説明

気体に含まれるナノ粉体および超微粒粉体を回収する装置

本発明は、安定な懸濁液を生成することにより、気体に担持されたナノメートルまたはサブミクロンサイズの粒子を回収する装置に関し、装置は容器(3)を含み、容器は、液体を注入する手段(11)と、容器の上部且つ粒子濾過手段の近傍に設けられた気体排出手段(4)と、粒子懸濁液排出手段(9)とを備える。前記発明はさらに、気体に担持された粒子を移動させて液体中に分散させる液体リングポンプ(2)を備ええ、ポンプは、ナノメータまたはサブミクロンサイズの粒子を担持する気体をポンプに導入する手段と、少なくとも1種類の液体をポンプに注入する手段(15)と、移動の後に得られた混合物を排出する手段とを備える。容器はさらに、上記混合物を容器に導入する手段と、ミクロンサイズの水滴の霧を生成するように設計された、容器内で浸漬される少なくとも1つの圧電ペレット(7)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体に含まれ得るナノメータサイズの粒子(<100ナノメータ;ナノ粒子またはナノ粉体としても知られる)およびサブミクロンサイズの粒子(100〜500ナノメータ;粒子または超微粒粉体としても知られる)の回収を可能にする装置に関する。
【0002】
簡潔のため、以下ではナノ粒子を例として述べる。
【背景技術】
【0003】
ナノ粒子はその特定の性質のために、過去数年に亘って関心が高まっている。ナノ粒子は実際、例えば航空(ナノ複合体として)、自動車(タイヤ、塗料、触媒において)、エネルギー(核または光起電エネルギー、石油化学品)、化粧品(構造化作用物質またはUVバリアとして)、マイクロエレクトロニクスおよび農業食品等の様々な産業において原料または製品原材料として用いられている。
【0004】
粒子のサイズは、その毒性を大きく影響する要因である。従ってマイクロメータのスケールでは無害とされている状態でも、ナノメータのスケールでは非常に有毒となることがある。
【0005】
そのため、産業規模でナノ粒子生産プロセスを開発すること、または単にナノ粒子を間接的に生産するプロセスを開発する(その場合、ナノ粒子は閉じこめて回収する必要のある廃棄物である)だけでも、上記ナノ粒子の生産、取り扱いおよび集積の部門の担当者および環境の両方を保護する予防策を講じておかないと、危険なことがある。
【0006】
従って、ナノ粒子の回収を適切に制御する必要がある。この目的のために、ナノ粒子の回収には3つのタイプがある。すなわち、乾燥プロセスによる回収、液体プロセスによる回収、および湿式プロセスによる回収である。
【0007】
乾燥プロセスによってナノ粒子を回収する装置は概して、気体プロセスによるナノ粒子の製造方法(換言すると、気体フラックス中でナノ粒子を生産するプロセス)で用いられる。上記装置は概して、ナノ粒子の通過は阻止するがプロセスガスは逃がす濾過バリアを備えた回収器を含む。サイクロン装置または静電式装置も用いることができる。
【0008】
これらの乾燥プロセス回収装置では、ナノ粒子を袋または容器に入れるために、回収器が充填されているときにナノ粒子を回収する。
【0009】
乾燥プロセスによる回収では、この作業を行う作業員をナノ粒子に曝す危険が非常に高い。実際、回収中には回収器は開いており、ナノ粒子(塊状であることが多い)は揮発性が高いため、直ちに空気中に浮遊し、そのため空気によって人体への入口(鼻孔、口、耳など)まで運ばれる可能性がある。
【0010】
関係する作業員の保護を確実にする1つの方法は、つなぎ服と、適切な濾過能力を有する呼吸装置または独立した回路から空気を入れることによって機能する呼吸装置とを作業員に与えることである。
【0011】
しかしこのような設備は、多大に余分なコスト(作業以外にかかる時間が長いこと、つなぎ服、フィルタなどの購入)がかかる。その上、上記ナノ粒子は揮発性であるため、閉じ込める対策を講じなければ、施設内の様々な場所に堆積し得る。このことは施設を清掃する作業員だけでなく環境にもリスクを与える(水、空気および土壌の汚染)。従って装置への閉じ込め手段も、施設の設計およびその稼働(濾過装置の交換、制御)に多大に余分なコストがかかる。
【0012】
液体プロセス回収装置は、気体中に存在するナノ粒子を液体中に懸濁させ、その後該懸濁液を回収する。
