説明

気体流を使用する土質試料サンプラー及び土質試料の採取方法

【課題】地盤への泥水や気泡の注入を避けることにより、地中孔の周辺地盤への影響を極力排除した土質試料サンプラーを得る。
【解決手段】回転式の外管22と、外管内に嵌装された非回転式の内管24と、外管の下端に固定されたビット25と、スライムキャリアー源2からなり、外管24を回転させつつ地中方向に移動させて、ビット25により地層を穿孔し、同時に、スライムキャリアーの流れに乗せてスライムを地表に排出すると共に、外管22の内部に残された土質試料を内管24に収容する土質試料サンプラー1において、スライムキャリアー源2から送られるスライムキャリアーが気体であり、ビット25は、前記外管の外周から外管の外側に向って3mm以上突出している土質試料サンプラー1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地質調査などを目的に行われる地層の試料採取に用いる土質試料サンプラー、及び土質試料の採取方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、土質試料の採取を含む地層のボーリングにおいては、泥水(水とベントナイトなどの混合液)や気泡などが使用される。泥水などの役割は、(1)スライムの排出、(2)ビット刃先の冷却、(3)ロッドの回転抵抗の減少、(4)マッドケーキによる孔壁の保護、(5)泥水圧による孔壁の安定などである。
【0003】
また、従来の土質試料サンプラーは、ボーリングロッドの下端に一体的に結合された上部サンプラーヘッドに上端が一体的に結合され、下端にメタルクラウンを一体的に結合させた外管と、ボールベアリング装置を介して外管内に嵌装された非回転式の試料採取管を兼ねる内管との間に、上部サンプラーヘッドと二段一体構造の下部サンプラーヘッドに上端が一体的に結合され、かつ、下端がメタルクラウンに一体的に結合された隔壁外管を嵌装させて三重管構造とすることにより、外管と隔壁外管との間に削孔水が流れる削孔水路を形成し、土質試料が収納される内管を削孔水から隔絶させるようにしたものがある。(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−129460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
土質試料の採取が必要となる場所は広範囲にわたり、地盤への泥水(削孔水)や気泡の注入が好ましくない場所もある。
【0006】
上述した従来の土質サンプラーは、種々の効果とともに、削孔水の浸透による土質試料の乱れを防止するものである。土質試料については、泥水(削孔水)の影響が避けられるが、地中孔の周辺地盤への泥水の浸透を避けることはできない。
【0007】
一方、土質試料は地盤中に存在する状態で、すなわち、不撹乱状態で取り出されることが好ましい。
【0008】
そこで、本発明の課題は、地盤への泥水や気泡の注入を避けることにより、地中孔の周辺地盤への影響を極力排除した土質試料サンプラーを得ることにある。また、本発明の他の課題は、機械的に不撹乱状態で、土質試料を取り出すことが可能な土質試料サンプラーを得ることにある。
【0009】
本発明のその他の課題は、上記の土質試料サンプラーが有する課題と同様な課題を解決する土質試料採取方法を得ることにある。
【0010】
上記以外の本発明の課題は、本発明の説明により明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、スライムキャリアーとして、従来の泥水や気泡に替えて気体を使用することに着目した。
【0012】
本発明の一の態様にかかる土質試料サンプラーは、回転駆動する中空のボーリングロッドの下端に固定されたサンプラーヘッドと、前記サンプラーヘッドに上端が固定された外管と、スラストベアリングを介して前記外管内に嵌装された非回転式の内管と、前記外管の下端に固定されたビットと、キャリアースイベルを介して前記ボーリングロッドの内部にスライムキャリアーを送りこむスライムキャリアー源からなり、前記外管の内周と、前記内管の外周との間隙を前記スライムキャリアーの往路とし、前記外管の外周と、前記ビットにより穿孔される地中孔の孔壁との間隙を前記スライムキャリアーの復路とし、前記ボーリングロッドを回転させつつ地中方向に移動させて、前記ビットにより土層を穿孔し、同時に、前記スライムキャリアー源からスライムキャリアーを前記キャリアースイベル、前記ボーリングロッドの内部、前記往路、前記ビットの周辺と、前記復路を順に通過