説明

気体供給マスク

【課題】 ヘッドギア及び額支持ブラケットを患者に装着した状態を保持しつつ実現できるマスク殻及び気体誘導管の分離機能を有する気体供給マスクの提供。
【解決手段】本発明による気体供給マスクは、マスク殻と、額支持体と、額支持体ではなくマスク殻に連結される気体誘導管と、額支持ブラケットに連結されるヘッドギアとを備え、額支持体は、マスク殻に取り付けられる支持アームと、額支持ブラケットと、患者がマスクを装着しながら、額支持ブラケットを支持アームから取り外し可能に、支持アームを額支持ブラケットに取り付ける連結装置とを備え、ヘッドギア及び額支持ブラケットを患者に装着した状態を保持しながら、額支持ブラケットを支持アームから取り外すことにより、マスク殻及び気体誘導管を単一の組立体として患者から分離できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国特許法第119条(e)の規定により、本願は、2002年9月6日に出願された米国特許仮出願第60/408,836号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、気体供給マスク用支持装置、特に、気体供給マスクの額支持装置及び額支持装置を備えた患者に気体流を供給する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
患者に挿管せず又は患者の食道内に外科的に気管チューブを挿入せずに、患者の気道に呼吸用気体を非侵襲的に供給することが必要かつ望ましい状況は多く存在する。例えば、非侵襲式換気法として知られた技術を使用して患者に気体を供給することは公知である。また、持続気道陽圧(CPAP)又は患者の呼吸周期と共に変化する可変気道圧力を患者に付与して、睡眠無呼吸症候群、特に閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)又は鬱血性心不全等の医療疾患を治療することは公知である。非侵襲的換気法及び圧力支援治療法では、典型的には鼻又は鼻/口マスクである患者界面材装置を患者の顔面上に配置し、人工呼吸器又は圧力支援装置を患者の気道に接続して、圧力/流れ発生装置から患者の気道に呼吸気体流を供給できる。上部ストラップ及び下部ストラップを有するヘッドギアにより、患者の顔面にマスクを保持し、マスクの両側及び頂部に設けられる連結要素に上部ストラップ及び下部ストラップの各両端を挿通する構造は公知である。
【0004】
典型的には、患者の顔面に対して十分に気密の密封構造を形成して不快感なくヘッドギアによりマスクを維持してマスクを長時間着用できることが重要である。マスクの縁の周囲から過度に気体が漏洩しない密封構造を維持するため、マスクを患者の顔面に押圧しなければならない問題が生ずる。
【0005】
気体供給マスクに額支持体を接続して、マスクと患者の額との間に額支持構造を形成することは公知である。額当クッション、スペーサ又は支持体を有する気体供給マスクは、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5及び特許文献6に開示される。額支持体は、マスクの押圧力をより広範囲に分散させて、マスクの過剰な押圧力が患者の顔面のほぼ一点に集中することを防止すると共に、鼻橋等の特定の圧点での患者への押圧力を十分に抑制して、マスクに安定性を付与するものである。
【0006】
特許文献7は、額支持体を有する他のマスクを開示する。この装置では、額支持体は、呼吸マスクに固定されるように取り付けられる。額支持体は、マスクに固定される接続部材と、接続部材に回転可能に取り付けられる緩衝枠部とを備える。接続部材に対して緩衝枠部が単一直線上で一次元回転を行って、額当緩衝枠部の位置を調節できるが、着用者の頭部額に対する配置範囲を最適化できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,907,584号明細書
【特許文献2】米国特許第5,243,971号明細書
【特許文献3】米国特許第5,517,986号明細書
【特許文献4】米国特許第5,570,689号明細書
【特許文献5】米国特許第6,119,693号明細書
【特許文献6】米国特許第6,357,441号明細書
