説明

毛髪損傷診断方法および毛髪損傷診断用キット

【課題】毛髪を採取してから比較的短時間に毛髪損傷度合いを診断することができ、且つ特別な装置等を必要とせず、比較的簡便にしかも毛髪損傷度合いを正確に診断することのできる方法、およびそのための毛髪損傷診断用キットを提供する。
【解決手段】毛髪損傷診断用キットは、還元剤を含むアルカリ性毛髪浸漬溶液と、N−エチル−N−[4−[[4−[N−エチル−N−(3−ソジオスルホベンジル)アミノ]−2−メチルフェニル][4−[(4−エトキシフェニル)アミノ]フェニル]メチレン]−3−メチル−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−3−スルホナトベンゼンメタンアミニウムを含有する呈色液からなるものであり、こうした毛髪損傷診断用キットを用いて毛髪を処理することによって毛髪損傷度合いを正確に診断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアカラー処理やパーマネントウェーブ処理等の損傷を受けた毛髪の損傷程度を診断するために用いる毛髪損傷診断用キット、およびこのような毛髪損傷診断用キットを用いて毛髪の損傷を診断するための有用な方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪は、ヘアカラー処理やパーマネントウェーブ処理、紫外線照射等の化学的な因子だけでなく、ブラッシング等での物理的負荷等によって様々な損傷を受けている。理・美容現場では、毛髪損傷部位を施術する際、毛髪の更なる損傷を防ぐことが顧客の信頼を得るためにも非常に重要視されているのが現状である。
【0003】
これまでにも、毛髪の損傷を判定若しくは診断する方法については、各方面で様々な開発がなされている。こうした方法として、毛髪が損傷することで影響を受ける蛋白質を抗原抗体反応によって判定する方法(例えば、特許文献1)、赤外線スペクトルによりその構造変化を捉える方法(例えば、特許文献2)、コレステロール量を測定する方法(例えば、特許文献3)等が提案されている。しかしながら、これまで提案された各種方法は、理・美容施術中に実施することができないという欠点がある。即ち、顧客が理・美容室で施術を行っている際に、毛髪の損傷度合いを判定できないのが実情である。
【0004】
一方、特許文献4には、銅イオン(Cu2+)が毛髪から溶出した蛋白質により還元されて、第一銅塩(Cu+)になり、それがビシンコニン酸と錯体を形成し、紫色に呈色することを利用した毛髪損傷診断方法も開発されている。しかしながら、特許文献4の実施例ではその診断結果を得るために一定時間、60℃で加温する工程を含み、特殊な装置も必要であり、理・美容現場で即座に実施する方法としては煩雑であった。
【特許文献1】特開平06−265544号公報
【特許文献2】再表2005/096938号公報
【特許文献3】特開2001−264323号公報
【特許文献4】特開2002―107362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、毛髪の損傷度合いを判定若しくは診断する方法はこれまでにも様々な提案がなされているが、その簡便性に問題があり、理・美容現場で即座に実施することが困難であるというのが実情である。こうしたことから、顧客が理・美容室の滞在時間中に判定でき、且つ特殊な機器等をも要しない、簡便な毛髪損傷診断方法の確立が望まれている。
【0006】
本発明はこうした状況下でなされたものであり、その目的は、毛髪を採取してから比較的短時間に毛髪損傷度合いを診断することができ、且つ特別な装置等を必要とせず、比較的簡便にしかも毛髪損傷度合いを正確に診断することのできる方法、およびそのための毛髪損傷診断用キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成することのできた本発明の毛髪損傷診断用キットとは、還元剤を含むアルカリ性毛髪浸漬溶液と、N−エチル−N−[4−[[4−[N−エチル−N−(3−ソジオスルホベンジル)アミノ]−2−メチルフェニル][4−[(4−エトキシフェニル)アミノ]フェニル]メチレン]−3−メチル−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−3−スルホナトベンゼンメタンアミニウムを含有する呈色液からなる点に要旨を有するものである。
【0008】
本発明の毛髪損傷診断用キットにおいて、前記アルカリ性毛髪浸漬溶液としては、還元剤として、チオグリコール酸、システイン、システアミン、チオ乳酸、チオリンゴ酸若しくはこれらの塩類、チオグリセリンおよびラクトンチオールの少なくともいずれかを0.00001〜0.4モル/L含有するものであることが好ましい。また、前記呈色液としては、N−エチル−N−[4−[[4−[N−エチル−N−(3−ソジオスルホベンジル)アミノ]−2−メチルフェニル][4−[(4−エトキシフェニル)アミノ]フェニル]メチレン]−3−メチル−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−3−スルホナトベンゼンメタンアミニウムを0.0001〜1.0%(「質量%」の意味、以下同じ)含有するものが好ましい。
【0009】
