説明

気体捕集用装置

【課題】所定の必要条件を維持可能とする安価な構成の気体捕集用装置を提供する。
【解決手段】面状発熱体4aおよび4bを有する温度制御手段5および5bと第2容器7を備え、第1浄化手段10と第2浄化手段11により供給空気の揮発性有機化合物を除去低減することにより、第1容器1内部が所定温度に制御され、安定した清浄空気が連続供給されるので、所定の必要条件を維持可能とする安価な構成の気体捕集用装置ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物体表面および内部から空気中に放散される揮発性有機化合物量を測定するための被測定気体の捕集用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の揮発性有機化合物量の測定は、被測定物を一定容積の空間に設定し、所定の温湿度において流通させる気体中の有機化合物量を定性定量分析することで行われ、これに必要な気体捕集用装置は、温度や不純物濃度などの所定の測定条件を満足するために、測定対象となる物体(被測定物)を設置する容器を備え、また容器と容器を設置する空間の気体浄化や温湿度制御が可能な手段を有している。(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
図6は、非特許文献1に記載された従来の気体捕集用装置を示すものである。図6に示すように、所定の内部体積を有する容器28と、空気供給装置29と、空気清浄装置30と、流量制御装置31、温度制御装置32、空調装置33などから構成されている。被測定物からの揮発性有機化合物の放散量は、温度によって変化するため、測定時の温度は重要な要因であり、可能な限り一定に維持しなければならない。従って、気体捕集用装置において温度制御手段は重要な構成要素となる。
【非特許文献1】監修 村上周三、編集委員長 田辺新一「シックハウス対策に役立つ小型チャンバー法 解説[JIS A 1901]」日本規格協会発行、2003年4月21日、P.37−51
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、被測定物体が大きい場合には、それに適合する捕集用装置も各構成要素が大型化され高価になるという課題を有していた。特に、内部容積が数m程度以上になると、例えば温度制御手段は気体捕集用装置の設置空間全体を温度制御するために能力の大きな空調機器を必要とした。
【0005】
前記従来の課題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、測定に要する所定の必要条件を維持可能とする安価な構成の気体捕集用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の気体捕集用装置は、放散源となる被測定物を設置する任意体積の空洞を有する第1容器と、前記第1容器の壁面に配置した気体の第1入口および第1出口と、前記第1容器の壁面に配置した面状発熱体を有する第1容器の温度制御手段と、前記面状発熱体からの熱損失を抑制する第1断熱手段と、前記第1容器を覆う第2容器と、前記第2容器の壁面に配置した気体の第2入口及び第2出口と、前記第1入口の上流側に配置した第1浄化手段と、前記第2入口の上流部に配置した第2浄化手段と、気体を前記第1容器内に供給する第1供給手段と、気体を前記第2容器内に供給させる第2供給手段と、前記第1容器と前記第2容器を設置する設置面との間に第2断熱手段を備える構成としたものである。
【0007】
これによって、面状発熱体を有する温度制御手段が第1容器を直接加熱し、第1容器を第2容器で覆い、第1断熱手段および第2断熱手段で面状発熱体からの熱損失を抑制するため、第1容器の安定した温度制御が可能となり、大型かつ高価な空調機器が不要なため気体捕集用装置が小型化され、装置作成に必要な費用が削減できる。また、本発明の気体
捕集用装置は、面状発熱体として例えば自己温度制御性を有する面状発熱体を用いることにより、温度制御に必要な部材を削減できる。
【0008】