【特許文献7】国際公開第WO/78384A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来のマスクでは、気体供給マスク支持体の安定性を向上する必要があることは明らかである。また、ヘッドギアの締付力を均一に分散する額支持体を提供する必要も存在する。更に、広範な額の形状及び大きさに適用できる調節可能な額支持体を有するマスクを提供する必要が存在する。また更に、ヘッドギアとマスクとを個別に装着できる額支持ブラケットを提供する必要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の例示的な実施の形態は、
(a)マスク殻と、
(b)額支持体と、
(c)額支持体ではなくマスク殻に連結される気体誘導管と、
(d)額支持ブラケットに連結されるヘッドギアとを備え、
額支持体は、
(1)マスク殻に取り付けられる支持アームと、
(2)額支持ブラケットと、
(3)患者がマスクを装着しながら、額支持ブラケットを支持アームから取り外し可能に、支持アームを額支持ブラケットに取り付ける連結装置とを備え、
ヘッドギア及び額支持ブラケットを患者に装着した状態を保持しながら、額支持ブラケットを支持アームから取り外すことにより、マスク殻及び気体誘導管を単一の組立体として患者から分離できることを特徴とする気体供給マスクを提供する。
【0010】
本発明の例示的な実施の形態は、更に、額支持体とマスク殻との相対的な位置を調整して、マスク殻に対してが少なくとも2次元で額支持体を移動できる調節組立体を備えてもよい。調節組立体は、マスク殻に取り付けられる円弧状の取付部材を含み、支持アームの第1の部分は、円弧状の取付部材に移動可能に装着されてもよい。調節組立体は、円弧状の取付部材上に配置された複数の歯部を含み、支持アームの第1の部分は、複数の歯部の少なくとも1つに係合する可撓部を含んでよい。
【0011】
連結装置は、支持アームの一部に形成されるスロットと、支持アームの一部に形成されかつ予め決められた角度でスロットから延伸し、スロットに連絡する切欠部と、額支持ブラケットに取り付けられる連結ブラケットとを備え、連結ブラケットは、予め決められた角度で切欠部内を通過することにより、スロット内に着脱可能に連結ブラケットを嵌合できる形状を有し、スロット内に配置された連結ブラケットをスロット内で回転できる。
【0012】
本発明の特徴及び特性、構造を構成する関連要素の操作法及び機能並びに製造の経済性は、全て本明細書の一部となり、種々の図面で対応する部品を同一の符号で示す添付図面に関する下記の記載及び特許請求の範囲の記載から明らかとなろう。しかしながら、図面は、図示及び説明の目的に過ぎず、本発明の限界を決定する定義を意味しないことは明白に理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】気体流発生装置に接続される本発明の例示的な実施の形態の原理によるマスク及び額支持装置を(概略的に)示す斜視図
【図2】図1に示すマスク及び額支持装置の部分側面図
【図3】図1に示すマスク及び額支持装置の分解図
【図4】本発明によるマスク及び額支持装置の第2の実施の形態を示す部分斜視図
【図5】本発明によるマスク及び額支持装置の第3の実施の態様を示す部分斜視図
【図6】本発明によるマスク及び額支持装置の第4の実施の態様を示す部分斜視図
【図7】本発明によるマスク及び額支持装置の第5の実施の形態を示す部分斜視図
【図8】図7に示すマスク及び額支持装置の部分側面図
【図9】図7に示す支持アームの斜視図
【図10】図7に示すスライドピンの底面斜視図
【図11】ヘッドギアストラップを付加した図7に示す額支持ブラケットの平面図
【図12】ヘッドギアストラップを有する図7に示す額支持ブラケットの背面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の現在好適な実施の形態の説明では、用語「水平」及び「垂直」は、添付図面に示すマスクの方向を指称する。
【0015】
図1〜図3は、本発明の原理による気体供給マスク10の例示的な実施の形態を示す。気体供給マスク10は、患者の気道と圧力発生装置12との間で呼吸用気体流を連絡する患者界面材装置として機能し、気体供給マスク10は、例えば人工呼吸器、持続気道陽圧(CPAP)装置、オートタイトレーティング持続気道陽圧装置、按分比例気道陽圧(PPAP)、按分比例支援換気装置(PAV[登録商標])又は可変圧力装置、即ち患者に供給する圧力が患者の呼吸周期と共に変化し、呼気中よりも吸気中に高圧力を供給するアメリカ合衆国ペンシルベニア州ピッツバーグに所在のレスピロニクス社が製造及び販売するBiPAP(登録商標)装置等の可変圧力装置である。