【0013】
湿式プロセス回収装置は、液体プロセス回収と同じ原理で動作するが、懸濁液を回収するのではなく濾過し、フィルタ上に残存する湿った粒子を回収する。
【0014】
ナノメータまたはサブミクロンサイズの粒子を懸濁させる装置の例が、文献1に記載されている。この装置では、懸濁させる粒子フラックスを、液体を含有する容器に送る。液体中での粒子の懸濁は、単にバブリングによって、散布器を用いて粒子フラックスを直接液体に入れることによって得ることができる。散布器は多数の孔があいたスリーブを有する。上記特定の設計を有する散布器は、粒子を含む気体フラックスと液体との間で表面交換を最大にすることができる。液体中での粒子の懸濁は、気体フラックス中で液体を蒸発させることによって得られる。
【0015】
ナノ粒子を回収する液体プロセス方法または湿式プロセス方法は、乾燥プロセス回収方法に比べて人および環境に与えるリスクが少ない。しかし公知の液体プロセスまたは湿式プロセス回収装置、特に文献1に記載の装置は、ナノ粒子を大量に製造する場合(すなわち、気体フラックスが1分1リットル当たり12.10個より多い粒子を含む場合)にはあまり効率的でない。実際、この場合ナノ粒子の吸湿力は、液体によって全粒子を良好に捕獲するには不十分である。その結果、粒子の一部は気体中で自由になるため、気体を精製(例えば、濾過バリアを備えた回収器を用いるなどにより)して、最終的に気体が担持するナノ粒子が雰囲気中に存在しないようにすることが必要となる。気体中の上記ナノ粒子を閉じ込めようとすると、多大に余分なコスト(作業以外にかかる時間が長いこと、フィルタの購入)がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】[1] 国際公開WO2007/068805 A1
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】[2] Bisa K. et al., “Zerstaubung von Flussigkeitenmit Ultraschall”, Siemens Z., 28 (8), p 341-347 (1954)
【非特許文献2】[3] J. Spitz et al., “La pulverisation par ultra-sons appliquee a la spectrometrie d'absorption atomique”, Applied optics, 7 (7), p 1345-1349 (1968).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、気体フラックス中のナノメータまたはサブミクロンサイズの粒子の液体または湿式プロセスによる回収を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的は、ナノ粒子の安定懸濁液を生成することにより、気体に担持されたナノメータまたはサブミクロンサイズの粒子を回収する装置であって、装置は容器を含み、容器が、
少なくとも1種類の液体を容器に注入する手段と、
粒子濾過手段の後段の容器の上部の気体排出手段と、
粒子懸濁液排出手段と、
を備え、
装置はさらに、気体に担持されたナノメータまたはサブミクロンサイズの粒子の全体または一部を移動させて液体中に分散させる液体リングポンプを備え、ポンプが、
ナノメータまたはサブミクロンサイズの粒子を担持する気体をポンプに導入する手段と、
少なくとも1種類の液体をポンプに注入する手段と、
ナノ粒子を担持する液体と粒子の移動の終端で得られた気体とを含む混合物を排出する手段と、
を備えることを特徴とし、
容器がさらに、
前記混合物を容器に導入する手段と、
容器内で液体に浸漬するための、少なくとも1つの圧電ペレット型電気音響変換器であって、前記変換器のレベルで生成された音波が液体の表面まで伝搬し液体に浸漬され、前記液体の表面上でミクロンサイズの水滴の霧を生成する電気音響変換器と、
を備えることを特徴とする装置によって達成される。
【0020】
水滴はマイクロメータサイズ、換言すると、1から1000マイクロメータまたはそれより小さい(サブミクロン)の直径を有する。水滴は0.3〜10マイクロメータのサイズであることが好ましい。
【0021】
