説明

毛髪用化粧料

【課題】従来の二浴式パーマネントウェーブやストレートセットや縮毛矯正および、一浴式パーマネントウェーブやストレートセットや縮毛矯正の欠点を改良しようとするものであり、毛髪の損傷を抑制すると同時に、施術者と被施術者に対する施術時におけるメルカプタン臭による不快感と施術後毛髪の不快臭を抑える。さらに従来の工程を簡素化し、施術時間を短縮して施術者の苦痛を緩和することができる、改良された形状変形・感触改善効果を有する毛髪化粧料の提供。
【解決手段】 天然または合成起源の有機もしくは無機の1種または2種以上のタンニン;ならびに亜硫酸塩およびメルカプタン系還元剤よりなる群から選択される、毛髪中のケラチン分子間相互間ジスルフィド結合を開裂する1種または2種以上の還元剤を含む、pH6〜10を有する毛髪化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、理美容室等で毛髪にウェーブまたは、ストレートや縮毛矯正をかける際およびホームケアでくせ毛や寝癖直し等に使用される毛髪用化粧料に関する。より詳しくは、本発明は、還元剤およびタンニンが同時に配合され、それらの使用に際して、毛髪への損傷を少なくし、短時間で簡便に繊維、毛髪等の結合変換による形状変形や感触改善効果を有する毛髪用化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、髪の形状変換、ウェーブセットやストレート等については、毛髪中に存在するアミノ酸同士の水素結合、塩結合、ジスルフィド結合、ペプチド結合のごとき種々の結合を切断し再結合することが一般的であり、中でも毛髪のウェーブを持続するためにはジスルフィド結合を化学的に切断・再結合することが有効であることが知られている。
【0003】
ジスルフィド結合の切断には、還元剤としてチオグリコール酸、システイン、アセチルシステイン、システアミン、チオグリセリン、チオ乳酸、ブチロラクトンチオールまたは、その塩類等の還元剤を主剤とする第1剤が使用され、毛髪中のケラチンのジスルフィド結合(−S−S−)を部分的に還元切断し軟化させた後に、臭素酸塩、過酸化水素水等の酸化力の強い酸化剤を主剤とする第2剤で、切断されたジスルフィド結合を再結合させて毛髪を形状変化させ、ウェーブやストレートが形成される。
【0004】
具体的には、パーマプロセスでは、毛髪を水で軽く湿らせロット等に巻き付けた状態で、還元剤を配合した第1剤を作用させると、ジスルフィド結合が切断されて毛髪もロットの形状に沿う。その後、酸化剤を配合した第2剤で酸化すると、ロットの形状のままジスルフィド結合が再結合されてその形状を保持する技術が実用化されている(特許文献1)。
【0005】
また、基本的には同一の原理で還元剤と酸化剤を用い、毛髪を真っ直ぐに伸ばす際に櫛またはコテ等を用いて物理的な力を加え、くせ毛のストレートセットや縮毛矯正等も実用化されている。
【0006】
しかしながら、上記のようなパーマネントウェーブやストレートセットや縮毛矯正等の処理を繰り返すと、還元剤や酸化剤による強い化学作用によって、毛髪中のペプチド等が流出し、さらには毛髪組織や微細構造の損傷や変性により、毛髪の弾性や強度等を劣化させる要因となる場合が多分にある。
【0007】
加えて、第1剤の還元剤反応後にシャンプー台で中間水洗した後に、さらに第2剤の酸化剤を塗布し10〜15分放置することは被施術者にとって大きな苦痛を伴うことでもある。
【0008】
これに対して、第2剤を必要としない亜硫酸塩等を含有する一浴式パーマ剤が提案されているが(特許文献2)、これは第1剤処理後に毛髪をロットに巻いた状態で中間水洗をして、十分に第1剤を洗い流し、さらに毛髪をロットに巻いたまま、10〜20分間自然放置して、空気による酸化を行う必要があり二浴式の問題点は何ら改善させていない。さらに、その空気酸化が不十分なため毛髪の損傷が大きくなるという欠点がある。
【0009】
また、臭気の強い高濃度のメルカプタン系の還元剤を主剤とする現行のパーマネントウェーブやストレートセットや縮毛矯正は、香料等で不快臭をマスキングするよう工夫しているが、不快臭のマスキング力は依然不十分である。
