説明

毛髪及び頭皮洗浄剤

【技術課題】毛髪及び頭皮の洗浄において、洗浄開始時には弱アルカリ性剤としての特徴である酸化皮脂、たんぱく質汚れを強力に洗浄し、後半は弱酸性に経時変化させて毛髪、頭皮の親和性を高め、更に中和反応により炭酸ガスを発生させて頭皮内に経皮吸収させて皮下血流を増加させ、たんぱく質の吸着を図り、毛髪及び頭皮を柔らかく健康な状態に整えることができる洗浄剤を得る。
【解決手段】界面活性剤を主成分とするA剤とB剤を調整し、A剤には使用時に重炭酸ナトリウム3〜15重量%を混合し、B剤にはクエン酸等有機酸類を5.8〜20重量%あらかじめ混合しておく。使用に際しては、直前にA剤に別包の重炭酸ナトリウムを混合、A剤とB剤を手にとり、洗髪を行う。この結果、経時的に弱アルカリ性から弱酸性に変化し、加えて炭酸ガスにより皮下血流を促進させて、毛髪に潤いとツヤ、しなやかさを与え、頭皮の健康化を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪及び頭皮を一回の洗浄に際してそのPhを経時的に変化させて理想的な毛髪と頭皮の洗浄効果と特に頭皮の健康効果をもたらすことができる洗浄剤(シャンプー)に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に市販されているシャンプーは、毛髪と頭皮の汚れ落としに重点をおき、そのPhは弱アルカリ性又は中性に保たれている。
【0003】
しかし、アルカリ性が強いと、洗髪後の毛髪や頭皮にパサツキが発生し、髪を傷め、頭皮を乾燥させてフケやかゆみの原因となる。
【0004】
そこで、シャンプーした後に弱酸性でシリコン系等の追加成分を配合したリンスを用いて毛髪に潤いやしなやかさを与えたり、頭皮の乾燥を防ぐという2度手間をかけているのが現状である。
【0005】
但し、この2度手間を1回で済むように、最近はリンスインシャンプーと称し、シャンプーにリンスを混合した製品も販売されているが、このリンスインシャンプーの場合は、当然のこととしてシャンプーとリンス効果が単品に比較して劣るという欠点がありせっかく洗浄したにもかかわらず、洗浄後の頭皮に余分なリンス成分を加える事にもなる。
【0006】
因に、リンスインシャンプーの公知例として、特開平08−012535号公報には、ふけ防止効果を有するジンクピリチオンの分散安定性に著しく優れ、豊かな泡を生成しリンス効果のあるシャンプーを得るために、18.0〜20.0重量部のポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(エチレンオキサイド3モル付加)、2.4〜2.6重量部のラウリン酸ジエタノールアミド、0.5〜0.7重量部のセルローストリメチルアンモニウム塩および0.5〜5.0重量部のジンクピリチオンを混合したものが紹介されている。
【0007】
しかし、この公知例の場合は、あらかじめシャンプー剤とリンス剤が混合されているため、Phをどのように調整しておくかによって効果が片寄り、あるいは毛髪の仕上りと頭皮の健康化に十分に満足すべき効果が得られないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、以上に説明した毛髪についてはそのパサツキ感を無くし、頭皮については乾燥によるフケやかゆみの原因を排除して理想的な洗浄効果を発揮する洗浄剤について鋭意研究を重ねた結果、洗髪時にそのPhを始めは弱アルカリ性に、後半は弱酸性に経時変化させると共に、洗髪時に炭酸ガスを発生させて頭皮内に経皮吸収させて血流を促進させることによりその健康化を図ることができる洗浄剤を開発することができたため、これをここに提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した本発明として、請求項1に記載した発明は、
水、オレフィンスルホン酸Na、ウラミドプロピルベタイン、クオタニウム、フェノキシエタノールを主剤としてA剤とB剤を調整し、
前記A剤には使用時に別包の重炭酸ナトリウムを混合し、
前記B剤にはあらかじめ有機酸類を混合しておき、
