説明

気中塩分測定方法及び測定システム

【課題】被測定外気に含まれる塩分を精度良く長期間継続して測定する。
【解決手段】純水を入れた密閉容器と、外気導入管3と、密閉容器内を排気する排気装置4と、外気導入管3内に設けられたフィルタ部材5と、第1配管6と、第2配管7と、第1配管6の他端と第2配管7の他端とを接続する送液ポンプ8と、密閉容器内の純水の電気伝導度を測定する測定装置12とを少なくとも備え、送液ポンプ8により、密閉容器内の純水が第1配管6、第2配管7及び外気導入管3の順で流通して外気排出部3bから再び密閉容器内に戻る純水循環路を形成する一方で、排気装置4により、被測定外気中の固形物をフィルタ部材5で除去しながら被測定外気を外気導入管3の3aから3bに向けて流通させて、外気導入管3内を流通する純水に被測定外気に含まれる塩分を溶け込ませ、測定装置12により密閉容器内の純水の電気伝導度から被測定外気の塩分を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気中塩分測定方法及び測定システムに関する。さらに詳述すると、本発明は、大気中の塩分を純水に溶解させ、この純水の電気伝導度の測定値から大気中の塩分を測定する気中塩分測定方法及び測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大気中の塩分を測定する従来技術として、特許文献1記載の気中塩分測定方法が知られている。この気中塩分測定方法は、図9に示す気中塩分計を用いて実施される。具体的には、一定量の純水102を封入した密閉容器101に、外気を容器101内に導入するための外気導入管103と容器101内の純水102を吸い上げるための純水吸引管104とを有し且つ外気導入管103の先端に備えられたノズル103aから射出される外気と純水吸引管104により吸い上げられた容器101内の純水102とにより容器101内で霧110を発生させる霧吹装置105を備えておく。そして、容器101に設けた排気口106から排気ポンプによって容器101内の空気を排除することで容器101を負圧とし、外気導入管103から被測定外気を容器101内に導入すると共に純水吸引管104により容器内の純水102を吸い上げ、容器101の内壁に衝突するように霧吹装置105から霧110を発生させて被測定外気に含まれる塩分を容器101内の純水102に溶解させ、容器101内の純水102中の電気伝導度の測定値(電極112により測定)から被測定外気の塩分を測定するものである。また、図9に示す気中塩分計には、一定時間毎に容器101内の純水102を交換するための機構として、純水タンク107、吸水電磁弁108、排水電磁弁109及び純水を一定量に定めるための水位センサ111が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平5−8982号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の気中塩分測定方法では、測定精度が十分なものとは言えず、信頼性の高いデータが得られないという問題があった。
【0005】
また、特許文献1記載の気中塩分測定方法は、一定時間毎に容器101内の純水102の交換を行って測定毎に容器101内の純水を全量入れ替えることを前提とするものである。近年、1〜2ヶ月あるいはそれ以上の長期間に亘って継続的に気中塩分測定を行うことが要求されており、このような長期間に亘って継続的に塩分測定を行うことのできる手法の確立が望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、被測定外気に含まれる塩分を精度良く測定することのできる気中塩分測定方法及び測定システムを提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、被測定外気に含まれる塩分を精度良く測定することができ、しかも長期間に亘って継続的に測定を行うことのできる気中塩分測定方法及び測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため、本願発明者等が鋭意検討を行った結果、特許文献1に記載されているような従来の気中塩分測定方法では、霧吹装置105で発生した塩分を含む霧110が排気ポンプで排気されてしまい、これが測定精度を低下させている根本的な要因となっていることを突き止めた。
【0009】
また、特許文献1に記載されているような従来の気中塩分測定方法では、外気導入管103のノズル103aに土埃や塩分の結晶による詰まりが生じて、ノズル103aからの外気の射出が阻害され、霧110が発生し難くなる場合があることが判明した。また、外気導入管103に昆虫等の固形物が入り込んでノズル103aの近傍が詰まり、これによりノズル103aからの外気の射出が阻害されて、霧110が発生し難くなる場合もあることが判明した。つまり、外気導入管103のノズル103aの詰まりもまた、被測定外気の射出を阻害して測定精度を低下させる要因となり得ることを突き止めた。
【0010】
その一方で、本願発明者等は、特許文献1に記載されている気中塩分測定方法によって、1〜2ヶ月あるいはそれ以上の長期間に亘って継続的に塩分測定を行うことができないか検討を行った。その結果、一定時間毎、例えば5〜6時間毎に容器101内の純水102の交換を行って測定毎に容器101内の純水102を全量入れ替えることを前提としていた従来の方法においては生じ得なかった問題が明らかとなった。即ち、測定期間が一日を超えると、霧110が排気ポンプで排気されることに加えて、容器101内の純水102が蒸発してその量が低下し、霧110を発生させることができなくなることが判明した。
【0011】
そこで、本願発明者等は、一定時間毎に容器101内の純水102を交換するための機構である純水タンク107、吸水電磁弁108及び純水を一定量に定めるための水位センサ111を利用することによって、容器101内の純水102の量が低下したことを水位センサ111で検知させ、吸水電磁弁108を作動させて純水タンク107から純水102を補給することで、長期間に亘る継続的な塩分測定を実施できるのではないかと考え、実験を行った。ところが、この場合には、上記した外気導入管103のノズル103aの詰まりの問題がさらに顕著なものとなることがわかった。
【0012】