【0010】
なお、パーマ液第1剤にタンニン酸、タンニン化合物を1種もしくは2種以上用い、第2剤には過酸化物等の酸化剤、さらに発色助剤として鉄化合物を用いて、パーマ処理と同時に染毛処理を行うことができる方法が開示されている(特許文献3)が、短時間かつ容易な操作ではなく、毛髪の損傷を抑制するための本質的な解決策ではない。
【0011】
また、本出願人らは、先にpH8〜10のアルカリ性領域で低分子化させ、亜硫酸塩による還元作用でさらに活性化させたタンニンを主剤とするタンニン架橋剤で、毛髪内部のポリペプチド鎖間にタンニン架橋結合の3次元網目構造を多数生成させることにより毛髪のウェーブセットや、くせ毛のストレートセットや、縮毛の矯正等をすることができる毛髪セット処理剤を提供した。これは、前記課題を達成するものであったが、より広範囲のpHにおいても毛髪のウェーブセットや、くせ毛のストレートセット、縮毛の矯正等をすることができる毛髪化粧料の検討を重ねた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−78226号公報
【特許文献2】特開2000−229819号公報
【特許文献3】特開平6−321740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものである。すなわち、かかる従来の二浴式パーマネントウェーブやストレートセットや縮毛矯正および、一浴式パーマネントウェーブやストレートセットや縮毛矯正の欠点を改良しようとするものであり、毛髪の損傷を抑制すると同時に、施術者と被施術者に対する施術時におけるメルカプタン臭による不快感と施術後毛髪の不快臭を抑える。さらに従来の工程を簡素化し、施術時間を短縮して施術者の苦痛を緩和することができる、改良された形状変形・感触改善効果を有する毛髪化粧料を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、pH6〜10の範囲で、毛髪中のケラチン分子相互間のジスルフィド結合を還元作用で切断する還元剤と、無臭で安全に安心して使用できるタンニンを同時に用いて、還元剤存在下で毛髪中のポリペプチド鎖間にジスルフィド結合に代わるタンニン架橋結合を生成することにより、髪のウェーブセットや毛髪内部の歪を開裂して、くせ毛のストレートセットや縮毛矯正等を簡便な操作で、容易に再結合しかつ、毛髪の損傷を抑えることを可能にする特徴を有し、毛髪形状変形および感触改善効果のある毛髪化粧料を用いることによって達成できることを見出した。すなわち、本発明は以下に示すとおりの毛髪化粧料に関する。
【0015】
項1.天然または合成起源の有機もしくは無機の1種または2種以上のタンニン;ならびに亜硫酸塩およびメルカプタン系還元剤よりなる群から選択される、毛髪中のケラチン分子間相互間ジスルフィド結合を開裂する1種または2種以上の還元剤を含む、pH6〜10を有する毛髪化粧料。
項2.さらに、尿素、炭酸グアニジン、乳酸ナトリウムおよびサリチル酸よりなる群から選択される少なくも1種を水素結合または塩結合の開鎖促進成分として含む項1に記載の毛髪化粧料。
項3.さらに、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびベンジルアルコールよりなる群から選択される少なくも1種の1価アルコールおよび/またはグリセリン、1,3−BG、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびヘキシレングリコールよりなる群から選択される少なくも1種の多価アルコールを有機溶媒として含む項1または2に記載の毛髪化粧料。
項4.タンニンの架橋効果を高めるために、毛髪に塗布後、処理温度30〜60℃の温度範囲で、10〜30分間加温処理することを特徴とする、項1〜3のいずれかに記載の毛髪化粧料。
項5.さらに、酸性、塩基性およびHC染料よりなる群から選択される少なくも1種の直接染料を含む項1〜4のいずれかに記載の毛髪化粧料。
項6.タンニンとして縮合型タンニンを含む項1〜5のいずれかに記載の毛髪化粧料。