また、本発明の気体捕集用装置は、被測定物を設置する任意体積の空洞を有する第1容器と、第1容器壁面に配置した気体の第1入口および第1出口と、第1容器壁面に配置した面状発熱体を有する第1温度制御手段と、面状発熱体からの熱損失を抑制する第1断熱手段と、第1容器を覆う第2容器と、第2容器壁面に配置した気体の第2入口及び第2出口と、第2容器壁面に配置した面状発熱体を有する第2温度制御手段と、第1入口の上流側に配置した第1浄化手段と、第2入口の上流部に配置した第2浄化手段と、気体を第1容器内に供給する第1供給手段と、気体を第2容器内に供給させる第2供給手段と、前記第1容器と前記第2容器を設置する設置面との間に第2断熱手段を備える構成としたものである。
【0009】
これによって、面状発熱体を有する第1温度制御手段が第1容器を直接加熱し、第1容器を第2容器で覆い、第1断熱手段および第2断熱手段で面状発熱体からの熱損失を抑制し、第2温度制御手段が第2容器を直接加熱するため、第1容器を、より安定した温度制御が可能となり、大型かつ高価な空調機器が不要なため気体捕集用装置が小型化され、装置作成に必要な費用が削減できる。また、本発明の気体捕集用装置は、面状発熱体として例えば自己温度制御性を有する面状発熱体を用いることにより、温度制御に必要な部材を削減できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の気体捕集用装置は、面状発熱体により容器を直接加熱する構成とし、簡易な浄化手段で容器の内部空気を清浄に維持する構成としたことにより、高価な温度制御手段が不要かつ小型化可能で、気体捕集用装置を安価に調達できるようになり、効率的な揮発性有機化合物の測定を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の発明は、被測定物を設置する任意体積の空洞を有する第1容器と、第1容器壁面に配置した気体の第1入口および第1出口と、第1容器壁面に配置した面状発熱体を有する第1容器の温度制御手段と、面状発熱体からの熱損失を抑制する第1断熱手段と、第1容器を覆う第2容器と、第2容器壁面に配置した気体の第2入口及び第2出口と、第1入口の上流側に配置した第1浄化手段と、第2入口の上流部に配置した第2浄化手段と、気体を第1容器内に供給する第1供給手段と、気体を第2容器内に供給させる第2供給手段と、前記第1容器と前記第2容器を設置する設置面との間に第2断熱手段を備える構成とすることにより、第1供給手段が第1容器に気体を供給している状態において、面状発熱体を有する温度制御手段が第1容器を直接加熱し、任意の設定温度に制御している時、第1断熱手段および第2断熱手段が面状発熱体から周辺への熱損失を抑制し、併せて第2容器が第1容器との間に形成する空気層の断熱効果で熱損失を抑制するので第1容器の温度変動幅が小さくなり、第1容器の温度を安定して維持できるようになる。
【0012】
また、測定時に第1容器内に供給される気体は、室内あるいは室外の空気を供給源とするが、第1浄化手段により清浄化されるため、不純物濃度は一定水準以下に抑制されている。更に、第1容器内部への不純物の混入を抑制するために、第2容器と第1容器の間に形成された空気層に、第2浄化手段を通した空気を連続供給することにより、第1容器内の空気中の不純物濃度を抑制している。
【0013】
第2の発明は、被測定物を設置する任意体積の空洞を有する第1容器と、第1容器壁面に配置した気体の第1入口および第1出口と、第1容器壁面に配置した面状発熱体を有する第1温度制御手段と、面状発熱体からの熱損失を抑制する第1断熱手段と、第1容器を
覆う第2容器と、第2容器壁面に配置した気体の第2入口及び第2出口と、第2容器壁面に配置した面状発熱体を有する第2温度制御手段と、第1入口の上流側に配置した第1浄化手段と、第2入口の上流部に配置した第2浄化手段と、気体を第1容器内に供給する第1供給手段と、気体を第2容器内に供給させる第2供給手段と、前記第1容器と前記第2容器を設置する設置面との間に設けた第2断熱手段を備える構成とすることにより、第1供給手段が第1容器に気体を供給している状態において、面状発熱体を有する第1温度制御手段が第1容器を直接加熱し、任意の設定温度に制御している時、第1断熱手段および第2断熱手段が面状発熱体から周辺への熱損失を抑制し、併せて第2容器が第1容器との間に形成する空気層の断熱効果で熱損失を抑制するので第1容器の温度変動幅が小さくなり、第1容器の温度を安定して維持できるようになる。また、第2温度制御手段により第2容器壁面の温度を必要な温度範囲に維持し、第1容器と第2容器の間に形成された空気層の温度が、所定の温度範囲に制御可能となることから、第1容器壁面および第1容器内の気体温度をより安定化させる。
