説明

毛髪用組成物

【課題】 塗布時の感触に優れ、傷んだ髪の塗布時からすすぎ時、乾燥後まで優れたコンディショニング効果を示し、低刺激で良好な生分解性を有する毛髪用組成物を提供する。
【解決手段】
(A)
(A1)アミド基、エステル基、エーテル基又は水酸基で置換されていてもよい炭素数16〜40の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有する一級アミンに
(A2)エチレンオキサイドと
(A3)プロピレンオキサイドとを
(A4)A1成分1モルに対してA2及びA3成分をモル数で
0<A2<2 0<A3<2 かつ 0<A2+A3<2の特定の範囲内
で付加反応させて得られるN−ヒドロキシアルキルアミン化合物と
(B)無機酸及び炭素数1〜5の有機酸からなる群から選ばれる1種以上の酸からなる成分を含有する
ことを特徴とする毛髪用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪用組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、特に塗布時の感触に優れ、傷んだ髪の塗布時からすすぎ時、乾燥後まで優れたコンディショニング効果を示し、低刺激で良好な生分解性を有する毛髪用組成物
【背景技術】
【0002】
一般的に毛髪や頭皮の汚れや、過剰な皮脂を除去するためシャンプーで洗髪を行う。
【0003】
しかし、洗髪により、髪に必要な油分まで除去され保湿力が低下し、パサツキ感やゴワゴワ感が感じられる。また、外観上も艶がなく又は縮れた状態のままになることが多い。毛髪は更に乾燥すると静電気により櫛通りを悪化させ、ブラッシングによる物理的損傷により毛髪の損傷、枝毛、切れ毛が発生し易くなる。そこで一般的にはシャンプーで洗髪後、ヘアコンディショナー等の処理剤を使用してこのような問題を解決している。
【0004】
ヘアコンディショナー等の処理剤で毛髪にコンディショニング効果を付与する目的で一般的には、カチオン界面活性剤であるステアリルトリメチルアンモニウムクロライド(以後略称STAC)等が使用されている。しかし、STACを主成分とした場合、毛髪への吸着性が高いため毛髪に対する柔軟性は優れているものの、油剤や保湿剤の吸着性が弱く、乾燥後の感触が十分でない場合がある。また、STACは皮膚刺激が強く、生分解性も悪く環境面にも問題もある。
【0005】
一方、カチオン界面活性剤の代わりに最近ではアミドアミン化合物等を配合し、増粘性(ゲル形成性)と経時安定性に優れ、毛髪に充分な滑らか感、しっとり感、柔軟性、さらさら感、軽い仕上がり感を付与する毛髪処理剤組成物が、特許文献1及び特許文献2に提案されている。
【0006】
また、アミドアミン化合物と酸と特定のシリコーン誘導体と水を配合する透明なコンディショニング組成物が特許文献3に提案され、特許文献4には、アミドアミン化合物と酸と脂肪アルコール、脂肪酸、或いはそれらの誘導体と油性物質と水を配合するヘアコンディショニング組成物が提案されている。
【0007】
特許文献5には、ポリオキシアルキレンアルキルアミンと固体脂肪族化合物及びカチオン界面活性剤によるヘアケア組成物が提案されている。また3級アミン化合物の方が第4級アンモニウム塩と比較して低刺激で生分解性も良好である。しかし、パーマやカラーリング等で傷んだ髪に対してのコンディショニング効果は不十分で、依然STAC等、第4級アンモニウム塩の方が広く使用されているのが現状である。
【0008】
特許文献6には、ポリオキシアルキレンアルキルアミンから成る非イオン界面活性剤とアニオン性界面活性剤を含有する液体洗浄剤組成物が提案されているが、毛髪用組成物ついての記載は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−079947号公報
【特許文献2】特開昭62−051612号公報
【特許文献3】特開平07―002629号公報
【特許文献4】特表2000―501430号公報
【特許文献5】特表2003−5266522号公報
【特許文献6】特開2011−236397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、塗布時の感触に優れ、傷んだ髪の塗布時からすすぎ時、乾燥後まで優れたコンディショニング効果を示し、低刺激で良好な生分解性を有する毛髪用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するN−ヒドロキシアルキルアミン化合物と無機酸及び炭素数1〜5の有機酸からなる群から選ばれる1種以上の酸を配合した場合上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち本発明は、
(A)