洗髪時に前記重炭酸ナトリウムを混合したA剤と有機酸類を混合したB剤を手にとって洗髪を行うことにより、洗髪開始前半は弱アルカリ性に、その後重炭酸ナトリウムと有機酸類の中和反応により炭酸ガスを発生させ、併せて、洗髪の後半には弱酸性に経時変化させて、毛髪と頭皮の洗浄及び毛髪につやとしなやかさを与え、加えて頭皮には炭酸ガスを経皮吸収させてその皮下血行を促進させ、これにより頭皮の健康化を図ることを特徴とするものである。
【0010】
この発明によると、1回の洗髪に際し、始めは弱アルカリ性に保たれているため、汚れを効果的に落し、途中で重炭酸ナトリウムと有機酸の中和反応により炭酸ガスを発生させ、後半は弱アルカリ性に変化させて毛髪に潤いとツヤを与え、頭皮については乾燥を抑えてフケやかゆみの発生を防ぎ、併せて炭酸ガスを経皮吸収させて皮下血行を促進させることにより、頭皮の健康化に寄与することができる。
【0011】
更に、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の毛髪及び頭皮洗浄剤において、A剤に対して混合する重炭酸ナトリウムの量をA剤の3〜15重量%に、B剤に混合する有機酸類の量をB剤の5.8〜20重量%に設定して成ることを特徴とするものである。
この発明により、最も効果のある洗浄剤を提供する。
【0012】
更に、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の毛髪及び頭皮洗浄剤において用いられる有機酸類は、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、グリコール酸の中から選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上の構成を採用することにより、毛髪及び頭皮の洗浄において、洗浄開始時から数分は弱アルカリ性を保ち、その後中和から弱酸性化するという経時変化により、リンス効果のある洗浄剤として極めて有効である。
【0014】
また、重炭酸ナトリウムとクエン酸等の有機酸類が、中和反応するときに炭酸ガスを発生させ、この炭酸ガスを経皮吸収させて皮下血流を促進させることにより、たんぱく質の吸着を惹起して頭皮を柔らかく健康な状態に整える効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る洗浄剤を充填したポンプ付容器の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、化学両論的に重炭酸ナトリウム:クエン酸水和物のモル反応比≒6:5であることから、この化学的な中和反応及び中和に伴う炭酸ガス発生の特性を毛髪及び頭皮用洗浄剤に応用し、反応時間と弱アルカリ性から弱酸性への経時的中和反応を最適化するために重炭酸ナトリウムとクエン酸等の有機酸類をその特性に合わせて洗浄剤に利用する点に特徴がある。
【0017】
毛髪や頭皮は弱酸性である事から、洗髪や頭皮の洗浄剤は毛髪や頭皮との科学的親和性から弱酸性である事が望ましい。
【0018】
一方、石鹸類・アルカリ硫酸塩系洗浄剤は、その性状がアルカリ性であり、たんぱく質や油分、酸化皮脂を吸着融解させて洗浄する高い洗浄力が特徴となっている。しかし、そのアルカリ性の性状から頭皮のたんぱく質も融解させてしまったり、油分を過剰に落としてしまう事から起こる頭皮の乾燥、及び毛髪に於いては毛髪表面の膨潤化によりきしみや傷みの原因となってしまうことがある。
【0019】
対してクエン酸等の酸性洗浄剤の特徴として炭酸カルシウム、尿酸カルシウムなどは、無機塩を溶かすのに効果的である事から、その濃度によっては細胞膜を分解したり、細菌や微生物に必要な酵素を分解する作用があり、前記したアルカリ性の洗浄剤とは対極の洗浄効果を期待する。
【0020】
本発明は、この相反する性質に着目してなされたものであり、アルカリ性洗浄剤と酸性洗浄剤の特徴を併せもつ洗浄剤であって、毛髪や頭皮の洗浄において経時的に理想的な洗浄効果を発揮するものである。
【0021】
更に、この特徴は、重炭酸ナトリウムとクエン酸等有機酸類の中和反応及びそれに加えて生成される炭酸ガスによる洗浄効果を洗浄剤に応用する事により、目的とする洗浄に適切な効果をもたらし且つ経時的にアルカリ性から弱酸性に変化させる点に特徴がある。
【0022】
更に、炭酸ガスによる頭皮のマッサージも同時に行うことができるようにその配合率を実現している。これによりアルカリ性剤の特徴としての油分・酸化皮脂・たんぱく質汚れを強力に洗浄し、経時的酸性変化により頭皮・毛髪に親和性の高い弱酸性となり、一回の洗浄時間内で2つの異なる性状を利用して洗浄を終了する事を可能にしている。