させ、スライムキャリアーの流れに乗せてスライムを地表に排出すると共に、前記外管の内部に残された土質試料を前記内管に収容する土質試料サンプラーにおいて、前記スライムキャリアー源から送られる前記スライムキャリアーが気体であり、前記ビットは、水平面内で、前記外管の外周から前記外管の外側に向って3mm以上突出していることを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい実施態様にかかる土質試料サンプラーにあっては、前記サンプラーヘッド内に、前記スライムキャリアーの通路である分流孔を有するキャリアー分流板を設けたものであり、前記分流孔の水平面での断面積をSとし、前記往路の水平面での断面積をUとしたとき、式(1)の関係が成立するものであってもよい。
U≦S 式(1)
【0014】
本発明にあっては、分流板の分流孔は、スライムキャリアーである気体流を往路に導く役割のみを担う。その結果、気体流の流路絞りが開放される部分は、往路の出口であるビットの周辺部となり、当該部分で気体流の速度が増大し、スライム搬送の効率を高めることができる。また、分流板が気体流の流路絞りとならないので、気体流の量を多くすることができ、スライム搬送の効率を高めることができる。
【0015】
分流孔が複数ある場合には、個々の分流孔の水平面での断面積を求め、当該断面積の総和をSとする。また、一の分流孔において、断面位置により、その水平面での断面積が異なる場合には、断面積の最小値を当該一の分流孔の断面積とする。
【0016】
本発明の好ましい実施態様にかかる土質試料サンプラーにあっては、前記内管内に嵌装された試料採取管を有してもよい。
【0017】
本発明にあっては、土質試料サンプラーから土質試料が充填された試料採取管を取り外し、そのまま実験室などに持ち帰ることができる。このため、より使い勝手のよい、土質試料サンプラーとなる。また、試料採取管に地盤中に存在する状態での土質サンプルを直接採取するものであり、より一層不撹乱状態での土質サンプル採取に適した土質試料サンプラーとなる。
【0018】
本発明の他の好ましい実施態様にかかる土質試料サンプラーにあっては、前記試料採取管が、透明アクリル樹脂よりなるものであってもよい。
【0019】
本発明にあっては、試料採取管が透明であるため直接目視可能となり、試料採取作業現場において、試料採取状況を即時にフィードバックして、土質試料採取条件を改善できるなど、より一層使い勝手の良い土質試料サンプラーとなる。
【0020】
本発明のその他の好ましい実施態様にかかる土質試料サンプラーにあっては、地表部に配置される集気マウントを設け、前記集気マウントは前記地中孔の地表開口部を覆うとともに出口を有し、前記出口を集塵装置に接続したものであって、前記集塵装置が前記スライムと前記スライムキャリアーを分離するものであってもよい。
【0021】
本発明にあっては、集塵装置を設け、スライムとスライムキャリアーを分離するので、作業環境の保全を図ることができる。
【0022】
本発明の他の態様にかかる土質試料の採取方法は、先端にビットを装着した回転式の外管と、スラストベアリングを介して前記外管内に嵌装された非回転式の内管を有し、かつ、地表から、前記ビット周辺を通り、地表に戻るスライムキャリアーの流れを作り出す装置を用い、前記外管を回転させつつ地中方向に移動させ、前記ビットにより土層内に穿孔し、前記穿孔により生じるスライムを、前記スライムキャリアーの流れに乗せて地表に排出し、前記外管の内部に残された土質試料を前記内管に収容し、地表に引き上げる土質試料の採取方法において、前記スライムキャリアーとして気体を用いることを特徴とする。
【0023】
本発明において、気体には、空気、チッソガス、二酸化炭素ガス、アルゴンガスなどが含まれる。これらのなかでは、費用節減の観点から空気が好ましい。
【0024】
以上説明した本発明、本発明の好ましい実施態様、これらに含まれる構成要素は可能な限り組み合わせて実施することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明にかかる土質試料サンプラーは、スライムキャリアーとして気体流を採用したので、地盤への泥水や気泡の注入を避けることができ、土質試料採取時に、地中孔の周辺地盤への影響を極力排除することができる。また、本発明にかかる土質試料サンプラーは、採取される土質試料に泥水や気泡など、人工物が混入する危険性がなく、不撹乱状態で、土質試料を取り出すことができる。
【0026】