(A1)アミド基、エステル基、エーテル基又は水酸基で置換されていてもよい炭素数16〜40の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有する一級アミンに
(A2)エチレンオキサイドと
(A3)プロピレンオキサイドとを
(A4)A1成分1モルに対してA2及びA3成分をモル数で
0<A2<2 0<A3<2 かつ 0<A2+A3<2の特定の範囲内
で付加反応させて得られるN−ヒドロキシアルキルアミン化合物と
(B)無機酸及び炭素数1〜5の有機酸からなる群から選ばれる1種以上の酸からなる成分を含有することを特徴とする毛髪用組成物に関する。
【0013】
より好ましくは、毛髪用組成物中に、(A)成分を0.1〜10質量%、(B)成分を(A)成分に対し、0.1〜10倍モル配合した毛髪用組成物に関する。
【0014】
さらに(C)成分として高級アルコールを毛髪用組成物全量中に、0.1〜15質量%を(D)成分として油性成分を0.1〜10質量%を含有する事が望ましい。
【0015】
また本発明毛髪用組成物は、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアミスト、又はヘアクリームの剤形で実施することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の毛髪用組成物は、塗布時の感触に優れ、傷んだ髪の塗布時からすすぎ時、乾燥後まで優れたコンディショニング効果を示し、低刺激で良好な生分解性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】製造例1で調製したN−ヒドロキシアルキルアミン化合物のH−NMRスペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
本発明毛髪用組成物の(A)成分である特定のN−ヒドロキシアルキルアミン化合物は、原料1級アミン(A1)にエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの所定量を触媒の存在下或いは無触媒で反応させることにより容易に入手することが出来る。
【0020】
原料1級アミン(A1)は、アミド基、エステル基、エーテル基又は水酸基で置換されていてもよい炭素数16〜40の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有する一級アミンである。特に炭素数18〜22のアルキル基を有する原料1級アミンが好ましい。
【0021】
炭素数が16未満の場合、得られる毛髪用組成物の粘度が低く、コンディショニング効果が弱いため好ましくなく、炭素数が40を超えた場合、親油性が高すぎ、融点も上昇しコンディショニング剤として好ましくない。
【0022】
原料1級アミン(A1)としては、パルミチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ベヘニルアミン等及びこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
原料1級アミン(A1)とアルキレンオキサイドとの縮合反応は、触媒は必ずしも必要ないが、触媒としては、アルカリ金属水酸化物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルアミン、ハイドロタルサイト、ソディウムメトキサイド、炭酸ナトリウム 炭酸カリウム等が挙げられる。
【0024】
エチレンオキサイド(A2)とプロピレンオキサイド(A3)の付加順は問わないが、原料1級アミン(A1)1モルに対してエチレンオキサイド(A2)が0より大きく2モル未満の付加を行い、プロピレンオキサイド(A3)を0より大きく2モル未満の付加を行う。ただし、この時付加させるエチレンオキサイドの付加モル数とプロピレンオキサイドの付加モル数の和は原料1級アミン(A1)1モルに対して0より大きく2モル未満に規制される。
【0025】
エチレンオキサイドの付加モル数とプロピレンオキサイドの付加モル数の和が原料1級アミン(A1)1モルに対して2以上の成分が98%以上含まれると、コンディショニング効果が悪化し好ましくない。より好ましくは、エチレンオキサイドの付加モル数とプロピレンオキサイドの付加モル数の和が原料1級アミン(A1)1モルに対して少なくとも1以上であることが好ましく、1未満の成分が15%以上含まれると、経時的着色等の問題があり好ましくない。
【0026】
本発明に用いるN−ヒドロキシアルキルアミン化合物は1つのアミン化合物にエチレンオキサイドに由来するポリオキシエチレン基とプロピレンオキサイドに由来するポリオキシプロピレン基を同時に含有することが重要である。
【0027】
