説明

気体の浄化装置

【課題】 酸化物半導体による効果的な触媒作用を利用して、VOCなどの有害物質を効果的に分解除去することができる気体の浄化装置を提供する。
【解決手段】 被処理気体を分解して処理する浄化処理部20と、浄化処理部20から排出される浄化後の気体と浄化処理部20に送入される被処理気体との熱交換器10を備え、浄化処理部20は、被処理気体の処理空間を構成する処理容器22内に、多孔体からなる基材に酸化物半導体を担持させた触媒体31と加熱部32、24とを備え、触媒体31の端部は、処理容器22の壁に設けられた支持体34に固定され、支持体34と触媒体31との接触部において、被処理気体が通過・漏洩できない構造を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compound)、排気ガス等の有害物を含む気体の浄化に用いる浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、プラスチックやVOC等の気体を分解して浄化する方法として、加熱した酸化物半導体の触媒活性作用を利用する方法を提案した(特許文献1)。酸化クロム、酸化チタン等の酸化物半導体を350〜500℃程度に加熱すると、正孔が大量に生成され、この正孔の強い酸化力により、被分解対象物は小分子に裁断化され、最終的にはこれらの小分子が空気中の酸素と反応して、水と二酸化炭素に完全分解される。
【0003】
また、本発明者は、酸化物半導体を利用する浄化装置として、ハニカムあるいは網目状の多孔体からなる通気性を有する基材に酸化物半導体を担持して形成した触媒部と、この触媒部を加熱するヒータとを備える装置を提案した(特許文献2)。この浄化装置は、ステンレス等からなる矩形の枠体内に、通気性のあるブロック状に形成した基材に酸化物半導体を担持して形成した触媒体とヒータを対とした触媒ユニット、ならびに加熱用のヒータのみのユニット、さらに触媒体のみのユニットを用いて構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4517146号
【特許文献2】特開2010−214359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した触媒ユニットを用いて浄化装置を構成する方法は、ユニットを任意に組み合わせて積層することが可能であり、触媒部の加熱温度を独立に制御することや、処理対象となるガスの種類、ならびに処理量に応じて装置を任意に構築することが容易であるという利点がある。一方、被処理気体の流量やガス濃度、使用条件に応じて、酸化物半導体による触媒作用が効率的になされるように、触媒ユニットの積層数、ヒータ・ユニットならびに触媒のみのユニットの配置を組み替える必要があり、温度制御も各ユニットで行うと言った煩雑さもあった。
【0006】
また、触媒部を複数段積層する従来の構造では、上述の煩雑さに加えて、下記に述べる2つの主な問題点があった。1つは触媒ユニット内で起こる問題であり、触媒担持ハニカム(触媒体)とこれを支える支持体の壁との間に隙間を生じ易く、被処理気体が触媒担持ハニカムを通過せずに、壁を伝って漏洩することであった。このため、漏洩を防止する為に、触媒担持ハニカムと支持体の壁の間をシール材で目詰めする必要があった。第2の問題点は、積層された触媒ユニット間にガスの漏洩を防ぐために挿入されているパッキング・シートが磨耗しやすいことであった。従って、従来は、触媒担持ハニカムの交換時にシールのやり直しと、パッキング・シートの新規交換を行わなければならず、材料のコストならびに作業が煩雑となるためコスト高とならざるを得なかった。特に、高温酸素下で使用できるパッキング・シートは少なく、高価である。
【0007】
本発明は、これらの課題を解決すべくなされたものであり、酸化物半導体による効果的な触媒作用を発揮させ、VOCなどの有害物質を効果的に分解除去することができる気体の浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る気体の浄化装置は、被処理気体を分解して処理する浄化処理部と、浄化処理部から排出される浄化後の気体と浄化処理部に送入される被処理気体との熱交換器を備え、前記浄化処理部は、被処理気体の処理空間を構成する処理容器内に、多孔体からなる基材(例えばハニカム構造を持つ基板)に酸化物半導体を担持させた触媒体と、これを加熱する加熱部とを備え、前記触媒体の端部は、処理容器の壁に設けられた支持体に固定され、該支持体と触媒体との接触部において被処理気体が通過・漏洩できない構造を持つことを特徴とする。
