csi)を用いて下記式(I)により求めることができる。
【0029】
【数1】

【0030】
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量(MWsi)は10,000〜100,000であるが、水等の極性溶媒への溶解性と溶解後の取り扱いやすさの観点から、好ましくは20,000〜80,000、より好ましくは30,000〜60,000である。MWsiは、原料化合物である変性オルガノポリシロキサンと共通の骨格を有するため、MWsiは原料化合物である変性オルガノポリシロキサンの重量平均分子量と略同一である。なお、原料化合物である変性オルガノポリシロキサンの平均分子量は、下記測定条件によるGPCで測定し、ポリスチレン換算したものである。
【0031】
カラム:Super HZ4000+Super HZ2000(東ソー株式会社製)
溶離液:1mMトリエチルアミン/THF
流量 :0.35mL/min
カラム温度:40℃
検出器:UV
サンプル:50μL
【0032】
成分(A)のオルガノポリシロキサンの重量平均分子量(MWt)は、好ましくは12,000〜150,000、より好ましくは24,000〜120,000、更に好ましくは37,000〜92,000である。これにより、毛髪への良好な感触を付与することができ、加えて水等の極性溶媒に対する溶解性が優れるようになる。また、毛髪のふんわりとしたボリューム感の持続性をより一層向上させることができる。本発明において、MWtは、原料化合物である変性オルガノポリシロキサンの重量平均分子量と、上述の質量比(a/b)とから求めることができる。
【0033】
次に、成分(A)のオルガノポリシロキサンの製造方法について説明する。
成分(A)のオルガノポリシロキサンは、例えば、下記一般式(3)
【0034】
【化4】

【0035】
〔式中、R2は前記一般式(2)のR2と同義であり、R3及びR4はそれぞれR2と同一の基を示すか、又は下記式(ix)〜(xiv)
【0036】
【化5】

【0037】
のいずれかで表される1価の基を示し、R5は上記式(ix)〜(xiv)で表される1価の基を示し、aは135〜1,350の整数を示し、bは3〜57の整数を示す。〕
で表される変性オルガノポリシロキサンと、下記一般式(4)
【0038】
【化6】

【0039】
〔式中、R1及びnは前記一般式(1)のR1及びnとそれぞれ同義である。〕
で表される環状イミノエーテル(以下「環状イミノエーテル(4)」とする)を開環重合して得られる末端反応性ポリ(N-アシルアルキレンイミン)とを反応させることにより製造される。
【0040】
変性オルガノポリシロキサン(3)としては、官能基当量が好ましくは1,700〜3,500、より好ましくは1,800〜3,200、更に好ましくは2,000〜3,000であり、かつ重量平均分子量が好ましくは10,000〜100,000、より好ましくは20,000〜80,000、更に好ましくは30,000〜60,000であるものを使用するのが望ましい。原料である変性オルガノポリシロキサン(3)の上記重量平均分子量は、前述の主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量(MWsi)と略同一となる。
【0041】
また、末端反応性ポリ(N-アシルアルキレンイミン)は、分子量を好ましくは800〜1,600、好ましくは850〜1,500、より好ましくは900〜1,400に調整することが望ましい。これは前述のポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの分子量(MWox)と略同一となる。
【0042】
環状イミノエーテル(4)の開環重合には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、求電子反応性の強い化合物、例えば、ベンゼンスルホン酸アルキルエステル、p-トルエンスルホン酸アルキルエステル、トリフルオロメタンスルホン酸アルキルエステル、トリフルオロ酢酸アルキルエステル、硫酸ジアルキルエステル等の強酸のアルキルエステルを使用することができ、中でも硫酸ジアルキルが好適に使用される。重合開始剤の使用量は、通常、環状イミノエーテル(4)の2〜100モルに対して、重合開始剤1モルである。
【0043】
重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル等の酢酸エステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン溶媒、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、N,N-ジメチルフォルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド等の非プロトン性極性溶媒を使用することができ、中でも酢酸エステル類が好適に使用される。溶媒の使用量は、通常、環状イミノエーテル(4)の100質量部に対して20〜2,000質量部である。
【0044】
重合温度は通常30〜170℃、好ましくは40〜150℃であり、重合時間は重合温度等により一様ではないが、通常1〜60時間である。
【0045】
