説明

気体圧縮装置

【課題】 簡易な構成を用いて駆動手段や圧縮機本体の異常を監視することが可能な気体圧縮装置を提供する。
【解決手段】 圧縮機本体3を駆動する電動モータ2と電源PSとの間に電磁開閉器5を設ける。電流センサ11は、電動モータ2に供給する電流に応じた電流検出信号Siを監視装置21に向けて出力する。監視装置21の基本波検出回路23は、電流検出信号Siの基本波に応じた基本波信号Sfを出力する。監視装置21の高調波検出回路24は、電流検出信号Siの高調波に応じた高調波信号Shを出力する。監視装置21の制御装置12は、基本波信号Sfの大きさと基本波信号Sfと高調波信号Shとの信号比Rに基づいて空気圧縮装置1の異常を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば空気、窒素等の気体を圧縮するのに用いて好適な気体圧縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、気体圧縮装置として、例えば気体を圧縮して圧縮気体を生成する圧縮機本体と、該圧縮機本体を駆動する駆動手段としての電動モータとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、圧縮機本体の状態を表す複数の波形データを計測し、波形データ毎に平均値、標準偏差等の複数のパラメータを算出し、それら複数のパラメータを相互に関連させて圧縮機本体等の異常判断や故障の予測を行う機器診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−241089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載された構成では、波形データ毎に複数のパラメータを算出すると共に、それら複数のパラメータを相互に関連させるため、演算速度が速く、多量のデータを扱うことができる演算装置が必要となる。このため、機器診断装置の費用が高くなり、安価な気体圧縮装置に装備するのは難しい傾向がある。
【0005】
また、音や振動によって簡易的に異常を診断する場合には、センサの取付け位置や気体圧縮装置の設置環境に応じて外乱ノイズが発生するため、それぞれの装置毎に外乱ノイズを除去するための調整が必要になるという問題がある。
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、簡易な構成を用いて駆動手段や圧縮機本体の異常を監視することが可能な気体圧縮装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、気体を圧縮して圧縮気体を生成する圧縮機本体と、該圧縮機本体を駆動する駆動手段と、該駆動手段の電流を検出する電流検出手段と、該電流検出手段により検出された電流の信号により前記圧縮機本体を制御する制御装置とを備えた気体圧縮装置において、前記電流検出手段により検出された電流の信号に基づいて、基本波の電流信号を検出する基本波検出手段と、高調波の電流信号を検出する高調波検出手段とを設け、前記制御装置は、前記基本波検出手段の処理結果と前記高調波検出手段の処理結果とに基づいて、当該気体圧縮装置の異常を監視することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基本波検出手段や高調波検出手段のような簡易な構成を用いて駆動手段や圧縮機本体の異常を監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態による空気圧縮装置を示す構成図である。
【図2】図1中の監視装置による異常検出処理を示す流れ図である。
【図3】異常判定用の閾値を示す説明図である。
【図4】起動時における正常領域と異常領域を示す説明図である。
【図5】定常時における正常領域と異常領域を示す説明図である。
【図6】起動時から定常時に移行するときの電流検出信号を示す説明図である。
【図7】起動時における電流検出信号のパワースペクトラムを示す特性線図である。
【図8】定常時における電流検出信号のパワースペクトラムを示す特性線図である。
【図9】第2の実施の形態による空気圧縮装置を示す構成図である。
【図10】図9中の監視装置による閾値変更処理を示す流れ図である。
【図11】電源変更前の異常判定用の閾値を示す説明図である。
【図12】電源変更後の異常判定用の閾値を示す説明図である。
【図13】第3の実施の形態による空気圧縮装置を示す構成図である。
【図14】第1の変形例による異常判定用の閾値を示す説明図である。
【図15】第2の変形例による異常判定用の閾値を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態による気体圧縮装置として、空気圧縮装置を例に挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
まず、図1ないし図3は第1の実施の形態を示している。図1において、空気圧縮装置1は、駆動手段としての電動モータ2と、該電動モータ2によって駆動される圧縮機本体3とを備えている。ここで、電動モータ2は、例えば三相誘導電動機等の交流モータによって構成され、そのU相、V相、W相が3本の電源供給線4を用いて三相交流電源からなる電源PSのR相、S相、T相にそれぞれ接続されている。また、圧縮機本体3は、例えばレシプロ型、スクリュウ型、スクロール型等の各種の圧縮機構によって構成されている。この圧縮機本体3は、外部から吸込んだ空気を圧縮して圧縮空気を生成すると共に、この圧縮空気をタンク6に向けて吐出する。