(A)成分である特定のN−ヒドロキシアルキルアミン化合物の毛髪用組成物中の配合量は、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜8質量%がより好ましく、0.8〜5質量%が特に好ましい。(A)成分の配合量が少なすぎると毛髪に十分なコンディショニング効果が得られず、多すぎると製品の安定性を損ねてしまい好ましくない。
【0028】
本発明毛髪用組成物の(B)成分として無機酸及び炭素数1〜5の有機酸が配合される。無機酸としては塩酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。有機酸としては、酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸;グリコール酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸;グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸などが挙げられる。これらの中で、無機酸、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、酸性アミノ酸が好ましく、無機酸としては、塩酸が特に好ましい。ジカルボン酸としては、マレイン酸、コハク酸が特に好ましい。ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸が特に好ましい。酸性アミノ酸としては、グルタミン酸が特に好ましい。
【0029】
本発明毛髪用組成物の必須成分である(A)成分と(B)成分の配合量は、(A)成分を0.1〜10質量%、(B)成分を(A)成分に対し、0.1〜10倍モル、更に0.3〜4倍モルが、効果的にアミン臭を低減でき、また柔軟性や滑り性のようなコンディショニング効果を高める観点から好ましい。
【0030】
本発明毛髪用組成物には(C)成分である高級アルコールを0.1〜15質量%と、(D)成分である油性成分を0.1〜10質量%配合することがより好ましい。
【0031】
(C)成分である高級アルコールとしては、炭素数10〜30の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有する高級アルコール類、好ましくは炭素数12〜26の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有する高級アルコール、更に好ましくはミリスチルアルコール、セタノール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベへニルアルコール、カラナービルアルコール、セリルアルコール等の高級アルコールが挙げられる。
【0032】
高級アルコールの毛髪用組成物中の配合量は、0.1〜12質量%が好ましく、特に2〜10質量%がより好ましい。高級アルコールの配合量が少なすぎると期待される効果が不十分となり、また多すぎても使用後の感触が悪くなり好ましくない。
【0033】
(D)成分の油性物質としては、具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸等の(B)成分以外の高級脂肪酸、流動パラフィン、流動イソパラフィン、ワセリン、スクワレン、スクワラン等の炭化水素油等が挙げられる。また、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、アボカド油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヒマワリ油、ナタネ油、ゴマ油、大豆油、メドウフォーム油等の天然油;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミルスチン酸ミリスチル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ステアリン酸硬化ヒマシ油、ヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジイソステアリン酸ジグリセリル、ジペンタエリスリトールとヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸等の混合脂肪酸とのエステル等のエステル油;、18-メチルエイコサン酸、14-メチルペンタデカン酸、14-メチルヘキサデカン酸、15-メチルヘキサデカン酸、15-メチルヘプタデカン酸、16-メチルヘプタデカン酸、16-メチルオクタデカン酸、17-メチルオクタデカン酸、17-メチルノナデカン酸等の分岐脂肪酸、ならびにそのエステル油;ラノリン脂肪酸及びその塩などのラノリンからの抽出品;天然セラミド又は天然型セラミド類、及びその誘導体が挙げられる。
【0034】