項7.還元剤が亜硫酸塩単独であって毛髪料化粧料がpH6〜8を有するか、または還元剤が亜硫酸塩とメルカプタン系還元剤との組合せであって毛髪料化粧料がpH6〜10を有する項1〜6のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【発明の効果】
【0016】
本発明の毛髪用化粧料は、理美容室等で毛髪にウェーブまたはストレートや縮毛矯正、ホームケアでくせ毛や寝癖直し等を行う場合に、還元剤およびタンニンを1剤中で同時に配合することにより、毛髪への損傷が少なく、短時間で簡便に繊維、毛髪等の結合変換による形状変形や感触改善効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、実施例を参照しつつ本発明を詳しく説明する。
本発明は、天然または合成起源の有機もしくは無機の1種または2種以上のタンニンと、亜硫酸塩および亜硫酸塩とメルカプタン系還元剤との組合せよりなる群から選択される、毛髪中のケラチン分子間相互間ジスルフィド結合を開裂する1種または2種以上の還元剤とを含む、pH6〜10を有する毛髪化粧料を提供する。
【0018】
本発明に用いるタンニンには、天然および合成起源のいずれの有機または無機の加水分解型タンニンや縮合型タンニンも含まれ、特に限定するものではないが、天然物では一般的に植物原材料からタンニンと同時に抽出される非タンニン分も含み得る。本発明の毛髪化粧料には、従来公知のタンニンに特に制限されることなく、1種または2種以上のタンニンを組み合わせて適宜用いることができる。特にカテコール系の縮合型タンニンを用いることが好ましい。
一般的に損傷毛には、分子量の大きいカテコール系縮合型タンニンを用いる場合、毛髪のケラチン分子のバラツキやポリペプチド鎖隔隙が拡張されているので、タンニン架橋結合の3次元網目構造の生成が有利になり架橋効果が有効に作用する。
【0019】
縮合型タンニンとして、ケブラチョタンニン、ワットルタンニン、緑茶タンニン、マングローブタンニン、ガンビアタンニン、柿渋タンニン等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて適宜用いることができる。柿渋タンニン、ワットルタンニン、ケブラチョタンニンおよび緑茶タンニンが好ましく、より好ましくは、ケブラチョタンニンおよび緑茶タンニンである。
【0020】
また、毛髪は、毛先部分、中間部、根本新生部分の部位により損傷の度合いが異なるため、分子量の大きいカテコール系縮合型タンニンを中心に、分子量の小さいピロガロール系の加水分解型タンニンを混合したものを用い、それらの全部位に対応させて処方することにより優れたセット効果やストレート効果を発揮する。
加水分解型タンニンとして、五倍子タンニン、没食子タンニン、チェスナットタンニン、ミロバランタンニン、オークタンニン等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて適宜用いることができる。没食子タンニン、ミロバランタンニン、五倍子タンニンおよびチェスナットタンニンが好ましく、より好ましくは、五倍子タンニンおよびチェスナットタンニンである。
【0021】
上記タンニンの濃度は特に限定しないが、毛髪用化粧料の全質量に対して0.001〜10質量%が好ましい、さらに0.05〜5質量%がより好ましい。タンニンの含有量が0.001質量%より少ない場合はその効果は、十分に発現させることができなくなる恐れがあり、また反面含有量が10質量%より多い場合は、髪がきしむ、またはごわつく等の感触の悪化やクリーム状、ローション状等の剤型が得られなく、その効果が低下する恐れがあり好ましくない。なお、本願明細書において、含量につき単に「%」と表記する場合も「質量%」を意味する。
【0022】
また、毛髪へのタンニンの結合量は、タンニン濃度が増すと一般的に浸透力が増加するが、結合力の強い縮合型タンニンでは、一定濃度以上になるとタンニン分子が集合状態となり、逆に低下する恐れのあることも確認された。
【0023】
