説明

気体分離膜、その製造方法及び該気体分離膜を用いる二酸化炭素の分離方法

【課題】 従来技術の難点を解消し、高い選択性をもって二酸化炭素を他のガスから分離することのできる気体分離膜、その製造方法、及び、該気体分離膜を用いる二酸化炭素の分離方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の気体分離膜は、側鎖に(ポリ)オキシアルキレン基を有する繰り返し単位(A)と、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰り返し単位(B)とを含むビニルエーテル系共重合体を架橋重合させて得られる高分子膜からなることを特徴とし、又、本発明の二酸化炭素の分離方法は、二酸化炭素を含む混合ガスを、上記気体分離膜に接触させて、該混合ガス中の二酸化炭素を選択的に透過させる工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のビニルエーテル系共重合体を架橋重合させて得られる高分子膜からなる気体分離膜、該気体分離膜の製造方法並びに該気体分離膜を用いる二酸化炭素の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子素材には、その素材に特有の気体透過性があるため、高分子素材から形成された膜によって、気体成分を分離できることが知られている(例えば、非特許文献1)。特に、膜による気体成分の分離技術には、必要なエネルギーが少なく、装置が小型化でき、装置のメンテナンスが容易になるなどの利点があり、種々の分野で使用されている。
【0003】
気体分離膜としては、酢酸セルロース、シリコンゴム、ポリスルホン、ポリアミドなどの種々の高分子を素材としたものが知られている。しかしながら、従来の高分子膜は、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素ガスの分離膜としては、二酸化炭素と窒素の分離係数が10以下と小さいうえ、二酸化炭素で可塑化されて分離係数が低下するために、実用性のある分離膜とはいえない。
【0004】
又、芳香族ポリイミドを用いたものが報告されており(例えば、特許文献1〜4)、これらのポリイミド系気体分離膜における二酸化炭素と窒素の分離係数は20から40と比較的高いものの、未だ効率の高い二酸化炭素の分離膜とはいえない。又、その膜原料が高価な芳香族ポリイミドであるため、経済性にも問題がある。
【0005】
一方、従来から、二酸化炭素と窒素の高い分離係数を示すものとして、ポリエチレングリコール類が知られている。一方で、ポリエチレングリコール類は単独の膜にすることは難しく、その課題を解決するために、多孔質に含浸保持したものが知られていて(例えば、非特許文献2)、このものの二酸化炭素と窒素の分離係数は100以上と高いが、透過係数が小さいという問題がある。又、膜の安定性が悪く、水分などでポリエチレングリコールが溶出し、徐々に膜性能が低下するなどの欠点を有しているため、実用化に至っていない。
【0006】
このため、オキシアルキレン鎖を含む高分子膜を単独膜として形成する方法が種々検討されている。例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを重合させて得られる、架橋構造を有する高分子膜を気体分離膜として用いる方法(特許文献5)が検討されている。しかしながら、ジ(メタ)アクリレートのみを重合させて得られる架橋膜は、架橋密度が高く、剛性が上がりすぎて脆くなるという難点がある。又、特許文献5には単官能のポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを共重合させた高分子膜も記載されており、単官能の(メタ)アクリレートを共重合させることで高分子膜に柔軟性を付与することができるが、単官能の(メタ)アクリレートの含有量が増えると二酸化炭素と窒素の分離係数が低下するため、剛性と分離係数の両方を満足する高分子膜は得られなかった。
【0007】
又、架橋性基を含むオキシラン化合物とエチレンオキシドなどを重合して得られる重量平均分子量104〜107のポリエーテル重合体を、架橋剤と反応させて高分子膜を形成し、気体分離膜として用いる方法(特許文献6)が検討されている。しかしながら、この高分子膜は架橋密度が小さく、機械的強度が十分ではなかったし、又、水やアルコールなどに対する耐性や、熱的安定性も十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭60−150806号公報
【特許文献2】特開昭61−133106号公報
【特許文献3】特開昭63−123420号公報
【特許文献4】特開平08−332362号公報
【特許文献5】特開平08−024603号公報
【特許文献6】特開2003−205224号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Journal of Membrane Science 320 (2006) p. 390-400
【非特許文献2】日本化学会誌、No.6 (1983) p. 847-853
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術の難点を解消し、高い選択性をもって二酸化炭素を他のガスから分離することのできる気体分離膜、その製造方法、及び、該気体分離膜を用いる二酸化炭素の分離方法を提供することを目的とする。
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、側鎖に(ポリ)オキシアルキレン基を含むビニルエーテル系共重合体にラジカル重合性基を導入することにより、オキシアルキレン鎖を含む高分子膜を単独膜として形成することができることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、本発明は、以下の[1]乃至[8]に関するものである。
【0013】
[1]側鎖に(ポリ)オキシアルキレン基を有する繰り返し単位(A)と、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰り返し単位(B)とを含むビニルエーテル系共重合体を架橋重合させて得られる高分子膜からなることを特徴とする気体分離膜。
【0014】
[2]前記ビニルエーテル系共重合体が、式(1)
【化1】