上記のような本発明の毛髪損傷診断用キットを用いて毛髪の損傷を診断するに当たっては、還元剤とアルカリ剤を含む浸漬溶液(アルカリ性毛髪浸漬溶液)に毛髪を浸漬後、その浸漬液に、N−エチル−N−[4−[[4−[N−エチル−N−(3−ソジオスルホベンジル)アミノ]−2−メチルフェニル][4−[(4−エトキシフェニル)アミノ]フェニル]メチレン]−3−メチル−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−3−スルホナトベンゼンメタンアミニウムを含有する呈色液を滴下することによって浸漬液を青色に発色させ、その発色度合いによって毛髪の損傷度合いを診断することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、還元剤を含む特定のアルカリ性毛髪浸漬溶液に毛髪を浸漬し、その後、N−エチル−N−[4−[[4−[N−エチル−N−(3−ソジオスルホベンジル)アミノ]−2−メチルフェニル][4−[(4−エトキシフェニル)アミノ]フェニル]メチレン]−3−メチル−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−3−スルホナトベンゼンメタンアミニウムを含有する呈色液をその浸漬液に滴下することによって、浸漬液の発色した程度で毛髪の損傷度合いを比較的簡便にしかも正確に診断することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するために様々な角度から、特に毛髪を浸漬するための溶液、その溶液の濃度、呈色液、その呈色液の濃度、反応時間、およびその毛髪の損傷度合いを測定するための手段等について検討した。その結果、毛髪を浸漬するための溶液としては、還元剤を含むアルカリ性毛髪浸漬溶液とし、毛髪の損傷度合いを測定するための手段として、N−エチル−N−[4−[[4−[N−エチル−N−(3−ソジオスルホベンジル)アミノ]−2−メチルフェニル][4−[(4−エトキシフェニル)アミノ]フェニル]メチレン]−3−メチル−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−3−スルホナトベンゼンメタンアミニウムを含有する呈色液の組合せとすれば良いことを見出し、本発明を完成した。
【0012】
本発明の毛髪損傷診断用キットは、還元剤を含む特定のアルカリ性毛髪浸漬溶液と、上記のような成分を含む呈色液の組合せからなるものである。このうち、アルカリ性毛髪浸漬溶液に含まれる還元剤は、毛髪から蛋白質を溶出させるためのものである。還元剤によって、蛋白質が溶出される原理については、還元剤が毛髪蛋白質のS−S結合を切断し、不安定な蛋白質がアルカリ性毛髪浸漬溶液に溶出することを応用している。その際、反応を受ける毛髪が、傷んでいれば、還元剤が作用しやすいため蛋白質の溶出量が多くなると考えることができる。
【0013】
この還元剤としては、様々なチオール化合物(チオグリコール酸、システイン、システアミン、チオ乳酸、チオリンゴ酸若しくはそれらの塩類、チオグリセリンおよびラクトンチオールの少なくともいずれか)が使用できる。還元剤の含有量は、0.00001〜0.4モル/L(リットル)程度にすることが好ましい。還元剤の含有量が0.00001モル/L未満であれば、毛髪から溶出する蛋白質が呈色に必要な量に至らず、0.4モル/Lよりも多くなれば、呈色度合いが過度になり、損傷度合いを正確に診断することができなくなる。還元剤のより好ましい含有量は、0.001〜0.2モル/L程度である。尚、その他還元性を示す物質(例えば、グリセリルチオグリコレート、亜硫酸塩等)を使用する場合には、同モル濃度(0.00001〜0.4モル/L)であれば同様の効果が期待できる。
【0014】
アルカリ性毛髪浸漬溶液は、毛髪を膨潤させ還元剤を効率良く作用させるとの観点からアルカリ性とする必要があるが、そのためにはトリエタノールアミン、モノエタノールアミン、アンモニア、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等のアルカリ剤を含有させる必要があるが、これらに限定されない。また、その含有量は、アルカリ性にするために必要な量であれば良く、0.1〜10%程度である。
【0015】
上記のようなアルカリ性毛髪浸漬溶液に毛髪を浸漬した後には、その溶液(浸漬液)に所定の呈色液を滴下することによって、浸漬液が青色を呈し、その発色度合い(濃・淡)によって、毛髪の損傷度合いを診断することができる。
【0016】
本発明で用いる呈色液は、その必要成分として、N−エチル−N−[4−[[4−[N−エチル−N−(3−ソジオスルホベンジル)アミノ]−2−メチルフェニル][4−[(4−エトキシフェニル)アミノ]フェニル]メチレン]−3−メチル−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−3−スルホナトベンゼンメタンアミニウムを含有するものであるが、この成分は、溶出された蛋白質と反応して呈色するものである。
【0017】
呈色液中のN−エチル−N−[4−[[4−[N−エチル−N−(3−ソジオスルホベンジル)アミノ]−2−メチルフェニル][4−[(4−エトキシフェニル)アミノ]フェニル]メチレン]−3−メチル−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−3−スルホナトベンゼンメタンアミニウムの含有量は、0.0001〜1.0%程度であることが好ましい。この含有量が0.0001%未満であれば、毛髪から溶出した蛋白質を呈色させるに至らず、1.0%よりも多ければ、呈色度合いが過度になり、損傷度合いを診断することができなくなる。
【0018】
尚、呈色液中に含まれるN−エチル−N−[4−[[4−[N−エチル−N−(3−ソジオスルホベンジル)アミノ]−2−メチルフェニル][4−[(4−エトキシフェニル)アミノ]フェニル]メチレン]−3−メチル−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−3−スルホナトベンゼンメタンアミニウムは、下記の化学式を有するものであり、蛋白質の分析用試薬「クマシーブリリアントブルー」として一般的に市販されているものであり(例えば、ナカライテスク社製「CBB−R250」:商品名)、容易に入手することができる。以下では、上記成分を「クマシーブリリアントブルー」と呼ぶことがある。また、呈色液中には、溶媒としてのエタノールや、pH調整剤としてのリン酸等を含み得るものである。
【0019】
【化1】