環状イミノエーテル(4)として、例えば、2-置換-2-オキサゾリンを用いれば、前記一般式(1)において、n=2のポリ(N-アシルエチレンイミン)が得られ、2-置換-ジヒドロ-2-オキサジンを用いれば、上記一般式(1)において、n=3のポリ(N-アシルプロピレンイミン)が得られる。
【0046】
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)と、オルガノポリシロキサンセグメントとの連結方法としては、例えば、下記の方法が挙げられる。
【0047】
1)環状イミノエーテルをリビング重合して得られる末端反応性ポリ(N-アシルアルキレンイミン)に、一般式(3)で表される変性オルガノポリシロキサンを反応させる方法
2)カルボキシ基と水酸基との縮合によるエステルの形成反応
3)カルボキシ基とアミノ基との縮合によるアミドの形成反応
4)ハロゲン化アルキル基と、1級、2級又は3級アミノ基との2級、3級又は4級アンモニウムの形成反応
5)Si−H基を有するオルガノポリシロキサンへのビニル基の付加反応
6)エポキシ基とアミノ基とのβ-ヒドロキシアミン形成反応
【0048】
中でも、上記1)の方法は、下記に示す理論式(II)のように、環状イミノエーテル(4)と重合開始剤の使用量で重合度を容易に制御でき、しかも通常のラジカル重合よりも分子量分布の狭い略単分散のポリ(N-アシルアルキレンイミン)が得られる点で最も有効である。
【0049】
【数2】

【0050】
成分(A)のオルガノポリシロキサンは、所定の分子量を有するオルガノポリシロキサンセグメントの少なくとも2つのケイ素原子に、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介してポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントが所定間隔で、かつ所定の割合で結合した特有の構造を備えている。これにより、毛髪への指通りを良好なものとし、更にふんわりとしたボリューム感の高い持続性が得られる。しかも水や低級アルコール等の極性溶媒に溶解することができる。
【0051】
成分(A)のオルガノポリシロキサンの好ましい例としては、ポリ(N-ホルミルエチレンイミン)オルガノシロキサン、ポリ(N-アセチルエチレンイミン)オルガノシロキサン、ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)オルガノシロキサン等が挙げられる。
【0052】
成分(A)のオルガノポリシロキサンは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その含有量は、指のすべり通りを向上させ、毛髪のふんわりとしたボリューム感を長時間持続させる観点から、毛髪化粧料の全質量基準で、好ましくは0.01〜30質量%、より好ましくは0.05〜20質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%、更に好ましくは0.5〜5質量%である。また、かかる含有量とすることで、以下に説明する成分(B)と併用した場合における指のすべり通りを向上させ、毛髪のふんわりとしたボリューム感を長時間持続させるという効果を優れたものとすることができる。
【0053】
〔成分(B):第二のオルガノポリシロキサン〕
成分(B)のオルガノポリシロキサンは、成分(A)と同様に、前記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントが、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して結合したものである。従って、成分(A)と成分(B)とは相互に類似した構造を有しており、共にINCI名で「ポリシリコーン-9」と称されるものであるが、成分(B)のオルガノポリシロキサンは、下記の点において、成分(A)のオルガノポリシロキサンと相違する。
【0054】
i)オルガノポリシロキサンセグメント(a)と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(b)との質量比(a/b)が、82/18〜99/1であること。
a/bは、べたつかず、かつ滑らかな感触に優れたものとし、指のすべり通りを向上させる観点から、好ましくは84/16〜99/1、更に好ましくは85/15〜98/2、更に好ましくは86/14〜97/3である。
【0055】
ii)隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量(MWg)が、10,000〜40,000であること。
MWgは、べたつかず、かつ滑らかな感触に優れたものとし、指のすべり通りを向上させる観点から、好ましくは15,000〜35,000、更に好ましくは18,000〜32,000である。
【0056】
iii)ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの数平均分子量(MWox)が500〜4,000であること。
MWoxは、毛髪表面に適度な連続の皮膜を形成して、べたつかず、かつ滑らかな感触に優れたものとし、指のすべり通りを向上させる観点から、好ましくは800〜3,500、更に好ましくは1,000〜3,000である。