(式中、R1は炭素数2〜10の炭化水素基を、R2は炭素数1〜4の低級アルキル基を示し、mは1〜24の整数を意味する。)
で表される(ポリ)オキシアルキレン基を有するビニルエーテル化合物と、式(2)
【化2】


(式中、R3は炭素数2〜10の炭化水素基を、R4は水素原子又はメチル基を示し、nは1〜24の整数を意味する。)
で表される(メタ)アクリロイル基を有するビニルエーテル化合物をカチオン重合して得られるビニルエーテル系共重合体である前記[1]記載の気体分離膜。
【0015】
[3]側鎖に(ポリ)オキシアルキレン基を有する繰り返し単位(A)と、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰り返し単位(B)とを含むビニルエーテル系共重合体を架橋重合させて高分子膜を形成することを特徴とする気体分離膜の製造方法。
【0016】
[4]前記ビニルエーテル系共重合体が、式(1)
【化3】


(式中、R1は炭素数2〜10の炭化水素基を、R2は炭素数1〜4の低級アルキル基を示し、mは1〜24の整数を意味する。)
で表される(ポリ)オキシアルキレン基を有するビニルエーテル化合物と、式(2)
【化4】


(式中、R3は炭素数2〜10の炭化水素基を、R4は水素原子又はメチル基を示し、nは1〜24の整数を意味する。)
で表される(メタ)アクリロイル基を有するビニルエーテル化合物をカチオン重合して得られるビニルエーテル系共重合体である前記[3]記載の気体分離膜の製造方法。
【0017】
[5]重合開始剤の存在下に架橋重合させる前記[3]又は[4]記載の気体分離膜の製造方法。
【0018】
[6]架橋成分を使用して架橋重合させる前記[3]又は[4]に記載の気体分離膜の製造方法。
【0019】
[7]二酸化炭素を含む混合ガスを、前記[1]又は[2]に記載の気体分離膜に接触させて、該混合ガス中の二酸化炭素を選択的に透過させる工程を含むことを特徴とする二酸化炭素の分離方法。
【0020】
[8]式(3)
【化5】


(式中、R1は炭素数2〜10の炭化水素基を、R2は炭素数1〜4の低級アルキル基を示し、mは1〜24の整数を意味する。)
で表される繰り返し単位と、式(4)
【化6】