上記少なくとも1つの変換器が浸漬する液体は通常、装置の動作開始時には何も担持しておらず、装置の動作中に次第に粒子を担持するようになる。
【0022】
本発明によると、用いる圧電ペレット型電気音響変換器は、高周波(800kHz〜3MHz)および高電力(100Wを超える)で超音波を発する。
【0023】
特定の実施形態によると、容器は2つのコンパートメントに分割されており、一方のコンパートメントに入る液体はフィルタを通過することによって他方のコンパートメントに入ることができ、前記フィルタは、粒子が液体を通過することを阻止するように設計されており、液体は、フィルタを通過した後、少なくとも1種類の液体を液体リングポンプに注入する手段および/または少なくとも1種類の液体を容器に注入する手段に供給される。
【0024】
好適には、2つのコンパートメントは一方が他方の上に位置づけられている。
【0025】
この特定の実施形態では、前記少なくとも1つの変換器はフィルタ上に設けられており、液体/空気界面のレベル以下に維持されている。変換器は、液体/空気界面から約10cm下に設けられるのが好ましい。例えば、前記少なくとも1つの変換器が設けられているコンパートメントの容量および前記コンパートメントに含有されている液体の容量は、変換器がフィルタから約30cm上で且つ液体/空気界面から10cm下に設けられるようになっている。
【0026】
一実施形態によると、混合物を容器に導入する手段は、前記少なくとも1つの変換器が浸漬されている容器に含有された液体上に現れるように位置づけられている。
【0027】
別の実施形態によると、混合物を容器に導入する手段は、前記少なくとも1つの変換器が浸漬されている容器に含まれた液体に入るように位置づけられている。混合物を導入する手段は、それが設けられるコンパートメントの底面またはフィルタに対して横切る方向で容器に入るように位置づけられるのが好ましい。混合物を導入する手段は、前記少なくとも1つの変換器の下に位置づけられるのが好ましい。混合物を導入する手段は、それが設けられるコンパートメント内でできるだけ低く位置づけられるのが好ましい。この実施形態では、混合物を容器に導入する手段が、多数の孔が開いたスリーブを含む散布器を含む。
【0028】
好ましくは、装置は、気体排出手段内にある液体を、濾過手段の後段に導入する手段をさらに含む。
【0029】
好ましくは、圧電ペレット型電気音響変換器の数は、粒子を担持する液体が変換器の上にある状態で、変換器からの液体の高さが10cmであるとき、液体400mL当たり1個である。液体400mL当たり1個の変換器という値は、選択した圧電ペレットに適応させるものである。例えば、高さ45mmの液体の下に浸漬しているときに最適の状態で動作し、水滴400cc/hを生成する中国製のペレット(Pro−WaveブランドのモデルM165D25)がある。SingceramicsブランドのモデルAW16Y20120F2またはAW16Y20120F2のペレット(1.6MHzおよび2.4MHz)を用いることもできる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る回収装置は、ナノメータまたはサブミクロンサイズの粒子の液体中での懸濁を最適化することにより、多量の上記粒子を液体プロセスまたは湿式プロセスにより直接回収することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る粒子回収装置の第1の実施例であって、濾過なしに閉回路および/または半開回路で動作する装置を示す図である。
【図2】本発明に係る粒子回収装置の第2の実施例であって、接面方向に濾過すること(タンジェンシャル濾過)により閉回路および/または半開回路で動作する装置を示す図である。
【図3】本発明に係る粒子回収装置の第3の実施例であって、前面濾過により閉回路および/または半開回路で動作する装置を示す図である。
【図4】本発明に係る回収装置の様々な位置で回収した懸濁液または溶液の、紫外線および可視光透過率の測定値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に述べる実施例を添付の図面を参照しながら読むことにより、本発明はよりよく理解でき、他の利点および特徴が明らかになる。本発明は以下の実施形態に限られない。