【0012】
電磁開閉器5は、電動モータ2と電源PSとの間に位置して電源供給線4の途中に設けられている。この電磁開閉器5は、そのON/OFFに応じて、電動モータ2に対する電力の供給/停止を切換える。これにより、電動モータ2は、電磁開閉器5によって、運転と停止とが切り換わる。
【0013】
タンク6は、圧縮機本体3の吐出側に接続され、圧縮機本体3から吐出された圧縮空気を貯留する。このタンク6には、逆止弁7および絞り弁8を備えた出力配管9が取付けられている。これにより、タンク6は、出力配管9を介して外部の空圧機器(図示せず)に接続されると共に、絞り弁8を開弁することによって空圧機器に向けて圧縮空気を供給するものである。
【0014】
また、タンク6には、圧力センサ10が取付けられている。この圧力センサ10は、タンク6内の圧縮空気の圧力を検出し、圧力に応じた圧力検出信号Spを出力する。
【0015】
電流センサ11は、電動モータ2に供給される電流を検出する電流検出手段を構成している。この電流センサ11は、電磁開閉器5と電動モータ2との間に位置して、3本の電源供給線4のうち例えば1本(W相)の電源供給線4の途中に取付けられている。そして、電流センサ11は、電源供給線4を流れる電流に応じた電流検出信号Siを後述の制御装置12に向けて出力する。なお、電流センサ11は、3本全ての電源供給線4にそれぞれ接続する構成としてもよい。
【0016】
制御装置12は、例えばマイクロコンピュータ等によって構成されると共に、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器13を備えている。また、制御装置12は、例えばROM、RAM等の記憶装置14と、電磁開閉器5のON/OFFを制御するためのリレー15と、例えばランプ、表示パネル等の表示装置16とにそれぞれ接続されている。
【0017】
この制御装置12は、圧力センサ10および電磁開閉器5に接続され、圧力センサ10からの圧力検出信号SpをA/D変換器13によってデジタル信号に変換して読込むと共に、圧力検出信号Spに応じてリレー15を用いて電磁開閉器5のON/OFFを制御し、空気圧縮装置1の運転と停止とを切り換える。
【0018】
具体的には、制御装置12は、圧力センサ10からの圧力検出信号Spに基づいて、空気圧縮装置1の運転と停止とを切換える圧力開閉制御を行い、タンク6内の圧力を圧力上限値と圧力下限値との間の範囲に保持する。このとき、制御装置12は、タンク6内の圧力が圧力上限値よりも上昇したときに電磁開閉器5をOFFに切り換えて空気圧縮装置1の運転を停止し、タンク6内の圧力が圧力下限値よりも低下したときに電磁開閉器5をONに切り換えて空気圧縮装置1の運転を再開する。
【0019】
また、制御装置12は、電流センサ11からの電流検出信号Siに基づいて電動モータ2や圧縮機本体3の異常を監視する監視装置21を構成する。この監視装置21は、異常を検出したときに、電磁開閉器5をOFFに切り換えて空気圧縮装置1の運転を停止したり、表示装置16を用いて異常の発生を報知する。
【0020】
次に、監視装置21について説明する。
【0021】
監視装置21は、制御装置12、記憶装置14、リレー15に加えて、整流回路22、基本波検出回路23および高調波検出回路24を備える。整流回路22は、例えば全波整流回路によって構成され、電流センサ11からの電流検出信号Siを全波整流し、整流信号Srを出力する。この整流回路22の出力側は、基本波検出回路23および高調波検出回路24にそれぞれ接続されている。
【0022】
基本波検出回路23は、基本波検出手段を構成し、整流回路22から出力された整流信号Srに基づいて、基本波の電流信号を検出し、処理結果としての基本波信号Sfを出力する。ここで、基本波信号Sfは、電源PSから供給される基本周波数(例えば電源周波数である50Hzまたは60Hz)の正弦波信号を基本波としたときに、この基本波の振幅に対応する。このため、基本波検出回路23は、基本波を通過させ、高調波を遮断する低域通過フィルタ23A(以下、LPF23Aという)と、LPF23Aから出力された信号の包絡線検波を行う包絡線検波回路23Bとによって構成されている。このとき、LPF23Aは、例えば基本周波数以下の低周波の信号を通過させ、第2高調波よりも高周波の信号を遮断するために、基本周波数とその2倍の周波数との間に遮断周波数が設定されている。
【0023】
高調波検出回路24は、高調波検出手段を構成し、整流回路22から出力された整流信号Srに基づいて、高調波の電流信号を検出し、処理結果としての高調波信号Shを出力する。ここで、高調波信号Shは、電源PSから供給される基本波に対して、その高調波の振幅に対応する。このため、基本波検出回路23は、高調波を通過させ、基本波を遮断する高域通過フィルタ24A(以下、HPF24Aという)と、HPF24Aから出力された信号を増幅する増幅器24Bと、増幅器24Bから出力された信号の包絡線検波を行う包絡線検波回路24Cとによって構成されている。このとき、HPF24Aは、例えば第2高調波以上の高周波の信号を通過させ、基本波以下の低周波の信号を遮断するために、基本周波数とその2倍の周波数との間に遮断周波数が設定されている。
【0024】