(式中、R3は炭素数2〜10の炭化水素基を、R4は水素原子又はメチル基を示し、nは1〜24の整数を意味する。)
で表される繰り返し単位とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高い選択性をもって二酸化炭素を他のガスから分離することのできる気体分離膜及びその製造方法が提供される。又、本発明によれば、該高分子膜を用いて効率よく二酸化炭素を他のガスから分離することのできる方法が提供される。
【0022】
又、本発明により提供されるビニルエーテル系共重合体は、架橋重合することにより水やメタノール、エタノール等の溶媒に不溶性であり、機械的強度及び耐熱性に優れると共に、高い選択性をもって二酸化炭素を他のガスから分離できる高分子膜を与えるものであり、二酸化炭素分離膜の原料として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】合成例1で得られた2−(2−メトキシエトキシ)エチルビニルエーテル(MEEVE)/2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルメタクリレート(VEEM)共重合体の1H NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の気体分離膜に使用される高分子膜は、側鎖に(ポリ)オキシアルキレン基を有する繰り返し単位(A)と、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰り返し単位(B)とを含むビニルエーテル系共重合体を架橋重合させて得られる。
【0025】
この側鎖に(ポリ)オキシアルキレン基を有する繰り返し単位(A)と、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰り返し単位(B)とを含むビニルエーテル系共重合体は、次の(i)又は(ii)の何れかの方法で製造することができる。
【0026】
(i)(ポリ)オキシアルキレン基を有するビニルエーテル化合物と、水酸基やハロゲンなどの、(メタ)アクリル酸誘導体と反応して(メタ)アクリロイロキシ基と置換可能な官能基を有するビニルエーテル化合物とをカチオン重合させた後に、前記官能基を(メタ)アクリロイロキシ基に置換する方法。
【0027】
(ii)(ポリ)オキシアルキレン基を有するビニルエーテル化合物と、(メタ)アクリロイル基を有するビニルエーテル化合物とを直接カチオン重合させる方法。
【0028】
これら方法のうち、方法(i)は(メタ)アクリロイル基の導入率の制御が難しく、工程も複雑となるため、方法(ii)を利用することがより好ましい。
【0029】
上記方法(ii)において用いられる(ポリ)オキシアルキレン基を有するビニルエーテル化合物としては、前記式(1)で表される化合物〔以下、化合物(1)という〕が好ましい。
【0030】
化合物(1)において、R1で表される炭素数2〜10の2価の炭化水素基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、シクロヘキシレン基、1,4−ジメチルシクロヘキサン−α,α'−ジイル基、1,3−ジメチルシクロヘキサン−α,α'−ジイル基、1,2−ジメチルシクロヘキサン−α,α'−ジイル基、1,4−ジメチルフェニル−α,α'−ジイル基、1,3−ジメチルフェニル−α,α'−ジイル基、1,2−ジメチルフェニル−α,α'−ジイル基などが挙げられ、中でもエチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基などの炭素数2〜4の低級アルキレン基が好ましく、エチレン基又はプロピレン基が特に好ましい。尚、式(1)において、mは1〜24の整数であり、より好ましくは2〜10の整数であり、更に好ましくは2〜5の整数である。mが2以上の場合、複数存在するR1で表される置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0031】
又、R2で表される炭素数1〜4の低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。
【0032】
化合物(1)としては、具体的には、2−メトキシエチルビニルエーテル、2−エトキシエチルビニルエーテル、3−メトキシプロピルビニルエーテル、3−エトキシプロピルビニルエーテル、2−メトキシプロピルビニルエーテル、2−エトキシプロピルビニルエーテル、2−メトキシイソプロピルビニルエーテル、2−エトキシイソプロピルビニルエーテル、4−メトキシブチルビニルエーテル、4−エトキシブチルビニルエーテル、3−メトキシブチルビニルエーテル、3−エトキシブチルビニルエーテル、2−メトキシブチルビニルエーテル、2−エトキシブチルビニルエーテル、1−メチル−3−メトキシプロピルビニルエーテル、1−メチル−3−エトキシプロピルビニルエーテル、1−メチル−2−メトキシプロピルビニルエーテル、1−メチル−2−エトキシプロピルビニルエーテル、1−メトキシメチルプロピルビニルエーテル、1−エトキシメチルプロピルビニルエーテル、2−メトキシメチルプロピルビニルエーテル、2−エトキシメチルプロピルビニルエーテル、2−メチル−2−メトキシプロピルビニルエーテル、2−メチル−2−エトキシプロピルビニルエーテル、1,1−ジメチル−2−メトキシエチルビニルエーテル、1,1−ジメチル−2−エトキシエチルビニルエーテル、
2−(2−メトキシエトキシ)エチルビニルエーテル、2−(2−エトキシエトキシ)エチルビニルエーテル、2−(2−メトキシイソプロポキシ)エチルビニルエーテル、2−(2−エトキシイソプロポキシ)エチルビニルエーテル、2−(2−メトキシエトキシ)イソプロポキシビニルエーテル、2−(2−エトキシエトキシ)イソプロポキシビニルエーテル、2−(2−メトキシイソプロポキシ)イソプロポキシビニルエーテル、2−(2−エトキシイソプロポキシ)イソプロポキシビニルエーテル、
2−{2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ}エチルビニルエーテル、2−{2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ}エチルビニルエーテル、2−{2−(2−メトキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}イソプロピルビニルエーテル、2−{2−(2−エトキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}イソプロピルビニルエーテル、