【0016】
図1〜図3は、必ずしも要求されないが、ほぼ剛性構造の殻部であることが好ましいマスク殻14又はマスク本体を含む気体供給マスク10を示し、マスク殻14は、弾力性を有しかつ比較的柔らかいクッション又は密封材18を開口側に取り付けた環状部16を形成する。図示の例示的な実施の形態では、マスク殻14は、1つの丸い上端角部20と2つの丸い下端角部22とを有するほぼ三角形状である。マスク殻14は、気体供給導管26を収容する入口開口24を含む。ポリカーボネート等の剛性プラスチックによりマスク殻14を形成することが好ましい。密封材18は、患者の鼻等の一部を収容する形状を有する。別法として、マスク10は、患者の鼻及び口を包囲する鼻/口マスク又は患者の口のみを包囲する口マスクでもよい。
【0017】
図示の例示的な実施の形態では、下部ヘッドギア連結組立体28は、マスク殻14の下端角部22に取り付けられる。第2の連結装置32により、ヘッドギア組立体の下部ヘッドギアストラップは、着脱自在に選択的にマスク10に連結される。図示の実施の形態では、ヘッドギアストラップ(図示せず)の端部に一対の第2の連結装置32を着脱可能に接続でき、また、マスク殻14の各面上の第1の連結装置30に第2の連結装置32を着脱可能に接続できる。別法として、下部ヘッドギア連結組立体28は、如何なる適当なヘッドギア連結組立体でもよい。
【0018】
同様に、本発明では、患者界面材分野に使用される従来のヘッドギア等あらゆる適切なヘッドギアでもよいことも企図する。例えば、典型的なヘッドギア組立体は、患者の頭蓋の一部を覆う頭部装着体(図示せず)と、頭部装着体から延伸して、ヘッドギアをマスクに調節可能に接続する一対の上部ヘッドギアストラップ及び一対の下部ヘッドギアストラップとを備える。
【0019】
図示の例示的な実施の形態では、上端角部20に額支持体34が設けられる。本実施の形態では、ほぼT字形状の額支持体34は、水平な額支持ブラケット40に上端38で接続される支持アーム36を含む。額支持ブラケット40は、患者に当接する側に額パッド42を備える。
【0020】
額パッド42は、患者の額に対する額支持ブラケット40の実際の接触点を形成し、シリコーン等の弾性緩衝材料により形成される。図示の実施の形態では、額パッド42は、患者に接触する第1の壁43と、額支持ブラケット40上の各開口部(図示せず)に接続可能な突起46を有する第2の壁44とにより矩形状に形成される。使用者がマスクを装着するとき及び額パッド42上への押圧力が増大するとき、第1の壁が第2の壁に向けて移動するように、第1の壁43と第2の壁44との間に隙間が設けられる。例えば、額パッド42に対する押圧力が増加するとき、第1の壁43が第2の壁44上に簡単に潰れないように、第1の壁(43)と第2の壁(44)との間に延伸する一対の擁壁48によって、安定性が確保される。本発明では、額パッド42は、1つ以上のパッド及び/又は異なる大きさ又はゲル状、発泡若しくはシリコーン樹脂等の代替材料から形成される変更例を含む如何なる適切な緩衝部材でもよい。
【0021】
更に、本発明は、マスク殻14の面にほぼ直角な軸又は曲線に沿って額支持体34の位置を調整する調節組立体50を含む。調節組立体50によって、使用者が額支持体の位置を制御できるため、顔の大きさ及び形状の異なる患者に対し、共通のマスクを装着できる。更に、患者は、調節組立体50によりマスクの額支持体34の位置を調整して、顔面の鼻梁等の特定領域での呼吸用気体の漏洩及び圧力を最小化できる。
【0022】
マスク殻14上と支持アーム36の下端52とに設けた複数の構成要素により調節組立体50を構成して、支持アーム36をマスク殻14に調節可能に接続できる。更に詳細には、調節組立体50は、マスク殻14上に配置される弧状の取付部材54を備え、取付部材54は、入口開口24の上方のマスク殻14の中心部からマスク殻14の上端角部20の上方に離間する位置まで延伸する。取付部材54を軌道状に形成し、水平方向に延伸する複数対の各歯部56(図3)を対向して取付部材54に設けることが好ましい。また、調節組立体50は、支持アーム36の下端に離間して形成される2つの可撓性部材58を備え、各可撓性部材58は、末端にフック部60を有する。しかしながら、本発明では、単一列の歯部及びこれに対応する単一の可撓性部材を有する調節組立体も企図する。