【0020】
上記のようなアルカリ性毛髪浸漬溶液と呈色液からなる毛髪損傷診断用キットを用い、毛髪を診断することによって、比較的短時間に毛髪損傷度合いを診断することができ、且つ特別な装置等を必要とせず、比較的簡便にしかも毛髪損傷度合いを正確に診断することができることになる。
【0021】
本発明方法を実施するに当たって、呈色液を滴下するまでの還元剤を含むアルカリ性毛髪浸漬溶液と毛髪との反応時間については、1分以上、120分以下程度とすることが好ましい。反応時間が1分よりも短くなれば、毛髪中の蛋白質の溶出が不十分となり、いかなる溶液の濃度でも発色度合いを識別することが難しい呈色度合いとなり、120分よりも長くなれば、過度に蛋白質が溶出し、呈色度合いが過度になり判定し難いという事態を招くことになる。
【0022】
本発明方法を実施するときの反応温度に関しては、常温であれば、問題なく判定する事ができる。また、アルカリ性毛髪浸漬溶液、呈色液共に液状であることが望ましいが、ジェル状、クリーム状であっても、反応させることができる。但し、使用上の簡便性から判断して、液状であることが最も好ましい。
【実施例】
【0023】
次に、実施例によって本発明をより具体的に示すが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0024】
[実施例1]
下記表1〜5に示した各種アルカリ性毛髪浸漬溶液(処方例1〜32)5mL(ミリリットル)を入れた試験管内に、毛髪50mgを浸漬した。化学的処理(カラー処理、ブリーチ処理、パーマ処理等)を受けていない毛髪を浸漬した後、20分間放置し、0.01%の「クマシーブリリアントブルー」を含む水溶液(後記表6の処方例36)をマイクロピペットで100μL(マイクロリットル)滴下し、10分放置後の青色呈色度合いを、下記2通りの方法(判定方法1、2)で判定した。
【0025】
[判定方法1]
青色呈色度合いを専門のパネラー10名で以下の3段階(評価点:1〜3点)で官能評価し、その合計を求め下記の評価基準1で評価した。その結果を表1〜5に併記する。
3点…明らかに青色を呈した色味を確認できた。
2点…青色を呈した色味を確認できた、或は濃いが青色を呈した色味を確認できた。
1点…青色を呈した色味を確認できなかった、或は濃過ぎて青色を呈した色味を確認できなかった。
【0026】
[反応後の毛髪浸漬液の青色呈色度合いの評価基準1]
◎:26〜30点
○:21〜25点
△:16〜20点
×:10〜15点
【0027】
[判定方法2]
得られた反応後の溶液を分光光度計(島津製作所製:「UV−2550」商品名)に供し、それぞれの吸光度により判定した。尚、その際の測定は、波長595nmの光学濃度(O.D.値)にて分析した。その結果を下記表1〜5に併記する。
【0028】
[反応後の毛髪浸漬液の青色呈色度合いの評価基準2]
◎:O.D.値0.1〜1.0
○:O.D.値0.01〜0.1未満(またはO.D.値1.0超〜1.5)
△:O.D.値0.001〜0.01未満(またはO.D.値1.5超)
×:O.D.値0.001未満
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
【表4】