2−[2−{2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ}エトキシ]エチルビニルエーテル、2−[2−{2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ}エトキシ]エチルビニルエーテル、2−[2−{2−(2−メトキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}イソプロポキシ]イソプロピルビニルエーテル、2−[2−{2−(2−エトキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}イソプロポキシ]イソプロピルビニルエーテル、
重合度1〜24のメトキシ(ポリ)エチレングリコールモノビニルエーテル、エトキシ(ポリ)エチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシ(ポリ)プロピレングリコールモノビニルエーテル、エトキシ(ポリ)プロピレングリコールモノビニルエーテル、メトキシ(ポリ)ブチレングリコールモノビニルエーテル、エトキシ(ポリ)ブチレングリコールモノビニルエーテル
等を挙げることができる。
【0033】
これらの中でも、重合度1〜24のメトキシ(ポリ)エチレングリコールモノビニルエーテル、エトキシ(ポリ)エチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシ(ポリ)プロピレングリコールモノビニルエーテル、エトキシ(ポリ)プロピレングリコールモノビニルエーテル、メトキシ(ポリ)ブチレングリコールモノビニルエーテル、エトキシ(ポリ)ブチレングリコールモノビニルエーテルが好ましく、重合度2〜10のメトキシ(ポリ)エチレングリコールモノビニルエーテル、エトキシ(ポリ)エチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシ(ポリ)プロピレングリコールモノビニルエーテル、エトキシ(ポリ)プロピレングリコールモノビニルエーテル、メトキシ(ポリ)ブチレングリコールモノビニルエーテル、エトキシ(ポリ)ブチレングリコールモノビニルエーテルがより好ましい。
【0034】
一方、上記方法(ii)において用いられる(メタ)アクリロイル基を有するビニルエーテル化合物としては、前記式(2)で表される化合物〔以下、化合物(2)という〕が好ましい。
【0035】
化合物(2)において、R3で表される炭素数2〜10の2価の炭化水素基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、シクロヘキシレン基、1,4−ジメチルシクロヘキサン−α,α'−ジイル基、1,3−ジメチルシクロヘキサン−α,α'−ジイル基、1,2−ジメチルシクロヘキサン−α,α'−ジイル基、1,4−ジメチルフェニル−α,α'−ジイル基、1,3−ジメチルフェニル−α,α'−ジイル基、1,2−ジメチルフェニル−α,α'−ジイル基などが挙げられ、中でもエチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基などの炭素数2〜4の低級アルキレン基が好ましく、エチレン基又はプロピレン基が特に好ましい。尚、式(2)において、nは1〜24の整数であり、より好ましくは1〜10の整数であり、更に好ましくは1〜5の整数である。nが2以上の場合、複数存在するR3で表される置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0036】
又、Rは水素原子又はメチル基である。
【0037】
化合物(2)としては、具体的には、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸5−ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)イソプロポキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)イソプロポキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)イソプロポキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−[2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エトキシ]エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル等を挙げることができる。
【0038】
これらの中でも、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸5−ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−[2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エトキシ]エチルが好ましく、特に(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸5−ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−[2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エトキシ]エチル等が好ましい。
【0039】
本発明の気体分離膜の製造に用いられるビニルエーテル系共重合体は、例えば、上記化合物(1)と上記化合物(2)をカチオン重合させることにより得られる。カチオン重合は、(ア)重合溶媒としてトルエン等の芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類又は塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類を用い、(イ)カチオン重合触媒として三フッ化ホウ素、塩化第二鉄、三塩化アルミニウム、四塩化スズなどのルイス酸、或いは、これらのルイス酸と水、エーテル、有機酸などのルイス塩基との錯体の共存下に、(ウ)反応温度を−80〜5℃程度に保ち、(エ)反応時間を0.5時間〜72時間程度として行うことが好ましいが、この範囲を外れる場合を除外するものではない。