そこで、本願発明者等は、従来よりも測定精度を向上させるための検討を重ね、排気されやすい霧を発生させる従来の方式とは別の新規な方式を採用することで、上記問題点を解決できることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、請求項1に記載の気中塩分測定方法は、被測定外気に含まれる塩分を測定する気中塩分測定方法であって、純水を入れた密閉容器に、両端が開口している外気導入管を差し込み、密閉容器の外側に位置する開口部を外気吸引部とすると共に密閉容器の内側に位置する開口部を外気排出部とし、且つ外気排出部は密閉容器内の純水と接触しない位置に配置し、外気導入管内にはフィルタ部材を設け、外気導入管内の外気吸引部とフィルタ部材との間の位置に密閉容器内の純水を供給して外気排出部に向けて純水を流通させることにより、密閉容器内の純水が外気導入管内を流通して外気排出部から再び密閉容器内に戻る純水循環路を形成する一方で、密閉容器内を排気することにより、被測定外気に含まれる固形物をフィルタ部材で除去しながら被測定外気を外気導入管の外気吸引部から外気排出部に向けて流通させて、外気導入管内を流通する純水に被測定外気に含まれる塩分を溶け込ませ、密閉容器内の純水の電気伝導度の測定値から被測定外気に含まれる塩分を測定するようにしている。
【0014】
また、請求項3に記載の気中塩分測定システムは、被測定外気に含まれる塩分を測定する気中塩分測定システムであって、純水を入れた密閉容器と、両端が開口している管であって密閉容器に差し込まれて密閉容器の外側に位置する開口部を外気吸引部とすると共に密閉容器の内側に位置する開口部を外気排出部とし且つ外気排出部は密閉容器内の純水と接触しない位置に配置されている外気導入管と、密閉容器内を排気する排気装置と、外気導入管内に設けられたフィルタ部材と、密閉容器内の純水に一端が接触された第1配管と、外気導入管の外気吸引部とフィルタ部材との間の位置に一端が接続された第2配管と、第1配管の他端と第2配管の他端とを接続する送液ポンプと、密閉容器内の純水の電気伝導度を測定する測定装置とを少なくとも備え、送液ポンプを稼働させることにより、密閉容器内の純水が第1配管、第2配管及び外気導入管の順で流通して外気排出部から再び密閉容器内に戻る純水循環路が形成される一方で、排気装置を稼働させることにより、被測定外気に含まれる固形物をフィルタ部材で除去しながら被測定外気を外気導入管の外気吸引部から外気排出部に向けて流通させて、外気導入管内を流通する純水に被測定外気に含まれる塩分を溶け込ませ、測定装置により得られる密閉容器内の純水の電気伝導度の測定値から被測定外気の塩分を測定するものとしている。
【0015】
したがって、請求項1に記載の気中塩分測定方法及び請求項3に記載の気中塩分測定システムによると、外気導入管内の外気吸引部とフィルタ部材との間の位置に密閉容器内の純水を供給して外気導入管内に純水を流通させるようにしているので、外気導入管内を流通する被測定外気に含まれる塩分をこの純水に溶け込ませることができる。そして、塩分が溶け込んだ純水は外気導入管の外気排出部から流下ないしは滴下するので、従来の気中塩分測定方法のように被測定外気と純水とを接触させて発生させた霧よりも排気されにくいものとなる。また、外気導入管に設けられたフィルタ部材によって被測定外気に含まれる固形物を除去しながら被測定外気を密閉容器内に導入すると共に、外気導入管内の外気吸引部とフィルタ部材との間の位置に密閉容器内の純水を供給するようにしているので、フィルタ部材に捕捉された被測定外気由来の土埃や塩分が純水に溶けてフィルタ部材から除去されるので、土埃や塩分の結晶による外気導入管の詰まりが生じない。しかも、被測定外気由来の塩分を純水に溶かし込んで測定に供することができる。さらには、外気導入管に設けられたフィルタ部材によって、昆虫等の固形物が密閉容器内に入り込んで、配管等が閉塞されてしまうようなトラブルも回避できる。
【0016】
ここで、請求項1に記載の気中塩分測定方法において、請求項2に記載したように、密閉容器内の純水の量が低下したときに、外気導入管内の外気吸引部とフィルタ部材との間の位置に純水を供給することにより、密閉容器内に純水を補給することが好ましい。また、請求項3に記載の気中塩分測定システムにおいて、請求項4に記載したように、純水を貯留する純水貯留タンクと、外気導入管への純水の供給源を密閉容器内から純水貯留タンクに切り替える切替手段と、密閉容器内の純水の量が規定値より低下したときには切替手段を作動させて純水の供給源を純水貯留タンクに切り替えると共に密閉容器内の純水の量が規定値以上のときには切替手段を作動させて純水の供給源を密閉容器内に切り替える制御手段とを備えるものとすることが好ましい。この場合、密閉容器内の純水の量が低下したときに純水貯留タンクからの純水の補充が可能となるので、密閉容器内の純水の量を長期に亘り一定量に維持し続けることができる。しかも、外気導入管からの被測定外気の密閉容器内への導入を停止することなく、外気導入管を介して密閉容器内への純水の補充を行うことができ、気中塩分の測定を継続しながらの純水の補充が可能である。
【0017】
また、請求項3に記載の気中塩分測定システムにおいて、請求項5に記載したように、外気導入管のフィルタ部材と外気排出部との間に外気導入管よりも外径の小さな管が並列して複数本備えられているものとすることが好ましい。この場合、外気導入管よりも外径の小さな複数本の管に被測定外気と純水とが流通することによって、被測定外気と純水との接触面積が増加して被測定外気に含まれる塩分が純水に溶け込み易くなる。
【0018】
さらに、請求項3に記載の気中塩分測定システムにおいて、請求項6に記載したように、下端から上端に向けて内径を漸次縮径する逆漏斗形状の環状部材が外気排出部を包囲するように外気導入管に備えられ、またはその上端と外気排出部を接続するように外気導入管に備えられていることが好ましい。この場合、外気導入管の外気排出部から滴下する塩分を含む純水が排気装置によって排気されるのを確実に防ぐことができる。
【0019】