シリコーン系油剤が油性物質として配合されることがより好ましい。シリコーン系油剤としては、高重合ジメチルポリシロキサン、例えばBY11−026、BY22−19、FZ−3125(東レ・ダウコ一二ング社製)、X52−2127(信越シリコーン社製)等が挙げられる。
【0035】
シリコーン系油剤には、ジメチルポリシロキサンオイル 具体的には、SH200Cシリーズ、粘度1cs、50cs、200cs、1000cs、5000cs(東レ・ダウコーニング社製)等の市販品が含まれる。
【0036】
シリコーン系油剤には、環状シリコーン等の液状シリコーン油、具体的には、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
【0037】
また、市販品としては、SH244やSH245(東レ・ダウコーニング社製)が挙げられる。またイソパラフィン等の液状炭化水素油)に溶解又は分散したものも使用することができる。
【0038】
さらには、アミノ変性シリコーンとして例えば、SS−3551、SF8452C、DC929、DC8500(以上、東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。アミノ変性シリコーンを水性乳濁液として用いる場合、該水性乳濁液中に含まれるアミノ変性シリコーンの量は20〜60重量%が好ましく、30〜50重量%が更に好ましい。好ましいアミノ変性シリコーン水性乳濁液としては、SM8904C(東レ・ダウコーニング社製)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
油性成分の毛髪用組成物中の配合量は、0.01〜10質量%が好ましく、特に0.05〜5質量%がより好ましい。油性成分の配合量が少なすぎると期待される効果が不十分となり、また多すぎても感触が悪くなり好ましくない。
【0040】
さらに本発明の毛髪用組成物には、毛髪に与える感触を更に向上させるため、以下に示すようなシリコーン誘導体を配合することができる。ポリエーテル変性シリコーン、メチルフェニルポリシロキサン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。シリコーン化合物を含有させる場合、その含有量は、本発明の毛髪化粧料中に0.1〜15重量%が好ましく、特に0.5〜10重量%が好ましい。
【0041】
さらに本発明品には、一般的な3級アミン類としてステアラミドプロピルジメチルアミン、ベヘナミドプロピルジメチルアミン、ステアロキシプロピルジメチルアミン、ステアロキシヒドロキシプロピルジメチルアミンと混合しても良く、刺激性、生分解性を気にしないのであれば各種第4級アンモニウム塩(たとえばアルキルトリメチルアンモニウム塩、アルコキシトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、)と混合しても構わない。
【0042】
本発明の毛髪用組成物には、さらに化粧料、医薬品などに通常使用されるその他の成分を、目的に応じて配合することができる。例えば、カチオン化セルロース、ヒドロキシ化セルロース、高重合ポリエチレンオキサイド等の高分子化合物;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、ショ糖脂肪酸エステル類、ポリグリセリンアルキルエーテル類、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルグリコシド類等の非イオン界面活性剤;ジンクピリチオン、塩化ベンザルコニウム等の抗フケ剤;ビタミン剤;殺菌剤;抗炎症剤;防腐剤;キレート剤;パンテノール等の保湿剤;染料、顔料等の着色剤;ユーカリの極性溶媒抽出物、真珠層を有する貝殻又は真珠から得られる蛋白質又はその加水分解物、シルクから得られる蛋白質又はその加水分解物、マメ科植物の種子から得られる蛋白含有抽出物、オタネニンジン抽出物、米胚芽抽出物、ヒバマタ抽出物、ツバキ抽出物、アロエ抽出物、月桃葉抽出物、クロレラ抽出物等のエキス類;酸化チタン等のパール粉体;香料;色素;紫外線吸収剤;酸化防止剤;などを必要に応じて配合することができる。
【0043】
本発明の毛髪用組成物は、毛髪に適用される化粧料のすべてを指し、この中には例えばヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、セットローション、ブロースタイリングローション、ヘアスプレー、ヘアミスト、泡状スタイリング剤、ジェル状スタイリング剤、ヘアリキッド、ヘアトニック、ヘアクリーム、パーマネントウェーブ第1剤、パーマネントウェーブ第2剤、永久染毛剤、一時染毛剤等が含まれる。また、剤型としてもその用途に応じて水溶液、エタノール溶液、エマルジョン、サスペンジョン、ゲル、液晶、固形、エアゾール等の各種形態とすることができる。
【0044】