【0057】
iv)主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量(MWsi)が、50,000〜150,000であること。
MWsiは、毛髪表面に適度な連続の皮膜を形成して、なめらかな感触とべたつきのなさを同時に満たし、加えて、指のすべり通りを向上させ、更には水等への極性溶媒への溶解性と溶解後の取り扱いやすさを確保する観点から、好ましくは70,000〜130,000、更に好ましくは90,000〜110,000である。
【0058】
また、成分(B)のオルガノポリシロキサンの重量平均分子量(MWt)は、好ましくは60,000〜160,000、より好ましくは80,000〜140,000、更に好ましくは100,000〜120,000である。これにより、べたつかず、かつ滑らかな感触がより一層向上したものとし、加えて水等への極性溶媒への溶解性が優れるようになる。
【0059】
成分(B)のオルガノポリシロキサンは、例えば、前記一般式(3)において、aが135〜1,350の整数、bが3〜57の整数である変性オルガノポリシロキサンと、環状イミノエーテル(4)を開環重合して得られる末端反応性ポリ(N-アシルアルキレンイミン)とを反応させることにより製造することができる。
【0060】
変性オルガノポリシロキサンとしては、官能基当量が好ましくは10,000〜40,000、より好ましくは15,000〜35,000、特に好ましくは18,000〜30,000であり、かつ重量平均分子量が好ましくは50,000〜150,000、より好ましくは70,000〜130,000、特に好ましくは90,000〜110,000であるものを使用するのが望ましい。
【0061】
また、末端反応性ポリ(N-アシルアルキレンイミン)は、分子量を好ましくは500〜4,000、より好ましくは800〜3,500、更に好ましくは1,000〜3,000に調整することが望ましい。
【0062】
これら以外の点は、前述の成分(A)のオルガノポリシロキサンの製造と同様にして、成分(B)のオルガノポリシロキサンを製造することができる。
【0063】
成分(B)のオルガノポリシロキサンは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その含有量は、指のすべり通りを向上させ、毛髪のふんわりとしたボリューム感を長時間持続させる観点から、毛髪化粧料の全質量基準で、好ましくは0.001〜30質量%、より好ましくは0.005〜20質量%、更に好ましくは0.01〜10質量%、更に好ましくは0.05〜5質量%である。また、かかる含有量とすることで、成分(A)と併用した場合におけるセット性及びセット持続性の両スタイリング性をより一層向上させることができる。
【0064】
成分(A)及び成分(B)のオルガノポリシロキサンは、前述のとおり類似した構造を有するものであるが、その特性は異なり、成分(A)のオルガノポリシロキサンは、常温付近で髪型をセットし保持するのに適した適度な粘着性と弾性を有するものであり、これに対し成分(B)のオルガノポリシロキサンは、弱い表面粘着性と表面潤滑性を有するものである。
【0065】
本発明の毛髪化粧料中における成分(A)と成分(B)の含有質量比(A)/(B)は、指のすべり通りを向上させ、毛髪のふんわりとしたボリューム感を長時間持続させるという効果を優れたものとする観点から、1.6以上であるが、好ましくは1.6〜10.0、より好ましくは1.9〜5.0である。上述した本発明の効果は、成分(A)と成分(B)とを上記の比率で組み合わせることによって得られるのであり、たとえ数値的には両成分を併用した場合の平均値付近にあるオルガノポリシロキサン(ポリシリコーン-9)を単独で使用したとしても、このような効果は得られない。
【0066】
すなわち、本発明者らは、成分(A)と成分(B)との併用によって、毛髪の表面に形成される皮膜が、以下のような特性を有するものとなることを見出した。
【0067】
両者の含有質量比(A)/(B)が1.6以上となる範囲で混合した場合の皮膜は、表層のオルガノポリシロキサン(B)の弱い粘着性と表面潤滑性、連続層のオルガノポリシロキサン(A)の表面粘着性と弾性が適度に両立するため、ボリュームのあるヘアスタイル付与、浮き毛の抑制、仕上げたヘアスタイルの持続性に特に優れる。
【0068】
〔成分(C):第三のオルガノポリシロキサン〕
本発明の毛髪化粧料は、更に、成分(C)のオルガノポリシロキサンを含有することができる。成分(C)のオルガノポリシロキサンは、成分(A)と同様に、前記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントが、主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して結合したものである。従って、成分(A)と成分(B)と成分(C)とは相互に類似した構造を有しており、共にINCI名で「ポリシリコーン-9」と称されるものであるが、成分(C)のオルガノポリシロキサンは、下記の点において、成分(A)及び成分(B)のオルガノポリシロキサンと相違する。
【0069】