【0014】
また、測定時に第1容器内に供給される気体は、室内あるいは室外の空気を供給源とするが、第1浄化手段により清浄化されるため、不純物濃度は一定水準以下に抑制されている。更に、第1容器内部への不純物の混入を抑制するために、第2容器と第1容器の間に形成された空気層に、第2浄化手段を通した空気を連続供給することにより、第1容器内の空気中の不純物濃度を抑制している。
【0015】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の気体捕集用装置で、温度制御手段が、第1容器壁面を所定の温度範囲内に維持することにより、第1容器を構成する壁面間の温度差を小さくできることから、第1容器内の気体の温度分布幅を小さくすることができる。そして、壁面温度の検出は、第1容器内部に温度検出手段を設置する必要がないので、第1容器内部を汚染することなく温度制御ができる。
【0016】
第4の発明は、特に、第1または第2の発明の気体捕集用装置で、面状発熱体が自己温度制御性を有する温度制御手段を備える構成とすることにより、自己温度制御性を有する発熱体は、周囲温度との相対関係において抵抗体の発熱量が一定の値で安定するため、発熱体としての温度が一定の値を保つようになり、非自己制御性の発熱体と比較して、温度制御に必要な部材を削減できる。
【0017】
第5の発明は、特に、第1または第2の発明の気体捕集用装置で、第1容器壁面および第2容器壁面の一部部位に第1容器内部を視認する透光性の可視手段を備える構成とすることにより、第1容器内に設置された被測定物の状態が目視により直接観察可能となることから、測定中における被測定物あるいは第1容器内の不規則状態あるいは異常状態への対応が可能となる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、本実施の形態の説明において、同一構成で同一作用効果を奏するところには同一符号を付して重複した説明を行わないものとする。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における気体捕集用装置の概略構成図で、図2は、同第1容器の概略外観図で、図3は、同第2容器の概略外観図である。
【0020】
図1において、第1容器1は、内部に任意体積の空洞を有し、気体を流通させる相対向する第1入口2および第1出口3と、第1容器1の第1入口2および第1出口3を設けた壁面の外に配置した面状発熱体4aおよび4bを有する温度制御手段5aおよび5bと、
面状発熱体4aおよび4bを覆った第1断熱手段6を備える。第2容器7は、第1容器1の全体を覆い、側壁に気体を流通させる第2入口8と天井壁に第2出口9を備えている。
【0021】
第1入口2の上流には、第1容器1に供給する気体を浄化する第1浄化手段10、第2入口の上流には、第2容器7に供給する気体を浄化する第2浄化手段11が配置されている。
【0022】
さらに、第1入口2の上流には第1容器1に気体を供給する第1供給手段12を設け、第2入口8の上流には第2容器7に気体を供給する第2供給手段13が設けられている。第1容器1および第2容器7とは、設置面である設置室内の床面21との間には、第2断熱手段14が設けてある。第1容器1に供給する気体の流量は、流量制御手段15により制御を行う。温度制御手段5aは、第1出口3を介して第1容器1の温度を検知する温度検知手段16aを備えている。温度制御手段5bは、第1容器1の底壁と面状発熱体4bとの間に配置し、面状発熱体4b近傍の温度を検知する温度検知手段16bを備えている。
【0023】
第1容器1の内部体積は、約1m3、形状は直方体とした。1辺が約1mのステンレス板を6枚組合せている。図示されていないが、接合部分は、化学的に不活性なテフロン(登録商標)の板をパッキンとして、接合部分からの空気の漏れ量が少なくなるような封止構造とした。接合は、ねじ締めによるが、これに限定するものではない。第1入口2および第1出口3は、ステンレス管を用いた。第1入口2は、一般的に入口側に整流板27を設けるのが好ましい。
【0024】