より好ましくは、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアミスト、ヘアクリームの剤形で実施することが好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。配合量については特に断りのない限り質量%で示す。
【0046】
本件発明の(A)成分であるN−ヒドロキシアルキルアミン化合物を以下の操作により合成準備した。
【0047】
製造例1
ステアリルアミン1モルを撹拌式1リットルオートクレーブに仕込み、150〜160℃にてエチレンオキサイド(EO)を0.5モル、プロピレンオキサイド(PO)を0.9モル、合計1.4モル付加させた。目的物の融点は42〜44℃であった。
【0048】
製造例1で製造したサンプルのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加モル数をH−NMRにより解析した。
【0049】
図1は製造例1のN−ヒドロキシアルキルアミン化合物のH−NMR測定結果及びピークの帰属である。
【0050】
ステアリルアミンの末端のCH−(a)のプロトン積分比を3とすると、ポリオキシエチレンの−CH−(h)のプロトン積分比が0.98であるので、ポリオキシエチレンの付加数はn=(h)/2=0.5である。また、ポリオキシプロピレンのCH−(b)のプロトン積分比が2.76であるので、ポリオキシプロピレンの付加数はm=(b)/(a)=0.9である。仕込みモル比に呼応した試料が作成されたことを確認した。
【0051】
製造例2
ステアリルアミン1モルを撹拌式1リットルオートクレーブに仕込み、150〜160℃にてエチレンオキサイド(EO)を0.7モル、プロピレンオキサイド(PO)を1.1モル、合計1.8モル付加させた。目的物の融点は41〜43℃であった。
【0052】
製造例3
ステアリルアミン1モル、炭酸カリウム0.01モルを撹拌式1リットルオートクレーブに仕込み、150〜160℃にてエチレンオキサイド(EO)を1.5モル、プロピレンオキサイド(PO)を1.0モル、合計2.5モル付加させた。目的物の融点は39〜41℃であった。
【0053】
製造例4
ステアリルアミン1モルを撹拌式1リットルオートクレーブに仕込み、150〜160℃にてプロピレンオキサイド(PO)を2.0モル付加させた。目的物の融点は40〜42℃であった。
【0054】
製造例5
ステアリルアミン1モルを撹拌式1リットルオートクレーブに仕込み、150〜160℃にてエチレンオキサイド(EO)を2.0モル付加させた。目的物の融点は41〜43℃であった。
【0055】
製造例6
ステアリルアミン1モルを撹拌式1リットルオートクレーブに仕込み、150〜160℃にてプロピレンオキサイド(PO)を1.4モル付加させた。目的物の融点は41〜43℃であった。
【0056】
製造例7
ステアリルアミン1モルを撹拌式1リットルオートクレーブに仕込み、150〜160℃にてエチレンオキサイド(EO)を1.4モル付加させた。目的物の融点は42〜44℃であった。
【0057】
製造例8
特開2011−236397号公報の製造例の方法に従って、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを触媒としてn−テトラコシルアミンのEO15モル付加物を合成した。
【0058】
製造例9
特開2011−236397号公報の製造例の方法に従って、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを触媒としてn−ドデシルアミンのEO1.5モル付加物を合成した。
【0059】
製造例2〜8までのサンプルに関してもNMR測定を行い所定の付加モル数であることを確認した。
【0060】
また対象品として
MPAS カチナールMPAS ステアラミドプロピルジメチルアミン(東邦化学工業社製)、
STAC コータミン86PC ステアリルトリモニウムクロリド(花王株式会社製)
を用意した。
【0061】
製造例1で試作したサンプルの皮膚一次刺激性は、濃度 0.5%、モルモット(非GLP)の条件での測定により表1の結果となった。この検討により本件発明のN−ヒドロキシアルキルアミン化合物は充分に低刺激であることが判明した。
【0062】
【表1】

【0063】
準備したサンプルの生分解性を活性汚泥と試料を基礎培養基中で混合し、14日間攪拌し、試料の分解に伴って消費する酸素量を測定することにより、各サンプルの生分解性を見積もった結果を表2に示す。本件発明のN−ヒドロキシアルキルアミン化合物はMPASと同程度の生分解性を有することが分かる。
【0064】
【表2】

【0065】
実施例1〜6及び比較例1〜11