基本波検出回路23および高調波検出回路24の出力側は、A/D変換器13を介して制御装置12に接続されている。これにより、制御装置12は、記憶装置14に格納された後述の異常検出処理のプログラムを実行し、基本波検出回路23による基本波信号Sfと高調波検出回路24による高調波信号ShとをA/D変換器13によってデジタル信号に変換して読込むと共に、これらの基本波信号Sfと高調波信号Shとに応じてリレー15を用いて電磁開閉器5のON/OFFを制御し、空気圧縮装置1の運転と停止とを切り換える。
【0025】
次に、制御装置12による異常検出処理について図2を参照しつつ説明する。なお、図2に示す異常検出処理は、予め決められたサンプリング周期Δt(例えばΔt=数十〜数百ms)毎に行うものである。また、異常判定用の閾値Ia,Ib,Ic,Ra,Rbは、予め記憶装置14に格納されているものとする。
【0026】
まず、ステップ1では、制御装置12は、基本波信号Sfと高調波信号ShをA/D変換器13によってデジタル信号に変換して読込む。続くステップ2では、基本波信号Sfに対する高調波信号Shの比率である信号比Rを以下の数1の式に基づいて演算する。
【0027】
【数1】

【0028】
次に、ステップ3では、電動モータ2が停止状態から駆動状態に切り換わった起動時か否かを判定する。ここで、電動モータ2の起動時には、通常状態で運転している定常時(定常運転時)に比べて、数倍の電流が数百ms程度の起動時間T0に亘って流れる。その後、定常時に切り換わると、電動モータ2に流れる電流は定常運転の電流範囲に収束する。このため、基本波信号Sfが所定の電流値I0以下(例えばI0=0A)から所定の電流値になったときに、電動モータ2の運転開始時であると判断すると共に、この運転開始時以降に基本波信号Sfが例えば定格電流の±20%程度となる定常運転の電流範囲に収束するまでの間を起動時であると判定する。一方、起動時と判定されないときには、定常時であると判定する。
【0029】
そして、ステップ3で「YES」と判定したときには、電動モータ2は起動時であるので、ステップ4に移って起動時異常判定処理を行う。具体的には、図3に示すように、基本波信号Sfが起動時電流閾値Ia以上である場合に、過負荷が生じた異常状態と判定する。このとき、起動時電流閾値Iaは、電動モータ2および圧縮機本体3が正常な状態で起動時に発生する最大電流を超える値として、例えば定格電流の数倍程度の値に設定されている。
【0030】
また、基本波信号Sfが閾値Iaよりも小さいときでも、信号比Rが起動時比率閾値Ra以上である場合には、過負荷が生じた異常状態と判定する。このとき、起動時比率閾値Raは、電動モータ2および圧縮機本体3が正常な状態で起動時に発生する信号比Rの最高値を超える値に設定されている。これらの閾値Ia,Raは、例えば実験的に得られる値である。そして、以上の判定基準によって異常と判定されない場合には、正常状態であると判定する。
【0031】
この結果、図4に示すように、電動モータ2の起動時には、基本波信号Sfが閾値Iaよりも小さく、かつ信号比Rが起動時比率閾値Raよりも小さい範囲が、空気圧縮装置1を正常状態と判定する正常領域となる。一方、この正常領域以外が空気圧縮装置1を異常状態と判定する異常領域となる。
【0032】
なお、基本波信号Sfおよび信号比Rに加えて、高調波信号Shの値が所定の起動時電流閾値を超えたときにも、異常状態と判定する構成にしてもよい。また、基本波信号Sfおよび信号比Rの両方で異常状態を判定しなかった場合でも、定常時に至るまでの経過時間と、基本波信号Sfの減少率と、高調波信号Shの減少率とを演算し、これら3つの演算値が所定の範囲に入らない場合にも、異常状態と判定してもよい。
【0033】
一方、ステップ3で「NO」と判定したときには、電動モータ2は定常時であるので、ステップ5に移って定常時異常判定処理を行う。具体的には、図3に示すように、基本波信号Sfが定常時最大電流閾値Ib以上である場合に、過負荷が生じた異常状態と判定する。このとき、定常時最大電流閾値Ibは、電動モータ2および圧縮機本体3が正常な状態で定常時に発生する最大電流を超える値として、例えば定格電流よりも20〜80%程度大きな値に設定されている。
【0034】
また、基本波信号Sfが定常時最小電流閾値Ic以下である場合に、負荷の異常喪失が生じた異常状態と判定する。このとき、定常時最小電流閾値Icは、電動モータ2および圧縮機本体3が正常な状態で定常時に発生する最小電流よりも小さい値として、例えば定格電流よりも30〜60%程度小さい値に設定されている。なお、定常時最大電流閾値Ibは、定常時最小電流閾値Icよりも大きく、起動時電流閾値Iaよりも小さい。このため、これらの閾値Ia,Ib,Icには、以下の数2の式に示す関係がある。
【0035】
【数2】

【0036】
さらに、基本波信号Sfが閾値Ibよりも小さく、閾値Icよりも大きいときでも、信号比Rが定常時比率閾値Rb以上である場合には、過負荷が生じた異常状態と判定する。このとき、定常時比率閾値Rbは、電動モータ2および圧縮機本体3が正常な状態で定常時に発生する信号比Rの最高値を超える値に設定されている。なお、定常時比率閾値Rbは、起動時比率閾値Raよりも小さく、以下の数3の式に示す関係がある。そして、閾値Ib,Ic,Rbは、例えば実験的に得られる値である。そして、以上の判定基準によって異常と判定されない場合には、正常と判定する。
【0037】
【数3】

【0038】
この結果、図5に示すように、電動モータ2の定常時には、基本波信号Sfが閾値Ibと閾値Icの間の範囲内で、かつ信号比Rが定常時比率閾値Rbよりも小さい範囲が、空気圧縮装置1を正常状態と判定する正常領域となる。一方、この正常領域以外が空気圧縮装置1を異常状態と判定する異常領域となる。