また、請求項3に記載の気中塩分測定システムにおいて、請求項7に記載したように、密閉容器内に圧縮ガスを供給する圧縮機を備え、排気装置を停止すると共に圧縮機から圧縮ガスを密閉容器内に供給して圧縮ガスを外気排出部から外気吸引部に向けて流通させ、フィルタ部材を閉塞している付着物及びフィルタ部材上に堆積している固形物を外気導入管の外気吸引部から排出するものとすることが好ましい。この場合、外気導入管からの被測定外気の密閉容器内への導入を阻害する要因となる、フィルタ部材を閉塞している付着物及びフィルタ部材上に堆積している固形物を定期的にあるいは随意に除去して、外気導入管からの被測定外気の密閉容器内への導入を長期間良好なものに維持することができる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の気中塩分測定方法及び請求項3に記載の気中塩分測定システムによれば、外気導入管内の外気吸引部とフィルタ部材との間の位置に密閉容器内の純水を供給して外気導入管内に純水を流通させるようにしているので、外気導入管内を流通する被測定外気に含まれる塩分をこの純水に溶け込ませることができる。そして、塩分が溶け込んだ純水は外気導入管の外気排出部から流下ないしは滴下するので、従来の気中塩分測定方法のように被測定外気と純水とを接触させて発生させた霧よりも排気されにくいものとなる。したがって、従来の気中塩分測定方法よりも測定精度を向上させることができる。また、外気導入管に設けられたフィルタ部材によって被測定外気に含まれる固形物を除去しながら被測定外気を密閉容器内に導入すると共に、外気導入管内の外気吸引部とフィルタ部材との間の位置に密閉容器内の純水を供給するようにしているので、フィルタ部材に捕捉された被測定外気由来の土埃や塩分が純水に溶けてフィルタ部材から除去され、土埃や塩分の結晶による外気導入管の詰まりが生じない。しかも、被測定外気由来の塩分を純水に溶かし込んで測定に供することができるので、被測定外気に含まれる塩分を余すことなく測定して従来の気中塩分測定方法よりも測定精度を向上させることができる。さらには、外気導入管に設けられたフィルタ部材によって、昆虫等の固形物が密閉容器内に入り込んで、配管等が閉塞されてしまうようなトラブルも回避できる。
【0021】
請求項2に記載の気中塩分測定方法及び請求項4に記載の気中塩分測定システムによれば、密閉容器内の純水の量が低下したときに純水貯留タンクからの純水の補充が可能となるので、密閉容器内の純水の量を長期に亘り一定量に維持し続けることができる。しかも、外気導入管からの被測定外気の密閉容器内への導入を停止することなく、外気導入管を介して密閉容器内への純水の補充を行うことができ、気中塩分の測定を継続しながらの純水の補充が可能である。したがって、気中塩分測定を長期間に亘り継続して実施することが可能となる。
【0022】
請求項5に記載の気中塩分測定システムによれば、外気導入管よりも外径の小さな複数本の管に被測定外気と純水とが流通することによって、被測定外気と純水との接触面積が増加して被測定外気に含まれる塩分が純水に溶け込み易くなる。したがって、外気導入管の長さを短くしても被測定外気に含まれる塩分の純水への溶け込みが十分に起こるので、外気導入管の長さを短くしてシステム全体の構成をコンパクトなものとすることが可能となる。
【0023】
請求項6に記載の気中塩分測定システムによれば、外気導入管の外気排出部から滴下する塩分を含む純水が排気装置によって排気されるのを確実に防ぐことができる。したがって、従来の気中塩分測定方法と比較して測定精度を大幅に向上させることができる。
【0024】
請求項7に記載の気中塩分測定システムによれば、この場合、外気導入管からの被測定外気の密閉容器内への導入を阻害する要因となる、フィルタ部材を閉塞している付着物及びフィルタ部材上に堆積している固形物を定期的にあるいは随意に除去して、外気導入管からの被測定外気の密閉容器内への導入状態を長期間良好なものに維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の気中塩分測定システムにより気中塩分を測定する場合の実施形態の一例を示す図である。
【図2】本発明の気中塩分測定システムにより気中塩分を測定しながら密閉容器内に水を補給する場合の実施形態の一例を示す図である。
【図3】本発明の気中塩分測定システムによりフィルタ部材の目詰まりを除去する場合の実施形態の一例を示す図である。
【図4】本発明の気中塩分測定システムにおいて、密閉容器内の純水の交換を行う場合の実施形態の一例を示す図である。
【図5】本実施形態におけるフィルタ部材の形態の一例を示す図である。
【図6】本実施形態において、外気導入管に備えられる接触管の形態の一例を示す図である。
【図7】比較例におけるガーゼ法と図7に示す気中塩分測定システムの比較実験結果を示す図である。
【図8】本発明の気中塩分測定システムを用いた場合の回収率(捕集効率)を示す図である。
【図9】従来の気中塩分測定システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
本発明の気中塩分測定方法は、被測定外気に含まれる塩分を測定する気中塩分測定方法であって、純水を入れた密閉容器に、両端が開口している外気導入管を差し込み、密閉容器の外側に位置する開口部を外気吸引部とすると共に密閉容器の内側に位置する開口部を外気排出部とし、且つ外気排出部は密閉容器内の純水と接触しない位置に配置し、外気導入管内にはフィルタ部材を設け、外気導入管内の外気吸引部とフィルタ部材との間の位置に密閉容器内の純水を供給して外気排出部に向けて純水を流通させることにより、密閉容器内の純水が外気導入管内を流通して外気排出部から再び密閉容器内に戻る純水循環路を形成する一方で、密閉容器内を排気することにより、被測定外気に含まれる固形物をフィルタ部材で除去しながら被測定外気を外気導入管の外気吸引部から外気排出部に向けて流通させて、外気導入管内を流通する純水に被測定外気に含まれる塩分を溶け込ませ、密閉容器内の純水の電気伝導度の測定値から被測定外気に含まれる塩分を測定するようにしている。
【0028】