【0023】
支持アーム36をマスク殻14に接続するとき、支持アーム36内に取付部材54を収容して、可撓性部材58のフック部60に一対の対向する歯部56を係合することにより、マスク殻14に対して適切な位置に支持アーム36を固定できる。図1の矢印Aに示すように、可撓性部材58を内側に押圧して、フック部60を歯部56から解放することにより、対向する他の歯部56との係合位置に変更し又は支持アーム36、即ち額支持体34をマスク殻14から完全に解放できる。洗浄又は交換のためにマスク殻14から額支持体34を取り外すことができる。本発明では、対向する任意数の歯部を使用できることを企図する。また、歯部を支持アームに設け、取付部材にフック部を設けることもできる。
【0024】
本発明では、支持アーム36、額支持ブラケット40及び額パッド42を含む額支持体34を調節組立体50によって、マスク殻14に対してほぼ2方向同時に移動できることを前記説明及び添付図面から理解できよう。図2の矢印Bに示す第1の方向では、ほぼ垂直方向、即ちマスク殻14の面に並行方向に額支持体34全体を移動して、マスク殻に接近又は離間して額パッド42を移動できる。図2の矢印Cに示す第2の方向では、ほぼ水平方向、即ちマスク殻14の面にほぼ直角方向に額支持体34全体を移動して、額支持体34と患者との距離を調整できる。

【0025】
調節組立体50の曲線形状、特に取付部材54の曲線形状により、図2の矢印Dに示す2次元同時動作が可能となる。本発明の前記特徴によって、額支持体34の取付位置を調整し、最適に、即ち最も快適に患者に額支持体34を装着できる。また、従来の額支持体は、一定の回転中心周りでの揺動運動又は図2の矢印Cに相当する軸等の単一軸に沿う直線運動のみを行うので、額支持体34の曲線的な移動によって、従来の額支持体よりも装着者の額の形状に近付けて額支持体34を配置できる。
【0026】
図3に明示するように、支持アーム36の上端38は、ほぼ二分され、2つの並行垂直壁62を形成する。舌片64は、各並行垂直壁62の内端に対し直角にかつ強固に接続される。額支持ブラケット40は、円弧状に延伸しかつ対応する舌片64を摺動自在に嵌合する一対の溝65又は通路(図3に一方を示す)を含む。溝65に沿って舌片64を移動させることにより、図2の矢印Eに示すように曲線又はアーク状の経路に沿って額支持ブラケット40を支持アーム36に対して移動できる。図1〜図3に示す実施の形態では、円弧状溝65を形成する同心円の中心点に配置される回転軸は、額支持ブラケット40から離間して配置される仮想軸である。このように、額支持ブラケット40に対して支持アーム36を移動可能に取り付けることにより、患者の頭部に額支持体34を自動的に位置決めする作用を増強する連結組立体が得られる。
【0027】
この仮想中心点は、実際には支持アーム36及び額支持ブラケット40から離間し、特に、マスクの着用時に患者の皮膚の表面下に位置するので、高安定状態を形成しつつ自己位置調整作用を生ずる。この仮想回転軸の着想は、マスクの着用時に、患者の皮膚に対して額支持ブラケット40が不快な角度に傾く可能性を低減することを意図する。従って、自己位置調整作用により、額支持ブラケット40を患者頭部の形状に適合させることができる。
【0028】
また、額支持ブラケット40上の中央タブ66を押圧して、支持アーム36の上端に設けられた2つの並行な各垂直壁62を内側に押し込むことにより、支持アーム36から額支持ブラケット40を取り外すことができる。これにより、洗浄目的でヘッドギアを分離でき又は患者がヘッドギアを装着した後(額支持ブラケット40を取り付けた状態で)、支持アーム36を額支持ブラケット40に取り付けることができる。また、これにより、患者がマスクを取り外し及び装着するとき、所望長さでヘッドギアストラップ68を額支持ブラケット40に取り付けたままでもよく、毎回最適長さにヘッドギアストラップ68を調整する必要がない。
【0029】
上部ヘッドギアストラップ68を固定する連結部材72を額支持ブラケット40の各端部70に設けることが好ましい。好適な本実施の形態では、連結部材72は、上部ヘッドギアストラップ68に取り付ける雄型速離部材74を収容する雌型受口である。しかしながら、他の連結装置も使用できることは明らかである。