【0039】
ステップ4,5の処理が終了すると、ステップ6に移行して異常があるか否かを判定する。そして、ステップ4,5のいずれかで異常と判定されたときには、ステップ6で「YES」と判定し、ステップ7に移行する。ステップ7では、制御装置12は、リレー15を用いて電磁開閉器5をOFFに切り換える。これにより、電動モータ2および圧縮機本体3は停止する。
【0040】
一方、ステップ4,5のいずれでも正常と判定されたときには、ステップ6で「NO」と判定し、ステップ8に移行する。ステップ8では、制御装置12は、リレー15を用いて電磁開閉器5をONにし、電動モータ2および圧縮機本体3の駆動を継続する。そして、ステップ7,8が終了すると、ステップ9に移行してリターンする。
【0041】
本実施の形態による空気圧縮装置1は上述の如き構成を有するもので、次に、図1ないし図8を参照しつつ、その異常検出動作について説明する。
【0042】
まず、空気圧縮装置1の電源供給線4を電源PSに接続した状態で、電源スイッチ(図示せず)をONにすると、電磁開閉器5がONに切り換わる。これにより、電動モータ2に駆動して、圧縮機本体3が圧縮運転を開始する。
【0043】
ここで、電動モータ2の電流は通常正弦波となる。しかし、空気圧縮装置1の場合には、タンク6の圧力や温度、運転モード(ロード運転/アンロード運転)等の負荷が変動したときには、電流値の変化だけでなく、電流波形に歪みが生じ、通常の正弦波を基本波としたn次の高調波電流が重畳される。圧縮機本体3の摺動抵抗の増加や、圧縮機本体3の機能消失や連結機構部の異常により電動モータ2のロック等の機構的な異常が発生したときにも、このような高調波電流の重畳が発生する。このため、高調波に基づいて空気圧縮装置1の異常を検出することが可能である。
【0044】
但し、空気圧縮装置1が正常な場合でも、電動モータ2の起動時には、高調波電流の重畳が発生する。このとき、電動モータ2の起動時には、図6および図7に示すように、基本波信号Sfも定常時の数倍の値になると共に、基本波信号Sfに対する高調波信号Shの信号比Rも増加する。そして、電動モータ2が定常時に移行するに従って、基本波信号Sfは定格電流付近の値で安定すると共に、高調波信号Shが減少して信号比Rも低下する。また、空気圧縮装置1が正常な場合でも、タンク6の圧力等に応じて圧縮機本体3に作用する負荷が変動するから、基本波信号Sfや信号比Rは所定の範囲内で変動する。
【0045】
図3に示すように、基本波信号Sfの大きさを横軸にし、信号比Rの大きさを縦軸にした場合、空気圧縮装置1が正常なときに基本波信号Sfおよび信号比Rが変動する範囲(変動領域)は、起動時には基本波信号Sfと信号比Rがいずれも大きな右上の範囲になり、定常時には基本波信号Sfと信号比Rが減少して中央下側の範囲に移動する。
【0046】
以上の点を考慮して、本実施の形態による制御装置12は、基本波信号Sfを用いて起動時か定常時かを判定すると共に、起動時と定常時で、基本波信号Sfと信号比Rを用いて正常か否かを判定するときの基準を変更している。このとき、異常判定用の閾値Ia,Ib,Ic,Ra,Rbは、空気圧縮装置1が正常なときの変動領域を許容できる値に設定される。
【0047】
そして、図4に示すように、起動時には基本波信号Sfが起動時電流閾値Ia以上となるときに異常と判定する。これに対し、図5に示すように、定常時には基本波信号Sfが起動時電流閾値Iaよりも小さい定常時最大電流閾値Ib以上となるときに異常と判定すると共に、基本波信号Sfが定常時最大電流閾値Ibよりも小さい定常時最小電流閾値Ic以下となるときにも異常と判定する。
【0048】
また、起動時には、図4に示すように、基本波信号Sfに対する高調波信号Shの信号比Rが起動時比率閾値Ra以上となるときに異常と判定する。これに対し、図5に示すように、定常時には信号比Rが起動時比率閾値Raよりも小さい定常時比率閾値Rb以上となるときに異常と判定する。
【0049】
これにより、起動時と定常時で異なる基準に基づいて異常を判定するから、例えば定常時の判定基準だけを用いた場合に比べて、起動時に誤って異常を検出することがなくなる。また、起動時であっても異常を検出することができるから、定常時に移行する前に空気圧縮装置1を停止させることができ、損傷の増大等を防ぐことができる。
【0050】
かくして、本実施の形態によれば、制御装置12は電流センサ11によって検出された電流検出信号Siの電源周波数に応じた基本波信号Sfと、基本波信号Sfに対する高調波信号Shの信号比Rに基づいて、空気圧縮装置1が異常か否かを判定することができるから、電動モータ2や圧縮機本体3に異常があると判定した場合には、空気圧縮装置1の運転を速やかに停止することができる。このとき、電流センサ11、基本波検出回路23および高調波検出回路24のような簡易な回路構成で空気圧縮装置1の異常判定を行うことができるから、例えば多量のデータを扱う演算装置が不要となり、低廉な監視装置21を提供することができる。このため、例えばインバータ等を用いることなく、電源PSからの電力をそのまま電動モータ2に供給するような安価な空気圧縮装置1に対しても、監視装置21を適用することができる。
【0051】
また、電動モータ2や圧縮機本体3等の構造変更や改修が殆ど要らないため、既存の圧縮装置に対しても本実施の形態による監視装置21を容易に追加することができる。
【0052】