本発明にかかる土質試料の採取方法は、スライムキャリアーとして気体流を採用したので、地盤への泥水や気泡の注入を避けることができ、土質試料採取時に、地中孔の周辺地盤への影響を極力排除することができる方法となる。また、本発明にかかる土質試料の採取方法は、採取される土質試料に泥水や気泡など人工物が混入する危険性がなく、不撹乱状態で、土質試料を取り出すことができる方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施例にかかる土質試料サンプラーと土質試料の採取方法をさらに説明する。本発明の実施例に記載した部材や部分の寸法、材質、形状、その相対位置などは、とくに特定的な記載のない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例にすぎない。
【0028】
図1は土質試料サンプラー1の全体概念図であり、図2は土質試料サンプラー1のサンプラー部20の断面説明図であり、図3は当該サンプラー部20を下面側から見た底面図であり、図4はキャリアー分流板20を上面側から見た平面図である。図1、図2に記入した矢印はスライムキャリアーである気体流の流れる方向を示している。
【0029】
図1を参照して、土質試料サンプラー1のサンプラー部20はボーリングロッド10に接続されている。駆動装置6で生み出される回転駆動力と上下方向移動の駆動力がスイベルヘッド5を介してボーリングロッド10に伝達される。
【0030】
スライムキャリアー源2からスライムキャリアーである気体流が送り出される。本実施例にあっては、スライムキャリアーは空気流であり、スライムキャリアー源2はエアーコンプレッサーである。空気流は空気調整装置3により温度調節、湿度調節、除菌、ろ過などが行われる。空気調整装置3により、試料採取地盤固有の要求に応じた空気流の調整を行うことが出来る。空気調節装置3は土質試料サンプラー1の付加的な構成部分であり、試料採取地盤からの格別の要求がなければ空気調節装置3を省略してもよい。
【0031】
空気調節装置3を出た空気流は接続流路7を通ってキャリアースイベル4を介してボーリングロッド10の内部に導かれる。キャリアースイベル4は泥水を使用する従来のボーリング装置に用いるウォータスイベルと同一であり、駆動装置6、スイベルヘッド5、ボーリングロッド10もまた、泥水を使用する従来のボーリング装置に用いる駆動装置、スイベルヘッド、ボーリングロッドと同一である。
【0032】
スライムキャリアー源2、空気調整装置3、駆動装置6は地表面11に置かれている。地中孔12は土質試料の採取に伴い地盤に地下に向って掘り進められる孔である。ボーリングロッド10中を下方に進んだ空気流は、後述する土質試料採取時に生じるスライム(掘削屑)とともに地表に向けて進行する。地中孔12の中では、空気流はボーリングロッド10の外周と地中孔12の孔壁間の間隙を通過する。
【0033】
地中孔12の地表開口部に集気マウント41が設けられている。集気マウント41はスライムを含む空気流を集気マウントの出口42に導く。出口42を出た空気流は吸気装置8に至る。吸気装置8は空気流の流れを補助するものであり、スライムキャリアー源2の送気能力などによっては省略することも可能である。
【0034】
吸気装置8を出た空気流は集塵装置9に至る。集塵装置9は内部に複数の網目フィルターを備えており、空気流に搬送されているスライムが網に衝突して落下することにより、空気とスライムを分離するものである。集塵装置9は、他の動作原理に基づくもの(例えば液面衝突式、遠心分離式など)であってもよい。集塵装置9は土質試料採取時の作業環境改善に寄与する。
【0035】
集塵装置9の下流又は上流に空気調節装置を付加して、滅菌や脱臭などをおこなってもよい。このようにすれば、衛生面における作業環境が改善される。
【0036】
吸気装置8、集塵装置9は地表面11に設置される。
【0037】
図2を参照して、サンプラー部20はボーリングロッド10の下端にサンプラーヘッド21が固定されている。外管22の上端はサンプラーヘッド21に固定されている。外管22は略円筒形である。外管22の上部内側には、キャリアー分流板31が固定されている。キャリアー分流板31の中心部下面側には円柱状の突出部33がある。内管24の上部に設けられたスラストベアリング23を介して、内管24は突出部33と係合している。内管24は略円筒状であり、外管22の中に入れ子状に収められている。
【0038】
ボーリングロッド10が回転すると外管22は回転し、外管22内に嵌装された内管24は回転しない。内管24の上面とキャリアー分流板31の下面との間にバネ29が介在しており、外管22の上下移動に伴う内管24の上下移動の衝撃を吸収する。