【0040】
上記カチオン重合により得られたビニルエーテル系共重合体は、重合溶媒を留去して粉末にすることができる。又、重合液を共重合体が溶解しない貧溶媒に滴下して共重合体を析出させ、濾過した後に乾燥させてもよい。得られた粉末或いはろ過物は、良溶媒に溶解させた後、再度貧溶媒を用いて共重合体を析出させることにより精製することができる。
【0041】
ビニルエーテル系共重合体の析出や精製に用いる貧溶媒は、共重合体を溶解しないものであれば特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の飽和炭化水素類が挙げられる。又、良溶媒は、共重合体を溶解するものであれば特に限定されないが、例えば、トルエン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジクロロメタン、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類等を挙げることができる。
【0042】
共重合体は、加熱により容易に架橋が進行するため、溶媒の留去や乾燥等で加熱する場合は、なるべく低い温度で行うことが好ましく、重合禁止剤を添加して行うことがより好ましい。
【0043】
重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、メトキノン、ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール等のキノン系重合禁止剤;2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−te r t−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4 ,6−トリ−tert−ブチルフェノール等のアルキルフェノール系重合禁止剤;アルキル化ジフェニルアミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ヒドロキシ−4−ベンゾイリオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のアミン系重合禁止剤;2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等のN−オキシル系重合禁止剤を挙げることができる。
【0044】
これらの中でも、ヒドロキノン、メトキノン、ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール、フェノチアジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルが好適に用いられる。
【0045】
重合禁止剤を使用する場合の添加量は、ビニルエーテル系共重合体100質量部に対して、0.0001〜5質量%の範囲が好ましく、0.005〜1質量%の範囲がより好ましく、0.01〜1質量%の範囲が特に好ましい。重合禁止剤の添加量が0.0001質量%未満であると、常温、遮光条件下の保管においても架橋反応が起こる可能性があり、5質量%を超えても更なる保存安定性の向上は期待できず、むしろ悪影響を及ぼすおそれがあるうえ、経済性を損なうこともある。
【0046】
上記のようにして得られたビニルエーテル系共重合体は、側鎖に(ポリ)オキシアルキレン基を有する繰り返し単位(A)と、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰り返し単位(B)を有するものであるが、それら繰り返し単位の組成比[繰り返し単位(A):繰り返し単位(B)/モル比]は、97:3〜50:50が好ましく、95:5〜60:40がより好ましく、90:10〜70:30が特に好ましい。繰り返し単位(B)の比率が上記範囲を超えて小さいと、架橋密度が低くなるため膜形成が困難となり、繰り返し単位(B)の比率が上記範囲を超えて多くなると、オキシアルキレン鎖の導入率が小さくなるため、やはり本発明の優れた効果が得られない。繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)の比は、カチオン重合の際に反応させる化合物(1)と化合物(2)の仕込み比により調整することができる。
【0047】
又、ビニルエーテル系共重合体の数平均分子量(以下、「Mn」と表記する)は、10,000〜1,000,000程度が好ましく、20,000〜600,000程度がより好ましく、30,000〜300,000程度が特に好ましい。Mnが上記範囲を超えて小さい場合は、寸法安定性、耐候性等の物性が低下する場合があり、又、耐熱性が不十分となる場合がある。逆に、Mnが上記範囲を超えて大きい場合は、高分子膜形成時に使用する溶媒への溶解性が不十分となり、均質な膜が得られない場合がある。
【0048】
又、ビニルエーテル系共重合体の分散度Mw/Mnは1〜3が好ましく、1.1〜2がより好ましい。
【0049】
上記方法(ii)に従い、化合物(1)と化合物(2)によりビニルエーテル系共重合体を製造した場合、得られるビニルエーテル系共重合体は、式(3)で表される繰り返し単位と、式(4)で表される繰り返し単位とを含むものとなる。
【0050】
本発明の気体分離膜は、このようにして得られたビニルエーテル系共重合体を架橋重合させて得られる高分子膜からなり、例えば当該共重合体を膜状に保持し、この状態で架橋重合させることにより得られる。ビニルエーテル系共重合体を膜状に保持する方法としては、ビニルエーテル系共重合体を適当な溶媒に溶かして平板上に流延する方法や、2つの平板の隙間に流し込む方法、或いは、筒状などの型に流し込む方法などが挙げられる。溶媒としては、ビニルエーテル系共重合体の良溶媒として先に挙げたものを用いることができる。
【0051】
架橋重合方法としては、熱的重合、紫外線照射重合、電子線照射重合、及び、これら以外の従来公知の重合法を採用することができる。これらの方法は単独で行っても、併用してもよい。
【0052】