さらに、監視装置21は電動モータ2の電流検出信号Siを用いて空気圧縮装置1の異常を検出するから、音や振動等を用いて異常判定した場合に比べて、外乱ノイズの影響を受け難い。これに加え、電動モータ2の電流値という比較的周波数の低い、ノイズの影響を受け難い電気信号を用いて異常を検出するから、高速フーリエ変換のような高速な演算処理を必要とせず、監視装置21の構成も簡単にできるため、監視装置21を小型化することができ、多様な圧縮装置に搭載することができる。
【0053】
次に、図9および図10は第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、電源品質が変わったときに異常判定用の閾値を変更する構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では第1の実施の形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0054】
31は第2の実施の形態による空気圧縮装置を示し、該空気圧縮装置31は、第1の実施の形態による空気圧縮装置1と同様に、電動モータ2、圧縮機本体3、電磁開閉器5、制御装置12等によって構成されている。
【0055】
監視装置32は、第1の実施の形態による監視装置21とほぼ同様に構成されている。このため、監視装置32の制御装置12は、第1の実施の形態と同様に、図2に示す異常検出処理を実行する。
【0056】
但し、制御装置12は、起動時における基本波信号Sfおよび信号比Rの経年劣化による変化分ΔSf1,ΔR1と、定常時における基本波信号Sfおよび信号比Rの経年劣化による変化分ΔSf2,ΔR2とを計測し、これらを記憶装置14に記憶する。これらの変化分ΔSf1,ΔR1,ΔSf2,ΔR2は、例えば基本波信号Sfおよび信号比Rの平均値を用いて計測する。
【0057】
具体的には、空気圧縮装置31を最初に起動したときに、起動時の基本波信号Sfおよび信号比Rの平均値を初期平均値Sf10,R10としてそれぞれ計測すると共に、定常時の基本波信号Sfおよび信号比Rの平均値を初期平均値Sf20,R20としてそれぞれ計測し、これらの初期平均値Sf10,R10,Sf20,R20を記憶する。その後、空気圧縮装置31を起動する毎に、起動時の基本波信号Sfおよび信号比Rの平均値Sf11,R11および定常時の基本波信号Sfおよび信号比Rの平均値Sf21,R21を計測する。そして、以下の数4の式に示すように、これらの平均値Sf11,R11,Sf21,R21と初期平均値Sf10,R10,Sf20,R20との差によって変化分ΔSf1,ΔR1,ΔSf2,ΔR2を計測する。
【0058】
【数4】

【0059】
また、制御装置12には外部操作スイッチ33が接続されている。この外部操作スイッチ33は、空気圧縮装置31の使用を最初に開始するとき、または異なる電源PSに接続したときに、利用者が操作するものである。そして、利用者が外部操作スイッチ33を操作すると、制御装置12は、後述の閾値変更処理を実行し、新たに計測した初期平均値Sf10,R10,Sf20,R20および記憶装置14に記憶した変化分ΔSf1,ΔR1,ΔSf2,ΔR2に基づいて、異常判定用の閾値Ia,Ib,Ic,Ra,Rbを変更する。
【0060】
なお、初期平均値Sf10,R10,Sf20,R20は、外部操作スイッチ33が操作されたときに更新される。一方、変化分ΔSf1,ΔR1,ΔSf2,ΔR2は、外部操作スイッチ33が操作されてもそのまま保持され、新たな初期平均値Sf10,R10,Sf20,R20に対する変化分が加算される。変化分ΔSf1,ΔR1,ΔSf2,ΔR2は、初期値はいずれも零であり、例えば空気圧縮装置31のメンテナンス等を行ったときにリセットされて零に戻る。
【0061】
次に、監視装置32による閾値変更処理について図10を参照しつつ説明する。
【0062】
まず、空気圧縮装置31を移動して異なる電源PSに接続し、利用者が外部操作スイッチ33を操作すると、閾値変更処理が動作する。そして、ステップ11では、電磁開閉器5をONに切り換えて、起動時の基本波信号Sfおよび信号比Rの平均値を初期平均値Sf10,R10としてそれぞれ計測すると共に、定常時の基本波信号Sfおよび信号比Rの平均値を初期平均値Sf20,R20としてそれぞれ計測し、これらの初期平均値Sf10,R10,Sf20,R20を記憶する。
【0063】
続くステップ12では、起動時の初期平均値Sf10,R10に基づいて、起動時における初期値の閾値Ia0,Ra0を演算する。具体的には、起動時における初期値の閾値Ia0,Ra0は、初期平均値Sf10,R10よりも所定の比率や余裕分となる所定値だけ大きな値に設定される。なお、所定の比率や余裕分は、空気圧縮装置31が正常な状態での起動時の変動領域を考慮して決定される。
【0064】
また、定常時の初期平均値Sf20,R20に基づいて、定常時における初期値の閾値Ib0,Ic0,Rb0を演算する。具体的には、定常時における初期値の閾値Ib0,Rb0は、初期平均値Sf20,R20よりも所定の比率や余裕分となる所定値だけ大きな値に設定され、定常時における初期値の閾値Ic0は、初期平均値Sf20よりも所定の比率や余裕分となる所定値だけ小さな値に設定される。なお、所定の比率や余裕分は、空気圧縮装置31が正常な状態での定常時の変動領域を考慮して決定される。
【0065】
これにより、初期値の閾値Ia0,Ib0,Ic0,Ra0,Rb0は、新たな電源PSの品質に応じた値になる。即ち、新たな電源PSの電圧が以前のものに比べて高くなると、閾値Ia0,Ib0,Ic0,Ra0,Rb0を全体的に高い値にシフトし、新たな電源PSの電圧が以前のものに比べて低くなると、閾値Ia0,Ib0,Ic0,Ra0,Rb0を全体的に低い値にシフトする。