本発明に用いられる還元剤には、亜硫酸塩、メルカブタン系還元剤等のウェーブまたは、ストレートや縮毛矯正等の当該技術分野において使用される、毛髪中のケラチン分子間相互間ジスルフィド結合を開裂するいずれの還元剤も含まれるが、亜硫酸塩単独での使用および、亜硫酸塩とメルカブタン系還元剤の組合せが好ましい。本発明の毛髪化粧料には、従来公知の還元剤に特に制限されることなく、1種または2種以上を組み合わせて適宜用いることができる。亜硫酸塩類の配合量は、毛髪用化粧料の全質量に対して1〜9質量%の範囲にある。1質量%未満では還元力が十分でなく、9質量%を超えると毛髪の損傷が大きいため好ましくない。
メルカプタン系還元剤には、チオグリコール酸、システイン、アセチルシステイン、システアミン、チオグリセリン、チオ乳酸、ブチロラクトンチオールまたはその塩の1種もしくは2種以上の混合物を用いる。これらメルカプタン系還元剤の配合量は、毛髪用化粧料の全質量に対して0.1〜5質量%である。0.1質量%未満では還元力が十分でなく、5質量%を超えると毛髪の損傷が大きく、不快臭も強い。
【0024】
また、水素結合および塩結合の開鎖促進成分として、尿素、炭酸グアニジン、乳酸ナトリウム、サリチル酸等より選ばれる、少なくとも1種を含有することが好ましい。本発明の毛髪化粧料には、従来公知の開鎖促進成分に特に制限されることなく、1種または2種以上を組み合わせて適宜用いることができる。水素結合開鎖促進成分の配合量は、毛髪用化粧料の全質量に対して0.1〜3質量%である。0.1質量%未満では水素結合または塩結合の開鎖が不十分であり、3質量%を超えても効果の向上がない。
【0025】
本発明の毛髪用化粧料は、pH調整成分として、アルカリ剤を添加することにより、pH6〜10の範囲、より好ましくは、pH6〜8に調整される。pH6未満の場合、毛髪の膨潤が少なくかつ、還元剤の活性が低くなり、pH10を超えると、毛髪への損傷が大きくなり好ましくない。
【0026】
アルカリ剤としては、特に限定されることはないが、アンモニア水、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、L−アルギニン等、その他の無機のアルカリ性物質やアミン類等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を組み合わせて添加し、被施術者の毛髪および頭皮への刺激を低減する観点より、毛髪用化粧料をpH6〜10に調整することが好ましく、より好ましくは、pH6〜8、さらにより好ましくはpH6以上8未満に調整される。
【0027】
また、本願発明の毛髪用化粧料において、毛髪へのウェーブまたはストレートや縮毛矯正と同時に、染毛処理を行うための直接染料を添加してもよい。直接染料には、酸性染料、塩基性染料およびHC染料が含まれる。本発明の毛髪化粧料には、従来公知の直接染料に特に制限されることなく、1種または2種以上を組み合わせて適宜用いることができる。直接染料の配合量は、毛髪用化粧料の全質量に対して0.0001〜10質量%である。0.0001質量%未満では毛髪への染色力が不十分であり、10質量%を超えると染色効果の向上がなく、剤型の安定性が得られなくなるため好ましくない。
【0028】
また、本発明における上記タンニンには、毛髪内部への浸透性を高めるために、陰イオン界面活性剤や非イオン界面活性剤等の浸透剤を配合してもよい。
さらに溶解性、浸透性を高めるために、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびベンジルアルコールのよりなる群から選択される少なくも1種の1価アルコールや、グリセリン、1,3−BG、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびヘキシレングリコールよりなる群から選択される少なくも1種の多価アルコール等の極性有機溶媒や水を用いてもよく、これらは単独もしくは2種以上を混合して配合してもよい。特に、ヒドロキシル基を有するアルコールが好ましく、より好ましくはエタノールに代表される1価の低級アルコールである。
【0029】