本発明の気中塩分測定方法は、例えば図1〜図4に示す気中塩分測定システムにより実施される。本実施形態における気中塩分測定システム1は、純水を入れた密閉容器2と、両端が開口している管であって密閉容器2に差し込まれて密閉容器2の外側に位置する開口部を外気吸引部3aとすると共に密閉容器2の内側に位置する開口部を外気排出部3bとし且つ外気排出部3bは密閉容器2内の純水と接触しない位置に配置されている外気導入管3と、密閉容器2内を排気する排気装置4と、外気導入管3内に設けられたフィルタ部材5と、密閉容器2内の純水に一端が接触された第1配管6と、外気導入管3の外気吸引部3aとフィルタ部材5との間の位置に一端が接続された第2配管7と、第1配管6の他端と第2配管7の他端とを接続する送液ポンプ8と、密閉容器2内の純水の電気伝導度を測定する測定装置12とを少なくとも備え、送液ポンプ8を稼働させることにより、密閉容器2内の純水が第1配管6、第2配管7及び外気導入管3の順で流通して外気排出部3bから再び密閉容器2内に戻る純水循環路が形成される一方で、排気装置4を稼働させることにより、被測定外気に含まれる固形物をフィルタ部材5で除去しながら被測定外気を外気導入管3の外気吸引部3aから外気排出部3bに向けて流通させて、外気導入管3内を流通する純水に被測定外気に含まれる塩分を溶け込ませ、測定装置12により得られる密閉容器2内の純水の電気伝導度の測定値から被測定外気の塩分を測定するものとしている。尚、図1〜4において、バルブ(あるいは電磁弁)が黒塗りの場合には閉状態であることを意味しており、黒塗りでない場合には開状態であることを意味している。
【0029】
密閉容器2は、塩分が溶け込んだ純水による腐食等が起こりにくい材質、例えばガラス製の容器とすればよいが、これに限定されるものではない。
【0030】
また、密閉容器2には、純水が入れられている。純水は、電気伝導度による塩分の測定に影響を与える量の金属イオン等を実質的に含まない水であり、例えば蒸留水等を用いることができる。
【0031】
外気導入管3は、両端が開口している管である。尚、ここでいう「管」とは、例えばガラス製の管の様に形状が固定されたものだけでなく、フレキシブルなチューブ等も含む。
【0032】
外気導入管3は、密閉容器2に差し込まれ、密閉容器2の外側に位置する開口部を外気吸引部3aとし、密閉容器2の内側に位置する開口部を外気排出部3bとしている。尚、外気吸引部3aと外気排出部3bの位置の上下関係については、外気吸引部3aを外気排出部3bよりも上側に配置して、純水の一部が外気吸引部3aから流れ落ちるのを防ぐようにしている。本実施形態では、外気吸引部3aを外気排出部3bよりも上側に配置し且つ密閉容器2内の純水の水面に対して略垂直にして、外気導入管3aに供給される純水を外気排出部3bから流下ないしは滴下させるようにしている。但し、外気吸引部3aと外気排出部3bの位置の上下関係については、この形態に限定されるものではなく、例えば、外気吸引部3aを外気排出部3bと等しい高さ、あるいは外気吸引部3aを外気排出部3bよりも下側に配置し、外気導入管3を外気吸引部3aの近傍で屈曲させて、外気吸引部3aを上向きに開口させるようにすることで、外気吸引部3aから純水が流れ落ちるのを防ぎながらも、送液ポンプ8の送液力によって、外気導入管3内に純水を流通させることが可能である。
【0033】
また、本実施形態において、外気導入管3の外気排出部3b(外気導入管3の密閉容器内側の端面)は、密閉容器2内の純水とは接触しない位置に配置されるようにしている。これにより、被測定外気が外気排出部3bから排出され、被測定外気を密閉容器2内に導入することができる。尚、外気排出部3bと密閉容器2内の純水の水面との距離については、外気排出部3bから塩分を含む純水が流下ないしは滴下したときに、水面から飛沫が発生し難い距離とすることが好適である。これにより、水面からの飛沫が排気装置4により排気されることによる測定精度の低下を抑えることができる。
【0034】
ここで、本発明の気中塩分測定システムにおいては、外気導入管3の外気排出部3bから塩分を含む純水をそのまま流下ないしは滴下させることで、従来の気中塩分測定方法において発生する霧よりも塩分を含む純水が排気され難くなって、測定精度を向上させることができるが、本実施形態のように、下端から上端に向けて内径を漸次縮径する逆漏斗形状の環状部材13が外気排出部3bを包囲するように外気導入管3に備えられて、外気導入管3の外気排出部3bから滴下する塩分を含む純水を内壁を伝わせて流れ落ちるようにすることがより好ましい。外気排出部3bから排出される塩分を含む純水は、大部分が流下するものの、一部は滴状となって滴下する。滴状となって滴下する純水は、排気装置4により排気されやすい。そこで、環状部材13を外気導入管3の外気排出部3bに装着することで、滴状となって滴下する純水が排気されたときに、この純水を環状部材13の内壁に衝突させることができる。ここで、環状部材13は、下端13bから上端13aに向けて内径を漸次縮径する逆漏斗形状としていることから、内壁に衝突した純水の雫は密閉容器2内の純水の水面に流れ落ちる。したがって、外気排出部3bから排出される塩分を含む純水が排気装置4により排気されることなく密閉容器2内に回収される。また、環状部材13がその上端と外気排出部3bを接続するように外気導入管3に備えられるようにしてもよい。この場合には、外気排出部3bから排出される塩分を含む純水が環状部材13の内壁を伝って流れ落ちるので、外気排出部3bから排出される純水が滴状となって滴下し難くなり、純水が排気されるのを防ぐことができる。また、外気排出部3bでは被測定外気が排出されやすくなる。尚、環状部材13の下端は、密閉容器2内の純水とは接触しない位置に配置し、且つ下端から流れ落ちる純水によって密閉容器2内の純水の水面から飛沫が発生し難い距離に配置することが好適である。
【0035】
また、本実施形態において、外気導入管3内には、フィルタ部材5が設けられている。フィルタ部材5により、被測定外気に含まれる固形物を除去しながら、外気排出部3bに向けて被測定外気を流通させることができる。したがって、外気排出部3bが土埃や塩分の結晶で詰まったり、昆虫等の固形物が密閉容器2内に入り込んで配管等を閉塞することにより気中塩分測定システムが故障するのを防ぐことができる。
【0036】
尚、本実施形態において、フィルタ部材5は、図5に示されるように、フィルタ部材5を円柱状の筐体内に設けて、筐体の両端の略中央部の開口部に配管を備え、この配管を外気導入管3に接続するようにしているが、外気導入管3内にフィルタ部材を直接設けるようにしても勿論よい。
【0037】
フィルタ部材5は、例えば目開き0.1mm〜1.0mm、好適には0.8mm程度のメッシュ素材等とすればよいが、被測定外気に含まれる固形物を除去しながらも、被測定外気の密閉容器2内への導入を阻害することのないものであれば、これに限定されるものではない。尚、被測定外気に含まれる固形物とは、例えば、土埃等のごみ、塩分、昆虫等である。