i)オルガノポリシロキサンセグメント(a)と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(b)との質量比(a/b)が、35/65〜60/40であること。
a/bは、毛髪にふんわりとしたボリュームを与える観点から、好ましくは42/58〜58/42、更に好ましくは45/55〜55/45、更に好ましくは47/53〜53/47である。
【0070】
ii)隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量(MWg)が、1300〜5500であること。
MWgは、毛髪にふんわりとしたボリュームを与える観点から、好ましくは1600〜3500、更に好ましくは1800〜3200、更に好ましくは2,000〜3,000である。
【0071】
iii)ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの数平均分子量(MWox)が1,200〜5,500であること。
MWoxは、毛髪にふんわりとしたボリュームを与える観点から、好ましくは1,600〜3,500、更に好ましくは1,800〜3,200、更に好ましくは2,000〜3,000である。
【0072】
iv)主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量(MWsi)が、7,000〜100,000であること。
MWsiは、毛髪にふんわりとしたボリュームを与え、更には水等への極性溶媒への溶解性と溶解後の取り扱いやすさを確保する観点から、好ましくは10,000〜80,000、更に好ましくは20,000〜60,000、更に好ましくは30,000〜50,000である。
【0073】
また、成分(C)のオルガノポリシロキサンの重量平均分子量(MWt)は、好ましくは10,000〜200,000、より好ましくは30,000〜100,000、更に好ましくは50,000〜70,000である。これにより、毛髪にふんわりとしたボリュームを与え、加えて水等への極性溶媒への溶解性が優れるようになる。
【0074】
成分(C)のオルガノポリシロキサンは、例えば、前記一般式(3)において、aが89〜1332の整数、bが2〜77の整数である変性オルガノポリシロキサンと、環状イミノエーテル(4)を開環重合して得られる末端反応性ポリ(N-アシルアルキレンイミン)とを反応させることにより製造することができる。
【0075】
変性オルガノポリシロキサンとしては、官能基当量が好ましくは1,700〜3,500、より好ましくは1,800〜3,200、特に好ましくは2,000〜3,000であり、かつ重量平均分子量が好ましくは7,000〜100,000、より好ましくは10,000〜80,000、特に好ましくは30,000〜50,000であるものを使用するのが望ましい。
【0076】
また、末端反応性ポリ(N-アシルアルキレンイミン)は、分子量を好ましくは1,200〜5,500、より好ましくは1,600〜3,500、更に好ましくは1,800〜3,200、更に好ましくは2,000〜3,000に調整することが望ましい。
【0077】
これら以外の点は、前述の成分(A)及び(B)のオルガノポリシロキサンの製造と同様にして、成分(C)のオルガノポリシロキサンを製造することができる。
【0078】
成分(C)のオルガノポリシロキサンは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その含有量は、毛髪にふんわりとしたボリュームとハリのある質感を与える観点から、毛髪化粧料の全質量基準で、好ましくは0.001〜30質量%、より好ましくは0.005〜20質量%、更に好ましくは0.01〜10質量%、更に好ましくは0.05〜5質量%である。また、かかる含有量とすることで、成分(A)及び(B)と併用した場合において、ふんわりとしたボリュームとハリのある質感を与え、かつ長時間維持する効果をより一層向上させることができる。
【0079】
本発明の成分(A)及び(B)、又はこれらに更に成分(C)を加えたオルガノポリシロキサンとしての合計含有量は、毛髪にふんわりとしたボリュームとハリのある質感を与える観点から、毛髪化粧料の全質量基準で、好ましくは0.01〜30質量%、より好ましくは0.05〜20質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%、更に好ましくは0.5〜6質量%である。
【0080】
〔低級アルコール〕
更に、本発明の毛髪化粧料は、炭素数1〜6の脂肪族アルコールを含有することができる。炭素数1〜6の脂肪族アルコールの含有量は、本発明の毛髪化粧料中の0.01〜98質量%、更には0.1〜90質量%、特に0.5〜75質量%が好ましい。これによって、毛髪に対する本毛髪化粧料のなじみ性が向上し、ボリュームのあるヘアスタイルや、浮き毛の抑制を一層効果的におこなうことができる。
【0081】
〔カチオン界面活性剤〕
本発明の毛髪化粧料には、更にカチオン界面活性剤を含有させることが好ましい。カチオン界面活性剤としては、次の一般式(5)で表される第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0082】
【化7】

【0083】