【0023】
また、生成される炭酸ガスを経皮吸収させて皮下血流を増加させたり、たんぱく質吸着を起こし頭皮を柔らかく健康な状態に整える事が出来るようにしている。
【0024】
混合比率
重炭酸ナトリウムの水溶率はおよそ8%である。
・重炭酸ナトリウム・・・3wt%〜15wt%
・クエン酸等有機酸類・・・・・・・5.8wt%〜20wt%
【0025】
本発明は、上記数値の範囲内で後述の重炭酸ナトリウムをA剤に、有機酸類をB剤にそれぞれ混合することで目的を達成するが、前記上限及び下限の数値を超えると、弱アルカリ性から弱酸性への反応時間が遅れて一回の洗髪では十分な効果が得られなかったり、洗髪時間を長くしたり、反対に短くしたりする必要が生じ、使い勝手も悪くなる。
また、中和反応が過剰又は不足して炭酸ガスの発生を適正に維持することができなくなる。
【0026】
本発明において、通常洗髪・洗浄時間を5分と仮定した場合、重炭酸ナトリウム6〜7wt%とクエン酸10wt%を混合した場合、0〜2分前後まで発泡状態で10〜8Phの弱アルカリ性を保ち、2〜3分前後で中和中性、3分以降弱酸性となり5分間の洗髪・洗浄時間内での理想的な中和反応となる。
【0027】
従い、上記した混合率の組み合せは、2分〜最大10分の合理的反応時間を調整可能で、洗髪・洗浄を目的とした洗浄剤として合理的と言える時間内での中和・変性を可能とする唯一の混合率帯となる。上記混合率を以って毛髪・頭皮洗浄剤とする場合以外には、洗浄剤として合理的なアルカリから酸性への中和・変性及び合理的な時間変移での中和・変性、又十分な炭酸ガス生成量を担保する事は困難である。
【0028】
なお、本発明が適用される洗浄成分としては、カリ石鹸系の洗浄成分を使用したものは、重曹・クエン酸等有機酸類との反応により洗浄成分の分解・劣化が起こり、不適当であるが、それ以外ならば制限を受けない。
【0029】
基本となる洗浄剤の主成分としては、ナトリウムアルキルエタノールサルフェート、脂肪酸椰子油ジエタノールアルミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、カルボキシメタルセルロース、ナトリウムトリポリフォスフェート等のアルキルスルホン酸塩系、ベタイン系両性洗浄剤系、カチオン系リンス剤があり、本発明においては、これに重炭酸ナトリウムとクエン酸等の有機酸をそれぞれ別に混合したものを使用時に併せて使用することにより、上記した効果を奏することができる。
【実施例1】
【0030】
A剤・B剤は、共に:オレフィン(C14−16)スルホン酸Na、ウラミドプロピルベタイン、クオタニウム−33主体とした。
【0031】
先ず、A剤とB剤を次の成分と混合比により調整した。
A剤:水・オレフィン(C14−16)スルホン酸Na11.1wt%、ウラミドプロピルベタイン2.1wt%、クオタニウム1.3wt%、BG0.6wt%、フェノキシエタノール0.5wt%
B剤:水・オレフィン(C14−16)スルホン酸Na3.7wt%、ウラミドプロピルベタイン9wt%、クオタニウム−336.5wt%、BG3wt%、フェノキシエタノール0.5wt%
【0032】
このA剤とB剤200mlに常温下でA剤には重炭酸ナトリウム7wt%、B剤にはクエン酸10wt%を攪拌混合して本発明に係る洗浄剤を得た。
但し、重炭酸ナトリウムを事前に混合してしまうと水分に反応を起こして経時的劣化が起るため、重炭酸ナトリウムのみを別包で用意し、使用する直前に投入してハンドシェイクで攪拌混合して使用する。
【0033】
上記して得たA剤B剤を例えば図1に示す2液2、3分離型の容器1内に充填しておき、1回のポンプ4の操作でA剤とB剤を10gずつ合計20gを手にとり、普通の方法で毛髪の洗浄を行いながら、経時的なPhの変化をPh試験紙を用いて測定した。図中5、6の符号はA剤2とB剤3を夫々吸引するポンプ4の吸引パイプを示し、この2本の吸引パイプから吸い上げたものをポンプ4で混合し、ノズル7から吐出させることができる。
その結果を示すと次のとおりである。
0分:赤‐青で弱アルカリ性
1分:赤‐青で弱アルカリ性
2分:赤‐青で弱アルカリ性
3分:青‐赤で弱酸性