【0038】
外気導入管3には、外気吸引部3aとフィルタ部材5との間の位置に第2配管7の一端が接続されている。第2配管7の他端は送液ポンプ8に接続されている。また、密閉容器2内の純水に第1配管6の一端が接触され、他端が送液ポンプ8に接続されている。
【0039】
送液ポンプ8を稼働させると、密閉容器2内の純水が第1配管6と第2配管7を介して外気導入管3内の外気吸引部3aとフィルタ部材5との間の位置に供給される。そして、外気導入管3に供給された純水は、外気排出部3bから流下ないしは滴下されて、再び密閉容器2内に戻る。つまり、本発明の気中塩分測定システムでは、密閉容器2内の純水が外気導入管3を介して再び密閉容器2内に戻る純水循環路が形成される。
【0040】
また、排気装置4を稼働させると、外気導入管3の外気吸引部3aから外気排出部3bに向けて被測定外気が流通する。外気導入管3を流通する被測定外気は、外気導入管3に供給された純水と接触し、被測定外気に含まれる塩分がこの純水に溶け込む。ここで、外気導入管3の外気吸引部3aから外気排出部3bに向けて被測定外気を流通させると、フィルタ部材5には、被測定外気に含まれる塩分が付着する場合がある。本実施形態では、外気導入管3内の外気吸引部3aとフィルタ部材5との間の位置に密閉容器2内の純水を供給するようにしているので、フィルタ部材5に付着した被測定外気由来の塩分を純水に溶け込ませて回収することができる。また、外気導入管3の壁面に付着した被測定外気由来の塩分も純水に溶け込ませて回収することもできる。したがって、被測定外気に含まれる塩分を漏れなく純水に溶け込ませて回収し易い。
【0041】
尚、排気装置4には、例えば吸引ポンプ等を用いることができる。また、本実施形態では、異常検知用タンク40を備え、この異常検知用タンク40を介して密閉容器2内を排気するようにしている。これにより、密閉容器2内の純水が規定値以上に増加し続けたときに、異常検知用タンク40に密閉容器2内の純水が送液されて、異常検知用タンク40に送液された純水の液面が液位計41に接触したときに、警報を発するようにすることができる。但し、異常検知用タンク40は必ずしも備える必要は無く、密閉容器2内を排気装置4により直接排気するようにしても勿論よい。
【0042】
ここで、被測定外気に含まれる塩分の純水への溶け込みは、被測定外気と純水の接触時間が長い程起こりやすくなる。したがって、外気導入管3の純水供給位置(第2配管7と外気導入管3との接続部)から外気排出部3bまでの距離をできるだけ長くすることが好適である。例えば、外気導入管3の純水供給位置(第2配管7と外気導入管3との接続部)から外気排出部3bまでを螺旋状にすることで、コンパクトな構成としながらも被測定外気に含まれる塩分を純水に溶け込ませ易くすることができる。
【0043】
また、被測定外気に含まれる塩分の純水への溶け込みは、被測定外気と純水の接触面積が大きい程起こりやすくなる。そこで、外気導入管3のフィルタ部材5と外気排出部3bとの間に、外気導入管3よりも外径の小さな管10aが並列して複数本備えるようにすることが好ましい。これにより、複数本の管10aに被測定外気と純水とがそれぞれ流入して接触して、同じ長さの外気導入管3と比較して被測定外気と純水との接触面積を向上させることができる。したがって、被測定外気に含まれる塩分を純水に溶け込み易くすることができる。
【0044】
本実施形態では、図5に示す接触管10を外気導入管3のフィルタ部材5と外気排出部3bとの間に備えるようにしている。この接触管10は、以下のように構成される。即ち、両端の略中央部が開口されている円柱状の筐体10a内に、この筐体10aの高さよりも短く且つこの筐体10aの内径よりも外径の小さな細管10bが複数本並列に充填される。そして、筐体10a内に複数本並列に充填された細管10bの両端には、複数の穴が開けられた仕切り板10cが備えられる。ここで、仕切り版10cと筐体10aの両端との間には隙間10d、10eを設けておき、筐体10aに流入した純水および被測定外気が隙間10dで広がってから細管10bに流入されると共に、細管10bから流出する純水および被測定外気が隙間10eに排出されてから流出するようにしている。そして、筐体10aの両端の開口部には、管10f、10gが接続され、外気導入管3内に接続可能としている。このように構成することで、複数本の細管10b全てに純水と被測定外気とが流入しやすくなって、細管10b内部で被測定外気に含まれる塩分が純水に溶け込みやすくなり、短い距離でも被測定外気に含まれる塩分を純水に溶け込みやすくすることができる。したがって、外気導入管3の長さを長くすることなく、システム全体の構成をコンパクトなものとすることができる。
【0045】
密閉容器2内の純水の電気伝導度は、純水に浸漬された電極を介して電気伝導度測定装置12(例えば、東亜DKK株式会社社製の電気導電率計)により測定され、データロガーにより測定値が記録される。そして、電気伝導度の測定値から、純水に溶解している塩分量と電気伝導度について予め求められた関係に基づいて、純水の溶解塩分量、即ち被測定外気に含まれていた塩分量を求めることができる。
【0046】
以上、図1に示す気中塩分測定システムでは、排気装置4が稼働して密閉容器2内を排気し、被測定外気が外気導入管3の外気吸引部3aから外気排出部3bに向けて流通している。その一方で、送液ポンプ8も稼働しており、密閉容器2内の純水が外気導入管3を介して密閉容器2内に再び戻っている。即ち純水循環路が形成されている。したがって、外気導入管3及び接触管10内では、被測定外気と純水とが同時に流通して接触し、被測定外気に含まれる塩分が純水に溶け込んで、密閉容器2内に戻る。そして、密閉容器2内の純水の電気伝導度の測定値から被測定外気に含まれる塩分量が測定される。
【0047】
ここで、本実施形態では、図2に示すように、密閉容器2内の純水の量が低下したときに、外気導入管3内の外気吸引部3aとフィルタ部材5との間の位置に純水を供給することにより、密閉容器2内に純水を補給するようにしている。具体的には、純水を貯留する純水貯留タンク16と、外気導入管3への純水の供給源を密閉容器2内から純水貯留タンク16に切り替える切替手段17と、密閉容器2内の純水の量が規定値より低下したときには切替手段17を作動させて純水の供給源を純水貯留タンク16に切り替えると共に密閉容器2内の純水の量が規定値以上のときには切替手段17を作動させて純水の供給源を密閉容器2内に切り替える制御手段18とを備えるものとしている。