供給する気体の供給源は、室内空気もしくは室外空気とし、第1供給手段12によって第1入口2から流入させ第1出口3から流出させる。第1供給手段12は、市販されているエアポンプでよいが、供給する空気中に揮発成分などが混入しないような処置を施すことが必要である。そして、流入前に、第1浄化手段10により空気中の不純物である不要な揮発成分を除去する。これには、活性炭を用いた揮発成分の吸着除去が効果的である。
【0025】
第1浄化手段10は、必要量の活性炭17を保持固定する容器18と、空気を通過させる配管19とで構成している。通常、空気浄化には第1浄化手段10で十分であるが、空気が極度に汚染されている時は、予め空気浄化を行うなどの手段を講じておく。この場合の空気浄化も、第1浄化手段と同様の方法でよい。流量制御手段15は、フロート式流量計などでよいが、空気汚染の原因とならないように処置する。流量の設定値は、第1容器1における所定の換気回数から必然的に求められる。
【0026】
面状発熱体4aおよび4bは、市販されているシートヒーターや面状発熱体とされている発熱体でよい。面状発熱体4bは、設置面21との間に配置し、家庭用電気暖房器具である電気カーペットでもよい。側面に設置するときは、柔軟性の高いものであることが好ましい。いずれの場合も、気体捕集用装置に配置する前に、面状発熱体を加熱処理することが必要である。これは、面状発熱体から放散される揮発性有機化合物を予め除去する操作である。
【0027】
面状発熱体4aおよび4bは、自己温度制御性を有する発熱体であってもよい。この発熱体は、電気抵抗の温度特性が正温度係数(PTC)を示し、入力電圧一定の時に、発熱体とその周囲の空気温度などとの熱的平衡によって、発熱体の温度が一定に維持されるものである。従って、発熱体温度が必要な温度になるような条件で用いると、発熱体の制御が殆ど不要になる。発熱体の材料は、例えば、結晶性樹脂と非結晶性樹脂と導電性カーボンの混合物のような有機化合物からなるものが多数考案され、市販されている。
【0028】
温度制御手段5aおよび5bは、比例制御などができる市販の温度制御装置を用いてよい。第1容器1の壁面や内部温度を検知するためには、温度検知手段16aおよび16bは、折り曲げ可能な熱電対が適しているが、これに限定するものではない。温度検知手段16aは、第1容器1の壁面や、第1容器1の内部に配置してよい。温度検知手段16bは、第1容器1と面状発熱体4bの間に配置するか、面状発熱体4b近傍の任意の部位に配置する。
【0029】
本実施形態では、熱電対である温度検知手段16aを第1容器1の内部に配置した状態を示している。温度制御手段5aおよび5bは、熱電対の温度出力をもとに面状発熱体4aおよび4bに通電する電源のオンオフなどによる所定の温度制御を行う。設定温度は、非特許文献1では、28℃の例がある。
【0030】
第1断熱手段6は、発泡体など市販の断熱材料でよい。面状発熱体4a、4bと同様に、発泡体から放散される揮発性有機化合物を予め除去する操作が必要である。第1断熱手段6は、第1容器1と第2容器7の間に形成された空気層20への熱放散を抑制する。同様に、第2断熱手段14も、発泡体など市販の断熱材料でよい。面状発熱体4a、4bと同様に、発泡体から放散される揮発性有機化合物を予め除去する操作が必要である。第2断熱手段14は、設置面21と第1容器1および第2容器7の間を熱的に遮断する。
【0031】
第2容器7は、内部体積を約2m、形状は直方体とした。約1.2m×1.5mおよび1.2m×1.2mのステンレス板を各3枚組合せている。接合部分は、必ずしも第1容器1のような封止構造にしなくてもよいが、接合部からの漏れは少ない方がよい。接合は、ねじ締めによるが、これに限定するものではない。
【0032】
第2供給手段13は、第2容器7の内部に、第2入口8から空気を流入させ、第2出口9から流出させる。第2浄化手段11は、第1浄化手段10と同様の構成による空気浄化を行う。第2供給手段13は、市販されているエアポンプでよいが、供給する空気中に揮発成分などが混入しないような処置を施すことが必要である。
【0033】
第2入口8および第2出口9は、ステンレス管を用いた。図1では、第2出口9は、第2容器7の天井壁に設けられているが、配置箇所を限定するものではない。尚、第2入口8は複数設けることが望ましい。この場合、供給手段も同数とするのが好ましいが、これに限るものではない。