【0033】
本発明に係る装置では、ナノメータ粒子またはサブミクロン粒子と懸濁液との接触面積を増やすことにより、粒子の懸濁を最適化する。
【0034】
この最適化は、第1に、粒子フラックスを液体リングポンプ(液体リング真空ポンプまたは液体リングコンプレッサとしても知られている)に通すことにより得られる。
【0035】
液体リングポンプは、円筒型本体(ステータとして知られている)とステータのいずれかの側に設けられた2枚のディスクとを含む。ステータ内では、ステータの回転軸から外れた回転軸に沿って羽根つきロータが回転する。2枚のステータは各々、気体が流入したり(吸引ポート)流出したり(排出ポート)する開口部(またはポート)を有する。液体リングポンプはさらに、液体注入口、気体注入口、および液体と気体の混合物用の排出口を含む。動作中、液体が、羽根つきロータから受け取った遠心力によってステータのエッジに押さえつけられ、ステータに対して同心円状のリングを形成する。これによりステータ内の液体は、ロータとステータとの間を確実に密閉状態にすることができる。ロータが偏心しているため、2枚の羽根と液体リングとの間には可変容量が形成される。ロータが回転すると、ステータ内では吸引ポートにおいて圧力が低下して気体が吸い上げられ液体と混合(押し込みフェーズ)し、その後、混合物が排出ポートに達すると、圧縮状態が形成され、圧縮された気体と液体とがステータ外部に排出される(圧縮フェーズ)。
【0036】
本発明に係る装置では、液体リングポンプは、圧力が制御された状態で、粒子を担持する気体フラックスを粒子製造エンクロージャー(例えば、合成リアクタまたは流出処理ユニット)から押し出してステータに運ぶ。その後、粒子を担持する気体フラックスは液体リングに接触し、液体リングは、流体がぶつかる液体壁として作用する。このように液体リングポンプでは、圧縮/押し込みサイクルによって粒子と液体とが強制的に接触する。
【0037】
液体リングポンプの排出口では、ほとんどのナノ粒子は液体中に懸濁しているが、微量の粒子が気体中に残存し得る。
【0038】
粒子の懸濁の最適化は、第2に、その後気体中に残存する粒子を微水滴の霧に通すことにより得られる。
【0039】
より厳密には、液体リングポンプの排出口で得られた、気体とナノ粒子を担持する液体とを含む混合物を、少なくとも1つの圧電ペレット型電気音響変換器を含む容器に送る。ペレットは液体に浸漬しており、マイクロメータサイズ以下の高密度水滴の霧を容器で生成することが可能となる。微水滴のサイズは、0.3から10マイクロメータの間であることが好ましい。
【0040】
水滴の寸法は本質的には、ペレットが浸漬する液体の超音波周波数と物理特性(表面張力および密度)とに依存する(文献2参照)。例えば、水滴のサイズは、振動周波数3MHz、2.1MHz、1.3MHzおよび800kHzに対してそれぞれ0.3μm、1から2μm、4から5μmおよび6から8μmである。
【0041】
水滴の霧は、液体リングポンプに入る際に捕獲されずに気体中に存在している最後のナノ粒子を捕獲する機能を有する。水滴が微細であるほど且つ霧の密度が高いほど、ナノ粒子の捕獲効率は高い。実際、水滴と固体ナノ粒子との衝突の確率を裏付ける必要がある。この確率は主に、粒子(液体および気体)の移動度(速度)と粒子の濃度(水滴の密度または量)とに依存する。
【0042】
液体リングポンプから出てくる、気体と粒子を担持する液体とを含む混合物は、容器内の液体に直接入る(図1、図2、図3)(その際にバブリングが起こり、微量の粒子を担持する気体が霧中に立ち上がる)か、または液体上で直接霧に入る(図示せず)。
【0043】
圧電ペレットを用いると、均一且つ高密度の霧を生成することができる。水滴のサイズ分布は実際、単分散で狭い。この点に関して、エアゾル剤を希釈する効果を有する霧化気体を追加せずに、単一のペレットで、液体400mL中に216cm/hのエアゾル剤を生成することができる。生成した霧の放出または量は、超音波出力(この場合、100Wに達し得る)に依存する。従って容器内の液体量に適した数の圧電ペレットを用いることにより、得られる霧は液体の表面全体を覆うことができる。これは気体と粒子を担持した液体とを含む混合物を直接容器内の液体(泡)に入れる場合に、特に重要である。
【0044】