【0048】
本実施形態では、第1配管6の側面に第3配管19の一端を接続し、他端を純水貯留タンク16内の純水に接触させるようにしている。そして、第1配管6と第3配管19との接続部に切替手段17として電磁弁17aを備え、さらに第1容器6の第1配管6と第3配管19との接続部と密閉容器2との間に電磁弁17bと、第3配管19に電磁弁17cが備えられている。密閉容器2内の純水の量が規定値より低下したことを密閉容器2内に備えられた液面センサ20が検知すると、信号が制御手段18に送られ、制御手段18が電磁弁17a、17b、17cを作動させて純水の供給源を純水貯留タンク16に切り替える。即ち、電磁弁17bを閉じ、電磁弁17cを開け、電磁弁17aを作動させて純水貯留タンク16から送液ポンプ8に純水を供給可能とすることにより、密閉容器2内から送液ポンプ8への純水の流路を遮断すると共に、純水貯留タンク16から送液ポンプ8への純水の流路を確保する。尚、第1配管6の側面に第3配管19を接続することで、送液ポンプ8により純水貯留タンク16からの純水の汲み上げを行うことができる。つまり、送液ポンプ8を、密閉容器2内の純水と純水貯留タンク16の純水の双方の汲み上げに利用することができるので、システムのコンパクト化及び低コスト化を図ることができる。但し、送液ポンプ8とは別の送液ポンプによって、純水貯留タンク16から第2配管7へ純水を供給したり、あるいは外気導入管3の外気吸引部3aとフィルタ部材5との間の位置に直接純水を供給するようにすることも可能である。また、密閉容器2内の純水の量が規定値以上であることを密閉容器2内に備えられた液面センサ20が検知すると、信号が制御手段18に送られ、制御手段18が電磁弁17を作動させて純水の供給源を密閉容器2内に切り替える。即ち、電磁弁17bを開け、電磁弁17cを閉じ、電磁弁17aを作動させて密閉容器2内から送液ポンプ8に純水を供給可能とすることにより、密閉容器2内から送液ポンプ8への純水の流路を確保すると共に、純水貯留タンク16から送液ポンプ8への純水の流路を遮断する。
【0049】
尚、本実施形態では、切替手段17として、3つの電磁弁17a、17b及び17cを備えるようにしているが、電磁弁17aのみでも純水の供給源の切り替えを行うことは可能であるから、電磁弁17bと17cとを省略してもよい。また、電磁弁17bと17c純水の供給源の切り替えを行うことは可能であるから、電磁弁17aを省略してもよい。
【0050】
また、本実施形態では、純水貯留タンク16に液面センサ42、43を備えて、純水貯留タンク16内の純水の量が低下して液面センサ42の先端(下端)よりも水位が低下したときに、純水貯留タンク16内に純水が補給され、液面センサ43の先端(下端)に純水が接したときに純水貯留タンク16内への純水の補給が停止して、純水貯留タンク16内の水位が液面センサ42の先端から液面センサ43の先端までの間に常時維持されるようにしているが、液面センサは1つだけ備えるようにしてもよいし、液面センサを備えずに定期的にあるいは随意に純水を純水貯留タンク16に補充するようにしても勿論よい。
【0051】
密閉容器2内に備えられる液面センサ20は、例えばレーザーを利用した液面センサ(例えば、株式会社旭製作所社製の液面コントローラー)等を用いることができる。この液面センサは、先端部が空気に晒されているときには、先端部の素材と空気との屈折率の差が大きいため、光源からの光が全反射して受光部に戻り、先端部が液体に接触しているときには、先端部の素材と液体との屈折率の差が小さくなって、光源からの光が液体中に放射され受光部に戻らなくなることを利用したものである。つまり、先端部で液体の存在の有無を検出することができるセンサである。純水の液面の位置が規定値よりも低下して液面センサ20の先端部が純水の液面と接触しなくなると、液面センサ20から制御手段18に信号が送られ、この信号を受けた制御手段18が切替手段17を作動させ、純水貯留タンク16から外気導入管3を介して密閉容器2内に純水が補給される。そして、純水の液面の位置が規定値以上になると、液面センサ20の先端部が純水の液面と接触し。液面センサ20から制御手段18に信号が送られ、この信号を受けた制御手段18が切替手段17を作動させ、密閉容器2内の純水が外気導入管3に供給される。これにより、密閉容器2内の純水の液面は、常時液面センサ20の先端部の位置付近に制御されることとなる。しかも、純水貯留タンク16から純水を補給する際に、排気装置4を停止する必要はなく、気中塩分測定を継続することができるので、長期間継続して気中塩分測定を実施することができる。尚、異常検知用タンク40に備えられる液位計41、純水貯留タンク16に備えられる液面センサ42、43にも、上記と同様の液面センサを用いることができる。
【0052】
ここで、長期間継続して気中塩分測定を実施すると、フィルタ部材5に固形物が付着してフィルタ部材5の目が一部閉塞したり、フィルタ部材5上に固形物が堆積することによって、被測定外気の密閉容器2内への導入が阻害される場合がある。そこで、本発明では、フィルタ部材5の目詰まり等を解消するためのシステム構成を備えている。その稼働状態を図3に示す。図3に示す気中塩分測定システムでは、排気装置4を停止してバルブ32を閉じ、送液ポンプ8も停止して、バルブ33を開けて圧縮機14を稼働させる。そして、圧縮ガス、例えば圧縮空気等を密閉容器2内に供給する。これにより、圧縮ガスが外気導入管3の外気排出部3bから外気吸引部3aに向けて流れ、その際にフィルタ部材5を閉塞する付着物やフィルタ部材5の上に堆積している固形物が外気吸引部3aに向けて吹き上げられて排出される。この操作を定期的にあるいは随意に行うことによって、フィルタ部材5の通気性が確保され、長期に亘って安定に外気を導入しながら、気中塩分測定を実施することが可能となる。
【0053】