【0066】
次に、ステップ13では、記憶装置14に記憶された変化分ΔSf1,ΔR1,ΔSf2,ΔR2を読み込む。続くステップ14では、変化分ΔSf1,ΔR1,ΔSf2,ΔR2に基づいて、初期値の閾値Ia0,Ib0,Ic0,Ra0,Rb0から新たな異常判定用の閾値Ia,Ib,Ic,Ra,Rbを演算する。具体的には、以下の数5の式に示すように、起動時電流閾値Iaは初期値の閾値Ia0よりも変化分ΔSf1だけ小さくし、起動時比率閾値Raは初期値の閾値Ra0よりも変化分ΔR1だけ小さくする。
【0067】
【数5】

【0068】
また、以下の数6の式に示すように、定常時最大電流閾値Ibおよび定常時最小電流閾値Icはいずれも初期値の閾値Ib0,Ic0よりも変化分ΔSf2だけ小さくし、定常時比率閾値Rbは初期値の閾値Rb0よりも変化分ΔR2だけ小さくする。
【0069】
【数6】

【0070】
これにより、閾値Ia,Ib,Ic,Ra,Rbは、経年劣化に基づく変化分ΔSf1,ΔR1,ΔSf2,ΔR2を考慮した値になる。ステップ14が終了すると、ステップ15に移ってリターンする。
【0071】
かくして、第2の実施の形態でも第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。また、第2の実施の形態では、例えば空気圧縮装置31の使用途中で異なる電源PSに接続した場合でも、電源品質の変化や以前の電源PSで使用したときの経年劣化を考慮して異常判定用の閾値Ia,Ib,Ic,Ra,Rbに演算する。このため、電源品質の変化や経年劣化を考慮して異常か否かを判定することができ、これらに基づく誤検出等を防止することができる。
【0072】
具体的に説明すると、電源PSを変更したときには、空気圧縮装置31に供給される電圧や電流等の電源品質が変わる場合がある。例えば空気圧縮装置31に供給される電圧や電流が上昇したときには、基本波信号Sfおよび信号比Rも全体的に上昇し、空気圧縮装置31が正常であっても、異常であると誤検出される可能性がある。一方、空気圧縮装置31に供給される電圧や電流が低下したときには、基本波信号Sfおよび信号比Rも全体的に低下するから、空気圧縮装置31に異常があっても、正常であると誤検出される可能性がある。
【0073】
本実施の形態では、このような電源品質の変化を考慮して、電源PSが変わる度に異常判定用の閾値Ia,Ib,Ic,Ra,Rbを設定し直す。しかし、単に電源品質だけに基づいて閾値Ia,Ib,Ic,Ra,Rbを設定した場合には、以前の電源PSで発生した経年劣化分は電源PSの変更に伴ってリセットされてしまう。そこで、図12に示すように、閾値Ia,Ib,Ic,Ra,Rbを設定し直すときには、最初に電源品質だけに基づいた初期値の閾値Ia0,Ib0,Ic0,Ra0,Rb0を演算し、その後これらの閾値Ia0,Ib0,Ic0,Ra0,Rb0を基本として経年劣化による変化分ΔSf1,ΔR1,ΔSf2,ΔR2を考慮して閾値Ia,Ib,Ic,Ra,Rbを演算する。
【0074】
例えば空気圧縮装置31を長期間に亘って使用したときには、空気圧縮装置31の部品に磨耗等が生じる。このとき、図11に示すように、基本波信号Sfおよび信号比Rの平均値Sf11,R11,Sf21,R21は初期平均値Sf10,R10,Sf20,R20に比べて閾値Ia,Ra,Ib,Rbに近付くことがある。このため、本実施の形態では、このような経年劣化を考慮して、電源品質に基づく閾値Ia0,Ib0,Ic0,Ra0,Rb0から経年劣化による変化分ΔSf1,ΔR1,ΔSf2,ΔR2を減算して、新たな閾値Ia,Ib,Ic,Ra,Rbを演算する。これにより、電源品質の変化と経年劣化の両方を考慮して異常か否かを判定することができ、これらに基づく誤検出等を防止することができる。
【0075】
なお、第2の実施の形態では、外部操作スイッチ33を操作したときに、異常判定用の閾値Ia,Ib,Ic,Ra,Rbを再設定する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば制御装置12に対する外部通信による入力に基づいて閾値Ia,Ib,Ic,Ra,Rbを再設定してもよく、前回の電源供給時に比べて定常時における基本波信号Sfの平均値Sf21の変化量と信号比Rの平均値R21の変化量とのうち少なくともいずれか一方が所定値以上となったときに、制御装置12によって電源品質が変更されたものと判定し、自動的に閾値Ia,Ib,Ic,Ra,Rbを再設定する構成としてもよい。
【0076】
次に、図13は第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、電流検出信号に基づく異常検出と振動検出信号に基づく異常検出とを組み合わせる構成としたことにある。なお、第3の実施の形態では第1の実施の形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0077】
41は第3の実施の形態による空気圧縮装置を示し、該空気圧縮装置41は、第1の実施の形態による空気圧縮装置1と同様に、電動モータ2、圧縮機本体3、電磁開閉器5、制御装置12等によって構成されている。また、制御装置12には、圧縮機本体3の振動を検出する振動検出手段としての振動検出器42が接続されている。この振動検出器42は、例えば圧電素子等によって構成され、圧縮機本体3に取付けられている。そして、振動検出器42は、圧縮機本体3の振動に応じた振動検出信号Svを出力する。