本発明の組成物の毛髪用化粧料は、また通常化粧品等に用いられる成分で効果を妨げない範囲において、必要に応じて他の成分、例えば保湿剤、収斂剤、清涼剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、カチオン性、アニオン性、両性、または非イオン性等の高分子ポリマー剤、液体油脂、固体油脂ロウ類、エステル油、炭化水素油、高級アルコール、ステロール油、増粘剤、ゲル化剤、フッ素化合物、シリコーン類、pH安定剤、キレート剤、抗炎症剤、植物抽出エキス、タンパク質加水分解物、アミノ酸、溶剤、アルコール類、有機酸類、粉末成分、防腐剤、色剤、水、香料等を必要に応じて適宜添加、配合することができ、これらに限定されるものではない。
【0030】
また、上記毛髪用化粧料の形態は、様々な形態で調製可能で特に限定されるものではないが、例えばクリーム状、ローション状、ジェル状、ペースト状、粉末状、固形状、泡状、スプレー状等であり、泡状にするには、主としてLPG、DME、ヘキサン等の噴射剤を配合し、またノンガスの泡状タイプとしてもよい。
【0031】
本発明の毛髪用化粧料は、パーマネントウェーブやストレートセットや縮毛矯正等を目的として使用する場合、毛髪への塗布後、タンニンの架橋効果を高めるために処理温度30〜60℃の温度範囲で、10〜30分間加温処理される。
【0032】
本発明の毛髪用化粧料をパーマネントウェーブ剤として使用するにあたっては、本剤を毛髪に塗布後に毛髪をロットに巻き付け、加温温度を30〜60℃、好ましくは40〜50℃として加温する。30℃以下では、時間がかかりすぎ十分な効果を得づらく、60℃以上では毛髪の損傷が大きく、感触が悪くなる傾向にある。なお、加温方法は特に限定されないが、加温処理時間中、パーマネントウェーブ処理に用いられるスチーマ一等を用いて、水蒸気雰囲気中で作用させることが好ましい。さらに処理時間は、毛髪の性状や状態により異なるが、40〜50℃では15〜30分の処理時間を必要とする。処理温度を50〜55℃に高めると成分の浸透速度や反応速度が高まり、処理時間は10〜20分に短縮することも可能である。
【0033】
また、ストレートセットや縮毛矯正として使用するにあたっては、本発明の毛髪用化粧料を毛髪に塗布後、櫛等を用いて物理的な力を加えることで毛髪をストレートな状態にし、加温温度を30〜60℃、好ましくは40〜50℃として加温する。30℃以下では、時間がかかりすぎ十分なストレート効果を得づらく、60℃以上では毛髪の損傷が大きく、感触が悪くなる傾向にある。
なお、加温方法は特に限定されないが、加温処理時間中、パーマネントウェーブ処理に用いられるスチーマ一等を用いて、水蒸気雰囲気中で作用させることが好ましい。さらに処理時間は、毛髪の性状や状態により異なるが、40〜50℃では15〜30分の処理時間を必要とする。処理温度を50〜55℃に高めると成分の浸透速度や反応速度が高まり、処理時間は10〜20分に短縮することも可能である。別法として、高温型ヘアアイロンを使う用法で使用されることも好ましい。
【0034】
さらに、くせ毛直しとして使用するにあたっては、本発明の毛髪用化粧料を毛髪に塗布後に、櫛やコテ等で梳かし伸ばした後、そのままの状態でしばらく放置する。
また、必要に応じてドライヤーでの乾燥や、ヘアアイロンを使用されることも好ましい。
【0035】
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
(タンニンまたはタンニン酸含有調製液)
実施例1では、モノエタノールアミンを用いpH9に調整した4質量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2質量%のカテコール系の縮合型タンニン(緑茶タンニン)を含有させた場合を示す。実施例2では化粧品用として許可されているタンニン中で最も汎用されている局方タンニン酸(五倍子タンニン)を含有させている。そしてこれと比較する比較例1では、タンニンを含有せず比較評価を実施した。なお、実施例1、実施例2および比較例1の調整液のpH は、各々8.9、8.8および9.1であった。