【0030】
他の例示的な実施の形態を図4〜図10に示す。図4〜図10に示す実施の形態の多くの特徴は、図1〜図3に示す特徴に類似する。一実施の形態を説明する際に使用する符号と同様の符号を使用して、他の実施の形態での同様の特徴を示す。図1及び図3の符号から関連する特徴が得られるので、マスク殻14の下部及び下部ヘッドギア連結部材を図4〜図10に図示を省略する点に留意すべきである。
【0031】
図4〜図6は、額支持体の支持アーム用調節組立体の他の実施の形態を示す。図4に示す第2の実施の形態では、本発明の調節組立体50'は、マスク殻14'に接続される殻部76と、額支持ブラケット40'に接続されるブラケット部78との2部分で構成される支持アーム36'を含む。ラチェット式連結構造を使用して2部分は互いに接続される。殻部76は、対向するラチェット状歯部82が形成された外部案内口80を設けたほぼ管状断面を備える。ブラケット部78も殻部76内で摺動しかつ案内口80に嵌合する中心突起84を備えるほぼ管状断面を有する。しかしながら、本発明では、管状殻部及びブラケット部の構成を逆にして、管状案内口を有する殻部を額支持体に設け、管状案内口内に摺動するブラケット部をマスク殻に設けることもできると解すべである。
【0032】
図4に示す第2の実施の形態と同様に、図5に示す第3の実施の態様では、調節組立体50"は、マスク殻14"に接続される殻部76'と、額支持ブラケット40"に接続されるブラケット部78'との2部分に形成される支持アーム36"を含む。本実施の形態では、殻部76'及びブラケット部78'は、ほぼU字状断面を有する。ラチェット式連結構造を使用して2部分は、互いに接続される。殻部76'は、U字状断面の各側に形成された複数の案内口80'を有する。中央案内口80'は、対向するラチェット状歯部82'を有する。また、ブラケット部78'は、殻部76内を摺動し、中央案内口80'に嵌合される中央突起84'と共に、他の2つの案内口80'(一方のみ図示)に嵌合される案内突起84'を有する。図4及び図5の実施の形態では、中央突起84,84'は、可撓性部材(図5に示す86)上に設けられ、中央突起84,84'の両側にラチェット歯(図示せず)が設けられる。中央突起84'を内側に押圧すると、ラチェット歯が互いに離間して可撓性部材86は内側に撓み、殻部76'とブラケット部78'とを互いに相対的に移動できる。第2の実施の形態と同様に、ブラケット部と殻部との相対的な雄−雌関係を逆にすることもできる。
【0033】
図5の第3の実施の形態と同様に、図6に示す第4の実施の形態では、調節組立体50"は、マスク殻14に接続されるU字状断面を有する殻部76"と、額支持ブラケット40'''に接続されるU字状断面を有するブラケット部78"との2部分より形成される支持アーム36'''を備える。また、殻部76"は、3つの案内口80"(2つのみ図示)を備え、架橋部78"は、対応する突起84"を含む。しかしながら、調整用のラチェット歯装置ではなく、殻部76"は、下端の周りで揺動可能な揺動部材(揺動レバー)88を含み、図示の位置に固定するとき、揺動部材88を回転することにより、マスク殻14'''と額支持ブラケット40'''との相対位置を有効に固定する摩擦力を付加してカムロック動作を生ずる。予め決められた数及び位置で固定される他の実施の形態とは対照的に、揺動部材88は、動作範囲内では無制限の数及び位置で固定できる。
【0034】
図7〜図12に示す第5の実施の形態では、額支持体は、91により全体を示す連結装置により、水平な額支持ブラケット40""に回転可能に取り付けられる支持アーム36""を備える。また、マスク殻14""は、マスク殻14""に対し支持アーム36""を調節可能に接続する調節組立体50を含む。マスク殻14""は、マスク殻14'に強固に取り付けられかつ入口開口24'上のマスク殻14'の中心部から頂部20'に延伸する円弧の取付部材54'を含む。取付部材54'は、2つの同心円弧状のリブ90を含み、同心円弧状のリブ90間に空洞92が形成される。複数の水平歯と溝94とが外側湾曲部に交互に形成される。
【0035】