【0034】
図2において、第1容器1の任意の一面には、約0.6m×0.6mの取外し可能な被測定物の設置用窓22を設けている。設置用窓22と第1容器1の接合部分は、化学的に不活性なテフロン(登録商標)の板をパッキンとして、接合部分からの空気の漏れ量が少なくなるような封止構造とした。接合は、ねじ締めによる。
【0035】
図3において、第2容器7の任意の一面には、約0.8m×0.8mの取外し可能な被測定物の設置用窓23を設けている。設置用窓23と第2容器7の接合部分は、必ずしも第1容器1のような封止構造にしなくてもよいが、接合部からの漏れは少ない方がよい。接合は、ねじ締めによるが、これに限定するものではない。自明であるが、設置用窓22と設置用窓23は、同一の部位になければならない。
【0036】
以上のように構成された気体捕集用装置について、以下その動作、作用を説明する。まず、第1容器1に配置された面状発熱体4aおよび4bは電気的に独立しており、温度制御手段5aおよび5bにより第1容器1の壁面を加熱する。温度制御手段5aおよび5bは、発熱体の動作を制御して、第1容器内部を所定温度(例えば、28℃±1℃)に維持する。
【0037】
この時、局部加熱であれば容器内部に温度ムラや温度変動が生じ、所定温度から外れるが、発熱体が面状であること、面状発熱体を複数の壁面に配置していること、第1容器1と第2容器7の間に形成された空気層20の断熱効果や、第1断熱手段6および第2断熱手段14により、発熱体が周囲の熱負荷の影響を受けにくくなり、効率的に第1容器1を加熱できるため、第1容器1の内部とその周囲において熱平衡状態が形成され易くなり、面状発熱体のような薄型軽量の発熱体であっても、温度ムラが解消され、所定温度に維持できる。また、熱負荷が大きくならないので、省電力化ができる。
【0038】
上記のように、熱平衡状態が形成され易いため、温度検知手段16aは、第1容器1の壁面あるいは第1容器1の内部のいずれに配置しても良好な温度制御を可能とする。第1容器1の壁面に設置すれば、温度検知手段16aによって容器内部の空気が汚染されることがない。
【0039】
第1浄化手段10は、活性炭の吸着作用により、供給源の空気中の総揮発性有機化合物濃度が約300μg/mで、流量が約15L/minのときに、95%以上を除去した。非特許文献1に示されている試験条件の例は、第1容器1内部の総揮発性有機化合物濃度は20μg/m以下であるので、第1浄化手段10は、これを満足し、良好な試験条件を作り出す。
【0040】
第2浄化手段11は、第1浄化手段10と同様の構成であり、第1容器1と第2容器7の間に形成された空気層20の揮発性有機化合物濃度を、気体捕集用装置の設置空間よりも低減させ、第1容器1内部の清浄状態を維持するように作用する。第2浄化手段11の浄化率は、高くすることが好ましいものの、第1浄化手段10に比較して低くても構わない。
【0041】
気体捕集用装置を定まった室内に設置固定し、室内空気を供給源とし、その室内にも第1浄化手段と同様の浄化手段を設けることで、供給源である室内空気の総揮発性有機化合物濃度を低減化できる。これによって、第1浄化手段10を通過した後の供給空気中の総揮発性有機化合物濃度は、さらに低下し、第1容器1内部をより清浄化できる。
【0042】
上記状態としたときの、第1容器1内部の総揮発性有機化合物濃度は数μg/m以下であった。このことは、被測定物を第1容器内部に設置するときには好適である。
【0043】
以上の状態にして、被測定物からの揮発性有機化合物の放散量測定を、非特許文献1記載の方法に準拠して行う。特に、被測定物を第1容器内に設置する時、注意を要する。汚染成分の混入を抑制するため、短時間の内に設置用窓の開閉を行うようにする。多くの場合、このようにして設置した直後で、第1容器内の総揮発性有機化合物濃度は、20μg/m以下であった。第1容器1内部の空気は、空気塊としての挙動を有し、設置室内の空気との拡散混合が、短時間の内に生じにくいことによると思われる。
【0044】
以上のように、本実施の形態では、被測定物を設置する任意体積の空洞を有する第1容器1の壁面に面状発熱体4aおよび4bを有した温度制御手段5aおよび5bを配置しているので、第1容器内部とその周囲において熱平衡状態が形成され易くなり、面状発熱体のような薄型軽量の発熱体によって、第1容器1内部の温度ムラを低減し、所定温度に維持できる。