【0037】
【表1】

【0038】
評価試験方法および評価基準
A.ウェーブ効率試験
ヒト毛髪25本をキルビー法のウェーブ器具に巻き付け、これを調製液に20分間浸潰したのち取り出し、空容器に入れて容器のまま室温でさらに20分間放置する。次いで、この所定時間経過後に取り出し水洗する。かかる処理が完了した毛髪をウェーブ器具から取り外しウェーブ効率を測定する。
ウェーブ効率(%)=l00−{100×(b−a)/(c−a)}
a:ウェーブ器具の5つの棒間の総距離(cm)
b:毛髪に形成されたウェーブの5つの山の総距離(cm)
c:bを真直ぐにした時の距離
【0039】
B.ウェーブ保持率試験
前記ウェーブ効率試験でウェーブ効率を測定した毛髪に7.6gの荷重をかけ室内に吊るし下げ、1週間後にウェーブ効率を測定して、調製液処理後のウェーブ効率を100としてウェーブ保持率を算出する。
ウェーブ保持率(%)=処理後のウェーブ効率/処理前のウェーブ効率×100
【0040】
C.毛髪強度試験
前記ウェーブ効率試験でウェーブ効率を測定した毛髪を引っ張り試験機(カトーテック株式会社:KES−G1−SH)を用いて破断荷重を測定した。また、同時に精製水で処理した試験毛束の破断荷重を100%として毛髪強度を算出した。
毛髪強度(%)=ウェーブ効率試験毛破断荷重(g)/精製水処理毛破断荷重(g)×100
【0041】
D.弾力性付与効果
20代女性の健常な毛髪をラウリル硫酸ナトリウム0.5%水溶液(40℃)で3分間洗浄し、水道水(40℃)で2分間すすぎタオルドライする。さらに下記処方で調製したブリーチ液に30分間浸漬(室温)した後、水道水(40℃)で良くすすぎタオルドライし、自然乾燥して試験毛束を調製する。
ブリーチ液: 25%アンモニア水 4.0体積%水溶液 50.0体積%
+35%過酸化水素水 6.0体積%水溶液 50.0体積%
【0042】
調製した試験毛束を実施例1〜2または比較例1の各調製液に20分間浸潰したのち取り出し、空容器に入れて容器のまま室温で20分間放置する。次いで、この所定時間経過後に取り出し水洗する。
かかる処理が完了した毛束は、同時に精製水で処理した試験毛束を対照にして、20〜40代の男性パネラー10名、女性パネラー10名(合計20名)にて比較評価を行い、弾力性を下記評価基準により評価した。なお、評価結果はパネラー全員の平均値を示す。
【0043】
評価基準: +2:対照より弾力性が明らかに良好
+1:対照より弾力性がやや良好
0:対照と同じ
−1:対照より弾力性がやや劣る
−2:対照より弾力性が明らかに劣る
【0044】
上記処方により実施例1〜2および比較例1の各調製液を調製し、評価試験方法および評価基準の項に示すウェーブ効率、ウェーブ保持率、毛髪強度、弾性付与効果の各試験を実施した。結果を表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
表2に示すように実施例1および2はタンニンを含有していない比較例1に比べてウェーブ効率、ウェーブ保持率が優れていることを確認した。さらに実施例1および2は毛髪強度においても優れていることを確認した。
また、弾力性付与においても実施例1および2が、良好な弾力性付与効果を有することが判明した。
【0047】
(パーマネントウェーブ用調製液)
ケブラチョタンニンと緑茶タンニンの混合物(質量比で1:1)を用いて、実施例3〜6および比較例2〜3のパーマネントウェーブ用調製液(pH7.5〜8.0)を調製し、以下の評価試験方法および評価基準により調製液を評価した。処方および結果を表3に示す。
【0048】
評価試験方法および評価基準
A.ウェーブ効果
20代女性の健常な毛髪(長さ20cm)を束ねたものを試験毛束とし、毛束を微温湯で湿らせ、ロッド(直径1.5cm)を巻き付けた。この毛束を試験液に20分間浸潰した後取り出し、室温にて20分間放置する。時間経過後にロッドから外して水洗した後、自然乾燥させた。処理した毛束を目視にて観察し、ウェーブのかかり具合について、比較例2を対照として評価した。
評価基準: ◎:比較例2より明らかに良好
○:比較例2より良好