熱的重合法により重合を行う場合には、空気中で加熱するだけでもよく、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル等のアゾ系重合開始剤や、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤を用いることができる。この場合、重合度の調整用にメルカプタン等の連鎖移動剤を用いることもできる。ラジカル重合開始剤の重合原料(ビニルエーテル系共重合体)に対する配合量は、0〜3重量%、好ましくは0〜1重量%である。重合温度は30〜150℃であり、重合時間は5〜400分である。
【0053】
紫外線照射による重合法により重合を行う場合には、重合原料に光重合開始剤を配合する。光重合開始剤としては、アゾビスインブチロニトリル等のアゾ系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン等のベンゾイン類;アントラキノン、メチルアントラキノン、クロルアントラキノン等のアントラキノン類;p−メトキシベンゼンジアゾニウム、ヘキサフルオロフォスフェート、ジフェニルアイオドニウム、トリフェニルスルフォニウム等のオニウムの他、ベンジル、ジアセチル、アセトフェノン、ベンゾフェノン、メチルヴェンゾイルフーメート、ジフェニルスルフィド、ジチオカーバメート、アクリルフラビン、フルオレセンなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は単独又は混合物の形で使用される。又、重合原料には増感剤として、尿素、N,N−ジ置換−P−アミノベンゾニトリル等を配合することができる。
【0054】
光重合開始剤の使用量は、重合原料に対し、通常、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜7重量%である。増感剤を使用する場合、その使用量は、重合原料100重量部に対し、通常、0.1〜5重量部である。紫外線照射時電力は10〜200W、好ましくは20〜100Wであり、その照射時間は1秒以上、好ましくは1〜30分である。光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハロゲンランプ等が挙げられる。
【0055】
又、架橋重合の際には、架橋成分を添加してもよい。架橋成分としては多官能のラジカル重合性化合物が好ましく、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート等、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル;アリル(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼンなどが挙げられる。これらの中でも、重合度1〜24の(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等ポリオキシアルキレン鎖を有するジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0056】
このようにして得られる高分子膜、即ち本発明の気体分離膜は、架橋構造を有するものであり、水やメタノール、エタノール等の溶媒に不溶性であり、機械的強度に優れると共に、5%重量減少温度が180℃以上という、その耐熱性に優れたものである。当該気体分離膜は、その分子構造中に、前記した式−O(RO)m−で表わされる親水基を有するために、親水性のガス、例えば、二酸化炭素(CO2)、二酸化硫黄(SO2)、二酸化窒素(NO2)、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(N2O)等に対して高い透過性能を有し、特に二酸化炭素の分離膜として好適のものである。尚、本発明の気体分離膜の厚さは、例えば、0.1〜100μm、好ましくは0.5〜25μmである。
【0057】
本発明の二酸化炭素の分離方法は、二酸化炭素を含む混合ガスを上記気体分離膜に接触させて、当該混合ガス中の二酸化炭素を選択的に透過させる工程を含むことを特徴とする。当該分離方法は、分離膜のガス供給側とガス透過側との間に圧力差を設け、その差圧によってガス供給側からガス透過側へ、分離膜中をガスが拡散透過する際に、膜との親和性を有する二酸化炭素の膜透過量が、膜との親和性を有しない他のガスの膜透過量と比較して著しく大きくなることを利用して、二酸化炭素を分離回収又は分離濃縮するものである。この圧力差は、通常、ガス透過側を減圧にすることにより設けられる。該分離方法は、通常5〜80℃、好ましくは室温〜50℃の温度条件下で実施するのが望ましい。
【実施例】
【0058】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。実施例中、共重合体の数平均分子量Mn及び分散度Mw/Mnは、ゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、標準ポリスチレン換算で求めた[GPC:島津製作所製LC−10AD型、屈折率検出器:島津製作所製RID−6A型、ゲルカラム:Shodex K−805L×1本+K−804L×3本、溶媒:クロロホルム]。共重合体の構造及び組成比は、核磁気共鳴スペクトル(1H NMR)により確認した。[1H NMR:JEOL(日本電子株式会社)製LA−500型 、内部標準:テトラメチルシラン、溶媒:クロロホルム-d1]。
【0059】
合成例1 <ビニルエーテル系共重合体(I)の合成>
窒素置換した容器にイソブチルビニルエーテル35ml(0.3mol)と酢酸11.4ml(0.2mol)を取り、60℃で3時間反応させ、水素化カルシウムで乾燥後、60℃/20mmHgで蒸留してイソブチルビニルエーテル酢酸付加体(IBEA)を調製した。窒素雰囲気下、トルエンを溶媒として、2−(2−メトキシエトキシ)エチルビニルエーテル(MEEVE)0.96モル、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルメタクリレート(VEEM)0.24モル、先に調整したIBEA1ミリモル、エチルアルミニウムセスキクロリド20ミリモルを添加し、−30℃で6時間反応させた。アンモニア水/メタノール混合液(体積比=1/9)を添加し、反応を停止させた。その後、濃縮しヘキサン中で再沈殿させてMEEVE/VEEM共重合体を回収した。得られた共重合体は、下記式(I)の構造を有していることが1H NMRスペクトル(図1参照)から確認された。共重合体の組成(モル比)はMEEVE:VEEM=84:16であり、数平均分子量Mnは59,000、分散度Mw/Mnは1.46であった。
【0060】
【化5】