本発明に係る気体の浄化装置は、浄化処理部と排熱利用の熱交換器とを組み合わせた構造からなり、浄化処理部は従来の触媒ユニットや前置加熱ユニットを積層することなく、1つのシステムの中に組み込み、一体化した構造をとることが特徴である。一体化構造とすることにより、これまでのように高価なパッキング・シートを用いて触媒ユニットや前置加熱ユニットを積層する必要がない。
なお、触媒体と加熱部は対として設ける必要はなく、触媒体と加熱部とを別個に設けても良い。また、触媒体と加熱部の配置数(段数)も限定されるものではない。
【0009】
前記加熱部は、前記触媒体に被処理気体が進入する前段に、被処理気体を加熱するプリヒート部として設けられていることにより、被処理気体を効果的にかつ均一に加熱して触媒体による分解作用を効率的に行うことができる。また、装置の始動時にプリヒートを点灯し、所定の温度への立ち上げ時間を短縮することも可能である。
前記触媒体は、触媒体を収容する支持ボックスを介して前記支持体に支持され、前記支持ボックスあるいは前記支持体との接触部において被処理気体の通過・漏洩を阻止して支持された構成とすることもできる。これにより、被処理気体を確実に触媒体に接触させることができ、被処理気体の分解処理を確実に行うことができる。
【0010】
また、前記熱交換器は、前記浄化処理部の浄化気体が排出される側に、前記処理容器と外容器とを連通させるとともに、前記外容器内に被処理気体を通流させる通気パイプを配し、該通気パイプから送出される被処理気体が、前記前記処理容器の上流側(前段側)に流入することにより、浄化処理部で浄化された浄化気体と外部から導入される被処理気体とが効果的に熱交換され、浄化処理部における被処理気体の分解を効率的に行うことができる。
前記外容器には、浄化気体が通過する屈曲流路を構成する通気制御板が、延出向きを互い違いとして複数段に配置され、前記通気パイプが前記通気制御板に嵌挿されていることにより、熱交換器における浄化気体と被処理気体の熱交換が効率的になされる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る気体の浄化装置によれば、浄化処理部と熱交換器を組み合わせて構成したことにより、酸化物半導体を担持させた触媒体による被処理気体の分解作用を効率的に行うことができる。また、浄化処理部の壁に設けられた支持体に触媒体の端部を被処理気体の漏洩を遮断するように固定されていることにより、被処理気体の漏出を防止して確実に有害物を分解処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】気体の浄化装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】浄化処理部の構成を示す断面図である。
【図3】図2のC−C’線における平面図である。
【図4】触媒体を支持体により処理容器に支持する構成を示す断面図である。
【図5】支持体により触媒体を支持した状態を示す処理容器の平面図である。
【図6】浄化処理部の他の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(熱交換器の構成)
図1は、本発明に係る気体の浄化装置の一実施形態の全体構成を示す。本実施形態の浄化装置は、機枠5の上部に設置した熱交換器10と、熱交換器10の下側に設置した浄化処理部20とを備える。
熱交換器10は、VOC等の有害物質を含む導入気体(冷温気体)と、浄化処理部20において浄化された気体(高温気体)とを熱交換させ、導入気体を加温して浄化処理部20に送入し、浄化気体を冷却して熱交換器10から送出させる作用をなす。
【0014】
熱交換器10は、外容器11と、外容器11と長手方向を平行にして外容器11内に配置した通気パイプ12と、外容器11内における浄化気体の通流を制御する通気制御板13を備える。通気パイプ12の上端には被処理気体を導入する導入管14がパイプ連結室14aを介して接続され、通気パイプ12の下端には浄化処理部20に被処理気体を送出する送出管15がパイプ連結室15aを介して接続されている。導入管14には被処理気体を導入する導入用のファンが接続され、被処理気体は導入管14から熱交換器10内に導入される。
【0015】
通気パイプ12として、本実施形態においてはステンレスからなるフレキシブル管を使用し、パイプ連結室14a、15aの面内に通気パイプ12を8本配置する構成としている。フレキシブル管は管体の外面を波形としていることから、流通気体との接触面積が大きく、熱交換性が良好になるという利点がある。
【0016】