△:比較例2と同等
×:比較例2よりやや不良
××:比較例2より不良
【0049】
B.ウェーブの持続性
前記ウェーブ効果の評価で使用した毛束を1質量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液(40℃)に浸し、1時間放置した後、水洗し自然乾燥させた。処理前の毛束と処理後の毛束を目視にて比較しウェーブの持続性について、比較例2を対照として、前記ウェーブ効果と同様の評価基準により評価した。
【0050】
C.損傷度
上記の処理を行った毛束について、毛髪表面の状態を電子顕微鏡(JEOL:JSM5510LV)を用いて観察する。比較例2を対照としてキューティクルの浮き上がりや剥離の程度を損傷度として、比較例2を対照として、前記ウェーブ効果と同様の評価基準により評価した。
【0051】
D.仕上がり時の手触り感
前記ウェーブ効果の評価で使用した毛束の手触り感について評価を行った。
比較評価は、男性パネラー10名、女性パネラー10名(合計20名)にて行い、手触り感を下記評価基準により評価した。なお、評価結果はパネラー全員の平均値を示す。
評価基準: +2:対照より弾力性が明らかに良好
+1:対照より弾力性がやや良好
0:対照と同じ
−1:対照より弾力性がやや劣る
−2:対照より弾力性が明らかに劣る
【0052】
【表3】

【0053】
(ストレートセット用調製液)
緑茶タンニンと五倍子タンニンの混合物(質量比で1:1)を用いて、実施例7〜10、比較例4〜5のストレートセット用調製液(pH8.5〜9.0)を調製し、以下の評価試験方法および評価基準により調製液を評価した。処方および結果を表4に示す。
【0054】
評価試験方法および評価基準
A.ストレート効果
20代女性の健常な毛髪(長さ20cm)を束ねたものを試験毛束とし、毛束を微温湯で湿らせ、毛束の両端を固定しパネル上に固定した。この毛束を試験液に20分間浸漬した後取り出し、室温にて20分間放置する。時間経過後にパネルから外して水洗した後、自然乾燥させた。処理した毛束を目視にて観察し、ストレートのかかり具合について、比較例4を対照として評価した。
評価基準: ◎:比較例4より明らかに良好
○:比較例4より良好
△:比較例4と同等
×:比較例4よりやや不良
××:比較例4より不良
【0055】
B.ストレートの持続性
前記ストレート効果の評価で使用した毛束を1質量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液(40℃)に浸し、1時間放置した後、水洗し自然乾燥させた。処理前の毛束と処理後の毛束を目視にて比較しストレートの持続性について、比較例4を対照として、前記ストレート効果と同様の評価基準により評価した。
【0056】
C.損傷度
上記の処理を行った毛束について、毛髪表面の状態を電子顕微鏡(JEOL:JSM5510LV)を用いて観察する。比較例4を対照としてキューティクルの浮き上がりや剥離の程度を損傷度として、前記ストレート効果と同様の評価基準により評価した。
【0057】
D.仕上がり時の手触り感
前記ストレート効果の評価で使用した毛束の手触り感について評価を行った。
比較評価は、男性パネラー10名、女性パネラー10名(合計20名)にて行い、手触り感を下記評価基準により評価した。なお、評価結果はパネラー全員の平均値を示す。
評価基準: +2:対照より弾力性が明らかに良好
+1:対照より弾力性がやや良好
0:対照と同じ
−1:対照より弾力性がやや劣る
−2:対照より弾力性が明らかに劣る
【0058】
【表4】

【0059】
(くせ毛直し用調製液)
五倍子タンニンを用いて、実施例10〜14、比較例6〜7のくせ毛直し用調製液(pH6.0〜7.0)を調製し、以下の評価試験方法および評価基準により調製液を評価した。処方および結果を表5に示す。
【0060】
評価試験方法および評価基準
A.くせ毛直し効果
20代女性の健常な毛髪(長さ20cm)を束ねたものを試験毛束とし、毛束を微温湯で湿らせ、タオルドライした後に毛束全体に試験液を塗布し、櫛で梳かした後、自然乾燥させた。処理した毛束を目視にて観察し、くせ毛直しの具合について、比較例6を対照として評価した。