【0039】
内管24の下端部全周囲には、カッティングシュー46を備えており、土質試料の内管24内部への収容を補助している。また、内管24の上板には空気抜き孔30が空けられていて、土質試料の内管24内部への収容を補助している。
【0040】
内管24の内側にはアクリル樹脂製のパイプである試料採取管28が嵌装されている。内管24の内周と試料採取管28の外周は隙間無く嵌め合わされている。また、カッティングシュー46の上部内周面と試料採取管28の内周面は面一にされている。試料採取管28は内管24から容易に取り出すことが可能であり、土質試料サンプルを試料採取管28に収容した後、サンプラー部20を地表に引き上げて、試料採取管28を内管24から取り出し、新たな試料採取管を内管24に嵌装して、引続く土質試料の採取を行うことができる。
【0041】
試料採取管28は透明である。透明とは、透明度が、通常85〜100%、好ましくは90〜100%、より好ましくは95〜100%を意味する。また、無色透明であることが好ましいが、有色透明であってもかまわない。この範囲であれば、試料採取管28中の土質試料の採取状況を直ちに目視観察できるので、直ちにフィードバックして、土質試料採取の条件(空気流の圧力、送気量、ボーリングロッドの回転速度や反力の大きさなど)を改善することができる。また、実験室に持ち帰った後にも、観察が容易となる。
【0042】
試料採取管28は、透明アクリル樹脂製に限られず、硬質塩化ビニル管や鉄管であってもよい。さらに、試料採取管28を用いることなく内管に直接土質試料サンプルを収容し、地表に引き上げた後に、適宜の容器に土質試料サンプルを移しかえてもよい。
【0043】
外管22の下端には4個のビット25が取り付けられている。ビット25の個数は1以上であればよい。ボーリングロッド10の回転と下方移動により、ビット25が地盤を円筒状に切削する。
【0044】
サンプラー部20中で、空気流は、外管22の内周と内管24の外周との間隙を往路26にしてビット25に向って流れる。往路26を通過する空気流はスライムを含まないので、スライム搬送に関する特別の要求はない。よって、往路26の間隔に関して特別の制限はなく、従来の泥水を用いるボーリング装置におけると同様な間隔、例えば外管22の内周直径を95mm、内管の外周直径を90mmとすることができる。
【0045】
往路26を通って下降した空気流はビット25周辺でその方向を変え、外管22の外周と地中孔12の孔壁との間隙を復路27にして地表方向に向かって流れる。復路27を通過する空気流はスライムを搬送するものである。空気流がスライムを効率よく搬送するためには、復路27の水平面内における間隔は一定値以上必要となる。ここで、水平面内における復路27の間隙はビット25による地盤切削により作り出される。
【0046】
このため、ビット25は水平面内(すなわち、外管22の回転軸に対して垂直な面内)において、外管22の外側に向かい、外管22の外周よりも通常3mm以上、好ましくは4mm以上、より好ましくは5mm以上、突出している。図3を参照して、ビット25の当該突出長さを間隔dで示している。
【0047】
ビット25の当該突出長さdは、スライム搬送の観点から大きくするほうが好ましい。一方、切削に必要なエネルギー、深度進行の速度、スライム量の軽減、地盤負荷の軽減などの観点から、ビット25の当該突出長さdは小さくすることが好ましい。このため、ビット25の突出長さdの上限は、通常10mm以下、好ましくは8mm以下、より好ましくは6mm以下である。
なお、ビット25が複数あり個々のビットの突出長さdが異なる場合には、最も突出長さの長い値を突出長さdとする。
【0048】
図4を参照して、分流板31は12個の貫通孔である分流孔32を有する。分流孔32は円柱形状の孔に限られず、その他の形状であってもよい。また、分流孔の個数も12個に限られず、適宜の数であってもよい。
【0049】
分流孔32は、ボーリングロッド10内を流れてきた空気流を往路26内に導く役目をする。従来の泥水を使用するボーリング装置にあっては、分流孔は泥水流の絞りの役目を担っている。一方、スライムキャリアーとして気体流を用いる本発明においては、スライム搬送のために、気体の速度増大と共に気体量を大きくすることも必要となる。このため、分流孔32が絞りの役目を担うことは好ましくない。
【0050】
すなわち、分流孔の水平面での断面積(本実施例においては12個の分流孔の断面積の総和)をSとし、前記往路の水平面での断面積をUとしたとき、通常、式(1)の関係が成立することが好ましい。