〔式中、R8及びR9は各々独立して水素原子、炭素数1〜28のアルキル基又はベンジル基を示し、同時に水素原子又はベンジル基となる場合、及び、炭素数1〜3の低級アルキル基となる場合を除く。Z-はアニオンを示す。〕
【0084】
ここでR8及びR9は、その一方が炭素数14〜24の直鎖又は分岐のアルキル基、特に直鎖アルキル基であるのが好ましく、また他方は炭素数1〜3の低級アルキル基、特にメチル基であるのが好ましい。アニオンZ-としては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン;エチル硫酸イオン、炭酸メチルイオン等の有機アニオン等が挙げられ、ハロゲン化物イオン、特に塩化物イオンが好ましい。
【0085】
カチオン界面活性剤としては、モノ長鎖アルキル四級アンモニウム塩が好ましく、具体的には、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アラキルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられ、特に塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムが好ましい。
【0086】
これらカチオン界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用でき、その含有量は、本発明の毛髪化粧料中の0.01〜10質量%、特に0.05〜5質量%が好ましい。これによって、成分(A)と成分(B)とによる皮膜の髪への付着が均一になることで毛髪に対する毛髪化粧料のなじみ性が向上するとともに、ヘアスタイリング中における毛髪の滑らかさが向上し、ヘアスタイルへのボリューム付与効果や、浮き毛の抑制効果も一層良好となる。
【0087】
〔他の界面活性剤〕
本発明の毛髪化粧料には、溶剤の可溶化、分散性等を含めた系の安定性の点から、カチオン界面活性剤以外の界面活性剤を含有させることができる。このような界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン界面活性剤のいずれをも使用できる。
【0088】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、高級脂肪酸ショ糖エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸モノ又はジエタノールアミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、アルキルサッカライド系界面活性剤、アルキルアミンオキサイド、アルキルアミドアミンオキサイド等が挙げられる。これらのうち、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが特に好ましい。
【0089】
両性界面活性剤としてはイミダゾリン系、カルボベタイン系、アミドベタイン系、スルホベタイン系、ヒドロキシスルホベタイン系、アミドスルホベタイン系等が挙げられる。
【0090】
アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホ脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、スルホコハク酸エステル等が挙げられる。上記界面活性剤のアニオン性残基の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;炭素数2又は3のアルカノール基を1〜3個有するアルカノールアミン(例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)を挙げることができる。またカチオン性残基の対イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン、メトサルフェートイオン、サッカリネートイオンを挙げることができる。
【0091】
これらカチオン界面活性剤以外の界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用でき、溶剤の可溶化、油剤の乳化等を含めた系の安定性の点から、その含有量は、本発明の毛髪化粧料中の0.01〜10質量%、特に0.05〜5質量%が好ましい。
【0092】
〔pH〕
本発明の毛髪化粧料は、水で20質量倍に希釈したときの25℃におけるpHが、2.5〜7.0であるのが好ましく、更にはpH2.5〜6.0、特にpH3.0〜5.0が好ましい。
【0093】
本発明の毛髪化粧料の形態は、液状、ゲル状、泡状、ペースト状、乳液状等、適宜選択できるが、溶剤として、水又は低級アルコールを用いた液状のものが好ましい。
【0094】
本発明の毛髪化粧料は、髪に適用後、洗い流さずに使用するタイプのものが好ましく、ヘアスタイリング剤、ヘアコンディショニング剤等として用いるのが好ましい。剤型としては、ポンプスプレー、エアゾールスプレー、ポンプフォーム、エアゾールフォーム、ジェル、ローション、クリーム等が挙げられる。
【0095】
〔毛髪処理方法〕