支持アーム36""は、取付部材54'の空洞92内を摺動する一対の円弧状の係合部材96(図9)を含む。支持アーム36""を取付部材54'にラッチ係合する固定部材98が設けられる。図示の実施の形態では、固定組立体98は、支持アーム36""に保持されるラッチスライドピン100を備え、ラッチスライドピン100は、支持アーム36""に直角方向に摺動する。スライドピン100上の1又は2以上の歯及び溝102(図10参照)は、取付部材54'上の歯及び溝94に係合可能である。図示の実施の形態のスライドピン100は、取付部材54'に手動で係合するが、スライドピン100にばね負荷を与えて係合させてもよい。
【0036】
前記の通り、額支持ブラケット40""は、接続装置91を介して支持アーム36""の上端に揺動可能に接続される。図示の実施の形態では、支持アーム36""は、支持アーム36""の上端を貫通して形成されるほぼ円形の孔104と、支持アーム36""の側部を貫通して予め決められた角度で切除されたスロット106を有し、額支持ブラケット40""は、水平に配置されて接続装置を構成する接続ブラケット108を有する。接続ブラケット108は、長方形又は楕円形の断面を有する。長断面の寸法は、孔104の直径とほぼ同一であり、短断面の寸法は、スロット106の幅とほぼ同一である。支持アーム36""のスロット106と接続ブラケット108との2部分が互いに対して特定の角度位置にあるとき、スロット106内に接続ブラケット108を嵌入できる。この位置は、通常の使用範囲外にある。額支持ブラケット40""が通常の使用範囲内で回転するとき、額支持ブラケット40""は、円形孔104内に嵌合拘束されるが、回転軸110(図9)の周りに孔104内で自由に回転できる。
【0037】
図7〜図12に示す実施の形態では、回転軸110は、接続ブラケット108の長円形又は楕円形の断面の中心に一致する。支持アーム36""と額支持ブラケット40""とを取り付けるとき、接続ブラケット108は、支持アーム36""上端の円形孔104の中心に一致する。これにより、患者の頭部からヘッドギアストラップを除去する必要がなく、患者は、支持アーム36""、即ちマスクから額支持ブラケット40""を除去できる。また、額の傾斜角度、マスク位置又は支持アーム36""の位置に拘らず、額支持ブラケット40""は、自己位置調整作用により、患者の額に並行な状態を維持できる。
【0038】
図7〜図12の実施の形態の着脱可能な額支持ブラケット40""により、図1〜図3の実施の形態と同様に、患者は、額支持ブラケットを取り付けた状態のヘッドギアをマスクとは別に装着できる。取り付け/取り外しに適する角度にマスクを回転して、額支持ブラケット40""にマスクが取り付けられる。設けられた分離装置を使用して、その後、下部ヘッドギアストラップが接続される。マスクを除去するには、患者は、下部ヘッドギアストラップを分離し、図7の矢印Fに示すように、取り付け/取り外しに適する角度にマスクを回転させて、額支持ブラケット40""から離間する方向にマスク及び支持アーム36""を引っ張ればよい。これにより、ヘッドギアに取り付けられた額支持ブラケット40""がヘッドギアと共に患者の頭部に残される。これは、完全なマスク組立体を装着するほど邪魔ではないので、マスクを迅速に交換するときに、患者は、ヘッドギア及び額支持ブラケット40""を所定の位置に残すことを選択できよう。これにより、患者は、マスクを枕元に置いて、飲物を摂取し又はヘッドギアを再調整せずに他の通常行為を実行でき、必要に応じてマスクを迅速かつ容易に交換できよう。
【0039】
図11及び図12に明示するように、本発明は、ヘッドギア68'それ自体で額パッドを形成できることを企図する。ヘッドギア68'は、額支持ブラケット40""の各端部に設けられた保持ロッド114を有する開口部112を通過する。本実施の形態では、額に配置したヘッドギア68'により当接材を形成し、額に締付力を均一に分散させることができる。
【0040】
全ての実施の形態による気体供給マスクは、患者の気道と圧力発生装置との間で呼吸用気体流を連絡する患者界面材装置として機能し、気体供給マスクは、人工呼吸器、持続気道陽圧装置(図1)又は可変圧力装置、即ち患者に供給する圧力が患者の呼吸周期と共に変化し呼気中よりも吸気中に高圧力を供給するアメリカ合衆国ペンシルベニア州ピッツバーグ所在のレスピロニクス社が製造及び販売するBiPAP(登録商標)装置、又は患者による鼾の発生状態又は無呼吸若しくは呼吸低下の経験状態等の患者の生理状態によって、圧力が変化するオートタイトレーション圧力支援装置等の可変圧力装置である。
【0041】