表3に示す組成のヘアコンディショナーを製造し、下記の方法及び基準に従って「塗布感」、「すすぎ時の柔軟性」、「乾燥後の柔軟性」、「乾燥後の平滑性」、「乾燥後のしっとり感」、「ツヤ感」を評価した。さらに、接触角測定、静電電位測定を行った。
【0066】
また、pHは20倍量に希釈して測定した。粘度に関してはB型粘度計(東機産業社製 VISCOMETER TV-10型)、少量サンプルアダプターを使用し、原液はローター No.M3、30回転、10倍希釈液はローターNo.M1、100回転でそれぞれ25℃、回転開始3分後の粘度を測定した。なお、10倍希釈は、実際のコンディショナー使用時に近い濃度で、塗布した時に感じる粘度を見積もるために測定した。
【0067】
評価方法
カラーリング処理を行ったダメージ毛の毛束20gを使い、専門パネラー10名で官能評価を実施した。具体的には以下に示す処方のシャンプーで洗髪後、実施例1~6及び比較例1〜11を2g均一に塗布し、塗布感を評価し、次いで30秒間流水ですすぎ、流した後の髪の柔軟性を評価した。
さらに、タオルドライ、ドライヤー乾燥を行い、乾燥後の柔軟性、平滑性、しっとり感、ツヤ感を評価した。評価は以下の点数の合計値で示した。結果を表3に示す。
【0068】
評価シャンプー処方
ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 14 重量%
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 4
カチオンカセルロース 0.2
香料 0.5
クエン酸 適量(pH6.0)
イオン交換水 残量
【0069】
評価基準
<塗布感>
4;非常に塗布感が感じられる
3:塗布感が感じられる
2;わずかに塗布感が感じられる
1;塗布感が全く感じられない
【0070】
<柔軟性>
4:非常に柔らかい
3:やや柔らかい
2:あまり柔らかくない
1:柔らかくない
【0071】
<平滑性>
4:非常に滑る
3:やや滑る
2:あまり滑らない
1:滑らない
【0072】
<しっとり感>
4:非常にしっとりする
3:ややしっとりする
2:あまりしっとりしない
1:しっとりしない
【0073】
<ツヤ感>
4:非常にツヤがある
3:ややツヤがある
2:あまりツヤがない
1:ツヤがない
【0074】
<総合評価>
◎:比較例1より大幅に優れた総合的な使用感
〇:比較例1より優れた総合的な使用感
△:比較例1と同等の総合的な使用感
×:比較例1より総合的な使用感が劣る。
【0075】
<接触角測定>
渡部俊輔他1名、「毛髪へのシリコーンの吸着挙動」、粧技誌、第29巻、第1号、p.64−68(1995)に記載の方法に従い、毛髪化粧料処理後+シャンプー1回処理後の毛髪(N=20)について接触角(度)を測定した。使用した毛髪はカラーリング処理を行い、接触角が60−65°の毛髪を選び、毛髪用組成物処理後増加した接触角の角度で示した。尚、カラーリング処理前の健常毛の接触角は80〜90°であった。
【0076】
<静電電位測定>
カラーリング処理を行ったダメージ毛の毛束20gを使い、シャンプーで洗髪後、実施例1~6及び比較例1〜9を2g均一に塗布し、30秒間流水ですすぎ、タオルドライ、ドライヤーで乾燥後の髪の静電電位を測定した。使用した測定機器は、春日電気製デジタル静電電位測定器 KDS-1000である。尚、シャンプーで洗髪後にコンディショナーを塗布せずに乾燥した毛髪の静電電位は14kVであった。
【0077】
【表3】

【0078】
製造例1、2の物質を配合した実施例1〜6のコンディショナーは、比較例1,2のコンディショナーと比較して良好な塗布感を示し、希釈時(10倍希釈時粘度・ヘアコンディショナーを毛髪に使用する際の実質的な作用濃度)でも高い粘度を有する特徴あることが分かる。
【0079】
実施例1〜6のコンディショナーの使用感(すすぎ時の柔軟性、乾燥後の柔軟性、乾燥後の平滑性、乾燥後のしっとり感、ツヤ感)は、比較例のコンディショナーよりも優れることが分かる。
【0080】
実施例1〜6のコンディショナーでは、毛髪の接触角の改善が充分に大きく、毛髪表面が効果的に疎水化されることがわかる。ほぼ健常毛と同等の状態に改善されたことが分かる。
【0081】
STACを配合した比較例1のコンディショナーでは、毛髪の接触角の改善は比較的大きく、また、毛髪の静電電位も十分に低いが、前述のように生分解性が当発明品よりも劣る。
【0082】
比較例6は製造例4及び製造例5の混合物であり、比較例9は製造例7及び製造例8の混合物である。比較例6、9ともに配合物に含まれるN−ヒドロキシアルキルアミン化合物全体の平均とした場合、本発明に近い数値となるが実施例1〜6に比較して性能が不十分である。
【0083】
この事は本発明に用いるN−ヒドロキシアルキルアミン化合物は1つの1級アミン化合物にエチレンオキサイドに由来するポリオキシエチレン基とプロピレンオキサイドに由来するポリオキシプロピレン基を同時に含有することが重要であることを示す。