【0078】
監視装置43は、第1の実施の形態による監視装置21とほぼ同様に、制御装置12、記憶装置14、リレー15、整流回路22、基本波検出回路23および高調波検出回路24を備える。これに加えて、監視装置43は、振動検出回路44を備える。
【0079】
この振動検出回路44は、振動検出器42からの振動検出信号Svを増幅する増幅器44Aと、増幅器44Aから出力された信号から不要な信号成分を除去するフィルタ44Bと、フィルタ44Bから出力された信号の包絡線検波を行う包絡線検波回路44Cとによって構成されている。この包絡線検波回路44Cの出力側は、A/D変換器13を介して制御装置12に接続されている。これにより、制御装置12は、記憶装置14に格納されたプログラムを実行し、例えば特開2006−97654号公報に記載されたものと同様に、振動検出信号Svに基づいて空気圧縮装置41の異常を検出する。そして、制御装置12は、電流検出信号Siに基づいて異常を検出したとき、または振動検出信号Svに基づいて異常を検出したときに、リレー15を用いて電磁開閉器5をOFFに切り換えて、空気圧縮装置41を停止する。
【0080】
かくして、第3の実施の形態でも第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。第3の実施の形態では、電流検出信号Siに基づく異常検出と振動検出信号Svに基づく異常検出とを組み合わせたから、例えば電流センサ11、基本波検出回路23、高調波検出回路24のいずれかに故障が生じ、電流検出信号Siに基づく異常検出ができない場合であっても、振動検出信号Svに基づいて異常検出を行うことができ、軽度の故障が生じた段階で空気圧縮装置41を停止することができる。
【0081】
また、電流検出信号Siに基づく異常検出と振動検出信号Svに基づく異常検出とは相関関係がある。即ち、相互の検出結果が異なるときには、いずれか一方の異常検出に故障が生じている可能性がある。このため、2つの検出結果を比較することによって、電流検出信号Siに基づく異常検出と振動検出信号Svに基づく異常検出とを相互に確認することができ、例えば2つの検出結果が相違したときには、表示装置16を用いて監視装置43等の故障を利用者に報知することができる。
【0082】
なお、第3の実施の形態では、第1の実施の形態と同様な監視装置43に適用した場合について説明したが、第2の実施の形態と同様な監視装置に適用する構成としてもよい。
【0083】
また、第1の実施の形態では、異常判定用の閾値Ia,Ib,Ic,Ra,Rbは、予め記憶装置14に格納されているものとしたが、第2の実施の形態と同様に、空気圧縮装置1を最初に駆動したときに、基本波信号Sfおよび信号比Rの平均値(初期平均値Sf10,R10,Sf20,R20)をそれぞれ計測し、これらの平均値に基づいて設定してもよい。
【0084】
また、前記第1の実施の形態では、異常が検出された場合に、監視装置21は、電磁開閉器5をOFFにし、電動モータ2および圧縮機本体3を停止させる構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば監視装置21は、異常を検出した場合でも、電磁開閉器5を操作せずに、表示装置16を用いて空気圧縮装置1に異常が生じたことを利用者に報知する構成としてもよい。また、図14に示す第1の変形例のように、停止用の閾値Ia,Ib,Ic,Ra,Rbに加えて警告表示用の閾値IaA,IbA,IcA,RaA,RbAを用意し、正常領域と停止領域の間に警告領域を設ける構成としてもよい。この場合、停止用の閾値Ia,Ib,Ra,Rbは、警告表示用の閾値IaA,IbA,RaA,RbAよりも大きい値に設定し、停止用の閾値Icは、警告表示用の閾値IcAよりも小さい値に設定するものである。この構成は、第2,第3の実施の形態にも適用することができる。
【0085】
また、前記第1の実施の形態では、信号比Rの閾値Ra,Rbは基本波信号Sfに拘らず一定値であるものとしたが、例えば図15に示す第2の変形例にように、信号比Rの閾値Ra′,Rb′は、基本波信号Sfが増加するに従って大きくなる構成としてもよい。この構成は、第2,第3の実施の形態にも適用することができる。
【0086】
また、前記各実施の形態では、整流回路22は全波整流回路を用いて構成したが、正の電流信号のみで異常の判定ができる場合には、半波整流回路等を用いる構成としてもよい。
【0087】
また、前記各実施の形態では、高調波検出回路24は、HPF24Aを用いることによって、基本波よりも高周波側の全ての高調波の振幅を検出する構成とした。しかし、高調波は一般的に低次の高調波の振幅が大きく、高次の高調波の振幅は非常に小さい。高調波の検出帯域を広くすると、ノイズ等の外乱による誤検出が生じる場合や、検出精度が低下する場合がある。このため、高調波検出回路は、高域通過フィルタに代えて、振幅が大きくなる高調波(例えば3次、5次、7次の高調波)のみを抽出する帯域通過フィルタを用いる構成としてもよい。
【0088】
また、前記各実施の形態では、駆動手段として電動モータ2を例に挙げて説明したが、例えば電動モータ2と圧縮機本体3とを連結するプーリや連結ベルトを設けた場合には、電動モータ2と共にプーリ、連結ベルト等を含めて駆動手段と構成してもよい。
【0089】