患者の気道と圧力発生装置との間の呼吸用気体流を連絡するには、圧力発生装置から患者に呼吸用気体流を供給する過程と、患者から周辺大気に気体流を排出する過程とを含む。患者に対し呼吸用気体を供給する本発明による装置は、気体流を発生する圧力発生装置又は気体流発生装置12と、気体流発生装置12に作動接続される第1の端部と第2の端部とを有し、本発明による装置の動作間に気体流発生装置12から気体流を搬送する導管26と、導管の第2の端部に連結する気体供給マスク組立体10と、ヘッドギアとを備える。
【0042】
図示の実施の形態では、調節組立体は、マスク殻に対して額支持体を曲線的に移動できるように構成される(例えば図2の矢印D参照)。しかしながら、本発明は、マスク殻に対して額支持体が並行移動する調節組立体の他のパターンも企図すると解すべきである。例えば、取付部材54は、「S」字パターン又は「J」字パターンを有し、額支持体は、マスク殻に対して「S」又は「J」パターンにより移動可能である。
【0043】
現在最も実用的かつ好適と思われる実施の形態を図示して詳述したが、前記記載は単に説明の便宜に過ぎず、本発明を開示した実施の形態に限定されず、本発明は、特許請求の範囲内に該当すると共に特許請求の範囲と同趣旨の変更態様及び同等の装置を包含することを意図する。
【符号の説明】
【0044】
(10)・・気体供給マスク、 (14)・・マスク殻、 (34)・・額支持体、 (36)・・支持アーム、 (40)・・額支持ブラケット、 (50)・・調節組立体、 (54)・・円弧状の取付部材、 (56)・・複数の歯部、 (58)・・可撓部、 (91)・・連結装置、 (104)・・スロット、 (106)・・切欠部、 (108)・・連結ブラケット、 (114)・・連結装置、 (68)・・ヘッドギアストラップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)マスク殻と、
(b)額支持体と、
(c)額支持体ではなくマスク殻に連結される気体誘導管と、
(d)額支持ブラケットに連結されるヘッドギアとを備え、
額支持体は、
(1)マスク殻に取り付けられる支持アームと、
(2)額支持ブラケットと、
(3)患者がマスクを装着しながら、額支持ブラケットを支持アームから取り外し可能に、支持アームを額支持ブラケットに取り付ける連結装置とを備え、
ヘッドギア及び額支持ブラケットを患者に装着した状態を保持しながら、額支持ブラケットを支持アームから取り外すことにより、マスク殻及び気体誘導管を単一の組立体として患者から分離できることを特徴とする気体供給マスク。
【請求項2】
更に、額支持体とマスク殻との相対的な位置を調整して、マスク殻に対してが少なくとも2次元で額支持体を移動できる調節組立体を備える請求項1に記載の気体供給マスク。
【請求項3】
調節組立体は、マスク殻に取り付けられる円弧状の取付部材を含み、支持アームの第1の部分は、円弧状の取付部材に移動可能に装着される請求項2に記載の気体供給マスク。
【請求項4】
調節組立体は、円弧状の取付部材上に配置された複数の歯部を含み、
支持アームの第1の部分は、複数の歯部の少なくとも1つに係合する可撓部を含む請求項3に記載の気体供給マスク。
【請求項5】
連結装置は、
支持アームの一部に形成されるスロットと、
支持アームの一部に形成されかつ予め決められた角度でスロットから延伸し、スロットに連絡する切欠部と、
額支持ブラケットに取り付けられる連結ブラケットとを備え、
連結ブラケットは、予め決められた角度で切欠部内を通過することにより、スロット内に着脱可能に連結ブラケットを嵌合できる形状を有し、
スロット内に配置された連結ブラケットをスロット内で回転できる請求項1に記載の気体供給マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−5465(P2010−5465A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237807(P2009−237807)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【分割の表示】特願2004−534674(P2004−534674)の分割
【原出願日】平成15年9月8日(2003.9.8)
【出願人】(505338497)アールアイシー・インベストメンツ・エルエルシー (81)