霧の密度は、ペレットからの液体の高さと超音波出力とに依存する。液体の高さは10cmが好ましい。静止状態、すなわちキャリアガスがない状態では、上記霧の高さは数センチ(約10cm)である。例えば、ペレットを1MHzで動作させて超音波噴霧した場合、気体1リットル当たり18mLのオーダーの密度を達成することが可能である。これは空気噴霧による量(文献3参照)の18倍である。
【0045】
水滴と粒子との接触の確率を上昇させるために、液体エアゾル剤(微水滴)と固体エアゾル剤(ナノ粒子)との混合物を、長さが少なくとも1メータで直径が10mmのオーダーの「コイル」型システムに通すことができる。コイルは他の機能のために、ナノ粒子を担持する微水滴を凝縮させなければならない。コイル表面上での凝縮を向上させるために必要に応じてコイルの壁を冷却してもよい。コイルは例えば金属製であってもよいしセラミック製であってもよい。
【0046】
本発明に係る装置の3つの実施形態を述べる。但し、異なる実施形態における同一の要件は同一の参照符号で示す。
【0047】
3つの実施形態において、ナノ粒子は例えば、合成リアクタ1内でガス相合成プロセス(レーザ熱分解、プラズマ、蒸発−凝縮、燃焼など)により製造する。粒子を担持する気体フラックスは液体リングポンプ2に運ばれる。液体リングポンプ2には液体、例えば水が供給されている。粒子フラックスは液体リングポンプ内で押し込みフェーズおよび圧縮フェーズを受け、ポンプの排出口で、気体と粒子と液体とを含む混合物が回収される。粒子は主に液体によって担持される。
【0048】
この混合物は、液体、例えば水を含み、必要に応じて、分散剤、例えばZschimmer and Schwartzから入手可能なDolapix PC21を1mL含む容器3であって、圧電ペレット7が液体に浸漬するように配置された容器3に運ばれる。圧電ペレット7は、例えば容器の底から30cmの位置に配置されている。容器内の液体の容量は、ペレットが約10cm(RBI社が供給するペレットに基づいて算出した値;電力:0〜100W、周波数800kHz〜3MHz)の液体で覆われるように算出するのが好ましい。
【0049】
ペレットが励起され、容器内の液体上に微水滴霧が形成される。
【0050】
これらの実施形態では、液体リングポンプからの混合物が容器内の液体中に入る。液体から気体が逃げるときにバブリングが起こり、気体は液体の排出口で直接、霧の微水滴に接触する。変形例では、この混合物は液体上にあってもよい。
【0051】
気体は、容器から出るためには、霧を通る必要がある。
【0052】
気体は霧を横切った後、粒子を担持する液体から気体を分離するためのシステムを通ることによって容器から排出される。
【0053】
この分離システムはここでは、コンデンサを備えた洗浄カラム(図示せず)と、気体と液体とを分離するように異なる多孔度を有する少なくとも2種類のフィルタを含む多段濾過システムとを含む。但し、用いるフィルタの数は、確立したい安全レベルに依存して変わる。このように2を超える気体/粒子担持液体または分離器を用いることが全体的に可能である。
【0054】
コンデンサは、ナノ粒子を担持する微水滴の凝縮を可能にする。コンデンサは例えばコイルであってもよい。第1のフィルタは、ステンレス鋼製、セラミック製またはプラスチック製の「ミスト除去パッド」であってもよい。水滴はパッド内で融合する。効率は、水滴の量、パッドの厚みおよびタイプに依存することになる。
【0055】
気体が濾過システムを通過した後、必要に応じて濾過システムの排出口に洗浄ノズル11を設置することによって気体を洗浄してもよい。
【0056】
その後必要に応じてフィルタに気体を通す。これにより気体と共にエンクロージャーを出るナノ粒子の残渣を全く残さないようにすることが可能である。この実施形態および以下の実施形態では、カラムの終端に設けられたフィルタは加熱された金属製のアブソリュートフィルタ12である。加熱により、ナノ粒子を担持しない液体がフィルタ上で凝縮することを回避することができる。通常の動作中では、このような最後のフィルタに粒子が堆積してはならない。
【0057】
温度上昇を制限するために、濾過システムに熱交換機5を接続してもよい。
【0058】
本発明に係る装置は必要に応じて、容器外への気体の吸引を容易にするポンプシステム4と組み合わせてもよい。