【0033】
【表5】

【0034】
この結果から、次のように考察できる。即ち、還元剤を所定量含有させたもの(処方例2〜8、10〜32)であれば、識別可能であることが分かる。また上記評価基準1では、青色呈色度合いが薄いものおよび青色呈色度合いが濃くて判定し難いものを選択肢から外すことができ、評価基準2では、夫々の範囲を厳密に規定することができる。
【0035】
[実施例2]
前記表1の処方例6に示したアルカリ性毛髪浸漬溶液5mLを入れた試験管内に、毛髪50mgを浸漬した。化学的処理(カラー処理、ブリーチ処理、パーマ処理等)を受けてない毛髪を浸漬した後、20分間放置し、下記表6に示した「クマシーブリリアントブルー」の含有量が違う水溶液(処方例33〜39)をマイクロピペットで100μL滴下し、10分放置後の青色呈色度合いを、上記と同様の方法(評価基準1、2)で判定した。その結果を下記表6に併記するが、処方例34〜38であれば対応可能であることが分かる。
【0036】
【表6】

【0037】
[実施例3]
前記表1の処方例6に示したアルカリ性毛髪浸漬溶液5mLを入れた試験管内に、毛髪50mgを浸漬した。化学的処理(カラー処理、ブリーチ処理、パーマ処理等)を受けてない毛髪を浸漬した後、各時間(反応時間)放置した後、前記表6の処方例36に示した水溶液(呈色液)をマイクロピペットで100μL滴下し、10分間放置した後の青色呈色度合いを、実施例1、2と同様にして判定した(実験No.1〜10)。その結果を下記表7に示すが、実験No.2〜8(即ち、反応時間1〜120分程度)であれば、問題なく処理できることが分かる。
【0038】
【表7】

【0039】
[比較例1]
試薬A(ビシンコニン酸ナトリウム1.0%、炭酸ナトリウム1.7%、酒石酸ナトリウム0.16%、水酸化ナトリウム0.4%、炭酸水素ナトリウム0.95%の水溶液)と試薬B(硫酸銅2.6%水溶液)をA:B=50:1で混合し、pH12.5の判定試薬を調製した。この判定試薬5mL中に毛髪50mgを浸漬させ、経過時間(分)ごとにおける損傷程度を呈色(紫色)度合いにより判断した。上記判定方法1により、これらの判定を行なった(実験No.11〜20)。その結果を下記表8に示すが、判定するまでに長時間(即ち、反応時間240分)を要することが分かる。
【0040】
【表8】