4分:青‐赤で弱酸性
5分:青‐赤で弱酸性
【0034】
上記経時的なPhの変化において発生する炭酸ガス量は1,000ppm以上であった。この結果、始めに毛髪と頭皮を汚れ良く落とし、後半では毛髪にしなやかさとツヤを出し、頭皮については炭酸ガスを経皮的に吸収して皮下血流を良くして健康化を図ることができた。なお、図1の容器1において、A剤とB剤の混合比(吸引比)を変えたい場合には、吸引パイプ5,6の断面比を変えることにより可能である。あるいは、A剤とB剤を別々の容器に充填しておき、使う時にそれぞれの容器から手にとるようにしても良い。
【実施例2】
【0035】
・A剤とB剤は実施例1と同じ
・重炭酸ナトリウム・・・15wt%
・クエン酸等有機酸類・・・20wt%
・炭酸ガスの発生量・・・1,200ppm
混合方法及び使用方法は実施例1と同じ方法で洗髪を行ったところ、効果の違いは認められなかった。
【実施例3】
【0036】
・A剤とB剤は実施例1と同じ
・重炭酸ナトリウム・・・3wt%
・クエン酸等有機酸類・・・5.8wt%
・炭酸ガスの発生量・・・950ppm
混合方法及び使用方法は実施例1と同じで洗髪を行ったところ、多少の効果の低下は認められたが、実用的には問題とはならなかった。
【比較例1】
【0037】
・A剤とB剤は実施例1と同じ
・重炭酸ナトリウム・・・16wt%以上
・クエン酸等有機酸類・・・21wt%以上
・炭酸ガスの発生量・・・1,300ppm以上
混合方法及び使用方法は実施例1と同じで洗髪を行ったところ、洗浄開始から5分を経過しても弱酸性を示さず、時間内に中和しきる事がなかった。又、炭酸ガスの発生は十分だが中和不完全である事からアルカリ洗浄力が過多であり、この結果、頭皮過乾燥による頭皮の痛みがあった。
【比較例2】
【0038】
・A剤とB剤は実施例1と同じ
・重炭酸ナトリウム・・・2wt%以下
・クエン酸等有機酸類・・・5wt%以下
・炭酸ガスの発生量・・・900ppm以下
混合方法及び使用方法は実施例1と同じで洗髪を行ったところ、洗浄開始時から終了時まで弱酸性を示し、アルカリ性状の洗浄効果は認められず炭酸ガスの発生量も少なく、本発明の目的を達成するには十分な効果を得ることはできなかった。
【産業上の利用分析】
【0039】
・毛髪及び頭皮の洗浄と頭皮の健康増進。
・ペット用シャンプー
・身体の洗浄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、オレフィンスルホン酸Na、ウラミドプロピルベタイン、クオタニウム、フェノキシエタノールを主剤としてA剤とB剤を調整し、
前記A剤には使用時に別包の重炭酸ナトリウムを混合し、
前記B剤にはあらかじめ有機酸類を混合しておき、
洗髪時に前記重炭酸ナトリウムを混合したA剤と有機酸類を混合したB剤を手にとって洗髪を行うことにより、洗髪開始前半は弱アルカリ性に、その後重炭酸ナトリウムと有機酸類の中和反応により炭酸ガスを発生させ、併せて、洗髪の後半には弱酸性に経時変化させて、毛髪と頭皮の洗浄及び毛髪につやとしなやかさを与え、加えて頭皮には炭酸ガスを経皮吸収させてその皮下血流を促進させ、これにより頭皮の健康化を図る毛髪及び頭皮洗浄剤。
【請求項2】
請求項1において、A剤に対して混合する重炭酸ナトリウムの量をA剤の3〜15重量%に、B剤に混合する有機酸類の量をB剤の5.8〜20重量%に設定して成る請求項1に記載の毛髪及び頭皮洗浄剤。
【請求項3】
請求項1において用いられる有機酸類は、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、グリコール酸の中から選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の毛髪及び頭皮洗浄剤。




【図1】
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【公開番号】特開2011−1282(P2011−1282A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144366(P2009−144366)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(509038393)
【Fターム(参考)】