【0059】
3つの実施形態の間の相違点は、容器と液体リングポンプへの液体の供給とにある。
【0060】
図1に示す第1の実施形態によると、容器3は、容器底部に位置する排出部と、容器に組み込まれた粘度計14とを備える。懸濁液の粘度が閾値未満であれば、懸濁液を容器から排出して液体リングポンプの方向に再び送り上記ポンプに液体を供給する。容器から排出された懸濁液は、液体リングポンプ以外のものにも供給することができる。例えば図1では、容器から排出された懸濁液は、洗浄ノズル11にも供給される。液体を容器に送り込み洗浄ノズル11に供給するために、ポンプ8、例えばペリスタルティックポンプが用いられる。懸濁液の粘度が決まった閾値に達すると、懸濁液の粘度を閾値未満に維持するために、調節弁を介して追加の液体を回路に注入する。実際、懸濁液の粘度が閾値を超えると、圧電ペレットと液体リングポンプは正常に動作しない。従って閾値の値は、用いるペレットとポンプの特性とに依存する。弁9は実験中、懸濁液を回収することを可能にする。
【0061】
懸濁液の排出速度および補給流量は、装置が動作している間は常に容器内に液体があるように制御することが理解される。
【0062】
さらに、装置内の温度上昇を制限するために、熱交換機5を用いることもできる。
【0063】
第2および第3の実施形態によると、容器内の懸濁液は、液体リングポンプに液体を供給するために液体リングポンプに送り返すか、または洗浄ノズル11に供給する前に濾過する。
【0064】
そのため容器3は、図2および図3に示すように、懸濁液の濾過を可能にする1以上のフィルタ6を備える。懸濁液の濾過は接面方向に行ってもよいし(図2)、前面から(図3)行ってもよい。
【0065】
図2および図3では、フィルタが容器3を一報を他方の上に配置した2つのコンパートメントに分割しており、圧電ペレットはフィルタの上に設けられている。
【0066】
以下、本発明に係る回収装置を用いて安定化したSiC懸濁液を生成することにより、溶媒(例えば、水と分散剤)中のSiCナノ粒子を回収する例を述べる。
【0067】
簡潔のため、用いる装置は濾過しない閉回路(図1)で動作する。従って装置は、液体リングポンプ2と、圧電ペレット7を備えた容器3と、圧電ペレットを動作可能にする高周波発生器と、コンデンサとを含む。図1で用いる濾過システムの2つのフィルタの役割を果たす3つのトラップを追加する。2つのフィルタを3つのトラップに置換するのは、これらの異なるステージにナノ粒子があるかないかをより容易に見えるようにするためである。上記したように、用いるフィルタの数は、確立したい安全レベルに依存する。ナノ粒子フラックスは例えば、液体リングポンプに接続されたナノメータ粉体生成器によって生成される。
【0068】
実験の動作条件は以下の通りである。
【0069】
ナノメータ粉体生成器のパラメータは、150g/hのペースで、直径35nmから37nmのSiCナノ粒子を75g製造するようになっている。ナノ粒子は誘導ガス、例えばアルゴンによって担持され、それによって生成されたフラックスを液体リングポンプに注入する。アルゴンのエントレインメント流(entrainment flow)はここでは、25L/minに設定し、粒子の濃度は例えば、アルゴン1リットル当たり0.1gである。
【0070】
ポンプに注入する液体は例えば、4リットルの水との分散剤1mL、例えばDolapix PC21とを含む溶媒である。分散剤を追加することにより、懸濁液中のナノ粒子の分散を向上させることができる。分散剤は、懸濁液を形成する液体および粉体の性質に応じて選択する。分散剤はまた、磁気バー(magnetic bar)で懸濁液を攪拌することによっても向上させることができる。
【0071】
容器は、直径8cm、高さ15cmの円筒型エンクロージャーである。容器は例えば、水4Lと分散剤1mLとを含む溶媒を含有している。この容量の溶媒の下に、10個の圧電ペレットを等間隔に置く。この実施形態では、10個のペレット全体で、216cm/hより多い液体エアゾル剤が生成される。ペレットは例えば、RBI社製のもの(電力0から100W、周波数800kHzから3MHz)である。ペレットの周波数はここでは800kHzであり、水滴のサイズは6から8マイクロメータである。
【0072】