本発明の毛髪化粧料は、毛髪に適用後、洗い流すことなく、送風により、又は自然乾燥により仕上げることにより、所望の整髪効果を得ることができる。ここで、毛髪化粧料適用後の毛髪の乾燥に際しては、そのまま放置してもよいが、送風乾燥することにより毛髪改質効果を得ることができる。ここで、「洗い流さない」とは毛髪に適用してから次の洗髪時までの時間を、少なくとも3時間以上、好ましくは6時間以上とすることをいう。
【0096】
更に、毛髪化粧料を毛髪に塗布後、加温することにより、本発明の効果をより高めることができる。加温には、ドライヤー、ヒーター、コテ、アイロン等を使用することができる。ドライヤー、ヒーター等を使用する場合、温度としては60℃〜150℃、特に70℃〜120℃が好ましい。加温時間は10秒〜30分、更には20秒〜20分、特に30秒〜10分が好ましい。コテ、アイロン等を使用する場合、温度としては80℃〜250℃、特に100℃〜200℃が好ましい。加温時間は0.5秒〜3分、更には1秒〜2分、特に2秒〜30秒が好ましい。また、毛髪化粧料を適用した後、加熱・加温するまでの時間は、1時間以内、更には45分以内、特に30分以内が好ましい。
【実施例】
【0097】
合成例1 オルガノポリシロキサンA
硫酸ジエチル19.0g(0.12モル)と2-エチル-2-オキサゾリン81.0g(0.82モル)を脱水した酢酸エチル203gに溶解し、窒素雰囲気下8時間加熱還流し、末端反応性ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)を合成した。数平均分子量をGPCにより測定したところ、1,100であった。ここに、側鎖一級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量32,000、アミン当量2,000)300gの33%酢酸エチル溶液を一括して加え、10時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、N-プロピオニルエチレンイミン・ジメチルシロキサン共重合体を淡黄色固体(390g、収率97%)として得た。最終生成物のオルガノポリシロキサンセグメントの含有率は75質量%、重量平均分子量は40,000であった。溶媒としてメタノールを使用した塩酸による中和滴定の結果によると、約20モル%のアミノ基が残存していた。
【0098】
合成例2 オルガノポリシロキサンB
硫酸ジエチル0.8g(0.005モル)と2-エチル-2-オキサゾリン12.8g(0.14モル)を脱水した酢酸エチル29gに溶解し、窒素雰囲気下8時間加熱還流し、末端反応性ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)を合成した。数平均分子量をGPCにより測定したところ、2700であった。ここに、側鎖一級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量100000、アミン当量20000)100gの33%酢酸エチル溶液を一括して加え、10時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、N-プロピオニルエチレンイミン−ジメチルシロキサン共重合体を、淡黄色ゴム状固体(111g、収率98%)として得た。最終生成物のオルガノポリシロキサンセグメントの含有率は88質量%、重量平均分子量は114000であった。溶媒としてメタノールを使用した塩酸による中和滴定の結果によると、アミノ基は残存していなかった。
【0099】
合成例3 オルガノポリシロキサンC
硫酸ジエチル6.17g(0.04モル)と2-エチル-2-オキサゾリン93.8g(0.947モル)を脱水した酢酸エチル203gに溶解し、窒素雰囲気下8時間加熱還流し、末端反応性ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)を合成した。数平均分子量をGPCにより測定したところ、2500であった。ここに、側鎖一級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量30,000、アミン当量2,000)100gの33%酢酸エチル溶液を一括して加え、10時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、N-プロピオニルエチレンイミン・ジメチルシロキサン共重合体を淡黄色固体(190g、収率95%)として得た。最終生成物のオルガノポリシロキサンセグメントの含有率は50質量%、重量平均分子量は60,000であった。溶媒としてメタノールを使用した塩酸による中和滴定の結果によると、約20モル%のアミノ基が残存していた。
【0100】
合成例4 オルガノポリシロキサンD
硫酸ジエチル6.5g(0.042モル)と2-エチル-2-オキサゾリン34.4g(0.36モル)を脱水した酢酸エチル87gに溶解し、窒素雰囲気下8時間加熱還流し、末端反応性ポリ(N-プロピオニルエチレンイミン)を合成した。数平均分子量をGPCにより測定したところ、1300であった。ここに、側鎖一級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量32000、アミン当量2000)100gの33%酢酸エチル溶液を一括して加え、10時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、N-プロピオニルエチレンイミン−ジメチルシロキサン共重合体を、淡黄色ゴム状半固体(138g、収率98%)として得た。最終生成物のオルガノポリシロキサンセグメントの含有率は71質量%、重量平均分子量は46000であった。溶媒としてメタノールを使用した塩酸による中和滴定の結果によると、約22モル%のアミノ基が残存していた。