【0045】
また、熱負荷が大きくならないので、省電力化ができる。また、面状発熱体4aおよび4bとして温度制御手段である自己制御性を有する発熱体を用いると、温度制御に必要な部材を削減できる。また、第1浄化手段10および第2浄化手段11によって、第1容器
1内の揮発性有機化合物濃度が低減され、測定可能な清浄空間を提供できる。
【0046】
また、本発明の実施の形態では、面状発熱体4aを壁面ごとに、電気的に独立させ、それぞれの壁面に温度検知手段を配置すると、壁面ごとに独立の温度制御ができるため、第1容器内の温度ムラは更に小さくできるようになる。
【0047】
更に、第1容器1内部への不純物の混入を抑制するために、第2容器7と第1容器1の間に形成された空気層20に、第2浄化手段11を通した空気を連続供給することにより、第1容器1内の空気中の不純物濃度を抑制できるようになる。
【0048】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における気体捕集用装置の概略構成図である。図4において、第1容器1は、内部に任意体積の空洞を有し、気体を流通させる第1入口2および第1出口3と、面状発熱体4aおよび4bを有する第1温度制御手段5a´および5b´と、第1断熱手段6を備える。第2容器7は、第1容器1を覆い、気体を流通させる第2入口8と第2出口9と、面状発熱体4aおよび4bに相対向する第2容器7の側壁に設けた面状発熱体24を有する第2温度制御手段25を備えている。第1入口2の上流には、第1容器1に供給する気体を浄化する第1浄化手段10、第2入口の上流には第2容器7に供給する気体を浄化する第2浄化手段11が配置されている。
【0049】
さらに第1入口2の上流には第1容器1に気体を供給する第1供給手段12を設け、第2入口8の上流には第2容器7に気体を供給する第2供給手段13が設けられている。第1容器1および第2容器7と、設置面である設置室内の床面との間には、第2断熱手段14が設けてある。第1容器1に供給する気体の流量は、流量制御手段15により行う。温度制御手段5a´,5b´は、第1容器1の温度を検知する温度検知手段16a、16bを備えている。
【0050】
面状発熱体24および第2温度制御手段25は、温度検知手段16cを有し、面状発熱体4aおよび第1温度制御手段5aと同様に構成する。尚、面状発熱体24には、外側に第3断熱手段6´が配置されている。第1温度制御手段5a´および5b´は実施の形態1の発明の温度制御手段5a、5bと同等である。そして、第1容器1など、上記以外の構成は、実施の形態1で記載した内容と同様である。
【0051】
第2温度制御手段25により第2容器7の側壁面の温度を必要な温度範囲に維持し、第1容器1と第2容器7の間に形成された空気層20の温度が、所定の温度範囲に制御可能となることから、第1容器1の壁面および第1容器1の内部温度をより安定化させる。
【0052】
以上のように、本実施の形態では、基本的な動作および作用効果は実施の形態1で説明した通りであるが、特に第2容器7が第1容器1を覆い、第2容器7の壁面に面状発熱体24を有する温度制御手段25を配置しているので、安定した測定環境が維持できる。
【0053】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における第2容器の概略外観図である。図5において、第2容器7壁面の一部部位に第1容器1内部を視認する透光性の可視手段26を、第1容器1の設置用窓22に対向して配置し、本実施の形態では設置用窓23の一部壁面に、可視手段26を設けた。それ以外の構成と動作および作用効果は実施の形態1と同じである。
【0054】
可視手段26は、有機あるいは無機のガラス板でよい。第2容器7の壁面に配置する前には、不純物の除去および揮発性化合物の除去作業を講じる。図示されていないが、容器
壁面と可視手段26の接合部は、化学的に不活性なテフロン(登録商標)の板をパッキンとして、接合部分からの空気の漏れ量が少なくなるような封止構造とした。接合は、ねじ締めによるが、これに限定するものではない。
【0055】