U≦S 式(1)
より好ましくは、式(2)、さらに好ましくは式(3)の関係が成立することである。
1.14U≦S 式(2)
1.28U≦S 式(3)
【0051】
一方、分流孔の水平面での断面積Sをあまりに大きくすると、空気流を往路26に導く役割が果たせなくなる。このため、分流孔の水平面での断面積Sと、前記往路の水平面での断面積Uの関係は、好ましくは式(4)、より好ましくは式(5)を満足することである。
S≦2.00U 式(4)
S≦1.50U 式(5)
【0052】
本発明にかかる土質試料サンプラー1のサンプラー部20において、空気流の流路絞りが開放される部分は、往路26の出口であるビット25の周辺部となり、当該部分で空気流の速度が増大し、スライムの搬送が効率よく行われる。
【0053】
続いて、本発明にかかる土質試料サンプラーを用いる土質試料の採取方法を説明する。スライムキャリアー源2から空気流を送りながら、駆動装置6を駆動し、ボーリングロッド10を下方に押し付けつつ、ボーリングロッド10を回転させる。ビット25が回転し、地盤が円筒状に切削される。切削により生じるスライムは、空気流に搬送されて地上に排出される。
【0054】
一方、円筒状に切削された地盤の残部円柱状部分は、試料採取管28内部に収容される。試料採取管28の長さ分ボーリングロッド10が下降した段階で、ボーリングロッド10の回転を止め、サンプラー部20を地表に引き上げ、試料採取管28を取り外して、土質試料を取り出す。必要に応じて、新規の試料採取管を取り付けて、再度、試料採取操作を繰り返す。
【0055】
以上説明した、スライムキャリアーとして用いる空気は、その他の気体であってもよい。気体とは、常温で気体状態にある物質を意味する。例えば、チッソガス、二酸化炭素ガス、アルゴンガスなどが含まれる。これらのなかでは、費用節減の観点から空気が好ましい。一方、チッソガスなど不活性気体を用いれば、土質試料が化学的にも、不撹乱の状態で取り出すことが可能となり、本発明の適用範囲が広がる。
【0056】
本発明にかかる土質試料サンプラー1は、その要旨を変更しない範囲で変形して実施することができる。例えば、外管22の下部にメタルクラウンを固定し、当該メタルクラウンの下端にビットを取り付けてもよい。
【0057】
また、採取する土質試料が、一定深度(例えば0.5m)以下の部分から開始される場合には、オーガなどを用いて地表下0.5mまで地中孔を掘り、その後に本発明にかかる土質試料サンプラー1を用いて、土質試料を採取することもできる。
【実施例1】
【0058】
本発明にかかる土質試料サンプラーを用いて、粘土と砂が互層構造をなす地盤の土質試料採取を行った。
【0059】
使用した土質試料サンプラーの主たる寸法などは以下のとおりである。
外管22の外直径 100mm
外管22の内直径 95mm
内管24の内直径 90mm
ビットの突出長さd 5mm
試料採取管の外直径 75mm
試料採取管の内直径 71mm
試料採取管の長さ 1020mm (1採取地点で、必要に応じて、4〜6本を使用)
【0060】
分流孔の水平面での断面積(12個の分流孔の断面積の総和)(S) 942mm
往路の水平面での断面積(U) 726mm
(1.30U=S)
エアーコンプレッサー吐出空気量(能力) 3.5m/min
平均送気圧(実測値) 0.15MPa(ゲージ圧)
平均堀進速度(実測値) 20〜34mm/min
試料採取地点の数 3
【0061】
地中深さ4〜6mの土質試料サンプルを取り出すことが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明にかかる土質試料サンプラーと土質試料の採取方法は、地盤への異物注入が禁止される特殊環境での土質試料の採取に用いることができ、特に、地下水位よりも浅く、粘土や砂に富む地盤における土質試料の採取に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】土質試料サンプラー1の全体概念図である。
【図2】土質試料サンプラー1のサンプラー部20の断面説明図である。
【図3】土質試料サンプラー1のサンプラー部20を下面側から見た底面図である。
【図4】キャリアー分流板20を上面側から見た平面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 土質試料サンプラー
2 スライムキャリアー源
3 空気調整装置
4 キャリアースイベル
5 スイベルヘッド
6 駆動装置
7 接続流路