【0061】
合成例2
モノマーの仕込み量をMEEVE0.8モルとVEEM0.4モル、反応時間7時間とした以外は合成例1と同様にして重合を行い、MEEVE/VEEM共重合体を得た。得られた共重合体の組成(モル比)はMEEVE:VEEM=77:23で、数平均分子量Mnは78,000、分散度Mw/Mnは1.40であった。
【0062】
合成例3
モノマーの仕込み量をMEEVE0.6モルとVEEM0.6モル、反応時間9時間とした以外は合成例1と同様にして重合を行い、MEEVE/VEEM共重合体を得た。得られた共重合体の組成(モル比)はMEEVE:VEEM=58:42で、数平均分子量Mnは72,000、分散度Mw/Mnは1.61であった。
【0063】
実施例1 <気体分離膜の作製>
合成例1で得られた共重合体をジクロロメタンに溶解させてポリテトラフルオロエチレン製シャーレ上にキャストし、室温で自然乾燥した後、50℃で1時間加熱し、架橋膜を作製した。この膜をステンレス製のホルダーに装着し、膜の両面を高真空に維持した後、膜の片側に二酸化炭素ガス又は窒素ガスを別個に純粋ガスとして供給し、膜を透過してくるガス量による圧力変化からそれぞれの透過係数P(CO2)、P(N2)及び分離係数P(CO2)/P(N2)を求めた[気体透過性測定装置:理科精機工業株式会社製K−315−N型]。結果を表1に示す。又、架橋膜の一部を切り出して熱重量分析(TG−DTA)を行ったところ、5%重量減少温度は180℃であった[TG−DTA:株式会社リガク製8078G1型]。
【0064】
実施例2及び3
合成例2及び3で得られた共重合体を用いて、実施例1と同様に架橋膜を作製し、透過係数P(CO2)、P(N2)及び分離係数P(CO2)/P(N2)を測定した。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖に(ポリ)オキシアルキレン基を有する繰り返し単位(A)と、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰り返し単位(B)とを含むビニルエーテル系共重合体を架橋重合させて得られる高分子膜からなることを特徴とする気体分離膜。
【請求項2】
前記ビニルエーテル系共重合体が、式(1)
【化1】