また、前記各実施の形態では、圧縮機本体3(電動モータ2)を駆動して圧縮運転を起動し、圧縮機本体3を停止して圧縮運転を停止する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えばレシプロ型等でアンロード運転が可能な圧縮機においては、ロード運転を行って圧縮運転を起動し、アンロード運転を行って圧縮運転を停止する構成としてもよい。
【0090】
さらに、前記各実施の形態では、気体圧縮装置として空気圧縮装置1,31,41を例に挙げて説明したが、例えば窒素等の他の気体を圧縮する圧縮装置にも広く適用できるものである。
【0091】
以上の各実施の形態で述べたように、請求項1の発明によれば、制御装置は、基本波検出手段の処理結果と高調波検出手段の処理結果とに基づいて、気体圧縮装置の異常を監視する。このため、基本波の電流信号に基づいて気体圧縮装置の異常を検出することができるのに加え、基本波の電流信号と高調波の電流信号との信号比に基づいて気体圧縮装置の異常を検出することができる。この結果、例えば多量のデータを扱う演算装置が不要となり、低廉な装置を用いて気体圧縮装置の異常を検出することができる。
【0092】
また、圧縮機本体や駆動手段の構造変更や改修が殆ど要らないため、既存の気体圧縮装置に対しても容易に適用することができる。さらに、電流検出手段によって検出した電流の信号を用いて気体圧縮装置の異常を検出するから、音や振動等を用いて異常判定した場合に比べて、外乱ノイズの影響を受け難い。これに加え、駆動手段の電流値という比較的周波数の低い、ノイズの影響を受け難い電気信号を用いて異常を検出するから、高速フーリエ変換のような高速な演算処理を必要としない。このため、異常検出用の構成を簡略化および小型化することができ、多様な気体圧縮装置に搭載することができる。
【0093】
請求項2の発明によれば、基本波検出手段による基本波の振幅と高調波検出手段による高調波の振幅との比率を信号比として演算し、この信号比に基づいて気体圧縮装置の異常を検出する。例えば基本波や高調波の振幅だけに基づいて気体圧縮装置の異常を検出した場合には、電源品質の変更に伴って基本波の振幅や高調波の振幅が変化したときに、誤検出が生じる可能性がある。これに対し、本発明では、信号比に基づいて気体圧縮装置の異常を検出するから、電源品質が変化したときでも、信号比の変化を抑えることができ、誤検出を抑制することができる。
【0094】
請求項3の発明によれば、異常を判断するための閾値は基本波検出手段の演算結果によって切り換えるから、例えば駆動手段の起動時と定常時のように、基本波の電流信号が大きく異なる場合でも、それぞれの場合に応じた閾値を用いて気体圧縮装置の異常を検出することができる。
【0095】
請求項4の発明によれば、異常を判断するための閾値は駆動手段の起動時と定常値で切り換える。このため、駆動手段の起動時のように、基本波および高調波の電流信号が大きくなるときには、閾値を大きな値に設定することができる。一方、駆動手段の定常時のように、基本波および高調波の電流信号が小さい値で安定するときには、閾値を小さな値に設定することができる。これにより、駆動手段の起動時と定常時のいずれでも気体圧縮装置の異常を検出することができるから、例えば駆動手段の起動時に異常を検出したときには、定常時への移行を待たずに気体圧縮装置を速やかに停止することができる。
【符号の説明】
【0096】
1,31,41 空気圧縮装置(気体圧縮装置)
2 電動モータ(駆動手段)
3 圧縮機本体
11 電流センサ(電流検出手段)
12 制御装置
21,32,43 監視装置
23 基本波検出回路(基本波検出手段)
24 高調波検出回路(高調波検出手段)
42 振動検出器
44 振動検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を圧縮して圧縮気体を生成する圧縮機本体と、該圧縮機本体を駆動する駆動手段と、該駆動手段の電流を検出する電流検出手段と、該電流検出手段により検出された電流の信号により前記圧縮機本体を制御する制御装置とを備えた気体圧縮装置において、
前記電流検出手段により検出された電流の信号に基づいて、基本波の電流信号を検出する基本波検出手段と、高調波の電流信号を検出する高調波検出手段とを設け、
前記制御装置は、前記基本波検出手段の処理結果と前記高調波検出手段の処理結果とに基づいて、当該気体圧縮装置の異常を監視することを特徴とする気体圧縮装置。
【請求項2】
前記基本波検出手段は、前記基本波の振幅を演算し、
前記高調波検出手段は、前記高調波の振幅を演算し、
前記制御装置は、前記基本波検出手段の演算結果と前記高調波検出手段の演算結果との信号比を演算し、
該信号比が、前記基本波検出手段の演算結果における予め定められた閾値を超えたときに当該気体圧縮装置の異常を判断する構成としてなる請求項1に記載の気体圧縮装置。
【請求項3】
前記閾値は前記基本波検出手段の演算結果によって切り換える構成としてなる請求項2に記載の気体圧縮装置。
【請求項4】
前記閾値は、前記駆動手段を起動する起動時と前記駆動手段が通常状態で運転している定常時とで切り換える構成としてなる請求項3に記載の気体圧縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−11257(P2013−11257A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145995(P2011−145995)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】