外容器11の上部には、外容器11内を下方から上方へ移動した浄化気体を排出する排気管16が設けられる。外容器11の下部には、浄化処理部20に接続する接続管17が設けられる。
通気制御板13は、接続管17から外容器11内に流入して排気管16から排出される浄化気体の流路が屈曲流路となるように設けたもので、外容器11内の下部から上部へ所定間隔をあけ、外容器11の対向する側板間を、延出方向が互い違いとなるに仕切るように設けている。接続管17から外容器11に流入した浄化気体は、通気制御板13により、外容器11内を屈曲しながら上方に移動し排気管16から排出される。通気制御板13には通気パイプ12が嵌挿され、通気制御板13は通気パイプ12を通過する被処理気体と熱交換する熱交換フィンとして作用する。
【0017】
浄化処理部20においては酸化物半導体を担持させた触媒部が350〜500℃といった高温に加熱されるから、触媒部に接触する気体も高温に加熱されて熱交換器10に流入する。熱交換器10内においては、熱交換器10に導入された被処理気体は高温に加熱された浄化気体と熱交換し、高温に加熱された状態で浄化処理部20へ送出される。
熱交換器12と浄化処理部20とを接続する連絡管18は、浄化処理部20の下部に接続し、加熱された被処理気体は浄化処理部20の下部から浄化処理部20に流入する。
【0018】
浄化処理部20においては、触媒作用が効果的に発揮されるように被処理気体をあらかじめ加熱して触媒部に接触させている。本実施形態においては、熱交換器10の作用によって、被処理気体をかなりの高温まで加熱した状態で浄化処理部20に送入するから、浄化処理部20においては、効率的にかつ均一に被処理気体が加熱された状態で分解処理され、触媒部により効率的にかつ確実に分解処理される。
【0019】
(浄化処理部の構成)
浄化処理部20は、矩形の有底の箱体状に形成した処理容器22の下段(前段)側に被処理気体を加熱するプリヒート部24を設け、プリヒート部24の上段(後段)側に被処理気体を分解処理する処理部30を設けたものである。
【0020】
プリヒート部24は、ヒータ24aを高さ方向(上下方向)に所定間隔をあけ、ヒータ24a間に拡散板25を配して複数個配置している。拡散板25は処理容器22に流入した被処理気体を処理容器22内の全体に拡散させながら移動させるためのもので、金属板に網目状に透孔を形成したものである。本実施形態においては、プリヒート用のヒータ24aを3段(処理容器20の対向壁面から延出する一対のヒータ24aが1段に相当)設けている。
【0021】
プリヒート用のヒータ24aは、処理容器22の対向する一対の側面板間に、1段ごとに交互に処理容器22内に差し込むようにして配置する。ヒータ24aには、平面方向から見てU字形に屈曲した形状のシースヒータを使用している。処理容器22の側面板とヒータ24aとの連結部分は、セラミック製のシール材を介して気密に封止する。
処理容器22の底部には熱交換器10から送出される被処理気体を導入する導入室23を設ける。導入室23に流入した被処理気体は、導入室23から拡散しながらプリヒート部24を通過することによって、均一に加熱される。
【0022】
被処理気体は熱交換器10内を通過する際に加熱されるから、プリヒート部24のヒータ24aの配置数や加熱温度についてはさほど調整することなく使用することができる。熱交換器10を設けていない浄化装置の場合は、処理部30において被処理気体を確実に分解するために、プリヒート部24において被処理気体を所定温度にまで加熱する制御は非常に重要である。被処理気体の温度や被処理気体の流量により、プリヒート部24における被処理気体の加熱温度は大きくばらつくから、使用条件に合わせてプリヒート部24に配置するヒータ24aの配置数や配列、ヒータの加熱温度等を適宜調節しなければならない。
【0023】
また、処理容器22内に配置する処理部30についても熱交換器10を付設していない場合は、処理部30の設置数や配列についても調節が必要である。
これに対して、本実施形態のように、浄化処理部20に熱交換器10を付設して浄化装置を構成した場合は、被処理気体の温度や被処理気体の流量が使用状態によってばらついている場合でも、熱交換器10の作用によってある程度の温度範囲内で浄化処理部20に送入されるから、プリヒート部24や処理部30の配置を変えることなく、所要の分解処理が可能である。プリヒート部24や処理部30の構造や配置を変えることなく使用できることは、装置の組み立てを容易にし、装置の使用効率を向上させ、メンテナンスを容易にするという大きな利点がある。
【0024】
処理部30は触媒としての酸化物半導体を担持した触媒体31と、触媒体31の下側に配されたヒータ32とを備える。触媒体31は通気性を有するブロック状に形成された基材に、酸化クロムあるいは酸化チタン等の酸化物半導体を担持して形成したものである。