(式中、R1は炭素数2〜10の炭化水素基を、R2は炭素数1〜4の低級アルキル基を示し、mは1〜24の整数を意味する。)
で表される(ポリ)オキシアルキレン基を有するビニルエーテル化合物と、式(2)
【化2】


(式中、R3は炭素数2〜10の炭化水素基を、R4は水素原子又はメチル基を示し、nは1〜24の整数を意味する。)
で表される(メタ)アクリロイル基を有するビニルエーテル化合物をカチオン重合して得られるビニルエーテル系共重合体である請求項1に記載の気体分離膜。
【請求項3】
側鎖に(ポリ)オキシアルキレン基を有する繰り返し単位(A)と、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰り返し単位(B)とを含むビニルエーテル系共重合体を架橋重合させて高分子膜を形成することを特徴とする気体分離膜の製造方法。
【請求項4】
前記ビニルエーテル系共重合体が、式(1)
【化3】


(式中、R1は炭素数2〜10の炭化水素基を、R2は炭素数1〜4の低級アルキル基を示し、mは1〜24の整数を意味する。)
で表される(ポリ)オキシアルキレン基を有するビニルエーテル化合物と、式(2)
【化4】


(式中、R3は炭素数2〜10の炭化水素基を、R4は水素原子又はメチル基を示し、nは1〜24の整数を意味する。)
で表される(メタ)アクリロイル基を有するビニルエーテル化合物をカチオン重合して得られるビニルエーテル系共重合体である請求項3記載の気体分離膜の製造方法。
【請求項5】
重合開始剤の存在下に架橋重合させる請求項3又は4に記載の気体分離膜の製造方法。
【請求項6】
架橋成分を使用して架橋重合させる請求項3又は4に記載の気体分離膜の製造方法。
【請求項7】
二酸化炭素を含む混合ガスを、請求項1又は2に記載の気体分離膜に接触させて、該混合ガス中の二酸化炭素を選択的に透過させる工程を含むことを特徴とする二酸化炭素の分離方法。
【請求項8】
式(3)
【化5】


(式中、R1は炭素数2〜10の炭化水素基を、R2は炭素数1〜4の低級アルキル基を示し、mは1〜24の整数を意味する。)
で表される繰り返し単位と、式(4)
【化6】


(式中、R3は炭素数2〜10の炭化水素基を、R4は水素原子又はメチル基を示し、nは1〜24の整数を意味する。)
で表される繰り返し単位とを含むことを特徴とするビニルエーテル系共重合体。

【図1】
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【公開番号】特開2011−235227(P2011−235227A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108191(P2010−108191)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(504145320)国立大学法人福井大学 (287)
【出願人】(000157603)丸善石油化学株式会社 (84)
【Fターム(参考)】