【0084】
また式1のx+yの範囲外となる類縁体を配合した比較例3〜9のコンディショナーでは、塗布感の評点は比較的高く、希釈時の粘度も十分に高いが、その他の感触と毛髪の接触角の改善では、本発明範囲のコンディショナーよりも劣ることが分かる。
【0085】
式1のx+yの範囲外となる類縁体を配合した比較例10及びRの炭素数が範囲外である比較例11のコンディショナーでは、乳化不良のため製剤化できず、評価は行わなかった。
【0086】
本発明において提案する毛髪化粧料の処方例としては、以下の例が挙げられる。
処方例1:ヘアリンス
(配合成分) (重量%)
製造例1の物質 0.8
セチルアルコール 3.0
ヒドロキシエチルセルロース 0.2
ポリオキシエチレン (10モル) オレイルアルコールエーテル 1.0
グリセリン 5.0
ポリペプチド 2.0
クエン酸 製造例1の物質に対するモル比1.1 0.5
香料 0.3
メチルパラベン 0.1
色素 微量
精製水 残余
すすぎ時の柔軟性、乾燥後の柔軟性、乾燥後の平滑性、乾燥後のしっとり感に優れていた。
【0087】
処方例2:ヘアトリートメント
(配合成分) (重量%)
製造例1の物質 1.5
MPAS 1.0
ジメチルポリシロキサン(500cs) 1.0
セチルアルコール 6.0
流動パラフィン 3.0
ポリオキシエチレン (5モル) オレイルアルコールエーテル 0.5
香料 0.3
メチルパラベン 0.1
リンゴ酸(製造例1の物質に対するモル比0.7) 0.8
色素 微量
精製水 残余
すすぎ時の柔軟性、乾燥後の柔軟性、乾燥後の平滑性、乾燥後のしっとり感に優れていた。
【0088】
処方例3:ヘアクリーム
(配合成分) (重量%)
製造例1の物質 2.5
セチルトリメチルアンモニウムクロリド 1.0
セトステアリルアルコール 1.0
ジプロピレングリコール 6.0
グリセリン 10.0
流動パラフィン 3.0
グリコール酸(製造例1の物質に対するモル比1.8) 1.0
香料 0.3
メチルパラベン 0.1
色素 微量
精製水 残余
すすぎ時の柔軟性、乾燥後の柔軟性、乾燥後の平滑性、乾燥後のしっとり感に優れていた。
【0089】
処方例4:スタイリングローション
(配合成分) (重量%)
製造例1の物質 0.5
ポリビニルピロリドン 3.0
プロピレングリコール 2.0
ポリオキシエチレン (20モル) ステアリルアルコールエーテル 1.5
エチルアルコール 15.0
香料 0.3
乳酸(製造例1の物質に対するモル比1.5) 0.2
メチルパラベン 0.1
色素 微量
精製水 残余
乾燥後の柔軟性、乾燥後の平滑性、乾燥後のしっとり感に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の毛髪用組成物は、生分解性に優れたリンス、コンディショナー等の毛髪用化粧料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)
(A1)アミド基、エステル基、エーテル基又は水酸基で置換されていてもよい炭素数16〜40の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有する一級アミンに
(A2)エチレンオキサイドと
(A3)プロピレンオキサイドとを
(A4)A1成分1モルに対してA2及びA3成分をモル数で
0<A2<2 0<A3<2 かつ 0<A2+A3<2の特定の範囲内
で付加反応させて得られるN−ヒドロキシアルキルアミン化合物と
(B)無機酸及び炭素数1〜5の有機酸からなる群から選ばれる1種以上の酸からなる成分を含有することを特徴とする毛髪用組成物。
【請求項2】
(A)成分を0.1〜10質量%、(B)成分を(A)成分に対し、0.1〜10倍モル配合したことを特徴とする請求項1記載の毛髪用組成物。
【請求項3】
毛髪組成物全量中に高級アルコールからなる(C)成分を0.1〜15質量%と、油性成分からなる(D)成分を0.1〜10質量%配合してなる請求項1または2記載の毛髪用組成物。
【請求項4】
毛髪用組成物がヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアミスト、又はヘアクリームである請求項1〜3記載の毛髪用組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−197267(P2012−197267A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−46321(P2012−46321)
【出願日】平成24年3月2日(2012.3.2)
【出願人】(390003001)川研ファインケミカル株式会社 (48)
【Fターム(参考)】