図2に、浄化処理部20の構成を拡大して示す。処理部30はプリヒート部24の上方に高さ方向に所定間隔をあけて4段設けている。触媒体31の下側に配置するヒータ32は、処理容器22の対向する側面板から、交互に触媒体31の下側に差し込むように配置する。
【0025】
図3に図2のC−C’線における平面図を示す。ヒータ32がU字状に折曲する形状に、触媒体31の下方に配されている。ヒータ32は側面板22aに取り付けた電極32aを介して電源に接続される。ヒータ32と側面板22aとの取り付け部は、セラミック製のシール材を介して気密に封止される。
図3に示すように、触媒体31は平面形状が矩形に形成された部材であり、処理容器22の略中央位置に配されている。触媒体31の温度は触媒体31の中央部に熱電対40を挿入して検知される。
【0026】
図4に、図2のD部分の構成、すなわち触媒体31を処理容器22に支持する構成を示す。触媒体31は、処理容器22の内側面を囲む矩形枠状に形成した支持体34に、支持ボックス35を介して下方から取り付けられる。支持体34は処理容器22の側面板22b、22bに気密に溶接して取り付けられ、ヒータ32(ヒータ24a)を取り付けた側面板22a、22aを、他方の側面板22b、22bと支持体34にねじ止めすることにより、処理容器22が組み立てられ、支持体34により処理容器22は上下に気密に仕切られる。
【0027】
図5に側面板22a、22bを組み付けた処理容器22の平面図を示す。支持体34は触媒体31の平面寸法よりも若干縮寸する平面形状が矩形に開口し(通過口34a)、支持ボックス35に触媒体31を収容して支持ボックス35を支持体34にねじ止め固定する。図4に示すように、触媒体31はその上面の周縁部が支持体34の下面に当接して支持される。支持ボックス35の下端縁には触媒体31の下面の周縁部を係止するフランジ35aが設けられ、触媒体31はフランジ35aと支持体34とによって挟圧支持される。
【0028】
触媒体31は支持ボックス35によって側面が完全に覆われた状態で支持されるから、被処理気体は必ず触媒体31の解放された下面から触媒体31内に進入し、触媒体31中を通過して支持体34の通気口34aから排出される。すなわち、被処理気体は確実に触媒体31と接触して排出されることになる。
触媒体31によっては厚さ寸法にばらつきが生じる場合もあるから、触媒体31と支持体34とをねじ止めする部分に、スペーサーを兼ねてセラミック等の耐熱性を有するシール材を介装してもよい。
【0029】
また、支持ボックス35の下端縁に設けるフランジ35aを図4のように、単に平坦状に折り曲げるのではなく、フランジ35aの先端をさらにL字形に折り曲げ、触媒体31に溝を設けておいて、溝にフランジ35aの先端を係入するように構成することも可能である。この場合は、触媒体31にフランジ35aの先端を挿入する溝を形成する必要があるが、フランジ35aの先端を触媒体31の溝に係入することにより、フランジ35aと触媒体31との当接部分から被処理気体が漏出する(触媒体31中を被処理気体が通過せず、支持ボックス35の内側面側に被処理気体が回り込むこと)ことをさらに確実に防止することができる。
【0030】
上述した処理部30における触媒体31を支持する構成は、被処理気体を確実に触媒体31に接触させ、触媒体31による分解作用を効率的にかつ確実に作用させる上で有効である。揮発性有害物質を浄化処理する浄化装置としての信頼性を向上させる上で、被処理気体の漏出を防止する構成はきわめて重要である。
【0031】
また、前述したプリヒート部24について説明したと同様に、被処理気体が均一に加熱されることから処理部30の加熱温度も容易に均一温度に保持することができ、個々の処理部30に設置するヒータ32の加熱温度を微調整したりすることなく、確実に被処理気体を分解処理することが可能となる。熱交換器10を付設していない浄化装置では、処理部30における分解作用が有効に作用するように、処理部30の設置段数や、設置位置、個々の処理部30におけるヒータ32の加熱温度を細かく微調整する必要があった。これに対して、本実施形態の浄化装置においては、処理部30の設置段数や設置位置については使用条件によらずにほぼ汎用的に使用することができるという利点がある。
【0032】
なお、上記実施形態の浄化装置においては、熱交換器10と浄化処理部20はいずれも断熱性材によりその外周囲を包囲し、熱交換器10と浄化処理部20とを保温して、熱交換と浄化処理が効率的になされるようにしている。
【0033】