【0101】
実施例1〜3及び比較例1〜5
表1に示す毛髪化粧料を常法に従い調製し、以下の方法に従って、「毛髪嵩高さ評価」及び「仕上げ後のすべり指通り評価」を行った。
【0102】
1.毛髪嵩高さ評価
株式会社ビューラックス社製のウィッグ(平均毛髪径約50μm、毛髪密度150本/cm2)を髪の長さがミディアムレングスになるようにカットする。ウィッグをプレーンシャンプー(花王社製キュレルシャンプー)を用いて洗浄し、更にリンス(花王社製キュレルリンス)を用いて処理した後、ブロードライヤー(パナソニック社製Ionity EH5305P)の温風にて乾燥させる。次いで、ウィッグに水を5g塗布し、くしでとかしてなじませた後、表1に記載の毛髪処理剤(実施例1〜3、比較例1〜4)又は水(比較例5)2gを根元に塗布した後、ブロードライヤーで根元を起こすようにハンドブロー仕上げを行った。
【0103】
[直後の評価]
上記ハンドブロー仕上げを行ったウィッグを3分放置した後、ウィッグのフロント根元から正中線に沿って7cmの所で毛髪嵩高さを定規で測定した。
【0104】
[指通し30回後の評価]
上記ハンドブロー仕上げを行ったウィッグのフロント部から後頭部に向かいかきあげるように1回/秒のペースで30回指を通し、更にウィッグを3分間放置した後、フロント根元から正中線に沿って7cmの所で毛髪嵩高さを定規で測定した。
【0105】
2.仕上げ後のすべり指通り評価
株式会社ビューラックス社製のウィッグ(平均毛髪径約50μm、毛髪密度150本/cm2)を髪の長さがミディアムレングスになるようにカットする。ウィッグをプレーンシャンプー(花王社製キュレルシャンプー)を用いて洗浄し、更にリンス(花王社製キュレルリンス)を用いて処理した後、ブロードライヤー(パナソニック社製Ionity EH5305P)の温風にて乾燥させる。次いで、ウィッグに水を5g塗布しくしでとかしてなじませた。
【0106】
・[基準品;比較例5]
上記の手順により処理したウィッグに、水2gを根元に塗布し、ブロードライヤーで根元を起こすようにハンドブロー仕上げを行った後、3分間放置し、基準品とした。
・[評価品;実施例1〜3、比較例1〜4]
上記の手順により処理したウィッグに、表1に記載の毛髪処理剤2gを根元に塗布し、ブロードライヤーで根元を起こすようにハンドブロー仕上げを行った後、3分間放置し、評価品とした。
5名の専門パネラーによって「指通りのよさ」について官能評価を行った。
4点:基準より明らかに指通りがよい
3点:基準より指通りがよい
2点:基準よりわずかに指通りがよい
1点:基準と同等の指通り、又は基準よりも指通りが悪い
【0107】
5名の専門パネラーの官能評価の合計を表1に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
処方例1(ヘアミスト)
(質量%)
オルガノポリシロキサンA(合成例1) 0.6
オルガノポリシロキサンB(合成例2) 0.3
95質量%エタノール 11.0
コータミン86W(28質量%、花王株式会社製) 0.85
シリコーンKF6029(信越化学工業株式会社製) 0.5
香料 0.05
精製水 残量
【0110】
処方例2(ヘアローション)
(質量%)
オルガノポリシロキサンA(合成例1) 0.8
オルガノポリシロキサンB(合成例2) 0.2
95質量%エタノール 5.0
コータミン86W(28質量%)(花王株式会社製) 0.85
カルコール6870(花王株式会社製) 1.5
SM8904 COSMETIC EMULSION(40質量%、東レ・ダウコーニング社) 0.2
ガフカット734(50質量%、ISP社) 0.6
香料 0.1
精製水 残量
【0111】
処方例3 (ウォーター剤)
(質量%)
オルガノポリシロキサンA(合成例1) 0.4
オルガノポリシロキサンB(合成例2) 0.1
リンゴ酸 1.4
ベンジルアルコール 0.2
ジプロピレングリコール 2.0
コータミン86W(28質量%、花王株式会社製) 0.85
エタノール 15.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.2
香料 0.06
精製水 残量
水酸化ナトリウム(pH調整剤) pH4.0に調整する量
【0112】
処方例4(ヘアミスト)
(質量%)
オルガノポリシロキサンA(合成例1) 2.0
オルガノポリシロキサンB(合成例2) 1.0
オルガノポリシロキサンC(合成例3) 2.0
95質量%エタノール 12.0
コータミン86W(28質量%、花王株式会社製) 0.85
香料 0.05
精製水 残量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B)を(A)/(B)=1.6以上の質量比で含有する毛髪化粧料。
成分(A):主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、下記一般式(1);