また、長期間継続して気中塩分測定を実施すると、密閉容器2内の純水の電気伝導度測定値に変化が見られなくなる場合がある。即ち、塩分が高濃度に溶け込むことによって、測定装置12では測定できない程に電気伝導度が上昇した結果として、電気伝導度の測定値が一定値を示すようになる場合がある。そのような場合には、以下の手順により純水の交換作業を行う。図5に示すように、まず、密閉容器2の下にあるバルブ30を開けて純水を抜く。そして純水貯留タンク16から純水を密閉容器2内に補充する。ここで、密閉容器2の内壁には塩分や被測定外気に含まれていた微粒子によって汚れが発生している場合がある。そこで、圧縮機14から純水に圧縮ガスを供給してバブリングを行い、密閉容器2の内壁を洗浄する。その際、密閉容器2内の圧力上昇による破損を防止するために、排気バルブ31を開けて、密閉容器2を開放しておく。このように、気中塩分測定システム1に圧縮機14を備えることで、フィルタ部材5の目詰まりの解消のみならず、バブリングによる密閉容器2内の洗浄も容易に行うことが可能となる。そして塩分や汚れが溶け込んだ水を排水して、再度純水を供給し、密閉容器2内の純水の電気伝導度が十分に低くなっていることを確認してから、気中塩分測定を再開する。
【0054】
上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0055】
例えば、上述の実施形態では、異常検知タンク40を介して密閉容器2内を排気装置4により排気するようにして、液面センサ20の故障等により密閉容器2内の純水が増加したときに、異常検知タンク40にこの純水を送液して検知するようにしていたが、密閉容器2内に液面センサ20とは別に液面センサをもう一つ備えておき、その先端の位置を液面センサ20よりも高くしておいて、液面センサ20の故障等により密閉容器2内の純水が増加してこの液面センサの先端に純水が接したときに警報を発するようにしてもよい。この場合、異常検知タンク40を省略して、排気装置4で密閉容器2内を直接排気しながらも、密閉容器2内の異常増水時に警報を発するようにすることができる。
【実施例】
【0056】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限られるものではない。
【0057】
(比較例)
従来の気中塩分測定方法を改良した気中塩分測定システムにより、大気中の塩分の測定を実施した。具体的には、密閉容器101内の純水102の量が規定値よりも低下したときに、外気導入管103を介して密閉容器101内に純水102を補給することにより、土埃や塩分の結晶によるノズル103aの詰まりを防ぐようにした気中塩分測定システムとし、従来と同様、霧吹装置105から霧110を発生させるようにした。このシステムにより気中塩分の測定を700時間連続して実施した。以降の説明では、このシステムをエジェクタ方式の改良システムと呼ぶこととする。
【0058】
まず、エジェクタ方式の改良システムについて、気中塩分の回収効率を検討した。具体的には、エジェクタ方式の改良システムを2つ用い、1つめのシステムにより大気を被測定外気として取り込むと共に、1つめのシステムから排気されるガスを2つめのシステムの被測定外気として取り込むように連結した。
【0059】
ここで、エジェクタ方式の改良システムによる気中塩分の回収率をαとし、気中塩分濃度をCとすると、1つめのシステムにおいて回収される塩分濃度X(塩分が溶け込んだ純水の塩分濃度)は、以下の式で表される。
X = C×α ・・・・(1)
【0060】
1つめのシステムから排気されるガスの塩分濃度はC−C×αとなる。したがって、2つめのシステムにおいて回収される塩分濃度Yは、以下の式で表される。
Y = (C−C×α)×α ・・・・(2)
【0061】
(1)式及び(2)式より、以下の関係式が成立する。
X/Y = (C×α)/{(C−C×α)×α}
つまり、X/Y = 1/(1−α)・・・・(3)
【0062】
塩分濃度X及びYは各システムの純水の電気伝導度を測定することにより得られるので、(3)式を用いることで、エジェクタ方式の改良システムによる気中塩分の回収率αを求めることができる。
【0063】
測定結果を表1に示す。尚、表1において、%を付した数値以外の数値の単位は、「μg/m as Cl」である。
【0064】
【表1】

【0065】
表1に示される結果から、回収率は60〜80%程度であると共に、期間毎の変動も大きく、測定精度が十分なものとは言えないことが明らかとなった。
【0066】
次に、エジェクタ方式の改良システムで、気中塩分の測定を700時間連続して実施し、その測定結果を、ガーゼ法(JIS Z 2382)を用いた場合を想定し、気象データ、海からの距離、風速、湿度等を加味して理論計算した結果と比較した。
【0067】
結果を図7に示す。ガーゼ法の場合には数値が一定あるいは上昇している箇所において、エジェクタ方式の改良システムでは、数値が低下する場合があった。
【0068】
この結果から、エジェクタ方式により発生させた霧が排気され、本来経時的に上昇すべきはずの塩分濃度が低下してしまうことが考えられた。
【0069】
(実施例)
エジェクタ方式を採用しない本発明の気中塩分測定システムによる回収率について検討した。具体的には、比較例と同様に2つのシステムを連結して回収率を求めた。また、パラメータとして、送液流量と、接触管10の有無、外気導入管3の長さを振って実験を行った。但し、外気導入管3の外気吸引部3aから外気吸引部3aとフィルタ部材5との間の純水供給位置までの長さは全て一定とした。
【0070】
本実施例では、図1に示す気中塩分測定システムを用いた。密閉容器2の容積は0.4Lとした。また、排気装置(吸引ポンプ)4による排気速度は10L/minとした。
【0071】
外気導入管3の内径は8mmとした。フィルタ部材5は目開き0.8mmのものを用いた。また、接触管は、筐体10aの外径を12mm、内径を9mmとし、管10bの長さを16mm、管10bの外径を1.5mm、内径を1.0mmとし、本数を30本とした。また、筐体10bの両端の開口部に接続される管10f及び10gは、外径6mm、内径 4mmとした。仕切り版10cと筐体10aの両端との間の隙間10d、10eは0.2 mmとした。
【0072】
また、環状部材13は、上端の内径を6mm、下端の内径を25mmとして、外気排出部3bを包囲するように外気導入管3に装着した。また、外気排出部3bから密閉容器2内の純水の水面までの距離はおよそ15mmとし、環状部材13の下端から密閉容器2内の純水の水面までの距離はおよそ3mmとし、外気排出部3bからの純水の流下ないしは滴下による密閉容器2内の純水の水面での純水の飛散が殆ど起こらないことを確認した。送液ポンプ8による純水の送液流量は約10〜40mL/minに設定した。