(浄化装置の他の構成例)
図6は、本発明に係る浄化装置の他の構成例を示す。
本実施の形態の浄化装置は、浄化処理部20のプリヒート部24の上方に配置する処理部30を、上記実施形態とは異なる配置としている。すなわち、最上部に配置する処理部30については、触媒体31a、31bを2段に重ねて使用し、触媒体31a、31bを一つの支持ボックス35に収容して支持している。
【0034】
上記実施形態においては処理部30ごとに触媒体とヒータとを対にして配置しているが、本実施形態においては、最上段の処理部30についてはヒータを省略し、第1段と第2段の処理部30のみにヒータ32を配置している。このような配置が可能となる理由は、熱交換器10の作用により被処理気体が加熱されて浄化処理部20に送入され、プリヒート部24を設けたことにより被処理気体が加熱され、処理部30のすべてにヒータ32を設けることなく触媒体31を所要の分解処理温度にまで加熱できるからである。場合によっては、処理部30にはヒータ32を設けずにプリヒート部24のみにヒータを設ける構成とすることもできるし、逆にプリヒート部24を設けずに個々の処理部30にヒータ32を配する構成とすることもできる。
【0035】
また、浄化装置の浄化処理部20に設ける処理部30の段数(本実施形態では4段)についても適宜選択することができる。
また、使用条件によっては浄化対象とする被処理気体の分量(流量)や処理対象とする気体の性状が異なるから、処理部30の段数や、処理容器22の大きさ、触媒体31の大きさ等は適宜設定すればよい。ただし、本発明に係る浄化装置は、使用条件によって基本的な設計を大きく変更することなく被処理気体を効率的に加熱して、効率的に分解処理することができるから、装置設計が容易であり、汎用的に使用することができるという利点がある。
【0036】
なお、処理部30に使用する触媒体31は、通気性を有する基材に酸化物半導体を担持させたものであり、通気性を有する基材には、コーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)やゼオライト等からなるセラミックス製の多孔体が使用される。多孔体の構造としては、通気部分がハニカム状に形成されたもの、通気部分が三次元の網目体状に形成されたものが用いられる。
基材に担持させる酸化物半導体には種々のものが利用できるが、酸化クロム(Cr23)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(Fe23)、酸化チタン(TiO2)等が好適に用いられる。通気性を有する基材に酸化物半導体を担持させる方法としては、スプレー法、電気泳動電着法、ディップ法等が利用できる。
【実施例】
【0037】
本発明に係る気体の浄化装置を実際に使用した例について説明する。
処理部30に用いる触媒体として、大きさ100×100×30mm、ハニカム構造あるいは網目体構造の基材に酸化物半導体として酸化クロムを担持したものを使用した。使用した触媒体の段数は4段である。
プリヒート部の3段あるヒータのうち1段目と2段目のヒータに通電する。ヒータ1段は600W(300Wのヒータが一対)。処理部30については、1〜3段目のヒータ32に通電する。ヒータ32は300W。ヒータ24a、32の投入パワーは、合わせて2.1kWとなる。この電力は常時投入されている必要はなく、被処理気体の分解の際の反応熱も活用できるので、投入電力は顕著に減少する。プリヒート部24の熱電対と3段目の処理部30に配置した熱電対により温度を検知し、プリヒート部24及び触媒体31の温度が500℃になるように制御した。本発明に係る浄化装置においては触媒体やヒータを固定設置して使用するが、本実施例のように、処理風量に合わせてプリヒート・ヒータの本数を選択し、加熱温度を制御し、触媒体の温度を容易かつ的確に調節することができる。
【0038】
プリヒート部24と触媒体31の加熱温度を350〜500℃としたとき、熱交換器10から浄化処理部20へ送出される被処理気体の温度は210〜300℃であった。熱交換器10においては、浄化処理部20から排出される高温の浄化気体が約60%の効率で被処理気体の加熱に用いられる。
本発明に係る気体の浄化装置における熱交換器の作用は、本来、浄化気体の排熱を有効利用することであるが、これだけには止まらない。すなわち、浄化処理部20に熱交換器10を組み合わせて利用すると、浄化処理部20内においては到る所で均一な温度になり、定格値の処理ガス量の変動に対しても所望の温度分布が確保され、十分に対処することが可能となる。
【0039】