【0041】
[実施例4]
様々な処理(カラー処理、ブリーチ処理、パーマ処理)を施した毛髪の損傷度合いを確認した。前記表1の処方例6に示したアルカリ性毛髪浸漬溶液5mLを入れた試験管内に、各種処理をした毛髪50mgを浸漬した。毛髪を浸漬した後、20分間放置し、前記表6の処方例36に示した水溶液(呈色液)をマイクロピペットで100μL滴下し、10分放置した後の青色呈色度合いを、下記2通りの方法(判定方法3、4)で判定した(実験No.21〜27)。尚、下記の判定方法3、4においては、D→C→B→Aになるにつれて毛髪の損傷度合いが大きいことを示している。また、このときの毛髪の処理条件は、下記の通りである。
【0042】
[カラー処理]
キャラデコグラウトーンアップハイ(中野製薬株式会社製)とグラウオキサイド06(過酸化水素系酸化剤:中野製薬株式会社製)を1:2(質量比)となるように混合したカラー剤を毛髪に質量比1:1の割合で塗布し、30℃、30分間の条件で処理した後、10質量%のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)溶液によって洗浄し乾燥した。
【0043】
[ブリーチ処理]
トーナーブリーチパウダーEX(粉末ブリーチ剤:中野製薬株式会社製)とキャラデコオキサイドEX06(過酸化水素系酸化剤:中野製薬株式会社製)を1:3(質量比)となるように混合したブリーチ剤を毛髪に質量比1:1の割合で塗布し、30℃、30分間の条件で処理した後、10質量%のSDS溶液によって洗浄し乾燥した。
【0044】
[パーマ処理]
カールエックスチオポジットノーマル第1剤(チオグリコール酸系パーマ第1剤:中野製薬株式会社製)を毛髪に質量比1:1になるように塗布し、40℃、15分間放置した。次いで、毛髪を水洗後、カールエックスチオポジットノーマル第2剤(臭素酸ナトリウム系パーマ第2剤:中野製薬株式会社製)を毛髪に質量比1:1になるように塗布し、30℃、10分間放置し、洗浄後、乾燥した。
【0045】
[判定方法3]
青色呈色度合いを専門のパネラー10名で以下の3段階(評価点:1〜3点)で官能評価し、その合計を求め下記の評価基準で評価した。その結果を、各処理の回数と共に下記表9に示す。
3点…明らかに青色を呈した色味を確認できた。
2点…青色を呈した色味を確認できた。
1点…青色を呈した色味を確認できなかった。
【0046】
[反応後の毛髪浸漬液の青色呈色度合いの評価基準3]
A:26〜30点
B:21〜25点
C:16〜20点
D:10〜15点
【0047】
[判定方法4]
得られた反応後の溶液を分光光度計(島津製作所製:「UV−2550」商品名)に供し、それぞれの吸光度により判定した。尚、その際の測定は、波長595nmの光学濃度(O.D.値)にて分析した。その結果を、各処理の回数と共に下記表9に示す。
【0048】
[反応後の毛髪浸漬液の青色呈色度合いの評価基準4]
A:O.D.値0.8以上
B:O.D.値0.5以上、0.8未満
C:O.D.値0.1以上、0.5未満
D:O.D.値0.1未満
【0049】
【表9】

【0050】
この結果から明らかなように、各種毛髪処理(カラー処理、ブリーチ処理、パーマ処理)、およびその回数によって程度の差はあるものの、毛髪の損傷度合いを簡便に且つ正確に評価できることが分かる。実験No.21〜23の呈色状態を図1(図面代用写真)に示す。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実験No.21〜23の呈色状態を示す図面代用写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元剤を含むアルカリ性毛髪浸漬溶液と、N−エチル−N−[4−[[4−[N−エチル−N−(3−ソジオスルホベンジル)アミノ]−2−メチルフェニル][4−[(4−エトキシフェニル)アミノ]フェニル]メチレン]−3−メチル−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−3−スルホナトベンゼンメタンアミニウムを含有する呈色液からなることを特徴とする毛髪損傷診断用キット。
【請求項2】
前記アルカリ性毛髪浸漬溶液は、還元剤として、チオグリコール酸、システイン、システアミン、チオ乳酸、チオリンゴ酸若しくはこれらの塩類、チオグリセリンおよびラクトンチオールの少なくともいずれかを0.00001〜0.4モル/L含有するものである請求項1に記載の毛髪損傷診断用キット。
【請求項3】
前記呈色液は、N−エチル−N−[4−[[4−[N−エチル−N−(3−ソジオスルホベンジル)アミノ]−2−メチルフェニル][4−[(4−エトキシフェニル)アミノ]フェニル]メチレン]−3−メチル−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−3−スルホナトベンゼンメタンアミニウムを0.0001〜1.0%(「質量%」の意味、以下同じ)含有するものである請求項1または2に記載の毛髪損傷診断用キット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の毛髪損傷診断用キットを用いて毛髪の損傷を診断するに当り、前記アルカリ性毛髪浸漬溶液に毛髪を浸漬した後、その浸漬液に前記呈色液を滴下することによって浸漬液を青色に発色させ、その発色度合いで毛髪の損傷度合いを診断することを特徴とする毛髪損傷診断方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−78503(P2010−78503A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248491(P2008−248491)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000213482)中野製薬株式会社 (57)
【Fターム(参考)】