【0073】
結果を図8に示す。▲が外気導入管3の長さが120cmで接触管10が無い場合の結果を示し、■が外気導入管3の長さが120cmで接触管10が有る場合の結果を示し、○が外気導入管3の長さが250cmで接触管10が無い場合の結果を示し、×が外気導入管3の長さが150cmで接触管10が有る場合の結果を示している。いずれの場合にも、回収率(捕集効率)は97%を超え、比較例で使用したエジェクタ方式の改良システムと比較して極めて高い回収率を達成できることが明らかとなった。外気導入管3の長さを長くするほど、また送液流量を多くするほど、回収率が高まることが明らかとなった。また、接触管10を備えることで、外気導入管3の長さを短くしても、極めて高い回収率(99〜100%)を達成できることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0074】
1 気中塩分測定システム
2 密閉容器
3 外気導入管
3a 外気吸引部
3b 外気排出部
4 排気装置
5 フィルタ部材
6 第1配管
7 第2配管
8 送液ポンプ
10 接触管
12 測定装置
13 環状部材
14 圧縮機
16 純水貯留タンク
17 切替手段
18 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定外気に含まれる塩分を測定する気中塩分測定方法であって、
純水を入れた密閉容器に、両端が開口している外気導入管を差し込み、前記密閉容器の外側に位置する開口部を外気吸引部とすると共に前記密閉容器の内側に位置する開口部を外気排出部とし、且つ前記外気排出部は前記密閉容器内の純水と接触しない位置に配置し、前記外気導入管内にはフィルタ部材を設け、
前記外気導入管内の前記外気吸引部と前記フィルタ部材との間の位置に前記密閉容器内の純水を供給して前記外気排出部に向けて前記純水を流通させることにより、前記密閉容器内の純水が前記外気導入管内を流通して前記外気排出部から再び前記密閉容器内に戻る純水循環路を形成する一方で、
前記密閉容器内を排気することにより、前記被測定外気に含まれる固形物を前記フィルタ部材で除去しながら前記被測定外気を前記外気導入管の前記外気吸引部から前記外気排出部に向けて流通させて、前記外気導入管内を流通する前記純水に前記被測定外気に含まれる塩分を溶け込ませ、
前記密閉容器内の純水の電気伝導度の測定値から前記被測定外気に含まれる塩分を測定することを特徴とする気中塩分測定方法。
【請求項2】
前記密閉容器内の純水の量が低下したときに、前記外気導入管内の前記外気吸引部と前記フィルタ部材との間の位置に純水を供給することにより、前記密閉容器内に純水を補給する請求項1に記載の気中塩分測定方法。
【請求項3】
被測定外気に含まれる塩分を測定する気中塩分測定システムであって、
純水を入れた密閉容器と、
両端が開口している管であって前記密閉容器に差し込まれて前記密閉容器の外側に位置する開口部を外気吸引部とすると共に前記密閉容器の内側に位置する開口部を外気排出部とし且つ前記外気排出部は前記密閉容器内の純水と接触しない位置に配置されている外気導入管と、
前記密閉容器内を排気する排気装置と、
前記外気導入管内に設けられたフィルタ部材と、
前記密閉容器内の純水に一端が接触された第1配管と、
前記外気導入管の前記外気吸引部と前記フィルタ部材との間の位置に一端が接続された第2配管と、
前記第1配管の他端と前記第2配管の他端とを接続する送液ポンプと、
前記密閉容器内の純水の電気伝導度を測定する測定装置とを少なくとも備え、
前記送液ポンプを稼働させることにより、前記密閉容器内の純水が前記第1配管、前記第2配管及び前記外気導入管の順で流通して前記外気排出部から再び前記密閉容器内に戻る純水循環路が形成される一方で、
前記排気装置を稼働させることにより、前記被測定外気に含まれる固形物を前記フィルタ部材で除去しながら前記被測定外気を前記外気導入管の前記外気吸引部から前記外気排出部に向けて流通させて、前記外気導入管内を流通する前記純水に前記被測定外気に含まれる塩分を溶け込ませ、
前記測定装置により得られる前記密閉容器内の純水の電気伝導度の測定値から前記被測定外気の塩分を測定することを特徴とする気中塩分測定システム。
【請求項4】
純水を貯留する純水貯留タンクと、
前記外気導入管への前記純水の供給源を前記密閉容器内から前記純水貯留タンクに切り替える切替手段と、
前記密閉容器内の純水の量が規定値より低下したときには前記切替手段を作動させて前記純水の供給源を前記純水貯留タンクに切り替えると共に前記密閉容器内の純水の量が規定値以上のときには前記切替手段を作動させて前記純水の供給源を前記密閉容器内に切り替える制御手段とを備える請求項3に記載の気中塩分測定システム。
【請求項5】
前記外気導入管の前記フィルタ部材と前記外気排出部との間に前記外気導入管よりも外径の小さな管が並列して複数本備えられている請求項3に記載の気中塩分測定システム。
【請求項6】
下端から上端に向けて内径を漸次縮径する逆漏斗形状の環状部材が前記外気排出部を包囲するように前記外気導入管に備えられ、またはその上端と前記外気排出部を接続するように前記外気導入管に備えられている請求項3に記載の気中塩分測定システム。
【請求項7】
前記密閉容器内に圧縮ガスを供給する圧縮機を備え、
前記排気装置を停止すると共に前記圧縮機から前記圧縮ガスを前記密閉容器内に供給して前記圧縮ガスを前記外気排出部から前記外気吸引部に向けて流通させ、前記フィルタ部材を閉塞している付着物及び前記フィルタ部材上に堆積した固形物を前記外気導入管の前記外気吸引部から排出する請求項3に記載の気中塩分測定システム。

【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−38956(P2011−38956A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188233(P2009−188233)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【出願人】(598023425)株式会社電力テクノシステムズ (7)
【Fターム(参考)】