液体リングポンプから出たナノ粒子を担持する気体−液体混合物は、容器内の霧に直接向けて送られる。
【0073】
但し、容器内の温度は25℃であり、圧力は999mbarである。
【0074】
約10分間の動作後、容器内の溶媒が粒子を担持していることが観察される。
【0075】
気体中の粒子は、霧の水滴に捕獲される。水滴はコンデンサの壁上で凝縮し、その後ナノ粒子を担持した水滴の凝縮が観察される。
【0076】
ナノ粒子を担持した水滴の一部は、コンデンサの壁上で凝縮する時間がなく、第1のフィルタ(第1のトラップ)に捕獲される。第1のフィルタはここでは、液体を含み気体が泡立つエンクロージャーを含む。このトラップの水は、懸濁液中にナノ粒子があることにより曇っているが、以下に述べる2つのトラップ(第1のトラップの後段に設けられる)は透明なままである。
【0077】
30分の動作の終了時には、SiCナノ粒子75グラムが装置に連続注入されている。
【0078】
図4は、容器3のレベル(1000倍に希釈)および3つのトラップ各々のレベル(第1のトラップで回収した溶液は透過率の測定前に100倍に希釈される)で回収した懸濁液または溶液の、紫外線および可視光透過率の測定値を示す。液体リングポンプに導入した、水とDolapix PC21との混合物の透過率も示す。100%(±1)という透過率の値は、第2のトラップおよび第3のトラップ(それぞれ、中間トラップおよび最終とラップ)には粒子が存在しないことを示す。従ってこの結果は、本発明に係る回収装置の効率を示す。
【0079】
比較のために、文献1に記載され参考装置として用いる装置に、アルゴン中のSiCナノ粒子75gを150g/hの流量で注入して、同じ実験を行った。この装置は、上記実験で用いたものと同一の円筒型エンクロージャー(同一形状およびサイズ)を含む。粒子フラックスを、4Lの水と1mLの分散剤、例えばDolapix PC21とを含む溶媒に送り、粒子を超音波バーで分散させた。フラックスの実験条件とベクター気体の性質は上記実験で用いたものと同一である。
【0080】
参考装置の3つのトラップとその排出口(換言すると、雰囲気中)では粒子の存在が観察されるが、本発明に係る装置の第2および第3のトラップでは粒子の堆積は検出されない。
【0081】
このように本発明に係る装置の特定の設計は、ナノ粒子の吸湿力はナノ粒子と液体との接触面積を増やすことにより向上するという事実に基づき、懸濁液中のより多くのナノ粒子回収することを効果的に可能にする。このようにして大量生産におけるナノ粒子の懸濁が最適化される。
【0082】
本発明に係る回収装置は様々な利点を有する。
【0083】
様々なプロセスまたは産業施設において非常に効率的にナノ粒子を捕獲することができる。
【0084】
さらに、本発明に係る装置は、ナノ粒子の安定した懸濁液を生産することを可能にする。このことは、安定した懸濁液の実現が特に求められていることを考えると、特に評価できる。実際、通常、ナノ粒子の実装またはパッケージングは、ナノ粒子の懸濁液を溶媒および様々な製剤形態に入れる工程を含む。従って、これらの懸濁液の生産および安定化は、ナノ粒子の実装またはパッケージングにおいて重要な工程である。例えば、ミネラルサンクリームの場合、時間経過後の製品の質は特に、活性相(通常、酸化チタンTiOのナノ粒子)の良好な分散に依存する。ナノ複合体の質を上げる様々なプロセスのひとつとして、電気泳動浸透(electrophoretic infiltration:EPI)プロセスがある。これは、特にナノ粉体の安定性、粘度、移動度および濃度の面で特定の性質を有するナノ粒子の懸濁液を調製することを必要とする。場合によっては、ナノ粉体を懸濁させるために表面処理が必要である。ナノ粉体の懸濁の最適化は、印刷または「インクジェット」技術(例えば「ロールツーロール」、「マイクロコンタクトプリント」または「スタンプ印刷」(プリント回路、光電池(「ナノインク」)、フラットスクリーンなど))から派生したマイクロエレクトロニクスプロセスにおいても根本的なものである。さらに、ナノ粉体の懸濁は、作業の安全性を保証する。
【0085】