評価基準: ◎:比較例6より明らかに良好
○:比較例6より良好
△:比較例6と同等
×:比較例6よりやや不良
××:比較例6より不良
【0061】
B.くせ毛直しの持続性
前記くせ毛直し効果の評価で使用した毛束を1質量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液(40℃)に浸し、1時間放置した後、水洗し自然乾燥させた。処理前の毛束と処理後の毛束を目視にて比較し、くせ毛直しの持続性について、比較例6を対照として前記くせ毛直し効果と同様の評価基準により評価した。
【0062】
C.仕上がり時の手触り感
前記くせ毛直し効果の評価で使用した毛東の手触り感について評価を行った。
比較評価は、男性パネラー10名、女性パネラー10名(合計20名)にて行い、手触り感を下記評価基準により評価した。なお、評価結果の平均値を示す。
評価基準: +2:対照より弾力性が明らかに良好
+1:対照より弾力性がやや良好
0:対照と同じ
−1:対照より弾力性がやや劣る
−2:対照より弾力性が明らかに劣る
【0063】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明により、還元剤およびタンニンが同時に配合され、理美容室等で毛髪にウェーブまたはストレートや縮毛矯正、ホームケアでくせ毛や寝癖直し等を行う場合に、毛髪への損傷を少なく、短時間で簡便に繊維、毛髪等の結合変換による形状変形や感触改善効果を有する毛髪用化粧料を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然または合成起源の有機もしくは無機の1種または2種以上のタンニン;ならびに亜硫酸塩およびメルカプタン系還元剤よりなる群から選択される、毛髪中のケラチン分子間相互間ジスルフィド結合を開裂する1種または2種以上の還元剤を含む、pH6〜10を有する毛髪化粧料。
【請求項2】
さらに、尿素、炭酸グアニジン、乳酸ナトリウムおよびサリチル酸よりなる群から選択される少なくも1種を水素結合または塩結合の開鎖促進成分として含む請求項1記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
さらに、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびベンジルアルコールよりなる群から選択される少なくも1種の1価アルコールおよび/またはグリセリン、1,3−BG、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびヘキシレングリコールよりなる群から選択される少なくも1種の多価アルコールを有機溶媒として含む請求項1または2記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
タンニンの架橋効果を高めるために、毛髪に塗布後、処理温度30〜60℃の温度範囲で、10〜30分間加温処理することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
さらに、酸性、塩基性およびHC染料よりなる群から選択される少なくも1種の直接染料を含む請求項1〜4のいずれか1記載の毛髪化粧料。
【請求項6】
タンニンとして縮合型タンニンを含む請求項1〜5のいずれか1記載の毛髪化粧料。
【請求項7】
還元剤が亜硫酸塩単独であって毛髪料化粧料がpH6〜8を有するか、または還元剤が亜硫酸塩とメルカプタン系還元剤との組合せであって毛髪料化粧料がpH6〜10を有する請求項1〜6のいずれか1記載の毛髪化粧料。

【公開番号】特開2013−56836(P2013−56836A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195012(P2011−195012)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(507157894)株式会社JTS (2)
【Fターム(参考)】