浄化処理部20に熱交換器10を装着しない場合には、処理部30に配置した熱電対を用いて段ごとに温度検知し、各々のヒータの通電を制御して処理部30の温度が一定となるように保っていた。これに対して、熱交換器10を装着した場合には、浄化処理部20の中央に位置する一個所の熱電対で装置内の温度を検知するだけで、装置内の温度を一様に維持することが可能となった。装置内が一様な温度分布となることは、各々の処理部30に付属している熱電対によって確認した。
このように、熱交換器10と浄化処理部20とを組み合わせると、被処理気体の風量が変動した場合でも、浄化処理部20内の温度が均一に保持される作用が得られることから、装置の温度制御が容易になり、装置の維持管理作業を容易にし、被処理気体を効率的に浄化することが可能になる。
【0040】
空気を搬送ガスとし、200ppmの濃度でトルエンを含む被処理気体について浄化処理を行った。浄化装置の定格風量は5m3/分である。導入管14から熱交換器10に導入された被処理気体は熱交換器10内において加熱され、連絡管18を経由して浄化処理部20の下部に送入される。トルエンはプリヒート部24で加熱され、その後、処理部30を通過して炭酸ガスと水に完全分解される。分解ガスの排熱は熱交換器10の中を階段を上るように移動し、熱交換器10の排気管16から排出される。
トルエン濃度の測定にはThermo Fischer Scientific Inc.社の炭化水素計(TVA-1000B)を用い、導入管14と排気管16の位置でそれぞれ測定した。その結果、分解効率が約98%でトルエンが分解されたことが明らかになった。
【0041】
上述した条件と同様の設定条件でタバコ10本を、空気を搬送ガスとして導入管14から熱交換器10に送入し、導入管14と排気管16のそれぞれの位置で炭素水素計を用いて測定を行った。測定結果は、導入管14と排気管16の双方における炭化水素計の値は同一であり、空気レベルまで完全に浄化されることが分かった。また、排気管16から排出される排気は、全くの無臭であった。この実験から、本実施例の気体の浄化装置が効果的な浄化作用を有することが確認できた。
【符号の説明】
【0042】
10 熱交換器
11 外容器
12 通気パイプ
14 導入管
15 送出管
16 排気管
18 連絡管
20 浄化処理部
22a、22b 側面板
24 プリヒート部
24a ヒータ
25 拡散板
30 処理部
31、31a、31b 触媒体
32 ヒータ
34 支持体
34a 通気口
35 支持ボックス




【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理気体を分解して処理する浄化処理部と、浄化処理部から排出される浄化後の気体と浄化処理部に送入される被処理気体との熱交換器を備え、
前記浄化処理部は、被処理気体の処理空間を構成する処理容器内に、多孔体からなる基材に酸化物半導体を担持させた触媒体と、加熱部とを備え、
前記触媒体の端部は、処理容器の壁に設けられた支持体に固定され、該支持体と触媒体との接触部において被処理気体が通過・漏洩できない構造を特徴とする気体の浄化装置。
【請求項2】
前記加熱部は、前記触媒体に被処理気体が進入する前段に、被処理気体を加熱するプリヒート部として設けられていることを特徴とする請求項1記載の気体の浄化装置。
【請求項3】
前記触媒体は、触媒体を収容する支持ボックスを介して前記支持体に支持され、前記支持ボックスあるいは前記支持体との接触部において被処理気体の通過・漏洩を阻止して支持されていることを特徴とする請求項1または2記載の気体の浄化装置。
【請求項4】
前記熱交換器は、前記浄化処理部の浄化気体が排出される側に、前記処理容器と外容器とを連通させるとともに、前記外容器内に被処理気体を通流させる通気パイプを配し、
該通気パイプから送出される被処理気体が、前記処理容器の上流側に流入することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の気体の浄化装置。
【請求項5】
前記外容器には、浄化気体が通過する屈曲流路を構成する通気制御板が、延出向きを互い違いとして複数段に配置され、前記通気パイプが前記通気制御板に嵌挿されていることを特徴とする請求項4記載の気体の浄化装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−22564(P2013−22564A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162327(P2011−162327)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【Fターム(参考)】