ナノ粒子の懸濁液は、回収した後は、造粒システム(噴霧乾燥またはフリーズドライ)、ナノ粒子を機能的なものにすることができるシステム(例えばコールドプラズマ)、または特性装置(粒度計、濁度計、粘度計、分光計など)に送ってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子の安定な懸濁液を生成することにより、気体に担持されたナノメータまたはサブミクロンサイズの粒子を回収する装置であって、前記装置が容器(3)を含み、前記容器(3)が、
少なくとも1種類の液体を前記容器に注入する手段と、
粒子濾過手段(10)の後段の前記容器の上部に設けられた気体排出手段と、
粒子懸濁液排出手段(9)と、
を備え、
前記装置はさらに、気体に担持された前記ナノメータまたはサブミクロンサイズの粒子の全体または一部を移動させて液体中に分散させる液体リングポンプ(2)を備え、前記ポンプが、
前記ナノメータまたはサブミクロンサイズの粒子を担持する気体を前記ポンプに導入する手段と、
少なくとも1種類の液体を前記ポンプに注入する手段と、
前記ナノ粒子を担持する前記液体と粒子の移動の終端で得られた前記気体とを含む混合物を排出する手段と、
を備えることを特徴とし、
前記容器がさらに、
前記混合物を前記容器に導入する手段と、
前記容器内で液体に浸漬するための、少なくとも1つの圧電ペレット型電気音響変換器(7)であって、前記変換器のレベルで生成された音波が前記液体の表面まで伝搬し前記液体に浸漬され、前記液体の表面上でミクロンサイズの水滴の霧を生成する電気音響変換器(7)と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記容器(3)が2つのコンパートメントに分割されており、一方のコンパートメントに入る液体はフィルタ(6)を通過することによって他方のコンパートメントに入ることができ、前記フィルタは、前記粒子が前記液体を通過することを阻止するように設計されており、前記液体は、前記フィルタを通過した後、少なくとも1種類の液体を前記液体リングポンプに注入する前記手段および/または少なくとも1種類の液体を前記容器に注入する前記手段に供給される請求項1に記載のナノメータまたはサブミクロンサイズの粒子を回収する装置。
【請求項3】
前記2つのコンパートメントは一方が他方の上に位置づけられている請求項2に記載のナノメータまたはサブミクロンサイズの粒子を回収する装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの変換器(7)が前記フィルタ(6)上に設けられている請求項2に記載のナノメータまたはサブミクロンサイズの粒子を回収する装置。
【請求項5】
前記混合物を前記容器(3)に導入する前記手段が、前記少なくとも1つの変換器(7)が浸漬されている前記容器に含まれた前記液体上にあるように位置づけられている請求項1に記載のナノメータまたはサブミクロンサイズの粒子を回収する装置。
【請求項6】
前記混合物を前記容器に導入する前記手段が、前記少なくとも1つの変換器(7)が浸漬されている前記容器に含まれた前記液体に入るように位置づけられている請求項1に記載のナノメータまたはサブミクロンサイズの粒子を回収する装置。
【請求項7】
前記混合物を前記容器(3)に導入する前記手段が、多数の孔が開いたスリーブを含む散布器を含む請求項6に記載のナノメータまたはサブミクロンサイズの粒子を回収する装置。
【請求項8】
前記気体排出手段内にある液体を、前記濾過手段の後段に導入する手段をさらに含む請求項1に記載のナノメータまたはサブミクロンサイズの粒子を回収する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−511378(P2013−511378A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539317(P2012−539317)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067681
【国際公開番号】WO2011/061224
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(506423291)コミサリア ア レネルジィ アトミーク エ オ ゼネ ルジイ アルテアナティーフ (85)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【Fターム(参考)】