8 吸気装置
9 集塵装置
10 ボーリングロッド
11 地表面
12 地中孔
【0065】
20 サンプラー部
21 サンプラーヘッド
22 外管
23 スラストベアリング
24 内管
25 ビット
26 往路
27 復路
28 試料採取管
29 バネ
30 空気抜き孔
31 キャリアー分流板
32 分流孔
33 突出部
41 集気マウント
42 出口
46 カッティングシュー
d ビットの突出長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動する中空のボーリングロッドの下端に固定されたサンプラーヘッドと、
前記サンプラーヘッドに上端が固定された外管と、
スラストベアリングを介して前記外管内に嵌装された非回転式の内管と、
前記外管の下端に固定されたビットと、
キャリアースイベルを介して前記ボーリングロッドの内部にスライムキャリアーを送りこむスライムキャリアー源からなり、
前記外管の内周と、前記内管の外周との間隙を前記スライムキャリアーの往路とし、
前記外管の外周と、前記ビットにより穿孔される地中孔の孔壁との間隙を前記スライムキャリアーの復路とし、
前記ボーリングロッドを回転させつつ地中方向に移動させて、前記ビットにより土層を穿孔し、同時に、前記スライムキャリアー源からスライムキャリアーを前記キャリアースイベル、前記ボーリングロッドの内部、前記往路、前記ビットの周辺と、前記復路を順に通過させ、スライムキャリアーの流れに乗せてスライムを地表に排出すると共に、前記外管の内部に残された土質試料を前記内管に収容する土質試料サンプラーにおいて、
前記スライムキャリアー源から送られる前記スライムキャリアーが気体であり、
前記ビットは、水平面内で、前記外管の外周から前記外管の外側に向って3mm以上突出していることを特徴とする土質試料サンプラー。
【請求項2】
請求項1に記載した土質試料サンプラーにおいて、
前記サンプラーヘッド内に、前記スライムキャリアーの通路である分流孔を有するキャリアー分流板を設けたものであり、
前記分流孔の水平面での断面積をSとし、前記往路の水平面での断面積をUとしたとき、式(1)の関係が成立することを特徴とする請求項1に記載した土質試料サンプラー。
U≦S 式(1)
【請求項3】
請求項1乃至2いずれかに記載した土質試料サンプラーにおいて、
前記内管内に嵌装された試料採取管を有することを特徴とする請求項1乃至2いずれかに記載した土質サンプラー。
【請求項4】
請求項3に記載した土質試料サンプラーにおいて、
前記試料採取管が、透明アクリル樹脂よりなることを特徴とする請求項3に記載した土質試料サンプラー
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかに記載した土質試料サンプラーにおいて、
地表部に配置される集気マウントを設け、
前記集気マウントは前記地中孔の地表開口部を覆うとともに出口を有し、
前記出口を集塵装置に接続したものであって、前記集塵装置が前記スライムと前記スライムキャリアーを分離することを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載した土質試料サンプラー。
【請求項6】
先端にビットを装着した回転式の外管と、スラストベアリングを介して前記外管内に嵌装された非回転式の内管を有し、かつ、地表から、前記ビット周辺を通り、地表に戻るスライムキャリアーの流れを作り出す装置を用い、
前記外管を回転させつつ地中方向に移動させ、前記ビットにより土層内に穿孔し、前記穿孔により生じるスライムを、前記スライムキャリアーの流れに乗せて地表に排出し、
前記外管の内部に残された土質試料を前記内管に収容し、地表に引き上げる土質試料の採取方法において、
前記スライムキャリアーとして、気体を用いることを特徴とする土質試料の採取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−239358(P2007−239358A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65037(P2006−65037)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【特許番号】特許第3914248号(P3914248)
【特許公報発行日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(591137259)株式会社キンキ地質センター (3)
【Fターム(参考)】