尚、本実施の形態では、図示していないが、第1容器1の一部壁面である設置用窓22の一部壁面にも、可視手段26と同等の位置に可視手段を配置するものとする。この可視手段の構成は、可視手段26と同様とする。
【0056】
これにより、第1容器内1に設置された被測定物の状態が目視により直接観察可能となることから、測定中における被測定物あるいは第1容器1内の不規則状態あるいは異常状態への対応が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明にかかる気体捕集用装置は、被測定物を設置する第1容器を所定温度に維持し、第1容器内部を所定の状態に維持できるので、物体表面および内部から空気中に放散される揮発性有機化合物量を測定するための被測定気体の捕集用装置のほか、物体と物体周囲の気体等の間における化学反応の測定や評価等の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態1における気体捕集用装置の概略構成図
【図2】同実施の形態1における気体捕集用装置の第1容器の概略外観図
【図3】同実施の形態1における気体捕集用装置の第2容器の概略外観図
【図4】本発明の実施の形態2における気体捕集用装置の概略構成図
【図5】本発明の実施の形態3における気体捕集用装置の第2容器の概略外観図
【図6】従来の気体捕集用装置の概略構成図
【符号の説明】
【0059】
1 第1容器
2 第1入口
3 第1出口
4a、4b 面状発熱体
5a、5a´、5b 、5b´ 温度制御手段
6 第1断熱手段
6´ 第3断熱手段
7 第2容器
8 第2入口
9 第2出口
10 第1浄化手段
11 第2浄化手段
12 第1供給手段
13 第2供給手段
14 第2断熱手段
24 面状発熱体
25 第2温度制御手段
26 可視手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を設置する任意体積の空洞を有する第1容器と、前記第1容器の壁面に配置した気体の第1入口および第1出口と、前記第1容器の壁面に配置した面状発熱体を有する温度制御手段と、前記面状発熱体からの熱損失を抑制する第1断熱手段と、前記第1容器を覆う第2容器と、前記第2容器の壁面に配置した気体の第2入口および第2出口と、前記第1入口の上流側に配置した第1浄化手段と、前記第2入口の上流側に配置した第2浄化手段と、前記第1浄化手段を介して気体を前記第1容器内に供給する第1供給手段と、前記第2浄化手段を介して気体を前記第2容器内に供給する第2供給手段と、前記第1容器と前記第2容器を設置する設置面との間に設けた第2断熱手段を備えた気体捕集用装置。
【請求項2】
被測定物を設置する任意体積の空洞を有する第1容器と、前記第1容器の壁面に配置した気体の第1入口および第1出口と、前記第1容器の壁面に配置した面状発熱体を有する第1温度制御手段と、前記面状発熱体からの熱損失を抑制する第1断熱手段と、前記第1容器を覆う第2容器と、前記第2容器の壁面に配置した気体の第2入口および第2出口と、前記第2容器の壁面に配置した面状発熱体を有する第2温度制御手段と、前記第1入口の上流側に配置した第1浄化手段と、前記第2入口の上流側に配置した第2浄化手段と、前記第1浄化手段を介して気体を前記第1容器内に供給する第1供給手段と、前記第2浄化手段を介して気体を前記第2容器内に供給させる第2供給手段と、前記第1容器と前記第2容器を設置する設置面との間に設けた第2断熱手段を備えた気体捕集用装置。
【請求項3】
第1温度制御手段が、第1容器の壁面を所定の温度範囲内に維持する請求項1または2に記載の気体捕集用装置。
【請求項4】
面状発熱体は自己温度制御性を有する温度制御手段を備えた請求項1または2に記載の気体捕集用装置。
【請求項5】
第1容器の壁面および第2容器の壁面の一部部位に第1容器内部を視認する透光性の可視手段を備えた請求項1または2に記載の気体捕集用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−327857(P2007−327857A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159426(P2006−159426)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】