【化1】

(式中、R1は水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、アラルキル基又はアリール基を示し、nは2又は3を示す。)
で表される繰り返し単位からなるポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントが結合してなるオルガノポリシロキサンであって、
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの数平均分子量が800〜1,600であり、
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメント(a)と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(b)との質量比(a/b)が73/27〜80/20であり、
隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量が1,500〜3,500であり、
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量が10,000〜100,000である、
オルガノポリシロキサン
成分(B):主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、上記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントが結合してなるオルガノポリシロキサンであって、
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの数平均分子量が500〜4,000であり、
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメント(a)と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(b)との質量比(a/b)が82/18〜99/1であり、
隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量が10,000〜40,000であり、
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量が50,000〜150,000である、
オルガノポリシロキサン
【請求項2】
更に、成分(C)を含有する請求項1記載の毛髪化粧料。
成分(C):主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントのケイ素原子の少なくとも2つに、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントが結合してなるオルガノポリシロキサンであって、
ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメントの数平均分子量が1,200〜5,500であり、
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメント(a)と、ポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント(b)との質量比(a/b)が35/65〜60/40であり、
隣接するポリ(N-アシルアルキレンイミン)セグメント間におけるオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量が1,300〜5,500であり、
主鎖を構成するオルガノポリシロキサンセグメントの重量平均分子量が7,000〜100,000である、
オルガノポリシロキサン
【請求項3】
更に、水及び/又は炭素数1〜6の脂肪族アルコールを含有する請求項1又は2に記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
更に、カチオン界面活性剤を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
毛髪化粧料中の成分(A)の含有量が、0.01〜30質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項6】
毛髪化粧料中の成分(B)の含有量が、0.001〜30質量%である請求項1〜5のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項7】
毛髪に適用後、洗い流さずに使用されるものである請求項1〜6のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の毛髪化粧料を毛髪に適用した後、洗い流すことなく、送風乾燥又は自然乾燥を行う毛髪処理方法。

【公開番号】特開2013−23465(P2013−23465A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158815(P2011−158815)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】